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無権代理と相続の関係

今回は、無権代理人が無権代理行為を行い、その後
「無権代理人が死亡し、本人が相続した場合」と
「本人が死亡して無権代理人が相続した場合」、さらには
「無権代理人が死亡し、その後、無権代理人を相続した本人も死亡した場合」の3つに分けて考えます。

無権代理人が死亡し、本人が相続した場合

【事例】 例えば、父親A(本人)が土地を所有していて、息子B(無権代理人)が、この土地をX(相手方)に売却した。

単独相続

上記事例で、無権代理人Bが死亡し、本人Aが単独で相続した場合、本人Aが、無権代理人Bの債務を相続するが、本人Aが追認拒絶をしたとしても、信義則に反しないため、本人Aは追認拒絶ができます。しかし、無権代理人Bの責任は相続するので、本人Aは、損害賠償債務は負います最判昭37.4.20)。

共同相続

上記事例で、無権代理人Bが死亡し、本人AとC(例えば母親)が共同相続した場合、本人Aは、上記単独相続同様、本人Aは追認拒絶ができます。しかし、無権代理人Bの責任は相続するので、本人Aは、損害賠償債務は負います

また、Cも同様、無権代理人Bを相続するので、損害賠償債務を負います(最判昭48.7.3)。

本人が死亡して無権代理人が相続した場合

【事例】 例えば、父親A(本人)が土地を所有していて、息子B(無権代理人)が、この土地をX(相手方)に売却した(上記同様)。

単独相続

上記事例で、本人Aが死亡し、無権代理人Bが単独で相続した場合、無権代理人Bが自ら無権代理行為を行っているため、無権代理効は当然に有効な法律行為となります(最判昭40.6.18)。

共同相続

上記事例で、本人Aが死亡し、無権代理人BとC(例えば母親)が共同相続した場合、本人が有する追認権は、BとC共に相続し、不可分なので、①C(他の相続人全員)の追認がない限り、無権代理行為は有効とはなりません。また、

C(他の相続人全員)が追認している場合、無権代理人Bは追認拒絶はできません

無権代理人が死亡し、その後、無権代理人を相続した本人も死亡した場合

【事例】 例えば、父親A(本人)が土地を所有していて、息子B(無権代理人)が、この土地をX(相手方)に売却した(上記同様)。無権代理人Bが死亡し、本人AとCが共同で相続した。その後、本人Aが死亡し、Cが本人Aを相続した。

Cは、無権代理人Bの地位を包括的に承継していることに変わりはないから、追認拒絶はできない最判昭63.3.1)。

詳細解説は個別指導で解説します!

理解学習について

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直接請求

直接請求とは、住民が、地方公共団体に直接、一定の行動を取るように請求することを言い、普通地方公共団体の議会の議員および長の選挙権を有する者が直接請求の権利を持っています。

つまり、外国人は直接請求できません。

上記の通り、直接請求は、住民が、代表者(議員)などを介さずに、地方公共団体の意思決定に直接参加することから直接民主制の一つである。

議会政治(議会で地方公共団体の意思決定を行うこと)は、住民が選挙で選んだ代表者(議員)に意思決定を委託し、間接的に政治参加することから、間接民主制代表民主制の一つです。

直接請求の種類

直接請求には、下記4つがあります。

  1. 条例制定・改廃請求
  2. 事務監査請求
  3. 議会解散請求
  4. 解職請求

あとで、細かく解説しますが、重要ポイントをまとめると下記の通りです。


条例制定・改廃請求

住民は、条例の制定、改正、廃止を請求することができます。

当該地方公共団体の議員・長の選挙権を有する者外国人は除く)は、その総数の50分の1以上の連署により、代表者からに対して、請求できます。

ただし、地方税の賦課徴収、分担金・使用料・手数料の徴収に関する条例については、制定・改廃請求できません

条例制定・改廃請求があったときは、長は、直ちに請求の要旨を公表しなければなりません。

そして、この請求を受領した日から20日以内に議会を招集し、意見を付けて議会に付議(過半数の同意で議決)し、その結果を代表者に通知するとともに、公表しなければなりません。


