テキスト

表現の自由(憲法21条)

憲法第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
憲法19条の思想・良心の自由は、内心の自由で、 憲法21条の表現の自由は、思想や信仰等の内心を外部に発表する自由を指します。 そして、表現の自由は思想や情報を発表し、伝達する自由ですが、情報伝達には「送り手」と「受け手」が存在します。そのため、「送り手の自由」と「受け手の自由」が存在します。 「送り手の自由」には、言論・出版の自由、集会・結社の自由、報道の自由等があり 「受け手の自由」には、知る権利、アクセス権があります。

表現の自由を支える価値

「表現の自由を支える価値」とは、分かりやすく言うと、「表現の自由を保障する理由」「表現の自由で保障すべき権利」ということです。これには2つの価値(保障理由)があります。

1.自己実現の価値

個人が言論活動を通じて自己の人格を発展させる個人的な価値(権利)

2.自己統治の価値

言論活動により国民が政治意思決定に関与するという民主政治に資する社会的価値 つまり、政治に参加する価値(権利)です。 上記2つの価値(権利)を保障するために表現の自由があるということです。

言論・出版の自由

言論・出版その他一切の表現の自由を保障しており、絵画、写真、映画、音楽、演劇、テレビ等、その手段を問わず広く及びます。

集会・結社の自由

集会とは、多数人がある目的のために、一定の場所に一時的に集まることを言い、集団行動の自由(デモの自由)も含みます。 結社とは、他人数がある目的のために、団体を結成することを指し、結社の自由には、具体的に3つの自由があります。
  1. 団体を結成し、それに加入する自由
  2. 団体が活動する自由
  3. 団体を結成しない自由・加入しない事由、または、脱退する自由

知る権利(憲法で保障されている)

「知る権利」には,情報受領権と情報収集権という二つの側面があり,後者にはさらに情報収集活動が公権力により妨げられないということ(消極的情報収集権)と政府に対して情報の開示を要求する(積極的情報収集権)という二つの場合が含まれます。

アクセス権(憲法で保障されていない)

アクセス権とは、「情報の受け手である国民」が、「情報の送り手であるマスメディア」に対して、個人が意見発表の場を提供することを求める権利です。例えば、反論記事の掲載要求(反論権)や紙面・番組への参加などです。

アクセス権に関する重要判例

アクセス権については、憲法21条1項から直接導くことができないとされており(アクセス権は憲法では保障されない)、判例でも「新聞記事に取り上げられた者は、当該新聞紙を発行する者に対し、その記事の掲載により名誉毀損の不法行為が成立するかどうかとは無関係に、人格権又は条理を根拠として、右記事に対する自己の反論文を当該新聞紙に無修正かつ無料で掲載することを求めることはできない」と反論権を否定しています。(最判昭62.4.24:サンケイ新聞事件

報道の自由(憲法で保障されている)

報道は、事実を告げ知らせる行為で、報道機関の報道が、国民の知る権利に奉仕するという重要な意義を有しています。そのため、報道の自由は、憲法21条1項の表現の自由に含まれ、憲法で保障されています。

取材の自由(十分尊重に値する)

取材の自由とは、報道機関が事実を報道するために情報収集を行う自由を言い、下記の通り、判例でも、表現の自由を規定した憲法第21条の精神に照らし、十分尊重に値するものとしています。

取材の自由に関する重要判例

  • アメリカの原子力空母の佐世保港入港に反対する学生が、機動隊と衝突し、その映像をNHK福岡放送局等が撮影した。そして、福岡地裁は、放送局に対して、衝突の状況を撮影したテレビフィルムの提出を命令しました。これに対し、放送局は、憲法21条に反していると拒否して争われた。最高裁は、「報道機関の報道は、民主主義社会において、国民が国政に関与するにつき、重要な判断の資料を提供し、国民の「知る権利」に奉仕するものである。そのため、思想の表明の自由と並んで、事実の報道の自由は、表現の自由を規定した憲法21条の保障のもとにある。そして、このような報道機関の報道が正しい内容をもつために、報道のための取材の自由も、憲法21条の精神に照らし、十分尊重に値するものといわなければならない。」として、取材に自由について、憲法で保障されているとまではいえないが、十分尊重に値するものとしています。(最大決昭和44.11.26:博多駅フィルム提出命令事件
  • 新聞記者Xは、沖縄返還交渉に関し、日米間の密約の存在を裏付ける秘密文書の写しを持ち出すことを、外務省事務官Yに執拗に迫り、そそのかして文書の写しを入手した。これに対して、Yは、国家公務員法111条等に違反するとして争われた。これに対して、最高裁は「報道機関が取材の目的で公務員に対し秘密を漏示するようにそそのかしたからといって、そのことだけで、直ちに当該行為の違法性が推定されるものと解するのは相当ではなく、報道機関が公務員に対し根気強く執拗に説得ないし要請を続けることは、それが真に報道の目的からでたものであり、その手段・方法が法秩序全体の精神に照らし相当なものとして社会観念上是認されるものである限りは、実質的に違法性を欠き正当な業務行為というべきである。」として、手段・方法が法秩序全体の精神に照らし相当なものとして社会観念上是認されるものである限りは、違法性はないとしました。(最決昭53.5.31:西山記者事件)

