民法の過去問

平成29年・2017|問29|民法・物権

物権の成立に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものの組合せはどれか。

ア.他人の土地の地下または空間の一部について、工作物を所有するため、上下の範囲を定めて地上権を設定することは認められない。
イ.一筆の土地の一部について、所有権を時効によって取得することは認められる。
ウ.構成部分の変動する集合動産について、一括して譲渡担保の目的とすることは認められない。
エ.土地に生育する樹木について、明認方法を施した上で、土地とは独立した目的物として売却することは認められる。
オ.地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。

  1. ア・イ
  2. ア・ウ
  3. イ・エ
  4. ウ・エ
  5. エ・オ

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【答え】:2

【解説】

ア.他人の土地の地下または空間の一部について、工作物を所有するため、上下の範囲を定めて地上権を設定することは認められない。
ア・・・妥当ではない
地下又は空間は、工作物を所有するため、上下の範囲を定めて地上権の目的とすることができます民法269条の2)。
よって、本肢は妥当ではありません。
  • 空間の具体例⇒モノレール
  • 地下の具体例⇒「地下鉄」や「地下を通る高速道路」
イ.一筆の土地の一部について、所有権を時効によって取得することは認められる。
イ・・・妥当
判例によると
「占有は事実上の支配であり、土地の一部に事実上の支配を及ぼすことも可能であるから、1筆の土地の一部について時効取得することができる」としています(大判大13.10.7)。
取得時効の事例でいうと
隣地境界あたりで、一部が他人地だったけど
それを知らずに、ずっと自分の土地と思い込んで占有していて
その部分のみ時効取得する事例が多いです。よって、本肢は妥当です。
ウ.構成部分の変動する集合動産について、一括して譲渡担保の目的とすることは認められない。
ウ・・・妥当ではない
判例によると、
構成部分の変動する集合動産であつても、その種類所在場所及び量的範囲を指定するなどの方法により目的物の範囲が特定される場合には、一個の集合物として譲渡担保の目的となりうる」としています(最判昭54.2.15)。
「構成部分の変動する集合動産」とは、「倉庫にあるモノ」です。「倉庫の所在地」や「どの種類」「どれだけの量」を指定することで、これら全部を一個の集合物として譲渡担保権の設定をすることができます。よって、本肢は妥当ではありません。具体例については個別指導で解説します!
エ.土地に生育する樹木について、明認方法を施した上で、土地とは独立した目的物として売却することは認められる。
エ・・・妥当
原則として、立木は土地の構成部分、つまり、土地の一部にすぎません。
理由は、土地に根を張って生存しているからです。
しかし、立木だけ売りたい・買いたいという場合もあります。その場合に「明認方法」というルールがあります。明認方法の具体的な方法としては、所有者を明示する標札を立てる、立木を削って名前を書く、墨書きをする、などがあります。これにより、土地に生育する樹木について、土地とは独立した目的物として売却することは認められます

よって、本肢は妥当です。

オ.地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。
5・・・妥当
地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができます(民法283条)。
よって、本肢は妥当です。関連ポイントについては、個別指導で解説します!

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平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・政治
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 基礎知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

平成29年・2017|問27|民法・社団や組合

自然人A(以下「A」という。)が団体B(以下「B」という。)に所属している場合に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア.Bが法人である場合に、AがBの理事として第三者と法律行為をするときは、Aは、Bの代表としてではなく、Bの構成員全員の代理人として当該法律行為を行う。
イ.Bが権利能力のない社団である場合には、Bの財産は、Bを構成するAら総社員の総有に属する。
ウ.Bが組合である場合には、Aは、いつでも組合財産についてAの共有持分に応じた分割を請求することができる。
エ.Bが組合であり、Aが組合の業務を執行する組合員である場合は、Aは、組合財産から当然に報酬を得ることができる。
オ.Bが組合であり、Aが組合の業務を執行する組合員である場合に、組合契約によりAの業務執行権限を制限しても、組合は、善意無過失の第三者には対抗できない。

  1. ア・ウ
  2. ア・エ
  3. イ・ウ
  4. イ・オ
  5. エ・オ

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【答え】:4

【解説】

自然人Aが団体Bに所属している。

ア.Bが法人である場合に、AがBの理事として第三者と法律行為をするときは、Aは、Bの代表としてではなく、Bの構成員全員の代理人として当該法律行為を行う。

ア・・・妥当ではない
「団体Bが法人である」「AがBの理事として」という言葉から、下記ルールを考えます。理事は、一般社団法人を代表します(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律77条1項本文)。そのため、Bが法人である場合、理事Aは法人Bの代表として法律行為を行います。

本肢は「理事AはBの構成員全員の代理人として当該法律行為を行う」が妥当ではありません。

自然人Aが団体Bに所属している。

イ.Bが権利能力のない社団である場合には、Bの財産は、Bを構成するAら総社員の総有に属する。

イ・・・妥当
権利能力のない労働組合(任意団体)の財産は、実質的には社団の総社員(全加入者)で総有(共有)するものだから、総社員の同意で、「総有の廃止」や「財産の処分」についてルールを決めない限り、現社員と元社員は、当然には、財産に関して、「共有の持分権」や、「財産の分割請求権」はありません最判昭32.11.14)。
よって、本肢は妥当です。この辺りは、対比して勉強すべき部分なので、対比部分については、個別指導で解説します!