事務監査請求

住民は、「地方公共団体の事務執行」ならびに「長および各委員会・委員の権限に属する事務執行」について、監査委員に対し、監査請求ができます。

当該地方公共団体の議員・長の選挙権を有する者外国人は除く)は、その総数の50分の1以上の連署により、代表者から監査委員に対して、請求できます。

署名が有効の場合、監査委員はすぐに事務監査(特別監査に該当)を行います。

>>住民監査請求請求との違いはこちら

議会解散請求

住民は、都道府県議会や市町村議会を解散するよう請求できます。

当該地方公共団体の議員・長の選挙権を有する者外国人は除く)は、その総数の3分の1以上の連署により、代表者から選挙管理委員会に対して、請求できます。

議会の解散請求があった場合、選挙管理委員会は、直ちに請求の要旨を公表し、選挙人の投票に(住民投票)に付さなければなりません。

解散の投票で、過半数の同意があった時は、議会は解散することになります。

解職請求

住民は、「議員」「地方公共団体の長」「役員」の解職を請求できます。

この点については、それぞれ内容が異なるので分けて考えます。

議員の解職請求

当該地方公共団体の議員・長の選挙権を有する者外国人は除く)は、その総数の3分の1以上(※1)の連署により、請求できます。

請求先は、その後、選挙が行われるので選挙管理委員会に請求します。

そして、住民投票により、過半数の同意で決し、過半数の同意があれば、議員は解職されます。

※1 有権者総数が40万人以下の場合は、3分の1の連署でよいが、
有権者総数が40万人超の場合は、署名数の要件が緩和されます。どれだけ緩和されるかは行政書士の試験では出題される可能性は低いので覚えなくても大丈夫です。

長の解職請求

長の解職請求は、議員の解職請求と同じです。

当該地方公共団体の議員・長の選挙権を有する者外国人は除く)は、その総数の3分の1以上(※1)の連署により、請求できます。

請求先は、その後、選挙が行われるので選挙管理委員会に請求します。

そして、住民投票により、過半数の同意で決し、過半数の同意があれば、議員は解職されます。

役員の解職請求

役員とは、①副知事・副市町村長、②指定都市の総合区長、③選挙管理委員、④監査委員、⑤公安委員会の委員を指します。

当該地方公共団体の議員・長の選挙権を有する者外国人は除く)は、その総数の3分の1以上(※1)の連署により、請求できます。

請求先は、任命権者である長(知事や市町村長)です。

役員の解職請求があったら、長は、直ちに請求の要旨を公表し、解職請求を議会に付議し、議会議員の3分の2以上の出席、かつ、その4分の3以上の者の同意により議決します。

可決されれば、その役員は役員の職を失います。

そして、長は、可決・否決の結果を解職請求の代表者および関係人に通知し、公表します。

地方公共団体の議会の運営の5つの原則

地方公共団体の議会の運営には下記5つの原則があります。

  1. 会議公開の原則
  2. 定足数の原則
  3. 多数決の原則
  4. 一事不再議の原則
  5. 会期不継続の原則

会議公開の原則

普通地方公共団体の議会の会議は、公開により行います。
ただし、議長または議員3人以上の発議により、出席議員の3分の2以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができます。

定足数の原則

普通地方公共団体の議会は、議員の定数の半数以上の議員が出席しなければ、会議自体開くことができません。

※定足数とは、会議で議事を進め議決するのに必要な最小限の人数です。

多数決の原則

普通地方公共団体の議会の議事は、原則、出席議員の過半数で決定し、可否同数(賛成も反対も同じ数)の場合は、議長が決します。

例外的に特別多数を要するものは下記の通りです。

議員の半数の出席とその3分の2以上の多数の同意
地方公共団体の事務所の位置決定又は変更に関する条例の制定
秘密会の開催
議員の失職、資格決定
条例の制定・改廃または予算に関する再議
条例で定める特に重要な公の施設の廃止、長期かつ独占的な利用をさせること
議員の3分の2の出席過半数の同意
地方公共団体の長に対する再度の不信任議決
議員の3分の2の出席とその4分の3の同意
役員の解職請求に対する同意
議員の除名
地方公共団体の長に対する最初の不信任議決

一事不再議の原則

一度議決された事項は、同一会期中に再度議決してはいけません(再議にかけてはいけない)。これを一事不再議の原則と言います。

会期不継続の原則

会期中に議決に至らなかった事件は、次の会期に継続しません。会期はそれぞれ独立しているということです。

国家賠償と損失補償の全体像

行政書士のここまでの勉強、行政不服審査法行政事件訴訟法と勉強してきました。これらは、争訟による救済制度です。もし、公権力の行使によって、金銭的に損害を受けた場合、行政不服審査法や行政事件訴訟法での救済だけでは不十分です。そのため、国家賠償や損失補償という制度があります。

