A銀行はBに3,000万円を融資し、その貸金債権を担保するために、B所有の山林(樹木の生育する山の土地。本件樹木については立木法による登記等の対抗要件を具備していない)に抵当権の設定を受け、その旨の登記を備えたところ、Bは通常の利用の範囲を超えて山林の伐採を行った。この場合に、以下のア~オの記述のうち、次の【考え方】に適合するものをすべて挙げた場合に、妥当なものの組合せはどれか。なお、対抗要件や即時取得については判例の見解に立つことを前提とする。
【考え方】:分離物が第三者に売却されても、抵当不動産と場所的一体性を保っている限り、抵当権の公示の衣に包まれているので、抵当権を第三者に対抗できるが、搬出されてしまうと、抵当権の効力自体は分離物に及ぶが、第三者に対する対抗力は喪失する。
ア.抵当山林上に伐採木材がある段階で木材がBから第三者に売却された場合には、A銀行は第三者への木材の引渡しよりも先に抵当権の登記を備えているので、第三者の搬出行為の禁止を求めることができる。
イ.抵当山林上に伐採木材がある段階で木材がBから第三者に売却され、占有改定による引渡しがなされたとしても、第三者のために即時取得は成立しない。
ウ.Bと取引関係にない第三者によって伐採木材が抵当山林から不当に別の場所に搬出された場合に、A銀行は第三者に対して元の場所へ戻すように請求できる。
エ.Bによって伐採木材が抵当山林から別の場所に搬出された後に、第三者がBから木材を買い引渡しを受けた場合において、当該木材が抵当山林から搬出されたものであることを第三者が知っているときは、当該第三者は木材の取得をA銀行に主張できない。
オ.第三者がA銀行に対する個人的な嫌がらせ目的で、Bをして抵当山林から伐採木材を別の場所に搬出させた後に、Bから木材を買い引渡しを受けた場合において、A銀行は、適切な維持管理をBに期待できないなどの特別の事情のない限り、第三者に対して自己への引渡しを求めることができない。
- ア・イ・ウ・エ
- ア・イ・ウ・オ
- ア・イ・エ
- ア・ウ・エ
- イ・ウ・オ
>解答と解説はこちら
【答え】:2
【解説】
本肢の【考え方】を整理すると
伐採木材が、「①抵当不動産上にある場合」と「抵当不動産から搬出された場合」の2つに分けて考えています。
- ①伐採木材が抵当不動産上にある場合 ⇒ 抵当権の効力は伐採材木にも及び、抵当権を第三者に対抗できる
- ②伐採木材が抵当不動産から搬出された場合 ⇒ 抵当権の効力は伐採材木にも及ぶが、抵当権を第三者に対抗できない
ア.抵当山林上に伐採木材がある段階で木材がBから第三者に売却された場合には、A銀行は第三者への木材の引渡しよりも先に抵当権の登記を備えているので、第三者の搬出行為の禁止を求めることができる。
ア・・・適合する
本肢は「抵当山林上に伐採木材がある段階」なので①です。
そのため、木材がBから第三者に売却された場合でも、銀行は、抵当権により第三者に対抗できます。
よって、第三者の搬出行為の禁止を求めることができます。
したがって、本問の考え方と適合します。
イ.抵当山林上に伐採木材がある段階で木材がBから第三者に売却され、占有改定による引渡しがなされたとしても、第三者のために即時取得は成立しない。
イ・・・適合する
本肢は
「抵当山林上に伐採木材がある段階」なので①です。
よって、抵当権は伐採木材にも及び、第三者に対抗できます。
そして、
占有改定による引渡しがなされたとしても、占有改定では、即時取得は成立しません(
最判昭35.2.11)。
したがって、本問の考え方と適合します。
ウ.Bと取引関係にない第三者によって伐採木材が抵当山林から不当に別の場所に搬出された場合に、A銀行は第三者に対して元の場所へ戻すように請求できる。
ウ・・・適合する
本肢は「伐採木材が抵当山林から不当に別の場所に搬出された場合」なので②です。
この場合、抵当権の効力は伐採材木にも及ぶが、抵当権を第三者に対抗できないです。
本肢の第三者は、「Bと取引関係にない第三者」は無権利者です。
よって、上記「抵当権を対抗できない第三者」には含みません。
言い換えると、A銀行は第三者(無権利者)に対して元の場所へ戻すように請求できます。
したがって、本問の考え方と適合します。
エ.Bによって伐採木材が抵当山林から別の場所に搬出された後に、第三者がBから木材を買い引渡しを受けた場合において、当該木材が抵当山林から搬出されたものであることを第三者が知っているときは、当該第三者は木材の取得をA銀行に主張できない。
エ・・・適合しない
本肢は「Bによって伐採木材が抵当山林から別の場所に搬出された後」なので②です。
そして、「第三者がBから木材を買い引渡しを受けた場合」なので、A銀行は、当該第三者に対して抵当権を対抗できません。
言い換えると、当該第三者は木材の取得をA銀行に主張できます。
したがって、本問の考え方と適合しません。
オ.第三者がA銀行に対する個人的な嫌がらせ目的で、Bをして抵当山林から伐採木材を別の場所に搬出させた後に、Bから木材を買い引渡しを受けた場合において、A銀行は、適切な維持管理をBに期待できないなどの特別の事情のない限り、第三者に対して自己への引渡しを求めることができない。
オ・・・適合する
本肢は「第三者がA銀行に対する個人的な嫌がらせ目的で、Bをして抵当山林から伐採木材を別の場所に搬出させた後に、Bから木材を買い引渡しを受けた場合」となっているので、当該第三者は「背信的悪意者」です。