自然人Aが団体Bに所属している。

ウ.Bが組合である場合には、Aは、いつでも組合財産についてAの共有持分に応じた分割を請求することができる。

ウ・・・妥当ではない
各組合員の「出資その他の組合財産」は、総組合員の「共有」に属します(民法668条)。
そして、上記「共有」は「合有」を意味します。「合有」は「共有」と同じく持分はあるのですが、
組合員は、清算前に組合財産の分割を求めることができません民法676条3項)。

よって、「Aは、いつでも組合財産についてAの共有持分に応じた分割を請求することができる」わけではないので妥当ではないです。

あくまでも清算した時に残余財産があるときに限り、分配されます。

自然人Aが団体Bに所属している。

エ.Bが組合であり、Aが組合の業務を執行する組合員である場合は、Aは、組合財産から当然に報酬を得ることができる。

エ・・・妥当ではない
受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができません(民法648条1項)。
このルールは組合の業務を決定し、又は執行する組合員について準用します(民法671条)。

そして、
「組合(会社)」と「組合の業務を執行する組合員(個人)」は委任契約です。そのため、上記のように委任契約のルールが準用されています。

上記をまとめると

「組合の業務を執行する組合員は、特約がなければ、組合に対して報酬を請求することができない」ということです。

本肢は「業務執行組合員Aは、組合財産から当然に報酬を得ることができる」は妥当ではありません。

当然には報酬を得ることができません。

自然人Aが団体Bに所属している。

オ.Bが組合であり、Aが組合の業務を執行する組合員である場合に、組合契約によりAの業務執行権限を制限しても、組合は、善意無過失の第三者には対抗できない。

オ・・・妥当
民法上の組合において、組合規約等で業務執行者の代理権限を制限しても、その制限は善意無過失の第三者に対抗できません最判昭38.5.31)。
よって、本肢は妥当です。

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平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・政治
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 基礎知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

平成30年・2018|問35|民法:後見

後見に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 未成年後見は、未成年者に対して親権を行う者がないときに限り、開始する。
  2. 未成年後見人は自然人でなければならず、家庭裁判所は法人を未成年後見人に選任することはできない。
  3. 成年後見は、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者について、家庭裁判所の審判によって開始する。
  4. 成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護および財産管理に関する事務を行う義務のほか、成年被後見人が他人に損害を加えた場合において当然に法定の監督義務者として責任を負う。
  5. 後見人の配偶者、直系血族および兄弟姉妹は、後見監督人となることができない。

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【答え】:5

【解説】

1.未成年後見は、未成年者に対して親権を行う者がないときに限り、開始する。

1・・・妥当でない
未成年者に対して親権を行う者がないとき」又は「親権を行う者が管理権を有しないとき後見は開始します(民法838条
よって、親権を行う者がないときに限らないので、本肢は妥当ではありません。
  • 「後見」とは、「親権者のいない未成年者」や「精神上の障害者」で後見開始の審判を受けた者の「身上や財産の保護」を行う制度を言います。
  • 「管理権」とは、親権者が、子どもの財産を管理する権利のことです。

「親権」や「親権を行う者がないとき」については、個別指導で解説します!

2.未成年後見人は自然人でなければならず、家庭裁判所は法人を未成年後見人に選任することはできない。

2・・・妥当でない

未成年後見人は自然人だけでなく、法人を選任することもできます民法840条3項)。

よって、本肢は妥当ではありません。

3.成年後見は、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者について、家庭裁判所の審判によって開始する。
3・・・妥当でない
精神上の障害により事理を弁識する能力を「欠く常況」にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができます(民法7条)。
つまり、成年後見は、精神上の障害により事理を弁識する能力が「著しく不十分」ではなく
「欠く常況(常に能力がない)」場合に、家庭裁判所の審判によって開始します。よって、誤りです。「著しく不十分」は被保佐人です(民法11条)。
4.成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護および財産管理に関する事務を行う義務のほか、成年被後見人が他人に損害を加えた場合において当然に法定の監督義務者として責任を負う。
4・・・妥当でない
結論から言えば、後半分の「成年後見人は、成年被後見人が他人に損害を加えた場合において当然に法定の監督義務者として責任を負う。」という部分が妥当ではないです。

■ 成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければなりません(民法858条)。つまり、成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護および財産管理に関する事務を行う義務があるので、前半部分は正しいです。

■ 未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について、当該未成年者は賠償責任を負いません(712条)。

そして、当該未成年者が責任を負わない場合、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者(法定監督義務者)は、原則、その責任無能力者(未成年者)が第三者に加えた損害を賠償する責任を負います(714条)。

そして、判例では、成年後見人であるというだけでは、法定監督義務者には当たらないとしています。つまり、「当然に法定の監督義務者として責任を負う」という記述は誤りです。

判例によると「精神障害者と同居する配偶者であるからといって、その者が当然に『責任無能力者を監督する法定の義務を負う者』に当たるとすることはできない」としています(最判平28.3.1)。
つまり、本肢は「当然に法定の監督義務者として責任を負う」が妥当ではありません。そして、上記「法定の監督義務者」に該当しない者であっても、責任無能力者との身分関係や日常生活における接触状況に照らし、第三者に対する加害行為の防止に向けてその者が当該責任無能力者の監督を現に行いその態様が単なる事実上の監督を超えているなどその監督義務を引き受けたとみるべき特段の事情が認められる場合には、法定の監督義務者に準ずべき者として、責任を負うとしています。

5.後見人の配偶者、直系血族および兄弟姉妹は、後見監督人となることができない。
5・・・妥当
結論から言えば、「後見人の配偶者、直系血族および兄弟姉妹は、後見監督人となることができない(民法850条)」ので妥当です。
後見監督人の仕事は、「後見人の事務を監督すること」、「後見人が欠けた場合に、遅滞なくその選任を家庭裁判所に請求すること」、「急迫の事情がある場合に、必要な処分をすること」、「後見人又はその代表する者と被後見人との利益が相反する行為について被後見人を代表すること」です(民法851条)。
後見人に近しい者が後見監督人であると、公平に後見人を監督できないかのうせいがあるので、後見監督人になることはできないことになっています。
したがって、妥当である。

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平成30年度(2018年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 法令用語 問32 民法:債権
問3 判決文の理解 問33 民法:債権
問4 学問の自由 問34 民法:親族
問5 生存権 問35 民法:親族
問6 参政権 問36 商法
問7 天皇・内閣 問37 会社法
問8 行政代執行法 問38 会社法
問9 公法と私法 問39 会社法
問10 無効と取消し 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・社会
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・その他
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・その他
問24 地方自治法 問54 基礎知識・社会
問25 行政法の判例 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法の判例 問56 基礎知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成30年・2018|問34|民法:離婚

