テキスト

森林法違憲判決(森林法共有林事件)をわかりやすく解説【最大判昭62-4-22】

論点

  1. 憲法29条1項は何を保障しているか?
  2. 森林法186条は憲法29条2項に違反するか?

事案

X、Yの兄弟は、父からそれぞれ山林の2分の1の持分を生前贈与され、共有登記をしていた。しかし、弟Xの反対を押し切って、兄Yが森林の一部を伐採したことから争いになった。

XはYを被告として、持分に応じた山林の分割等を請求する訴えを提起した。

規制目的二分論における森林法事件の位置づけ

財産権・経済的自由の規制についての違憲審査基準を理解するうえで、規制目的二分論の枠組みを押さえることが重要です。規制目的二分論とは、規制の目的が積極目的(政策的規制)か消極目的(警察的規制)かによって、違憲審査の厳格度を変える考え方です。

森林法事件の判決は、この二分論との関係で独特の位置にあります。以下の比較表で3つの重要判例を整理しましょう。

判例小売市場距離制限事件
(最大判昭47.11.22)
薬事法距離制限事件
(最大判昭50.4.30)
森林法共有林事件
(最大判昭62.4.22)
規制の種類職業の自由(営業の自由)職業の自由(営業の自由)財産権(共有物分割請求権)
規制目的積極目的(中小企業保護政策)消極目的(国民の生命・健康への危険防止)積極目的とも消極目的とも明示せず
審査基準明白の原則(緩やかな審査)厳格な合理性の基準(中間審査)目的・手段の合理性審査(独自の枠組み)
結論合憲違憲違憲

森林法事件が二分論に収まらない理由

小売市場事件と薬事法事件では、規制目的が積極か消極かを明確に分類したうえで審査基準を設定しました。しかし森林法事件では、最高裁は規制目的の分類を行わず、財産権の種類・性質・規制の程度等を総合的に比較考量する枠組みを採用しています。

これは、財産権の規制が「多種多様」であることを理由に、目的二分論では対応しきれないと判断したものと解されています。行政書士試験では、3判例の審査基準の違いと、森林法事件が二分論の枠外にある点が問われるため、比較して整理しておきましょう。

判決

憲法29条1項は何を保障しているか?

→私有財産制度のみならず、国民の個々の財産権についても保障している

憲法29条は、1項において「財産権は、これを侵してはならない。」と規定し、私有財産制度を保障しているのみでなく、社会的経済的活動の基礎をなす国民の個々の財産権につきこれを基本的人権として保障する。

森林法186条は憲法29条2項に違反するか?

→違反する(違憲)

憲法29条2項では、「財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める。」と規定されている。

財産権に対する規制は、財産権の種類、性質等が多種多様であり、また、財産権に対し規制を要求する社会的理由ないし目的も、社会政策及び経済政策上の積極的なものから、社会生活における安全の保障や秩序の維持等の消極的なものに至るまで多岐にわたるため、種々様々でありうるのである。

したがって、財産権に対して加えられる規制が憲法29条2項にいう公共の福祉に適合するものとして是認されるべきものであるかどうかは、規制の目的、必要性、内容、その規制によつて制限される財産権の種類、性質及び制限の程度等を比較考量して決すべきものである。

また、裁判所としては、立法府がした右比較考量に基づく判断を尊重すべきものである。

そこで、裁判所としては、①立法の規制目的が、公共の福祉に合致しないことが明らかであるか、又は②規制手段が目的を達成するための手段として必要性若しくは合理性に欠けていることが明らかであって、そのため立法府の判断が合理的裁量の範囲を超えるものとなる場合に限り、当該規制立法が憲法29条2項に違反すると解するのが相当である。

■そして、森林法186条(森林の共有者は、持分の過半数を有さない場合、分割請求ができない。)の立法目的は、森林の細分化を防止することによって森林経営の安定を図り、もつて国民経済の発展に資することにあると解すべきである。

