憲法の過去問

平成27年・2015|問5|憲法・9条

次の文章は、自衛隊基地建設のために必要な土地の売買契約を含む土地取得行為と憲法9条の関係を論じた、ある最高裁判所判決の一部である(原文を一部修正した。)。ア~オの本来の論理的な順序に即した並び順として、正しいものはどれか。

ア 憲法9条の宣明する国際平和主義、戦争の放棄、戦力の不保持などの国家の統治活動に対する規範は、私法的な価値秩序とは本来関係のない優れて公法的な性格を有する規範である。

イ 私法的な価値秩序において、憲法9条の宣明する国際平和主義、戦争の放棄、戦力の不保持などの国家の統治活動に対する規範が、そのままの内容で民法90条にいう「公ノ秩序」の内容を形成し、それに反する私法上の行為の効力を一律に否定する法的作用を営むということはない。

ウ 憲法9条の宣明する国際平和主義、戦争の放棄、戦力の不保持などの国家の統治活動に対する規範は、私法的な価値秩序のもとで確立された私的自治の原則、契約における信義則、取引の安全等の私法上の規範によつて相対化され、民法90条にいう「公ノ秩序」の内容の一部を形成する。

エ 憲法9条の宣明する国際平和主義、戦争の放棄、戦力の不保持などの国家の統治活動に対する規範にかかわる私法上の行為については、私法的な価値秩序のもとにおいて、社会的に許容されない反社会的な行為であるとの認識が、社会の一般的な観念として確立しているか否かが、私法上の行為の効力の有無を判断する基準になるものというべきである。

オ 憲法9条は、人権規定と同様、国の基本的な法秩序を宣示した規定であるから、憲法より下位の法形式によるすべての法規の解釈適用に当たつて、その指導原理となりうるものであることはいうまでもない。

  1. ア イ ウ エ オ
  2. イ ウ エ オ ア
  3. ウ エ オ ア イ
  4. エ オ ア イ ウ
  5. オ ア イ ウ エ

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【答え】:5

【解説】

選択肢をすべて確認すると
「アイウエオ」
の順番で、一つずつずれているだけです。
なので、どれが一番最初になるのか?、どれが一番最後になるのか?を考えれば答えは導けます。

「オ」を見ると「憲法9条は、を宣示した規定であるから、であることはいうまでもない。」
という文章になっており、
憲法9条の全体像を示しています。

そこから、細かい内容に話が進んでいくので

オ→ア→イ→ウ→エ

が正しいのではないかを考え、内容を確認すれば、妥当だと判断できます。

判決文の内容は下記の通りです。

(オ)憲法9条は、人権規定と同様、国の基本的な法秩序を宣示した規定であるから、憲法より下位の法形式によるすべての法規の解釈適用に当たつて、その指導原理となりうるものであることはいうまでもないが、
憲法9条は、前判示のように私法上の行為の効力を直接規律することを目的とした規定ではないから、自衛隊基地の建設という目的ないし動機が直接憲法9条の趣旨に適合するか否かを判断することによつて、本件売買契約が公序良俗違反として無効となるか否かを決すべきではないのであって、自衛隊基地の建設を目的ないし動機として締結された本件売買契約を全体的に観察して私法的な価値秩序のもとにおいてその効力を否定すべきほどの反社会性を有するか否かを判断することによって、初めて公序良俗違反として無効となるか否かを決することができるものといわなければならない。

すなわち、
(ア)憲法9条の宣明する国際平和主義、戦争の放棄、戦力の不保持などの国家の統治活動に対する規範は、私法的な価値秩序とは本来関係のない優れて公法的な性格を有する規範であるから、

(イ)私法的な価値秩序において、右規範がそのままの内容で民法90条にいう『公ノ秩序』の内容を形成し、それに反する私法上の行為の効力を一律に否定する法的作用を営むということはないのであって、

(ウ)右の規範は、私法的な価値秩序のもとで確立された私的自治の原則、契約における信義則、取引の安全等の私法上の規範によつて相対化され、民法90条にいう『公ノ秩序』の内容の一部を形成するのであり、

したがって
(エ)私法的な価値秩序のもとにおいて、社会的に許容されない反社会的な行為であるとの認識が、社会の一般的な観念として確立しているか否かが、私法上の行為の効力の有無を判断する基準になるものというべきである

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平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政法 問56 基礎知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 基礎知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問4|憲法・基本的人権

次の文章は、基本的人権の分類についてかつて有力であったある考え方を整理・要約したものである。1~5は、この分類ではいずれも「生存権的基本権」と関係があるが、その本来的な特徴を備えているとはいえないものが一つだけ含まれている。それはどれか。

我妻栄は、基本的人権を、大きく、「自由権的基本権」と「生存権的基本権」に二分し、憲法25条から28条までの権利を生存権的基本権に分類するとともに、自由権的基本権には、各種の自由権や法の下の平等のほか、請願権、国家賠償請求権、刑事補償請求権、公務員の選定・罷免権などが、「自由権的基本権を確保するための諸権利」として一緒に分類されている。「自由権的基本権」と「生存権的基本権」とを区別するにあたっては、基本的人権の歴史的推移に着目し、第一に、基本的人権の内容について、前者が「自由」という色調をもつのに対して、後者は「生存」という色調をもつという差異があること、第二に、基本的人権の保障の方法について、前者が「国家権力の消極的な規制・制限」であるのに対して、後者は「国家権力の積極的な配慮・関与」であることを指摘している。
(中略)
我妻説が、19世紀的自由権的基本権と20世紀的生存権的基本権とを截然と二分し、両者が異質の権利であるという面を強調したのに対して、今日では、社会権と自由権との区分の有用性を認めたうえで、社会権と自由権の区別が相対的であり、社会権に自由権的な側面が存在することは、一般的に認められるに至っている。