離婚に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア.離婚における財産分与は、離婚に伴う精神的苦痛に対する損害の賠償も当然に含む趣旨であるから、離婚に際し財産分与があった場合においては、別途、離婚を理由とする慰謝料の請求をすることは許されない。

イ.離婚に際して親権者とならず子の監護教育を行わない親には、子と面会・交流するためのいわゆる面接交渉権があり、この権利は親子という身分関係から当然に認められる自然権であるから、裁判所がこれを認めない判断をすることは憲法13条の定める幸福追求権の侵害に当たる。

ウ.父母が協議上の離婚をする場合に、その協議でその一方を親権者として定めなかったにもかかわらず、誤って離婚届が受理されたときであっても、当該離婚は有効に成立する。

エ.民法の定める離婚原因がある場合には、当事者の一方は、その事実を主張して直ちに家庭裁判所に対して離婚の訴えを提起することができ、訴えが提起されたときは、家庭裁判所は直ちに訴訟手続を開始しなければならない。

オ.夫婦の別居が両当事者の年齢および同居期間との対比において相当の長期間に及び、その夫婦の間に未成熟の子が存在しない場合には、相手方配偶者が離婚により極めて苛酷な状態に置かれる等著しく社会的正義に反するといえるような特段の事情のない限り、有責配偶者からの離婚請求であるとの一事をもって離婚が許されないとすることはできない。

  1. ア・イ
  2. ア・ウ
  3. イ・エ
  4. ウ・オ
  5. エ・オ

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【答え】:4(ウとオが妥当)

【解説】

ア.離婚における財産分与は、離婚に伴う精神的苦痛に対する損害の賠償も当然に含む趣旨であるから、離婚に際し財産分与があった場合においては、別途、離婚を理由とする慰謝料の請求をすることは許されない。

ア・・・妥当でない
判例によると
「すでに財産分与がなされた場合においても、・・・その額および方法において分与請求者の精神的苦痛を慰籍するに足りないと認められるものであるときは、右請求者は、別個に、相手方の不法行為を理由として離婚による慰籍料を請求することができる」としています(最判昭46.7.23)。
つまり、
離婚の財産分与には、「精神的苦痛に対する損害賠償」が含まれない場合もあり、
「精神的苦痛に対する損害賠償」が含まれない場合、財産分与とは別に、慰謝料を請求できます。よって、本肢は妥当ではありません。
イ.離婚に際して親権者とならず子の監護教育を行わない親には、子と面会・交流するためのいわゆる面接交渉権があり、この権利は親子という身分関係から当然に認められる自然権であるから、裁判所がこれを認めない判断をすることは憲法13条の定める幸福追求権の侵害に当たる。
イ・・・妥当でない
協議離婚をした際に親権者とされなかった親が、子どもと面会交渉することについて
裁判所が、親の面接交渉権を認めない判断をすることは、憲法13条に違反するかどうかの問題ではないとしています(最判昭59.7.6)。
つまり、本肢の「幸福追求権の侵害に当たる」というのは妥当ではありません。
ウ.父母が協議上の離婚をする場合に、その協議でその一方を親権者として定めなかったにもかかわらず、誤って離婚届が受理されたときであっても、当該離婚は有効に成立する。
ウ・・・妥当
父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければなりません(民法819条1項)。
そして、離婚の届出は、上記規定等の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができません(民法765条1項)。だたし、離婚の届出が、上記に違反して受理された場合、離婚は、有効に成立してしまいます(同条3項)。つまり、父母が協議上の離婚をする場合に、その協議でその一方を親権者として定めなかった場合であっても、誤って離婚届が受理されたときは、当該離婚は有効に成立します。

したがって、本肢は妥当です。

エ.民法の定める離婚原因がある場合には、当事者の一方は、その事実を主張して直ちに家庭裁判所に対して離婚の訴えを提起することができ、訴えが提起されたときは、家庭裁判所は直ちに訴訟手続を開始しなければならない。
エ・・・妥当でない
離婚の裁判をしようとする場合、事前に離婚調停をしなければなりません家事事件手続法257条:調停前置主義)。
よって、本肢は妥当ではありません。
オ.夫婦の別居が両当事者の年齢および同居期間との対比において相当の長期間に及び、その夫婦の間に未成熟の子が存在しない場合には、相手方配偶者が離婚により極めて苛酷な状態に置かれる等著しく社会的正義に反するといえるような特段の事情のない限り、有責配偶者からの離婚請求であるとの一事をもって離婚が許されないとすることはできない。
オ・・・妥当
「有責配偶者」とは、離婚の原因を作った側を指します。そして、判例では、
「有責配偶者からされた離婚請求であっても、
夫婦がその年齢及び同居期間と対比して相当の長期間別居し、
その間に未成熟子がいない場合には、
相手方配偶者が離婚によって精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情のない限り、有責配偶者からの請求であるとの一事をもって許されないとすることはできない」としています(最大判昭62.9.2)。つまり、特段の事情がない限り、有責配偶者からでも、離婚請求ができるということです。よって、本肢は妥当です。

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平成30年度(2018年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 法令用語 問32 民法:債権
問3 判決文の理解 問33 民法:債権
問4 学問の自由 問34 民法:親族
問5 生存権 問35 民法:親族
問6 参政権 問36 商法
問7 天皇・内閣 問37 会社法
問8 行政代執行法 問38 会社法
問9 公法と私法 問39 会社法
問10 無効と取消し 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・社会
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・その他
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・その他
問24 地方自治法 問54 基礎知識・社会
問25 行政法の判例 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法の判例 問56 基礎知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成30年・2018|問33|民法:不法行為