この目的は、公共の福祉に合致しないことが明らかとはいえない。

ただし、共有者間に紛争が生じたときは、各共有者は、共有森林につき、保存行為を行うことができず、管理又は変更の行為を適法にすることができないこととなり、ひいては当該森林の荒廃という事態を招来することとなる。

また、一律に現物分割を認めないとすることは、同条の立法目的を達成する規制手段として合理性に欠け、必要な限度を超えるものというべきである。

また、共有森林につき現物分割をしても直ちにその細分化を来すものとはいえないし、また、民法258条2項は、競売による代金分割の方法をも規定しているのであり、この方法により一括競売がされるときは、当該共有森林の細分化という結果は生じないのである。したがって、森林法186条は、目的を達成するについて必要な限度を超えた不必要な規制というべきである。

したがって、森林法186条の規制手段は、同条の立法目的との関係で合理性と必要性のいずれも肯定できないことが明らかなので、憲法29条2項に違反し無効である。

成田新法事件をわかりやすく解説|行政手続と憲法31条の適用【最判平4-7-1】

論点

  1. 成田新法3条1項1号が憲法31条に違反しないか?

事案

昭和53年、成田国際空港の安全を確保するため、「過激派集団の出撃拠点となっていた近くの小屋の使用禁止を命ずることができる」旨のいわゆる成田新法が制定され、即日施行された。

運輸大臣Yは、昭和54年以降毎年2月に、過激派集団Xに対し、成田新法3条1項(上記規定)に基づき、空港の規制区域内に所在するX所有の通称「横堀要塞(ようさい):小屋」を1年の期間を定めて使用を禁止した。

そこでXは、上記規定が憲法31条等に違反し、違憲無効であり、本件使用禁止命令も違憲無効であるとして、Yに対して、本件使用命令禁止の取消訴訟を提起した。

判決

成田新法3条1項1号が憲法31条に違反しないか?

→違反しない

憲法第31条(適正手続の保障)
何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

憲法31条の定める法定手続の保障(適正手続の保障)は、直接には刑事手続に関するものである。

しかし、行政手続については、それが刑事手続ではないとの理由のみで、そのすべてが当然に同条による保障(適正手続の保障)の枠外にあると判断することは相当ではない。(行政手続においても適正手続の保障の範囲内にあるといえる)

しかしながら、同条による保障(適正手続の保障)が及ぶと解すべき場合であっても、一般に、行政手続は、刑事手続とその性質においておのずから差異があり、また、行政目的に応じて多種多様であるから、行政処分の相手方に事前の告知、弁解、防御の機会を与えるかどうかは、行政処分により制限を受ける権利利益の内容、性質、制限の程度、行政処分により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等を総合較量して決定されるべきものであって、常に必ずそのような機会を与えることを必要とするものではないと解するのが相当である。

 成田新法3条1項に基づく工作物使用禁止命令により制限される権利利益の内容、性質は、前記のとおり当該工作物の三態様における使用であり、右命令により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等は、前記のとおり、新空港の設置、管理等の安全という国家的、社会経済的、公益的、人道的見地からその確保が極めて強く要請されているものであって、高度かつ緊急の必要性を有するものであることなどを総合較量すれば、右命令をするに当たり、その相手方に対し事前に告知、弁解、防御の機会を与える旨の規定がなくても、本法3条1項が憲法31条の法意に反するものということはできない(憲法31条に違反しない)。

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大阪空港公害訴訟とは?判旨・争点をわかりやすく解説【最大判昭56-12-16】

大阪空港公害訴訟のポイントまとめ

大阪空港公害訴訟(最大判昭56・12・16)は、国営空港の差止請求が民事訴訟で認められるかが争われた重要判例です。行政書士試験では繰り返し出題されるため、以下の3点を確実に押さえましょう。

