憲法の過去問

平成25年・2013|問41|憲法

次の文章は、ある最高裁判所判決の一節(一部を省略)である。空欄[ ア ]~[ エ ]に当てはまる語句を、枠内の選択肢(1~20)から選びなさい。

確かに、[ ア ]は、民主主義社会において特に重要な権利として尊重されなければならず、被告人らによるその政治的意見を記載したビラの配布は[ ア ]の行使ということができる。しかしながら、・・・憲法21条1項も、[ ア ]を絶対無制限に保障したものではなく、公共の福祉のため必要かつ合理的な制限を是認するものであって、たとえ思想を外部に発表するための手段であっても、その手段が他人の権利を不当に害するようなものは許されないというべきである。本件では、[ イ ]を処罰することの憲法適合性が問われているのではなく、[ ウ ]すなわちビラの配布のために「人の看守する邸宅」に[ エ ]権者の承諾なく立ち入ったことを処罰することの憲法適合性が問われているところ、本件で被告人らが立ち入った場所は、防衛庁の職員及びその家族が私的生活を営む場所である集合住宅の共用部分及びその敷地であり、自衛隊・防衛庁当局がそのような場所として[ エ ]していたもので、一般に人が自由に出入りすることのできる場所ではない。たとえ[ ア ]の行使のためとはいっても、このような場所に[ エ ]権者の意思に反して立ち入ることは、[ エ ]権者の[ エ ]権を侵害するのみならず、そこで私的生活を営む者の私生活の平穏を侵害するものといわざるを得ない。

(最二小判平成20年4月11日刑集62巻5号1217頁)

1:出版の自由 2:統治 3:集会の手段 4:良心そのもの 5:出版それ自体 6:良心の自由 7:管理 8:居住の手段 9:居住・移転の自由 10:表現の自由 11:集会それ自体 12:良心の表出 13:支配 14:集会の自由 15:出版の手段 16:居住 17:表現の手段 18:居住それ自体 19:所有 20:表現そのもの

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【答え】:ア:10、イ:20、ウ:17、エ:7【解説】

確かに、[ア:表現の自由]は、民主主義社会において特に重要な権利として尊重されなければならず、被告人らによるその政治的意見を記載したビラの配布は、[ア:表現の自由]の行使ということができる。しかしながら、・・・憲法21条1項も、[ア:表現の自由]を絶対無制限に保障したものではなく、公共の福祉のため必要かつ合理的な制限を是認するものであって、たとえ思想を外部に発表するための手段であっても、その手段が他人の権利を不当に害するようなものは許されないというべきである。本件では、[イ:表現そのもの]を処罰することの憲法適合性が問われているのではなく、[ウ:表現の手段]すなわちビラの配布のために「人の看守する邸宅」に[エ:管理]権者の承諾なく立ち入ったことを処罰することの憲法適合性が問われているところ、本件で被告人らが立ち入った場所は、防衛庁の職員及びその家族が私的生活を営む場所である集合住宅の共用部分及びその敷地であり、自衛隊・防衛庁当局がそのような場所として[エ:管理]していたもので、一般に人が自由に出入りすることのできる場所ではない。たとえ[ア:表現の自由]の行使のためとはいっても、このような場所に[エ:管理]権者の意思に反して立ち入ることは、[エ:管理]権者の管理権を侵害するのみならず、そこで私的生活を営む者の私生活の平穏を侵害するものといわざるを得ない。

ア.被告人らによるその政治的意見を記載したビラの配布は[ ア ]の行使ということができる。・・・

憲法21条1項も、[ ア ]を絶対無制限に保障したものではなく、公共の福祉のため必要かつ合理的な制限を是認するものであって、たとえ思想を外部に発表するための手段であっても、その手段が他人の権利を不当に害するようなものは許されないというべきである。
・・・・
本件で被告人らが立ち入った場所は、防衛庁の職員及びその家族が私的生活を営む場所である集合住宅の共用部分及びその敷地であり、自衛隊・防衛庁当局がそのような場所として[ エ ]していたもので、一般に人が自由に出入りすることのできる場所ではない。たとえ[ ア ]の行使のためとはいっても、このような場所に[ エ ]権者の意思に反して立ち入ることは、[ エ ]権者の[ エ ]権を侵害するのみならず、そこで私的生活を営む者の私生活の平穏を侵害するものといわざるを得ない。

ア・・・表現の自由
「被告人らによる政治的意見を記載したビラの配布」が何の行使なのか?
また、これは、憲法21条1項の内容であることが分かります。さらに、「思想を外部に発表するための手段であっても、その手段が他人の権利を不当に害するようなものは許されないというべき」
から、「思想を外部に発表する」というキーワードもあります。そして、[ ア ]の行使のために、防衛庁の職員の集合住宅の敷地に、[ エ ]権者の意思に反して立ち入ることは、集合住宅に住む人の私生活の平穏を侵害する。
と言っています。

ここから、「アには表現の自由」が入ります。

イ.ウ.エ.憲法21条1項も、[ア:表現の自由]を絶対無制限に保障したものではなく、公共の福祉のため必要かつ合理的な制限を是認するものであって、たとえ思想を外部に発表するための手段であっても、その手段が他人の権利を不当に害するようなものは許されないというべきである。本件では、[ イ ]を処罰することの憲法適合性が問われているのではなく、[ ウ ]すなわちビラの配布のために「人の看守する邸宅」に[ エ ]権者の承諾なく立ち入ったことを処罰することの憲法適合性が問われている

イ・・・表現そのもの
ウ・・・表現の手段
エ・・・管理権「表現の自由は、絶対無制限に保障されるのではなく、公共の福祉のために制限されることもある。たとえ、思想を外部に発表するための手段であっても、その手段が他人の権利を不当に害するようなものは許されない。」

つまり、「表現の手段」が悪い、と言っています。

言い方を変えると、「表現そのもの」は問われていません。

したがって、
「本件では、[ イ ]を処罰することの憲法適合性が問われているのではなく」
という部分の「イには表現そのもの」
が入り

「[ ウ ]すなわちビラの配布のために「人の看守する邸宅」に[ エ ]権者の承諾なく立ち入ったことを処罰することの憲法適合性が問われている」
の「ウには、表現の手段」
が入ります。