したがって、A銀行は、第三者に対抗できます。
そして、判例によると、
「抵当不動産の占有者に対する抵当権に基づく妨害排除請求権の行使に当たり,抵当不動産の所有者において抵当権に対する侵害が生じないように
抵当不動産を適切に維持管理することが期待できない場合には,抵当権者は,当該占有者に対し,直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることができる」としています(
最判平17.3.10)。
つまり、A銀行は、適切な維持管理をBに期待できないなどの特別の事情のない限り、第三者に対して自己への引渡しを求めることができないので、本問の考え方と適合します。
平成22年度(2010年度)|行政書士試験の問題と解説
A・B・Cの3人が、甲土地、乙土地、丙土地のすべてについて、どれも3分の1ずつの持分権をもって共有している場合の共有物分割に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定及び判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。
ア.各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができるから、たとえA・B・Cの間で5年間の共有物分割禁止の契約があった場合でも同契約は無効であり、Aは、BおよびCに対して甲土地、乙土地および丙土地の分割を請求することができる。
イ.Aが、BおよびCに対して、甲土地、乙土地および丙土地の分割を請求した場合において、裁判所は、これらを一括して分割の対象としてAが甲土地、Bが乙土地、Cが丙土地というように各土地を単独所有とする分割方法をとることができる。
ウ.Aが、BおよびCに対して、甲土地、乙土地および丙土地の分割を請求した場合において、裁判所は、乙土地および丙土地については共有関係を解消せず、Aに対してのみAの持分権に相当する甲土地を取得させ、乙土地および丙土地はBとCの共有として残すとする分割方法をとることができる。
エ.Aが、BおよびCに対して、甲土地、乙土地および丙土地の分割を請求した場合において、裁判所は、Aの申立てがあれば、甲土地、乙土地および丙土地をAの単独所有とし、BおよびCに対してAから各自の持分権の価格を賠償させる方法をとらなければならない。
オ.甲土地、乙土地および丙土地についてのBおよびCの共有持分権がDに譲渡された場合には、その旨の移転登記がないときでも、Aは、BおよびCに対しては甲土地、乙土地および丙土地の分割を請求することはできない。
- ア・イ
- ア・オ
- イ・ウ
- ウ・エ
- エ・オ
>解答と解説はこちら
【答え】:3
【解説】
ア.各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができるから、たとえA・B・Cの間で5年間の共有物分割禁止の契約があった場合でも同契約は無効であり、Aは、BおよびCに対して甲土地、乙土地および丙土地の分割を請求することができる。
ア・・・誤り
各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができます。
ただし、5年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることは可能です(民法256条1項)。
よって、「5年間の共有物分割禁止の契約があった場合でも同契約は無効」は妥当ではありません。
当該契約も有効です。
イ.Aが、BおよびCに対して、甲土地、乙土地および丙土地の分割を請求した場合において、裁判所は、これらを一括して分割の対象としてAが甲土地、Bが乙土地、Cが丙土地というように各土地を単独所有とする分割方法をとることができる。
イ・・・正しい
共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができます(民法258条1項)
そして、判例によると、
「数か所に分かれて存在する多数の共有不動産について、民法258条により現物分割をする場合には、これらを一括して分割の対象とし、分割後のそれぞれの不動産を各共有者の単独所有とすることも許される」としています(最大判昭62.4.22)。
よって、本肢内容は妥当です!
本肢がどういった内容なのかは、個別指導で解説します!
ウ.Aが、BおよびCに対して、甲土地、乙土地および丙土地の分割を請求した場合において、裁判所は、乙土地および丙土地については共有関係を解消せず、Aに対してのみAの持分権に相当する甲土地を取得させ、乙土地および丙土地はBとCの共有として残すとする分割方法をとることができる。
ウ・・・正しい
共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができます(民法258条1項)
そして、判例によると、
「多数の者が共有する物を民法258条により現物分割する場合には、分割請求者の持分の限度で現物を分割し、その余は他の者の共有として残す方法によることも許される」としています(最大判昭62.4.22)。
よって、本肢内容は妥当です!
本肢がどういった内容なのかは、個別指導で解説します!