争点

  • 国営空港の夜間使用差止めを、民事上の請求(私法上の給付請求)として求めることができるか
  • 空港管理権と航空行政権の関係をどう捉えるか

判旨の核心

  • 航空機の離着陸規制は、営造物管理権と航空行政権が不可分一体として行使されている
  • 差止請求は不可避的に航空行政権の取消変更を求める内容を包含するため、通常の民事訴訟では不適法
  • 結論:民事上の請求としての差止めは認められない(ただし損害賠償請求は別途争点あり)

行政書士試験での出題パターン

  • 「民事訴訟で差止めが認められた」とする誤りの選択肢に注意(正しくは不適法)
  • 空港管理権と航空行政権の「不可分一体」のキーワードを問う出題が頻出
  • 国家賠償法に基づく損害賠償の可否と混同させる問題も出される
  • 同日の関連判決(営造物の設置・管理の瑕疵)とセットで問われることがある

論点

  1. 民事上の請求として、国営空港の使用の差止めを求める訴えは適法か?

事案

大阪国際空港(伊丹空港)は、国営の空港であった。

周辺住民Xらは、空港を発着する航空機の騒音等により被害を受け、人格権および環境権を著しく侵害されたことを理由として、空港の管理者である国Yに対して、民事訴訟を提起し、毎日午後9時~翌朝午前7時までの間、航空機の発着に使用させることの差止めを求めた。

判決

民事上の請求として、国営空港の使用の差止めを求める訴えは適法か?

→不適法である(民事訴訟で訴えることはできない)

国際航空路線又は主要な国内航空路線に必要なものなど基幹となる公共用飛行場については、「運輸大臣みずから」が、又は「特殊法人である新東京国際空港公団」が、これを国営又は同公団営の空港として設置、管理し、公共の利益のためにその運営に当たるべきものとしている。

その理由は、これら基幹となる公共用飛行場にあっては、その設置、管理のあり方がわが国の政治、外交、経済、文化等と深いかかわりを持ち、国民生活に及ぼす影響も大きく、したがつて、どの地域にどのような規模でこれを設置し、どのように管理するかについては航空行政の全般にわたる政策的判断を不可欠とするからにほかならないものと考えられる。

このような空港国営化の趣旨、すなわち国営空港の特質を参酌して考えると、本件空港の管理に関する事項のうち、少なくとも航空機の離着陸の規制そのもの等、本件空港の本来の機能の達成実現に直接にかかわる事項自体については、「空港管理権に基づく管理」と「航空行政権に基づく規制」とが、「空港管理権者としての運輸大臣」と「航空行政権の主管者としての運輸大臣」のそれぞれ別個の判断に基づいて分離独立的に行われ、両者の間に矛盾乖離を生じ、本件空港を国営空港とした本旨を没却し又はこれに支障を与える結果を生ずることがないよう、いわば両者が不即不離、不可分一体的に行使実現されているものと解するのが相当である。

言い換えれば、本件空港における航空機の離着陸の規制等は、これを法律的にみると、単に本件空港についての営造物管理権の行使という立場のみにおいてされるべきもの、そして現にされているものとみるべきではなく、航空行政権の行使という立場をも加えた、複合的観点に立つた総合的判断に基づいてされるべきもの、そして現にされているものとみるべきものである。

ここで、Xらの前記のような請求は、不可避的に航空行政権の行使の取消変更ないしその発動を求める請求を包含することとなるものといわなければならない。

したがって、Xらが行政訴訟の方法により何らかの請求をすることができるかどうかはともかくとして、上告人に対し、いわゆる通常の民事上の請求として前記のような私法上の給付請求権を有するとの主張の成立すべきいわれはない(民事上の請求で主張はできない)というほかはない。

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関連判例

最大判昭56.12.16:「空港騒音」と「設置又は管理の瑕疵」(大阪国際空港公害訴訟)

当事者訴訟とは?形式的・実質的当事者訴訟の違いをわかりやすく解説【行政書士】

当事者訴訟は、主観訴訟ではあるものの、これまで勉強してきた抗告訴訟ではありません。主観訴訟は、個人の権利利益の救済を目的とし、自分自身に直接関係する行政活動に対する訴訟を指します。

そして、当事者訴訟は非常に分かりにくい訴訟なので、イメージを頭に入れることが重要です!


