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令和4年・2022年の行政書士試験の解答速報

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問31:

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問33:

問34:

問35:

問36:

問37:

問38:

問39:

問40:

問41:ア 10 ・ イ ・ ウ 20 ・ エ

問42:ア 19 ・ イ 11 ・ ウ ・ エ

問43:ア ・ イ 15 ・ ウ 20 ・ エ 11

問44:B市を被告として、重大な損害が生ずるおそれがあると主張し、義務付けの訴えを提起する。(42文字)
※ 義務付け訴訟

問45:Aは、Bの無権代理行為について追認拒絶しても信義則に反しないから、履行を拒絶ができる。(43文字)

問46:例1)Bの所有権に基づく妨害排除請求権を債権者代位することで、塀の除去を請求することができる。(44字)

例2)Bの所有権に基づく妨害排除請求権を代位行使し、塀の除去を請求することができる。(39字)

問47:

問48:

問49:

問50:

問51:

問52:

問53:

問54:

問55:

問56:

問57:

問58:

問59:

問60:

行政手続法21条:陳述書等の提出

上図をご覧ください。行政庁は、不利益処分を行う前に、①当事者に対して、聴聞の通知を行います。その後、②行政庁は、職員の中から主宰者(聴聞の運営を行う者)を指名します。また、③主宰者は必要に応じて、参加人の参加許可を行います。

そうすると、当事者と参加人は、聴聞に参加して、不利益処分に対して意見を主張する機会を得ます。そして、行政手続法21条では、聴聞に出席する代わりに、陳述書や証拠書類の提出を行って、自らの意見を主張する方法が認められています。

聴聞における陳述書とは?

陳述書とは、行政庁の不利益処分に対する「言い分や反論」を記載した書面を指します。

行政書士試験では、出題される可能性も高く、内容も易しいのでしっかり頭に入れておきましょう!

(陳述書等の提出)
第21条 当事者又は参加人は、聴聞の期日への出頭に代えて、主宰者に対し、聴聞の期日までに陳述書及び証拠書類等を提出することができる。
2 主宰者は、聴聞の期日に出頭した者に対し、その求めに応じて、前項の陳述書及び証拠書類等を示すことができる。

<<行政手続法20条:聴聞の期日における審理の方式 | 行政手続法22条:続行期日の指定>>

令和3年・2021|問21|国家賠償法

規制権限の不行使(不作為)を理由とする国家賠償請求に関する次のア~エの記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア.石綿製品の製造等を行う工場または作業場の労働者が石綿の粉じんにばく露したことにつき、一定の時点以降、労働大臣(当時)が労働基準法に基づく省令制定権限を行使して罰則をもって上記の工場等に局所排気装置を設置することを義務付けなかったことは、国家賠償法1条1項の適用上違法である。

イ.鉱山労働者が石炭等の粉じんを吸い込んでじん肺による健康被害を受けたことにつき、一定の時点以降、通商産業大臣(当時)が鉱山保安法に基づき粉じん発生防止策の権限を行使しなかったことは、国家賠償法1条1項の適用上違法である。

ウ.宅地建物取引業法に基づき免許を更新された業者が不正行為により個々の取引関係者に対して被害を負わせたことにつき、免許権者である知事が事前に更新を拒否しなかったことは、当該被害者との関係において国家賠償法1条1項の適用上違法である。

エ.いわゆる水俣病による健康被害につき、一定の時点以降、健康被害の拡大防止のために、水質規制に関する当時の法律に基づき指定水域の指定等の規制権限を国が行使しなかったことは、国家賠償法1条1項の適用上違法とはならない。

  1. ア・イ
  2. ア・ウ
  3. イ・ウ
  4. イ・エ
  5. ウ・エ

>解答と解説はこちら


【答え】:1(アイが妥当)

【解説】

ア.石綿製品の製造等を行う工場または作業場の労働者が石綿の粉じんにばく露したことにつき、一定の時点以降、労働大臣(当時)が労働基準法に基づく省令制定権限を行使して罰則をもって上記の工場等に局所排気装置を設置することを義務付けなかったことは、国家賠償法1条1項の適用上違法である。

ア・・・妥当

石綿製品の製造等を行う工場または作業場の労働者が石綿の粉じんにばく露した事案について、判例(最判平26.10.9)によると

労働大臣は、石綿肺の医学的知見が確立した昭和33年3月31日頃以降、石綿工場に局所排気装置を設置することの義務付けが可能となった段階で、できる限り速やかに、旧労基法に基づく省令制定権限を適切に行使し、罰則をもって上記の義務付けを行って局所排気装置の普及を図るべきであったということができる。

そして、昭和33年には、局所排気装置の設置等に関する実用的な知識及び技術が相当程度普及して石綿工場において有効に機能する局所排気装置を設置することが可能となり、石綿工場に局所排気装置を設置することを義務付けるために必要な実用性のある技術的知見が存在するに至っていたものと解するのが相当である。

また、昭和33年当時、石綿工場において粉じん濃度を測定することができる技術及び有用な粉じん濃度の評価指標が存在しており、局所排気装置の性能要件を設定することも可能であったというべきである。

そうすると、昭和33年通達が発出された同年5月26日には、労働大臣は省令制定権限を行使して石綿工場に局所排気装置を設置することを義務付けることが可能であったということができる。

