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令和2年・2020|問9|行政法

行政行為(処分)に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 処分に重大かつ明白な瑕疵があり、それが当然に無効とされる場合において、当該瑕疵が明白であるかどうかは、当該処分の外形上、客観的に誤認が一見看取し得るものであるかどうかにより決すべきである。
  2. 行政庁の処分の効力の発生時期については、特別の規定のない限り、その意思表示が相手方に到達した時ではなく、それが行政庁から相手方に向けて発信された時と解するのが相当である。
  3. 課税処分における内容の過誤が課税要件の根幹にかかわる重大なものである場合であっても、当該瑕疵に明白性が認められなければ、当該課税処分が当然に無効となることはない。
  4. 相手方に利益を付与する処分の撤回は、撤回の対象となる当該処分について法令上の根拠規定が定められていたとしても、撤回それ自体について別途、法令上の根拠規定が定められていなければ、適法にすることはできない。
  5. 旧自作農創設特別措置法に基づく農地買収計画の決定に対してなされた訴願を認容する裁決は、これを実質的に見れば、その本質は法律上の争訟を裁判するものであるが、それが処分である以上、他の一般的な処分と同様、裁決庁自らの判断で取り消すことを妨げない。

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【答え】:1
【解説】
1.処分に重大かつ明白な瑕疵があり、それが当然に無効とされる場合において、当該瑕疵が明白であるかどうかは、当該処分の外形上、客観的に誤認が一見看取し得るものであるかどうかにより決すべきである。
1・・・妥当
判例(最判昭36.3.7)によると、「瑕疵が明白であるというのは、処分成立の当初から、誤認であることが外形上、客観的に明白である場合を指すものと解すべきである」としています。
よって、当該瑕疵が明白であるかどうかは、当該処分の外形上、客観的に誤認が一見看取し得るもの(一目で分かるもの)であるかどうかにより決すべきということなので妥当です。
2.行政庁の処分の効力の発生時期については、特別の規定のない限り、その意思表示が相手方に到達した時ではなく、それが行政庁から相手方に向けて発信された時と解するのが相当である。

2・・・妥当ではない
判例(最判昭29.8.24)によると、「行政庁の処分は、特定の規程のない限り、意思表示の一般的法理に従い、その意思表示が相手方に到達した時に、その効果を生ずるものと解すべき」としています。
つまり、本肢の「行政庁の処分の効力の発生時期については、特別の規定のない限り、それが行政庁から相手方に向けて発信された時と解するのが相当である」というのは妥当ではありません。
「発信されたとき」ではなく、「到達した時」です。

3.課税処分における内容の過誤が課税要件の根幹にかかわる重大なものである場合であっても、当該瑕疵に明白性が認められなければ、当該課税処分が当然に無効となることはない。

3・・・妥当ではない

本肢は「当該瑕疵に明白性が認められなければ」が妥当ではありません。

判例(最判昭48.4.26)によると、「課税処分が課税庁と被課税者との間にのみ存するもので、処分の存在を信頼する第三者の保護を考慮する必要のないこと等を勘案すれば、当該処分における内容上の過誤が課税要件の根幹についてのそれであって、徴税行政の安定とその円滑な運営の要請を斟酌してもなお、不服申立期間の徒過による不可争的効果の発生を理由として被課税者に右処分による不利益を甘受させることが、著しく不当と認められるような例外的な事情のある場合には、前記の過誤による瑕疵は、当該処分を当然無効ならしめるものと解するのが相当である」としています。

よって、課税処分が当然に無効となる要件が上記の判例と問題文では異なるので妥当はありません。

この点の詳細解説は個別指導で行います!

4.相手方に利益を付与する処分の撤回は、撤回の対象となる当該処分について法令上の根拠規定が定められていたとしても、撤回それ自体について別途、法令上の根拠規定が定められていなければ、適法にすることはできない。
4・・・妥当ではない
本肢は「定められていなければ、適法にすることはできない」が妥当ではありません。
「定められていなくても、適法にすることができる」が妥当です。

判例(最判昭和63.6.17)によると、
「指定医師の指定の撤回によって上告人(医師)の被る不利益を考慮しても、なおそれを撤回すべき公益上の必要性が高いと認められるから、法令上その撤回について直接明文の規定がなくとも、指定医師の指定の権限を付与されている被上告人医師会は、その権限において上告人(医師)に対する右指定を撤回することができる」としています。

つまり、撤回すべき公益上の必要性が高い場合、「撤回できる」という規定が明文化されていなくても(法令上の根拠がなくても)、処分の権限があれば、その権限で撤回できるということです。

5.旧自作農創設特別措置法に基づく農地買収計画の決定に対してなされた訴願を認容する裁決は、これを実質的に見れば、その本質は法律上の争訟を裁判するものであるが、それが処分である以上、他の一般的な処分と同様、裁決庁自らの判断で取り消すことを妨げない。

5・・・妥当ではない

本肢は、色々理解すべき部分があるので、詳細解説は個別指導で解説します!

本肢は「取り消すことを妨げない(取り消すことができる)」が妥当ではありません。
「原則、取り消すことはできない」が妥当です。

判例(最判昭29.1.21)によると、
「旧自作農創設特別措置法に基づく農地買収計画の決定に対してなされた訴願を認容する裁決が行政処分であることは言うまでもないが、実質的に見ればその本質は法律上の争訟を裁判するものである。憲法76条2項後段によれば、「行政機関は、終審として裁判を行うことができない」のであって、終審としては、裁判所が裁判を行うが、行政機関をして前審として裁判を行わせることは、何等差支えないのである。
本件裁決のごときは、行政機関である上告人が実質的には裁判を行っているのであるが、行政機関がするのでるから行政処分に属するわけである。
かかる(このような)性質を有する裁決は、他の一般行政処分とは異り、特別の規定がない限り、原判決のいうように裁決庁自らにおいて取消すことはできないと解するを相当とする。」としている。

つまり、訴願裁決を出した後に、裁決庁が自分でその裁決を取り消すことは原則できないということです。

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令和2年(2020年)過去問

問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 基礎法学 問33 民法:債権
問4 憲法 問34 民法:債権
問5 憲法 問35 民法:親族
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・経済
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・経済
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・社会
問25 情報公開法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政法 問56 基礎知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:物権 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

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