テキスト

全農林警職法事件をわかりやすく解説|公務員の労働基本権と争議行為の禁止

論点

  1. 国家公務員法第110条第1項第17号(あおり行為等の罪)の規定は憲法に違反するか?

事案

全農林労働組合の役員である被告人らは、警察官職務執行法(警職法)の改正に反対する運動を行っていた。

被告人らは、全農林労働組合の傘下にある各県の本部に対して、勤務時間内の2時間、開催される反対運動に参加するよう促した。この行為が、国家公務員法98条5項の禁止する「違法な争議のあおり行為」に該当するとして、同法110条第1項第17号(あおり行為等の罪)によって起訴された。

判決

国家公務員法第110条第1項第17号(あおり行為等の罪)の規定は憲法に違反するか?

→違反しない(合憲)

憲法28条の労働基本権の保障は公務員に対しても及ぶ。

ただ、この労働基本権は、勤労者の経済的地位の向上のための手段として認められたものであって、それ自体が目的とされる絶対的なものではないから、おのずから勤労者を含めた国民全体の共同利益の見地からする制約を免れない

公務員の地位の特殊性と職務の公共性にかんがみるときは、これを根拠として公務員の労働基本権に対し必要やむをえない限度の制限を加えることは、十分合理的な理由があるというべきである。

したがって、公務員の争議行為は、公務員の地位の特殊性と勤労者を含めた国民全体の共同利益の保障という見地から、一般私企業におけるとは異なる制約を受ける当然であり、また、このことは、国際的視野に立つても肯定されているところなのである。

したがって、当該国家公務員法は憲法に違反しない。

博多駅事件(博多駅テレビフィルム事件)をわかりやすく解説|報道の自由と取材の自由

論点

  1. 報道の自由は、憲法21条によって保障されるか?
  2. 取材の自由は、憲法21条によって保障されるか?
  3. 取材の自由は、どのような場合に制約を受けるか?

事案

アメリカ原子力空母エンタープライズの佐世保寄港に対する反対運動に参加しようとしていた全学連(学生運動団体)の学生らが、博多駅で下車した。警備にあたっていた機動隊員は、当該学生らに対し、実力で駅構内から排除するとともに、改札口で検問と持物検査を行った。これに対して、護憲連合会等は、警察官の行為が特別公務員暴行陵虐罪・職権濫用罪にあたるとして告発したところ、地検が不起訴処分としたため、付審判請求を行った。

この裁判において、福岡地裁は、地元福岡のテレビ局4社に対し、事件当日のフィルムの任意提出を求めたが拒否されたため、フィルムの提出を命じた。 この命令に対して4社は、「報道の自由の侵害・提出の必要性が少ない」という理由に通常抗告を行った。

博多駅事件の論点整理|3つの憲法上の価値を対比する

博多駅テレビフィルム事件では、報道の自由取材の自由公正な裁判の実現という3つの憲法上の価値が衝突しました。それぞれの保障根拠・保護の程度・制約の可否を整理すると、判例の構造がより明確になります。

論点 保障根拠 保護の程度 制約の可否
報道の自由 憲法21条で直接保障 国民の「知る権利」に奉仕する重要な権利として明確に認定 直接の争点とはされていないが、絶対無制約ではない
取材の自由 憲法21条の「精神に照らし十分尊重に値する」 報道の自由より一段低い表現にとどまり、直接の保障とは明言されず 公正な裁判の実現など憲法上の要請がある場合には制約を受け得る
公正な裁判の実現 憲法37条(公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利)等 刑事司法の根幹をなす憲法上の要請 取材の自由に対する制約根拠として機能する

試験対策のポイント:最高裁は報道の自由を「保障される」と述べた一方、取材の自由は「尊重に値する」にとどめています。この表現の違いは行政書士試験の択一式で頻出です。「取材の自由は憲法21条で保障される」という誤りの選択肢に注意しましょう。

判決

報道の自由は、憲法21条によって保障されるか?

保障される

報道機関の報道は、国民の知る権利に奉仕するものである、

そのため、事実の報道の自由は、憲法21条の保障のもとにある。

取材の自由は、憲法21条によって保障されるか?