本件における以上の事情を総合すると、労働大臣は、昭和33年5月26日には、旧労基法に基づく省令制定権限を行使して、罰則をもって石綿工場に局所排気装置を設置することを義務付けるべきであったのであり、旧特化則が制定された昭和46年4月28日まで、労働大臣が旧労基法に基づく上記省令制定権限を行使しなかったことは、旧労基法の趣旨、目的や、その権限の性質等に照らし、著しく合理性を欠くものであって、国家賠償法1条1項の適用上違法であるというべきである。』

と判示しています。よって、本問は妥当です。

 

イ.鉱山労働者が石炭等の粉じんを吸い込んでじん肺による健康被害を受けたことにつき、一定の時点以降、通商産業大臣(当時)が鉱山保安法に基づき粉じん発生防止策の権限を行使しなかったことは、国家賠償法1条1項の適用上違法である。

イ・・・妥当

通商産業大臣が、石炭鉱山でのじん肺(病名)の発生を防止して、鉱山の安全を保つための権限(省令の改正)を行使しなかった事案について、判例(最判平16.4.27)(裁判要旨)によると

炭鉱で粉じん作業に従事した労働者が粉じんの吸入によりじん肺にり患した場合において,炭鉱労働者のじん肺り患の深刻な実情及びじん肺に関する医学的知見の変遷を踏まえて,じん肺を炭じん等の鉱物性粉じんの吸入によって生じたものを広く含むものとして定義し,これを施策の対象とするじん肺法が成立したこと,そのころまでには,さく岩機の湿式型化によりじん肺の発生の原因となる粉じんの発生を著しく抑制することができるとの工学的知見が明らかとなっており,金属鉱山と同様に,すべての石炭鉱山におけるさく岩機の湿式型化を図ることに特段の障害はなかったのに,同法成立の時までに,鉱山保安法に基づく省令の改正を行わず,さく岩機の湿式型化等を一般的な保安規制とはしなかったことなど判示の事実関係の下では,じん肺法が成立した後,通商産業大臣が鉱山保安法に基づく省令改正権限等の保安規制の権限を直ちに行使しなかったことは,国家賠償法1条1項の適用上違法となる。

と判示しています。よって、本問は妥当です。

ウ.宅地建物取引業法に基づき免許を更新された業者が不正行為により個々の取引関係者に対して被害を負わせたことにつき、免許権者である知事が事前に更新を拒否しなかったことは、当該被害者との関係において国家賠償法1条1項の適用上違法である。

ウ・・・妥当ではない

判例(最判平元.11.24)(裁判要旨)によると

宅地建物取引業者に対する知事の免許の付与ないし更新が宅地建物取引業法所定の免許基準に適合しない場合であっても、知事の右行為は、右業者の不正な行為により損害を被った取引関係者に対する関係において直ちに国家賠償法一条一項にいう違法な行為に当たるものではない。

と判示しています。

よって、本問は「違法である」が妥当ではなく、正しくは「違法ではない」です。

 

エ.いわゆる水俣病による健康被害につき、一定の時点以降、健康被害の拡大防止のために、水質規制に関する当時の法律に基づき指定水域の指定等の規制権限を国が行使しなかったことは、国家賠償法1条1項の適用上違法とはならない。

エ・・・妥当ではない

判例(最判平16.10.15)(裁判要旨)によると

国が,昭和34年11月末の時点で,多数の水俣病患者が発生し,死亡者も相当数に上っていると認識していたこと,水俣病の原因物質がある種の有機水銀化合物であり,その排出源が特定の工場のアセトアルデヒド製造施設であることを高度のがい然性をもって認識し得る状況にあったこと,同工場の排水に含まれる微量の水銀の定量分析をすることが可能であったことなど判示の事情の下においては,同年12月末までに,水俣病による深刻な健康被害の拡大防止のために,公共用水域の水質の保全に関する法律及び工場排水等の規制に関する法律に基づいて,指定水域の指定,水質基準及び特定施設の定めをし,上記製造施設からの工場排水についての処理方法の改善,同施設の使用の一時停止その他必要な措置を執ることを命ずるなどの規制権限を行使しなかったことは,国家賠償法1条1項の適用上違法となる。

と判示しています。

よって、本問は「違法とはならない」が妥当ではなく、正しくは「違法となる」です。


令和3年(2021年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政手続法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

時効の基本

時効とは?

時効とは、一定の「事実」が継続する場合に、「事実」が「真実」と異なるときでも、継続した「事実」の法律関係で確定させる制度を言います。

【事例1】 「甲土地の所有者はA」という「真実」に対して、Bが甲土地を一定期間占有し続けたら(=事実)、事実を優先させて、甲土地の所有者はBとなる。(これを「取得時効」という)

【事例2】 CがDに対して100万円を貸した。「CはDに対して100万円を請求する権利を持つ」という「真実」に対して、一定期間CはDに対して請求等をしなかった(請求権を行使しないという「事実」)。この場合、Cの有する請求は消滅してしまう。(これを「消滅時効」という)

時効の要件

時効が成立する要件は下記2つあります。

  1. 時効期間が経過すること(時効が完成するという)
  2. 時効を援用すること

時効期間(要件1)