(中村睦男『社会権の解釈』(1983年)4-9頁)

  1. 国による生活保護の給付
  2. 無償による義務教育の提供
  3. 勤労条件の法律による保障
  4. 争議行為の刑事免責
  5. 社会保障制度の充実

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【答え】:4

【解説】

問題文に
「憲法25条から28条までの権利を生存権的基本権に分類する」ということから、
問題文の内容自体。憲法25条~28条の内容だと分かります。

また、問題文に
『この分類ではいずれも「生存権的基本権」と関係がある』
と記述されているので、選択肢の1~5はすべて「生存権的基本権」ということも分かります。

1.国による生活保護の給付
1・・・備えている
生活保護」は、「生存権」に関する内容なので、憲法25条に関する内容です。

憲法25条
1 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

2.無償による義務教育の提供
2・・・備えている
無償による義務教育の提供」は、「教育を受ける権利」に関する内容なので、憲法26条に関する内容です。

憲法26条2項
すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

3.勤労条件の法律による保障
3・・・備えている
勤労条件の法律による保障」は、「勤労の権利」に関する内容なので、憲法27条に関する内容です。

憲法27条2項
賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。

4.争議行為の刑事免責
4・・・備えていない
「争議行為の刑事免責」は、「労働組合法」に関する内容なので、問題文の本来的な特徴を備えていないと判断できます。「争議行為の刑事免責」とは、「ストライキをしても刑事責任は免れる」という内容です。

労働組合法1条2項
刑法第35条の規定(法令又は正当な業務による行為は、罰しない、というルール)は、労働組合の団体交渉その他の行為であって前項に掲げる目的を達成するためにした正当なものについて適用があるものとする。

5.社会保障制度の充実
5・・・備えている
社会保障制度の充実」は、「生存権」に関する内容なので、憲法25条に関する内容です。

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平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政法 問56 基礎知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 基礎知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問3|憲法・外国人の人権

外国人の人権に関する次の文章のうち、最高裁判所の判例の趣旨に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. 国家機関が国民に対して正当な理由なく指紋の押捺を強制することは、憲法13条の趣旨に反するが、この自由の保障はわが国に在留する外国人にまで及ぶものではない。
  2. わが国に在留する外国人は、憲法上、外国に一時旅行する自由を保障されているものではない。
  3. 政治活動の自由は、わが国の政治的意思決定またはその実施に影響を及ぼす活動等、外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、その保障が及ぶ。
  4. 国の統治のあり方については国民が最終的な責任を負うべきものである以上、外国人が公権力の行使等を行う地方公務員に就任することはわが国の法体系の想定するところではない。
  5. 社会保障上の施策において在留外国人をどのように処遇するかについては、国は、特別の条約の存しない限り、その政治的判断によってこれを決定することができる。

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【答え】: 1

【解説】

1.国家機関が国民に対して正当な理由なく指紋の押捺を強制することは、憲法13条の趣旨に反するが、この自由の保障はわが国に在留する外国人にまで及ぶものではない。
1・・・妥当ではない
判例では
「指紋は、誰一人同じものはなく、一生涯変わらない。搾取された指紋の利用方法次第では、プライバシーの侵害の危険性もある。
そのため、何人もみだりに「指紋押捺を強制されない自由」を有しているといえる。
したがって、国家機関が正当な理由なく指紋押捺を強制することは、憲法13条の趣旨に反して許されない。
そして、指紋押捺を強制されない自由は、外国人にも等しく及ぶ。」
と判示しています。
したがって、本肢の「外国人にまで及ぶものではない」が妥当ではないです。
2.わが国に在留する外国人は、憲法上、外国に一時旅行する自由を保障されているものではない。
2・・・妥当
判例によると
我が国に在留する外国人は、憲法上、外国へ一時旅行する自由を保障されていない。 」
と判示しています。
よって、本肢は妥当です。
3.政治活動の自由は、わが国の政治的意思決定またはその実施に影響を及ぼす活動等、外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、その保障が及ぶ。
3・・・妥当
判例では
原則、外国人にも政治活動の自由を認めています
ただし、例外として、わが国の政治的意思決定または、その実施に影響を及ぼす活動などは、政治活動の自由の保障は及ばない、としています。
よって、本肢は妥当です。
4.国の統治のあり方については国民が最終的な責任を負うべきものである以上、外国人が公権力の行使等を行う地方公務員に就任することはわが国の法体系の想定するところではない。
4・・・妥当
判例では、
「国民主権の原理に基づいて、国・地方公共団体による統治のあり方は、国民が最終的な責任を負うべきものである」ことに照らして、原則、日本の国籍を有する者が公権力行使等地方公務員に就任することが想定されている。」
と判示しており、
本肢の通り、前半部分だけでなく、「外国人が公権力の行使等を行う地方公務員に就任することはわが国の法体系の想定するところではない」という点も妥当です。
5.社会保障上の施策において在留外国人をどのように処遇するかについては、国は、特別の条約の存しない限り、その政治的判断によってこれを決定することができる。
5・・・妥当
判例では、
社会保障上の施策において在留外国人をどのように処遇するかについては、
国は、特別の条約の存しない限り、当該外国人の属する国との外交関係、変動する国際情勢、国内の政治・経済・社会的諸事情等に照らしながら、その政治的判断によりこれを決定することができる
そして、限られた財源の下で福祉的給付を行うに当たり、自国民を在留外国人より優先的に扱うことも、許される」
と判示しています。
よって、本肢は妥当です。

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平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政法 問56 基礎知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 基礎知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成28年・2016|問41|憲法・検閲