エ.Aが、BおよびCに対して、甲土地、乙土地および丙土地の分割を請求した場合において、裁判所は、Aの申立てがあれば、甲土地、乙土地および丙土地をAの単独所有とし、BおよびCに対してAから各自の持分権の価格を賠償させる方法をとらなければならない。
エ・・・誤り
判例によると、
「当該共有物の性質及び形状、共有関係の発生原因、共有者の数及び持分の割合、共有物の利用状況及び分割された場合の経済的価値、分割方法についての共有者の希望及びその合理性の有無等の事情を総合的に考慮し、
当該共有物を共有者のうちの特定の者に取得させるのが相当であると認められ、
かつ、
その価格が適正に評価され、当該共有物を取得する者に支払能力があって、他の共有者にはその持分の価格を取得させることとしても共有者間の実質的公平を害しないと認められる特段の事情が存するときは、
共有物を共有者のうちの一人の単独所有又は数人の共有とし、
これらの者から他の共有者に対して持分の価格を賠償させる方法、
すなわち全面的価格賠償の方法による分割をすることも許される」
としています(最判平8.10.31)。
本肢は、「方法をとらなければならない」となっているので誤りです。
正しくは「方法をとることができる」です。
必ずしも全面的価格賠償による必要はありません。
全面的価格賠償については、個別指導で解説します!
オ.甲土地、乙土地および丙土地についてのBおよびCの共有持分権がDに譲渡された場合には、その旨の移転登記がないときでも、Aは、BおよびCに対しては甲土地、乙土地および丙土地の分割を請求することはできない。
オ・・・誤り
判例によると、
「不動産の共有物分割訴訟においては、共有者間に持分の譲渡があっても、その登記が存しないため、譲受人が持分の取得をもって他の共有者に対抗することができないときは、共有者全員に対する関係において、右持分がなお譲渡人に帰属するものとして共有物分割を命ずべきである」としています(最判昭46.6.18)。
つまり、Aは、BおよびCに対して、甲土地、乙土地および丙土地の分割を請求することができるので誤りです。
平成22年度(2010年度)|行政書士試験の問題と解説
時効更新の効力に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、誤っているものはどれか。
- 債務者Aの債権者Bに対する債務の承認によって被担保債権の時効が更新した場合に、物上保証人Cは、当該被担保債権について生じた消滅時効更新の効力を否定することはできない。
- 物上保証人Aに対する抵当権の実行により、競売裁判所が競売開始決定をし、これを債務者Bに通知した場合には、被担保債権についての消滅時効は更新する。
- 要役地である甲地をA・B・Cの3人が共有しているが、承役地である乙地の通行地役権について消滅時効が進行している場合に、Aのみが通行地役権を行使して消滅時効を更新したときは、時効更新の効力はA・B・Cの3人に及ぶ。
- 甲地の共有者A・B・Cの3人が乙地の上に通行地役権を時効取得しそうな場合に、乙地の所有者Dは、A・B・Cのうち誰か1人に対して時効の更新をすれば、時効更新の効力はA・B・Cの3人に及ぶ。
- A所有の甲土地をB・Cの2人が占有して取得時効が完成しそうな場合に、AがBに対してだけ時効の更新をしたときは、Bの取得時効のみ更新され、Cの取得時効は更新されることはない。
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【答え】:4
【解説】
1.債務者Aの債権者Bに対する債務の承認によって被担保債権の時効が更新した場合に、物上保証人Cは、当該被担保債権について生じた消滅時効更新の効力を否定することはできない。
1・・・正しい
判例によると、
「
物上保証人は、債務者の承認により被担保債権について生じた消滅時効更新の効力を否定することができない」としています(
最判平7.3.10)。
つまり、本肢は正しいです。
2.物上保証人Aに対する抵当権の実行により、競売裁判所が競売開始決定をし、これを債務者Bに通知した場合には、被担保債権についての消滅時効は更新する。
2・・・正しい
時効の完成猶予や時効更新の手続は、
時効の利益を受ける者に対してしないときは、その者に
通知をした後でなければ、時効の完成猶予又は更新の効力を生じません(
民法154条)。
よって、本肢は、債務者Bに通知ているので、被担保債権についての消滅時効は更新します。
なので、正しいです。
どういうことを言っているのかは
個別指導で解説します!
3.要役地である甲地をA・B・Cの3人が共有しているが、承役地である乙地の通行地役権について消滅時効が進行している場合に、Aのみが通行地役権を行使して消滅時効を更新したときは、時効更新の効力はA・B・Cの3人に及ぶ。
3・・・正しい
要役地が数人の共有に属する場合において、
その一人のために時効の完成猶予又は更新があるときは、その完成猶予又は更新は、
他の共有者のためにも、その効力を生じます(
民法292条)。
つまり、Aのみが通行地役権を行使して消滅時効を更新したときは、時効更新の効力はA・B・Cの3人に及ぶので、正しいです。
考え方については、
個別指導で解説します!