当事者訴訟とは?

当事者訴訟とは、①当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの及び②公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟をいう。

上記、「①当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で、法律関係の当事者の一方を被告とするもの」が形式的当事者訴訟で、「②公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟」が実質的当事者訴訟です。

上記を読んだだけでは全く意味が分からないと思いますので、具体例を出しながら解説していきます。

形式的当事者訴訟

例えば、Aの土地について、土地収用に関する収用委員会の裁決について,不服がある場合、本来、収用委員会の属する都道府県を被告として、収用裁決の取消しの訴えを提起します。

しかし、Aが収用自体は納得しているけど、収用に対する補償金額に不服がある場合があります。この場合、Aは補償額についてのみ争えばよいです。

そして、この補償額については、事業の起業者(事業を行う者)が決め、収用委員会が認定するのですが、補償額(損失補償額)に争いがある場合,土地を収用されたAと起業者との間で争います。

本来であれば,「補償額を認定した収用委員会の属する行政主体である都道府県」を被告として裁決を争う抗告訴訟によるべきです。
これが、「当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟」ということです。

しかし、補償金額については,補償金の支払いに関係する当事者間で直接争わせたほうが適切であるため、被告を起業者として訴訟を提起します。
これが、「法律関係の当事者の一方を被告とする」ということです。

上記訴えが、当事者訴訟の中の形式的当事者訴訟です。

上記は、土地を収用されたAが、「補償額が少なすぎる!」と主張する場合で、逆に起業者が「補償額が高すぎる!」と主張する場合、被告がAとなり、同じく形式的当事者訴訟で争います。

形式的当事者訴訟は、上記「収用における補償金の増額・減額の訴訟」 を具体例として覚えた方が早いです。

実質的当事者訴訟

次に実質的当事者訴訟を解説するのですが、形式的当事者訴訟と全く違うものに見えると思います。そのため、形式的当事者訴訟と実質的当事者訴訟は分けて考えた方がよいでしょう!つなげて考えると、逆に分かりづらくなります。

今から解説する具体例は、無効等確認訴訟でも勉強した内容です。

例えば、国家公務員Cが懲戒免職処分を受けた。Cは、この処分が無効であることを前提に、「公務員の地位確認訴訟」や「給料支払請求訴訟」を行うことができます。この訴えは、被告が国であるというだけで、内容としては、民事訴訟と同じです。

例えば、会社員Dが会社から不当解雇を受け、この解雇が無効であることを前提に、「社員たる地位の確認訴訟」を提起することは、民事訴訟です。

単に、「私人と私人の争い」ではなく「国と公務員」という公法上の法律関係なっているにすぎません。

このような訴訟が実質的当事者訴訟です。

まずは、具体例を覚えることが理解への第一歩なので、具体例を覚えていきましょう。

上記以外にも、

等があります。

実質的当事者訴訟と争点訴訟の違い

上記実質的当事者訴訟と争点訴訟は似ていますが、違います。

何が違うかというと、
実質的当事者訴訟は、私人と行政主体との争い(=行政訴訟)で、
争点訴訟は私人間の争い(=民事訴訟)です。

また、上図の通り、現在の法律関係の確認を求める訴え(実質的当事者訴訟や争点訴訟)では目的達成ができない場合に限って、無効等確認の訴え(無効確認訴訟)を提起できる点も併せて覚えておきましょう。

<<当事者訴訟(形式的当事者訴訟・実質的当事者訴訟) | 争点訴訟>>

奈良県ため池条例事件をわかりやすく解説|財産権の制限と損失補償【行政書士】

論点

  1. 条例により財産権を規制することも許されるか?

