テキスト

東大ポポロ事件とは?大学の自治・学問の自由の判例をわかりやすく解説|行書塾

ポポロ事件(東大ポポロ事件)とは?

ポポロ事件(東大ポポロ事件)とは、東京大学の学生団体「ポポロ劇団」の演劇発表会に私服警察官が立ち入ったことをきっかけに、大学の自治と学問の自由の範囲が争われた憲法上の重要判例です(最大判昭和38年5月22日)。

行政書士試験では、憲法23条(学問の自由)の論点として頻出であり、以下の4つのポイントを正確に押さえることが合格への鍵となります。

  • 教授の自由の憲法上の位置づけ
  • 大学の自治が認められる範囲(人事・施設管理・学生管理)
  • 政治的社会的活動と学問の自由の区別
  • 学生の権利が大学の自治の「効果」として認められるにすぎないこと

本記事では、ポポロ事件の事案・争点・判決を、行政書士試験対策の視点からわかりやすく整理します。

論点

  1. 教授の自由は憲法上保障されるか?
  2. 大学の自治の内容は?
  3. 政治的社会的活動に当たる行為は、憲法23条(学問の自由)によって保障されるか?
  4. 大学生が、学問の自由を享有し、また大学当局の自治的管理による施設を利用できる範囲は?

事案

東京大学の学生団体「ポポロ劇団」は、大学の許可を得て、同大学の教室内において、松川事件を題材とする演劇を行っていた。

この松川事件とは、国鉄の労働組合が、国鉄への反発として、機関車を脱線させた事件で、社会的な事件と言えます。

このようなテーマを題材として演劇を行っているため、私服警察は、大学の正式な許可を得て大学の教室内で客としてみていた。

この演劇を発表している際、観客の中に私服警官がいるのを学生が発見し、学生が警官の身柄を拘束し、警察手帳を奪い、謝罪文を書かせた。

この際、被告人Yは、洋服内のポケットに手を入れ、服のボタンをもぎ取るなど、暴行を加えたとして、起訴された。

学生は、大学の自治を主張して争われた。

判決

教授の自由は憲法上保障されるか?

→憲法23条は、教授の自由を必ずしも含むものではないが、大学における教授の自由は、憲法の趣旨と学校教育法52条に基づいて保障されている。

憲法23条(学問の自由は、これを保障する。)は、広くすべての国民に対して、「学問的研究の自由」と「その研究結果の発表の自由」を保障するとともに、特に大学におけるそれらの自由を保障することを趣旨とする。

一方、「教育ないし教授の自由」は、学問の自由と密接な関係を有するけれども、必ずしもこれに含まれるものではない。

しかし、大学については、憲法の趣旨と学校教育法52条により、教授その他の研究者が、その専門の研究の結果を教授する自由が保障される。

大学の自治の内容は?

→人事に関して認められ、また、大学の施設と学生の管理についてもある程度認められる。

大学における学問の自由を保障するために、伝統的に大学の自治が認められる。

この自治は、特に大学の教授その他の研究者の人事に関して認められ、大学の学長、教授その他の研究者が大学の自主的判断に基づいて選任される。

また、大学の施設と学生の管理についてもある程度認められ、これらについてある程度で大学に自主的な秩序維持の権能が認められている。

政治的社会的活動に当たる行為は、憲法23条(学問の自由)によって保障されるか?

→保障されない

大学における学生の集会(本件演劇)も、実社会の政治的社会的活動に当たる行為をする場合には、大学の有する特別の学問の自由と自治は享有しない。

本件集会(演劇)は、真に学問的な研究と発表のためのものではなく、実社会の政治的社会的活動であり、大学の学問の自由と自治は享有しない。

したがって、本件の集会に警察官が立ち入ったことは、大学の学問の自由と自治を侵すものではない。

大学生が学問の自由を享有し、また大学当局の自治的管理による施設を利用できる範囲は?

大学の学問の自由と自治は、大学が学術の中心として深く真理を探求し、専門の学芸を教授研究することを本質とすることに基づく。

そのため、大学の学問の自由と自治は、直接には、『「教授その他の研究者」の「研究、その結果の発表、研究結果の教授の自由」』と『これらを保障するための自治』を意味する。

大学の施設と学生は、これらの自由と自治の効果として、施設が大学当局によって自治的に管理され、学生も学問の自由と施設の利用を認められるのである。

そして、憲法23条の学問の自由は、学生も一般の国民と同じように享有する。

しかし、大学の学生として、一般国民以上に学問の自由を享有し、また大学当局の自冶的管理による施設を利用できるのは、大学の本質に基づき、大学の教授その他の研究者の有する特別な学問の自由と自治の効果としてである。