4.甲地の共有者A・B・Cの3人が乙地の上に通行地役権を時効取得しそうな場合に、乙地の所有者Dは、A・B・Cのうち誰か1人に対して時効の更新をすれば、時効更新の効力はA・B・Cの3人に及ぶ。
4・・・誤り
共有者に対する時効の更新は、地役権を行使する各共有者に対してしなければ、その効力を生じません(
民法284条2項)。
つまり、A・B・C全員に対して時効更新しないと、地役権は時効取得されてしまいます。
よって、本肢は誤りです。
本肢は考え方が変わるとスンナリ解けます!
そのため、考え方については、
個別指導で解説します!
5.A所有の甲土地をB・Cの2人が占有して取得時効が完成しそうな場合に、AがBに対してだけ時効の更新をしたときは、Bの取得時効のみ更新され、Cの取得時効は更新されることはない。
5・・・正しい
時効の完成猶予又は更新は、完成猶予又は更新の事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ、その効力を有します(
民法153条1項)。
つまり、
時効更新は相対効ということです。
AがBに対してだけ時効の更新をしたときは、Bの取得時効のみ更新され、Cの取得時効は更新されることはありません。
正しい記述です!
別途考えるべきポイントは、
個別指導で解説します!
平成22年度(2010年度)|行政書士試験の問題と解説
AがBに対してA所有の動産を譲渡する旨の意思表示をした場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
- Aが、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある場合、Aは当然に成年被後見人であるから、制限行為能力者であることを理由として当該意思表示に基づく譲渡契約を取り消すことができる。
- Aが、被保佐人であり、当該意思表示に基づく譲渡契約の締結につき保佐人の同意を得ていない場合、Aおよび保佐人は常に譲渡契約を取り消すことができる。
- この動産が骨董品であり、Aが、鑑定人の故意に行った虚偽の鑑定結果に騙された結果、Bに対して時価よりも相当程度安価で当該動産を譲渡するという意思表示をした場合、Bがこの事情を知っているか否かにかかわらず、Aは当該意思表示を取り消すことができない。
- Aが、高額な動産を妻に内緒で購入したことをとがめられたため、その場を取り繕うために、その場にたまたま居合わせたBを引き合いに出し、世話になっているBに贈与するつもりで購入したものだと言って、贈与するつもりがないのに「差し上げます」と引き渡した場合、当該意思表示は原則として有効である。
- Aが、差押えを免れるためにBと謀って動産をBに譲渡したことにしていたところ、Bが事情を知らないCに売却した場合、Cに過失があるときには、Aは、Cに対してA・B間の譲渡契約の無効を主張できる。
>解答と解説はこちら
【答え】:4
【解説】
AがBに対してA所有の動産を譲渡する旨の意思表示をした。
1.Aが、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある場合、Aは当然に成年被後見人であるから、制限行為能力者であることを理由として当該意思表示に基づく譲渡契約を取り消すことができる。
1・・・誤り
成年被後見人は、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」で、家庭裁判所が、「後見開始の審判」をした者をいいます(民法7条)。
精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にあるからといって、当然に成年被後見人とはならないので、妥当ではありません。
AがBに対してA所有の動産を譲渡する旨の意思表示をした。
2.Aが、被保佐人であり、当該意思表示に基づく譲渡契約の締結につき保佐人の同意を得ていない場合、Aおよび保佐人は常に譲渡契約を取り消すことができる。
2・・・誤り
被保佐人が一定の重要な財産上の行為を行う場合、保佐人の同意を得なければなりません(民法13条1項)。
上記、同意がない場合、被保佐人や保佐人は譲渡契約の取り消しができます。
本肢の「動産の譲渡」については、「一定の重要な財産上の行為」に当たる場合と当たらない場合があります。
そのため、「常に譲渡契約を取り消すことができる」とは限らないので、本肢は妥当ではありません。
詳細解説は、個別指導で解説します!