1の時効が完成する期間については、色々あるので、取得時効と消滅時効で細かく解説します。

時効の援用(要件2)

「時効を援用する」とは、時効の利益を受ける旨の意思表示をすることです。

「時効の利益」とは、上記事例1では、「甲土地の所有権を取得すること」、事例2では「Cの債権が消滅して、100万円を返済しなくてよくなること」です。

つまり、「甲土地の所有権を取得します!」とか「Cの債権を消滅させます!」と主張することが「時効を援用する」ということです。

時効を援用できる者と時効を援用できない者

当事者は、もちろん時効を援用できますが、それ以外でも「時効を援用できる者」がいます。

「援用ができる者」は「時効により直接に利益を受ける者」と判例では示されていましたが、改正民法により「正当な利益を有する者」と規定され、具体的には下記のような者が挙げられます。

時効を援用できる者

  • 保証人、連帯保証人
  • 物上保証人
  • 抵当権の第三取得者
  • 詐害行為の受益者最判平10.6.22

時効を援用できない者(判例)

時効の効果

①時効期間が満了し(時効が完成し)、②当事者が時効を援用すると、その効果は、起算点(時効期間の最初の時点)にさかのぼります(民法144条:遡及効)。

詳細解説は個別指導で解説します。

時効利益の放棄

「時効利益の放棄」とは、時効完成後に、時効の利益を受けない旨の意思表示をすることです。時効利益は時効完成前に放棄することはできません(民法146条)。

時効完成後に債務を承認した場合

時効完成後に債務を承認した場合、時効完成していることを知らなかったとしても、その後、時効を援用することができなくなります最判昭41.4.20)。

理解学習について

行政書士試験に合格するためには、膨大な量の知識を頭に入れる必要があります。そのためには「丸暗記で勉強」しても、覚えて忘れての繰り返しで、一向に実力が上がりません。そのため、着実に実力を上げるためには、理解をしながら勉強することが重要です。

もちろんすべてを理解することは難しいですが、理解すべき部分は理解していけば、膨大な量の知識を頭に入れることが可能です。

個別指導では、理解すべき部分を理解していただくために、「具体例や理由」などを入れて、詳しく分かりやすく解説しています。

また、丸暗記でよいものは、語呂合わせを使ったりして、効率的に覚えていただけるようにしています!

令和3年の合格を目指しているのであれば、是非、個別指導で一緒に勉強をしましょう!

個別指導の概要はこちら>>

参考条文

(時効の効力)
第144条 時効の効力は、その起算日にさかのぼる。

(時効の援用)
第145条 時効は、当事者(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む。)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。

(時効の利益の放棄)
第146条 時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。

取消訴訟の原告適格

原告適格とは、取消訴訟を提起した者が「処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者」であるかどうか?ということです。

処分の相手方は、もちろん取消訴訟を行えますが、「処分の相手方以外の第三者」についても、取消訴訟を行うことができます。この「処分の相手方以外の第三者」が法律上の利益を有していれば、原告適格の要件を満たします。

一方、「処分の相手方以外の第三者」が法律上の利益を有していないのであれば、原告適格の要件を満たさず、却下判決が下されます。

法律上の利益を有する者とは?

法律上の利益を有する者」とは、「処分により自己の権利もしくは法律上保護された利益を侵害されるおそれのある者」と判例では言っています。

そして、「法律上保護された利益」とは、行政法規(法令)で私人の個人的利益が保護されているものを言います。

反射的な利益をもつに過ぎない者は、「法律上保護された利益」を持つとは言えず、原告適格を有する者と認められません。

この点については、下記「主婦連ジュース不当表示事件」で詳しく解説します。

主婦連ジュース不当表示事件(最判昭53.3.14)

商品の表示方法に問題があったとして、消費者(主婦連合会)が訴えたが、景表法はあくまでも一般的抽象的な「公益」を保護しているのであって、「個々人の具体的利益」を保護しているわけではありません。もちろん、公益保護を目的として商品の表示方法について制限を加えた結果、消費者も利益を受けることとなるが、それは、反射的利益でなので、「法律上保護された利益」とは言えないということです。

つまり、個別の法令で
公益利益のみを保護している場合、原告適格なし
個人の個別的利益も保護している場合、原告適格あり
ということです。

「最判昭53.3.14:主婦連ジュース事件」の詳細はこちら>>

原告適格を肯定した判例

  1. 公衆浴場法に基づく営業許可処分(最判昭37.1.19)
  2. 森林法に基づく保安林指定解除処分(最判昭57.9.9)
  3. 航空法に基づく定期航空運送事業免許処分(最判平元.2.17)
  4. 原子炉等規制法に基づく原子炉設置許可処分(最判平4.9.22)
  5. 都市計画法29条に基づく開発許可処分(最判平9.1.28)
  6. 場外車券発売施設設置許可処分における「医療施設の開設者」(最判平21.10.15)

公衆浴場法に基づく営業許可処分(最判昭37.1.19)