 

判決文の全文はこちら>>

プログラム規定説とは?抽象的権利説・具体的権利説との違いをわかりやすく解説|行書塾

【早わかり】生存権をめぐる3学説 比較表

プログラム規定説抽象的権利説具体的権利説
法的権利性なし(努力目標にすぎない)ありあり
裁判規範性なし25条のみでは なし
(具体化立法があれば あり)
あり
(25条を直接根拠に訴訟提起可)
国の義務政治的・道義的義務のみ法的義務あり(立法裁量は広い)法的義務あり(不作為も違憲となりうる)
判例との関係食糧管理法違反事件で採用学説上の通説的立場少数説

このように、3つの学説は「法的権利性」と「裁判規範性」の有無で区別されます。行政書士試験では、各説の結論だけでなく、裁判で争えるかどうかの違いまで正確に押さえておくことが得点に直結します。以下で各学説の内容を詳しく見ていきましょう。

プログラム規定説とは、憲法25条の生存権は国の政治的・道義的な努力目標(プログラム)にすぎず、国民に具体的な請求権を認めない考え方です。これに対し、抽象的権利説は法的権利性を認めつつも具体化立法がなければ裁判で争えないとし、具体的権利説は法律がなくても直接25条に基づいて訴訟提起できるとします。判例(食糧管理法違反事件)はプログラム規定説の立場を採用しており、行政書士試験では三説の違いと裁判規範性の有無を正確に整理しておくことが重要です。

憲法第25条
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

日本国憲法は、生存権(25条)、教育を受ける権利(26条)、勤労の権利(27条)、労働基本権(28条)という社会権を保障しています。

そして、この25条(生存権)は、国民が誰でも、人間的な生活を送ることができることを権利として宣言したものです。上記第1項の趣旨を実現するために、第2項は、国に生存権の具体化について努力する義務を課しています。それを受けて、具体的に生活保護法や児童福祉法、身体障害者福祉法、国民年金法、国民健康保険法等の社会保障制度が設けられています。

プログラム規定説(判例:食糧管理法違反事件)

まず初めに問題になるのが、生存権に「法的権利性」があるかどうかです。

一つの考え方として、「プログラム規定説」という考え方があります。この考え方によると、生存権は、上記の通り、25条によって、国民が最低限度の生活を営むことができるように国に対して努力するよう要求しているだけであって、国民は国に対して「具体的な措置を講ずるよう請求できる権利」はありません(=法的権利性なし、法的権利性を否定した考え方)。

つまり、国が自主的に、生存権の保障のために、法律を作りなさいよ!と憲法25条で定めているだけだということです。具体的な法律の定めることは国の自由な裁量権に委ねられることになります。

さらに、プログラム規定説によると、「国民に対する具体的な請求権」もなければ、「国が法律を定める義務」もないため、生存権に基づいて訴えを提起することはできません(裁判規範性なし)。

抽象的権利説と具体的権利説

これに対して、生存権について「法的権利性を肯定する」見解もあります。つまり、25条は国に対して、国民が最低限度の生活が送れるための法律を定めること、またそのための予算を付けることを法的義務としている考え方です。この考え方をするのが「抽象的権利説」と「具体的権利説」です。どちらも、法的権利性はあります。違いは裁判規範性があるかどうかです。言い換えると、生存権に基づいて、裁判で争えるかどうかです。

そして、判例では、生存権は、プログラム規定説を採用しています。

抽象的権利説

抽象的権利説とは、生存権は25条に基づいて訴えを起こすことができず(裁判規範性なし)、具体化する法律があって初めて訴えを起こすことができる(裁判規範性あり)という考え方です。

上記2項のように、生活保護法などの法律違反がある場合に限って、その法律違反に基づいて訴訟提起できるということです。言い換えると、生存権は抽象的な権利であるため、生存権に違反するからといって訴訟提起はできないということです。

具体的権利説

具体的権利説とは、生存権は憲法25条で保障されている具体的な権利だから、法律がなくても、直接25条に基づいて訴訟提起できる(裁判規範性あり)という考え方です。

上記の2項のように生活保護法等の法律がなくても、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を有していない場合、25条の生存権侵害を理由に訴訟提起できるという考え方です。しかし、判例では、具体的権利説は採用していません。