AがBに対してA所有の動産を譲渡する旨の意思表示をした。
3.この動産が骨董品であり、Aが、鑑定人の故意に行った虚偽の鑑定結果に騙された結果、Bに対して時価よりも相当程度安価で当該動産を譲渡するという意思表示をした場合、Bがこの事情を知っているか否かにかかわらず、Aは当該意思表示を取り消すことができない。
3・・・誤り
相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができます(民法96条2項)。
本肢に当てはめると、
相手方Bが、鑑定人(第三者)の虚偽の鑑定について、知っている(善意)か、知ることができた(有過失)場合、本人Aは取り消せます。
よって、「事情を知っているか否かにかかわらず、Aは当該意思表示を取り消すことができない」は妥当ではありません。
AがBに対してA所有の動産を譲渡する旨の意思表示をした。
4.Aが、高額な動産を妻に内緒で購入したことをとがめられたため、その場を取り繕うために、その場にたまたま居合わせたBを引き合いに出し、世話になっているBに贈与するつもりで購入したものだと言って、贈与するつもりがないのに「差し上げます」と引き渡した場合、当該意思表示は原則として有効である。
4・・・正しい
意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、有効です(民法93条1項:心裡留保)。
よって、
贈与するつもりがないのに「差し上げます」と引き渡した場合、当該意思表示は原則として有効です。
本肢は妥当です。
AがBに対してA所有の動産を譲渡する旨の意思表示をした。
5.Aが、差押えを免れるためにBと謀って動産をBに譲渡したことにしていたところ、Bが事情を知らないCに売却した場合、Cに過失があるときには、Aは、Cに対してA・B間の譲渡契約の無効を主張できる。
5・・・誤り
虚偽表示の無効は、善意の第三者に対抗することができません(民法94条2項)。
そして、第三者は、善意であれば足り、無過失であることを要しません(大判昭12.8.10)。
したがって、Cに過失があっても、Aは、善意のCに対して無効主張することはできません。
よって、妥当ではありません。
平成22年度(2010年度)|行政書士試験の問題と解説
Aの抵当権(登記済み)が存する甲土地をその所有者Bから買い受け、甲土地の所有権移転登記を済ませたCは、同抵当権を消滅させたいと思っている。抵当権が消滅する場合としては、被担保債権または抵当権の消滅時効のほかに、Cが、Bの債権者である抵当権者Aに対し被担保債権額の全部をBのために弁済することが考えられるが、そのほかに、抵当権が消滅する場合を二つ、40字程度で記述しなさい。
>解答と解説はこちら
【答え】:CがAに対して抵当権消滅請求をした場合及びCがAの請求に応じて甲土地の代価を弁済した場合。(45字)
【解説】
問題文の状況は
- 所有者Bの甲土地(抵当権の設定あり:抵当権者A)
- Cは上記甲土地を購入し、移転登記済
上記状況で、Cは同抵当権を消滅させたいと思っています。
抵当権が消滅する場合としては、下記2つがあると書かれています。
- 被担保債権または抵当権の消滅時効
- Cが、Bの債権者である抵当権者Aに対し被担保債権額の全部をBのために弁済する
上記2つ以外に抵当権が消滅する場合を2つ考えよ、という質問です。
抵当権を消滅させる方法として考えられるのは
①抵当権消滅請求と②代価弁済です。
これを、40字でまとめます。
CがAに対して抵当権消滅請求をした場合及びCがAの請求に応じて甲土地の代価を弁済した場合。(45字)
「抵当権消滅請求」と「代価弁済」の違いについては、個別指導で解説します!
平成23年度(2011年度)|行政書士試験の問題と解説
Aの隣人であるBは、Aの不在の間に台風によってA所有の甲建物(以下、「甲」という。)の屋根が損傷したため修繕を行った。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
- Bは、Aからあらかじめ甲の管理を頼まれていなかったにもかかわらず、Aのために修繕を行ったが、強風に煽られて屋根から落下してしまい、受傷した。この場合に、Bは、Aに対して損害賠償を請求することができない。
- Bは、Aから不在中における甲の管理を頼まれていたために修繕を行ったが、屋根から下りる際にBの不注意により足を滑らせて転倒し受傷した。この場合に、Bは、Aに対して損害賠償を請求することができる。
- Bは、Aからあらかじめ甲の管理を頼まれていなかったにもかかわらず、Aのために修繕を行ったが、それがAにとって有益であるときは、Bは、Aに対して報酬を請求することができる。
- Bは、Aからあらかじめ甲の管理を頼まれていなかったにもかかわらず、工務店を営むCに修繕を請け負わせた。このようなBの行為は、Aのための事務管理にあたるから、これによりCは、Aに対して工事代金の支払いを直接に請求することができる。
- Bは、Aからあらかじめ甲の管理を頼まれていなかったにもかかわらず、工務店を営むCに修繕を請け負わせたが、実はAがCによる修繕を望んでいないことが後になって判明した。このような場合、甲にとって必要不可欠な修繕であっても、Bは、Aに対してその費用の支払いを請求することができない。
>解答と解説はこちら
【答え】:1
【解説】
Aの隣人であるBは、Aの不在の間に台風によってA所有の甲建物(甲)の屋根が損傷したため修繕を行った。
1.Bは、Aからあらかじめ甲の管理を頼まれていなかったにもかかわらず、Aのために修繕を行ったが、強風に煽られて屋根から落下してしまい、受傷した。この場合に、Bは、Aに対して損害賠償を請求することができない。
1・・・妥当
義務なく他人のために事務の管理を始めた者(管理者)は、その事務の性質に従い、最も本人の利益に適合する方法によって、その事務の管理(事務管理)をしなければなりません(
民法697条)。
そして、本肢は「Aからあらかじめ甲の管理を頼まれていなかったにもかかわらず、Aのために修繕を行った」とあるので、Bが行った行為については、「事務管理」に当たります。
そして、
事務管理の場合、「損害賠償請求できる旨の規定はない」ので、本肢は妥当です。
本肢は、事務管理から対比ポイントなど学ぶ点が多いので、その点を
個別指導で解説します!