次の文章は、最高裁判所判決の一節である。空欄[ ア ]~[ エ ]に当てはまる語句を、枠内の選択肢(1~20)から選びなさい。
憲法二一条二項前段は、「検閲は、これをしてはならない。」と規定する。憲法が、表現の自由につき、広くこれを保障する旨の一般的規定を同条一項に置きながら、別に検閲の禁止についてかような特別の規定を設けたのは、検閲がその性質上表現の自由に対する最も厳しい制約となるものであることにかんがみ、これについては、公共の福祉を理由とする例外の許容(憲法一二条、一三条参照)をも認めない趣旨を明らかにしたものと解すべきである。けだし、諸外国においても、表現を事前に規制する検閲の制度により思想表現の自由が著しく制限されたという歴史的経験があり、また、わが国においても、旧憲法下における出版法(明治二六年法律第一五号)、新聞紙法(明治四二年法律第四一号)により、文書、図画ないし新聞、雑誌等を出版直前ないし発行時に提出させた上、その発売、頒布を禁止する権限が内務大臣に与えられ、その運用を通じて[ ア ]な検閲が行われたほか、映画法(昭和一四年法律第六六号)により映画フイルムにつき内務大臣による典型的な検閲が行われる等、思想の自由な発表、交流が妨げられるに至った経験を有するのであって、憲法二一条二項前段の規定は、これらの経験に基づいて、検閲の[ イ ]を宣言した趣旨と解されるのである。 そして、前記のような沿革に基づき、右の解釈を前提として考究すると、憲法二一条二項にいう「検閲」とは、[ ウ ]が主体となって、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につき[ エ ]に、発表前にその内容を審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止することを、その特質として備えるものを指すと解すべきである。 (最大判昭和59年12月12日民集38巻12号1308頁)
1.行政権 2.絶対的禁止 3.例外的 4.否定的体験 5.外形的 6.原則的禁止 7.形式的 8.制限的適用 9.抜き打ち的 10.積極的廃止 11.実質的 12.個別的具体的 13.警察権 14.法律的留保的 15.国家 16.網羅的一般的 17.司法権 18裁量的 19.公権力 20.排他的
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【答え】:ア:11(実質的)、イ:2(絶対的禁止)、ウ:1(行政権)、 エ:16(網羅的一般的)
【解説】
憲法二一条二項前段は、「検閲は、これをしてはならない。」と規定する。憲法が、表現の自由につき、広くこれを保障する旨の一般的規定を同条一項に置きながら、別に検閲の禁止についてかような特別の規定を設けたのは、検閲がその性質上表現の自由に対する最も厳しい制約となるものであることにかんがみ、これについては、公共の福祉を理由とする例外の許容(憲法一二条、一三条参照)をも認めない趣旨を明らかにしたものと解すべきである。けだし、諸外国においても、表現を事前に規制する検閲の制度により思想表現の自由が著しく制限されたという歴史的経験があり、また、わが国においても、旧憲法下における出版法(明治二六年法律第一五号)、新聞紙法(明治四二年法律第四一号)により、文書、図画ないし新聞、雑誌等を出版直前ないし発行時に提出させた上、その発売、頒布を禁止する権限が内務大臣に与えられ、その運用を通じて[ ア:実質的 ]な検閲が行われたほか、映画法(昭和一四年法律第六六号)により映画フイルムにつき内務大臣による典型的な検閲が行われる等、思想の自由な発表、交流が妨げられるに至った経験を有するのであって、憲法二一条二項前段の規定は、これらの経験に基づいて、検閲の[ イ:絶対的禁止 ]を宣言した趣旨と解されるのである。 そして、前記のような沿革に基づき、右の解釈を前提として考究すると、憲法二一条二項にいう「検閲」とは、[ ウ:行政権 ]が主体となって、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につき[ エ:網羅的一般的 ]に、発表前にその内容を審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止することを、その特質として備えるものを指すと解すべきである。 (最大判昭和59年12月12日民集38巻12号1308頁)
ア 「文書、図画ないし新聞、雑誌等を出版直前ないし発行時に提出させた上、その発売、頒布を禁止する権限が内務大臣に与えられ、その運用を通じて[ ア ]な検閲が行われたほか~映画フイルムにつき内務大臣による典型的な検閲が行われる等、思想の自由な発表、交流が妨げられるに至った経験を有する」
ア・・・実質的 上記記述から、「実質的」な検閲が行われていたことが分かります。 したがって、「アには実質的」が入ります。
イ 「憲法二一条二項前段の規定は、これらの経験に基づいて、検閲の[ イ ]を宣言した趣旨と解されるのである。」
イ・・・絶対的禁止 憲法21条2項の前段には「検閲は、これをしてはならない。」と規定されています。 これは、検閲の絶対的禁止を示す内容です。 したがって、「イには絶対的禁止」が入ります。
ウ、エ 「検閲」とは、[ ウ ]が主体となって、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につき[ エ ]に、発表前にその内容を審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止することを、その特質として備えるものを指すと解すべきである。
ウ・・・行政権 エ・・・網羅的一般的 検閲とは、下記6つの要件を満たすものを言います。
  1. 行政権が主体となって、
  2. 思想内容等の表現物を対象とし、
  3. 表現物の一部または全部の発表を禁止する目的で、
  4. 対象とされる表現物を網羅的一般的に、
  5. 発表前に審査した上、
  6. 不適当と認めるものの発表を禁止すること
したがって、「ウには行政権」が入り、「エには網羅的一般的」が入ります。
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平成28年度(2016年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 国民審査 問33 民法:債権
問4 プライバシー権 問34 民法:債権
問5 国会 問35 民法:親族
問6 信教の自由 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 行政裁量 問39 会社法
問10 行政事件訴訟法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・政治
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・経済
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・情報通信
問25 行政法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政事件訴訟法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・公文書管理法
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成28年・2016|問7|憲法・法の下の平等