Aに雇われているBの運転する車が、Aの事業の執行中に、Cの車と衝突して歩行者Dを負傷させた場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。なお、Aには使用者責任、BおよびCには共同不法行為責任が成立するものとする。

  1. AがDに対して損害を全額賠償した場合、Aは、Bに故意または重大な過失があったときに限ってBに対して求償することができる。
  2. AがDに対して損害を全額賠償した場合、Aは、損害の公平な分担という見地から均等の割合に限ってCに対して求償することができる。
  3. CがDに対して損害を全額賠償した場合、Cは、Bに対してはB・C間の過失の割合によるBの負担部分について求償することができるが、共同不法行為者でないAに対しては求償することができない。
  4. Cにも使用者Eがおり、その事業の執行中に起きた衝突事故であった場合に、AがDに対して損害を全額賠償したときは、Aは、AとEがそれぞれ指揮監督するBとCの過失の割合によるCの負担部分についてEに対して求償することができる。
  5. BがAのほかFの指揮監督にも服しており、BがAとFの事業の執行中に起きた衝突事故であった場合に、AがDに対して損害を全額賠償したときは、Aは、損害の公平な分担という見地から均等の割合に限ってFに対して求償することができる。

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【答え】:4

【解説】

本肢は、図を使いながら解説しないと理解しづらいので、個別指導では図を使いながら解説します!

1.AがDに対して損害を全額賠償した場合、Aは、Bに故意または重大な過失があったときに限ってBに対して求償することができる。

1・・・妥当でない
使用者Aは、原則、被用者Bがその事業の執行について第三者Dに加えた損害を賠償する責任を負います(民法715条1項)。
そして、使用者が賠償した場合、被用者に対して、求償することができます(同条3項)。この場合、被用者Bの故意または重過失は関係ありません

よって、「Bに故意または重大な過失があったときに限ってBに対して求償することができる。」は妥当ではありません。

2.AがDに対して損害を全額賠償した場合、Aは、損害の公平な分担という見地から均等の割合に限ってCに対して求償することができる。
2・・・妥当でない
BとCの共同不法行為によって、Dに損害を与えた場合、BとCは連帯して債務を負います。
そして、使用者AがDに対して損害を全額賠償した場合、被用者Bと第三者Cとの過失の割合にしたがって求償することができます(最判昭41.11.18)。
よって、「Aは、損害の公平な分担という見地から均等の割合に限ってCに対して求償することができる」は妥当ではありません。
3.CがDに対して損害を全額賠償した場合、Cは、Bに対してはB・C間の過失の割合によるBの負担部分について求償することができるが、共同不法行為者でないAに対しては求償することができない。
3・・・妥当でない
BとCの共同不法行為によって、Dに損害を与えた場合、BとCは連帯して債務を負います。
そして、第三者CがDに対して損害を全額賠償した場合、被用者Bと第三者Cとの過失の割合にしたがって求償することができます(最判昭41.11.18)。
つまり、「Cは、Bに対してはB・C間の過失の割合によるBの負担部分について求償することができる」は正しいです。さらに、第三者Cは、被用者Bの負担部分について使用者Aに対し求償することができます(最判昭63.7.1)。

したがって、「Cは、共同不法行為者でないAに対しては求償することができない」が妥当ではありません。

4.Cにも使用者Eがおり、その事業の執行中に起きた衝突事故であった場合に、AがDに対して損害を全額賠償したときは、Aは、AとEがそれぞれ指揮監督するBとCの過失の割合によるCの負担部分についてEに対して求償することができる。
4・・・妥当
BとCの共同不法行為によって、Dに損害を与えた場合、BとCは連帯して債務を負います。
そして、加害者Bと加害者Cそれぞれに使用者がいた場合、一方の加害者の使用者Aは、当該加害者の過失割合に従って定められる自己の負担部分を超えて損害を賠償したときは、その超える部分につき、他方の加害者の使用者Eに対し、当該加害者の過失割合に従って定められる負担部分の限度として、求償することができます(最判平3.10.25)。よって、本肢は妥当です。
5.BがAのほかFの指揮監督にも服しており、BがAとFの事業の執行中に起きた衝突事故であった場合に、AがDに対して損害を全額賠償したときは、Aは、損害の公平な分担という見地から均等の割合に限ってFに対して求償することができる。
5・・・妥当でない
被用者Bの使用者が、AとFの二者いた場合、AとFの負担部分は責任の程度に応じて負担します。
つまり、AがDに対して全額賠償した場合、AはFに対して、Fの責任割合(負担部分)を限度に求償することができます(最判平3.10.25)。本肢は「損害の公平な分担という見地から均等の割合に限って」が妥当ではありません。

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平成30年度(2018年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 法令用語 問32 民法:債権
問3 判決文の理解 問33 民法:債権
問4 学問の自由 問34 民法:親族
問5 生存権 問35 民法:親族
問6 参政権 問36 商法
問7 天皇・内閣 問37 会社法
問8 行政代執行法 問38 会社法
問9 公法と私法 問39 会社法
問10 無効と取消し 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・社会
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・その他
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・その他
問24 地方自治法 問54 基礎知識・社会
問25 行政法の判例 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法の判例 問56 基礎知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成30年・2018|問31|民法:弁済

弁済に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. 債務者が元本のほか利息および費用を支払うべき場合において、弁済として給付した金銭の額がその債務の全部を消滅させるのに足りないときは、債務者による充当の指定がない限り、これを順次に費用、利息および元本に充当しなければならない。
  2. 同一の債権者に対して数個の金銭債務を負担する債務者が、弁済として給付した金銭の額が全ての債務を消滅させるのに足りない場合であって、債務者が充当の指定をしないときは、債権者が弁済を受領する時に充当の指定をすることができるが、債務者がその充当に対して直ちに異議を述べたときは、この限りでない。
  3. 金銭債務を負担した債務者が、債権者の承諾を得て金銭の支払に代えて不動産を給付する場合において、代物弁済が成立するためには、債権者に所有権を移転させる旨の意思表示をするだけでは足りず、所有権移転登記がされなければならない。
  4. 債権者があらかじめ弁済の受領を拒んでいる場合、債務者は、口頭の提供をすれば債務不履行責任を免れるが、債権者において契約そのものの存在を否定する等弁済を受領しない意思が明確と認められるときは、口頭の提供をしなくても同責任を免れる。
  5. 債権者があらかじめ金銭債務の弁済の受領を拒んでいる場合、債務者は、口頭の提供をした上で弁済の目的物を供託することにより、債務を消滅させることができる。