事案

多数のため池を有する奈良県は、ため池の破損、決壊等による災害を未然に防止するために、ため池の保全に関する条例を制定した。その条例は、4条でため池の堤とうでの耕作などを禁止し、9条で、その違反者に対して3万円以下の罰金に処するとしている。

ため池Aは、在住の農民の総有に属しており、その堤とうも代々耕作の対象になっていたが、同条例によってそこでの耕作が禁じられることになった。しかし、農夫である被告人Yらは、堤とうでの耕作禁止を知りながら、条例施行後も引き続き、耕作を行ったため、条例違反で起訴された。

判決

条例により財産権を規制することも許されるか?

→許される

ため池の保全に関する条例は、ため池の堤とうを使用する権利者に対しては、その使用のほとんどが全面的に禁止されるので、権利に著しい制限を加えるものである。

しかし、それは「災害を未然に防止する」という社会生活上のやむを得ない必要から来ることであって、ため池の堤とうを使用する財産上の権利を有する者は何人も、公共の福祉のため、当然これを受忍しなければならない(受け入れて耐える)責務を負うというべきである。

すなわち、ため池の破損、決かいの原因となるため池の堤とうの使用行為は、憲法でも、民法でも適法な財産権の行使として保障されていないものであって、憲法、民法の保障する財産権の行使の埒外(らちがい:枠外)にある。

したがって、これらの行為(ため池の堤とうの使用権)を条例をもって禁止、処罰しても憲法および法律に牴触またはこれを逸脱するものとはいえないし、また、ため池の堤とうの使用権保護を、既に規定していると認めるべき法令は存在していないのであるから、これを条例で定めたからといって、違憲または違法の点は認められない。

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京都府学連事件をわかりやすく解説|肖像権・プライバシー権の判例【行政書士】

論点

  1. 肖像権が憲法で保障されるか?
  2. 写真撮影が許容されるための要件は何か?
  3. 当該事案で写真撮影は適法か?

事案

大学生Xは、京都府学連主催のデモ行進に参加し、集団の先頭に立って行進をしていた。Xはデモ行進の許可の条件を詳しく知らず、デモ隊を誘導し、デモ隊は警察機動隊ともみあいに、隊列を崩したまま行進をした。これが許可条件に反すると判断した京都府警の巡査は、「違法な行進状況」および「違反者の確認」のために写真撮影をした。この撮影を知ったXは、当該巡査を、持っていた旗で一突きし、全治一週間の傷害を与えたため、傷害および公務執行妨害の罪で起訴された。

判決

肖像権が憲法で保障されるか?

→肖像権は憲法13条で保障される

憲法13条は、国民の私生活上の自由が、国家権力に対しても保護されることを規定している。

そして、個人の私生活上の自由として、承諾なしに、みだりにその容ぼう等を撮影されない自由を有する。

よって、肖像権は憲法13条によって保障されており、警察官が、正当な理由なく、個人の容ぼう等を撮影する行為は13条の趣旨に反し許されない。(言い換えると、正当な理由があれば、撮影してもよい、ということ)

憲法第13条
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

写真撮影が許容されるための要件は何か?

→①現に犯罪が行われ、もしくは、行われたのち間もないと認められる場合」であって、②証拠保全の必要性および緊急性があり、③撮影が一般的に許容される限度を超えない相当な方法をもって行われること

上記肖像権の自由は、無制限ではなく、公共の福祉のため必要がある場合には相当の制限を受ける。

具体的には、「①現に犯罪が行われ、もしくは、行われたのち間もないと認められる場合」であって、②証拠保全の必要性および緊急性があり、③撮影が一般的に許容される限度を超えない相当な方法をもって行われるときには、

警察官による写真撮影に、本人Xおよび第三者である個人の容ぼう等を含むこととなっても憲法13条等に違反しない。

当該事案で写真撮影は適法か?

