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最判平6.2.8:ノンフィクション「逆転」事件

論点

  1. 前科等のある者は、前科等の事実を公表されない法的保護は与えられるか?
  2. 前科等の公表規制と表現の自由との調整

事案

沖縄県がアメリカ合衆国の統治下にあったころ、Xら4名は米兵2名と殴り合いの喧嘩をし、米兵1名が死亡し、もう一方の米兵も負傷する事件が起きた。Xらはアメリカの高等裁判所により傷害罪について懲役3年の実刑判決を受けた。

その後、Xは、仮出獄し、都内のバス運転会社に運転手として就職し、前科を隠して結婚もしており平穏な生活を送っていた。

Yは、上記裁判の陪審員として関与しており、その体験に基づき『逆転』と題する著作を執筆し、ノンフィクション賞という賞も受けた。

その後、Xは、無断で実名が使用されたため、前科に関わる事実が公表され、プライバシー権が侵害されたとして、Yに対して慰謝料300万円の支払いを請求する訴えを提起した。

判決

前科等のある者は、前科等の事実を公表されない法的保護は与えられるか?

→与えられる

前科等に関する事実は、その者の名誉あるいは信用に直接にかかわる事項であるから、その者は、みだりに前科等にかかわる事実を公表されないことにつき、法的保護に値する利益を有するものというべきである

前科等の公表規制と表現の自由との調整

→当事者の生活状況、事件の歴史的又は社会的な意義、その著作物の目的、性格等に照らした実名使用の意義及び必要性を併せて判断し、右の前科等にかかわる事実を公表されない法的利益がこれを公表する理由に優越するとき、その公表によって被った精神的苦痛の賠償を求めることができる

ある者の前科等にかかわる事実が著作物で実名を使用して公表された場合に、

その者のその後の生活状況、当該刑事事件それ自体の歴史的又は社会的な意義その者の事件における当事者としての重要性、その者の社会的活動及びその影響力について、

その著作物の目的、性格等に照らした実名使用の意義及び必要性を併せて判断し、

右の前科等にかかわる事実を公表されない法的利益がこれを公表する理由に優越するときは、

右の者は、その公表によって被った精神的苦痛の賠償を求めることができる。

つまり、「前科等にかかわる事実を公表されない法的利益」が「これを公表する理由」に優越するとき、Xは、その公表によって被った精神的苦痛の賠償を求めることができる

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