生存権に関する重要判例

  • 『第25条第2項において、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と規定しているのは、社会生活の推移に伴う積極主義の政治である社会的施設の拡充増強に努力すべきことを国家の任務の一つとして宣言したものである。そして、同条第1項は、同様に積極主義の政治として、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得るよう国政を運営すべきことを国家の責務として宣言したものである。それは、主として社会的立法の制定及びその実施によるべきであるが、かかる生活水準の確保向上もまた国家の任務の一つとせられたのである。すなわち、国家は、国民一般に対して概括的にかかる責務を負担しこれを国政上の任務としたのであるけれども、個々の国民に対して具体的、現実的にかかる義務を有するのではない。言い換えれば、この規定により直接に個々の国民は、国家に対して具体的、現実的にかかる権利を有するものではない。社会的立法及び社会的施設の創造拡充に従って、始めて個々の国民の具体的、現実的の生活権は設定充実せられてゆくのである。』として、25条がプログラム規定説であることを示した。(最大判昭23.9.29:食糧管理法違反事件)
  • 結核を患っていたXが生活保護法に基づく医療扶助及び生活扶助を受けていました。しかし、Xの兄からの仕送りがあることを理由に、扶助打ち切りとなり、争られた。
    これに対して最高裁は、「憲法25条1項はすべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得るように国政を運営すべきことを国の責務として宣言したにとどまり、直接個々の国民に具体的権利を賦与したものではない」とし、25条の法的権利性を否定している点では、プログラム規定説を採用しています。
    一方で、「何が健康で文化的な最低限度の生活であるかの認定判断は、厚生大臣の合目的な裁量に委されてる。そしてその判断は、当不当の問題として政府の政治責任が問われることはあっても、裁量の逸脱と濫用がある場合以外は、違法の問題は生じない」として
    裁量権の著しい逸脱がある場合、司法審査の可能性を認めるということから「裁判規範性を肯定」しています。そのため、「裁判規範性あり」という点では、プログラム規定説には当てはまらないので、25条は、完全なプログラム規定説ではないと解されています。(最大判昭42.5.24:朝日訴訟)
  • 障害年金を受給していた者が、子を育てていたため、児童扶養手当の受給申請をした。
    しかし、障害年金と児童扶養手当を同時に受給することはできない併給禁止の規定があり、申請が却下され、争われた。
    これに対して最高裁は、
    「憲法25条の『健康で文化的な最低限度の生活』とは、きわめて抽象的・相対的な概念であり、立法による具体化が必要であり、具体的な立法措置を講ずるかの選択決定は、多方面にわたる複雑多様な、しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものであり、立法府の広い裁量に委ねられている。」として25条の法的権利性は否定した。
    また一方で、「立法府の措置が著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるをえないような場合を除き、裁判所が審査判断するのに適しない事柄であるといわなければならない」として、裁量の逸脱・濫用の場合は、司法審査の対象となるとのことなので、裁判規範性ありと判断しました。そのため、『朝日訴訟』同様、プログラム規定説ではあるが、裁判規範性はあると解釈しました。(最大判昭57.7.7:堀木訴訟)

<<職業選択の自由(憲法22条) | 教育を受ける権利(憲法26条)>>

行政事件訴訟法とは?全体像・訴訟類型を図解でわかりやすく解説|行書塾

行政事件訴訟法の訴訟類型【全体構造マップ】

行政事件訴訟法で定められた訴訟は、「誰のために争うか」で大きく2つに分かれます。まず全体像を押さえてから、各類型の詳細に進みましょう。

行政事件訴訟

■ 主観訴訟

個人の権利利益の救済が目的

抗告訴訟

  • 取消訴訟
  • 無効等確認の訴え
  • 不作為の違法確認の訴え
  • 義務付けの訴え
  • 差止めの訴え

当事者訴訟

  • 形式的当事者訴訟
  • 実質的当事者訴訟

■ 客観訴訟

行政の適法性の確保が目的

  • 民衆訴訟 ― 選挙人など一般資格で提起
  • 機関訴訟 ― 国・公共団体の機関相互の争い

主観訴訟は自分の権利を守る訴え、客観訴訟は法秩序を守る訴えと整理すると覚えやすくなります。

行政事件訴訟法とは?

行政事件訴訟法は、裁判によって、違法な行政活動によって権利利益を侵害された国民の救済を図るものです。

行政不服審査法 違法または不当な行政行為
行政事件訴訟法 違法な行政行為(不当な行政行為は行政事件訴訟法の対象外)

訴訟は、民事訴訟、刑事訴訟、行政事件訴訟に区別でき、行政事件訴訟法は、公権力の行使に関する争いを含む公法上の法律関係に関する紛争解決を目的としてます。

民事事件 民事訴訟法
刑事事件 刑事訴訟法
行政事件 行政事件訴訟法

行政事件訴訟法の経緯

1945年(昭和20年)第二次世界大戦が終戦。

1946年(昭和21年)日本国憲法が公布。

1948年(昭和23年)に「行政事件訴訟特例法」が制定(戦後に制定)。

行政事件訴訟特例法は、民事訴訟法の特例を定めたものであり、全文でわずか12条のみの簡単なものでした。この法律は、制定が急がれたため、欠陥も多かったため、
1962年(昭和37年)に法改正され、現行の「行政事件訴訟法」が制定されました。