Aの隣人であるBは、Aの不在の間に台風によってA所有の甲建物(甲)の屋根が損傷したため修繕を行った。
2.Bは、Aから不在中における甲の管理を頼まれていたために修繕を行ったが、屋根から下りる際にBの不注意により足を滑らせて転倒し受傷した。この場合に、Bは、Aに対して損害賠償を請求することができる。
2・・・妥当ではない
本肢は、「Aから不在中における甲の管理を頼まれていた」ので「準委任契約」に当たります。
「準委任契約」では、「委任契約」の規定が準用されます(
民法656条)。
そして、
委任契約では、
受任者は、委任事務を処理するため自己に
過失なく損害を受けたときは、委任者に対し、その
賠償を請求することができます(
民法650条3項)。
この規定が準委任契約にも準用されるので、
本肢の場合、Bの過失により受傷しているため、その損害賠償を請求することはできません。
よって、妥当ではありません。
「委任契約」と「準委任契約」の違いは
個別指導で解説します!
Aの隣人であるBは、Aの不在の間に台風によってA所有の甲建物(甲)の屋根が損傷したため修繕を行った。
3.Bは、Aからあらかじめ甲の管理を頼まれていなかったにもかかわらず、Aのために修繕を行ったが、それがAにとって有益であるときは、Bは、Aに対して報酬を請求することができる。
3・・・妥当ではない
本肢は「Aからあらかじめ甲の管理を頼まれていなかったにもかかわらず、Aのために修繕を行った」とあるので、Bが行った行為については、「事務管理」に当たります。
そして、管理者Bは、本人Aのために
有益な費用を支出したときは、本人Aに対し、その
償還を請求することができます(
民法702条)。
上記は
「費用」について請求できる旨の規定であり、
「報酬」については、請求できません。
よって、妥当ではありません。
Aの隣人であるBは、Aの不在の間に台風によってA所有の甲建物(甲)の屋根が損傷したため修繕を行った。
4.Bは、Aからあらかじめ甲の管理を頼まれていなかったにもかかわらず、工務店を営むCに修繕を請け負わせた。このようなBの行為は、Aのための事務管理にあたるから、これによりCは、Aに対して工事代金の支払いを直接に請求することができる。
4・・・妥当ではない
本肢は「Aからあらかじめ甲の管理を頼まれていなかったにもかかわらず、工務店を営むCに修繕を請け負わせた」とあるので、Bが行った行為については、「事務管理」に当たります。
そして、事務管理者Bが本人Aの名でした法律行為の効果は、当然には本人Aに及ぶものではありません(
最判昭36.11.30)。
よって、Cは、Aに対して工事代金の支払いを直接に請求することができないので、妥当ではりません。
Aの隣人であるBは、Aの不在の間に台風によってA所有の甲建物(甲)の屋根が損傷したため修繕を行った。
5.Bは、Aからあらかじめ甲の管理を頼まれていなかったにもかかわらず、工務店を営むCに修繕を請け負わせたが、実はAがCによる修繕を望んでいないことが後になって判明した。このような場合、甲にとって必要不可欠な修繕であっても、Bは、Aに対してその費用の支払いを請求することができない。
5・・・妥当ではない
本肢は「Aからあらかじめ甲の管理を頼まれていなかったにもかかわらず、工務店を営むCに修繕を請け負わせた」とあるので、Bが行った行為については、「事務管理」に当たります。
そして、管理者Bが本人Aの意思に反して事務管理をしたときは、
本人Aが現に利益を受けている限度においてのみ、本人に対し、その
費用の償還を請求することができます(
民法702条3項)。
よって、本肢は妥当ではありません。
平成23年度(2011年度)|行政書士試験の問題と解説
契約類型に応じた契約解除の相違に関する次の記述のうち、判例に照らし、妥当でないものはどれか。
- 贈与契約において、受贈者が、受贈の見返りとして贈与者を扶養する義務を負担していたにもかかわらず、この扶養する義務の履行を怠る場合には、贈与者は、贈与契約を解除することができる。
- 売買契約において買主から売主に解約手付が交付された場合に、売主が売買の目的物である土地の移転登記手続等の自己の履行に着手したときは、売主は、まだ履行に着手していない買主に対しても、手付倍返しによる解除を主張することはできない。
- 賃貸借契約において、賃借人の賃借物に対する使用方法が著しく信頼関係を破壊するものである場合には、賃貸人は、催告を要せずにただちに契約を解除することができる。
- 委任契約において、その契約が受任者の利益のためにもなされた場合であっても、受任者が著しく不誠実な行動に出た等のやむを得ない事情があるときはもちろん、また、そのような事情がないときでも、委任者が解除権自体を放棄したとは解されないときは、委任者は、自己の利益のためになお解除権を行使することができる。
- 建物の工事請負契約において、工事全体が未完成の間に注文者が請負人の債務不履行を理由に契約を解除する場合には、工事内容が可分であり、しかも当事者が既施工部分の給付に関し利益を有するときは、既施工部分については契約を解除することができず、未施工部分について契約の一部解除をすることができるにすぎない。
>解答と解説はこちら
【答え】:2
【解説】
1.贈与契約において、受贈者が、受贈の見返りとして贈与者を扶養する義務を負担していたにもかかわらず、この扶養する義務の履行を怠る場合には、贈与者は、贈与契約を解除することができる。
1・・・妥当
負担付贈与については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、双務契約に関する規定を準用します(
民法553条)。
よって、催告による解除のルール(
民法541条)も適用されます。
したがって、
負担付贈与契約において、当該負担を履行しない場合、催告をしたのち、解除をすることができます。
よって、本肢は妥当です。
本肢の考え方については、
個別指導で解説します!
