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令和2年・2020|問20|国家賠償法

国家賠償法に関する次のア~エの記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、正しいものの組合せはどれか。

ア.同一の行政主体に属する複数の公務員のみによって一連の職務上の行為が行われ、その一連の過程で他人に損害が生じた場合、損害の直接の原因となった公務員の違法行為が特定できないときには、当該行政主体は国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任を負うことはない。

イ.税務署長が行った所得税の更正処分が、所得金額を過大に認定したものであるとして取消訴訟で取り消されたとしても、当該税務署長が更正処分をするに際して職務上通常尽くすべき注意義務を尽くしていた場合は、当該更正処分に国家賠償法1条1項にいう違法があったとはされない。

ウ.国家賠償法1条1項に基づく賠償責任は、国または公共団体が負うのであって、公務員個人が負うものではないから、公務員個人を被告とする賠償請求の訴えは不適法として却下される。

エ.国家賠償法1条1項が定める「公務員が、その職務を行うについて」という要件については、公務員が主観的に権限行使の意思をもってする場合に限らず、自己の利をはかる意図をもってする場合であっても、客観的に職務執行の外形をそなえる行為をしたときは、この要件に該当する。

  1. ア・イ
  2. ア・ウ
  3. イ・ウ
  4. イ・エ
  5. ウ・エ

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【答え】:4

【解説】
ア.同一の行政主体に属する複数の公務員のみによって一連の職務上の行為が行われ、その一連の過程で他人に損害が生じた場合、損害の直接の原因となった公務員の違法行為が特定できないときには、当該行政主体は国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任を負うことはない。

ア・・・誤り

判例(最判昭57.4.1)によると、

「数人の公務員(医師)による一連の職務上の行為の過程において他人に被害を生ぜしめた(発生させた)場合において、 それが具体的にどの公務員のどのような違法行為によるものであるかを特定することができなくても、
①右の一連の行為のうちのいずれかに故意又は過失による違法行為があったのでなければ右の被害が生ずることはなかったであろうと認められ、
かつ、
②それがどの行為であるにせよ、これ(一連の行為)による被害につき、専ら国又は当該公共団体が国家賠償法上又は民法上賠償責任を負うべき関係が存在するときは、国又は当該公共団体は、加害行為の不特定の故をもって右損害賠償責任を免れることはできない。」

と判示しています。

つまり、損害が具体的に「どの公務員の」「どのような違法行為」によるものであるかを特定できないときでも、国又は公共団体は、損害賠償責任を負うことはあるので、誤りです。

事案については個別指導で解説します。

イ.税務署長が行った所得税の更正処分が、所得金額を過大に認定したものであるとして取消訴訟で取り消されたとしても、当該税務署長が更正処分をするに際して職務上通常尽くすべき注意義務を尽くしていた場合は、当該更正処分に国家賠償法1条1項にいう違法があったとはされない。

イ・・・正しい

判例(最判平5.3.11)によると、

「税務署長Yのする所得税の更正は、所得金額を過大に認定していたとしても、そのことから直ちに国家賠償法1条1項にいう違法があったとの評価を受けるものではなく、
税務署長が資料を収集し、これに基づき課税要件事実を認定、判断する上において、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と更正をしたと認め得るような事情がある場合に限り、違法の評価を受けるものと解するのが相当である。」

と判示しています。

つまり、「税務署長が職務上尽くすべき注意義務を尽くしていたとき」は、国家賠償法上、違法とならないので、正しいです。

と判示しています。

事案については個別指導で解説します!

ウ.国家賠償法1条1項に基づく賠償責任は、国または公共団体が負うのであって、公務員個人が負うものではないから、公務員個人を被告とする賠償請求の訴えは不適法として却下される。

ウ・・・誤り

判例(最判昭30.4.19)によると、

「公務員の職務行為により、第三者に損害を加えた場合、国または公共団体が賠償責任を負い、公務員が行政機関としての地位において賠償の責任を負うものではない。また、公務員個人もその責任を負うものではない。従って、・・・県知事個人、農地部長個人を相手方とする請求は理由がないことに帰する。」と判示しています。

よって、「公務員個人を被告とする賠償請求の訴えは不適法として却下される」のではなく、「理由がないとして棄却されます」。

次回の試験で出題されそうな関連ポイントについて個別指導で行います!

エ.国家賠償法1条1項が定める「公務員が、その職務を行うについて」という要件については、公務員が主観的に権限行使の意思をもってする場合に限らず、自己の利をはかる意図をもってする場合であっても、客観的に職務執行の外形をそなえる行為をしたときは、この要件に該当する。

エ・・・正しい

判例(最判昭31.11.30)によると、

『国家賠償法第1条の「職務執行」とは、その公務員が、その行為の意図目的はともあれ、行為の外形において、職務執行と認め得ることができるものについては、職務執行にあたる。
すなわち、国家賠償法1条1項の「職務執行行為」があったというためには、公務員が、主観的に権限行使の意思をもってした職務執行行為に限定すべきではない。
したがって、国家賠償法1条は公務員が主観的に権限行使の意思をもってする場合にかぎらず、自己の利をはかる意図をもってする場合でも、客観的に職務執行の外形をそなえる行為をしてこれによって、他人に損害を加えた場合には、国又は公共団体に損害賠償責任を負わせて、ひろく国民の権益を擁護することをもって、その立法の趣旨とするものと解すべきであるから、国又は公共団体は、損害賠償責任を負うべきである。』

と判示しています。

つまり、公務員が、自己の利を図る目的でした行為をした場合でも、外形からみて職務執行行為と言えるとき、国家賠償法1条1項の「職務を行う行為について」に該当するということです。
よって、本肢は正しいです。

事案については個別指導で解説します!

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令和2年(2020年)過去問

問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 基礎法学 問33 民法:債権
問4 憲法 問34 民法:債権
問5 憲法 問35 民法:親族
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・経済
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・経済
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・社会
問25 情報公開法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政法 問56 基礎知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:物権 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

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