表現の自由に関するその他の重要判例

  1. 税務署の職員が収賄容疑で夜中に逮捕されました。その翌朝に新聞朝刊で報道されました。あまりにも短時間で情報を得ていることから、裁判所か検察職員に、逮捕状執行前に新聞記者Xに情報を漏らした者がいるのではないかと、国家公務員法違反の容疑で捜査が開始されました。そして、この記事を書いたXが証人喚問されました。しかし、Xは、取材源の秘匿を理由として宣誓証言を拒み、争われた。この点について最高裁は、刑事訴訟法149条に、証言拒絶できる者を列挙しているが、記者は含まず、刑事訴訟における証言拒絶の権利まで保障したものではないとした。(最大判昭27.8.6:石井記者事件)
  2. 「夕刊和歌山時事」の経営者Xが、「夕刊和歌山時事」の中に、他社Yの「特だね新聞」の取材の仕方が恐喝まがいの取材の仕方をだと批判する記事を載せた。それに対して、Yは、Xの行為が名誉毀損にあたるとして争われた。この点について最高裁は、「刑法230の2の規定は、人格権としての個人の名誉の保護と、憲法21条による正当な言論の保障との調和をはかつたものというべきであり、これら両者間の調和と均衡を考慮するならば、たとい刑法230条ノ2第1項にいう事実が真実であることの証明がない場合でも、行為者がその事実を真実であると誤信し、その誤信したことについて、確実な資料、根拠に照らし相当の理由があるときは、犯罪の故意がなく、名誉毀損の罪は成立しないものと解するのが相当」とし、真実であることを証明できない場合でも、相当の理由があるときは、名誉棄損罪は成立しないとした。(最大判昭44.6.25:夕刊和歌山時事事件)
  3. 雑誌「月刊ペン」の編集局長Xが、「大罪犯す創価学会」という記事を取り上げ、名誉棄損罪にあたるのではないかと争われた。この点について最高裁は、「私人の私生活上の行状であっても、そのたずさわる社会的活動の性質及びこれを通じて社会に及ぼす影響力の程度などのいかんによつては、その社会的活動に対する批判ないし評価の一資料として、 刑法230条の2第1項にいう『公共の利害に関する事実』にあたる場合があると解すべきである」として、名誉棄損罪に当たるとされた。(最判昭56.4.16:月刊ペン事件
  4. アメリカ人弁護士Xは、事前に法廷でメモを取っていいか日本の裁判所に許可を求めたが、不許可となった。一方、司法記者クラブ所属の報道機関の記者に対しては許可していました。そのためXは、自分に対する不許可措置は「知る権利(憲法21条)」を侵害しているとして争われた。これに対して最高裁は、「法廷で傍聴人がメモを取ることを権利として保障しているものではないが、法廷で傍聴人がメモを取ることは、その見聞する裁判を認識記憶するためにされるものである限り、憲法21条1項の精神に照らし尊重に値し、故なく妨げられてはならない。」とし、法廷での筆記行為は権利として保障されていないが、尊重に値するとした。(最大判平元.3.8:レペタ訴訟
  5. TBSの番組で、暴力団組長による債権取立ての場面が放映され、警視庁は当該組長を逮捕。その後、警視庁は、裁判所の許可を得て、関連ビデオテープをTBS本社内で差し押さえた。それに対し、TBSは、差押処分の取消しを求めて、争われた。これに対し、最高裁は、「差押の可否を決するに当たっては、捜査の対象である犯罪の性質、内容、軽重等及び差し押さえるべき取材結果の証拠としての価値、ひいては適正迅速な捜査を遂げるための必要性と、取材結果を証拠として押収されることによって報道機関の報道の自由が妨げられる程度及び将来の取材の自由が受ける影響その他諸般の事情比較衡量すべきであることは、明らかである」とし、本件差押は、適正迅速な捜査の遂行のためやむを得ないものであり、TBSの受ける不利益は、受忍すべきものというべきということで、ビデオテープの押収は憲法21条1項に反しないとした。(最決平2.7.9:TBSビデオテープ押収事件)
  6. 民事事件において証人となったNHK記者Xが、取材源については職業の秘密に当たることを理由に証言を拒絶して、取材源秘匿権について争われた。これに対して最高裁は、「秘密の公表によって生ずる不利益と証言の拒絶によって犠牲になる真実発見及び裁判の公正との比較衡量により決せられるというべき」として、報道関係者の取材源の秘密は、民事訴訟法197条1項3号の職業の秘密に当たるとし、証言を拒むことができるとした。(最決平18.10.3:NHK記者取材源秘匿事件)
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三菱樹脂事件をわかりやすく解説|私人間効力・判旨・論点【行政書士】

論点

  1. 私人間において、憲法の人権規定を直接適用できるか?
  2. 特定の思想を有することを理由に採用を拒否することは違法か?
  3. 会社の入社の選考にあたり、応募者の思想に関する事項を尋ねることは違法か?

事案

Xは、大学在学中に、三菱樹脂株式会社Yの採用試験に合格し、翌年、卒業後、Yに3か月の試用期間を設けて採用された。しかし、入社試験(面接など)の際に、「学生運動などの事実を秘匿する(隠す)虚偽の申告をしたこと」を理由に、本採用を拒否する旨の告知を受けた。そのため、Xは、労働契約関係存在の確認を求めて出訴した。

判決

私人間において、憲法の人権規定を直接適用できるか?

直接適用できない

憲法19条、14条(下記参照)は、もっぱら、「国または公共団体」と「個人」との関係を規律するものであり、私人相互の関係を直接規律するものではない。

もっとも、私人間の関係においても、相互の社会的力関係の相違から、会社Yが優越し、事実上、従業員Xが会社Yの意思に服従せざるを得ない場合もあるが、そのような場合にも、人権規定の適用・類推適用はできない。

なぜなら、私人間の事実上の支配関係は様々で、どのような場合に「国等の支配と同視すべきか」の判定が困難であるから。

ただし、私的支配関係において、個人の自由・平等に対する侵害がある場合には、民法1条の信義則や権利濫用民法90条の公序良俗不法行為に関する諸規定によって調整を図ることは可能である。

憲法第19条
思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

憲法第14条
すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

特定の思想を有することを理由に採用を拒否することは違法か?

違法ではない

憲法第22条(何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する)において、経済活動の自由を人権として保障している。

そのため、会社は、経済活動の一環として、契約締結の自由を有しており、「どのような労働者」を「どのような条件」で雇用するかを決定する自由がある。

したがって、会社が、特定の思想・信条を有するがゆえに、その者を雇うことを拒んでも、それを当然に違法とすることはできない。

会社の入社の選考にあたり、応募者の思想に関する事項を尋ねることは違法か?