2.売買契約において買主から売主に解約手付が交付された場合に、売主が売買の目的物である土地の移転登記手続等の自己の履行に着手したときは、売主は、まだ履行に着手していない買主に対しても、手付倍返しによる解除を主張することはできない。
2・・・妥当ではない
買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができます(
民法557条1項本文)。
つまり、
売主は、相手方(買主)が履行に着手するまでは、手付を買主に倍返しすることで契約解除ができます。
よって、本肢は妥当ではありません。
手付の倍返しの意味については、
個別指導で解説します!
3.賃貸借契約において、賃借人の賃借物に対する使用方法が著しく信頼関係を破壊するものである場合には、賃貸人は、催告を要せずにただちに契約を解除することができる。
3・・・妥当
判例によると、
「賃貸借は当時者相互の信頼関係を基礎とする継続的契約であるから、賃貸借の継続中に、当事者の一方に、その義務に違反し
信頼関係を裏切って、賃貸借関係の継続を著しく困難ならしめるような不信行為があった場合には、相手方は、
民法第541条所定の
催告を要せず、賃貸借を将来に向って解除することができる」としています(
最判昭27.4.25)。
よって、本肢の場合、上記状況に当てはまるので賃貸人は、催告を要せずにただちに契約を解除することができます。
本肢は妥当です。
4.委任契約において、その契約が受任者の利益のためにもなされた場合であっても、受任者が著しく不誠実な行動に出た等のやむを得ない事情があるときはもちろん、また、そのような事情がないときでも、委任者が解除権自体を放棄したとは解されないときは、委任者は、自己の利益のためになお解除権を行使することができる。
4・・・妥当
委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができます(
民法651条1項)
つまり、
委任された側も委任した側も、「いつでも」「理由に関係なく」解除することができます。
よって、本肢は妥当です。
本肢に関連する判例については
個別指導で解説します!
5.建物の工事請負契約において、工事全体が未完成の間に注文者が請負人の債務不履行を理由に契約を解除する場合には、工事内容が可分であり、しかも当事者が既施工部分の給付に関し利益を有するときは、既施工部分については契約を解除することができず、未施工部分について契約の一部解除をすることができるにすぎない。
5・・・妥当
判例によると、
「建物等の工事未完成の間に注文者が請負人の債務不履行を理由に請負契約を解除する場合において、工事内容が可分であり、かつ、当事者が既施工部分の給付について利益を有するときは、特段の事情のない限り、右部分についての契約を解除することはできない」としています(
最判昭56.2.17)。
よって、
工事内容が可分であり、しかも当事者が既施工部分の給付に関し利益を有するときは、
既施工部分については契約を解除することができないが、
未施工部分について契約の一部解除をすることができるにすぎません。
どういうことを言っているかは、
個別指導で解説します!
平成23年度(2011年度)|行政書士試験の問題と解説
法定地上権に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
- Aは、自己所有の土地(更地)に抵当権を設定した後に、その土地上に建物を建築したが、抵当権の被担保債権について弁済をすることができなかった。この場合において、抵当権者が抵当権を実行して土地を競売すると、この建物のために法定地上権は成立せず建物は収去されなければならなくなることから、抵当権者は、土地とその上の建物を一括して競売しなければならない。
- AがBから土地を借りてその土地上に建物を所有している場合において、Bは、その土地上に甲抵当権を設定したが、Aから建物を取得した後に、さらにその土地に乙抵当権を設定した。その後、Bは、甲抵当権の被担保債権について弁済したので甲抵当権は消滅したが、乙抵当権の被担保債権については弁済できなかったので、乙抵当権が実行され、その土地は買受人Cが取得した。この場合、この建物のために法定地上権は成立しない。
- AがBから土地を借りてその土地上に建物を所有している場合において、Aは、その建物上に甲抵当権を設定したが、Bから土地を取得した後に、さらにその建物に乙抵当権を設定した。その後、Aは、甲抵当権の被担保債権について弁済できなかったので、甲抵当権が実行され、その建物は買受人Cが取得した。この場合、この建物のために法定地上権は成立しない。
- Aが自己所有の土地と建物に共同抵当権を設定した後、建物が滅失したため、新たに建物を再築した場合において、Aが抵当権の被担保債権について弁済することができなかったので、土地についての抵当権が実行され、その土地は買受人Bが取得した。この場合、再築の時点での土地の抵当権が再築建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたなどの特段の事由のない限り、再築建物のために法定地上権は成立しない。
- AとBが建物を共同で所有し、Aがその建物の敷地を単独で所有している場合において、Aがその土地上に抵当権を設定したが、抵当権の被担保債権について弁済できなかったので、その抵当権が実行され、その土地は買受人Cが取得した。この場合、この建物のために法定地上権は成立しない。
>解答と解説はこちら
【答え】:4
【解説】
1.Aは、自己所有の土地(更地)に抵当権を設定した後に、その土地上に建物を建築したが、抵当権の被担保債権について弁済をすることができなかった。この場合において、抵当権者が抵当権を実行して土地を競売すると、この建物のために法定地上権は成立せず建物は収去されなければならなくなることから、抵当権者は、土地とその上の建物を一括して競売しなければならない。
1・・・妥当ではない
抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは、抵当権者は、
土地とともにその建物を競売することができる(
民法389条:一括競売)。
そして、この一括競売は、「必ずしなければならない(義務)」ではなく、任意です。
よって、本肢は妥当ではありません。
一括競売の理解については
個別指導で解説します!