そして、
『「人の看守する邸宅」に[ エ ]権者の承諾なく立ち入ったこと』
「看守」ということから、「管理者」がいることが分かるので、
「エには管理」が入ります。

平成25年・2013|問6|憲法・国会

次のア~オのうち、議院の権能として正しいものはいくつあるか。

ア 会期の決定
イ 議員の資格争訟
ウ 裁判官の弾劾
エ 議院規則の制定
オ 国政に関する調査

  1. 一つ
  2. 二つ
  3. 三つ
  4. 四つ
  5. 五つ

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【答え】:3

【解説】

ア 会期の決定
ア・・・国会の権能
常会の会期は150日と決まっています(国会法10条)。
そして、「臨時会」と「特別会」の会期、「会期の延長」は、両議院一致の議決で定めることになっています(国会法11条、12条)。よって、会期の決定は「両議院一致の議決」つまり「国会の議決」で決めるので、国会の権能と言えます。
イ 議員の資格争訟
イ・・議院の権能
両議院は、各々その議員の資格に関する争訟を裁判します。
但し、議員の議席を失はせるには、出席議員の3分の2以上の多数による議決を必要とします(憲法55条)。よって、議員の資格争訟は、議院の権能です。

議院の権能とは、衆議院もしくは参議院が単独で行える権利を指します。

ウ 裁判官の弾劾
ウ・・・国会の権能
裁判官の弾劾は、各議院においてその議員の中から選挙された同数の裁判員で組織する弾劾裁判所がこれを行います(国会法125条1項)。
つまり、裁判官の弾劾(裁判官を辞めさせること)は、国会の権能と言えます。
エ 議院規則の制定
エ・・・議院の権能
両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができます。
ただし、議員を除名するには、出席議員の3分の2以上の多数による議決を必要とします(憲法58条)。
したがって、「議院規則の制定」は、衆議院・参議院がそれぞれ行うことができるので議院の権能です。
オ 国政に関する調査
オ・・・議院の権能
両議院は、各々国政に関する調査を行い、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができます(憲法62条)。
つまり、国政調査は、衆議院も行えるし、参議院も行えます。
よって、議院の権能です。

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平成25年度(2013年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 法の下の平等 問33 民法
問4 憲法と私法上の行為 問34 民法:債権
問5 権力分立 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 憲法・精神的自由 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 法改正のより削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・経済
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・社会
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・政治
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 基礎知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 基礎知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成25年・2013|問5|憲法

権力分立に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. アメリカでは、国会議員と執行府の長の双方が国民によって直接選挙されるが、権力分立の趣旨を徹底するために、大統領による議会の解散と議会による大統領の不信任のメカニズムが組み込まれている。
  2. 政党が政治において主導的役割を演じる政党国家化が進むと、議院内閣制の国では議会の多数党が内閣を組織するようになり、内閣不信任案の可決という形での議会による内閣の責任追及の仕組みが、一般には、より実効的に機能するようになった。
  3. 伝統的には、議会の立法権の本質は、国民に権利・利益を付与する法規範の制定であると考えられてきたが、行政国家化の進展とともに、国民の権利を制限したり義務を課したりするという側面が重視されるようになった。
  4. 一般性・抽象性を欠いた個別具体的な事件についての法律(処分的法律)であっても、権力分立の核心を侵さず、社会国家にふさわしい実質的・合理的な取扱いの違いを設定する趣旨のものであれば、必ずしも権力分立や平等原則の趣旨に反するものではないとの見解も有力である。
  5. 君主制の伝統が強く、近代憲法制定時に政府と裁判所とが反目したフランスやドイツでは、行政権を統制するために、民事・刑事を扱う裁判所が行政事件も担当してきた。

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【答え】:4

【解説】

1.アメリカでは、国会議員と執行府の長の双方が国民によって直接選挙されるが、権力分立の趣旨を徹底するために、大統領による議会の解散と議会による大統領の不信任のメカニズムが組み込まれている。
1・・・誤り
「執行府の長」とは「大統領」を指します。
アメリカでは、大統領を選ぶ際、有権者は選挙人を選び、選挙人が大統領を選ぶという、間接選挙の制度を取っています。
「執行府の長の双方が国民によって直接選挙される」という記述は誤りです。また、アメリカの大統領制では、「大統領」と「議会」の権限が明確に分かれており、
  • 議会は大統領の不信任決議はできず、逆に
  • 大統領は議会の解散権、法案の提出権もありません
    (ただし、大統領は議会が可決した法案の拒否権は有しています
2.政党が政治において主導的役割を演じる政党国家化が進むと、議院内閣制の国では議会の多数党が内閣を組織するようになり、内閣不信任案の可決という形での議会による内閣の責任追及の仕組みが、一般には、より実効的に機能するようになった。
2・・誤り
本問は後半部分が誤りです。「政党」が政治において主導的役割を演じる政党国家化が進むと、議院内閣制の国では議会の多数党が内閣を組織するようになります。
自民党が過半数を取ると、自民党が内閣を組織します。
よって、前半部分は正しいです。しかし、この場合、「議会の多数党」と「内閣を組織する党」が同じになるため、野党が、内閣不信任案を提出しても、多数党である与党により可決されず、内閣の責任追及の仕組みは機能しなくなります
よって、この点が誤りです。
3.伝統的には、議会の立法権の本質は、国民に権利・利益を付与する法規範の制定であると考えられてきたが、行政国家化の進展とともに、国民の権利を制限したり義務を課したりするという側面が重視されるようになった。
3・・・誤り
伝統的には、議会の立法権の本質は、国民の「権利を制限したり義務を課したり」する法規範の制定であると考えられていました(一般的権利制限説)。しかし、一方で、貧富の差による貧しい人々を救うことを重視した福祉国家の思想の下、行政国家化が進展するとともに、国民に権利・利益を付与する法規範の制定も増えてきています。
例えば、生活保護法も、行政国家化によるものです。よって、本肢は、法規範の性質の内容が逆になっているので誤りです。
4.一般性・抽象性を欠いた個別具体的な事件についての法律(処分的法律)であっても、権力分立の核心を侵さず、社会国家にふさわしい実質的・合理的な取扱いの違いを設定する趣旨のものであれば、必ずしも権力分立や平等原則の趣旨に反するものではないとの見解も有力である。
4・・・正しい
本来、法律は、一般性(不特定多数人に適用できる)と抽象性(幅広い事件に適用できる)を有することが求められます。しかし、一方で、個別具体的な事件を対象にした法律(例:学校法人紛争の調停等に関する法律)が制定される場合があります。この点について、
権力分立の核心を侵さず、社会国家にふさわしい実質的・合理的な取扱いの違いを設定する趣旨のものであれば、個別具体的な事件に関する法律を作っても大丈夫ということです。
5.君主制の伝統が強く、近代憲法制定時に政府と裁判所とが反目したフランスやドイツでは、行政権を統制するために、民事・刑事を扱う裁判所が行政事件も担当してきた。
5・・・誤り
フランスやドイツには、「民事・刑事を担当する裁判所」と「行政事件を担当する行政裁判所」があります。
よって、「フランスやドイツでは、民事・刑事を扱う裁判所が行政事件も担当してきた」
というのは誤りです。