法の下の平等に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当でないものはどれか。
  1. 憲法が条例制定権を認める以上、条例の内容をめぐり地域間で差異が生じることは当然に予期されることであるから、一定の行為の規制につき、ある地域でのみ罰則規定が置かれている場合でも、地域差のゆえに違憲ということはできない。
  2. 選挙制度を政党本位のものにすることも国会の裁量に含まれるので、衆議院選挙において小選挙区選挙と比例代表選挙に重複立候補できる者を、一定要件を満たした政党等に所属するものに限ることは、憲法に違反しない。
  3. 法定相続分について嫡出性の有無により差異を設ける規定は、相続時の補充的な規定であることを考慮しても、もはや合理性を有するとはいえず、憲法に違反する。
  4. 尊属に対する殺人を、高度の社会的非難に当たるものとして一般殺人とは区別して類型化し、法律上刑の加重要件とする規定を設けることは、それ自体が不合理な差別として憲法に違反する。
  5. 父性の推定の重複を回避し父子関係をめぐる紛争を未然に防止するために、女性にのみ100日を超える再婚禁止期間を設けることは、立法目的との関係で合理性を欠き、憲法に違反する。
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【答え】:4
【解説】
1.憲法が条例制定権を認める以上、条例の内容をめぐり地域間で差異が生じることは当然に予期されることであるから、一定の行為の規制につき、ある地域でのみ罰則規定が置かれている場合でも、地域差のゆえに違憲ということはできない。
1・・・妥当 判例によると、 「憲法が各地方公共団体の条例制定権を認める以上、地域によって差別を生ずることは当然に予期されることである。したがって、このような差別は憲法みずから容認するところであると解すべきである。それ故、地方公共団体が売春の取締について各別に条例を制定する結果、その取扱に差別を生ずることがあっても、所論のように地域差の故をもって違憲ということはできない。」よって、本肢の内容は妥当です。
2.選挙制度を政党本位のものにすることも国会の裁量に含まれるので、衆議院選挙において小選挙区選挙と比例代表選挙に重複立候補できる者を、一定要件を満たした政党等に所属するものに限ることは、憲法に違反しない。
2・・・妥当 判例では、 「候補者届出政党の要件は、国民の政治的意思を集約するための組織を有し、継続的に相当な活動を行い、国民の支持を受けていると認められる政党等が、小選挙区選挙において政策を掲げて争うにふさわしいものであるとの認識の下に、政策本位、政党本位の選挙制度をより実効あらしめるために設けられたと解されるのであり、そのような立法政策を採ることには相応の合理性が認められ、これが国会の裁量権の限界を超えるとは解されない。」 と判示しています。衆議院の選挙制度は、政党本位の選挙制度を目指しているため、候補者の届出については、政党が行うことが原則と考えられています。この候補者の届出を行える政党については一定の要件があり、要件を満たさない場合、候補者届出政党として、候補者を届け出ることはできません。この要件を定めることは、国会の裁量の範囲内ということで、憲法に違反しないと判示しているわけです。
3.法定相続分について嫡出性の有無により差異を設ける規定は、相続時の補充的な規定であることを考慮しても、もはや合理性を有するとはいえず、憲法に違反する。
3・・・妥当 判例によると 「…遅くとも被相続人の相続が開始した当時においては、立法府の裁量権を考慮しても、嫡出子と嫡出でない子の法定相続分を区別する合理的な根拠は失われていたというべきである。」 と判示しています。つまり、相続において「嫡出子(婚姻した男女の間の子)」と「非嫡出子(婚姻していない男女間の子)」を差別することは憲法違反だということです。この判決を受けて、民法は改正され、 「嫡出子」も「非嫡出子」も同等の法定相続分を有することとなりました。
4.尊属に対する殺人を、高度の社会的非難に当たるものとして一般殺人とは区別して類型化し、法律上刑の加重要件とする規定を設けることは、それ自体が不合理な差別として憲法に違反する。
4・・・妥当ではない 判例によると 『刑法200条では、「自己または配偶者」の直系尊属を殺した者について、無期懲役または死刑の刑に処されるとし、通常の殺人罪の刑罰規定よりも重いものになっていた。この刑法200条の立法目的は、 尊属殺は通常殺と比べて、一般に高度の社会的道徳的非難に値するものとして、これを厳重に処罰して、特に強く禁圧しようとすることにあり、不合理とは言えない。』 と判示しています。 つまり、通常殺と比べて重罰にすること自体は違憲ではないとしています。
5.父性の推定の重複を回避し父子関係をめぐる紛争を未然に防止するために、女性にのみ100日を超える再婚禁止期間を設けることは、立法目的との関係で合理性を欠き、憲法に違反する。
5・・・妥当 判例によると 「本件規定(民法第733条)のうち100日を超えて女性の再婚禁止期間を設ける部分は憲法第24条第2項にいう両性の本質的平等に立脚したものでなくなっていたことも明らかである。そして、上記当時において、同部分は、憲法第14条第1項に違反するとともに、憲法第24条第2項にも違反するに至っていたというべきである。」と判示しています。よって、女性にのみ100日を超える再婚禁止期間を設けることは、立法目的との関係で合理性を欠き、憲法に違反です。ただし、国家賠償の観点では、 「本件立法不作為は、国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではない」として 国家賠償は否定しています。
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平成28年度(2016年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 国民審査 問33 民法:債権
問4 プライバシー権 問34 民法:債権
問5 国会 問35 民法:親族
問6 信教の自由 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 行政裁量 問39 会社法
問10 行政事件訴訟法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・政治
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・経済
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・情報通信
問25 行政法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政事件訴訟法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・公文書管理法
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成28年・2016|問5|憲法・国会