2.AがBから土地を借りてその土地上に建物を所有している場合において、Bは、その土地上に甲抵当権を設定したが、Aから建物を取得した後に、さらにその土地に乙抵当権を設定した。その後、Bは、甲抵当権の被担保債権について弁済したので甲抵当権は消滅したが、乙抵当権の被担保債権については弁済できなかったので、乙抵当権が実行され、その土地は買受人Cが取得した。この場合、この建物のために法定地上権は成立しない。
2・・・妥当ではない
判例によると、
「
土地を目的とする先順位の甲抵当権と後順位の乙抵当権が設定された後,甲抵当権が設定契約の解除により消滅し,その後,
乙抵当権の実行により土地と地上建物の所有者を異にするに至った場合において,当該土地と建物が,甲抵当権の設定時には同一の所有者に属していなかったとしても,
乙抵当権の設定時に同一の所有者に属していたときは,法定地上権が成立する」としています(
最判平19.7.6)
本肢は、「法定地上権は成立しない」となっているので誤りです。
本肢は問題文を理解しないと、上記判例を理解できません。
そのため、
個別指導で問題文を時系列で解説します!
3.AがBから土地を借りてその土地上に建物を所有している場合において、Aは、その建物上に甲抵当権を設定したが、Bから土地を取得した後に、さらにその建物に乙抵当権を設定した。その後、Aは、甲抵当権の被担保債権について弁済できなかったので、甲抵当権が実行され、その建物は買受人Cが取得した。この場合、この建物のために法定地上権は成立しない。
3・・・妥当ではない
判例によると
「
建物に抵当権が設定された当時、土地・建物が所有者を異にしていたとしても、
土地・建物が同一所有者に帰属した後に設定された建物に対する後順位抵当権が存在する限り、
法定地上権が成立する」としています(大判昭14.7.26)。
よって、本肢の場合、「法定地上権は成立しない」となっているので誤りです。
本肢も選択肢2同様、問題文を理解しないと、上記判例を理解できません。
そのため、
個別指導で理由を含めて解説します!
4.Aが自己所有の土地と建物に共同抵当権を設定した後、建物が滅失したため、新たに建物を再築した場合において、Aが抵当権の被担保債権について弁済することができなかったので、土地についての抵当権が実行され、その土地は買受人Bが取得した。この場合、再築の時点での土地の抵当権が再築建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたなどの特段の事由のない限り、再築建物のために法定地上権は成立しない。
4・・・妥当
判例によると、
「所有者が土地及び地上建物に
共同抵当権を設定した後右建物が取り壊され、右土地上に
新たに建物が建築された場合には、新建物の所有者が土地の所有者と同一であり、かつ、新建物が建築された時点での土地の抵当権者が新建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたなどの特段の事情のない限り、
新建物のために法定地上権は成立しない」としています(
最判平9.2.14)。
よって、本肢は妥当です。
本肢も、問題文の状況理解ができないといけないので、
個別指導で判例のような結論となる理由を含めて解説します!
5.AとBが建物を共同で所有し、Aがその建物の敷地を単独で所有している場合において、Aがその土地上に抵当権を設定したが、抵当権の被担保債権について弁済できなかったので、その抵当権が実行され、その土地は買受人Cが取得した。この場合、この建物のために法定地上権は成立しない。
5・・・妥当ではない
判例によると、
「
建物の共有者の一人がその敷地を所有する場合において、右
土地に設定された抵当権が実行され、第三者がこれを競落したときは、右土地につき、
建物共有者全員のために、法定地上権が成立するものと解すべきである」としています(
最判昭46.12.21)。
本肢は、「法定地上権は成立しない」となっているので誤りです。
本肢も、なぜそのような判例になるのかを理解した方が良いので、
個別指導でその点も含めて解説します!
平成23年度(2011年度)|行政書士試験の問題と解説