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平成25年度(2013年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 法の下の平等 問33 民法
問4 憲法と私法上の行為 問34 民法:債権
問5 権力分立 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 憲法・精神的自由 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 法改正のより削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・経済
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・社会
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・政治
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 基礎知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 基礎知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成25年・2013|問4|憲法

私法上の法律関係における憲法の効力に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、正しいものはどれか

  1. 私人間においては、一方が他方より優越的地位にある場合には私法の一般規定を通じ憲法の効力を直接及ぼすことができるが、それ以外の場合は、私的自治の原則によって問題の解決が図られるべきである。
  2. 私立学校は、建学の精神に基づく独自の教育方針を立て、学則を制定することができるが、学生の政治活動を理由に退学処分を行うことは憲法19条に反し許されない。
  3. 性別による差別を禁止する憲法14条1項の効力は労働関係に直接及ぶことになるので、男女間で定年に差異を設けることについて経営上の合理性が認められるとしても、女性を不利益に扱うことは許されない。
  4. 自衛隊基地建設に関連して、国が私人と対等な立場で締結する私法上の契約は、実質的に公権力の発動と同視できるような特段の事情がない限り、憲法9条の直接適用を受けない。
  5. 企業者が、労働者の思想信条を理由に雇い入れを拒むことは、思想信条の自由の重要性に鑑み許されないが、いったん雇い入れた後は、思想信条を理由に不利益な取り扱いがなされてもこれを当然に違法とすることはできない。

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【答え】:4

【解説】

1.私人間においては、一方が他方より優越的地位にある場合には私法の一般規定を通じ憲法の効力を直接及ぼすことができるが、それ以外の場合は、私的自治の原則によって問題の解決が図られるべきである。
1・・・誤り
判例によると、
憲法19条(思想及び良心の自由)、14条(法の下の平等)は、もっぱら、「国または公共団体」と「個人」との関係を規律するものであり、私人相互の関係を直接規律するものではない。もっとも、私人間の関係においても、相互の社会的力関係の相違から、会社Yが優越し、事実上、従業員Xが会社Yの意思に服従せざるを得ない場合もあるが、そのような場合にも、人権規定の適用・類推適用はできない。』
と判示しています。
したがって、「私人間においては、一方が他方より優越的地位にある場合には私法の一般規定を通じ憲法の効力を直接及ぼすことができる」は誤りです。

私人間においては、私的自治の原則によって問題の解決が図られるべき」という記述は正しいです。

「私的自治の原則」とは、私人間の意思によって自由に決定することが妥当であるとする原則です。

つまり、私人間で問題が生じたら、私人間の話合いで問題解決を図るべきということですね!

2.私立学校は、建学の精神に基づく独自の教育方針を立て、学則を制定することができるが、学生の政治活動を理由に退学処分を行うことは憲法19条に反し許されない。
2・・誤り
判例によると
「私立大学において、その建学の精神に基づく校風と教育方針に照らし、学則等により、学生の署名運動について事前に学校当局に届け出るべきこと及び学生の学外団体加入について学校当局の許可を受けるべきことを定めても、これをもって直ちに学生の政治的活動の自由に対する不合理な規制とはいえない。また、諸般の事情を総合的に観察して、退学処分の選択が社会通念上合理性を認めることができないようなものでないかぎり、退学処分は、学長の裁量権の範囲内にあるものというべきである。」
と判示し、学生の政治活動を理由に退学処分を行うことも憲法19条に違反しないとしています。

よって、本肢の「学生の政治活動を理由に退学処分を行うことは憲法19条に反し許されない」は誤りです。

3.性別による差別を禁止する憲法14条1項の効力は労働関係に直接及ぶことになるので、男女間で定年に差異を設けることについて経営上の合理性が認められるとしても、女性を不利益に扱うことは許されない。
3・・・誤り
判例によると
「会社がその就業規則中に定年年齢を男子60歳、女子55歳と定めた場合において、会社の企業経営上定年年齢において女子を差別しなければならない合理的理由が認められないときは、右就業規則中女子の定年年齢を男子より低く定めた部分は、性別のみによる不合理な差別を定めたものとして民法90条(公序良俗)の規定により無効である。」
と判示しています。つまり、
「性別による差別を禁止する憲法14条1項の効力は労働関係に直接及ぶ」が誤りです。
性別による差別を禁止する規定は、合理的な理由がなければ、民法90条(公序良俗)の規定により無効である」が正しいです。
4.自衛隊基地建設に関連して、国が私人と対等な立場で締結する私法上の契約は、実質的に公権力の発動と同視できるような特段の事情がない限り、憲法9条の直接適用を受けない。
4・・・正しい
判例によると
憲法9条は、その憲法規範として有する性格上、私法上の行為の効力を直接規律することを目的とした規定ではなく、人権規定と同様、私法上の行為に対しては直接適用されるものではないと解するのが相当である」
と判示しています。
つまり、本肢の内容は正しいです。
5.企業者が、労働者の思想信条を理由に雇い入れを拒むことは、思想信条の自由の重要性に鑑み許されないが、いったん雇い入れた後は、思想信条を理由に不利益な取り扱いがなされてもこれを当然に違法とすることはできない。
5・・・誤り
判例によると
「企業者が特定の思想を有することを理由に採用を拒否することは違法ではなく、また、いったん労働者を雇い入れ、その者に雇傭関係上の一定の地位を与えた後においては、その地位を一方的に奪うことにつき、雇入れの場合のような広い範囲の自由を有するものではない。」
としています。
したがって、後半部分が誤りです。
いったん雇い入れた後は、思想信条を理由に不利益な取り扱いがなされたら、違法となります。

本問は対比部分があるので、対比部分については個別指導で解説いたします!