→憲法21条の精神に照らし十分尊重に値する

報道機関の報道が正しい内容を持つためには、報道のための取材の自由も、憲法21条の精神に照らし、十分尊重に値する。

取材の自由は、どのような場合に制約を受けるか?

公正な刑事裁判の実現というような憲法上の要請があるとき

取材の自由といっても、もとより何らの制約を受けないものではなく、たとえば公正な裁判の実現というような憲法上の要請があるときは、ある程度の制約を受けることがある。

具体的には、公正な刑事裁判を実現するために、報道機関の取材活動によって得られたものが証拠として必要と認められるような場合には、取材の自由がある程度制約をこうむることとなってもやむ得えないところというべきである。

尊属殺重罰規定違憲判決をわかりやすく解説|最大判昭48-4-4【行政書士試験】

尊属殺重罰規定違憲判決とは?30秒でわかるまとめ

結論:尊属殺の重罰規定(旧刑法200条)は、死刑または無期懲役「のみ」という刑罰の重さが著しく不合理であり、憲法14条1項に違反し違憲である。

本判決(最大判昭和48年4月4日)は、最高裁が法律の規定を違憲と判断した数少ない判例の一つであり、行政書士試験では憲法14条(法の下の平等)の最重要判例として繰り返し出題されています。

  • 立法目的:尊属に対する尊重報恩という道徳的観点から重罰とすること自体は、合理的な根拠があり合憲
  • 手段の相当性:死刑または無期懲役のみに限定する加重は極端であり、違憲
  • 判断枠組み:目的は合理的でも、手段が著しく不合理なら違憲となる(目的・手段審査)

試験頻出ポイント:「重罰にすること自体は違憲ではない」が「加重の程度が極端で違憲」という二段階の論理構造が問われます。「尊属殺の規定=即違憲」と誤解しないよう注意しましょう。

論点

  1. 尊属殺を通常殺と比べて重罰に科する規定は憲法14条1項に違反するか?
  2. 刑法200条は、憲法14条1項に違反するか?

事案

Yは14歳のときから、実父から姦淫され、以後、10年以上夫婦同様の生活を強いられ、5人の子供まで生むという異常な境遇にあった。その後、Yが29歳のときに、当時Yが務めていた職場の同僚と結婚の機会があったが、実父は、Yを支配下において、10日あまりにわたり脅迫虐待を加えた。この境遇から逃れようとYは、実父を殺すに至った。

Yは、自首し、尊属殺人(刑法200条)の罪で起訴された。

判決

尊属殺を通常殺と比べて重罰に科する規定は憲法14条1項に違反するか?

→憲法に違反しない(違憲ではない)

憲法14条1項では、「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と規定されている。

憲法14条の平等の要請は、合理的な根拠に基づかない限り、差別的な取り扱いを禁止する趣旨である。

刑法200条では、『「自己または配偶者」の直系尊属を殺した者について、無期拘禁または死刑の刑に処される』とし、通常の殺人罪の刑罰規定よりも重いものになっていた。

この刑法200条の立法目的は、
尊属殺は通常殺と比べて、一般に高度の社会的道徳的非難に値するものとして、これを厳重に処罰して、特に強く禁圧しようとすることにあり、不合理とは言えない。

つまり、通常殺と比べて重罰にすること自体は違憲ではないとしている。

刑法200条は、憲法14条1項に違反するか?

→憲法に違反する(違憲である)

ただし、目的達成の手段として、死刑または無期拘禁のみに限っている点は、加重の程度が極端であり、著しく不合理な差別的取扱いをするものである。

したがって、刑法200条は合理的な差別とはいえず、憲法14条に反し、違憲である。

訴訟参加

訴訟が行われた場合に、その訴訟に参加できる者として「訴訟の結果により権利を害される第三者」および「処分又は裁決をした行政庁以外の行政庁」を挙げることができます。訴訟に参加する「第三者」と「行政庁」を分けて解説していきます。

第三者の訴訟参加

  • 訴訟の結果により権利を害される第三者があるときは、当事者若しくはその第三者の申立てにより又は職権で、裁判所の決定によって、その第三者を訴訟に参加させることができます。
  • 上記第三者の参加の決定をするには、裁判所は、あらかじめ当事者及び第三者の意見をきかなければなりません。