行政事件訴訟法の類型

行政事件訴訟法は大きく分けて主観訴訟と客観訴訟に分けることができます。

主観訴訟は、個人の権利利益の救済を目的とし、自分自身に直接関係する行政活動に対する訴訟を指し、客観訴訟は、行政の適法性の確保を目的とし、自分には直接関係ない行政活動に対する訴訟を指します。

主観訴訟

主観訴訟とは、個人の権利利益の救済を目的とし、自分自身に直接関係する行政活動に対する訴訟を指し、大きく分けて、抗告訴訟と当事者訴訟に分けることができます。

主観訴訟は、個人の権利利益が侵害され、または侵害されそうになっている場合、その救済を求める訴えを指します。

抗告訴訟とは、行政庁の公権力の行使に関して違法でないかと不服がある場合の訴訟で、当事者訴訟は、当事者間の公法上の法律関係を争う訴訟です。

抗告訴訟

抗告訴訟には、下記5つがあります。詳細は下記リンク先で解説しています。

  1. 取消訴訟(処分の取消しの訴え、裁決の取消しの訴え)
  2. 無効等確認の訴え
  3. 不作為の違法確認の訴え
  4. 義務付けの訴え
  5. 差止めの訴え

当事者訴訟

当事者訴訟には、下記2つがあります。詳細は下記リンク先で解説しています。

  1. 形式的当事者訴訟
  2. 実質的当事者訴訟

客観訴訟

客観訴訟は、行政の適法性の確保を目的とし、自分には直接関係ない行政活動に対する訴訟を指し、民衆訴訟と機関訴訟があります。

この客観訴訟は、行政活動が法律に違反している場合に個人の利益に関係なく、違法状態を回復するための訴訟です。

<<行政不服審査法 | 取消訴訟の概要|原処分主義、裁決主義、審査請求前置主義>>

 

三菱樹脂事件(最大判昭48.12.12)とは?私人間効力・間接適用説をわかりやすく解説|行書塾

この判例で押さえるべき3つのポイント

  • 私人間への憲法の直接適用は否定:憲法の人権規定は「国・公共団体と個人」の関係を規律するものであり、私人同士の関係には直接適用も類推適用もできないとされた。
  • 間接適用説を採用:私人間の人権侵害には、民法1条(信義則・権利濫用)や民法90条(公序良俗)などの一般条項を介して憲法の趣旨を及ぼすことで調整を図る。この立場が判例・通説であることは行政書士試験の頻出論点である。
  • 企業の採用の自由を広く認容:会社は契約締結の自由(憲法22条)に基づき、特定の思想・信条を理由に採用を拒否しても当然には違法とならず、応募者の思想に関する事項を質問することも許容されるとした。

論点

  1. 私人間において、憲法の人権規定を直接適用できるか?
  2. 特定の思想を有することを理由に採用を拒否することは違法か?
  3. 会社の入社の選考にあたり、応募者の思想に関する事項を尋ねることは違法か?

事案

Xは、大学在学中に、三菱樹脂株式会社Yの採用試験に合格し、翌年、卒業後、Yに3か月の試用期間を設けて採用された。しかし、入社試験(面接など)の際に、「学生運動などの事実を秘匿する(隠す)虚偽の申告をしたこと」を理由に、本採用を拒否する旨の告知を受けた。そのため、Xは、労働契約関係存在の確認を求めて出訴した。

私人間効力における3つの学説比較

三菱樹脂事件を理解するうえで重要な、私人間における憲法の適用に関する3つの学説を整理します。

学説 内容 問題点
直接適用説 憲法の人権規定を私人間にも直接適用する 私的自治の原則を大きく制約し、契約自由の原則が形骸化するおそれがある
間接適用説(判例・通説) 民法90条(公序良俗)や民法709条(不法行為)などの私法の一般条項を通じて、憲法の趣旨を間接的に及ぼす 一般条項の解釈に委ねられるため、裁判官の裁量が大きくなる
無適用説 憲法は国家と個人の関係のみを規律し、私人間には一切適用されない 社会的権力による人権侵害に対して救済が困難となる

本判決では、最高裁が間接適用説の立場を採用しました。憲法の人権規定は直接適用できないとしつつも、民法の信義則・権利濫用・公序良俗などの規定を介して私人間の権利調整を図るという考え方です。行政書士試験では、この間接適用説が判例の立場であることを正確に押さえておくことが重要です。

判決

私人間において、憲法の人権規定を直接適用できるか?

