テキスト

最大判昭47.11.22:川崎民商事件

論点

  1. 旧所得税法に規定する収税官吏の検査は、憲法35条1項に違反するか?
  2. 旧所得税法に規定する収税官吏の質問・検査は、憲法38条に違反するか?

事案

昭和38年に、自宅店舗において川崎税務署収税官吏が、Xの所得税確定申告調査のため帳簿書類等の検査をしようとしていた。

これに対し、Xは、「何回くるんだ、事前通知がなければ調査に応じられない」などと大声をあげたり、また「あちらへ行こう」と収税官吏を引っ張ったりするなど、上記検査を拒んだ。

これが旧所得税法に違反するとしてXは起訴された。

憲法第35条(住居の不可侵)
何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、現行犯逮捕の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。

憲法第38条(黙秘権)
何人も、自己に不利益な供述を強要されない。

川崎民商事件の試験出題ポイント

川崎民商事件は、憲法35条(令状主義)と38条(黙秘権)が行政手続にも及ぶかという論点で繰り返し出題されています。判決の結論だけでなく、最高裁の論理構造を正確に押さえることが得点の鍵です。

頻出の出題パターン

  • 「刑事手続でないから憲法35条の保障は一切及ばない」→誤り。最高裁は、刑事手続でないとの理由のみで保障の枠外とは判断できないとしつつ、総合判断で令状不要と結論づけています。この「完全排除ではないが違反ではない」という二段構えの論理が引っかけポイントです。
  • 「行政調査には令状が常に不要である」→誤り。本判決はあくまで間接強制(罰則による心理的強制)の事案です。直接的物理的強制と同視すべき程度に達する行政調査であれば、令状が必要となる余地を残しています。
  • 「憲法38条1項の保障は純然たる刑事手続にのみ及ぶ」→誤り。判決は、刑事手続以外でも刑事責任追及のための資料取得に直接結びつく手続には保障が及ぶとしています。

関連判例との横断整理

川崎民商事件の理解を深めるには、荒川民商事件(最大判昭和48.7.10)も併せて確認しましょう。荒川民商事件では旧所得税法の質問検査権の範囲がさらに具体化されています。また、行政調査と刑事手続の区別という観点では、交通事故報告義務事件(最大判昭37.5.2)も憲法38条との関係で出題されるため、3判例をセットで整理しておくと択一式で確実に得点できます。

判決

旧所得税法に規定する収税官吏の検査は、憲法35条1項に違反するか?

→違反しない

旧所得税法の規定する検査拒否に対する罰則は、収税官吏による当該帳簿等の検査の受忍をその相手方に対して強制する作用を伴なうものである。

しかし、収税官吏の検査は、もつぱら、所得税の公平確実な賦課徴収のために必要な資料を収集することを目的とする手続であって、その性質上、刑事責任の追及を目的とする手続ではない。

また、当該検査が、実質上、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有するものと認めるべきことにはならない。

さらに、強制の態様は、収税官吏の検査を正当な理由がなく拒む者に対し、刑罰を加えることによつて、間接的心理的に右検査の受忍を強制しようとするものであるが、実質上、直接的物理的な強制と同視すべき程度にまで達しているものとは、いまだ認めがたい

憲法35条1項の規定は、本来、主として刑事責任追及の手続における強制について、それが司法権による事前の抑制の下におかれるべきことを保障した趣旨であるが、当該手続が刑事責任追及を目的とするものでない(収税官吏の検査)との理由のみで、その手続における一切の強制が当然に右規定による保障の枠外にあると判断することは相当ではない。

つまり、収税官吏の検査においても、憲法35条1項の保障の範囲外とは判断できない

しかし、総合して判断すれば、収税官吏の検査は、あらかじめ裁判官の発する令状によることをその一般的要件としないからといって、憲法35条に違反しているとはいえない

旧所得税法に規定する収税官吏の質問・検査は、憲法38条に違反するか?