立法に関する次の記述のうち、必ずしも憲法上明文では規定されていないものはどれか。
  1. 出席議員の5分の1以上の要求があれば、各議員の表決は、これを会議録に記載しなければならない。
  2. 内閣は、法律案を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。
  3. 両議院の議員は、議院で行った演説、討論または表決について、院外で責任を問われない。
  4. 両議院は、各々その総議員の3分の1以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
  5. 衆議院で可決し、参議院でこれと異なった議決をした法律案は、衆議院で出席議員の3分の2以上の多数で再び可決したときは、法律となる。
>解答と解説はこちら
【答え】:2
【解説】
1.出席議員の5分の1以上の要求があれば、各議員の表決は、これを会議録に記載しなければならない。
1・・・明文で規定されている 出席議員の5分の1以上の要求があれば、各議員の表決は、これを会議録に記載しなければなりません(憲法57条3項)。 よって、憲法57条3項に規定されています。
2.内閣は、法律案を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。
2・・・明文で規定されていない 憲法に、「内閣が法律案を作成して、国会に提出する」権利があるとは規定していません。似たようなルールとして、 内閣法5条で、「内閣総理大臣は、内閣を代表して内閣提出の法律案、予算その他の議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告する」ことを定めています。 よって、内閣は、法律案を作成することはできます
3.両議院の議員は、議院で行った演説、討論または表決について、院外で責任を問われない。
3・・・明文で規定されている 両議院の議員(衆議院議員・参議院議員)は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問われません憲法51条:免責特権)。 よって、憲法51条に規定されています。
4.両議院は、各々その総議員の3分の1以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
4・・・明文で規定されている 両議院(衆議院および参議院)は、各々(それぞれ)その総議員の3分の1以上の出席がなければ、議事を開き議決することができません憲法56条1項)。 よって、憲法56条に規定されています。
5.衆議院で可決し、参議院でこれと異なった議決をした法律案は、衆議院で出席議員の3分の2以上の多数で再び可決したときは、法律となる。
5・・・明文で規定されている 衆議院で可決し、参議院でこれと異なった議決をした法律案は、衆議院で出席議員の3分の2以上の多数で再び可決したときは、法律となります(憲法59条)。 よって、憲法59条に規定されています。 これは、「法律案の議決」に関するルールで、「予算、条約の承認の議決」は別のルールなので注意しましょう!
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平成28年度(2016年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 国民審査 問33 民法:債権
問4 プライバシー権 問34 民法:債権
問5 国会 問35 民法:親族
問6 信教の自由 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 行政裁量 問39 会社法
問10 行政事件訴訟法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・政治
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・経済
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・情報通信
問25 行政法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政事件訴訟法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・公文書管理法
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成28年・2016|問3|憲法・国民審査

次の文章は、最高裁判所判決の一節である。これを読んで空欄[ ア ]~[ ウ ]に正しい語を入れ、その上で、[ ア ]~[ ウ ]を含む文章として正しいものを、選びなさい。
最高裁判所裁判官任命に関する国民審査の制度はその実質において所謂[ ア ]の制度と見ることが出来る。それ故本来ならば[ イ ]を可とする投票が有権者の総数の過半数に達した場合に[ イ ]されるものとしてもよかったのである。それを憲法は投票数の過半数とした処が他の[ ア ]の制度と異るけれどもそのため[ ア ]の制度でないものとする趣旨と解することは出来ない。只[ イ ]を可とする投票数との比較の標準を投票の総数に採っただけのことであって、根本の性質はどこ迄も[ ア ]の制度である。このことは憲法第七九条三項の規定にあらわれている。同条第二項の字句だけを見ると一見そうでない様にも見えるけれども、これを第三項の字句と照し会せて見ると、国民が[ イ ]すべきか否かを決定する趣旨であって、所論の様に[ ウ ]そのものを完成させるか否かを審査するものでないこと明瞭である。 (最大判昭和27年2月20日民集6巻2号122頁)
  1. [ ア ]は、レファレンダムと呼ばれ、地方公共団体の首長などに対しても認められる。
  2. [ ア ]に入る語は罷免、[ ウ ]に入る語は任命である。
  3. 憲法によれば、公務員を[ ア ]し、およびこれを[ イ ]することは、国民固有の権利である。
  4. 憲法によれば、内閣総理大臣は、任意に国務大臣を[ ア ]することができる。
  5. 憲法によれば、国務大臣を[ ウ ]するのは、内閣総理大臣である。
>解答と解説はこちら
【答え】:5
【解説】 まず、「国民審査の制度」については、憲法79条の下記のように規定されています。
憲法79条
  1. 最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。
  2. 最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。
  3. 前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。
そして、上記国民審査の内容について、 ①国民投票は解職制度(リコール)なのか? ②国民投票は任命行為の完了行為なのか? という議論がされ、判例では、①解職制度を採用しています。 最高裁判所において、長官以外の裁判官は、内閣が任命します。 その後、国民審査にかけられて、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免されます。