公衆浴場は、多数の国民の日常生活に必要不可欠な公共性を伴う厚生施設です。
そして、公衆浴場の設立を業者の自由に委せて、濫立することにより、浴場経営に無用の競争を生じさせ
結果として「浴場の衛生設備の低下」等の影響をきたすことも考えられます。
公衆浴場の性質に鑑み、国民保健及び環境衛生の上から、濫立を防止することが望まく、
公衆浴場法では、公衆浴場を設置する場合、都道府県知事等の許可を受ける必要があるとしています。
つまり、公衆浴場法では、①「国民保健及び環境衛生」という公共の福祉と、②既存業者の経営の不合理化を防止することを目的としているわけです。
したがって、既存業者の営業上の利益は、単なる事実上の反射的利益というにとどまらず公衆浴場法によって保護せられる法的利益と解するのが相当なので、既存業者は、原告適格の要件を満たします。
よって、ある業者に対する公衆浴場の営業許可処分に対して、既存の業者が営業許可の取消訴訟を提起することができます。

「最判昭37.1.19:公衆浴場既存経営者の原告適格」の詳細はこちら>>

森林法に基づく保安林指定解除処分(最判昭57.9.9)

森林法における保安林は、農業用水の確保や、洪水の予防・飲料水の確保を目的としたものです。そして、この保安林によって利益は、公益だけでなく、一定範囲の者の利益(個別的利益)も保護すべき利益と捉えています。
そのため、保安林が指定を解除されたことで、洪水の緩和や水不足の予防に関して直接影響を受ける一定範囲の地域住民は、森林法の「直接の利害関係を有する者」として、保安林の指定解除処分に関する取消訴訟の原告適格があります

航空法に基づく定期航空運送事業免許処分(最判平元.2.17)

定期航空運送事業の免許により、周辺住民は騒音被害を受けることになります。
そして、定期航空運送事業免許の審査において、航空機の騒音による障害の防止の観点から、
航空機の航行による騒音障害の有無及び程度も審査基準とされています。
これは、単に飛行場周辺の環境上の利益を一般的公益として保護しようとするにとどまらず、
「飛行場周辺に居住する者が航空機の騒音によって著しい障害を受けないという利益」を周辺住民の個別的利益としても保護すべきとする趣旨を含むものと解することができるので、騒音による障害が著しい程度に至った周辺住民については、原告適格があるとしています。

「最判平元.2.17:航空法に基づく定期航空運送事業免許処分」の詳細はこちら>>

原子炉等規制法に基づく原子炉設置許可処分(最判平4.9.22)

原子炉等規制法は、単に公衆の生命、身体の安全、環境上の利益を一般的公益として保護しようとするにとどまらず、住民の生命、身体の安全等を個々人の個別的利益としても保護すべきとあります。
つまり、原子炉の設置により重大な被害を受けることが想定される範囲の周辺住民について、原告適格を認めています。

「最判平4.9.22:原子炉設置許可処分と原告適格」の詳細はこちら>>

都市計画法29条に基づく開発許可処分(最判平9.1.28)

大規模な土地の工事を行う許可が開発許可です。そして、都市計画法33条1項7号は、この開発許可によって、がけ崩れなどによる被害が直接的に及ぶことが想定される開発区域内外の一定範囲の住民の生命、身体の安全等を、個々人の個別具体的な利益として保護する趣旨を含みます。
よって、近隣住民は、法律上の利益を有する者として、原告適格を認めています

場外車券発売施設設置許可処分における「医療施設の開設者」(最判平21.10.15)

位置基準は、一般的公益を保護する趣旨に加えて、上記のような業務上の支障が具体的に生ずるおそれのある医療施設等の開設者において、健全で静穏な環境の下で円滑に業務を行うことのできる利益を、個々の開設者の個別的利益として保護する趣旨をも含む規定であるというべきである。

したがって、当該場外施設の設置、運営に伴い著しい業務上の支障が生ずるおそれがあると位置的に認められる区域に医療施設等を開設する者は、位置基準を根拠として当該場外施設の設置許可の取消しを求める原告適格を有するものと解される。

「最判平21.10.15:場外車券発売施設設置許可処分」の詳細はこちら>>

原告適格を否定した判例

  1. 主婦連ジュース不当表示事件(最判昭53.3.14)
  2. 町名変更決定(最判昭48.1.19)
  3. 特急料金決定認可処分(最判平元.4.13)
  4. 場外車券発売施設設置許可処分における周辺住民、事業者、医療施設の利用者(最判平21.10.15)

町名変更決定(最判昭48.1.19)

町名は、住民の日常生活にとって密接な関係を持つものであるが、利益・不利益は事実上のものであるにすぎず、「現在の町名をみだりに変更されない」という利益が法的に保障されているわけではないので、当該区域内の住民に原告適格は認められない

特急料金決定認可処分(最判平元.4.13)

地方鉄道法21条では、地方鉄道における運賃、料金の定め、変更につき監督官庁の認可を受けさせることとしているが、同条の趣旨は公共の利益を確保することにあるのであって、当該地方鉄道の利用者の個別的な権利利益を保護することにあるのではなく、他に同条が当該地方鉄道の利用者の個別的な権利利益を保護することを目的として認可権の行使に制約を課していると解すべき根拠はない
そのため、地方鉄道の路線の周辺に居住し、通勤定期券を購入するなどして日常的に特急列車を利用している者であっても、特急料金の改定(値上げ)の認可処分について、その取消しを求める原告適格は認められない