違法ではない

上記の通り、労働者を採用するか否かの決定にあたり、労働者の思想・信条を調査し、そのためその者から関連する事項についての申告を求めることも違法ではない。

行政行為の「取消し」と「撤回」の違い

取消しと撤回の違い

行政行為の取消しは、行政行為の成立当初から瑕疵があり、その瑕疵を理由として、行政行為がなされた時にさかのぼって、その効力を失われることです。例えば、不正手段を使って行政書士の登録を受けた場合、行政庁が登録した(行政行為の)時点で、すでに瑕疵があると言えます。そのため、その後、不正手段を行政庁が知った場合、登録を取り消さなければなりません。これは「取消し」です。

一方、行政行為の撤回は、成立当時は瑕疵はなく、その後の瑕疵によって、将来に向かって効力を失わせることです。例えば、行政書士の登録は正当な手段で受けたが、その後、強盗を行い、拘禁刑を受けた場合、登録消除処分の対象となります。この場合、当初の行政書士の登録に瑕疵はなかったが、その後、拘禁刑を受けることが瑕疵が生じ、登録取り消しとなります。これを法律上「撤回」と言います。「取消し」という文言があっても「撤回」になるので注意しましょう。

原因 効力
取消し 成立時に瑕疵 遡及的に効力消滅
撤回 成立後に瑕疵 将来に向かって効力消滅

行政行為の取消し

そもそも、行政行為が行われると、たとえ違法な行政行為であっても、取消しされるまで一応有効なものとして扱われます。これを「公定力」と言います。

行政行為の取消には、職権取消し争訟取消しの2つがあります。

職権取消し

職権取消しとは、行政行為の相手方からの取消しの主張を待たずに、行政庁が、違法又は不当であることを理由に行政庁自ら取り消しをすることです。上記事例でも解説しましたが、例えば、不正手段を使って行政書士の登録の申請を受けて、その不正を見抜けずに行政庁が登録の処分を下したとします。その後、「この登録は不正だ!」と見抜いて、「この登録は違法だったので、登録を取り消します!」というのが職権取消しです。

争訟取消し

争訟取消しとは、行政処分に対して、不服がある場合、審査請求や取消訴訟を行うことができます。これにより、審査庁や裁判所が取消しをすることを争訟取消しと言います。例えば、行政書士の登録を受けた者が、不正手段を理由に取り消し(職権取消し)をされ、その取消し処分に対して、「この取消処分はおかしい!取消処分を取り消せ!」と取消訴訟を行い、裁判所が、「この者は不正をしていない!だから取消処分は取消しなさい!」といった場合が争訟取消しです。

実際、行政書士試験では、上記2つの違いについては出題される可能性は低いので参考程度でよいでしょう。これより下の内容についても、判例だけ押さえておけば大丈夫でしょう!

取消しをする際の法律の根拠

行政庁が取消しを行う場合、法律の特別な根拠は不要です。なぜなら、行政行為の取消は、違法な行政行為の効力を失わせる行為であり、そもそも、取消さなければならないものだからです

ただし、授益的行政行為を取消すことは、相手方に対して大きな不利益を与える可能性があります。
例えば、営業許可を受けた後に飲食店の営業を準備のために色々機材を購入したにも関わらず、営業許可が突然取消されたら大きな損害を受けます。

そのため、授益的行政行為(相手に権利利益を与える行為)の職権取消しは一定の制限があります。

取消権者

取消権者とは、取消しすることができる者(職権取消しの権限を持つ者)を言います。そして、職権取消しの権限を持つのは、処分庁上級行政庁(処分庁を監督する行政庁)です。

職権取消しの制限(職権取消しは自由にできるか?)

  1. 不可変更力がある行政行為の職権取消しはできない
    不服申立てに対する裁決には、不可変更力が働きます。そのため、裁決した行政庁自身は職権取消しができません
    ※この点は行政不服審査法を勉強してから理解すれば大丈夫です!
  2. 侵害的行政行為の職権取消しは、自由に行える
    侵害的行政行為とは、私人の権利を侵害する行為で、例えば、Aさんの行政書士の登録を取り消す行為です。この取消し行為(取消処分)を職権取消しすることは、Aさんにとっては、不利益にはなりません。むしろ、利益です。そのため、自由に行えます。
  3. 授益的行政行為の職権取消しは、慎重な判断が必要
    授益的行政行為とは、私人に利益を与える行為です。例えば、Bさんに対する生活保護の支給決定処分です。これを取り消すとなると、Bさんは不利益を受けます。そのため、この支給決定処分を取り消す場合、慎重な判断が必要となります。慎重な判断とは、処分を取り消すだけの公益上必要性がある場合や、生活保護の申請内容に不正があったなどの場合です。

行政行為の取消しに関する判例

  • 処分をした行政庁その他正当な権限を有する行政庁においては、みずからその違法または不当を認めて、処分の取消しによって生じる不利益と、取消しをしないことによってかかる処分に基づきすでに生じた効果をそのまま維持することの不利益とを比較考量し、しかもその処分を放置することが公共の福祉の要請に照らし著しく不当であると認められるときに限り、これを取り消すことができる。(最判昭43.11.7:農地の買収売渡計画職権取消し)

行政行為の撤回

撤回をする際の法律の根拠

行政庁が撤回を行う場合、法律の特別な根拠は不要です(最判昭63.6.17)。なぜなら、撤回の原因は、私人にあるため、それを理由に撤回することは私人の権利の侵害には当たらないからです。例えば、運転免許をCさん与えて、その後、Cさんが、飲酒運転を行って運転免許の取消し(撤回)を行う場合、撤回するかどうか行政庁の裁量によります。法律に飲酒運転をした場合、撤回しなければならないと規定されていなくても、撤回をすることができます。もちろん、ほんのちょっとの飲酒で捕まえたとしても、それだけで撤回というのは厳しすぎるので、そういった場合は、免許取消ではなく、罰金くらいでしょう。つまり、比例原則は適用されます。

撤回権者

撤回権者とは、撤回することができる者(撤回できる権限を持つ者)を言います。そして、撤回権者は、処分庁のみです。

撤回の制限(撤回は自由にできるか?)