「国民審査は解職制度」という見解

この見解では、まず、内閣による任命後、国民投票による審査を受けるまでの間も、裁判官としての職務を果たしているのであるから、任命行為によって任命は完了していると考えます。 そして、国民投票は任命行為の完了後に、「罷免(ひめん):やめさせること」させるかどうか決定する行為であり、「罷免すべきことを可(罷免した方がよい!)」というときは、裁判官は罷免される、という見解です。 この見解だと、国民審査は、解職制度(=リコール)ととらえることができます。 よって、下記のようになります。
最高裁判所裁判官任命に関する国民審査の制度はその実質において所謂[ ア:解職 ]の制度と見ることが出来る。 それ故本来ならば[ イ:罷免 ]を可とする投票が有権者の総数の過半数に達した場合に[ イ:罷免 ]されるものとしてもよかったのである。 それを憲法は投票数の過半数とした処が他の[ ア:解職 ]の制度と異るけれども そのため[ ア:解職 ]の制度でないものとする趣旨と解することは出来ない。 只[ イ:罷免 ]を可とする投票数との比較の標準を投票の総数に採っただけのことであって、根本の性質はどこ迄も[ ア:解職 ]の制度である。 このことは憲法第七九条三項の規定にあらわれている。 同条第二項の字句だけを見ると一見そうでない様にも見えるけれども、 これを第三項の字句と照し会せて見ると、国民が[ イ:罷免 ]すべきか否かを決定する趣旨であって、所論の様に[ ウ:任命 ]そのものを完成させるか否かを審査するものでないこと明瞭である。 (最大判昭和27年2月20日民集6巻2号122頁)
1.[ ア ]は、レファレンダムと呼ばれ、地方公共団体の首長などに対しても認められる。
1・・・誤り アに入るのは、「解職」です。 したがって、誤りです。「レファレンダム」とは、国民投票・住民投票のことです。 地方公共団体の住民が、特定の事項について、投票により直接に意思表示すること言います。 「地方自治体の議会の解散要求や議員・首長の解職要求」などの直接請求を受けて賛否を問う住民投票等があります。
2.[ ア ]に入る語は罷免、[ ウ ]に入る語は任命である。
2・・・誤り アに入るのは、「解職」です。 ウに入るのは、「任命」です。 アが誤りです。
3.憲法によれば、公務員を[ ア ]し、およびこれを[ イ ]することは、国民固有の権利である。
3・・・誤り 憲法15条1項には、 『公務員を「選定」し、およびこれを「罷免」することは、国民固有の権利である。』と規定しています。よって、アの部分が誤りです。「イは罷免」です。
4.憲法によれば、内閣総理大臣は、任意に国務大臣を[ ア ]することができる。
4・・・誤り 憲法68条2項には 『内閣総理大臣は、任意に国務大臣を「罷免」することができる』と規定しています。よって、アの部分は「解職」なので誤りです。
5.憲法によれば、国務大臣を[ ウ ]するのは、内閣総理大臣である。
5・・・正しい 憲法68条1項には 『内閣総理大臣は、国務大臣を「任命」する』と規定しています。 そして、上記の解説とおり、「ウには任命」が入るから、正しいです。
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平成28年度(2016年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 国民審査 問33 民法:債権
問4 プライバシー権 問34 民法:債権
問5 国会 問35 民法:親族
問6 信教の自由 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 行政裁量 問39 会社法
問10 行政事件訴訟法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・政治
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・経済
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・情報通信
問25 行政法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政事件訴訟法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・公文書管理法
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成28年・2016|問4|憲法・住基ネット訴訟

最高裁判所は、平成11年に導入された住民基本台帳ネットワークシステム(以下「住基ネット」という。)について、これが憲法13条の保障する自由を侵害するものではない旨を判示している(最一小判平成20年3月6日民集62巻3号665頁)。次の記述のうち、判決の論旨に含まれていないものはどれか。

  1. 憲法13条は、国民の私生活上の自由が公権力の行使に対しても保護されるべきことを規定しており、何人も個人に関する情報をみだりに第三者に開示または公表されない自由を有する。
  2. 自己に関する情報をコントロールする個人の憲法上の権利は、私生活の平穏を侵害されないという消極的な自由に加えて、自己の情報について閲覧・訂正ないし抹消を公権力に対して積極的に請求する権利をも包含している。
  3. 氏名・生年月日・性別・住所という4情報は、人が社会生活を営む上で一定の範囲の他者には当然開示されることが予定されている個人識別情報であり、個人の内面に関わるような秘匿性の高い情報とはいえない。
  4. 住基ネットによる本人確認情報の管理、利用等は、法令等の根拠に基づき、住民サービスの向上および行政事務の効率化という正当な行政目的の範囲内で行われているものということができる。
  5. 住基ネットにおけるシステム技術上・法制度上の不備のために、本人確認情報が法令等の根拠に基づかずにまたは正当な行政目的の範囲を逸脱して第三者に開示・公表される具体的な危険が生じているということはできない。

>解答と解説はこちら


【答え】:2

【解説】

1.憲法13条は、国民の私生活上の自由が公権力の行使に対しても保護されるべきことを規定しており、何人も個人に関する情報をみだりに第三者に開示または公表されない自由を有する。
1・・・判決の論旨に含まれる
判旨には
憲法13条は,国民の私生活上の自由が公権力の行使に対しても保護されるべきことを規定しているものであり,個人の私生活上の自由の一つとして,何人も,個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由を有するものと解される
と判示しています。
2.自己に関する情報をコントロールする個人の憲法上の権利は、私生活の平穏を侵害されないという消極的な自由に加えて、自己の情報について閲覧・訂正ないし抹消を公権力に対して積極的に請求する権利をも包含している。
2・・・判決の論旨に含まれない
判決文には、
住民票コード削除請求を認容した原審の判断には,憲法解釈の誤り及び結論に影響を及ぼすことが明らかな法令解釈の誤りがある。」として、
問題文の「自己の情報について閲覧・訂正ないし抹消を公権力に対して積極的に請求する権利をも包含している」は判決の論旨に含まれません。
3.氏名・生年月日・性別・住所という4情報は、人が社会生活を営む上で一定の範囲の他者には当然開示されることが予定されている個人識別情報であり、個人の内面に関わるような秘匿性の高い情報とはいえない。
3・・・判決の論旨に含まれる
判決文には
住基ネットが被上告人らの上記の自由を侵害するものであるか否かについて検討すると住基ネットによって管理,利用等される本人確認情報は,
氏名,生年月日,性別及び住所から成る4情報に,住民票コード及び変更情報を加えたものにすぎない。このうち上記4情報は,人が社会生活を営む上で一定の範囲の他者には当然開示されることが予定されている個人識別情報である。また、変更情報も,転入,転出等の異動事由,異動年月日及び異動前の本人確認情報にとどまるものである。