対比部分も一緒に勉強して、理解を深めていきましょう!

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平成25年度(2013年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 法の下の平等 問33 民法
問4 憲法と私法上の行為 問34 民法:債権
問5 権力分立 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 憲法・精神的自由 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 法改正のより削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・経済
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・社会
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・政治
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 基礎知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 基礎知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成25年・2013|問3|憲法・法の下の平等

次の文章は、ある最高裁判所判決の意見の一節である。空欄[ ア ]~[ ウ ]に入る語句の組合せとして、正しいものはどれか。

一般に、立法府が違憲な[ ア ]状態を続けているとき、その解消は第一次的に立法府の手に委ねられるべきであって、とりわけ本件におけるように、問題が、その性質上本来立法府の広範な裁量に委ねられるべき国籍取得の要件と手続に関するものであり、かつ、問題となる違憲が[ イ ]原則違反であるような場合には、司法権がその[ ア ]に介入し得る余地は極めて限られているということ自体は否定できない。しかし、立法府が既に一定の立法政策に立った判断を下しており、また、その判断が示している基本的な方向に沿って考えるならば、未だ具体的な立法がされていない部分においても合理的な選択の余地は極めて限られていると考えられる場合において、著しく不合理な差別を受けている者を個別的な訴訟の範囲内で救済するために、立法府が既に示している基本的判断に抵触しない範囲で、司法権が現行法の合理的[ ウ ]解釈により違憲状態の解消を目指すことは、全く許されないことではないと考える。

(最大判平成20年6月4日民集62巻6号1367頁以下における藤田宙靖意見)

  1. ア:不作為 イ:比例 ウ:限定
  2. ア:作為 イ:比例 ウ:限定
  3. ア:不作為 イ:相互主義 ウ:有権
  4. ア:作為 イ:法の下の平等 ウ:拡張
  5. ア:不作為 イ:法の下の平等 ウ:拡張

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【答え】:5

【解説】

一般に、立法府が違憲な[ア:不作為]状態を続けているとき、その解消は第一次的に立法府の手に委ねられるべきであって、とりわけ本件におけるように、問題が、その性質上本来立法府の広範な裁量に委ねられるべき国籍取得の要件と手続に関するものであり、かつ、問題となる違憲が[イ:法の下の平等]原則違反であるような場合には、司法権がその[ア:不作為]に介入し得る余地は極めて限られていること自体は否定できない。しかし、立法府が既に一定の立法政策に立った判断を下しており、また、その判断が示している基本的な方向に沿って考えるならば、未だ具体的な立法がされていない部分においても合理的な選択の余地は極めて限られていると考えられる場合において、著しく不合理な差別を受けている者を個別的な訴訟の範囲内で救済するために、立法府が既に示している基本的判断に抵触しない範囲で、司法権が現行法の合理的[ウ:拡張]解釈により違憲状態の解消を目指すことは、全く許されないことではないと考える。

本問の判例の事案は、結婚していない「日本人の父」と「フィリピン人の母」との間に日本で生まれた子(原告)が、出生後に「日本人の父」から認知を受けたことを理由として、
法務大臣あてに日本国籍取得の届出をしたところ、国籍取得の条件を備えておらず、日本国籍を与えなかった事案です。

ア.一般に、立法府が違憲な[ ア ]状態を続けているとき、その解消は第一次的に立法府の手に委ねられるべきであって、・・・、未だ具体的な立法がされていない部分においても合理的な選択の余地は極めて限られていると考えられる場合において、・・・。

ア・・・不作為
判決文の中の「未だ具体的な立法がされていない」という記述から、「法律を定めていなかった」=「立法不作為」と導けます。
よって「アには不作為」が入ります。

イ.一般に、立法府が違憲な[ア:不作為]状態を続けているとき、その解消は第一次的に立法府の手に委ねられるべきであって、とりわけ本件におけるように、問題が、その性質上本来立法府の広範な裁量に委ねられるべき国籍取得の要件と手続に関するものであり、かつ、問題となる違憲が[ イ ]原則違反であるような場合には、司法権がその[ア:不作為]に介入し得る余地は極めて限られていること自体は否定できない。

イ・・・法の下の平等
「立法府が違憲な不作為状態を続けているとき、その解消は第一次的に立法府の手に委ねられるべきである」
つまり、「立法府である国会」が、法律を定めずに、憲法違反の状態であれば、まず第一に国会により、法律を定めるべきである、と言っています。そして、問題(国籍取得の条件)が、その性質上本来立法府の広範な裁量に委ねられるべき国籍取得の要件と手続に関するものであり、かつ、問題となる違憲が[ イ ]原則違反であるような場合には、司法権(裁判所)がその不作為に介入し得る余地は極めて限られている。つまり、法律を定める権限は、国会にあるので、問題となる国籍取得の条件に関する内容について、[イ:法の下の平等]違反である場合、裁判所が、その「国籍取得の条件」について、判断する余地は極めて限られている、と言っています。「著しく不合理な差別を受けている者」という記述から「イには法の下の平等」が入ります。

ウ.著しく不合理な差別を受けている者を個別的な訴訟の範囲内で救済するために、立法府が既に示している基本的判断に抵触しない範囲で、司法権が現行法の合理的[ ウ ]解釈により違憲状態の解消を目指すことは、全く許されないことではないと考える。