>解答と解説はこちら


【答え】:1

【解説】

1.債務者が元本のほか利息および費用を支払うべき場合において、弁済として給付した金銭の額がその債務の全部を消滅させるのに足りないときは、債務者による充当の指定がない限り、これを順次に費用、利息および元本に充当しなければならない。
1・・・妥当ではない
債務者が一個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべき場合において、弁済をする者がその債務の全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは、これを順次に「費用」、「利息」及び「元本」に充当しなければなりません(民法489条1項)。つまり、一部を弁済した場合、「費用」→「利息」→「元本」の順に充てられます。本肢は「債務者による充当の指定がない限り」が誤りです。

債務者や債権者が一方的に充当の順番を決めることはできません

当事者間で合意があれば、その合意した順序で充当します。

2.同一の債権者に対して数個の金銭債務を負担する債務者が、弁済として給付した金銭の額が全ての債務を消滅させるのに足りない場合であって、債務者が充当の指定をしないときは、債権者が弁済を受領する時に充当の指定をすることができるが、債務者がその充当に対して直ちに異議を述べたときは、この限りでない。
2・・・妥当
債務者が同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担する場合において、弁済として提供した給付がすべての債務を消滅させるのに足りないときは、弁済をする者は、給付の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができます(民法488条1項)。一方、弁済をする者が上記のような指定をしないときは、弁済を受領する者(債権者)は、その受領の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができます。ただし、弁済をする者がその充当に対して直ちに異議を述べたときは、債権者の指定は無効となります(同条2項)。つまり、本肢は妥当です!

これはきちんと理解していただきたいので、個別指導では具体例を入れながら解説します!

3.金銭債務を負担した債務者が、債権者の承諾を得て金銭の支払に代えて不動産を給付する場合において、代物弁済が成立するためには、債権者に所有権を移転させる旨の意思表示をするだけでは足りず、所有権移転登記がされなければならない。
3・・・妥当
判例によると、
金銭債務の債務者が、債権者の承諾を得て、お金の代わりに不動産で支払う場合、「登記その他引渡し行為を完了し、第三者に対する対抗要件を具備したとき」に代物弁済による債務が消滅するとしています(最判昭40.4.30)。よって、本肢は妥当です。
4.債権者があらかじめ弁済の受領を拒んでいる場合、債務者は、口頭の提供をすれば債務不履行責任を免れるが、債権者において契約そのものの存在を否定する等弁済を受領しない意思が明確と認められるときは、口頭の提供をしなくても同責任を免れる。
4・・・妥当
弁済の提供は、原則、債務の本旨に従って現実に提供しなければなりません(現実の提供)。ただし、債権者があらかじめその受領を拒んでいるときは、弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足ります(口頭の提供)(民法493条)。さらに、債権者において契約そのものの存在を否定する等弁済を受領しない意思が明確と認められるとき
判例では、
債務者は口頭の提供をしなくとも債務不履行の責めを免れる」としています(最大判昭32.6.5)。

つまり、本肢は妥当です。

5.債権者があらかじめ金銭債務の弁済の受領を拒んでいる場合、債務者は、口頭の提供をした上で弁済の目的物を供託することにより、債務を消滅させることができる。
5・・・妥当
弁済者は、「弁済の提供をした上」で、債権者がその受領を拒んだとき、債権者のために弁済の目的物を供託することができます(民法494条)。上記の通り「弁済の提供が必要」なので、
債権者があらかじめ金銭債務の弁済の受領を拒んでいる場合、債務者は、口頭の提供をした上で弁済の目的物を供託することにより、債務を消滅させることができます。よって、妥当です。

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平成30年度(2018年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 法令用語 問32 民法:債権
問3 判決文の理解 問33 民法:債権
問4 学問の自由 問34 民法:親族
問5 生存権 問35 民法:親族
問6 参政権 問36 商法
問7 天皇・内閣 問37 会社法
問8 行政代執行法 問38 会社法
問9 公法と私法 問39 会社法
問10 無効と取消し 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・社会
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・その他
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・その他
問24 地方自治法 問54 基礎知識・社会
問25 行政法の判例 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法の判例 問56 基礎知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成30年・2018|問28|民法:停止条件

A・B間で締結された契約(以下「本件契約」という。)に附款がある場合に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア.本件契約に、経済情勢に一定の変動があったときには当該契約は効力を失う旨の条項が定められている場合、効力の喪失時期は当該変動の発生時が原則であるが、A・Bの合意により、効力の喪失時期を契約時に遡らせることも可能である。

イ.本件契約が売買契約であり、買主Bが品質良好と認めた場合には代金を支払うとする旨の条項が定められている場合、この条項はその条件の成就が代金債務者であるBの意思のみに係る随意条件であるから無効である。

ウ.本件契約が和解契約であり、Bは一定の行為をしないこと、もしBが当該禁止行為をした場合にはAに対して違約金を支払う旨の条項が定められている場合、Aが、第三者Cを介してBの当該禁止行為を誘発したときであっても、BはAに対して違約金支払の義務を負う。

エ.本件契約が農地の売買契約であり、所有権移転に必要な行政の許可を得られたときに効力を生じる旨の条項が定められている場合において、売主Aが当該許可を得ることを故意に妨げたときであっても、条件が成就したとみなされることはない。

