行政法の過去問

平成28年・2016|問8|行政法

下記の〔設例〕に関する次のア~オの記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

〔設例〕 Xは、旅館業法3条1項に基づく許可(以下「営業許可」という。)を得て、旅館業を営んでいたが同法によって義務付けられた営業者の講ずべき衛生措置を講じなかったことを理由に、所轄都道府県知事から、同法8条1項に基づく許可の取消処分(以下「取消処分」という。)を受けた。

(参照条文)
旅館業法
第3条第1項
旅館業を経営しようとする者は、都道府県知事・・・の許可を受けなければならない。(以下略)

第8条第1項
都道府県知事は、営業者が、この法律若しくはこの法律に基づく処分に違反したとき・・・は、同条〔注:旅館業法第3条〕第1項の許可を取り消〔す〕・・・ことができる。(以下略)

ア Xに対してなされた取消処分は、違法になされた営業許可を取り消し、法律による行政の原理に反する状態を是正することを目的とする行政行為である。

イ Xに対してなされた取消処分は、いったんなされた営業許可を前提とするものであるから、独立の行政行為とはみなされず、行政手続法が規定する「処分」にも当たらない。

ウ Xに対してなされた取消処分が取消判決によって取り消された場合に、Xは、営業許可がなされた状態に復し、従前どおり営業を行うことができる。

エ Xに対してなされた取消処分によって、Xが有していた営業許可の効力は、それがなされたときにさかのぼって効力を失うことになる。

オ Xに対してなされた取消処分は、営業許可がなされた時点では瑕疵がなかったが、その後においてそれによって成立した法律関係を存続させることが妥当ではない事情が生じたときに、当該法律関係を消滅させる行政行為である。

  1. ア・ウ
  2. ア・エ
  3. イ・エ
  4. イ・オ
  5. ウ・オ

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【答え】:5

【解説】

ア Xに対してなされた取消処分は、違法になされた営業許可を取り消し、法律による行政の原理に反する状態を是正することを目的とする行政行為である。
ア・・・誤り
Xは、適法に営業許可を受けました。
しかし、その後、営業者の講ずべき衛生措置を講じなかったことを理由に、知事から許可の取消処分を受けています。
つまり、後発的事情(許可の後の事情)により将来に向かってその行政行為の効力を失わせる
もの(許可取消)なので、講学上の「撤回」に当たります。
本肢は、「違法になされた営業許可」としている本肢は誤りである。
イ Xに対してなされた取消処分は、いったんなされた営業許可を前提とするものであるから、独立の行政行為とはみなされず、行政手続法が規定する「処分」にも当たらない。
イ・・・誤り
処分」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為を言います(行政手続法2条2号)。
そして、行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分を「不利益処分」いい(行政手続法2条4号)、営業許可を取り消す処分は、「権利を制限する処分」と言えるため、不利益処分に該当します。
よって、本肢の「行政手続法が規定する「処分」にも当たらない」は誤りです。
ウ Xに対してなされた取消処分が取消判決によって取り消された場合に、Xは、営業許可がなされた状態に復し、従前どおり営業を行うことができる。
ウ・・・正しい
本肢は、取消判決による「形成力」に関する記述です。
取消判決の確定によって、処分または裁決は、当然に処分時または裁決時にさかのぼって効力を失うという効力を「形成力」と言います。
本肢のように、取消処分が取消判決によって取り消された場合、形成力により、Xは、営業許可がなされた状態に復し、従前どおり営業を行うことができます。
エ Xに対してなされた取消処分によって、Xが有していた営業許可の効力は、それがなされたときにさかのぼって効力を失うことになる。
エ・・・誤り
選択肢アでも解説した通り、本問「取消処分」は、適法に営業許可を与え、その後の事情によって、許可取り消しとなっているので、講学上の「撤回」に当たります。
本肢のような「取消し」の内容ではないので誤りです。
オ Xに対してなされた取消処分は、営業許可がなされた時点では瑕疵がなかったが、その後においてそれによって成立した法律関係を存続させることが妥当ではない事情が生じたときに、当該法律関係を消滅させる行政行為である。
オ・・・正しい
選択肢ア、エの通り、本問の取消処分は「撤回」です。
本肢の内容も「撤回」にあたるので正しいです。

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平成28年度(2016年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 国民審査 問33 民法:債権
問4 プライバシー権 問34 民法:債権
問5 国会 問35 民法:親族
問6 信教の自由 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 行政裁量 問39 会社法
問10 行政事件訴訟法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・政治
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・経済
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・情報通信
問25 行政法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政事件訴訟法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・公文書管理法
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成23年・2011|問22|地方自治法

地方自治法の規定する普通地方公共団体の執行機関に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 地方自治法は、普通地方公共団体にその執行機関として普通地方公共団体の長の外、条例の定めるところにより、委員会又は委員を置くと規定している。
  2. 地方自治法における執行機関は、行政官庁の命を受け、実力をもって執行することを任務とする機関をいう。
  3. 執行機関として置かれる委員会は、法律の定めるところにより法令又は当該普通地方公共団体の条例若しくは規則に違反しない限りにおいて、規則その他の規程を定めることができる。
  4. 普通地方公共団体の長は、当該普通地方公共団体の執行機関相互の間にその権限の帰属につき疑義が生じたときは、自らその権限を行使することができる。
  5. 執行機関としての長、委員会及び委員は、一定の場合、議会において議決すべき事件について専決処分を行うことができる。