→直接適用できない

憲法19条、14条(下記参照)は、もっぱら、「国または公共団体」と「個人」との関係を規律するものであり、私人相互の関係を直接規律するものではない。

もっとも、私人間の関係においても、相互の社会的力関係の相違から、会社Yが優越し、事実上、従業員Xが会社Yの意思に服従せざるを得ない場合もあるが、そのような場合にも、人権規定の適用・類推適用はできない。

なぜなら、私人間の事実上の支配関係は様々で、どのような場合に「国等の支配と同視すべきか」の判定が困難であるから。

ただし、私的支配関係において、個人の自由・平等に対する侵害がある場合には、民法1条の信義則や権利濫用、民法90条の公序良俗や不法行為に関する諸規定によって調整を図ることは可能である。

憲法第19条
思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

憲法第14条
すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

特定の思想を有することを理由に採用を拒否することは違法か?

→違法ではない

憲法第22条(何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する)において、経済活動の自由を人権として保障している。

そのため、会社は、経済活動の一環として、契約締結の自由を有しており、「どのような労働者」を「どのような条件」で雇用するかを決定する自由がある。

したがって、会社が、特定の思想・信条を有するがゆえに、その者を雇うことを拒んでも、それを当然に違法とすることはできない。

会社の入社の選考にあたり、応募者の思想に関する事項を尋ねることは違法か?

→違法ではない

上記の通り、労働者を採用するか否かの決定にあたり、労働者の思想・信条を調査し、そのためその者から関連する事項についての申告を求めることも違法ではない。

砂川事件とは?判旨・論点をわかりやすく解説|行書塾

砂川事件の結論まとめ

争点 日米安全保障条約の合憲性について、裁判所が司法審査を行うことができるか
結論 原則として司法審査は及ばない(統治行為論)
理由 安全保障条約は高度の政治性を有し、違憲かどうかの判断は内閣・国会の政治的裁量と表裏をなすため、一見極めて明白に違憲無効と認められない限り、裁判所の審査権の範囲外となる

行政書士試験では、統治行為論の適用範囲として砂川事件と苫米地事件の違いが頻出です。砂川事件は「条約」に対する司法審査の限界、苫米地事件は「衆議院の解散」に対する司法審査の限界を扱った判例として、セットで押さえましょう。

論点

  1. 安全保障条約に司法審査が及ぶか?

事案

国は、米軍立川飛行場の拡張計画を考えていたが、当該計画に反対した砂川町の住民が反対運動をした。それにもかかわらず、国が拡張のための測量を開始したので、1000名以上の集団が境界柵の外側に集合し、その中の一部の者が境界柵を破壊した。破壊された境界柵から立ち入り禁止場所に入ったところ、この行為が法律に違反するとして、起訴された。

判決

安全保障条約に司法審査が及ぶか?

→及ばない

本件安全保障条約は、主権国としてのわが国の存立の基礎に極めて重大な関係をもつ高度の政治性を有するものというべきであって、安全保障条約の内容が違憲か否かの法的判断は、その条約を締結した内閣およびこれを承認した国会の高度の政治的ないし自由裁量的判断と表裏をなす。

それ故、右違憲か否かの法的判断は、司法裁判所の審査には、原則としてなじまない性質のものであり、一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外のものである。

そして、本件安全保障条約は、違憲無効であることが一見きわめて明白であるとは到底認められないため、司法審査は及ばない。

議会の権限(①議決権、②選挙権、③監査権、④自律権)

地方公共団体の議会には、普通地方公共団体の意思決定機関としての①議決権と、②選挙権、③監査権、④自律権といった権限があります。

議決権

普通地方公共団体の議会が行う議決事件は、必ず議決しなければならない必要的議決事件と、必要に応じて条例で議決事項に定めることができる任意的議決事件があります。

必要的議決事件

必要的議決事項は15項目に限定されています(制限列挙)。その中でも、行政書士の試験で出題されやすいものは、下記5つなので、それだけでも頭に入れておきましょう!