訴訟の結果により権利を害される第三者

訴訟の結果により権利を害される第三者とは、例えば、A建設会社がマンションの建築のために、甲県の建築主事から建築確認を受けた。近隣住民が、日当たりが悪くなるということで、甲県に対して、建築確認処分の取消しの訴えを行った。この場合、近隣住民が原告、甲県が被告となるのですが、A建設会社は、この建築確認が取り消されると、マンションを建築できる権利を害されます。そのため、A建設会社が「訴訟の結果により権利を害される第三者」となります。

行政庁の訴訟参加

  • 裁判所は、処分又は裁決をした行政庁以外の行政庁を訴訟に参加させることが必要であると認めるときは、当事者若しくはその行政庁の申立てにより又は職権で、決定をもつて、その行政庁を訴訟に参加させることができる。
  • 上記行政庁の参加の決定をするには、裁判所は、あらかじめ当事者及び当該行政庁の意見をきかなければなりません。

<<訴えの変更 | 執行停止(取消訴訟)>>

普通決議・特別決議・特殊決議の違いをわかりやすく解説|行書塾

株主総会における決議は、決議する内容の重要性によって、普通決議、特別決議、特殊決議の3つに分かれます。

決議要件

普通決議 議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の過半数で決議
特別決議 議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の多数で決議
特殊決議 議決権を行使できる株主の半数であって、当該株主の議決権の3分の2以上の多数で決議
総株主の半数であって、総株主の議決権の4分の3以上の多数で決議

普通決議

会社法または定款で特別な定めがない場合は、この普通決議により議決します。

言い換えると、特別決議や特殊決議以外のものが普通決議ということです。

普通決議は、議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の過半数で決議します。

そして、普通決議の定足数は、定款により、引き下げたり、排除することができます。つまり、議決しやすくすることができるということです。

ただし、役員(取締役、会計参与、監査役)の選任・解任決議については、定足数を総株主の議決権の3分の1未満に引き下げることはできません341条)。

定足数とは、株主総会を開いて、議決するために必要な、最小限度の出席人数です。憲法における国会部分でも勉強した定足数と同じ内容です。

特別決議

特別決議は、議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の多数で決議します。

特別決議となること議題は、行政書士試験で出題されそうなものに絞って下記に列挙しました。

  1. 譲渡制限株式の買取決議140条2項)
  2. 特定の株主から自己株式を取得する旨、その条件の決定156条1項)
  3. 全部取得条項付種類株式の取得の決議171条1項)
  4. 株式の併合の決議180条2項)
  5. 募集株式、新株予約権の募集事項の決定(非公開会社のみ)199条2項、238条2項
  6. 募集株式の第三者割当の場合の有利発行199条2項、309条2項5号
  7. 募集株式・募集新株予約権の募集事項の決定を「取締役等に委任」する決議200条1項、309条2項5号)
  8. 「累積投票で選任された取締役」「監査役」を、解任する決議342条3~5項、339条
  9. 非公開会社において、新株予約権付社債を発行する決議248条
  10. 役員等の損害賠償責任を一部免除する決議425条1項)
  11. 資本金を「減少」する決議447条1項)
  12. 金銭以外の財産を配当し、かつ、金銭分配請求権を与えないこととする場合454条4項)

譲渡制限株式の買取決議

株式会社は、譲渡制限付株式の譲渡について承認するよう請求を受けた場合において、譲渡の承認をしない旨の決定をしたときは、譲渡制限株式を買い取らなければなりません

この場合においては、下記事項を定めなければならないのですが、下記事項を決定するには、株主総会の特別議が必要です。

  1. 譲渡制限株式を買い取る旨
  2. 株式会社が買い取る対象株式の数

特定の株主から自己株式を取得する旨、その条件の決定

株式会社が特定の株主との合意により当該株式会社の株式を有償で取得するには、あらかじめ、株主総会の特別決議によって、下記事項を定めなければなりません。

  1. 取得する株式の数
  2. 株式を取得するのと引換えに交付する金銭等の内容及びその総額
  3. 株式を取得することができる期間(1年以内で定めること)