そもそも、国家賠償法は、憲法17条を受けて制定されました。

憲法17条
何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。

一方、損失補償は、憲法29条3項で定めております。しかし、国家賠償法のように、一般法はなく、個別の法律で損失補償の規定がされています。ただし、たとえ、個別法に損失補償の規定がない場合も、上記憲法29条3項を根拠に(直接適用して)損失補償されることもあります。

憲法29条3項
私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

国家賠償 違法行為による損害の賠償を求める制度
損失補償 適法行為ではあるもの損失を受けた場合に補償を求める制度

そして、国家賠償には、「国家賠償法1条による損害賠償責任」と「国家賠償法2条による損害賠償責任」があります。

1条 公権力の行使について、故意または過失により他人に損害を与えた場合(過失責任
2条 営造物の設置管理の瑕疵により他人に損害を与えた場合(無過失責任

<<行政事件訴訟法 | 国家賠償法1条(公権力の行使に基づく賠償責任)>>

取消訴訟の原告適格

原告適格とは、取消訴訟を提起した者が「処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者」であるかどうか?ということです。

処分の相手方は、もちろん取消訴訟を行えますが、「処分の相手方以外の第三者」についても、取消訴訟を行うことができます。この「処分の相手方以外の第三者」が法律上の利益を有していれば、原告適格の要件を満たします。

一方、「処分の相手方以外の第三者」が法律上の利益を有していないのであれば、原告適格の要件を満たさず、却下判決が下されます。

法律上の利益を有する者とは?

法律上の利益を有する者」とは、「処分により自己の権利もしくは法律上保護された利益を侵害されるおそれのある者」と判例では言っています。

そして、「法律上保護された利益」とは、行政法規(法令)で私人の個人的利益が保護されているものを言います。

反射的な利益をもつに過ぎない者は、「法律上保護された利益」を持つとは言えず、原告適格を有する者と認められません。

この点については、下記「主婦連ジュース不当表示事件」で詳しく解説します。

主婦連ジュース不当表示事件(最判昭53.3.14)

商品の表示方法に問題があったとして、消費者(主婦連合会)が訴えたが、景表法はあくまでも一般的抽象的な「公益」を保護しているのであって、「個々人の具体的利益」を保護しているわけではありません。もちろん、公益保護を目的として商品の表示方法について制限を加えた結果、消費者も利益を受けることとなるが、それは、反射的利益でなので、「法律上保護された利益」とは言えないということです。

つまり、個別の法令で
公益利益のみを保護している場合、原告適格なし
個人の個別的利益も保護している場合、原告適格あり
ということです。

「最判昭53.3.14:主婦連ジュース事件」の詳細はこちら>>

原告適格を肯定した判例

  1. 公衆浴場法に基づく営業許可処分(最判昭37.1.19)
  2. 森林法に基づく保安林指定解除処分(最判昭57.9.9)
  3. 航空法に基づく定期航空運送事業免許処分(最判平元.2.17)
  4. 原子炉等規制法に基づく原子炉設置許可処分(最判平4.9.22)
  5. 都市計画法29条に基づく開発許可処分(最判平9.1.28)
  6. 場外車券発売施設設置許可処分における「医療施設の開設者」(最判平21.10.15)

公衆浴場法に基づく営業許可処分(最判昭37.1.19)

公衆浴場は、多数の国民の日常生活に必要不可欠な公共性を伴う厚生施設です。
そして、公衆浴場の設立を業者の自由に委せて、濫立することにより、浴場経営に無用の競争を生じさせ
結果として「浴場の衛生設備の低下」等の影響をきたすことも考えられます。
公衆浴場の性質に鑑み、国民保健及び環境衛生の上から、濫立を防止することが望まく、
公衆浴場法では、公衆浴場を設置する場合、都道府県知事等の許可を受ける必要があるとしています。
つまり、公衆浴場法では、①「国民保健及び環境衛生」という公共の福祉と、②既存業者の経営の不合理化を防止することを目的としているわけです。
したがって、既存業者の営業上の利益は、単なる事実上の反射的利益というにとどまらず公衆浴場法によって保護せられる法的利益と解するのが相当なので、既存業者は、原告適格の要件を満たします。
よって、ある業者に対する公衆浴場の営業許可処分に対して、既存の業者が営業許可の取消訴訟を提起することができます。

「最判昭37.1.19:公衆浴場既存経営者の原告適格」の詳細はこちら>>

森林法に基づく保安林指定解除処分(最判昭57.9.9)

