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令和3年・2021|問34|民法

不法行為に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. 訴訟上の因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであり、その判定は、通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、かつ、それで足りる。
  2. 損害賠償の額を定めるにあたり、被害者が平均的な体格ないし通常の体質と異なる身体的特徴を有していたとしても、身体的特徴が疾患に当たらない場合には、特段の事情の存しない限り、被害者の身体的特徴を斟酌(しんしゃく)することはできない。
  3. 過失相殺において、被害者たる未成年の過失を斟酌する場合には、未成年者に事理を弁識するに足る知能が具わっていれば足りる。
  4. 不法行為の被侵害利益としての名誉とは、人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価であり、名誉毀損とは、この客観的な社会的評価を低下させる行為をいう。
  5. 不法行為における故意・過失を認定するにあたり、医療過誤事件では診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準をもって、どの医療機関であっても一律に判断される。

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【答え】:5
【解説】
1.訴訟上の因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照ら
して全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであり、その判定は、通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、かつ、それで足りる。

1・・・妥当

判例(最判昭50.10.24)によると

『訴訟上の因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性(確実性)を証明することであり、その判定は、通常人が疑を差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、かつ、それで足りるものである。 』

と判示しています。よって、本問は妥当です。

 

2.損害賠償の額を定めるにあたり、被害者が平均的な体格ないし通常の体質と異なる身体的特徴
を有していたとしても、身体的特徴が疾患に当たらない場合には、特段の事情の存しない限り、被害者の身体的特徴を斟酌(しんしゃく)することはできない。

2・・・妥当

判例(最判平8.10.29)によると

不法行為により傷害を被った被害者が平均的な体格ないし通常の体質と異なる身体的特徴を有しており(首が長かった)、これが、加害行為(交通事故)と競合して傷害を発生させ、又は損害の拡大に寄与したとしても、右身体的特徴が疾患(頸椎ねんざ:けいついねんざ)に当たらないときは、特段の事情がない限り、これを損害賠償の額を定めるに当たりしんしゃく(考慮)することはできない。

と判示しています。よって、本問は妥当です。

 

3.過失相殺において、被害者たる未成年の過失を斟酌する場合には、未成年者に事理を弁識する
に足る知能が具わっていれば足りる。

3・・・妥当

被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができます(民法722条2項)。

そして、判例(最大判昭39.6.24)によると

民法第722条第2項により被害者の過失を斟酌(しんしゃく:考慮)するには、被害者たる未成年者が、事理を弁識するに足る知能を具えていれば足り行為の責任を弁識するに足る知能を具えていることを要しないものと解すべきである。

と判示しています。よって、本問は妥当です。

本問は理解が必要なので、個別指導で解説します!

 

4.不法行為の被侵害利益としての名誉とは、人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値につい
て社会から受ける客観的評価であり、名誉毀損とは、この客観的な社会的評価を低下させる行為をいう。

4・・・妥当

他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができます(民法723条)。

判例(最判昭45.12.18)によると

民法723条にいう名誉とは、人がその品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的な評価、すなわち社会的名誉を指すものであつて、人が自己自身の人格的価値について有する主観的な評価、すなわち名誉感情は含まないものと解すべきである。

と判示しています。よって、本肢は妥当です。

 

5.不法行為における故意・過失を認定するにあたり、医療過誤事件では診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準をもって、どの医療機関であっても一律に判断される。

5・・・妥当ではない

判例(最判平8.1.23)によると

『人の生命及び健康を管理すべき業務(医業)に従事する者は、その業務の性質に照らし、危険防止のために実験上必要とされる最善の注意義務を要求されるのであるが、

具体的な個々の案件において、債務不履行又は不法行為をもって問われる医師の注意義務の基準となるべきものは、一般的には診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準である。

そして、この臨床医学の実践における医療水準は、全国一律に絶対的な基準として考えるべきものではなく診療に当たった当該医師の専門分野、所属する診療機関の性格、その所在する地域の医療環境の特性等の諸般の事情を考慮して決せられるべきものである

と判示しています。

よって、本問は「臨床医学の実践における医療水準をもって、どの医療機関であっても一律に判断される」が妥当ではありません。

正しくは「臨床医学の実践における医療水準をもって、どの医療機関であっても一律に判断されるものではない」です。

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令和3年(2021年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政手続法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

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