→違反しない

憲法38条1項は、何人も自己の刑事上の責任を問われるおそれのある事項について供述を強要されないことを保障したものである。

そして、上記保障は、純然たる刑事手続においてばかりではなく、それ以外の手続においても、実質上、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する手続には、等しく及ぶものと解するのを相当とする。

しかし、収税官吏の検査、質問の性質が上述のようなものである以上、当該検査、質問の規定そのものが憲法38条1項にいう「自己に不利益な供述」を強要するものとすることはできず、この点の所論も理由がない。(=違反ではない)

小売市場距離制限事件をわかりやすく解説|規制目的二分論の原点【最大判昭47-11-22】

論点

  1. 営業の自由は憲法上保障されているか?
  2. 小売市場の許可規制は憲法22条1項(職業選択の自由)に違反しているか?

事案

X1株式会社は、市場経営を業とする法人であった。その代表者であるX2が、大阪府知事の許可を受けないで、東大阪市に平家(平屋)建て1棟を建設し、新しく小売市場とするために野菜商4店舗、生鮮魚介類商3店舗を含む49店舗を小売商人ら47名に貸し付けた。
この行為が、小売商業調整特別措置法第3条第1項に違反するとして、X1とX2が起訴された。

※小売商業調整特別措置法第3条第1項では、上記小売市場とするため、建物を貸し付ける行為については許可が必要であると規定しており、一方、許可の基準として、小売市場間の距離制限700m(半径700m以内に小売市場を設置できない)が設けられている。

判決

営業の自由は憲法上保障されているか?

→保障されている

憲法22条1項の職業選択の自由は、広く一般に、いわゆる営業の自由を保障する趣旨を包含している。

小売市場の許可規制は憲法22条1項(職業選択の自由)に違反しているか?

違反していない(合憲)

国が積極的な社会経済政策の実施の一手段として、立法により個人の経済活動に対し一定の規制措置を講ずることは、それが目的達成のため必要かつ合理的な範囲にとどまる限り、憲法に反しない。

したがって、個人の経済活動に対する法的規制措置は、立法府がその裁量権の逸脱し、当該法的規制措置が著しく不合理であることの明白な場合に限って、これを違憲とすることができる

本法による小売市場の許可規制は、国が社会経済の調和的発展を企図し、中小企業保護政策として採った措置であり、その目的において、一応の合理性を認めることができるし、規制の手段・対応においても著しく不合理であることが明白であるとは認められない。

したがって、小売市場の許可規制は、憲法22条1項に反せず、違憲ではない

レペタ事件(レペタ訴訟)とは?法廷メモの自由をわかりやすく解説【最大判平元-3-8】

論点

  1. 法廷でメモを取る自由は、憲法で保障されているか?
  2. 法廷でメモを取る行為を制限することはできるか?

事案

アメリカ国籍のレペタ氏Xは、アメリカワシントン州の弁護士で、国際交流基金の特別研究員として日本で経済法の研究を行っていた。その一環として、所得税法違反の事件の各公判を傍聴した。Xは、各公判期日の前に、担当裁判長に対して、7回にわたり傍聴席においてメモを取ることの許可を求めたが、いずれも許可されなかった。

そのためXは、上記不許可は憲法に違反するとして、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めた。

判決

法廷でメモを取る自由は、憲法で保障されているか?

→憲法21条1項の精神に照らし尊重に値する

憲法21条1項では「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」としている。

そして、各人が自由にさまざまな意見、知識、情報に接し、これを摂取する機会を持つことは、その者が個人として自己の思想及び人格を形成、発展させ、社会生活の中にこれを反映させていく上で欠くことのできないものである。

このような情報に接し、これを摂取する自由は上記趣旨、目的から、いわばその派生原理として当然導かれるところである。

ただし、筆記行為は、一般的には人の生活活動の一つであり、生活のさまざまな場面において行われ、極めて広い範囲に及んでいるから、そのすべてが憲法の保障する自由に関係するものということはできない。

しかし、情報等の摂取を補助するためにする筆記行為の自由は、憲法21条1項の規定の精神に照らして尊重されるべきである。

法廷でメモを取る行為を制限することはできるか?