→適法

今回の事案では、上記①~③を満たすため、適法な職務執行行為といえる。

堀越事件をわかりやすく解説|猿払事件との違い・公務員の政治活動【行政書士】

論点

  1. 国家公務員法102条1項にいう「政治的行為」の意義とは?
  2. 管理職的地位にない者が、配布行為を行うことは、実質的に政治的中立性を損なうおそれがあると認められるか?

事案

堀越明男氏Xは社会保険庁東京社会保険事務局目黒社会保険事務所に年金審査官として勤務していた厚生労働事務官である。
Xは衆議院選挙総選挙に際し、勤務時間外に日本共産党を支持する目的で「しんぶん赤旗 号外」をポスティングしたところ、住居侵入罪で現行犯逮捕された。
住居侵入罪については不起訴処分とされたが、国家公務員法に反するのではないかとして追送検された。

※Xは、社会保険の相談に関する業務を副長の指導の下で、専門職として、相談業務を担当していただけで、人事や監督に関する権限も与えられていなかった。

堀越事件と猿払事件の比較表

堀越事件と猿払事件はいずれも国家公務員の政治的行為が争われた重要判例ですが、最高裁の判断は大きく異なります。両事件の違いを整理しておきましょう。

比較項目猿払事件(最大判昭49.11.6)堀越事件(最判平24.12.7)
被告人の職種郵便局員(北海道猿払村)社会保険事務所の年金審査官
問題となった行為選挙用ポスターの掲示・配布政党機関紙のポスティング
管理職的地位非管理職非管理職(副長の指導下で相談業務を担当)
審査基準合理的関連性の基準(緩やかな審査)実質的おそれの基準(より厳格な個別的審査)
政治的行為の解釈国公法の文言どおり広く禁止を肯定政治的中立性を損なう現実的・実質的なおそれがある行為に限定
考慮要素立法目的の正当性・手段の合理性(抽象的判断)①管理職的地位の有無 ②職務内容と権限 ③行為の態様・状況を個別具体的に検討
結論有罪(罰金5,000円)無罪
判例としての意義公務員の政治活動の広範な制限を合憲と判断猿払事件の枠組みを実質的に変更し、処罰範囲を限定解釈

試験対策のポイント:猿払事件では「合理的関連性の基準」により広く規制を合憲としたのに対し、堀越事件では行為の態様や職務権限を個別に検討する「実質的おそれの基準」を採用し、結論が逆転しました。行政書士試験では両判例の審査基準の違いと結論が分かれた理由が問われやすいため、セットで押さえておきましょう。

判決

国家公務員法102条1項にいう「政治的行為」の意義とは?

→公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが、観念的なものにとどまらず、現実的に起こり得るものとして実質的に認められるものを指す

国家公務員法102条1項は、「職員は、政党又は政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法を以てするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除く外、人事院規則で定める政治的行為をしてはならない。」と規定している。

上記規定は、「行政の中立的運営を確保し、これに対する国民の信頼を維持すること」をその趣旨である。

また、憲法15条2項は、「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。」と定めており、国民の信託に基づく国政の運営のために行われる公務は、国民の一部でなく、その全体の利益のために行われるべきものであることが要請されている。

その中で、国の行政機関における公務は、憲法の定める我が国の統治機構の仕組みの下で、議会制民主主義に基づく政治過程を経て決定された政策を忠実に遂行するため、国民全体に対する奉仕を旨として、政治的に中立に運営されるべきものといえる。

そして、このような行政の中立的運営が確保されるためには、公務員が、政治的に公正かつ中立的な立場に立って職務の遂行に当たることが必要となるものである。

このように、本法102条1項は、公務員の職務の遂行の政治的中立性を保持することによって行政の中立的運営を確保し、これに対する国民の信頼を維持することを目的(※1)とするものと解される。