撤回の場合も、職権取消しと同じように、不可変更力がある行政行為は撤回できません。」「侵害的行政行為の場合、自由に撤回できます。」一方、「授益的行政行為の撤回は、原則、できません。

行政行為の撤回に関する判例

  • 【要旨】都有行政財産である土地について建物所有を目的とし期間の定めなくされた使用許可が当該行政財産本来の用途又は目的上の必要に基づき将来に向つて取り消されたときは、使用権者は、特別の事情のないかぎり、右取消による土地使用権喪失についての補償を求めることはできない。【判決理由】使用許可に際し別段の定めがされている等により、行政財産についての右の必要にかかわらず使用権者がなお当該使用権を保有する実質的理由を有すると認めるに足りる特別の事情が存する場合に限られるというべきである。(最判昭49.2.5:撤回にかかる損失補償の要否)

国民主権とは?わかりやすく簡単に解説【行政書士試験対策】

国民主権とは、国の政治のあり方を最終的に決める力(主権)が国民にあるという憲法上の基本原理です。日本国憲法の三大原則の一つであり、前文と第1条に明記されています。行政書士試験では、主権の3つの意味の区別や、代表民主制・直接民主制との関係が繰り返し問われる重要テーマです。

この記事でわかること

  • 主権の3つの意味(統治権・最高独立性・最高決定権)と憲法条文の対応
  • 権力性の契機と正当性の契機──国民主権の2つの側面の違い
  • 代表民主制と直接民主制の仕組みと具体例
  • 行政書士試験の出題パターンと得点につながる整理法

初学者でも理解できるよう、条文の原文を示しながらわかりやすく解説します。まずは主権の意味の整理から確認していきましょう。

国民主権とは?意味と内容をわかりやすく解説


国民主権とは、分かりやすく言うと、主権は国民が持っているということです。

主権の3つの意味

  1. 統治権:独立して国民や領土を統治する権利
  2. 最高独立性:ほかの国から支配や干渉をされず,ほかの国々と対等である権利
  3. 最高決定権:国の意思や政治のありかたを最終的に決定する権利

■ポツダム宣言8項の「日本国の主権は本州、北海道、九州及び四国ならびに我々の決定する諸小島に限られなければならない。」の中の主権は、領土を統治することを指すので、統治権を指しています。

■憲法41条の「国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。」の中の国権は、国民を統治することを指すので、統治権として使っています。

■憲法の前文の「自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。」の中の主権は、その後ろの言葉「他国と対等関係に立たうとする各国の責務」から分かるように、他の国から支配や干渉をされず,ほかの国々と対等である権利を指すので、最高独立性の意味として使っています。

■憲法の前文の「主権が国民に存することを宣言し」の主権は、国の政治について、国民が決めることを意味するので、最高決定権として使っています。

代表民主制と直接民主制

上記、主権の意味の中の一つに「最高決定権」がありました。国民が国の政治を決めるということです。それを実現するために、日本では、代表民主制を原則して、直接民主制によりそれを補完するものとしています。

代表民主制とは?

国民の中から代表者を選び、その代表者が国民に代わって政治を行う制度です。間接民主制という言い方もします。

例えば、衆議院議員を選んで、その衆議院議員が政治を行うということです。

直接民主制とは?

代表者(議員)などを介さずに、国・都道府県・市町村の意思決定に直接参加し、その意思を反映させる政治制度です。

例えば、「住民投票」や「地方公共団体の長・議員などの解職請求」は、住民が直接、地方公共団体の意思決定に参加しているので直接民主制の事例です。

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マクリーン事件をわかりやすく解説|外国人の人権・判旨【行政書士試験】

論点

  1. 外国人の在留期間の更新について法務大臣の裁量権が認められるか?
  2. 外国人にも人権の保障が及ぶか?
  3. 外国人にも政治活動の自由の保障が及ぶか?

事案

外国籍のマクリーン(X)は、在留期間を1年とする許可を得て、日本に入国した。

その後、Xは、法務大臣Yに対して、在留期間延長の申請をした。

しかし、「無断転職」および「政治活動(※)」を理由に、120日の更新しか認められず、その後、更新は不許可となった。

※ベトナム戦争の反対運動、日米安保条約の反対運動などを行っていた。

そこで、XはYの更新不許可処分を不服として、その取消しを求めて出訴した。

判決

1.外国人の在留期間の更新について法務大臣の裁量権が認められるか?

認められる

出入国管理令では、「在留期間の更新については、法務大臣がこれを適当と認めるに足りる相当の理由があると判断した場合に限り許可できる」としています。

そのため、更新事由の判断を、法務大臣の裁量に任せて、その裁量権の範囲を広汎なものとする趣旨であると解されます。

したがって、外国人の在留期間の更新について法務大臣の裁量権が認められます。

ただし、その裁量について、裁量権の範囲を超え又はその濫用があった場合、違法となります

そして、今回、法務大臣が、外国人の政治活動を斟酌して在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるものとはいえないと判断し、更新不許可の処分を下したわけですが、

今回の事案では、「裁量権の範囲を超え又はその濫用があったものということはできない」として、違法ではないとした。

※ 斟酌(しんしゃく)相手の事情や心情をよくくみとること

2.外国人にも人権の保障が及ぶか?

原則、外国人にも人権の保障は及ぶ

例外として、外国人在留制度の枠を超える部分は、人権保障が及ばない

判例では、「基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべき」としているので、原則、外国人にも人権保障が及びます。

しかし、外国人の人権保障は、外国人在留制度の枠内で与えられているにすぎず、外国人在留制度の枠を超える部分は、人権保障が及ばないとしています。

具体例が下記一定の政治活動の自由です。

「外国人在留制度の枠」については、個別指導で解説します!

3.外国人にも政治活動の自由の保障が及ぶか?

原則、外国人にも政治活動の自由を認めている

例外として、わが国の政治的意思決定または、その実施に影響を及ぼす活動などは、政治活動の自由の保障は及ばない

政治活動の自由についても、わが国の政治的意思決定または、その実施に影響を及ぼす活動など、外国人の地位にかんがみて、これを認めることが相当でないと解されるものを除いて、その保障が及びます

そして、今回の事案では、外国人Xの事実に対する法務大臣の不許可処分は、「明白に合理性に欠き、その判断が社会通念上著しく妥当性に欠くことが明らかである」とはいえないので、在留中の政治活動を理由に更新を不許可としたことは違憲ではない、とした。

※ かんがみる(鑑みる):先例や規範に照らし合わせる。他を参考にして考える

行政事件訴訟法の概要

行政事件訴訟法とは?