  1. 条例の制定と改廃
    条例の提案権は、一般的には、議会と長の双方にある。特定の場合のみいずれかのみに専属する。
  2. 予算の議決
    議会は、予算を増額修正できるが、長の予算発案権の侵害となるような修正は許されない。
    また、議会は、長が提出した予算案を減額修正できる。減額修正には、増額修正のような長の予算提出権に関する特別の制限はない。
  3. 決算の認定
  4. 地方税の賦課徴収又は分担金、使用料、加入金若しくは手数料の徴収に関すること
  5. 条例で定める重要な公の施設につき条例で定める長期かつ独占的な利用をさせること

任意的議決事件

上記以外にも条例で普通地方公共団体に関する事件につき、議会の議決すべきものを定めることができます。

そして、自治事務については、すべて任意的議決事件の対象となります。

一方、法定受託事務については、国の安全に関することなど普通地方公共団体の議会で議決すべきでないもの以外は、任意的議決事件の対象となります。

選挙権

議会は、議長、副議長、選挙管理員等の選挙を行わなければなりません。

監査権

住民の代表機関である議会は、長などの執行機関の行為が適正に行われているかを監視する権限(同意権、調査権、書類の検閲・検査権、監査請求権)を持っています。

同意権

地方公共団体の長が、「副知事、副市町村長、監査委員、教育委員会の委員、都道府県公安委員会の委員」などを選任する場合、議会の同意が必要となります。

調査権(100条調査権)

地方公共団体の議会は、地方公共団体の事務に関する調査を行うことができ、地方自治法第100条に規定された権利なので、100条調査権と言います。

ほとんどの事務が100条調査権の対象になりますが、
「自治事務については、労働委員会、収用委員会の権限に属する事務」は対象外となり、「法定受託事務については、国の安全、個人の秘密にかかわるもの」は対象外となります。

調査を行うために特に必要があると認めるときは、選挙人その他の関係人の出頭および証言ならびに記録の提出を請求することができます。

この100条調査権については、2013年、当時の東京都知事であった猪瀬直樹知事が徳洲会グループより5000万円を受け取った事件で使われています。ただし、東京都議会が百条委員会の設置を決定し、百条調査権を行使しようとする前に、猪瀬知事は辞職しました。

書類の検閲・検査権

議会は、普通地方公共団体の事務に関して書類等を検閲し、執行機関の報告を請求して、事務の管理、議決の執行および出納を検査することができます。

分かりやすく言えば、議会で決めたとおりに仕事をしているか、検査・調査するわけです。

この検査の対象についても、100条調査権同様下記については検査の対象外となっています。

「自治事務については、労働委員会、収用委員会の権限に属する事務」は検査権の対象外となり、「法定受託事務については、国の安全、個人の秘密にかかわるもの」は検査権の対象外となります。

監査請求権

議会は、監査委員に対し、普通地方公共団体に関する監査を求め、監査の結果に対する報告を請求することができます。

この監査請求の対象についても、100条調査権同様下記については検査の対象外となっています。

「自治事務については、労働委員会、収用委員会の権限に属する事務」は監査請求の対象外となり、「法定受託事務については、国の安全、個人の秘密にかかわるもの」は監査請求の対象外となります。

自律権

議会の自律権とは、議会自らの意思で、議会の組織・運営の決定や処理する権利のことを言い、「会議規則の制定権、会期の決定権、懲罰権、自主的に解散する権利」等があります。

懲罰権の判例(最判昭35.10.19)(最大判令2.11.25)

地方議会議員の除名処分・地方議会議員の議会への出席停止処分は議会の内部規律の問題に当たらないため司法審査が及ぶ。

行政書士テキスト無料【2026年版】|行書塾

行政書士試験の無料テキスト(行政法)

行政組織

行政立法

  • 行政立法(法規命令:執行命令・委任命令)(行政規則:訓令・通達)

行政行為

行政法総論

行政手続法

行政不服審査法

行政事件訴訟法

国家賠償法と損失補償

地方自治法

行政書士試験の無料テキスト(憲法)

目次

人権

統治

行政書士試験の無料テキスト(民法)

目次

総則

物権

債権

親族

行政書士試験の無料テキスト(商法)

商法

行政書士試験の無料テキスト(会社法)

株式会社の設立

株式

株式会社の機関

株式会社の計算

持分会社

組織再編

行政書士試験の無料テキスト(基礎知識)

2026年度(令和8年度)試験対応・無料テキストの効果的な使い方

当サイトの無料テキストは2026年度(令和8年度)行政書士試験の出題範囲・法改正に対応しています。独学で合格を目指す方は、以下の手順で学習を進めると効率的です。

  • まず行政法から着手する:配点が最も高い行政法(112点/300点)を最優先で学習し、得点源を確保します。上記の目次順に「行政組織→行政立法→行政行為」と進めてください。
  • テキストを読んだら過去問を解く:各単元を読み終えたら、すぐに該当範囲の過去問に取り組みましょう。インプットとアウトプットを交互に繰り返すことで記憶が定着します。
  • 民法は事例で理解する:民法は暗記だけでは対応できません。テキストの条文解説を読んだ後、具体的な事例問題で「なぜその結論になるか」を自分の言葉で説明できるまで復習しましょう。
  • 週1回の復習日を設ける:半年〜1年の学習計画を立て、週に1日は前週までの内容を振り返る日を確保すると、試験直前期の負担を大幅に減らせます。