他方、国民は、憲法上、表現の自由(21条1項)としての政治活動の自由を保障されている。

この精神的自由は立憲民主政の政治過程にとって不可欠の基本的人権であって、民主主義社会を基礎付ける重要な権利である。

このことに鑑みると、上記の目的(※1)に基づく法令による公務員に対する政治的行為の禁止は、国民としての政治活動の自由に対する必要やむを得ない限度にその範囲が画されるべきものである。

このような本法102条1項の文言、趣旨、目的や規制される政治活動の自由の重要性に加え、同項の規定が刑罰法規の構成要件となることを考慮すると、
同項にいう「政治的行為」とは、
公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが、観念的なものにとどまらず、現実的に起こり得るものとして実質的に認められるものを指し、
同項はそのような行為の類型の具体的な定めを人事院規則に委任したものと解するのが相当である。

管理職的地位にない者が、配布行為を行うことは、実質的に政治的中立性を損なうおそれがあると認められるか?

→認められない

本件配布行為は、管理職的地位になく、その職務の内容や権限に裁量の余地のない公務員によって、職務と全く無関係に、公務員により組織される団体の活動としての性格もなく行われたものである。

また、当該行為は、公務員による行為と認識し得る態様で行われたものでもない。

よって、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものとはいえない。

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全農林警職法事件をわかりやすく解説|公務員の労働基本権と争議行為の禁止

論点

  1. 国家公務員法第110条第1項第17号(あおり行為等の罪)の規定は憲法に違反するか?

事案

全農林労働組合の役員である被告人らは、警察官職務執行法(警職法)の改正に反対する運動を行っていた。

被告人らは、全農林労働組合の傘下にある各県の本部に対して、勤務時間内の2時間、開催される反対運動に参加するよう促した。この行為が、国家公務員法98条5項の禁止する「違法な争議のあおり行為」に該当するとして、同法110条第1項第17号(あおり行為等の罪)によって起訴された。

判決

国家公務員法第110条第1項第17号(あおり行為等の罪)の規定は憲法に違反するか?

→違反しない(合憲)

憲法28条の労働基本権の保障は公務員に対しても及ぶ。

ただ、この労働基本権は、勤労者の経済的地位の向上のための手段として認められたものであって、それ自体が目的とされる絶対的なものではないから、おのずから勤労者を含めた国民全体の共同利益の見地からする制約を免れない。

公務員の地位の特殊性と職務の公共性にかんがみるときは、これを根拠として公務員の労働基本権に対し必要やむをえない限度の制限を加えることは、十分合理的な理由があるというべきである。

したがって、公務員の争議行為は、公務員の地位の特殊性と勤労者を含めた国民全体の共同利益の保障という見地から、一般私企業におけるとは異なる制約を受ける当然であり、また、このことは、国際的視野に立つても肯定されているところなのである。

したがって、当該国家公務員法は憲法に違反しない。

博多駅事件(博多駅テレビフィルム事件)をわかりやすく解説|報道の自由と取材の自由

論点

  1. 報道の自由は、憲法21条によって保障されるか?
  2. 取材の自由は、憲法21条によって保障されるか?
  3. 取材の自由は、どのような場合に制約を受けるか?

事案

アメリカ原子力空母エンタープライズの佐世保寄港に対する反対運動に参加しようとしていた全学連(学生運動団体)の学生らが、博多駅で下車した。警備にあたっていた機動隊員は、当該学生らに対し、実力で駅構内から排除するとともに、改札口で検問と持物検査を行った。これに対して、護憲連合会等は、警察官の行為が特別公務員暴行陵虐罪・職権濫用罪にあたるとして告発したところ、地検が不起訴処分としたため、付審判請求を行った。