行政事件訴訟法は、裁判によって、違法な行政活動によって権利利益を侵害された国民の救済を図るものです。

行政不服審査法 違法または不当な行政行為
行政事件訴訟法 違法な行政行為(不当な行政行為は行政事件訴訟法の対象外

訴訟は、民事訴訟、刑事訴訟、行政事件訴訟に区別でき、行政事件訴訟法は、公権力の行使に関する争いを含む公法上の法律関係に関する紛争解決を目的としてます。

民事事件 民事訴訟法
刑事事件 刑事訴訟法
行政事件 行政事件訴訟法

行政事件訴訟法の経緯

1945年(昭和20年)第二次世界大戦が終戦。

1946年(昭和21年)日本国憲法が公布。

1948年(昭和23年)に「行政事件訴訟特例」が制定(戦後に制定)。

行政事件訴訟特例法は、民事訴訟法の特例を定めたものであり、全文でわずか12条のみの簡単なものでした。この法律は、制定が急がれたため、欠陥も多かったため、
1962年(昭和37年)に法改正され、現行の「行政事件訴訟法」が制定されました。

行政事件訴訟法の類型

行政事件訴訟法は大きく分けて主観訴訟客観訴訟に分けることができます。

主観訴訟は、個人の権利利益の救済を目的とし、自分自身に直接関係する行政活動に対する訴訟を指し、客観訴訟は、行政の適法性の確保を目的とし、自分には直接関係ない行政活動に対する訴訟を指します。

主観訴訟

主観訴訟とは、個人の権利利益の救済を目的とし、自分自身に直接関係する行政活動に対する訴訟を指し、大きく分けて、抗告訴訟当事者訴訟に分けることができます。

主観訴訟は、個人の権利利益が侵害され、または侵害されそうになっている場合、その救済を求める訴えを指します。

抗告訴訟とは、行政庁の公権力の行使に関して違法でないかと不服がある場合の訴訟で、当事者訴訟は、当事者間の公法上の法律関係を争う訴訟です。

抗告訴訟

抗告訴訟には、下記5つがあります。詳細は下記リンク先で解説しています。

  1. 取消訴訟(処分の取消しの訴え、裁決の取消しの訴え)
  2. 無効等確認の訴え
  3. 不作為の違法確認の訴え
  4. 義務付けの訴え
  5. 差止めの訴え

当事者訴訟

当事者訴訟には、下記2つがあります。詳細は下記リンク先で解説しています。

  1. 形式的当事者訴訟
  2. 実質的当事者訴訟

客観訴訟

客観訴訟は、行政の適法性の確保を目的とし、自分には直接関係ない行政活動に対する訴訟を指し、民衆訴訟機関訴訟があります。

この客観訴訟は、行政活動が法律に違反している場合に個人の利益に関係なく、違法状態を回復するための訴訟です。

<<行政不服審査法 | 取消訴訟の概要原処分主義裁決主義審査請求前置主義>>

 

砂川事件をわかりやすく解説|統治行為論・判旨・争点【行政書士試験】

論点

  1. 安全保障条約に司法審査が及ぶか?

事案

国は、米軍立川飛行場の拡張計画を考えていたが、当該計画に反対した砂川町の住民が反対運動をした。それにもかかわらず、国が拡張のための測量を開始したので、1000名以上の集団が境界柵の外側に集合し、その中の一部の者が境界柵を破壊した。破壊された境界柵から立ち入り禁止場所に入ったところ、この行為が法律に違反するとして、起訴された。

判決

安全保障条約に司法審査が及ぶか?

→及ばない

本件安全保障条約は、主権国としてのわが国の存立の基礎に極めて重大な関係をもつ高度の政治性を有するものというべきであって、安全保障条約の内容が違憲か否かの法的判断は、その条約を締結した内閣およびこれを承認した国会の高度の政治的ないし自由裁量的判断と表裏をなす。

れ故、右違憲か否かの法的判断は、司法裁判所の審査には、原則としてなじまない性質のものであり、一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外のものである

そして、本件安全保障条約は、違憲無効であることが一見きわめて明白であるとは到底認められないため、司法審査は及ばない。

朝日訴訟をわかりやすく解説|判旨・争点・プログラム規定説【行政書士試験】

朝日訴訟とは?

朝日訴訟(最大判昭42.5.24)とは、生活保護基準の合憲性が争われた憲法25条(生存権)に関するリーディングケースです。原告の朝日茂氏が、月額600円の生活扶助では「健康で文化的な最低限度の生活」を維持できないとして厚生大臣を相手に提訴しました。最高裁は、憲法25条は国の責務を宣言したものであり、直接個々の国民に具体的権利を賦与したものではないと判示し、いわゆるプログラム規定説の立場を採用した判決として知られています。行政書士試験では、生存権の法的性質・厚生大臣の裁量権・保護受給権の一身専属性の3点がくり返し出題されています。

朝日訴訟と堀木訴訟の比較表

比較項目 朝日訴訟(最大判昭42.5.24) 堀木訴訟(最大判昭57.7.7)
争点 生活保護基準(月600円)は憲法25条に違反しないか 障害福祉年金と児童扶養手当の併給禁止は憲法25条に違反しないか
25条の解釈 プログラム規定説を採用し、具体的権利性を否定 立法府の広い裁量を認め、明らかに合理性を欠く場合のみ違憲(広い立法裁量論)
裁量の範囲 厚生大臣の合目的的裁量に委ねられる 立法府の広範な裁量に委ねられる
違憲・違法となる基準 裁量権の逸脱・濫用がある場合 著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用がある場合
結論 原告死亡により訴訟終了(本案判断は傍論) 併給禁止規定は合憲
試験での頻出ポイント 保護受給権の一身専属性・プログラム規定説 立法裁量論・25条1項と2項の区別

論点

  1. 生活保護受給権に相続性はあるか?
  2. 生存権に法的権利性はあるか?
  3. どのような場合に違法な行為として司法審査の対象となるか?

事案

X(朝日茂氏)は、肺結核患者として、療養所に入所し、厚生大臣の認定した生活扶助基準で定められた最高金額である「月600円の日用品費の生活扶助」と「現物による給食付医療扶助」とを受けていた。

ところが、Xは、実兄から、毎月1500円の送金を受けるようになったため、市の社会福祉事務所長は、月600円の生活扶助を打ち切り、上記送金額から日用品費を控除した残額900円を医療費の一部としてXに負担させる旨の保護変更の決定をした。

それに対して、Xは、厚生大臣を被告として600円の基準金額が生活保護法の規定する「健康で文化的な最低限度の生活水準」を維持するに足りないものであると主張して、訴えを提起した。

判決

生活保護受給権に相続性はあるか?