特段の事情のない限り、制限することはできない

情報等の摂取を補助するためにする筆記行為の自由も、「他者の人権との調整」や「優越する公共の利益を確保する必要」から一定の合理的制限をうけることはやむを得ない。

しかも、筆記行為の自由は、憲法21条1項によって直接保障される表現の自由と異なり、その制限には、表現の自由に制約を加える場合の厳格な基準が要求されるものではない。

そして、公正かつ円滑な訴訟の運営は、傍聴人がメモを取ることに比べればはるかに優越する法益である。

しかし、傍聴人のメモを取る行為が公正かつ円滑な訴訟の運営を妨げることは通常ありえず、特段の事情がない限り、これを傍聴人の自由に任せることが憲法21条1項の趣旨に合致する。

森林法違憲判決(森林法共有林事件)をわかりやすく解説【最大判昭62-4-22】

論点

  1. 憲法29条1項は何を保障しているか?
  2. 森林法186条は憲法29条2項に違反するか?

事案

X、Yの兄弟は、父からそれぞれ山林の2分の1の持分を生前贈与され、共有登記をしていた。しかし、弟Xの反対を押し切って、兄Yが森林の一部を伐採したことから争いになった。

XはYを被告として、持分に応じた山林の分割等を請求する訴えを提起した。

規制目的二分論における森林法事件の位置づけ

財産権・経済的自由の規制についての違憲審査基準を理解するうえで、規制目的二分論の枠組みを押さえることが重要です。規制目的二分論とは、規制の目的が積極目的(政策的規制)消極目的(警察的規制)かによって、違憲審査の厳格度を変える考え方です。

森林法事件の判決は、この二分論との関係で独特の位置にあります。以下の比較表で3つの重要判例を整理しましょう。

判例小売市場距離制限事件
(最大判昭47.11.22)
薬事法距離制限事件
(最大判昭50.4.30)
森林法共有林事件
(最大判昭62.4.22)
規制の種類職業の自由(営業の自由)職業の自由(営業の自由)財産権(共有物分割請求権)
規制目的積極目的(中小企業保護政策)消極目的(国民の生命・健康への危険防止)積極目的とも消極目的とも明示せず
審査基準明白の原則(緩やかな審査)厳格な合理性の基準(中間審査)目的・手段の合理性審査(独自の枠組み)
結論合憲違憲違憲

森林法事件が二分論に収まらない理由

小売市場事件と薬事法事件では、規制目的が積極か消極かを明確に分類したうえで審査基準を設定しました。しかし森林法事件では、最高裁は規制目的の分類を行わず、財産権の種類・性質・規制の程度等を総合的に比較考量する枠組みを採用しています。

これは、財産権の規制が「多種多様」であることを理由に、目的二分論では対応しきれないと判断したものと解されています。行政書士試験では、3判例の審査基準の違いと、森林法事件が二分論の枠外にある点が問われるため、比較して整理しておきましょう。

判決

憲法29条1項は何を保障しているか?

私有財産制度のみならず、国民の個々の財産権についても保障している

憲法29条は、1項において「財産権は、これを侵してはならない。」と規定し、私有財産制度を保障しているのみでなく、社会的経済的活動の基礎をなす国民の個々の財産権につきこれを基本的人権として保障する。

森林法186条は憲法29条2項に違反するか?

違反する(違憲)

憲法29条2項では、「財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める。」と規定されている。

財産権に対する規制は、財産権の種類、性質等が多種多様であり、また、財産権に対し規制を要求する社会的理由ないし目的も、社会政策及び経済政策上の積極的なものから、社会生活における安全の保障や秩序の維持等の消極的なものに至るまで多岐にわたるため、種々様々でありうるのである。

したがって、財産権に対して加えられる規制が憲法29条2項にいう公共の福祉に適合するものとして是認されるべきものであるかどうかは、規制の目的、必要性、内容、その規制によつて制限される財産権の種類、性質及び制限の程度等を比較考量して決すべきものである。

また、裁判所としては、立法府がした右比較考量に基づく判断を尊重すべきものである。

そこで、裁判所としては、①立法の規制目的が、公共の福祉に合致しないことが明らかであるか、又は規制手段が目的を達成するための手段として必要性若しくは合理性に欠けていることが明らかであって、そのため立法府の判断が合理的裁量の範囲を超えるものとなる場合に限り、当該規制立法が憲法29条2項に違反すると解するのが相当である。