ウ・・・拡張
選択肢イの解説の続きですが、裁判所の介入の余地が極めて限られていたとしても、著しく不合理な差別を受けている者を個別的な訴訟の範囲内で救済するためであれば、
司法権(裁判所)が現行法の合理的な[ ウ ]解釈により違憲状態の解消を目指すことは、許される場合もある。
と言っています。つまり、裁判所が現在の法律(国籍取得の条件)に関する文言の解釈を広げて、この原告の子(日本人の父とフィリピン人母の間の子)に取得させることも許される
ということです。限定解釈(縮小解釈)とは、 条文上の文言につき,日常一般に用いられる意味をせばめて(制限を加えて)解釈することですが、
これを行うと、原告の子はさらに、国籍取得ができなくなるという逆の効果となるので、
限定解釈は入りません。

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平成25年度(2013年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 法の下の平等 問33 民法
問4 憲法と私法上の行為 問34 民法:債権
問5 権力分立 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 憲法・精神的自由 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 法改正のより削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・経済
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・社会
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・政治
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 基礎知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 基礎知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成26年・2014|問3|憲法・幸福追求権・プライバシー権

憲法13条に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 幸福追求権について、学説は憲法に列挙されていない新しい人権の根拠となる一般的かつ包括的な権利であると解するが、判例は立法による具体化を必要とするプログラム規定だという立場をとる。
  2. 幸福追求権の内容について、個人の人格的生存に必要不可欠な行為を行う自由を一般的に保障するものと解する見解があり、これを「一般的行為自由説」という。
  3. プライバシーの権利について、個人の私的領域に他者を無断で立ち入らせないという消極的側面と並んで、積極的に自己に関する情報をコントロールする権利という側面も認める見解が有力である。
  4. プライバシーの権利が、私法上、他者の侵害から私的領域を防御するという性格をもつのに対して、自己決定権は、公法上、国公立の学校や病院などにおける社会的な共同生活の中で生じる問題を取り扱う。
  5. 憲法13条が幸福追求権を保障したことをうけ、人権規定の私人間効力が判例上確立された1970年代以降、生命・身体、名誉・プライバシー、氏名・肖像等に関する私法上の人格権が初めて認められるようになった。

>解答と解説はこちら


【答え】:3

【解説】

1.幸福追求権について、学説は憲法に列挙されていない新しい人権の根拠となる一般的かつ包括的な権利であると解するが、判例は立法による具体化を必要とするプログラム規定だという立場をとる。
1・・・誤り
判例によると、肖像権について
「憲法13条は、国民の私生活上の自由が、国家権力に対しても保護されることを規定している。
そして、個人の私生活上の自由として、承諾なしに、みだりにその容ぼう等を撮影されない自由をする。
よって、肖像権は憲法13条によって保障されている」
と判示しています。つまり、判例は、新しい人権(肖像権)は、「一般的かつ包括的な権利」とは言っておらず、「裁判上の救済を受けることのできる具体的権利」と言っています。したがって、判例は立法による具体化を必要とするプログラム規定だという立場をとるという点は、誤りです。
2.幸福追求権の内容について、個人の人格的生存に必要不可欠な行為を行う自由を一般的に保障するものと解する見解があり、これを「一般的行為自由説」という。
2・・・誤り
幸福追求権については、憲法13条後段において「生命,自由及び幸福追求に対する国民の権利」として保障しています。
つまり、具体的に、憲法で保障されているということです。
その具体的な権利の内容については、2つの考え方(一般的行為自由説人格的利益説)があります。
  • 一般的行為自由説あらゆる生活領域に関する行為の自由を保障するという考え方
  • 人格的利益説:個人の人格的生存に不可欠な行為の自由を保障するという考え方(通説)

本肢の「個人の人格的生存に必要不可欠な行為を行う自由を一般的に保障するものと解する見解」は「人格的利益説」なので誤りです。

3.プライバシーの権利について、個人の私的領域に他者を無断で立ち入らせないという消極的側面と並んで、積極的に自己に関する情報をコントロールする権利という側面も認める見解が有力である。

3・・・正しい
プライバシーの権利は、「消極的な権利としての側面」と「積極的な権利としての側面」2つの側面を持っています。

  • 消極的側面:受動的な権利で、誰かに侵害されたときに損害賠償などをすることができる権利を言います。
  • 積極的側面:能動的な権利(自分の情報をコントロールする権利)で、積極的に情報公開や削除などを求める権利を言います。

よって、本肢は正しいです。

4.プライバシーの権利が、私法上、他者の侵害から私的領域を防御するという性格をもつのに対して、自己決定権は、公法上、国公立の学校や病院などにおける社会的な共同生活の中で生じる問題を取り扱う。
4・・・誤り
自己決定権とは、個人が一定の私的事項について、公権力の干渉を受けずに、自ら決定することができる権利をいいます。つまり、本肢は「公法上、国公立の学校や病院などにおける社会的な共同生活の中で生じる問題を取り扱う」という記述は誤りです。
5.憲法13条が幸福追求権を保障したことをうけ、人権規定の私人間効力が判例上確立された1970年代以降、生命・身体、名誉・プライバシー、氏名・肖像等に関する私法上の人格権が初めて認められるようになった。
5・・・誤り
昭和48年(1973年)12月12日の「三菱樹脂事件」の最高裁判決により、人権規定の私人間効力が判例上確立されました。
具体的には、「私人間において、憲法の人権規定を直接適用できない」と判示されました。そして、昭和44年(1969年)12月24日の「京都府学連事件」では肖像権(人格権)を認めています。
つまり、1960年代にも、人格権が認められているので、
「1970年代以降、生命・身体、名誉・プライバシー、氏名・肖像等に関する私法上の人格権が初めて認められるようになった」が誤りです。

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平成26年度(2014年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 幸福追求権など 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 投票価値の平等 問35 民法:親族
問6 内閣 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政調査 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 損失補償 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・経済
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・社会
問25 行政法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問42|行政法