→ない

生活保護法に基づく保護受給権は、法的権利である。

しかし、この権利は、被保護者個人に与えられた一身専属の権利である。

したがって、本件訴訟は、Xの死亡と同時に終了し、相続人が保護受給権を承継する余地はない。

生存権に法的権利性はあるか?

→ない

憲法25条1項はすべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得るように国政を運営すべきことを国の責務として宣言したにとどまり、直接個々の国民に具体的権利を賦与したものではない。

具体的権利としては、生活保護法によりはじめて与えられる。

※つまり、「生存権自体は法的権利性はないが、生活保護法で規定されることで、法的権利性が与えられる」ということです。

25条の法的権利性を否定している点では、プログラム規定説を採用しているといえる。

どのような場合に違法な行為として司法審査の対象となるか?

憲法および生活保護法の趣旨・目的に反し、法律によって与えられた裁量権の限界をこえた場合または裁量権を濫用した場合

何が健康で文化的な最低限度の生活であるかの認定判断は、いちおう、厚生大臣の合目的的な裁量に委されている。

そして、その判断は、当不当の問題として政府の政治責任が問われることはあっても、直ちに違法の問題を生ずることはない。

ただ、現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定する等憲法および生活保護法の趣旨・目的に反し、①法律によって与えられた裁量権の限界をこえた場合または②裁量権を濫用した場合には、違法な行為として司法審査の対象となる。

判決文の全文はこちら>>

関連ページ

>>関連判例:最大判昭57.7.7:堀木訴訟(障害年金と児童扶養手当の併給禁止が生存権に違反しないか)

>>生存権(憲法25条)プログラム規定説・抽象的権

取締役

取締役とは、会社の具体的な業務に関する意思決定を行い、現実に業務執行を行う機関です。

取締役の資格

取締役の資格とは、誰が取締役になれるのか?ということです。この点について会社法では、下記のいずれかに該当する場合、取締役になれないと規定しています(331条1項)。そして、下記事由を欠格事由と言います。

  1. 法人
  2. 会社法等の法律に違反し、または一定の罪を犯し、罰金刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
  3. 拘禁刑以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く。)等

取締役の選任

取締役の選任は、株主総会の専属決議事項とされています(329条)。つまり、株主総会でしか決議できません。そして、決議の方法は普通決議です。

そして、上記普通決議の内容については定款の定めにより変更ができます。

定足数については、議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1まで下げることができます。3分の1未満にはできません。

また、決議要件について、出席した当該株主の議決権の過半数を上回る割合を定款で定めることができます(341条)。

取締役の選任については、累積投票制度が認められています(342条)。

取締役の解任

解任とは、任期の途中にその役職を解かれること・やめさせることを言います。

そして、取締役の解任については、①株主総会決議による解任と②解任の訴えの2つの場合があります。

株主総会における解任決議

取締役は、いつでも、株主総会の普通決議によって解任することができます(339条1項)。

ただし、累積投票で選任された取締役の解任の場合、特別決議が必要です(309条2項7号)。

正当な理由なく株主総会決議により解任された者は、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができます(339条2項)。

役員解任の訴え

少数株主は、取締役解任の訴えを行うことにより、取締役の解任を行うことができます。

これは、悪いことをした取締役が、会社内で力を持っている者の場合、株主総会決議をしても、その取締役を恐れて、賛成票を入れず否決されることがあります。

そのような場合に備えて、裁判所に訴えることができるようにしています。

役員に欠員が生じた場合

役員(取締役又は会計参与)が欠けた場合、または定款で定めた役員の員数が欠けた場合には、任期の満了または辞任により退任した役員は、新たに選任された役員が就任するまで、なお役員としての権利義務を有します346条1項)。

悪いことをして解任となった場合は、上記ルールは適用されず、役員としての権利義務はなくなります

辞任とは、自らの意思でやめることです。

取締役の員数

非取締役会設置会社では、1人又は2人以上の取締役を置かなければなりません(326条)。つまり、1人以上置かなければならないということです。

取締役会設置会社では3人以上の取締役を置かなければなりません(331条5項)。

取締役の任期

取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までです。ただし、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することはできます332条1項)。

言い換えると、取締役の任期は最長「選任の日から2年」ということです。

「非公開株式会社」かつ「監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社でない」場合

「非公開株式会社」かつ「監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社でない株式会社」については、定款によって、任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長(延長)することができます(332条2項)。

監査等委員会設置会社の場合

監査等委員会設置会社の場合、

監査等委員の取締役は、原則、任期2年ですが
監査等委員でない取締役は、原則、任期1年とされています(332条3項)。

指名委員会等設置会社の場合

指名委員会等設置会社の取締役は、任期は原則1年ですが、定款または株主総会決議により、任期を短縮できます(332条1項)。

取締役の地位と権限

取締役の地位や権限については、非取締役会設置会社、取締役会設置会社、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社によって異なります。

これは分かりやすいように、下表のように、「意思決定機関」「業務執行機関」「代表者」と分けて考えると覚えやすいです。

非取締役会設置会社における取締役

取締役会がない場合、会社の業務の意思決定は、原則、取締役が行います。もし、取締役が2人以上いる場合、過半数をもって決定します(348条1項)。

ただし、定款の別段の定めがあれば、それに従います。

そして、非取締役会設置会社の代表者については、
原則、各取締役が会社を代表します。
例外として、代表取締役が定まっている場合、代表取締役が会社を代表します(349条1項2項)。

取締役会設置会社における取締役

取締役会設置会社では、取締役会が会社の業務の意思決定を行うので、取締役個人としては、あくまでも取締役会の構成員として、意思決定の議決権を持つにすぎないことになります(362条)。

業務の執行についても、基本的には取締役の中から選ばれた代表取締役が行います。
※指名委員会等設置会社の場合は、執行役が業務の執行を行います(418条)。

取締役の義務

取締役は下記義務および下記規制を負います。

  1. 善管注意義務
  2. 忠実義務
  3. 競業取引の禁止
  4. 利益相反取引の禁止

善管注意義務

会社と取締役の関係は、委任の規定に従います(330条)。

つまり、「会社=委任者」「取締役=受任者」という関係が成立します。

そうすると、受任者たる取締役は、委任者たる会社に対して善良なる管理者の注意義務(善管注意義務)を負います(民法644条)。

もし、取締役が善管注意義務を怠り、会社に損害を与えた場合、債務不履行により損害賠償義務を負うこととなります(民法415条)。

忠実義務

忠実義務とは、法令および定款・株主総会決議を遵守し、会社のために忠実にその職を行わなければならないという義務を言います(335条)。

判例では、忠実義務は、善管注意義務を、より明確に注意的に規定したものに過ぎず善管注意義務とは別個のより高度な注意義務を取締役に課したものではない、としています(最大判昭45.6.24)。