よって、これらはいずれも,個人の内面に関わるような秘匿性の高い情報とはいえない。
と判示しています。

4.住基ネットによる本人確認情報の管理、利用等は、法令等の根拠に基づき、住民サービスの向上および行政事務の効率化という正当な行政目的の範囲内で行われているものということができる。
4・・・判決の論旨に含まれる
判決文では、
住民票コードは,住基ネットによる本人確認情報の管理,利用等を目的として,都道府県知事が無作為に指定した数列の中から市町村長が一を選んで各人に割り当てたものである。そのため,上記目的に利用される限りにおいては,その秘匿性の程度は本人確認情報と異なるものではない。また,住基ネットによる本人確認情報の管理,利用等は,法令等の根拠に基づき,住民サービスの向上及び行政事務の効率化という正当な行政目的の範囲内で行われているものということができる。
と判示しています。
5.住基ネットにおけるシステム技術上・法制度上の不備のために、本人確認情報が法令等の根拠に基づかずにまたは正当な行政目的の範囲を逸脱して第三者に開示・公表される具体的な危険が生じているということはできない。
5・・・判決の論旨に含まれる
判決文では
住基法は,都道府県に本人確認情報の保護に関する審議会を,指定情報処理機関に本人確認情報保護委員会を設置することとして,本人確認情報の適切な取扱いを担保するための制度的措置を講じている。これに照らせば,住基ネットにシステム技術上又は法制度上の不備があり,そのために本人確認情報が法令等の根拠に基づかずに又は正当な行政目的の範囲を逸脱して第三者に開示又は公表される具体的な危険が生じているということもできない。
と判示している。

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平成28年度(2016年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 国民審査 問33 民法:債権
問4 プライバシー権 問34 民法:債権
問5 国会 問35 民法:親族
問6 信教の自由 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 行政裁量 問39 会社法
問10 行政事件訴訟法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・政治
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・経済
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・情報通信
問25 行政法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政事件訴訟法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・公文書管理法
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成29年・2017|問41|憲法

次の文章の空欄[ ア ]~[ エ ]に当てはまる語句を、枠内の選択肢(1~20)から選びなさい。

その保障の根拠に照らして考えるならば、表現の自由といつても、そこにやはり一定の限界があることを否定し難い。[ ア ]が真実に反する場合、そのすべての言論を保護する必要性・有益性のないこともまた認めざるをえないのである。特に、その[ ア ]が真実に反するものであつて、他人の[ イ ]としての名誉を侵害・毀損する場合においては、[ イ ]の保護の観点からも、この点の考慮が要請されるわけである。私は、その限界は以下のところにあると考える。すなわち、表現の事前規制は、事後規制の場合に比して格段の慎重さが求められるのであり、名誉の侵害・毀損の被害者が公務員、公選による公職の候補者等の[ ウ ]人物であつて、その[ ア ]が[ ウ ]問題に関する場合には、表現にかかる事実が真実に反していてもたやすく規制の対象とすべきではない。しかし、その表現行為がいわゆる[ エ ]をもつてされた場合、換言すれば、表現にかかる事実が真実に反し虚偽であることを知りながらその行為に及んだとき又は虚偽であるか否かを無謀にも無視して表現行為に踏み切つた場合には、表現の自由の優越的保障は後退し、その保護を主張しえないものと考える。けだし、右の場合には、故意に虚偽の情報を流すか、[ ア ]の真実性に無関心であつたものというべく、表現の自由の優越を保障した憲法二一条の根拠に鑑み、かかる表現行為を保護する必要性・有益性はないと考えられるからである。

(最大判昭和61年6月11日民集40巻4号872頁・裁判官谷口正孝の補足意見)

1.差別的表現 2.不公正な論評 3.私的領域 4.相当な誤信 5.公益的 6.社会的 7.人物評価 8.自己決定権 9.公的 10.誹謗中傷 11.表現手段 12.ダブル・スタンダード 13.公的領域 14.公知の 15.自己実現 16.明白かつ現在の危険 17.人格権 18.論争的 19.現実の悪意 20.表現内容

>解答と解説はこちら


【答え】:ア:20、イ:17、ウ:9、エ:19

【解説】

その保障の根拠に照らして考えるならば、表現の自由といつても、そこにやはり一定の限界があることを否定し難い。[ ア:表現内容 ]が真実に反する場合、そのすべての言論を保護する必要性・有益性のないこともまた認めざるをえないのである。特に、その[ ア:表現内容 ]が真実に反するものであつて、他人の[ イ:人格権 ]としての名誉を侵害・毀損する場合においては、[ イ:人格権 ]の保護の観点からも、この点の考慮が要請されるわけである。私は、その限界は以下のところにあると考える。すなわち、表現の事前規制は、事後規制の場合に比して格段の慎重さが求められるのであり、名誉の侵害・毀損の被害者が公務員、公選による公職の候補者等の[ ウ:公的 ]人物であつて、その[ ア:表現内容 ]が[ ウ:公的 ]問題に関する場合には、表現にかかる事実が真実に反していてもたやすく規制の対象とすべきではない。しかし、その表現行為がいわゆる[ エ:現実の悪意 ]をもつてされた場合、換言すれば、表現にかかる事実が真実に反し虚偽であることを知りながらその行為に及んだとき又は虚偽であるか否かを無謀にも無視して表現行為に踏み切つた場合には、表現の自由の優越的保障は後退し、その保護を主張しえないものと考える。けだし、右の場合には、故意に虚偽の情報を流すか、[ ア:表現内容 ]の真実性に無関心であつたものというべく、表現の自由の優越を保障した憲法二一条の根拠に鑑み、かかる表現行為を保護する必要性・有益性はないと考えられるからである。