全部取得条項付種類株式の取得の決議

全部取得条項付種類株式を発行した種類株式発行会社は、株主総会の特別決議によって、全部取得条項付種類株式の全部を取得することができます。

株式の併合の決議

株式会社は、株式の併合をしようとするときは、その都度、株主総会の特別決議によって、下記事項を定めなければなりません。

  1. 併合の割合
  2. 株式の併合がその効力を生ずる日
  3. 株式会社が種類株式発行会社である場合には、併合する株式の種類

募集株式、新株予約権の募集事項の決定(非公開会社のみ)

株式会社は、その発行する「株式」又は「その処分する自己株式」「新株予約権」を引き受ける者の募集をしようとするときは、その都度、一定事項を定めなければなりません。
そして、当該株式会社が非公開会社の場合、募集事項の決定は、株主総会の特別決議によらなければなりません。

※公開会社の場合、取締役会の決議で行えます。

募集株式の発行の手続きはこちら>>

募集株式の第三者割当の場合の有利発行

募集株式について第三者割当を行う場合、公開会社であれば、原則、取締役会決議で行えます。ただし、有利価格での発行には株主総会の特別決議が必要です。

募集株式・募集新株予約権の募集事項の決定を「取締役等に委任」する決議

株主総会の特別決議により、上記「募集株式、新株予約権の募集事項の決定」について取締役(取締役会設置会社にあっては、取締役会)に委任することができます。

「累積投票で選任された取締役」「監査役」を、解任する決議

累積投票の解説はこちら>>

「累積投票で選任された取締役」または「監査役」を、解任する場合、株主総会の特別決議が必要です。

非公開会社において、新株予約権付社債を発行する決議

新株予約権付社債の発行については、新株予約権の募集に関する規定が適用されます。

したがって、上記「募集株式、新株予約権の募集事項の決定(非公開会社のみ)」の通り、株主総会の特別決議により、募集事項を決定して発行できます。

役員等の損害賠償責任を一部免除する決議

役員等の任務懈怠責任について、当該役員等が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは、賠償の責任を負う額から一定金額を控除して得た額(差し引いた額)を限度として、株主総会の特別決議によって免除することができます。

資本金を「減少」する決議

株式会社は、株主総会の特別決議により資本金の額を減少させることができます。

金銭以外の財産を配当し、かつ、金銭分配請求権を与えないこととする場合

金銭分配請求権を与えず、金銭以外の財産(現物配当:例えば商品券)で配当する場合、株主総会の特別決議が必要です。

特殊決議

特殊決議については、決議要件の違いにより、下記2つのパターンがあります。

議決権を行使できる株主の半数であって、当該株主の議決権の3分の2以上の多数で決議
総株主の半数であって、総株主の議決権の4分の3以上の多数で決議

①議決権を行使できる株主の半数であって、当該株主の議決権の3分の2以上の多数で決議

  1. 全部の株式に譲渡制限をかける旨の定款変更
  2. 吸収合併契約等の承認
    ※吸収合併消滅会社・株式交換完全子会社が公開会社で、対価の全部又は一部が譲渡制限株式等である場合における当該会社の吸収合併契約・株式交換契約の承認(783条1項)
  3. 新設合併契約等の承認
    ※新設合併消滅会社・株式移転完全子会社が公開会社で、対価の全部又は一部が譲渡制限株式等である場合における当該会社の新設合併契約・株式移転計画の承認(804条1項)

②総株主の半数であって、総株主の議決権の4分の3以上の多数で決議

非公開会社における株主ごとに異なる権利内容を設ける場合(109条2項)の定款変更(当該定款の定めを廃止するものを除く)

<<累積投票とは?(取締役の選任) | 株主総会の決議取消しの訴え、決議無効確認の訴え、決議不存在確認の訴え>>

謝罪広告事件(最大判昭31.7.4)をわかりやすく解説|行書塾

論点

  1. 謝罪広告は憲法19条(思想及び良心の自由)に違反しないか?

事案

Yは、衆議院議員総選挙に立候補し、その選挙運動中に、新聞およびラジオで、対立候補Xが副知事であった時に、某発電所の建設にあたり、業者から800万円の斡旋料を受け取った事実を公表した。そこで、Xは虚偽の事実の公表により名誉を棄損されたとして名誉回復のための謝罪文の放送および掲載を求める訴えを提起した。

判決

謝罪広告は憲法19条(思想及び良心の自由)に違反しないか?