つまり、善管注意義務と忠実義務は同質の義務であるということです。

競業取引の禁止(競業避止義務)

取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき、株主総会(取締役会設置会社においては取締役会)において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければなりません(356条1項1号)。

「自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引」とは、「競業取引」のことを指します。

例えば、株式会社Aがホームページの作成事業を行っており、取締役Bは、自らホームページ作成事業を立ち上げたり、他のホームページ作成業者Cの代表取締役に就任して、ホームページの作成事業を行ったりしてはいけない、ということです。

このような義務を競業避止義務(きょうぎょうひしぎむ)と言います。

承認を得ずに競業取引を行った場合どうなるか?(競業取引の効果)

株主総会・取締役会の承認を要する競業取引であるにも関わらず、承認を得ずに取引を行った取締役は、会社に損害が生じた場合、任務懈怠による損害賠償責任を負うことになります(432条1項)。

その場合、「取締役が得た利益」又は「第三者が得た利益」の額が損害額と推定され、損害賠償請求の対象となります。

つまり、競業取引自体は有効だが、損害賠償で処理するということです。

利益相反取引の禁止

利益相反取引とは、取締役と会社の利益が相反する取引を言います。

つまり、取締役が利益を得て、会社が不利益を被る取引のことです。

例えば、会社の所有する土地を取締役が安く購入する契約等です。

この場合も、株主総会(取締役会設置会社においては取締役会)において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければなりません(356条1項3号)。

利益相反取引の効果

利益相反取引については、会社は原則として取締役に対して無効を主張することができます。

一方、会社は、承認がなかったことを知らない第三者に対して無効を主張できません

取締役の報酬

取締役の報酬は、定款または株主総会の決議により定めなければなりません(361条1項)。

つまり、定款の定めがない場合、株主総会決議で決めるということです。

取締役会決議では決めることができません

なぜなら、それができると、取締役が自分達の報酬を決めることができるようになり、不当に高額にして会社の経営に影響を及ぼす恐れがあるからです。

<<株主総会の決議取消しの訴え、決議無効確認の訴え、決議不存在確認の訴え | 取締役会の権限>>

行政上の強制手段

行政の目的を達成するために、国民に任意にしてもらいたい場合や、義務として行ってもらいたい場合があります。それにも関わらず、国民が思うように行ってくれないときに、行政機関は行政上の強制手段を発動して、行政の目的を達成させることができます。

例えば、お酒の飲みすぎで、路上で寝ている人がいた場合、このまま放ってい置いては、車を運転する人の迷惑になります。そのために、警察官が、路上で寝ている人を、強制的に安全な場所に運びます。これも行政上の強制手段です。その他にも色々あるので、その点を解説していきます。

行政上の強制手段には、大きく分けて「行政強制」と「行政罰」の2つに分けることができます。

行政強制と行政罰

行政強制とは、将来に向けて、行政目的を達成するための行為です。

一方、
行政罰は、過去の義務違反に対する制裁です。

行政強制はさらに、行政上の強制執行(①代執行・②執行罰・③直接強制・④行政上の強制徴収)と即時強制に分けることができます。

行政上の強制執行と即時強制の違い

行政上の強制執行は、義務が課されているにもかかわらず、その義務を履行しない場合に、行政庁が実力行使して義務を履行させます。

一方、
即時強制は、義務が課されていないけど、相手方の身体や財産に実力行使することです。上の例にもある、路上で寝ている人がいた場合に、警察官が安全な場所に移動させる行為が即時強制です。

行政上の強制執行

行政上の強制執行は、①代執行・②執行罰・③直接強制・④行政上の強制徴収の4種類あるのですが、どれも、義務が課されているにもかかわらず、その義務を履行しない場合の話です。そして、上記4つすべてについて言えることは、法律の根拠がなければ行うことができないということです。それでは、具体例を使いながら解説していきます。

代執行

 

代執行とは、代替的作為義務が履行されない場合に、「行政庁もしくは第三者」が自ら、義務者に代わって義務を履行し、その費用を義務者から徴収することを言います。

例えば、Aが所有する建物が建築基準法違反で、いつ倒壊してもおかしくない状況にあったとします。

この場合、市長は、Aに対して「建物を除去しなさい!」と除去命令が下すことができます。

この除去命令を受けたAは、除去する義務が発生します。それでも、Aが、建物を除去しない場合、

(Ⅰ)市長(行政庁)は「1か月以内に除去しないのであれば、代執行(市が強制的に除去)をします!」と文書で戒告(お知らせ)をします。

(Ⅱ)それでもAが除去しない場合、「それでは、代執行を行います!」と代執行令書を使って、Aに通知します。

(Ⅲ)市は、代執行を行います(強制的に、建物の取り壊しを行う)。

(Ⅳ)かかった費用については、Aから徴収します。

ここで行政書士試験で出題される内容は、上記の細かい流れです。

(Ⅰ)文書で戒告・(Ⅱ)代執行令書による通知

行政庁は、相当期間を定めて、文書で戒告します。ただし、例外として、非常の場合、または、危険切迫の場合は、(Ⅰ)戒告と(Ⅱ)代執行令書による通知を省略できます。

(Ⅲ)代執行

代執行を実際に行う執行責任者は、証票を携帯し、要求があるときは、いつでもこれを呈示しなければなりません。

(Ⅳ)費用の徴収

代執行に実際に要した費用を、納期日を定め、義務者に対して、文書をもって納付を命じます。期限内に納付がない場合は、国税滞納処分の例により、義務者から強制徴収をすることができます。