「最判平元.4.13:特急料金改定の認可処分」の詳細はこちら>>

場外車券発売施設設置許可処分における周辺住民、事業者、医療施設の利用者(最判平21.10.15)

自転車競技法及び規則が位置基準によって保護しようとしているのは、第一次的には、上記のような不特定多数者の利益であるところ、それは、性質上、一般的公益に属する利益であって、原告適格を基礎付けるには足りないものであるといわざるを得ない。

したがって、場外施設の周辺において居住し又は事業(医療施設等に係る事業を除く。)を営むにすぎない者や、医療施設等の利用者は、位置基準を根拠として場外施設の設置許可の取消しを求める原告適格を有しないものと解される。

「最判平21.10.15:場外車券発売施設設置許可処分」の詳細はこちら>>

<<取消訴訟の処分性 | 取消訴訟の訴えの利益(狭義)>>

平成23年・2011|問34|民法・請負契約

改正民法に対応済

次のア~エの記述は、木造建物建築工事についての発注者Aと受注者Bとの間で締結された請負契約の約定の一部である。このうち、約定の内容が、民法の規定の内容と異なるもの、または民法に規定されていないものの組合せとして妥当なものはどれか。

ア.Aの請負代金の支払いは、Bの本契約の目的物の引渡しと同時になされるものとする。

イ.Aは、本契約の目的物に瑕疵があるときは、その瑕疵の補修(修補)に代え、または補修(修補)とともに、瑕疵に基づく損害賠償をBに求めることができる。

ウ.工事の遅延が、不可抗力によるとき、または正当な理由があるときは、Bは、速やかにその事由を示して、Aに工期の延長を求めることができる。

エ.Bの責めに帰すことができない工事の遅延または中止があるときは、Bは、この契約を解除することができる。

  1. ア・イ
  2. ア・エ
  3. イ・ウ
  4. イ・エ
  5. ウ・エ

>解答と解説はこちら

改正民法に対応済

【答え】:5

【解説】

木造建物建築工事についての発注者Aと受注者Bとの間で締結された請負契約の約定の一部である。下記約定の内容が、民法の規定の内容と異なるもの、または民法に規定されていないものはどれか。

ア.Aの請負代金の支払いは、Bの本契約の目的物の引渡しと同時になされるものとする。

ア・・・民法に規定されている

報酬は、仕事の目的物の引渡し同時に、支払わなければなりません(民法633条本文)。

よって、本肢は民法に規定されています。

木造建物建築工事についての発注者Aと受注者Bとの間で締結された請負契約の約定の一部である。下記約定の内容が、民法の規定の内容と異なるもの、または民法に規定されていないものはどれか。

イ.Aは、本契約の目的物に瑕疵があるときは、その瑕疵の補修(修補)に代え、または補修(修補)とともに、瑕疵に基づく損害賠償をBに求めることができる。

イ・・・民法に規定されている

引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができます(民法562条1項本文)。

そして、上記と併せて、「第415条の規定による損害賠償の請求」並びに「第541条及び第542条の規定による解除権」を行使できます。

これらは、請負契約にも準用されます。(559条)

したがって、本肢は民法に規定されています。

木造建物建築工事についての発注者Aと受注者Bとの間で締結された請負契約の約定の一部である。下記約定の内容が、民法の規定の内容と異なるもの、または民法に規定されていないものはどれか。

ウ.工事の遅延が、不可抗力によるとき、または正当な理由があるときは、Bは、速やかにその事由を示して、Aに工期の延長を求めることができる。

ウ・・・民法に規定されていない

「工期の延長の請求」については、民法に規定されていません。

木造建物建築工事についての発注者Aと受注者Bとの間で締結された請負契約の約定の一部である。下記約定の内容が、民法の規定の内容と異なるもの、または民法に規定されていないものはどれか。

エ.Bの責めに帰すことができない工事の遅延または中止があるときは、Bは、この契約を解除することができる。

エ・・・民法に規定されていない

注文者が破産手続開始の決定を受けたときは、請負人又は破産管財人は、契約の解除をすることができます民法642条1項本文)。

「工事の遅延または中止」を理由に、請負人Bから解除することはできる旨の規定は民法にはありません。


平成23年度(2011年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 新しい人権 問33 民法・債権
問4 参政権 問34 民法:債権
問5 精神的自由 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 法改正により削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

令和2年・2020|問48|一般知識

「フランス人権宣言」に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 個人の権利としての人権を否定して、フランスの第三身分の階級的な権利を宣言したものである。
  2. 人権の不知、忘却または蔑視が、公共の不幸と政府の腐敗の原因に他ならない、とされている。
  3. 人は生まれながらに不平等ではあるが、教育をすることによって人としての権利を得る、とされている。
  4. あらゆる主権の源泉は、神や国王あるいは国民ではなく、本質的に領土に由来する、とされている。
  5. 権利の保障が確保されず、権力の分立が規定されないすべての社会は公の武力を持ってはならない、とされている。