単に事態の真相を告白し、陳謝の意を表明するにとどまる程度において、違反しない

謝罪広告を強制することが債務者の人格を無視し、意思決定の自由ないし良心の自由を不当に制限することとなり、強制執行に適さない場合に該当することもありうる。

しかし、単に事態の真相を告白し、陳謝の意を表明するにとどまる程度のものにあっては、代替作為(謝罪の広告等への掲載)として強制執行もなしえるものと言わなければならない。

したがって、謝罪広告を新聞紙に掲載すべきことを命ずる判決は、Yの有する倫理的な意思、良心の自由を侵害することを要求するものとは解せられない。

つまり、単に事態の真相を告白し、陳謝の意を表明するにとどまる程度のものにあっては、謝罪広告の掲載を強制したとしても、Yの意思、良心の自由を侵害するものではない、ということです。

ノンフィクション逆転事件(最判平6.2.8)をわかりやすく解説|行書塾

論点

  1. 前科等のある者は、前科等の事実を公表されない法的保護は与えられるか?
  2. 前科等の公表規制と表現の自由との調整

事案

沖縄県がアメリカ合衆国の統治下にあったころ、Xら4名は米兵2名と殴り合いの喧嘩をし、米兵1名が死亡し、もう一方の米兵も負傷する事件が起きた。Xらはアメリカの高等裁判所により傷害罪について拘禁3年の実刑判決を受けた。

その後、Xは、仮出獄し、都内のバス運転会社に運転手として就職し、前科を隠して結婚もしており平穏な生活を送っていた。

Yは、上記裁判の陪審員として関与しており、その体験に基づき『逆転』と題する著作を執筆し、ノンフィクション賞という賞も受けた。

その後、Xは、無断で実名が使用されたため、前科に関わる事実が公表され、プライバシー権が侵害されたとして、Yに対して慰謝料300万円の支払いを請求する訴えを提起した。

判決

前科等のある者は、前科等の事実を公表されない法的保護は与えられるか?

→与えられる

前科等に関する事実は、その者の名誉あるいは信用に直接にかかわる事項であるから、その者は、みだりに前科等にかかわる事実を公表されないことにつき、法的保護に値する利益を有するものというべきである

前科等の公表規制と表現の自由との調整

→当事者の生活状況、事件の歴史的又は社会的な意義、その著作物の目的、性格等に照らした実名使用の意義及び必要性を併せて判断し、右の前科等にかかわる事実を公表されない法的利益がこれを公表する理由に優越するとき、その公表によって被った精神的苦痛の賠償を求めることができる

ある者の前科等にかかわる事実が著作物で実名を使用して公表された場合に、

その者のその後の生活状況、当該刑事事件それ自体の歴史的又は社会的な意義その者の事件における当事者としての重要性、その者の社会的活動及びその影響力について、

その著作物の目的、性格等に照らした実名使用の意義及び必要性を併せて判断し、

右の前科等にかかわる事実を公表されない法的利益がこれを公表する理由に優越するときは、

右の者は、その公表によって被った精神的苦痛の賠償を求めることができる。

つまり、「前科等にかかわる事実を公表されない法的利益」が「これを公表する理由」に優越するとき、Xは、その公表によって被った精神的苦痛の賠償を求めることができる

富山大学事件(単位不認定事件)をわかりやすく解説|行書塾

論点

  1. 大学での単位授与の認定に司法審査が及ぶか?

事案

富山大学経済学部の学生Xは、A教官の講義の履修届を提出した上で、受講していた。

しかし、A教官が成績原簿を偽造した疑いが生じ、それにより、経済学部長Yは、「A教官の授業担当停止の措置」および「学生に対する代替科目の受講の指示」を行った。

ところが、A教官は講義を続行し、Xもまた講義を受講し続け、A教官の試験を受験し、合格判定の成績を受けた。

しかし、Yは、Xの単位取得を認めなかった。

そこで、XはYを相手に単位不授与の決定の違法確認および単位取得認定の義務付けを求めて訴えを提起した。

判決

大学での単位授与の認定に司法審査が及ぶか?