※国税滞納処分の例とは、「国税徴収法に規定されている、納税義務者が納税しない場合の手続きに従って」という意味です。

執行罰

執行罰とは、義務の不履行に対して、過料を科すことを予告し、その予告によって、義務者に心理的圧迫を加えて間接的に義務の履行を強制することを言います。

「罰」という漢字が含まれていますが、「罰」ではありません。もし、義務を履行すれば、過料を取られることはないからです。ただし、義務を履行しないと、何度も過料を科されることがあるので注意が必要です。イメージとしては、DVDの延滞料です。DVDを期限までに返却すれば延滞料を取られませんが、延滞すると、毎日、延滞料がずっと科されます。

実際、執行罰は、砂防法36条しかありません。

砂防法36条 私人ニ於テ此ノ法律若ハ此ノ法律ニ基キテ発スル命令ニ依ル義務ヲ怠ルトキハ国土交通大臣若ハ都道府県知事ハ一定ノ期限ヲ示シ若シ期限内ニ履行セサルトキ若ハ之ヲ履行スルモ不充分ナルトキハ五百円以内ニ於テ指定シタル過料ニ処スルコトヲ予告シテ其ノ履行ヲ命スルコトヲ得

砂防法等の命令による義務を怠ると、国土交通大臣もしくは知事は、一定期限を示す等して、500円以内の過料に処することを予告して、履行を命ずることができる

執行罰は、行政刑罰と併科しても二重処罰の禁止規定(憲法39条後段)には違反しません

直接強制

直接強制とは、行政上の義務を義務者が履行しない場合に、行政庁が、義務者の身体又は財産に実力を加えて、義務の履行があったとみなす行為を言います。有名な事例は、成田国際空港の安全確保に関する緊急措置法3条です。

1項 国土交通大臣は、規制区域内に所在する建築物その他の工作物について、その工作物が次の各号に掲げる用に供され、又は供されるおそれがあると認めるときは、当該工作物の所有者、管理者又は占有者に対して、期限を付して、当該工作物をその用に供することを禁止することを命ずることができる。
一 多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用
二 暴力主義的破壊活動等に使用され、又は使用されるおそれがあると認められる爆発物、火炎びん等の物の製造又は保管の場所の用
三 成田国際空港又はその周辺における航空機の航行に対する暴力主義的破壊活動者による妨害の用

6項 国土交通大臣は、第一項の禁止命令に係る工作物が当該命令に違反して同項各号に掲げる用に供されていると認めるときは、当該工作物について封鎖その他その用に供させないために必要な措置(建物の実力封鎖)を講ずることができる

行政上の強制徴収

行政上の強制徴収とは、国民が、行政上の金銭納付義務を履行しない場合に、行政庁が、自ら強制的に徴収し、当該国民は義務を果たしたことにすることを言います。

例えば、税金を滞納している人がいた場合、滞納者の財産を差押えて、競売にかけて得られた代金で納税することが強制徴収です。

行政上の金銭納付義務とは

道路占有料河川占有料放置違反金等があります。

水道料金は民事上の話なので、民事上の強制執行の対象となるので注意しましょう!

また、行政上の金銭納付義務については、行政上の強制徴収の手段によって行う必要があり、民事上の強制執行によって行うことはできません

即時強制

即時強制とは、義務を命じる余裕のない緊急の必要がある場合に、行政機関が、国民に義務を課することなく、国民の身体や財産に実力行使することを言います。

上記の通り、国民の身体や財産に実力行使するので、即時強制を行うには「法律の根拠」もしくは「条例で定めていること」が必要です。

例えば、路上で寝ている人がいた場合に、「起きて路上から離れてください!」と義務を命じていては、それまでに車にひかれてしまうかもしれません。緊急で路上から離れさせる必要があります。実際、警察官職務執行法の3条に上記内容が規定されています。

第三条 警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して左の各号の一に該当することが明らかであり、且つ、応急の救護を要すると信ずるに足りる相当な理由のある者を発見したときは、とりあえず警察署、病院、精神病者収容施設、救護施設等の適当な場所において、これを保護しなければならない。
一 精神錯乱又はでい酔のため、自己又は他人の生命、身体又は財産に危害を及ぼす虞(おそれ)のある者
二 迷い子、病人、負傷者等で適当な保護者を伴わず、応急の救護を要すると認められる者(本人がこれを拒んだ場合を除く。)

行政罰

行政罰とは、過去の義務違反に対する制裁です。そして、行政罰には「行政刑罰」と「行政上の秩序罰」の2つがあります。

※公務員に対する懲戒解雇などは「懲戒罰」なので、行政罰ではありません。

執行罰と行政罰の違い

執行罰は、行政強制の一つなので、将来に向けて、行政目的を達成するための行為です。簡単にいえば、将来、義務を履行しないと罰を加えますよ!という内容です。

一方、
行政罰は、過去の義務違反に対する制裁です。もうすでに、義務違反をしたから、それに対して罰を加えます!という内容です。

行政刑罰

行政刑罰とは、刑法に定めのある刑罰を科すものを言います。具体的には、拘禁、罰金、拘留、科料です。そして、行政刑罰は、刑法総則の規定が適用され、刑事訴訟法の定める手続きによって科されることになります。ただし、例外的に、大量に生じる軽微な違反事件(例えば、国税犯則取締法に基づく通告処分等)は刑事訴訟法によらない簡易的な手続きが定められています。

また、行政刑罰の特徴として、違反行為者のほか、その使用主や事業主も科刑される「両罰規定」が置かれていることが多いです。例えば、宅建業法84条です。

第84条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
一 第79条又は第79条の2 一億円以下の罰金刑

第79条 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の拘禁若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 不正の手段によって免許を受けた場合
二 無免許で宅建業を営んだ場合
三 自己の名義をもって他人に宅建業を営ませた場合
四 業務の停止命令に違反して業務を営んだ場合

第79条の2 重要事項について故意に事実を告げず、または不実のことを告げた者は、二年以下の拘禁若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

行政上の秩序罰

行政上の秩序罰とは、形式的で軽微な行政上の義務違反に対して課される過料のことです。例えば、届出義務や登録義務、通知義務に違反した場合です。

そして、科料は刑罰ですが、過料は刑罰ではありません。そのため、
法令に基づく過料は、非訟事件手続法によって地方裁判所が科します。

一方、地方公共団体の条例や規則に違反した場合、地方自治法の定めに基づいて、地方公共団体の長が行政処分として科します。

そして、「秩序罰による過料」と「行政刑罰」は、目的や要件が異なるため併科してもよいです。