次の文章の空欄[ ア ]~[ エ ]に当てはまる語句を、枠内の選択肢(1~20)から選びなさい。

[ ア ]は、[ イ ]ではないから、抗告訴訟はもちろん、行政不服審査法による審査請求の対象ともならないとされてきた。しかし、[ ア ]についても、これに従わない場合について、[ ウ ]が定められている例があるなど、相手方の権利利益に大きな影響を及ぼすものが少なくない。そこで、行政手続法が改正され、[ エ ]に根拠を有する[ ア ]のうち、違法行為の是正を求めるものについては、それが[ エ ]に定める要件に適合しないと思料する相手方は、行政機関にその中止等を求めることができるとされた。この申出があったときは、行政機関は、必要な調査を行い、それが要件に適合しないと認められるときは、その[ ア ]の中止その他必要な措置をとるべきこととされた。もし、[ ウ ]がなされていれば、必要な措置として、それも中止しなければならないこととなる。また、これと並んで、違法行為の是正のための[ イ ]や[ ア ]がなされていないと思料する者は、これらをすることを求めることができる旨の規定も置かれている。

1:即時強制 2:命令 3:刑事処罰 4:過料の徴収 5:代執行 6:行政調査 7:法律 8:法規命令 9:行政指導 10:強制執行 11:契約 12:強制 13:処分 14:不作為 15:処分基準 16:条例 17:公表 18:要綱 19:規則 20:実力行使

>解答と解説はこちら


【答え】:ア:9(行政指導)、イ:13(処分)、ウ:17(公表)、エ:7(法律)

【解説】

ア:行政指導]は、[イ:処分]ではないから、抗告訴訟はもちろん、行政不服審査法による審査請求の対象ともならないとされてきた。しかし、[ア:行政指導]についても、これに従わない場合について、[ウ:公表]が定められている例があるなど、相手方の権利利益に大きな影響を及ぼすものが少なくない。そこで、行政手続法が改正され、[エ:法律]に根拠を有する[ア:行政指導]のうち、違法行為の是正を求めるものについては、それが[エ:法律]に定める要件に適合しないと思料する相手方は、行政機関にその中止等を求めることができるとされた。この申出があったときは、行政機関は、必要な調査を行い、それが要件に適合しないと認められるときは、その[ア:行政指導]の中止その他必要な措置をとるべきこととされた。もし、[ウ:公表]がなされていれば、必要な措置として、それも中止しなければならないこととなる。また、これと並んで、違法行為の是正のための[イ:処分]や[ア:行政指導]がなされていないと思料する者は、これらをすることを求めることができる旨の規定も置かれている。

ア.イ.エ.
「[ ア ]は、[ イ ]ではないから、抗告訴訟はもちろん、行政不服審査法による審査請求の対象ともならないとされてきた。」「行政手続法が改正され、[ エ ]に根拠を有する[ ア ]のうち、違法行為の是正を求める」
ア・・・行政指導
イ・・・処分
エ・・・法律
この2つの文章から、「アは行政指導」と判断できます。行政手続法の改正により、「法律」に根拠がある行政指導の中止等が請求できるようになったからです(行政手続法36条の2の1項)。また、行政指導は、「処分」には該当しないので、行政不服審査法による審査請求の対象ともならない点からも判断できます。よって、「イには、処分」が入ります。
また、「エには、法律」が入ります。

(行政指導の中止等の求め)
行政手続法第36条の2 法令に違反する行為の是正を求める行政指導(その根拠となる規定が法律に置かれているものに限る。)の相手方は、当該行政指導が当該法律に規定する要件に適合しないと思料するときは、当該行政指導をした行政機関に対し、その旨を申し出て、当該行政指導の中止その他必要な措置をとることを求めることができる。ただし、当該行政指導がその相手方について弁明その他意見陳述のための手続を経てされたものであるときは、この限りでない。

ウ.
「[ ア:行政指導 ]についても、これに従わない場合について、[ ウ ]が定められている例がある」
ウ・・・公表
行政指導について、従う義務はありません。そのため、従わない場合に罰則はありません。
しかし、「公表」されることはあります。
よって、「ウには公表」が入ります。

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平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政法 問56 基礎知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 基礎知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問41|憲法