オ.本件契約が金銭消費貸借契約であり、借主Bが将来社会的に成功を収めた場合に返済する旨の条項(いわゆる出世払い約款)が定められている場合、この条項は停止条件を定めたものであるから、Bは社会的な成功を収めない限り返済義務を負うものではない。

  1. ア・イ
  2. ア・エ
  3. イ・ウ
  4. ウ・オ
  5. エ・オ

>解答と解説はこちら


【答え】:2(アとエが妥当

【解説】

ア.本件契約に、経済情勢に一定の変動があったときには当該契約は効力を失う旨の条項が定められている場合、効力の喪失時期は当該変動の発生時が原則であるが、A・Bの合意により、効力の喪失時期を契約時に遡らせることも可能である。

ア・・・妥当

  1. 停止条件付法律行為は、停止条件が成就した時からその効力が生じます。
  2. 解除条件付法律行為は、解除条件が成就した時からその効力を失います。

そして、上記2つについて、当事者が条件が成就した場合の効果をその成就した時以前にさかのぼらせる意思を表示したときは、その意思に従います民法127条)。

つまり、「A・Bの合意により、効力の喪失時期を契約時に遡らせることも可能」なので、本肢は正しいです。

イ.本件契約が売買契約であり、買主Bが品質良好と認めた場合には代金を支払うとする旨の条項が定められている場合、この条項はその条件の成就が代金債務者であるBの意思のみに係る随意条件であるから無効である。
イ・・・妥当ではない
停止条件付法律行為は、その条件が単に債務者の意思のみに係るときは、無効です(民法134条:随意契約という)。随意契約とは、例えば、「気が向いたら100万円プレゼントするよ」といった契約で、
このような法律行為(契約)は、拘束力がないので無効です。本肢の「買主Bが品質良好と認めた場合には代金を支払うとする旨の条項」について、上記随意契約にあたるかというと判例では、随意契約とはいえず、契約は有効としています(最判昭31.4.6)。よって、本肢は妥当ではありません。個別指導では、判例の内容を踏まえて解説をしています!
ウ.本件契約が和解契約であり、Bは一定の行為をしないこと、もしBが当該禁止行為をした場合にはAに対して違約金を支払う旨の条項が定められている場合、Aが、第三者Cを介してBの当該禁止行為を誘発したときであっても、BはAに対して違約金支払の義務を負う。
ウ・・・妥当ではない
条件が成就することによって利益を受ける当事者が不正にその条件を成就させたときは、相手方は、その条件が成就しなかったものとみなすことができます(民法130条)。本肢を見ると、AB間で何らかの和解契約を締結しており、「Bは一定行為をしないこと(条件)」「Bが一定の禁止行為を行った場合、違約金が発生する(効果)」旨の条項があります。そして、Aが第三者Cを使って、「Bの禁止行為を誘発させた」。つまり、Aが不正に条件成就させています。そのため、上記条件は成就しなかったとみなして
Bは違約金を支払う必要はありません。よって、本肢は妥当ではありません。
エ.本件契約が農地の売買契約であり、所有権移転に必要な行政の許可を得られたときに効力を生じる旨の条項が定められている場合において、売主Aが当該許可を得ることを故意に妨げたときであっても、条件が成就したとみなされることはない。
エ・・・妥当
農地の売買契約について、農地の売主が、故意に、知事の許可を取るのを妨害した場合について
判例によると、「当事者が知事の許可を得ることを条件とする農地の売買契約は法律上当然必要なことを約定したにとどまり、停止条件を付したものということはできない。そのため、農地売買において、農地の売主が故意に知事の許可を得ることを妨げたとしても、条件が成就したとみなすことはできない」としています(最判昭36.5.26)。よって、本肢は妥当です。この点については、上記以外に理解すべき部分があるので、個別指導で解説します!
オ.本件契約が金銭消費貸借契約であり、借主Bが将来社会的に成功を収めた場合に返済する旨の条項(いわゆる出世払い約款)が定められている場合、この条項は停止条件を定めたものであるから、Bは社会的な成功を収めない限り返済義務を負うものではない。

オ・・・妥当ではない

「条件」と「期限」の2つの似たような用語があります。

「条件」とは、将来、発生するかが不確実なものに関する内容を言います。
例えば「行政書士試験に合格したら100万円をあげる。」という場合
行政書士試験に合格するかどうか不確実です。そのため「条件」です。

「期限」とは、将来、発生することが確実なものに関する内容です。
例えば、「あなたの父が死亡したら、100万をあげる。」という場合です。
人は必ず死亡するので、確実な内容です。そのため「期限」です。

では、本肢の「出世払い」は「条件」なのか「期限」なのか?

判例によると
「出世払い」は、「期限(不確定期限)」としています(大判大4.3.24)。

そのため、停止条件付ではないので妥当ではないです。

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平成30年度(2018年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 法令用語 問32 民法:債権
問3 判決文の理解 問33 民法:債権
問4 学問の自由 問34 民法:親族
問5 生存権 問35 民法:親族
問6 参政権 問36 商法
問7 天皇・内閣 問37 会社法
問8 行政代執行法 問38 会社法
問9 公法と私法 問39 会社法
問10 無効と取消し 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・社会
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・その他
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・その他
問24 地方自治法 問54 基礎知識・社会
問25 行政法の判例 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法の判例 問56 基礎知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

令和元年・2019|問31|民法

質権に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. 動産質権者は、継続して質物を占有しなければ、その質権をもって第三者に対抗することができず、また、質物の占有を第三者によって奪われたときは、占有回収の訴えによってのみ、その質物を回復することができる。
  2. 不動産質権は、目的不動産を債権者に引き渡すことによってその効力を生ずるが、不動産質権者は、質権設定登記をしなければ、その質権をもって第三者に対抗することができない。
  3. 債務者が他人の所有に属する動産につき質権を設定した場合であっても、債権者は、その動産が債務者の所有物であることについて過失なく信じたときは、質権を即時取得することができる。
  4. 不動産質権者は、設定者の承諾を得ることを要件として、目的不動産の用法に従ってその使用収益をすることができる。
  5. 質権は、債権などの財産権の上にこれを設定することができる。

>解答と解説はこちら



【答え】:4
【解説】
1.動産質権者は、継続して質物を占有しなければ、その質権をもって第三者に対抗することができず、また、質物の占有を第三者によって奪われたときは、占有回収の訴えによってのみ、その質物を回復することができる。

1・・・正しい

動産質権者は、継続して質物を占有しなければ、その質権をもって第三者に対抗することができません(民法352条)。

そして、動産質権者は、質物の占有を奪われたときは、占有回収の訴えによってのみ、その質物を回復することができます(民法353条)。

よって、正しいです。

質権については、具体例を含めて、個別指導のテキストP81に記載されているので
そちらを参考にしてみてください!