■そして、森林法186条(森林の共有者は、持分の過半数を有さない場合、分割請求ができない。)の立法目的は、森林の細分化を防止することによって森林経営の安定を図り、もつて国民経済の発展に資することにあると解すべきである。

この目的は、公共の福祉に合致しないことが明らかとはいえない。

ただし、共有者間に紛争が生じたときは、各共有者は、共有森林につき、保存行為を行うことができず、管理又は変更の行為を適法にすることができないこととなり、ひいては当該森林の荒廃という事態を招来することとなる。

また、一律に現物分割を認めないとすることは、同条の立法目的を達成する規制手段として合理性に欠け、必要な限度を超えるものというべきである

また、共有森林につき現物分割をしても直ちにその細分化を来すものとはいえないし、また、民法258条2項は、競売による代金分割の方法をも規定しているのであり、この方法により一括競売がされるときは、当該共有森林の細分化という結果は生じないのである。したがって、森林法186条は、目的を達成するについて必要な限度を超えた不必要な規制というべきである。

したがって、森林法186条の規制手段は、同条の立法目的との関係で合理性と必要性のいずれも肯定できないことが明らかなので、憲法29条2項に違反し無効である。

成田新法事件をわかりやすく解説|行政手続と憲法31条の適用【最判平4-7-1】

論点

  1. 成田新法3条1項1号が憲法31条に違反しないか?

事案

昭和53年、成田国際空港の安全を確保するため、「過激派集団の出撃拠点となっていた近くの小屋の使用禁止を命ずることができる」旨のいわゆる成田新法が制定され、即日施行された。

運輸大臣Yは、昭和54年以降毎年2月に、過激派集団Xに対し、成田新法3条1項(上記規定)に基づき、空港の規制区域内に所在するX所有の通称「横堀要塞(ようさい):小屋」を1年の期間を定めて使用を禁止した。

そこでXは、上記規定が憲法31条等に違反し、違憲無効であり、本件使用禁止命令も違憲無効であるとして、Yに対して、本件使用命令禁止の取消訴訟を提起した。

判決

成田新法3条1項1号が憲法31条に違反しないか?

→違反しない

憲法第31条(適正手続の保障)
何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

憲法31条の定める法定手続の保障(適正手続の保障)は、直接には刑事手続に関するものである。

しかし、行政手続については、それが刑事手続ではないとの理由のみで、そのすべてが当然に同条による保障(適正手続の保障)の枠外にあると判断することは相当ではない。(行政手続においても適正手続の保障の範囲内にあるといえる)

しかしながら、同条による保障(適正手続の保障)が及ぶと解すべき場合であっても、一般に、行政手続は、刑事手続とその性質においておのずから差異があり、また、行政目的に応じて多種多様であるから、行政処分の相手方に事前の告知、弁解、防御の機会を与えるかどうかは、行政処分により制限を受ける権利利益の内容、性質、制限の程度、行政処分により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等を総合較量して決定されるべきものであって、常に必ずそのような機会を与えることを必要とするものではないと解するのが相当である。

 成田新法3条1項に基づく工作物使用禁止命令により制限される権利利益の内容、性質は、前記のとおり当該工作物の三態様における使用であり、右命令により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等は、前記のとおり、新空港の設置、管理等の安全という国家的、社会経済的、公益的、人道的見地からその確保が極めて強く要請されているものであって、高度かつ緊急の必要性を有するものであることなどを総合較量すれば、右命令をするに当たり、その相手方に対し事前に告知、弁解、防御の機会を与える旨の規定がなくても、本法3条1項が憲法31条の法意に反するものということはできない(憲法31条に違反しない)

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大阪空港公害訴訟とは?判旨・争点をわかりやすく解説【最大判昭56-12-16】

大阪空港公害訴訟のポイントまとめ

大阪空港公害訴訟(最大判昭56・12・16)は、国営空港の差止請求が民事訴訟で認められるかが争われた重要判例です。行政書士試験では繰り返し出題されるため、以下の3点を確実に押さえましょう。