ア.
その保障の根拠に照らして考えるならば、表現の自由といつても、そこにやはり一定の限界があることを否定し難い。[ ア ]が真実に反する場合、そのすべての言論を保護する必要性・有益性のないこともまた認めざるをえないのである。
ア・・・表現内容
「その保障の根拠に照らして考えるならば、表現の自由といつても、そこにやはり一定の限界があることを否定し難い」ということから、「表現の自由といっても、なんでも保障されるのではなく、一定の限界がある」ということです。
そして、「[ ア ]が真実に反する場合、そのすべての言論を保護する必要性・有益性のない」ということなので「アには、表現内容」が入ります。
表現内容が真実に反する場合=うその場合、保護する必要性はないということです。
イ.
特に、その[ ア:表現内容 ]が真実に反するものであつて、他人の[ イ ]としての名誉を侵害・毀損する場合においては、[ イ ]の保護の観点からも、この点の考慮が要請されるわけである。
イ・・・人格権
表現内容がうそであることで、イとしての名誉を侵害・毀損する場合(傷つけられる場合)なので、「イには、人格権」が入ります。
ウ.
名誉の侵害・毀損の被害者が公務員、公選による公職の候補者等の[ ウ ]人物であつて、その[ ア:表現内容 ]が[ ウ ]問題に関する場合には、表現にかかる事実が真実に反していてもたやすく規制の対象とすべきではない。
ウ・・・公的
「名誉の侵害・毀損の被害者が公務員、公選による公職の候補者等の[ ウ ]人物であって」ということから、この人物は「公的な人物」であることが分かります。
よって、「ウには公的」が入ります。
エ.
その表現行為がいわゆる[ エ ]をもつてされた場合、換言すれば、表現にかかる事実が真実に反し虚偽であることを知りながらその行為に及んだとき又は虚偽であるか否かを無謀にも無視して表現行為に踏み切つた場合
エ・・・現実の悪意
「換言すれば」とは、「言い換えれば」ということなので
「その表現行為がいわゆる[ エ ]をもつてされた場合」と、その後ろの
「表現にかかる事実が真実に反し虚偽であることを知りながらその行為に及んだとき又は虚偽であるか否かを無謀にも無視して表現行為に踏み切つた場合」
は同じ内容と分かります。
そして、後者は「知りながら」とあります。
言い換えると法律用語で「悪意」です。
よって、「エには、現実の悪意」が入ります。

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平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・政治
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 基礎知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

平成29年・2017|問5|憲法・内閣

内閣に関する次の記述のうち、憲法の規定に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 内閣総理大臣は、国会の同意を得て国務大臣を任命するが、その過半数は国会議員でなければならない。
  2. 憲法は明文で、閣議により内閣が職務を行うべきことを定めているが、閣議の意思決定方法については規定しておらず、慣例により全員一致で閣議決定が行われてきた。
  3. 内閣の円滑な職務遂行を保障するために、憲法は明文で、国務大臣はその在任中逮捕されず、また在任中は内閣総理大臣の同意がなければ訴追されない、と規定した。
  4. 法律および政令には、その執行責任を明確にするため、全て主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。
  5. 内閣の存立は衆議院の信任に依存するので、内閣は行政権の行使について、参議院に対しては連帯責任を負わない。

>解答と解説はこちら


【答え】: 4

【解説】

1.内閣総理大臣は、国会の同意を得て国務大臣を任命するが、その過半数は国会議員でなければならない。
1・・・妥当ではない
内閣総理大臣は、国務大臣を任命します(憲法68条1項)。
ただし、国務大臣の過半数は、国会議員の中から選ばれなければなりません(憲法68条1項但し書き)。
つまり、本肢のような「国会の同意」は不要です。
2.憲法は明文で、閣議により内閣が職務を行うべきことを定めているが、閣議の意思決定方法については規定しておらず、慣例により全員一致で閣議決定が行われてきた。
2・・・妥当ではない
憲法には、「閣議」についての規定はありません
閣議により内閣が職務を行うべきことは、内閣法4条で定めています。
また、閣議の意思決定方法については規定しておらず慣例により全員一致で閣議決定が行われています。
3.内閣の円滑な職務遂行を保障するために、憲法は明文で、国務大臣はその在任中逮捕されず、また在任中は内閣総理大臣の同意がなければ訴追されない、と規定した。
3・・・妥当ではない
国務大臣は、その在任中内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されません。ただし、在任期間が切れると、訴追されます(=訴追の権利は、害されない)(憲法75条)。
その点は、妥当です。しかし、「国務大臣はその在任中逮捕されず」という記述は妥当ではありません。

似たようなルールが憲法50条で規定されています。

国会議員は原則として国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならないという特権があります(憲法50条)。

この2つとひっかける問題です。

国務大臣は過半数が国会議員であればよいので、国会議員でない可能性もあります。
そのため、「国務大臣はその在任中逮捕されず」という記述は妥当ではありません。

4.法律および政令には、その執行責任を明確にするため、全て主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。
4・・・妥当
法律及び政令には、すべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とします(憲法74条)。
したがって、妥当です。
5.内閣の存立は衆議院の信任に依存するので、内閣は行政権の行使について、参議院に対しては連帯責任を負わない。
5・・・妥当ではない
内閣は、行政権の行使について、国会(衆議院と参議院の両方)に対し連帯して責任を負います(憲法66条3項)。
したがって、「内閣は、参議院に対しては連帯責任を負わない」という記述は妥当ではありません。

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平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・政治
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 基礎知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略