【図解】余目町個室付浴場事件の流れ
この事件は、適法に営業準備を進めた事業者に対し、行政が別の認可処分を利用して営業を阻止した点が争われました。まず時系列を押さえましょう。
- ①建築確認・営業許可の取得:有限会社Xが土地を購入し、建築確認を受けて個室付浴場の建物を完成。営業許可も取得済み。
- ②地元住民の反対運動:開業に反対する住民運動が発生。余目町と山形県Yが開業阻止策を検討。
- ③児童遊園の認可(阻止策の実行):風営法の「児童福祉施設から200m以内は営業禁止」規定を利用し、近隣の無認可児童遊園に認可を付与。
- ④営業不能→業務停止処分:認可により風営法上の営業禁止区域となり、Xは開業できない状態に。それでも営業を開始したため業務停止処分を受けた。
- ⑤国家賠償請求へ:取消訴訟の係属中に停止期間が経過し、国家賠償請求訴訟に変更。
最高裁は、③の児童遊園認可が行政権の著しい濫用に当たり違法と判断しました。適法な許可を受けた事業者の信頼の保護と、行政による権利濫用の限界を示す重要判例です。
論点
- 個室付き浴場の開業阻止のために、知事が行った児童園設置認可処分は国家賠償法上の違法となるか?
事案
有限会社Xは、個室付浴場業(ソープランドや風俗店)を営むために、山形県余目町(あまるめまち)に土地を購入し、個室付浴場業用の建物の建築確認の申請をし、建築確認を得た上で、建物の建築を完成させた。
また、個室付浴場業の営業許可についても、Xは受けていた。
ところが、当該個室付浴場業の建築に反対した地元住民から反対運動が起こったため、余目町と山形県Yは、個室付浴場業の開業を阻止するための方策を考えた。
その方策は、風俗営業等取締法(風営法)に「児童福祉施設から200m以内では、個室付浴場業の営業を禁止する」という法律を利用することであった。
当該個室付浴場から200m以内にある無認可の児童遊園があり、この児童遊園について、認可を与えた。
これにより、上記風営法により、Xは、当該個室付浴場業を開業できなくなった。
それにも関わらず、Xは個室付浴場業の営業を開始したため、Xは業務停止処分を受けた。
そこで、Xは、処分の取消訴訟を提起したが、訴訟係属中に、営業停止処分期間が経過したため、Yを被告として、国家賠償請求の訴えに変更した。
判決
個室付き浴場の開業阻止のために、知事が行った児童園設置認可処分は国家賠償法上の違法となるか?
→違法
本件児童遊園設置の認可処分は、行政権の著しい濫用によるものとして違法である。
関連する判例
最判昭53.6.16:余目町個室付浴場事件(行政権の濫用に相当する違法な行政処分に公定力はない)