争点

  • 国営空港の夜間使用差止めを、民事上の請求(私法上の給付請求)として求めることができるか
  • 空港管理権と航空行政権の関係をどう捉えるか

判旨の核心

  • 航空機の離着陸規制は、営造物管理権と航空行政権が不可分一体として行使されている
  • 差止請求は不可避的に航空行政権の取消変更を求める内容を包含するため、通常の民事訴訟では不適法
  • 結論:民事上の請求としての差止めは認められない(ただし損害賠償請求は別途争点あり)

行政書士試験での出題パターン

  • 「民事訴訟で差止めが認められた」とする誤りの選択肢に注意(正しくは不適法)
  • 空港管理権と航空行政権の「不可分一体」のキーワードを問う出題が頻出
  • 国家賠償法に基づく損害賠償の可否と混同させる問題も出される
  • 同日の関連判決(営造物の設置・管理の瑕疵)とセットで問われることがある

論点

  1. 民事上の請求として、国営空港の使用の差止めを求める訴えは適法か?

事案

大阪国際空港(伊丹空港)は、国営の空港であった。

周辺住民Xらは、空港を発着する航空機の騒音等により被害を受け、人格権および環境権を著しく侵害されたことを理由として、空港の管理者である国Yに対して、民事訴訟を提起し、毎日午後9時~翌朝午前7時までの間、航空機の発着に使用させることの差止めを求めた。

判決

民事上の請求として、国営空港の使用の差止めを求める訴えは適法か?

→不適法である(民事訴訟で訴えることはできない

国際航空路線又は主要な国内航空路線に必要なものなど基幹となる公共用飛行場については、「運輸大臣みずから」が、又は「特殊法人である新東京国際空港公団」が、これを国営又は同公団営の空港として設置、管理し、公共の利益のためにその運営に当たるべきものとしている。

その理由は、これら基幹となる公共用飛行場にあっては、その設置、管理のあり方がわが国の政治、外交、経済、文化等と深いかかわりを持ち、国民生活に及ぼす影響も大きく、したがつて、どの地域にどのような規模でこれを設置し、どのように管理するかについては航空行政の全般にわたる政策的判断を不可欠とするからにほかならないものと考えられる。

このような空港国営化の趣旨、すなわち国営空港の特質を参酌して考えると、本件空港の管理に関する事項のうち、少なくとも航空機の離着陸の規制そのもの等、本件空港の本来の機能の達成実現に直接にかかわる事項自体については、「空港管理権に基づく管理」と「航空行政権に基づく規制」とが、「空港管理権者としての運輸大臣」と「航空行政権の主管者としての運輸大臣」のそれぞれ別個の判断に基づいて分離独立的に行われ、両者の間に矛盾乖離を生じ、本件空港を国営空港とした本旨を没却し又はこれに支障を与える結果を生ずることがないよう、いわば両者が不即不離、不可分一体的に行使実現されているものと解するのが相当である。

言い換えれば、本件空港における航空機の離着陸の規制等は、これを法律的にみると、単に本件空港についての営造物管理権の行使という立場のみにおいてされるべきもの、そして現にされているものとみるべきではなく航空行政権の行使という立場をも加えた、複合的観点に立つた総合的判断に基づいてされるべきもの、そして現にされているものとみるべきものである。

ここで、Xらの前記のような請求は、不可避的に航空行政権の行使の取消変更ないしその発動を求める請求を包含することとなるものといわなければならない。

したがって、Xらが行政訴訟の方法により何らかの請求をすることができるかどうかはともかくとして、上告人に対し、いわゆる通常の民事上の請求として前記のような私法上の給付請求権を有するとの主張の成立すべきいわれはない(民事上の請求で主張はできない)というほかはない。

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関連判例

最大判昭56.12.16:「空港騒音」と「設置又は管理の瑕疵」(大阪国際空港公害訴訟)

当事者訴訟とは?形式的・実質的当事者訴訟の違いをわかりやすく解説【行政書士】

当事者訴訟は、主観訴訟ではあるものの、これまで勉強してきた抗告訴訟ではありません。主観訴訟は、個人の権利利益の救済を目的とし、自分自身に直接関係する行政活動に対する訴訟を指します。

そして、当事者訴訟は非常に分かりにくい訴訟なので、イメージを頭に入れることが重要です!


当事者訴訟とは?