次の文章は、最高裁判所判決の一節である。空欄[ ア ]~[ エ ]に当てはまる語句を、枠内の選択肢(1~20)から選びなさい。
公立図書館は、住民に対して思想、意見その他の種々の情報を含む図書館資料を提供してその教養を高めること等を目的とする[ ア ]ということができる。 そして、公立図書館の図書館職員は、公立図書館が上記のような役割を果たせるように、独断的な評価や個人的な好みにとらわれることなく、公正に図書館資料を取り扱うべき[ イ ]を負うものというべきであり、閲覧に供されている図書について、独断的な評価や個人的な好みによってこれを廃棄することは、図書館職員としての基本的な[ イ ]に反するものといわなければならない。 他方、公立図書館が、上記のとおり、住民に図書館資料を提供するための[ ア ]であるということは、そこで閲覧に供された図書の[ ウ ]にとって、その思想、意見等を[ エ ]する[ ア ]でもあるということができる。 したがって、公立図書館の図書館職員が閲覧に供されている図書を[ ウ ]の思想や信条を理由とするなど不公正な取扱いによって廃棄することは、当該[ ウ ]が著作物によってその思想、意見等を[ エ ]する利益を不当に損なうものといわなければならない。 そして、[ ウ ]の思想の自由、表現の自由が憲法により保障された基本的人権であることにもかんがみると、公立図書館において、その著作物が閲覧に供されている[ ウ ]が有する上記利益は、法的保護に値する人格的利益であると解するのが相当であり、公立図書館の図書館職員である公務員が、図書の廃棄について、基本的な[ イ ]に反し、[ ウ ]又は著作物に対する独断的な評価や個人的な好みによって不公正な取扱いをしたときは、当該図書の[ ウ ]の上記人格的利益を侵害するものとして国家賠償法上違法となるというべきである。 (最判平成17年7月14日民集59巻6号1569頁)
1:読者 2:客観的良心 3:制度的保障 4:公衆に伝達 5:道義上の責務 6:啓発施設 7:政治倫理 8:出版者 9:利用者 10:学習施設 11:研究者 12:世論に訴求 13:職務上の義務 14:図書館の自由 15:著作者 16:有効に批判 17:教育の場 18:無料で収集 19:公的な場 20:広汎に流通
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【答え】:ア:19(公的な場)、イ:13(職務上の義務)、ウ:15(著作者)、エ:4(公衆に伝達)
【解説】
公立図書館は、住民に対して思想、意見その他の種々の情報を含む図書館資料を提供してその教養を高めること等を目的とする[ア:公的な場]ということができる。 そして、公立図書館の図書館職員は、公立図書館が上記のような役割を果たせるように、独断的な評価や個人的な好みにとらわれることなく、公正に図書館資料を取り扱うべき[イ:職務上の義務]を負うものというべきであり、閲覧に供されている図書について、独断的な評価や個人的な好みによってこれを廃棄することは、図書館職員としての基本的な[イ:職務上の義務]に反するものといわなければならない。 他方、公立図書館が、上記のとおり、住民に図書館資料を提供するための[ア:公的な場]であるということは、そこで閲覧に供された図書の[ウ:著作者]にとって、その思想、意見等を[エ:公衆に伝達]する[ア:公的な場]でもあるということができる。 したがって、公立図書館の図書館職員が閲覧に供されている図書を[ウ:著作者]の思想や信条を理由とするなど不公正な取扱いによって廃棄することは、当該[ウ:著作者]が著作物によってその思想、意見等を[エ:公衆に伝達]する利益を不当に損なうものといわなければならない。 そして、[ウ:著作者]の思想の自由、表現の自由が憲法により保障された基本的人権であることにもかんがみると、公立図書館において、その著作物が閲覧に供されている[ウ:著作者]が有する上記利益は、法的保護に値する人格的利益であると解するのが相当であり、公立図書館の図書館職員である公務員が、図書の廃棄について、基本的な[イ:職務上の義務]に反し、[ウ:著作者]又は著作物に対する独断的な評価や個人的な好みによって不公正な取扱いをしたときは、当該図書の[ウ:著作者]の上記人格的利益を侵害するものとして国家賠償法上違法となるというべきである。
ア. 「公立図書館は、住民に対して思想、意見その他の種々の情報を含む図書館資料を提供してその教養を高めること等を目的とする[ ア ]ということができる。」「他方、公立図書館が、上記のとおり、住民に図書館資料を提供するための[ ア ]であるということは、そこで閲覧に供された図書の[ ウ ]にとって、その思想、意見等を[ エ ]する[ ア ]でもあるということができる。」
ア・・・公的な場 公立図書館は、「公的な場」でもあるし「教育の場」ともいえます。 そのため、どちらか一方が入ることが分かります。ただ、「公立図書館」という風に「私立」ではなく「公立」となっていることから、 「公の施設」と考え、「公的な場」と導くとよいでしょう!ここは「教育の場」で間違えても仕方がないです。
イ. 「公立図書館の図書館職員は、公立図書館が上記のような役割を果たせるように、独断的な評価や個人的な好みにとらわれることなく、公正に図書館資料を取り扱うべき[ イ ]を負うものというべきであり、閲覧に供されている図書について、独断的な評価や個人的な好みによってこれを廃棄することは、図書館職員としての基本的な[ イ ]に反するものといわなければならない。」
イ・・・職務上の義務 図書館職員は、公正に図書館資料を取り扱うべき[ イ ]を負うのか? また 図書館職員が、独断的な評価や個人的な好みによって図書館資料を廃棄することは、図書館職員としての基本的な[ イ ]に反するこの2つから考えて、「職務上の義務」が妥当です。「道義上の責務」というと「道徳」や「人として正しいこと」という意味合いになります。 しかし、公立図書館の職員という地位から考えると、公務員なので「職務上の義務」が妥当でしょう。
ウ.エ. 「公立図書館の図書館職員が閲覧に供されている図書を[ ウ ]の思想や信条を理由とするなど不公正な取扱いによって廃棄することは、当該[ ウ ]が著作物によってその思想、意見等を[ エ ]する利益を不当に損なうものといわなければならない。 そして、[ ウ ]の思想の自由、表現の自由が憲法により保障された基本的人権であることにもかんがみると、公立図書館において、その著作物が閲覧に供されている[ ウ ]が有する上記利益は、法的保護に値する人格的利益であると解するのが相当であり、公立図書館の図書館職員である公務員が、図書の廃棄について、基本的な[ イ ]に反し、[ ウ ]又は著作物に対する独断的な評価や個人的な好みによって不公正な取扱いをしたときは、当該図書の[ ウ ]の上記人格的利益を侵害するものとして国家賠償法上違法となるというべきである。」
ウ・・・著作者 エ・・・公衆に伝達 「図書館職員が、図書を、[ ウ ]の思想や信条を理由とするなど不公正な取扱いによって廃棄する」 ということから、 「[ ウ ]の思想や信条を理由とするなど不公正な取扱い」を理由に図書館職員が図書を廃棄する、ということです。 また、 「当該[ ウ :誰が]が著作物によってその思想、意見等を[ エ ]する利益を不当に損なうものといわなければならない。」 ということから、「ウには、著作者」が入ります。さらに、 「公立図書館の図書館職員が閲覧に供されている図書を[ ウ:著作者 ]の思想や信条を理由とするなど不公正な取扱いによって廃棄することは、当該[ ウ:著作者 ]が著作物によってその思想、意見等を[ エ ]する利益を不当に損なうものといわなければならない。」 ということは、 著作者の図書が廃棄されることにより、著作者が失う利益は何かを考えると 「公衆に伝達する利益」を失うので 「エには、公衆に伝達」が入ります。
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平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政法 問56 基礎知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 基礎知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問7|憲法・財政