森林法における保安林は、農業用水の確保や、洪水の予防・飲料水の確保を目的としたものです。そして、この保安林によって利益は、公益だけでなく、一定範囲の者の利益(個別的利益)も保護すべき利益と捉えています。
そのため、保安林が指定を解除されたことで、洪水の緩和や水不足の予防に関して直接影響を受ける一定範囲の地域住民は、森林法の「直接の利害関係を有する者」として、保安林の指定解除処分に関する取消訴訟の原告適格があります

航空法に基づく定期航空運送事業免許処分(最判平元.2.17)

定期航空運送事業の免許により、周辺住民は騒音被害を受けることになります。
そして、定期航空運送事業免許の審査において、航空機の騒音による障害の防止の観点から、
航空機の航行による騒音障害の有無及び程度も審査基準とされています。
これは、単に飛行場周辺の環境上の利益を一般的公益として保護しようとするにとどまらず、
「飛行場周辺に居住する者が航空機の騒音によって著しい障害を受けないという利益」を周辺住民の個別的利益としても保護すべきとする趣旨を含むものと解することができるので、騒音による障害が著しい程度に至った周辺住民については、原告適格があるとしています。

「最判平元.2.17:航空法に基づく定期航空運送事業免許処分」の詳細はこちら>>

原子炉等規制法に基づく原子炉設置許可処分(最判平4.9.22)

原子炉等規制法は、単に公衆の生命、身体の安全、環境上の利益を一般的公益として保護しようとするにとどまらず、住民の生命、身体の安全等を個々人の個別的利益としても保護すべきとあります。
つまり、原子炉の設置により重大な被害を受けることが想定される範囲の周辺住民について、原告適格を認めています。

「最判平4.9.22:原子炉設置許可処分と原告適格」の詳細はこちら>>

都市計画法29条に基づく開発許可処分(最判平9.1.28)

大規模な土地の工事を行う許可が開発許可です。そして、都市計画法33条1項7号は、この開発許可によって、がけ崩れなどによる被害が直接的に及ぶことが想定される開発区域内外の一定範囲の住民の生命、身体の安全等を、個々人の個別具体的な利益として保護する趣旨を含みます。
よって、近隣住民は、法律上の利益を有する者として、原告適格を認めています

場外車券発売施設設置許可処分における「医療施設の開設者」(最判平21.10.15)

位置基準は、一般的公益を保護する趣旨に加えて、上記のような業務上の支障が具体的に生ずるおそれのある医療施設等の開設者において、健全で静穏な環境の下で円滑に業務を行うことのできる利益を、個々の開設者の個別的利益として保護する趣旨をも含む規定であるというべきである。

したがって、当該場外施設の設置、運営に伴い著しい業務上の支障が生ずるおそれがあると位置的に認められる区域に医療施設等を開設する者は、位置基準を根拠として当該場外施設の設置許可の取消しを求める原告適格を有するものと解される。

「最判平21.10.15:場外車券発売施設設置許可処分」の詳細はこちら>>

原告適格を否定した判例

  1. 主婦連ジュース不当表示事件(最判昭53.3.14)
  2. 町名変更決定(最判昭48.1.19)
  3. 特急料金決定認可処分(最判平元.4.13)
  4. 場外車券発売施設設置許可処分における周辺住民、事業者、医療施設の利用者(最判平21.10.15)

町名変更決定(最判昭48.1.19)

町名は、住民の日常生活にとって密接な関係を持つものであるが、利益・不利益は事実上のものであるにすぎず、「現在の町名をみだりに変更されない」という利益が法的に保障されているわけではないので、当該区域内の住民に原告適格は認められない

特急料金決定認可処分(最判平元.4.13)

地方鉄道法21条では、地方鉄道における運賃、料金の定め、変更につき監督官庁の認可を受けさせることとしているが、同条の趣旨は公共の利益を確保することにあるのであって、当該地方鉄道の利用者の個別的な権利利益を保護することにあるのではなく、他に同条が当該地方鉄道の利用者の個別的な権利利益を保護することを目的として認可権の行使に制約を課していると解すべき根拠はない
そのため、地方鉄道の路線の周辺に居住し、通勤定期券を購入するなどして日常的に特急列車を利用している者であっても、特急料金の改定(値上げ)の認可処分について、その取消しを求める原告適格は認められない

「最判平元.4.13:特急料金改定の認可処分」の詳細はこちら>>

場外車券発売施設設置許可処分における周辺住民、事業者、医療施設の利用者(最判平21.10.15)

自転車競技法及び規則が位置基準によって保護しようとしているのは、第一次的には、上記のような不特定多数者の利益であるところ、それは、性質上、一般的公益に属する利益であって、原告適格を基礎付けるには足りないものであるといわざるを得ない。