2.不動産質権は、目的不動産を債権者に引き渡すことによってその効力を生ずるが、不動産質権者は、質権設定登記をしなければ、その質権をもって第三者に対抗することができない。

2・・・正しい

質権の設定は、債権者にその目的物を引き渡すことによって、その効力を生じます(民法344条)。

これは、不動産質権も動産質権も同じです。

そして、不動産質権(物権)は登記をしなければ、第三者に対抗することはできない(民法177条)ので、本肢は正しいです。

3.債務者が他人の所有に属する動産につき質権を設定した場合であっても、債権者は、その動産が債務者の所有物であることについて過失なく信じたときは、質権を即時取得することができる。

3・・・正しい

取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得します(民法192条)。

質権の設定は、上記の「取引行為」に含まれるので、質権も即時取得の対象です。

よって、本肢は「動産」について、「善意無過失で」質権を設定してもらっているので、即時取得できます。

よって、正しいです。

4.不動産質権者は、設定者の承諾を得ることを要件として、目的不動産の用法に従ってその使用収益をすることができる。

4・・・誤り

不動産質権者は、質権の目的である不動産の用法に従い、その使用及び収益をすることができます(民法356条)。

よって、設定者の承諾を得ることは要件ではありません。

よって、誤りです。

「対比ポイント」や「用語解説」は個別指導で行っています!

5.質権は、債権などの財産権の上にこれを設定することができる。

5・・・正しい

質権は、財産権をその目的とすることができます(民法362条)。

したがって、本肢は正しいです。

財産権とは、債権、株式、地上権等です。

そして、債権に質権を設定することを「債権質」と言います。

令和6年・2024年行政書士試験対策の個別指導はこちら

問1 著作権の関係上省略 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 憲法・議員 問33 民法:債権
問4 法の下の平等 問34 民法:債権
問5 選挙権・選挙制度 問35 民法:親族
問6 教科書検定制度 問36 商法
問7 憲法・その他 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・政治
問20 問題非掲載のため省略 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・経済
問22 地方自治法 問52 基礎知識・政治
問23 地方自治法 問53 基礎知識・経済
問24 地方自治法 問54 基礎知識・情報通信
問25 行政法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成26年・2014|問35|民法・親族

利益相反行為に関する以下の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア 親権者が、共同相続人である数人の子を代理して遺産分割協議をすることは、その結果、数人の子の間の利害の対立が現実化しない限り、利益相反行為にはあたらない。

イ 親権者である母が、その子の継父が銀行から借り入れを行うにあたり、子の所有の不動産に抵当権を設定する行為は、利益相反行為にあたる。

ウ 親権者が、自己の財産を、子に対して有償で譲渡する行為は当該財産の価額の大小にかかわらず利益相反行為にあたるから、その子の成年に達した後の追認の有無にかかわらず無効である。

エ 親権者が、自ら債務者となって銀行から借り入れを行うにあたって、子の所有名義である土地に抵当権を設定する行為は、当該行為がどのような目的で行なわれたかに関わりなく利益相反行為にあたる。

オ 親権者が、他人の金銭債務について、連帯保証人になるとともに、子を代理して、子を連帯保証人とする契約を締結し、また、親権者と子の共有名義の不動産に抵当権を設定する行為は、利益相反行為にあたる。

  1. ア・イ
  2. ア・エ
  3. イ・ウ
  4. ウ・エ
  5. エ・オ

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【答え】:5

【解説】

ア 親権者が、共同相続人である数人の子を代理して遺産分割協議をすることは、その結果、数人の子の間の利害の対立が現実化しない限り、利益相反行為にはあたらない。

ア・・・妥当ではない

判例によると、
利益相反行為とは、行為の客観的性質上数人の子ら相互間に利害の対立を生ずるおそれのあるものを指称し、その行為の結果現実にその子らの間に利害の対立を生ずるか否かは問わない」としています(最判昭49.7.22)。

したがって、親権者が、共同相続人である数人の子を代理して遺産分割協議をすることは、子ら相互間に利害の対立を生ずるおそれのあるので、利益相反行為にあたります。

よって、本肢は妥当ではありません。

本肢の具体例については個別指導で解説します!

イ 親権者である母が、その子の継父が銀行から借り入れを行うにあたり、子の所有の不動産に抵当権を設定する行為は、利益相反行為にあたる。

イ・・・妥当ではない

親権者である母が、その子の継父が銀行から借り入れを行うにあたり、子の所有の不動産に抵当権を設定した場合、母は利益を受けていません(最判昭35.7.15)。

よって、母と子との間で利益相反はないので、本肢は妥当ではありません。

本肢の具体例については個別指導で解説します!