すべてのテキストはPDFでダウンロード可能です。スマートフォンやタブレットに保存しておけば、通勤・通学中のスキマ時間にも学習を進められます。

最大判昭47.11.22:川崎民商事件

論点

  1. 旧所得税法に規定する収税官吏の検査は、憲法35条1項に違反するか?
  2. 旧所得税法に規定する収税官吏の質問・検査は、憲法38条に違反するか?

事案

昭和38年に、自宅店舗において川崎税務署収税官吏が、Xの所得税確定申告調査のため帳簿書類等の検査をしようとしていた。

これに対し、Xは、「何回くるんだ、事前通知がなければ調査に応じられない」などと大声をあげたり、また「あちらへ行こう」と収税官吏を引っ張ったりするなど、上記検査を拒んだ。

これが旧所得税法に違反するとしてXは起訴された。

憲法第35条(住居の不可侵)
何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、現行犯逮捕の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。

憲法第38条(黙秘権)
何人も、自己に不利益な供述を強要されない。

川崎民商事件の試験出題ポイント

川崎民商事件は、憲法35条(令状主義)と38条(黙秘権)が行政手続にも及ぶかという論点で繰り返し出題されています。判決の結論だけでなく、最高裁の論理構造を正確に押さえることが得点の鍵です。

頻出の出題パターン

  • 「刑事手続でないから憲法35条の保障は一切及ばない」→誤り。最高裁は、刑事手続でないとの理由のみで保障の枠外とは判断できないとしつつ、総合判断で令状不要と結論づけています。この「完全排除ではないが違反ではない」という二段構えの論理が引っかけポイントです。
  • 「行政調査には令状が常に不要である」→誤り。本判決はあくまで間接強制(罰則による心理的強制)の事案です。直接的物理的強制と同視すべき程度に達する行政調査であれば、令状が必要となる余地を残しています。
  • 「憲法38条1項の保障は純然たる刑事手続にのみ及ぶ」→誤り。判決は、刑事手続以外でも刑事責任追及のための資料取得に直接結びつく手続には保障が及ぶとしています。

関連判例との横断整理

川崎民商事件の理解を深めるには、荒川民商事件(最大判昭和48.7.10)も併せて確認しましょう。荒川民商事件では旧所得税法の質問検査権の範囲がさらに具体化されています。また、行政調査と刑事手続の区別という観点では、交通事故報告義務事件(最大判昭37.5.2)も憲法38条との関係で出題されるため、3判例をセットで整理しておくと択一式で確実に得点できます。

判決

旧所得税法に規定する収税官吏の検査は、憲法35条1項に違反するか?

→違反しない

旧所得税法の規定する検査拒否に対する罰則は、収税官吏による当該帳簿等の検査の受忍をその相手方に対して強制する作用を伴なうものである。

しかし、収税官吏の検査は、もつぱら、所得税の公平確実な賦課徴収のために必要な資料を収集することを目的とする手続であって、その性質上、刑事責任の追及を目的とする手続ではない。

また、当該検査が、実質上、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有するものと認めるべきことにはならない。

さらに、強制の態様は、収税官吏の検査を正当な理由がなく拒む者に対し、刑罰を加えることによつて、間接的心理的に右検査の受忍を強制しようとするものであるが、実質上、直接的物理的な強制と同視すべき程度にまで達しているものとは、いまだ認めがたい。

憲法35条1項の規定は、本来、主として刑事責任追及の手続における強制について、それが司法権による事前の抑制の下におかれるべきことを保障した趣旨であるが、当該手続が刑事責任追及を目的とするものでない(収税官吏の検査)との理由のみで、その手続における一切の強制が当然に右規定による保障の枠外にあると判断することは相当ではない。

つまり、収税官吏の検査においても、憲法35条1項の保障の範囲外とは判断できない。

しかし、総合して判断すれば、収税官吏の検査は、あらかじめ裁判官の発する令状によることをその一般的要件としないからといって、憲法35条に違反しているとはいえない。

旧所得税法に規定する収税官吏の質問・検査は、憲法38条に違反するか?