したがって、場外施設の周辺において居住し又は事業(医療施設等に係る事業を除く。)を営むにすぎない者や、医療施設等の利用者は、位置基準を根拠として場外施設の設置許可の取消しを求める原告適格を有しないものと解される。

「最判平21.10.15:場外車券発売施設設置許可処分」の詳細はこちら>>

<<取消訴訟の処分性 | 取消訴訟の訴えの利益(狭義)>>

取消訴訟の概要|原処分主義、裁決主義

取消訴訟の概要

取消訴訟は、行政庁の処分・裁決について、その全部または一部の取消しを求め、その処分・裁決の法的効力をさかのぼって消滅させる訴えを言います。

行政庁の処分や裁決は、国民の権利義務を一方的に変更する効力があります。この効力は、たとえ違法な処分や裁決であっても、取消しがあるまで、有効とされ(公定力という)、この効力を失わせるには、行政庁が自ら処分や裁決を取り消すか、裁判によって取消判決をもらうことが必要です。

※上記の通り、公定力があるが、行政庁の行った処分に瑕疵がある場合、その瑕疵が重大かつ明白であるときは、当該処分は無効初めから効力を生じない

そのため、国民の権利利益を保護するためにも、取消訴訟は、重要なものとなります。

そして、取消訴訟以外の抗告訴訟(無効確認の訴え、不作為の違法確認の訴え、義務付けの訴え、差止めの訴え)についても、取消訴訟のルールが適用されたりするため、取消訴訟のルールは基本的なルールとしてしっかり頭に入れましょう!

取消訴訟の分類

取消訴訟は、処分の取消しの訴え裁決の取消の訴えの2つがあります。

処分の取消しの訴え

処分の取消しの訴えは、行政庁の処分その他の公権力の行使に当たる行為の取消しを求める訴訟です。

自由選択主義

そして、違法な処分については、審査請求の申立てもできるし、審査請求をせずに処分の取消しの訴えの提起でもよいです。どちらを行ってもよいです。これを自由選択主義と言います。


審査請求前置主義

ただし、個別の法律に、「審査請求に対する裁決を経た後でなければ、処分の取消しの訴えを提起することができない」旨の定めがある場合、審査請求を先に行い、その裁決がなされた後でなければ訴えを提起することはできません。これを審査請求前置主義と言います。


裁決の取消しの訴え

裁決の取消しの訴えは、審査請求や再調査請求等の裁決や決定に対して、取消しを求める訴訟です。

そして、処分の違法を訴える場合、また裁決の違法を訴える場合、「処分の取消しの訴え」と「裁決の取消の訴え」のどちらを行えることができるのか?

行政事件訴訟法では、原則、「原処分主義」を採用しています。

原処分主義

Aが、行政庁から「税金100万円の課税処分」を受けた。Aは、この処分を違法と思い、審査請求を行った。

しかし、審査請求の裁決についても、棄却裁決。

Aが最後の手段として、取消訴訟を行う場合、下記2つのいずれかを行う

処分の違法を主張するのであれば、「処分の取消訴訟」を提起し

裁決の違法を主張するのであれば、「裁決の取消訴訟」を提起しなさい!

ということです。

言い換えれば、処分の違法を主張するのに、裁決の取消訴訟は行えないということです。


裁決主義

裁決主義とは、「処分の違法を争う場合」も「裁決の違法を争う場合」も、「裁決の取消しの訴え」で行うことができるということです。

処分の取消しの訴えでは行うことができません。

<<行政事件訴訟法の概要 | 取消訴訟の訴訟要件>>

行政手続法21条:陳述書等の提出

上図をご覧ください。行政庁は、不利益処分を行う前に、①当事者に対して、聴聞の通知を行います。その後、②行政庁は、職員の中から主宰者(聴聞の運営を行う者)を指名します。また、③主宰者は必要に応じて、参加人の参加許可を行います。

そうすると、当事者と参加人は、聴聞に参加して、不利益処分に対して意見を主張する機会を得ます。そして、行政手続法21条では、聴聞に出席する代わりに、陳述書や証拠書類の提出を行って、自らの意見を主張する方法が認められています。

聴聞における陳述書とは?

陳述書とは、行政庁の不利益処分に対する「言い分や反論」を記載した書面を指します。

行政書士試験では、出題される可能性も高く、内容も易しいのでしっかり頭に入れておきましょう!