財政に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 国費の支出は国会の議決に基づくことを要するが、国による債務の負担は直ちに支出を伴うものではないので、必ずしも国会の議決に基づく必要はない。
  2. 予算の提出権は内閣にのみ認められているので、国会は予算を修正することができず、一括して承認するか不承認とするかについて議決を行う。
  3. 予見し難い予算の不足に充てるため、内閣は国会の議決に基づき予備費を設けることができるが、すべての予備費の支出について事後に国会の承認が必要である。
  4. 予算の公布は、憲法改正・法律・政令・条約の公布と同様に、憲法上、天皇の国事行為とされている。
  5. 国の歳出の決算は毎年会計検査院の検査を受けなければならないが、収入の見積もりにすぎない歳入の決算については、会計検査院の検査を受ける必要はない。

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【答え】:3

【解説】

1.国費の支出は国会の議決に基づくことを要するが、国による債務の負担は直ちに支出を伴うものではないので、必ずしも国会の議決に基づく必要はない。
1・・・妥当ではない
①国費を支出する場合、または②国が債務を負担する場合には、国会の議決に基くことが必要です(憲法85条)。
したがって、「国による債務の負担は直ちに支出を伴うものではないので、必ずしも国会の議決に基づく必要はない」が妥当ではありません。
2.予算の提出権は内閣にのみ認められているので、国会は予算を修正することができず、一括して承認するか不承認とするかについて議決を行う。
2・・・妥当ではない
内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければなりません(憲法86条)。
そして、上記国会での審議において、国会は予算を修正(増額修正も減額修正も)することができます。
したがって、妥当ではありません。
3.予見し難い予算の不足に充てるため、内閣は国会の議決に基づき予備費を設けることができるが、すべての予備費の支出について事後に国会の承認が必要である。
3・・・妥当
予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができます(憲法87条1項)。
そして、上記すべて予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければなりません(同条2項)。
よって、本肢は妥当です。
4.予算の公布は、憲法改正・法律・政令・条約の公布と同様に、憲法上、天皇の国事行為とされている。
4・・・妥当ではない
憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること」は天皇の国事行為です(憲法7条1号)。
しかし、「予算の公布」については規定されていません
5.国の歳出の決算は毎年会計検査院の検査を受けなければならないが、収入の見積もりにすぎない歳入の決算については、会計検査院の検査を受ける必要はない。
5・・・妥当ではない
国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければなりません(憲法90条)。
よって、本肢は「収入の見積もりにすぎない歳入の決算については、会計検査院の検査を受ける必要はない」が妥当ではありません。
歳入の決算についても会計検査院が検査します。

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平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政法 問56 基礎知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 基礎知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問6|憲法・司法の限界

司法権の限界に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例の趣旨に照らし、妥当でないものをすべて選べ。(改題)

  1. 具体的な権利義務ないしは法律関係に関する紛争であっても、信仰対象の価値または教義に関する判断が前提問題となる場合には、法令の適用による解決には適さず、裁判所の審査は及ばない。
  2. 大学による単位授与行為(認定)は、純然たる大学内部の問題として大学の自律的判断にゆだねられるべきものであり、一般市民法秩序と直接の関係を有すると認めるにたる特段の事情がない限り、裁判所の審査は及ばない。
  3. 衆議院の解散は高度の政治性を伴う国家行為であって、その有効無効の判断は法的に不可能であるから、そもそも法律上の争訟の解決という司法権の埒外にあり、裁判所の審査は及ばない。
  4. 政党の結社としての自律性からすると、政党の党員に対する処分は原則として自律的運営にゆだねるべきであり、一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的問題にとどまる限りは、裁判所の審査は及ばない。
  5. 地方議会議員の出席停止処分は、除名とは異なり議員の権利行使の一時的制約にすぎず、議会の内部規律の問題として自治的措置にゆだねるべきであるから、裁判所の審査は及ばない。

>解答と解説はこちら


【答え】:3と5

【解説】

1.具体的な権利義務ないしは法律関係に関する紛争であっても、信仰対象の価値または教義に関する判断が前提問題となる場合には、法令の適用による解決には適さず、裁判所の審査は及ばない。
1・・・妥当
判例によると
信仰対象の価値または教義に関する判断が前提問題となる場合、法令の適用による終局的な解決は不可能である」
として、裁判所の審査は及ばないとしています。
2.大学による単位授与行為(認定)は、純然たる大学内部の問題として大学の自律的判断にゆだねられるべきものであり、一般市民法秩序と直接の関係を有すると認めるにたる特段の事情がない限り、裁判所の審査は及ばない。
2・・・妥当
判例では
「大学における授業科目の単位授与(認定)行為は、一般市民法秩序と直接の関係を有するものであることを肯認するに足りる特段の事情のない限り、司法審査の対象にならない。」
と判示しています。
したがって、本肢は妥当です。
3.衆議院の解散は高度の政治性を伴う国家行為であって、その有効無効の判断は法的に不可能であるから、そもそも法律上の争訟の解決という司法権の埒外にあり、裁判所の審査は及ばない。
3・・・妥当ではない
判例では
国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為は、たとえそれが法律上の争訟となり、これに対する有効無効の判断が法律上可能である場合であっても、かかる国家行為は裁判所の審査権の外にある。」
と判示しています。
よって、本肢は「その有効無効の判断は法的に不可能であるから」が誤りです。
4.政党の結社としての自律性からすると、政党の党員に対する処分は原則として自律的運営にゆだねるべきであり、一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的問題にとどまる限りは、裁判所の審査は及ばない。
4・・・妥当
判例では
政党が党員に対してした処分が一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り、裁判所の審判権は及ばない
としています。
よって、本肢は妥当です。
5.地方議会議員の出席停止処分は、除名とは異なり議員の権利行使の一時的制約にすぎず、議会の内部規律の問題として自治的措置にゆだねるべきであるから、裁判所の審査は及ばない。
5・・・妥当ではない
判例(最大判令2.11.25)によると、「出席停止の懲罰の性質や議員活動に対する制約の程度に照らすと、これが議員の権利行使の一時的制限にすぎないものとして、その適否が専ら議会の自主的、自律的な解決に委ねられるべきであるということはできない(=議会内部の話ではない)」と判示しています。したがって、「出席停止処分については、裁判所の審査は及ぶ(司法審査の対象となる)」が正しいです。

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平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政法 問56 基礎知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 基礎知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略