ウ 親権者が、自己の財産を、子に対して有償で譲渡する行為は当該財産の価額の大小にかかわらず利益相反行為にあたるから、その子の成年に達した後の追認の有無にかかわらず無効である。

ウ・・・妥当ではない

判例によると、
親権者と子の利益相反行為につき親権者が法定代理人としてなした行為は無権代理行為にあたる」としています(最判昭46.4.20)。

親権者が、自己の財産を、子に対して有償で譲渡する行為は、当該財産の価額の大小にかかわらず利益相反行為にあたり、無権代理行為として扱います。

そして、無権代理の場合、子が成年に達してから追認拒絶をした場合に無効となるのであって、追認の有無にかかわらず無効とはなりません。

よって、妥当ではありません。

エ 親権者が、自ら債務者となって銀行から借り入れを行うにあたって、子の所有名義である土地に抵当権を設定する行為は、当該行為がどのような目的で行なわれたかに関わりなく利益相反行為にあたる。

エ・・・妥当

判例によると、
親権者が自己の負担する貸金債務につき未成年の子の所有する不動産に抵当権を設定する行為は、借受金を右未成年の子の養育費に供する意図であっても、利益相反行為にあたる」としています(最判昭37.10.2)。

よって、本肢は妥当です。

オ 親権者が、他人の金銭債務について、連帯保証人になるとともに、子を代理して、子を連帯保証人とする契約を締結し、また、親権者と子の共有名義の不動産に抵当権を設定する行為は、利益相反行為にあたる。

オ・・・妥当

判例によると、
第三者の金銭債務について、親権者がみずから連帯保証をするとともに、子の代理人として、同一債務について連帯保証をし、かつ、親権者と子が共有する不動産について抵当権を設定するなどの判示実関係のもとでは、子のためにされた連帯保証債務負担行為および抵当権設定行為は、利益相反行為にあたる」としています(最判昭43.10.8)。

よって、本肢は、妥当です。

本肢の具体例については個別指導で解説します!

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平成26年度(2014年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 幸福追求権など 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 投票価値の平等 問35 民法:親族
問6 内閣 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政調査 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 損失補償 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・経済
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・社会
問25 行政法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成26年・2014|問34|民法・不法行為

生命侵害等に対する近親者の損害賠償請求権に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 他人の不法行為により夫が即死した場合には、その妻は、相続によって夫の逸失利益について損害賠償請求権を行使することはできない。
  2. 他人の不法行為により夫が死亡した場合には、その妻は、相続によって夫本人の慰謝料請求権を行使できるので、妻には固有の慰謝料請求権は認められていない。
  3. 他人の不法行為により、夫が慰謝料請求権を行使する意思を表明しないまま死亡した場合には、その妻は、相続によって夫の慰謝料請求権を行使することはできない。
  4. 他人の不法行為により死亡した被害者の父母、配偶者、子以外の者であっても、被害者との間にそれらの親族と実質的に同視し得る身分関係が存在するため被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた場合には、その者は、加害者に対して直接固有の慰謝料請求をすることができる。
  5. 他人の不法行為により子が重い傷害を受けたために、当該子が死亡したときにも比肩しうべき精神上の苦痛をその両親が受けた場合でも、被害者本人は生存しており本人に慰謝料請求権が認められるので、両親には固有の慰謝料請求権は認められていない。

>解答と解説はこちら

【答え】:4

【解説】

1.他人の不法行為により夫が即死した場合には、その妻は、相続によって夫の逸失利益について損害賠償請求権を行使することはできない。

1・・・妥当ではない

判例によると、
被害者が即死した場合、受傷と同時に被害者である被相続人に損害賠償請求権が発生し、死亡の時にそれが相続人に相続される」としています(大判大15.2.16)。

よって、夫が即死した場合、妻は、相続によって夫の逸失利益について損害賠償請求権を行使することはできます。

よって、妥当ではありません。

逸失利益については、個別指導で解説します!

2.他人の不法行為により夫が死亡した場合には、その妻は、相続によって夫本人の慰謝料請求権を行使できるので、妻には固有の慰謝料請求権は認められていない。

2・・・妥当ではない

選択肢1の通り、妻は、夫の損害賠償請求権(慰謝料請求権)を相続して行使できます

また、他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければなりません(民法711条)。

つまり、妻には固有の(妻自身の)損害賠償請求(慰謝料請求権)を持つので、これについても行使できます。

よって、本肢は妥当ではありません。

3.他人の不法行為により、夫が慰謝料請求権を行使する意思を表明しないまま死亡した場合には、その妻は、相続によって夫の慰謝料請求権を行使することはできない。

3・・・妥当ではない

判例によると、
不法行為による慰藉料請求権は、被害者が生前に請求の意思を表明しなくても、相続の対象となる」としています(最大判昭42.11.1)。

つまり、他人の不法行為により、夫が慰謝料請求権を行使する意思を表明しないまま死亡した場合でも、その妻は、相続によって夫の慰謝料請求権を行使することはできます。

よって、本肢は妥当ではありません。

4.他人の不法行為により死亡した被害者の父母、配偶者、子以外の者であっても、被害者との間にそれらの親族と実質的に同視し得る身分関係が存在するため被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた場合には、その者は、加害者に対して直接固有の慰謝料請求をすることができる。

4・・・妥当

判例によると、
不法行為により死亡した被害者の夫の妹のように、被害者との間に、配偶者等と実質的に同視しうべき身分関係が存し、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた者は、同条の類推適用により、加害者に対し直接に固有の慰藉料を請求しうる」としています(最判昭49.12.17)。

つまり、本肢は妥当です。

5.他人の不法行為により子が重い傷害を受けたために、当該子が死亡したときにも比肩しうべき精神上の苦痛をその両親が受けた場合でも、被害者本人は生存しており本人に慰謝料請求権が認められるので、両親には固有の慰謝料請求権は認められていない。

5・・・妥当ではない

判例によると、
不法行為により身体を害された者の母は、そのために被害者が生命を害されたときにも比肩すべき(匹敵するような)精神上の苦痛を受けた場合、自己の権利として慰藉料を請求できる」としています(最判昭33.8.5)。

よって、本肢の場合、両親には固有の慰謝料請求権は認められるので、妥当ではありません。

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平成26年度(2014年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 幸福追求権など 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 投票価値の平等 問35 民法:親族
問6 内閣 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政調査 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 損失補償 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・経済
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・社会
問25 行政法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略