(陳述書等の提出)
第21条 当事者又は参加人は、聴聞の期日への出頭に代えて、主宰者に対し、聴聞の期日までに陳述書及び証拠書類等を提出することができる。
2 主宰者は、聴聞の期日に出頭した者に対し、その求めに応じて、前項の陳述書及び証拠書類等を示すことができる。

<<行政手続法20条:聴聞の期日における審理の方式 | 行政手続法22条:続行期日の指定>>

行政手続法14条:不利益処分の理由の提示

行政庁が不利益処分をする場合、原則、その名あて人に対し、同時に不利益処分を行う理由を示さなければなりません
ただし、例外として、処分をすべき差し迫った必要がある場合は、「処分と同時に」理由を示すことは不要です。

もっとも、上記処分をすべき差し迫った必要がある場合でも、原則、処分後相当の期間内に、不利益処分の理由を示さなければなりません
名あて人の所在が判明しなくなったときは、理由を示すことができないので、理由を示す必要はありません

そして、不利益処分を書面で行う場合、理由の提示も書面で行わないといけません。

原則 その名あて人に対し、同時に不利益処分を行う理由を示さなければなりません
例外 処分をすべき差し迫った必要がある場合は、「処分と同時に」理由を示すことは不要
もっとも、処分後相当の期間内に、不利益処分の理由を示さなければならないが
名あて人の所在が判明しなくなったときは、理由を示すことができないので、理由を示す必要はない

行政書士試験におけるポイント

13条の意見陳述の手続き」は、不利益処分前の手続きで
公益上、緊急に不利益処分をする必要があるため、意見陳述のための手続を執ることができないとき、意見陳述(聴聞・弁明の機会)の手続きが不要です。
「14条の不利益処分の理由提示」とは異なり、あとで意見陳述の手続きを取る必要はありません

14条の不利益処分の理由提示」は、上記例外の通り、原則、あとで、不利益処分の理由を示さなければなりません

(不利益処分の理由の提示)
第14条 行政庁は、不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならない。ただし、当該理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場合は、この限りでない。
2 行政庁は、前項ただし書の場合においては、当該名あて人の所在が判明しなくなったときその他処分後において理由を示すことが困難な事情があるときを除き、処分後相当の期間内に、同項の理由を示さなければならない。
3 不利益処分を書面でするときは、前二項の理由は、書面により示さなければならない。

<<行政手続法13条:不利益処分をしようとする場合の手続 | 行政手続法15条:聴聞の通知の方式>>

行政手続法6条:標準処理期間

ここで解説する標準処理期間とは、行政庁が申請を受けて(申請が事務所に到達して)から、許可・不許可の処分を下すまでの期間のことです。

そして、行政手続法では、次の内容がポイントとして行政書士試験で問われます。

申請に対する処分を下すまでの標準処理期間のポイント

  • 申請に対する処分の標準処理期間の起算点は「申請が事務所に到達してから」である
  • 申請に対する処分の標準処理期間は、必ずしも定める必要はない(任意)
    ただし、定めた場合は、必ず、公にしなければならない
  • 法令により当該行政庁と異なる機関Aが当該申請の提出先とされている場合は、併せて、当該申請が当該提出先とされている機関Aの事務所に到達してから当該行政庁の事務所に到達するまでに通常要すべき標準的な期間も定めるよう努める(任意)。

行政手続法(標準処理期間)
第6条 行政庁は、申請がその事務所に到達してから当該申請に対する処分をするまでに通常要すべき標準的な期間(法令により当該行政庁と異なる機関が当該申請の提出先とされている場合は、併せて、当該申請が当該提出先とされている機関の事務所に到達してから当該行政庁の事務所に到達するまでに通常要すべき標準的な期間)を定めるよう努めるとともに、これを定めたときは、これらの当該申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により公にしておかなければならない

<<行政手続法5条:審査基準 | 行政手続法7条:申請に対する審査、応答>>

行政上の強制手段

行政の目的を達成するために、国民に任意にしてもらいたい場合や、義務として行ってもらいたい場合があります。それにも関わらず、国民が思うように行ってくれないときに、行政機関は行政上の強制手段を発動して、行政の目的を達成させることができます。

例えば、お酒の飲みすぎで、路上で寝ている人がいた場合、このまま放ってい置いては、車を運転する人の迷惑になります。そのために、警察官が、路上で寝ている人を、強制的に安全な場所に運びます。これも行政上の強制手段です。その他にも色々あるので、その点を解説していきます。