>解答と解説はこちら


【答え】:2

【解説】

1.個人の権利としての人権を否定して、フランスの第三身分の階級的な権利を宣言したものである。
1・・・妥当ではない

フランス人権宣言は、「アメリカ独立宣言」や「ルソーの思想」などの影響を受けて1789年に採択されました。

内容としては、「国民の自由と平等、国民主権、市民の立法参加権、罪刑法定主義、権力分立、私有財産の不可侵などを規定しています。

つまり、「個人の権利としての人権を肯定」しているので、「個人の権利としての人権を否定」は妥当ではないです。

また、「フランスの第三身分の階級的な権利を宣言」していません。

2.人権の不知、忘却または蔑視が、公共の不幸と政府の腐敗の原因に他ならない、とされている。

2・・・妥当

フランス人権宣言の前文には

「国民議会として構成されたフランス人民の代表者たちは、人の権利に対する無知、忘却、または軽視が、公の不幸と政府の腐敗の唯一の原因であることを考慮し、人の譲りわたすことのできない神聖な自然的権利を、厳粛な宣言において提示することを決意した。」

と規定されています。

つまり、「人の権利に対する無知、忘却、または軽視」は、「公の不幸と政府の腐敗」の唯一の原因であると言っています。

よって、妥当です。

3.人は生まれながらに不平等ではあるが、教育をすることによって人としての権利を得る、とされている。
3・・・妥当ではない

フランス人権宣言の1条と6条にはそれぞれ

「人は、自由、かつ、権利において平等なものとして生まれ、生存する。社会的差別は、共同の利益に基づくものでなければ、設けられない。(1条)」

「すべての市民は、法律の前に平等であるから、その能力にしたがって、かつ、その徳行と才能以外の差別なしに、等しく、すべての位階、地位および公職に就くことができる。(6条)」

と規定しています。

つまり、「市民は全員平等」だといっているので

本肢は全文妥当ではありません。

4.あらゆる主権の源泉は、神や国王あるいは国民ではなく、本質的に領土に由来する、とされている。
4・・・妥当ではない

フランス人権宣言の3条には

「すべての主権の源(みなもと)は、本質的に国民にある。いかなる団体も、いかなる個人も、国民から明示的に発しない権威を行使することはできない。」

と規定しています。

つまり、本肢は「主権の源は、領土にある」としているので妥当ではないです。

5.権利の保障が確保されず、権力の分立が規定されないすべての社会は公の武力を持ってはならない、とされている。
5・・・妥当ではない

フランス人権宣言の12条には

「人および市民の権利の保障は、公の武力を必要とする。したがって、この武力は、すべての者の利益のために設けられるのであり、それが委託される者の特定の利益のために設けられるのではない。」

と規定されています。

つまり、「公の武力を持つ」ことは肯定しています。

よって妥当ではありません。

フランス人権宣言の16条には

「権利の保障が確保されず、権力の分立が定められていないすべての社会は、憲法をもたない。」

と規定されています。

なので、本肢の「公の武力を持ってはならない」を「憲法をもたない」に変えると、妥当な記述になります。

この16条については、

権利保障がなく、権力分立がしていない社会は、憲法があっても、それは意味のない憲法だということを宣言しています。


令和2年(2020年)過去問

問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 基礎法学 問33 民法:債権
問4 憲法 問34 民法:債権
問5 憲法 問35 民法:親族
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・経済
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 情報公開法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:物権 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

無権代理と相続の関係

今回は、無権代理人が無権代理行為を行い、その後
「無権代理人が死亡し、本人が相続した場合」と
「本人が死亡して無権代理人が相続した場合」、さらには
「無権代理人が死亡し、その後、無権代理人を相続した本人も死亡した場合」の3つに分けて考えます。

無権代理人が死亡し、本人が相続した場合

【事例】 例えば、父親A(本人)が土地を所有していて、息子B(無権代理人)が、この土地をX(相手方)に売却した。

単独相続

上記事例で、無権代理人Bが死亡し、本人Aが単独で相続した場合、本人Aが、無権代理人Bの債務を相続するが、本人Aが追認拒絶をしたとしても、信義則に反しないため、本人Aは追認拒絶ができます。しかし、無権代理人Bの責任は相続するので、本人Aは、損害賠償債務は負います最判昭37.4.20)。

共同相続

上記事例で、無権代理人Bが死亡し、本人AとC(例えば母親)が共同相続した場合、本人Aは、上記単独相続同様、本人Aは追認拒絶ができます。しかし、無権代理人Bの責任は相続するので、本人Aは、損害賠償債務は負います

また、Cも同様、無権代理人Bを相続するので、損害賠償債務を負います(最判昭48.7.3)。

本人が死亡して無権代理人が相続した場合

【事例】 例えば、父親A(本人)が土地を所有していて、息子B(無権代理人)が、この土地をX(相手方)に売却した(上記同様)。

単独相続

上記事例で、本人Aが死亡し、無権代理人Bが単独で相続した場合、無権代理人Bが自ら無権代理行為を行っているため、無権代理効は当然に有効な法律行為となります(最判昭40.6.18)。

共同相続

上記事例で、本人Aが死亡し、無権代理人BとC(例えば母親)が共同相続した場合、本人が有する追認権は、BとC共に相続し、不可分なので、①C(他の相続人全員)の追認がない限り、無権代理行為は有効とはなりません。また、

C(他の相続人全員)が追認している場合、無権代理人Bは追認拒絶はできません

無権代理人が死亡し、その後、無権代理人を相続した本人も死亡した場合

【事例】 例えば、父親A(本人)が土地を所有していて、息子B(無権代理人)が、この土地をX(相手方)に売却した(上記同様)。無権代理人Bが死亡し、本人AとCが共同で相続した。その後、本人Aが死亡し、Cが本人Aを相続した。

Cは、無権代理人Bの地位を包括的に承継していることに変わりはないから、追認拒絶はできない最判昭63.3.1)。

詳細解説は個別指導で解説します!