当事者訴訟とは、①当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの及び②公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟をいう。

上記、「①当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で、法律関係の当事者の一方を被告とするもの」が形式的当事者訴訟で、「②公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟」が実質的当事者訴訟です。

上記を読んだだけでは全く意味が分からないと思いますので、具体例を出しながら解説していきます。

形式的当事者訴訟

例えば、Aの土地について、土地収用に関する収用委員会の裁決について,不服がある場合、本来、収用委員会の属する都道府県を被告として、収用裁決の取消しの訴えを提起します。

しかし、Aが収用自体は納得しているけど、収用に対する補償金額に不服がある場合があります。この場合、Aは補償額についてのみ争えばよいです。

そして、この補償額については、事業の起業者(事業を行う者)が決め、収用委員会が認定するのですが、補償額(損失補償額)に争いがある場合,土地を収用されたAと起業者との間で争います。

本来であれば,「補償額を認定した収用委員会の属する行政主体である都道府県」を被告として裁決を争う抗告訴訟によるべきです。
これが、「当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟」ということです。

しかし、補償金額については,補償金の支払いに関係する当事者間で直接争わせたほうが適切であるため、被告を起業者として訴訟を提起します。
これが、「法律関係の当事者の一方を被告とする」ということです。

上記訴えが、当事者訴訟の中の形式的当事者訴訟です。

上記は、土地を収用されたAが、「補償額が少なすぎる!」と主張する場合で、逆に起業者が「補償額が高すぎる!」と主張する場合、被告がAとなり、同じく形式的当事者訴訟で争います。

形式的当事者訴訟は、上記「収用における補償金の増額・減額の訴訟」 を具体例として覚えた方が早いです。

実質的当事者訴訟

次に実質的当事者訴訟を解説するのですが、形式的当事者訴訟と全く違うものに見えると思います。そのため、形式的当事者訴訟と実質的当事者訴訟は分けて考えた方がよいでしょう!つなげて考えると、逆に分かりづらくなります。

今から解説する具体例は、無効等確認訴訟でも勉強した内容です。

例えば、国家公務員Cが懲戒免職処分を受けた。Cは、この処分が無効であることを前提に、「公務員の地位確認訴訟」や「給料支払請求訴訟」を行うことができます。この訴えは、被告が国であるというだけで、内容としては、民事訴訟と同じです。

例えば、会社員Dが会社から不当解雇を受け、この解雇が無効であることを前提に、「社員たる地位の確認訴訟」を提起することは、民事訴訟です。

単に、「私人と私人の争い」ではなく「国と公務員」という公法上の法律関係なっているにすぎません。

このような訴訟が実質的当事者訴訟です。

まずは、具体例を覚えることが理解への第一歩なので、具体例を覚えていきましょう。

上記以外にも、

等があります。

実質的当事者訴訟と争点訴訟の違い

上記実質的当事者訴訟と争点訴訟は似ていますが、違います。

何が違うかというと、
実質的当事者訴訟は、私人と行政主体との争い(=行政訴訟)で、
争点訴訟は私人間の争い(=民事訴訟)です。

また、上図の通り、現在の法律関係の確認を求める訴え(実質的当事者訴訟や争点訴訟)では目的達成ができない場合に限って、無効等確認の訴え(無効確認訴訟)を提起できる点も併せて覚えておきましょう。

<<当事者訴訟(形式的当事者訴訟・実質的当事者訴訟) | 争点訴訟>>

奈良県ため池条例事件をわかりやすく解説|財産権の制限と損失補償【行政書士】

論点

  1. 条例により財産権を規制することも許されるか?

事案

多数のため池を有する奈良県は、ため池の破損、決壊等による災害を未然に防止するために、ため池の保全に関する条例を制定した。その条例は、4条でため池の堤とうでの耕作などを禁止し、9条で、その違反者に対して3万円以下の罰金に処するとしている。

ため池Aは、在住の農民の総有に属しており、その堤とうも代々耕作の対象になっていたが、同条例によってそこでの耕作が禁じられることになった。しかし、農夫である被告人Yらは、堤とうでの耕作禁止を知りながら、条例施行後も引き続き、耕作を行ったため、条例違反で起訴された。

判決

条例により財産権を規制することも許されるか?