行政上の強制手段には、大きく分けて「行政強制」と「行政罰」の2つに分けることができます。

行政強制と行政罰

行政強制とは、将来に向けて、行政目的を達成するための行為です。

一方、
行政罰は、過去の義務違反に対する制裁です。

行政強制はさらに、行政上の強制執行(①代執行・②執行罰・③直接強制・④行政上の強制徴収)と即時強制に分けることができます。

行政上の強制執行と即時強制の違い

行政上の強制執行は、義務が課されているにもかかわらず、その義務を履行しない場合に、行政庁が実力行使して義務を履行させます。

一方、
即時強制は、義務が課されていないけど、相手方の身体や財産に実力行使することです。上の例にもある、路上で寝ている人がいた場合に、警察官が安全な場所に移動させる行為が即時強制です。

行政上の強制執行

行政上の強制執行は、①代執行・②執行罰・③直接強制・④行政上の強制徴収の4種類あるのですが、どれも、義務が課されているにもかかわらず、その義務を履行しない場合の話です。そして、上記4つすべてについて言えることは、法律の根拠がなければ行うことができないということです。それでは、具体例を使いながら解説していきます。

代執行

 

代執行とは、代替的作為義務が履行されない場合に、「行政庁もしくは第三者」が自ら、義務者に代わって義務を履行し、その費用を義務者から徴収することを言います。

例えば、Aが所有する建物が建築基準法違反で、いつ倒壊してもおかしくない状況にあったとします。

この場合、市長は、Aに対して「建物を除去しなさい!」と除去命令が下すことができます。

この除去命令を受けたAは、除去する義務が発生します。それでも、Aが、建物を除去しない場合、

(Ⅰ)市長(行政庁)は「1か月以内に除去しないのであれば、代執行(市が強制的に除去)をします!」と文書で戒告(お知らせ)をします。

(Ⅱ)それでもAが除去しない場合、「それでは、代執行を行います!」と代執行令書を使って、Aに通知します。

(Ⅲ)市は、代執行を行います(強制的に、建物の取り壊しを行う)。

(Ⅳ)かかった費用については、Aから徴収します。

ここで行政書士試験で出題される内容は、上記の細かい流れです。

(Ⅰ)文書で戒告・(Ⅱ)代執行令書による通知

行政庁は、相当期間を定めて、文書で戒告します。ただし、例外として、非常の場合、または、危険切迫の場合は、(Ⅰ)戒告と(Ⅱ)代執行令書による通知を省略できます。

(Ⅲ)代執行

代執行を実際に行う執行責任者は、証票を携帯し、要求があるときは、いつでもこれを呈示しなければなりません。

(Ⅳ)費用の徴収

代執行に実際に要した費用を、納期日を定め、義務者に対して、文書をもって納付を命じます。期限内に納付がない場合は、国税滞納処分の例により、義務者から強制徴収をすることができます。

※国税滞納処分の例とは、「国税徴収法に規定されている、納税義務者が納税しない場合の手続きに従って」という意味です。

執行罰

執行罰とは、義務の不履行に対して、過料を科すことを予告し、その予告によって、義務者に心理的圧迫を加えて間接的に義務の履行を強制することを言います。

「罰」という漢字が含まれていますが、「罰」ではありません。もし、義務を履行すれば、過料を取られることはないからです。ただし、義務を履行しないと、何度も過料を科されることがあるので注意が必要です。イメージとしては、DVDの延滞料です。DVDを期限までに返却すれば延滞料を取られませんが、延滞すると、毎日、延滞料がずっと科されます。

実際、執行罰は、砂防法36条しかありません。

砂防法36条 私人ニ於テ此ノ法律若ハ此ノ法律ニ基キテ発スル命令ニ依ル義務ヲ怠ルトキハ国土交通大臣若ハ都道府県知事ハ一定ノ期限ヲ示シ若シ期限内ニ履行セサルトキ若ハ之ヲ履行スルモ不充分ナルトキハ五百円以内ニ於テ指定シタル過料ニ処スルコトヲ予告シテ其ノ履行ヲ命スルコトヲ得

砂防法等の命令による義務を怠ると、国土交通大臣もしくは知事は、一定期限を示す等して、500円以内の過料に処することを予告して、履行を命ずることができる

執行罰は、行政刑罰と併科しても二重処罰の禁止規定(憲法39条後段)には違反しません

直接強制

直接強制とは、行政上の義務を義務者が履行しない場合に、行政庁が、義務者の身体又は財産に実力を加えて、義務の履行があったとみなす行為を言います。有名な事例は、成田国際空港の安全確保に関する緊急措置法3条です。