→違反しない

憲法38条1項は、何人も自己の刑事上の責任を問われるおそれのある事項について供述を強要されないことを保障したものである。

そして、上記保障は、純然たる刑事手続においてばかりではなく、それ以外の手続においても、実質上、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する手続には、等しく及ぶものと解するのを相当とする。

しかし、収税官吏の検査、質問の性質が上述のようなものである以上、当該検査、質問の規定そのものが憲法38条1項にいう「自己に不利益な供述」を強要するものとすることはできず、この点の所論も理由がない。(=違反ではない)

小売市場距離制限事件をわかりやすく解説|規制目的二分論の原点【最大判昭47-11-22】

論点

  1. 営業の自由は憲法上保障されているか?
  2. 小売市場の許可規制は憲法22条1項(職業選択の自由)に違反しているか?

事案

X1株式会社は、市場経営を業とする法人であった。その代表者であるX2が、大阪府知事の許可を受けないで、東大阪市に平家(平屋)建て1棟を建設し、新しく小売市場とするために野菜商4店舗、生鮮魚介類商3店舗を含む49店舗を小売商人ら47名に貸し付けた。
この行為が、小売商業調整特別措置法第3条第1項に違反するとして、X1とX2が起訴された。

※小売商業調整特別措置法第3条第1項では、上記小売市場とするため、建物を貸し付ける行為については許可が必要であると規定しており、一方、許可の基準として、小売市場間の距離制限700m(半径700m以内に小売市場を設置できない)が設けられている。

判決

営業の自由は憲法上保障されているか?

→保障されている

憲法22条1項の職業選択の自由は、広く一般に、いわゆる営業の自由を保障する趣旨を包含している。

小売市場の許可規制は憲法22条1項(職業選択の自由)に違反しているか?

→違反していない(合憲)

国が積極的な社会経済政策の実施の一手段として、立法により個人の経済活動に対し一定の規制措置を講ずることは、それが目的達成のため必要かつ合理的な範囲にとどまる限り、憲法に反しない。

したがって、個人の経済活動に対する法的規制措置は、立法府がその裁量権の逸脱し、当該法的規制措置が著しく不合理であることの明白な場合に限って、これを違憲とすることができる。

本法による小売市場の許可規制は、国が社会経済の調和的発展を企図し、中小企業保護政策として採った措置であり、その目的において、一応の合理性を認めることができるし、規制の手段・対応においても著しく不合理であることが明白であるとは認められない。

したがって、小売市場の許可規制は、憲法22条1項に反せず、違憲ではない。

レペタ事件(レペタ訴訟)とは?法廷メモの自由をわかりやすく解説【最大判平元-3-8】

論点

  1. 法廷でメモを取る自由は、憲法で保障されているか?
  2. 法廷でメモを取る行為を制限することはできるか?

事案

アメリカ国籍のレペタ氏Xは、アメリカワシントン州の弁護士で、国際交流基金の特別研究員として日本で経済法の研究を行っていた。その一環として、所得税法違反の事件の各公判を傍聴した。Xは、各公判期日の前に、担当裁判長に対して、7回にわたり傍聴席においてメモを取ることの許可を求めたが、いずれも許可されなかった。

そのためXは、上記不許可は憲法に違反するとして、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めた。

判決

法廷でメモを取る自由は、憲法で保障されているか?

→憲法21条1項の精神に照らし尊重に値する

憲法21条1項では「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」としている。

そして、各人が自由にさまざまな意見、知識、情報に接し、これを摂取する機会を持つことは、その者が個人として自己の思想及び人格を形成、発展させ、社会生活の中にこれを反映させていく上で欠くことのできないものである。

このような情報に接し、これを摂取する自由は上記趣旨、目的から、いわばその派生原理として当然導かれるところである。

ただし、筆記行為は、一般的には人の生活活動の一つであり、生活のさまざまな場面において行われ、極めて広い範囲に及んでいるから、そのすべてが憲法の保障する自由に関係するものということはできない。

しかし、情報等の摂取を補助するためにする筆記行為の自由は、憲法21条1項の規定の精神に照らして尊重されるべきである。

法廷でメモを取る行為を制限することはできるか?

→特段の事情のない限り、制限することはできない

情報等の摂取を補助するためにする筆記行為の自由も、「他者の人権との調整」や「優越する公共の利益を確保する必要」から一定の合理的制限をうけることはやむを得ない。

しかも、筆記行為の自由は、憲法21条1項によって直接保障される表現の自由と異なり、その制限には、表現の自由に制約を加える場合の厳格な基準が要求されるものではない。

そして、公正かつ円滑な訴訟の運営は、傍聴人がメモを取ることに比べればはるかに優越する法益である。

しかし、傍聴人のメモを取る行為が公正かつ円滑な訴訟の運営を妨げることは通常ありえず、特段の事情がない限り、これを傍聴人の自由に任せることが憲法21条1項の趣旨に合致する。