許される

ため池の保全に関する条例は、ため池の堤とうを使用する権利者に対しては、その使用のほとんどが全面的に禁止されるので、権利に著しい制限を加えるものである。

しかし、それは「災害を未然に防止する」という社会生活上のやむを得ない必要から来ることであって、ため池の堤とうを使用する財産上の権利を有する者は何人も、公共の福祉のため、当然これを受忍しなければならない(受け入れて耐える)責務を負うというべきである。

すなわち、ため池の破損、決かいの原因となるため池の堤とうの使用行為は、憲法でも、民法でも適法な財産権の行使として保障されていないものであって、憲法、民法の保障する財産権の行使の埒外(らちがい:枠外)にある。

したがって、これらの行為(ため池の堤とうの使用権)を条例をもって禁止、処罰しても憲法および法律に牴触またはこれを逸脱するものとはいえないし、また、ため池の堤とうの使用権保護を、既に規定していると認めるべき法令は存在していないのであるから、これを条例で定めたからといって、違憲または違法の点は認められない

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京都府学連事件をわかりやすく解説|肖像権・プライバシー権の判例【行政書士】

論点

  1. 肖像権が憲法で保障されるか?
  2. 写真撮影が許容されるための要件は何か?
  3. 当該事案で写真撮影は適法か?

事案

大学生Xは、京都府学連主催のデモ行進に参加し、集団の先頭に立って行進をしていた。Xはデモ行進の許可の条件を詳しく知らず、デモ隊を誘導し、デモ隊は警察機動隊ともみあいに、隊列を崩したまま行進をした。これが許可条件に反すると判断した京都府警の巡査は、「違法な行進状況」および「違反者の確認」のために写真撮影をした。この撮影を知ったXは、当該巡査を、持っていた旗で一突きし、全治一週間の傷害を与えたため、傷害および公務執行妨害の罪で起訴された。

判決

肖像権が憲法で保障されるか?

→肖像権は憲法13条で保障される

憲法13条は、国民の私生活上の自由が、国家権力に対しても保護されることを規定している。

そして、個人の私生活上の自由として、承諾なしに、みだりにその容ぼう等を撮影されない自由を有する

よって、肖像権は憲法13条によって保障されており、警察官が、正当な理由なく、個人の容ぼう等を撮影する行為は13条の趣旨に反し許されない。(言い換えると、正当な理由があれば、撮影してもよい、ということ)

憲法第13条
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

写真撮影が許容されるための要件は何か?

①現に犯罪が行われ、もしくは、行われたのち間もないと認められる場合」であって、②証拠保全の必要性および緊急性があり、③撮影が一般的に許容される限度を超えない相当な方法をもって行われること

上記肖像権の自由は、無制限ではなく、公共の福祉のため必要がある場合には相当の制限を受ける。

具体的には、「①現に犯罪が行われ、もしくは、行われたのち間もないと認められる場合」であって、②証拠保全の必要性および緊急性があり、③撮影が一般的に許容される限度を超えない相当な方法をもって行われるときには、

警察官による写真撮影に、本人Xおよび第三者である個人の容ぼう等を含むこととなっても憲法13条等に違反しない。

当該事案で写真撮影は適法か?

適法

今回の事案では、上記①~③を満たすため、適法な職務執行行為といえる。

堀越事件をわかりやすく解説|猿払事件との違い・公務員の政治活動【行政書士】

論点

  1. 国家公務員法102条1項にいう「政治的行為」の意義とは?
  2. 管理職的地位にない者が、配布行為を行うことは、実質的に政治的中立性を損なうおそれがあると認められるか?