理解学習について

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行政上の強制手段

行政の目的を達成するために、国民に任意にしてもらいたい場合や、義務として行ってもらいたい場合があります。それにも関わらず、国民が思うように行ってくれないときに、行政機関は行政上の強制手段を発動して、行政の目的を達成させることができます。

例えば、お酒の飲みすぎで、路上で寝ている人がいた場合、このまま放ってい置いては、車を運転する人の迷惑になります。そのために、警察官が、路上で寝ている人を、強制的に安全な場所に運びます。これも行政上の強制手段です。その他にも色々あるので、その点を解説していきます。

行政上の強制手段には、大きく分けて「行政強制」と「行政罰」の2つに分けることができます。

行政強制と行政罰

行政強制とは、将来に向けて、行政目的を達成するための行為です。

一方、
行政罰は、過去の義務違反に対する制裁です。

行政強制はさらに、行政上の強制執行(①代執行・②執行罰・③直接強制・④行政上の強制徴収)と即時強制に分けることができます。

行政上の強制執行と即時強制の違い

行政上の強制執行は、義務が課されているにもかかわらず、その義務を履行しない場合に、行政庁が実力行使して義務を履行させます。

一方、
即時強制は、義務が課されていないけど、相手方の身体や財産に実力行使することです。上の例にもある、路上で寝ている人がいた場合に、警察官が安全な場所に移動させる行為が即時強制です。

行政上の強制執行

行政上の強制執行は、①代執行・②執行罰・③直接強制・④行政上の強制徴収の4種類あるのですが、どれも、義務が課されているにもかかわらず、その義務を履行しない場合の話です。そして、上記4つすべてについて言えることは、法律の根拠がなければ行うことができないということです。それでは、具体例を使いながら解説していきます。

代執行

代執行とは、代替的作為義務が履行されない場合に、「行政庁もしくは第三者」が自ら、義務者に代わって義務を履行し、その費用を義務者から徴収することを言います。

例えば、Aが所有する建物が建築基準法違反で、いつ倒壊してもおかしくない状況にあったとします。

この場合、市長は、Aに対して「建物を除去しなさい!」と除去命令が下すことができます。

この除去命令を受けたAは、除去する義務が発生します。それでも、Aが、建物を除去しない場合、

(Ⅰ)市長(行政庁)は「1か月以内に除去しないのであれば、代執行(市が強制的に除去)をします!」と文書で戒告(お知らせ)をします。

(Ⅱ)それでもAが除去しない場合、「それでは、代執行を行います!」と代執行令書を使って、Aに通知します。

(Ⅲ)市は、代執行を行います(強制的に、建物の取り壊しを行う)。

(Ⅳ)かかった費用については、Aから徴収します。

ここで行政書士試験で出題される内容は、上記の細かい流れです。

(Ⅰ)文書で戒告・(Ⅱ)代執行令書による通知

行政庁は、相当期間を定めて、文書で戒告します。ただし、例外として、非常の場合、または、危険切迫の場合は、(Ⅰ)戒告と(Ⅱ)代執行令書による通知を省略できます。

(Ⅲ)代執行

代執行を実際に行う執行責任者は、証票を携帯し、要求があるときは、いつでもこれを呈示しなければなりません。

(Ⅳ)費用の徴収

代執行に実際に要した費用を、納期日を定め、義務者に対して、文書をもって納付を命じます。期限内に納付がない場合は、国税滞納処分の例により、義務者から強制徴収をすることができます。

※国税滞納処分の例とは、「国税徴収法に規定されている、納税義務者が納税しない場合の手続きに従って」という意味です。

執行罰

執行罰とは、義務の不履行に対して、過料を科すことを予告し、その予告によって、義務者に心理的圧迫を加えて間接的に義務の履行を強制することを言います。

「罰」という漢字が含まれていますが、「罰」ではありません。もし、義務を履行すれば、過料を取られることはないからです。ただし、義務を履行しないと、何度も過料を科されることがあるので注意が必要です。イメージとしては、DVDの延滞料です。DVDを期限までに返却すれば延滞料を取られませんが、延滞すると、毎日、延滞料がずっと科されます。

実際、執行罰は、砂防法36条しかありません。

砂防法36条 私人ニ於テ此ノ法律若ハ此ノ法律ニ基キテ発スル命令ニ依ル義務ヲ怠ルトキハ国土交通大臣若ハ都道府県知事ハ一定ノ期限ヲ示シ若シ期限内ニ履行セサルトキ若ハ之ヲ履行スルモ不充分ナルトキハ五百円以内ニ於テ指定シタル過料ニ処スルコトヲ予告シテ其ノ履行ヲ命スルコトヲ得