及ばない

自律的な法規範を有する特殊な部分社会における法律上の争訟は、それが一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限りその自主的、自律的な解決に委ねるのを適当である。

そのため、特殊な部分社会である大学における法律上の係争について、当然に司法審査が及ぶわけではない

そして、単位授与は当然に一般市民法秩序と直接の関係を有するものではないことは明らかである。

したがって、単位授与(認定)行為は、特段の事情のない限り、裁判所の司法審査の対象にはならない

判例理解については、個別指導で解説いたします!

旭川学力テスト事件(最大判昭51.5.21)わかりやすく解説|行書塾

論点

  1. 普通教育における教師に対し、教授の自由は認められるか?
  2. 国は、教育内容について、決定する権能を有するか?

事案

昭和36年の全国中学校一斉学力調査の実施に対する反対運動のため、Xらは、実力阻止行動を行い、旭川市立永山中学校の校長の制止にも関わらず、当該中学校に侵入し、市教育委員会職員および校長に暴力・脅迫を加えた。そこで、Xらは、建造物侵入、公務執行妨害、共同暴行の罪で起訴された。

判決

普通教育における教師に対し、教授の自由は認められるか?

→一定の範囲に限って、認められない

学問の自由は、教授の自由を含む

子どもの教育が、「教師」と「子ども」との間の直接の人格的接触を通じ、その個性に応じて行わなければならない、という本質的な要請に照らし、教授の具体的「内容」及び「方法」につき、普通教育における教師に対して、ある程度自由な裁量が認められなければならないという意味においては、一定の範囲における教授の自由が保障される

しかし、大学教育の場合には、学生が一応教授内容を批判する能力を備えていると考えられるのに対し、

普通教育においては、①児童生徒に教授内容を批判する能力がなく、教師が児童生徒に対して強い影響力、支配力を有することを考え、
また、②普通教育においては、子どもの側に学校や教師を選択する余地が乏しく、教育の機会均等をはかる上からも全国的に一定の水準を確保すべき強い要請があることから

普通教育における教師に完全な教授の自由を認めることは、とうてい許されないところといわなければならない。

国は、教育内容について、決定する権能を有するか?

→必要かつ相当と認められる範囲において、決定する権能を有する

まず親は、子どもの教育に対する一定の支配権、すなわち子女の教育の自由を有すると認められるが、このような親の教育の自由は、①主として家庭教育等学校外における教育や学校選択の自由にあらわれるものと考えられるし、また、②私学教育における自由や教師の教授の自由も、それぞれ限られた一定の範囲においてこれを肯定するのが相当である

けれども、それ以外の領域においては、一般に社会公共的な問題について国民全体の意思を組織的に決定、実現すべき立場にある国は、国政の一部として広く適切な教育政策を樹立、実施すべく、また、しうる者として、憲法上は、あるいは子ども自身の利益の擁護のため、あるいは子どもの成長に対する社会公共の利益と関心にこたえるため、必要かつ相当と認められる範囲において、教育内容についてもこれを決定する権能を有する。

もっとも、教育内容に対する国家的介入についてはできるだけ抑制的であることが要請される。

判決文の全文はこちら>>

義務付け訴訟とは?要件・類型・判例をわかりやすく解説|行書塾

行政事件訴訟法の類型でも勉強した通り、主観訴訟の中の抗告訴訟の一つに「義務付けの訴え」があります。

主観訴訟とは、個人の権利利益の救済を目的とし、自分自身に直接関係する行政活動に対する訴訟を指し、抗告訴訟とは、行政庁の公権力の行使に関して違法でないかと不服がある場合の訴訟です。

義務付けの訴えとは?

義務付けの訴え義務付け訴訟)とは、下記場合において、行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求める訴訟を言います。
  1. 行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないとき(申請を前提としない義務付け訴訟非申請型義務付け訴訟
  2. 行政庁に対し一定の処分又は裁決を求める旨の法令に基づく申請又は審査請求がされた場合において、当該行政庁がその処分又は裁決をすべきであるにかかわらずこれがされないとき(申請を前提とする義務付け訴訟申請型義務付け訴訟