1項 国土交通大臣は、規制区域内に所在する建築物その他の工作物について、その工作物が次の各号に掲げる用に供され、又は供されるおそれがあると認めるときは、当該工作物の所有者、管理者又は占有者に対して、期限を付して、当該工作物をその用に供することを禁止することを命ずることができる。
一 多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用
二 暴力主義的破壊活動等に使用され、又は使用されるおそれがあると認められる爆発物、火炎びん等の物の製造又は保管の場所の用
三 成田国際空港又はその周辺における航空機の航行に対する暴力主義的破壊活動者による妨害の用

6項 国土交通大臣は、第一項の禁止命令に係る工作物が当該命令に違反して同項各号に掲げる用に供されていると認めるときは、当該工作物について封鎖その他その用に供させないために必要な措置(建物の実力封鎖)を講ずることができる

行政上の強制徴収

行政上の強制徴収とは、国民が、行政上の金銭納付義務を履行しない場合に、行政庁が、自ら強制的に徴収し、当該国民は義務を果たしたことにすることを言います。

例えば、税金を滞納している人がいた場合、滞納者の財産を差押えて、競売にかけて得られた代金で納税することが強制徴収です。

行政上の金銭納付義務とは

道路占有料河川占有料放置違反金等があります。

水道料金は民事上の話なので、民事上の強制執行の対象となるので注意しましょう!

また、行政上の金銭納付義務については、行政上の強制徴収の手段によって行う必要があり、民事上の強制執行によって行うことはできません

即時強制

即時強制とは、義務を命じる余裕のない緊急の必要がある場合に、行政機関が、国民に義務を課することなく、国民の身体や財産に実力行使することを言います。

上記の通り、国民の身体や財産に実力行使するので、即時強制を行うには「法律の根拠」もしくは「条例で定めていること」が必要です。

例えば、路上で寝ている人がいた場合に、「起きて路上から離れてください!」と義務を命じていては、それまでに車にひかれてしまうかもしれません。緊急で路上から離れさせる必要があります。実際、警察官職務執行法の3条に上記内容が規定されています。

第三条 警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して左の各号の一に該当することが明らかであり、且つ、応急の救護を要すると信ずるに足りる相当な理由のある者を発見したときは、とりあえず警察署、病院、精神病者収容施設、救護施設等の適当な場所において、これを保護しなければならない。
一 精神錯乱又はでい酔のため、自己又は他人の生命、身体又は財産に危害を及ぼす虞(おそれ)のある者
二 迷い子、病人、負傷者等で適当な保護者を伴わず、応急の救護を要すると認められる者(本人がこれを拒んだ場合を除く。)

行政罰

行政罰とは、過去の義務違反に対する制裁です。そして、行政罰には「行政刑罰」と「行政上の秩序罰」の2つがあります。

※公務員に対する懲戒解雇などは「懲戒罰」なので、行政罰ではありません。

執行罰と行政罰の違い

執行罰は、行政強制の一つなので、将来に向けて、行政目的を達成するための行為です。簡単にいえば、将来、義務を履行しないと罰を加えますよ!という内容です。

一方、
行政罰は、過去の義務違反に対する制裁です。もうすでに、義務違反をしたから、それに対して罰を加えます!という内容です。

行政刑罰

行政刑罰とは、刑法に定めのある刑罰を科すものを言います。具体的には、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料です。そして、行政刑罰は、刑法総則の規定が適用され、刑事訴訟法の定める手続きによって科されることになります。ただし、例外的に、大量に生じる軽微な違反事件(例えば、国税犯則取締法に基づく通告処分等)は刑事訴訟法によらない簡易的な手続きが定められています。

また、行政刑罰の特徴として、違反行為者のほか、その使用主や事業主も科刑される「両罰規定」が置かれていることが多いです。例えば、宅建業法84条です。

第84条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
一 第79条又は第79条の2 一億円以下の罰金刑

第79条 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 不正の手段によって免許を受けた場合
二 無免許で宅建業を営んだ場合
三 自己の名義をもって他人に宅建業を営ませた場合
四 業務の停止命令に違反して業務を営んだ場合

第79条の2 重要事項について故意に事実を告げず、または不実のことを告げた者は、二年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

行政上の秩序罰

行政上の秩序罰とは、形式的で軽微な行政上の義務違反に対して課される過料のことです。例えば、届出義務や登録義務、通知義務に違反した場合です。

そして、科料は刑罰ですが、過料は刑罰ではありません。そのため、
法令に基づく過料は、非訟事件手続法によって地方裁判所が科します。

一方、地方公共団体の条例や規則に違反した場合、地方自治法の定めに基づいて、地方公共団体の長が行政処分として科します。

そして、「秩序罰による過料」と「行政刑罰」は、目的や要件が異なるため併科してもよいです。