砂防法等の命令による義務を怠ると、国土交通大臣もしくは知事は、一定期限を示す等して、500円以内の過料に処することを予告して、履行を命ずることができる

執行罰は、行政刑罰と併科しても二重処罰の禁止規定(憲法39条後段)には違反しません

直接強制

直接強制とは、行政上の義務を義務者が履行しない場合に、行政庁が、義務者の身体又は財産に実力を加えて、義務の履行があったとみなす行為を言います。有名な事例は、成田国際空港の安全確保に関する緊急措置法3条です。

1項 国土交通大臣は、規制区域内に所在する建築物その他の工作物について、その工作物が次の各号に掲げる用に供され、又は供されるおそれがあると認めるときは、当該工作物の所有者、管理者又は占有者に対して、期限を付して、当該工作物をその用に供することを禁止することを命ずることができる。
一 多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用
二 暴力主義的破壊活動等に使用され、又は使用されるおそれがあると認められる爆発物、火炎びん等の物の製造又は保管の場所の用
三 成田国際空港又はその周辺における航空機の航行に対する暴力主義的破壊活動者による妨害の用

6項 国土交通大臣は、第一項の禁止命令に係る工作物が当該命令に違反して同項各号に掲げる用に供されていると認めるときは、当該工作物について封鎖その他その用に供させないために必要な措置(建物の実力封鎖)を講ずることができる

行政上の強制徴収

行政上の強制徴収とは、国民が、行政上の金銭納付義務を履行しない場合に、行政庁が、自ら強制的に徴収し、当該国民は義務を果たしたことにすることを言います。

例えば、税金を滞納している人がいた場合、滞納者の財産を差押えて、競売にかけて得られた代金で納税することが強制徴収です。

行政上の金銭納付義務とは

道路占有料河川占有料放置違反金等があります。

水道料金は民事上の話なので、民事上の強制執行の対象となるので注意しましょう!

また、行政上の金銭納付義務については、行政上の強制徴収の手段によって行う必要があり、民事上の強制執行によって行うことはできません

即時強制

即時強制とは、義務を命じる余裕のない緊急の必要がある場合に、行政機関が、国民に義務を課することなく、国民の身体や財産に実力行使することを言います。

上記の通り、国民の身体や財産に実力行使するので、即時強制を行うには「法律の根拠」もしくは「条例で定めていること」が必要です。

例えば、路上で寝ている人がいた場合に、「起きて路上から離れてください!」と義務を命じていては、それまでに車にひかれてしまうかもしれません。緊急で路上から離れさせる必要があります。実際、警察官職務執行法の3条に上記内容が規定されています。

第三条 警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して左の各号の一に該当することが明らかであり、且つ、応急の救護を要すると信ずるに足りる相当な理由のある者を発見したときは、とりあえず警察署、病院、精神病者収容施設、救護施設等の適当な場所において、これを保護しなければならない。
一 精神錯乱又はでい酔のため、自己又は他人の生命、身体又は財産に危害を及ぼす虞(おそれ)のある者
二 迷い子、病人、負傷者等で適当な保護者を伴わず、応急の救護を要すると認められる者(本人がこれを拒んだ場合を除く。)

行政罰

行政罰とは、過去の義務違反に対する制裁です。そして、行政罰には「行政刑罰」と「行政上の秩序罰」の2つがあります。

※公務員に対する懲戒解雇などは「懲戒罰」なので、行政罰ではありません。

執行罰と行政罰の違い

執行罰は、行政強制の一つなので、将来に向けて、行政目的を達成するための行為です。簡単にいえば、将来、義務を履行しないと罰を加えますよ!という内容です。

一方、
行政罰は、過去の義務違反に対する制裁です。もうすでに、義務違反をしたから、それに対して罰を加えます!という内容です。

行政刑罰

行政刑罰とは、刑法に定めのある刑罰を科すものを言います。具体的には、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料です。そして、行政刑罰は、刑法総則の規定が適用され、刑事訴訟法の定める手続きによって科されることになります。ただし、例外的に、大量に生じる軽微な違反事件(例えば、国税犯則取締法に基づく通告処分等)は刑事訴訟法によらない簡易的な手続きが定められています。

また、行政刑罰の特徴として、違反行為者のほか、その使用主や事業主も科刑される「両罰規定」が置かれていることが多いです。例えば、宅建業法84条です。

第84条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
一 第79条又は第79条の2 一億円以下の罰金刑

第79条 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 不正の手段によって免許を受けた場合
二 無免許で宅建業を営んだ場合
三 自己の名義をもって他人に宅建業を営ませた場合
四 業務の停止命令に違反して業務を営んだ場合

第79条の2 重要事項について故意に事実を告げず、または不実のことを告げた者は、二年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

行政上の秩序罰

行政上の秩序罰とは、形式的で軽微な行政上の義務違反に対して課される過料のことです。例えば、届出義務や登録義務、通知義務に違反した場合です。

そして、科料は刑罰ですが、過料は刑罰ではありません。そのため、
法令に基づく過料は、非訟事件手続法によって地方裁判所が科します。

一方、地方公共団体の条例や規則に違反した場合、地方自治法の定めに基づいて、地方公共団体の長が行政処分として科します。

そして、「秩序罰による過料」と「行政刑罰」は、目的や要件が異なるため併科してもよいです。

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  • 行政立法(法規命令:執行命令・委任命令)(行政規則:訓令・通達)

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