非申請型義務付け訴訟:1号義務付け訴訟

非申請型義務付け訴訟は、「非申請型」の通り、申請者でない者が行政庁に対して「こういった処分を行ってください!」と求める訴訟です。

例えば、甲市内に違法建築物があるにも関わらず、甲市が何ら権限を行使せず放っておいている場合、隣地の住民は、甲市に対して、建物の除去命令を下してください!と義務付けの訴えを提起することができます。

この場合、隣地の住民は、事前に何かしらの申請をしたかというと、何の申請もしていません。単に、隣地の住民は建物の除去命令がされないことにより、重大な損害を受ける可能性があるから除去命令を求めているだけです。

非申請型義務付け訴訟の訴訟要件

1号義務付け訴訟を提起できる要件は下記3つです。すべて満たした場合に適法となり審理されます。いずれか一つでも満たさない場合は、不適法として却下されます。

  1. 一定の処分がなされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあること
  2. その損害を避けるため他に適当な方法がないこと
  3. 行政庁が一定の処分をすべき旨を命ずることを求めるにつき法律上の利益を有する者であること

非申請型義務付け訴訟の勝訴要件

1号義務付け訴訟で原告が勝訴するためには下記2つのいずれかを満たす必要があります。

  1. 行政庁がその処分をすべきことが明らかであること
  2. 行政庁がその処分をしないことが裁量権の逸脱・濫用となると認められること

上記のいずれかを満たせば、認容判決(原告勝訴)となり、どちらも満たさない場合は棄却判決(原告敗訴)となります。

【比較表】非申請型と申請型の義務付け訴訟 要件の違い一覧

非申請型(1号)と申請型(2号)は混同しやすいため、訴訟要件・勝訴要件・併合提起の有無を表で整理しておきましょう。

比較項目 非申請型(1号) 申請型(2号)
前提となる申請 不要(第三者が提起) 必要(法令に基づく申請・審査請求が前提)
原告適格 法律上の利益を有する者 申請・審査請求をした者
損害要件 重大な損害のおそれ+補充性(他に適当な方法がないこと) 不要
併合提起 不要(単独提起が可能) 必要(不作為型→不作為の違法確認訴訟、拒否処分型→取消訴訟または無効等確認訴訟)
勝訴要件 処分をすべきことが明らか、または裁量権の逸脱・濫用 併合提起した訴訟に理由があり、かつ処分をすべきことが明らかまたは裁量権の逸脱・濫用
仮の義務付け 償うことのできない損害+本案について理由があるとみえるとき 同左

試験対策のポイント:非申請型は「重大な損害+補充性」が必要な一方、申請型は損害要件が不要で「併合提起」が必須です。この対比は択一式で頻出するため、セットで押さえておきましょう。

申請型義務付け訴訟:2号義務付け訴訟

申請型義務付け訴訟は、「申請型」の通り、申請したけど、拒否処分を下されたり、不作為状態が続く場合に、「申請に対して許可処分を下してください!」と義務付けよう求める訴訟です。

例えば、Aが甲県の建築主事に対して、建築確認の申請をした。しかし、建築主事は拒否処分をした。その場合、Aは甲県に対して、建築確認を認めてください!と義務付けを求めることが申請型義務付け訴訟です。

申請型義務付け訴訟の訴訟要件

2号義務付け訴訟を提起できる要件は、不作為型と拒否処分型とで異なり、それぞれ、2つの要件を同時に満たす必要があります。

不作為型
  1. 法令に基づく申請又は審査請求がなされたにも関わらず、相当期間内に処分または裁決がされなかったとき
  2. 不作為の違法確認の訴えと併せて提起すること
拒否処分型
  1. 法令に基づく申請又は審査請求が、却下または棄却された場合に、当該処分または裁決が取り消されるべきものであったり、無効または不存在であったとき
  2. 取消訴訟」又は「無効確認の訴え」と併せて提起すること

上記不作為型については、「不作為の違法確認訴訟」と関連する部分です。

申請型義務付け訴訟の勝訴要件

2号義務付け訴訟で原告が勝訴するための要件は「不作為型」と「拒否処分型」とで異なります。

不作為型 行政庁が処分・裁決すべきことが根拠法令から明らかである場合
拒否処分型 行政庁が処分・裁決をしないことが裁量権の逸脱・濫用である場合

上記を満たせば、認容判決(原告勝訴)となり、満たさない場合は棄却判決(原告敗訴)となります。

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