事案

堀越明男氏Xは社会保険庁東京社会保険事務局目黒社会保険事務所に年金審査官として勤務していた厚生労働事務官である。
Xは衆議院選挙総選挙に際し、勤務時間外に日本共産党を支持する目的で「しんぶん赤旗 号外」をポスティングしたところ、住居侵入罪で現行犯逮捕された。
住居侵入罪については不起訴処分とされたが、国家公務員法に反するのではないかとして追送検された。

※Xは、社会保険の相談に関する業務を副長の指導の下で、専門職として、相談業務を担当していただけで、人事や監督に関する権限も与えられていなかった。

堀越事件と猿払事件の比較表

堀越事件と猿払事件はいずれも国家公務員の政治的行為が争われた重要判例ですが、最高裁の判断は大きく異なります。両事件の違いを整理しておきましょう。

比較項目猿払事件(最大判昭49.11.6)堀越事件(最判平24.12.7)
被告人の職種郵便局員(北海道猿払村)社会保険事務所の年金審査官
問題となった行為選挙用ポスターの掲示・配布政党機関紙のポスティング
管理職的地位非管理職非管理職(副長の指導下で相談業務を担当)
審査基準合理的関連性の基準(緩やかな審査)実質的おそれの基準(より厳格な個別的審査)
政治的行為の解釈国公法の文言どおり広く禁止を肯定政治的中立性を損なう現実的・実質的なおそれがある行為に限定
考慮要素立法目的の正当性・手段の合理性(抽象的判断)①管理職的地位の有無 ②職務内容と権限 ③行為の態様・状況を個別具体的に検討
結論有罪(罰金5,000円)無罪
判例としての意義公務員の政治活動の広範な制限を合憲と判断猿払事件の枠組みを実質的に変更し、処罰範囲を限定解釈

試験対策のポイント:猿払事件では「合理的関連性の基準」により広く規制を合憲としたのに対し、堀越事件では行為の態様や職務権限を個別に検討する「実質的おそれの基準」を採用し、結論が逆転しました。行政書士試験では両判例の審査基準の違い結論が分かれた理由が問われやすいため、セットで押さえておきましょう。

判決

国家公務員法102条1項にいう「政治的行為」の意義とは?

公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが、観念的なものにとどまらず、現実的に起こり得るものとして実質的に認められるものを指す

国家公務員法102条1項は、「職員は、政党又は政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法を以てするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除く外、人事院規則で定める政治的行為をしてはならない。」と規定している。

上記規定は、「行政の中立的運営を確保し、これに対する国民の信頼を維持すること」をその趣旨である。

また、憲法15条2項は、「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。」と定めており、国民の信託に基づく国政の運営のために行われる公務は、国民の一部でなく、その全体の利益のために行われるべきものであることが要請されている。

その中で、国の行政機関における公務は、憲法の定める我が国の統治機構の仕組みの下で、議会制民主主義に基づく政治過程を経て決定された政策を忠実に遂行するため、国民全体に対する奉仕を旨として、政治的に中立に運営されるべきものといえる。

そして、このような行政の中立的運営が確保されるためには、公務員が、政治的に公正かつ中立的な立場に立って職務の遂行に当たることが必要となるものである。

このように、本法102条1項は、公務員の職務の遂行の政治的中立性を保持することによって行政の中立的運営を確保し、これに対する国民の信頼を維持することを目的(※1)とするものと解される。

他方、国民は、憲法上、表現の自由(21条1項)としての政治活動の自由を保障されている。

この精神的自由は立憲民主政の政治過程にとって不可欠の基本的人権であって、民主主義社会を基礎付ける重要な権利である。

このことに鑑みると、上記の目的(※1)に基づく法令による公務員に対する政治的行為の禁止は、国民としての政治活動の自由に対する必要やむを得ない限度にその範囲が画されるべきものである。

このような本法102条1項の文言、趣旨、目的や規制される政治活動の自由の重要性に加え、同項の規定が刑罰法規の構成要件となることを考慮すると、
同項にいう「政治的行為」とは、
公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが、観念的なものにとどまらず、現実的に起こり得るものとして実質的に認められるものを指し、
同項はそのような行為の類型の具体的な定めを人事院規則に委任したものと解するのが相当である。

管理職的地位にない者が、配布行為を行うことは、実質的に政治的中立性を損なうおそれがあると認められるか?

認められない

本件配布行為は、管理職的地位になく、その職務の内容や権限に裁量の余地のない公務員によって、職務と全く無関係に、公務員により組織される団体の活動としての性格もなく行われたものである。

また、当該行為は、公務員による行為と認識し得る態様で行われたものでもない

よって、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものとはいえない。

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