この裁判において、福岡地裁は、地元福岡のテレビ局4社に対し、事件当日のフィルムの任意提出を求めたが拒否されたため、フィルムの提出を命じた。 この命令に対して4社は、「報道の自由の侵害・提出の必要性が少ない」という理由に通常抗告を行った。

博多駅事件の論点整理|3つの憲法上の価値を対比する

博多駅テレビフィルム事件では、報道の自由・取材の自由・公正な裁判の実現という3つの憲法上の価値が衝突しました。それぞれの保障根拠・保護の程度・制約の可否を整理すると、判例の構造がより明確になります。

論点 保障根拠 保護の程度 制約の可否
報道の自由 憲法21条で直接保障 国民の「知る権利」に奉仕する重要な権利として明確に認定 直接の争点とはされていないが、絶対無制約ではない
取材の自由 憲法21条の「精神に照らし十分尊重に値する」 報道の自由より一段低い表現にとどまり、直接の保障とは明言されず 公正な裁判の実現など憲法上の要請がある場合には制約を受け得る
公正な裁判の実現 憲法37条(公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利)等 刑事司法の根幹をなす憲法上の要請 取材の自由に対する制約根拠として機能する

試験対策のポイント:最高裁は報道の自由を「保障される」と述べた一方、取材の自由は「尊重に値する」にとどめています。この表現の違いは行政書士試験の択一式で頻出です。「取材の自由は憲法21条で保障される」という誤りの選択肢に注意しましょう。

判決

報道の自由は、憲法21条によって保障されるか?

→保障される

報道機関の報道は、国民の知る権利に奉仕するものである、

そのため、事実の報道の自由は、憲法21条の保障のもとにある。

取材の自由は、憲法21条によって保障されるか?

→憲法21条の精神に照らし十分尊重に値する

報道機関の報道が正しい内容を持つためには、報道のための取材の自由も、憲法21条の精神に照らし、十分尊重に値する。

取材の自由は、どのような場合に制約を受けるか?

→公正な刑事裁判の実現というような憲法上の要請があるとき

取材の自由といっても、もとより何らの制約を受けないものではなく、たとえば公正な裁判の実現というような憲法上の要請があるときは、ある程度の制約を受けることがある。

具体的には、公正な刑事裁判を実現するために、報道機関の取材活動によって得られたものが証拠として必要と認められるような場合には、取材の自由がある程度制約をこうむることとなってもやむ得えないところというべきである。

訴訟参加

訴訟が行われた場合に、その訴訟に参加できる者として「訴訟の結果により権利を害される第三者」および「処分又は裁決をした行政庁以外の行政庁」を挙げることができます。訴訟に参加する「第三者」と「行政庁」を分けて解説していきます。

第三者の訴訟参加

  • 訴訟の結果により権利を害される第三者があるときは、当事者若しくはその第三者の申立てにより又は職権で、裁判所の決定によって、その第三者を訴訟に参加させることができます。
  • 上記第三者の参加の決定をするには、裁判所は、あらかじめ、当事者及び第三者の意見をきかなければなりません。

訴訟の結果により権利を害される第三者

訴訟の結果により権利を害される第三者とは、例えば、A建設会社がマンションの建築のために、甲県の建築主事から建築確認を受けた。近隣住民が、日当たりが悪くなるということで、甲県に対して、建築確認処分の取消しの訴えを行った。この場合、近隣住民が原告、甲県が被告となるのですが、A建設会社は、この建築確認が取り消されると、マンションを建築できる権利を害されます。そのため、A建設会社が「訴訟の結果により権利を害される第三者」となります。

行政庁の訴訟参加

  • 裁判所は、処分又は裁決をした行政庁以外の行政庁を訴訟に参加させることが必要であると認めるときは、当事者若しくはその行政庁の申立てにより又は職権で、決定をもつて、その行政庁を訴訟に参加させることができる。
  • 上記行政庁の参加の決定をするには、裁判所は、あらかじめ、当事者及び当該行政庁の意見をきかなければなりません。

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