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【答え】:3【解説】
1.地方自治法は、普通地方公共団体にその執行機関として普通地方公共団体の長の外、条例の定めるところにより、委員会又は委員を置くと規定している。
1・・・誤り
普通地方公共団体にその執行機関として普通地方公共団体の長の外、法律の定めるところにより、委員会又は委員を置きます(地方自治法138条の4の1項)。
よって「条例の定めるところ」が誤りで、正しくは「法律の定めるところ」です。
2.地方自治法における執行機関は、行政官庁の命を受け、実力をもって執行することを任務とする機関をいう。
2・・・誤り
普通地方公共団体の執行機関は、当該普通地方公共団体の条例、予算その他の議会の議決に基づく事務及び法令、規則その他の規程に基づく当該普通地方公共団体の事務を、自らの判断と責任において、誠実に管理し及び執行する義務を負う機関です(地方自治法138条の2)。「行政官庁の命を受け、実力をもって執行することを任務とする機関」とは、警察官や消防署員、自衛官などを指し、行政講学上(法律の条文の内容ではなく、学問上の話)の「執行機関」です。

地方自治法における執行機関は、上記条文の内容の通りです。

よって、誤りです。

3.執行機関として置かれる委員会は、法律の定めるところにより法令又は当該普通地方公共団体の条例若しくは規則に違反しない限りにおいて、規則その他の規程を定めることができる。
3・・・正しい
普通地方公共団体の委員会は、法律の定めるところにより、法令又は普通地方公共団体の条例若しくは規則に違反しない限りにおいて、その権限に属する事務に関し、規則その他の規程を定めることができます(地方自治法138条の4の2項)・よって、本肢は正しいです。

簡単に言えば、普通地方公共団体の委員会は、法律の定めに従って、当該委員会の事務の範囲内の規則を定めることができる、ということです。

4.普通地方公共団体の長は、当該普通地方公共団体の執行機関相互の間にその権限の帰属につき疑義が生じたときは、自らその権限を行使することができる。
4・・・誤り
普通地方公共団体の長は、当該普通地方公共団体の執行機関相互の間にその権限につき疑義が生じたときは、これを調整するように努めなければなりません(地方自治法138条の3の3項)。
つまり、長みずからが権限を行使するのではなく、権限の調整を行う、ということです。よって、誤りです。
5.執行機関としての長、委員会及び委員は、一定の場合、議会において議決すべき事件について専決処分を行うことができる。
5・・・誤り
普通地方公共団体の議会の権限に属する軽易な事項で、その議決により特に指定したものは、「普通地方公共団体の長」において、これを専決処分にすることができます(地方自治法180条1項)。
つまり、専決処分を行うことができるのは「長(知事や市町村長)」であって、「委員会、委員」は行うことはできません。よって、誤りです。

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平成23年度(2011年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 新しい人権 問33 民法・債権
問4 参政権 問34 民法:債権
問5 精神的自由 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 法改正により削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・経済
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 基礎知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 基礎知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成30年・2018|問26|保育所廃止条例の制定行為の判例

ある市立保育所の廃止に関する以下の会話を受けてCが論点を整理した次の記述のうち、法令および最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

A:友人が居住している市で、3つある市立保育所を廃止するための条例が制定されるらしいんだ。この場合、どうしたら、条例の制定を阻止できるのだろうか。

B:議会への働きかけも含めていろいろ考えられるけれども、その他、何らかの訴訟を提起することも考えられるね。

C:行政事件訴訟法と地方自治法を勉強するいい機会だから、すこし考えてみよう。

  1. 特定の市立保育所のみを廃止する条例の効力を停止するために、当該条例の効力の停止の申立てのみを、それに対する抗告訴訟の提起の前に行うことができる。
  2. 特定の市立保育所を廃止する条例の制定行為については、住民訴訟によってその差止めを求めることができる。
  3. 条例の制定行為は、普通地方公共団体の議会が行う立法行為に属するが、一般的に抗告訴訟の対象となる行政処分に当たると解されている。
  4. 特定の市立保育所の廃止条例の制定に関する議決を阻止するため、一定数の選挙人の署名により、地方自治法上の直接請求をすることができる。
  5. 処分の取消判決や執行停止の決定には第三者効が認められているため、市立保育所廃止条例の制定行為の適法性を抗告訴訟によって争うことには合理性がある。

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【答え】:5

【解説】

1.特定の市立保育所のみを廃止する条例の効力を停止するために、当該条例の効力の停止の申立てのみを、それに対する抗告訴訟の提起の前に行うことができる。
1・・・妥当ではない
処分の取消しの訴えの提起は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げません(行政事件訴訟法25条1項)。そのため、処分の取消訴訟をしたとしても、処分の執行は停止しません。。
なので、処分の取消しの訴えの提起をした後に、執行停止の申立てをすることができます(行政事件訴訟法25条2項)。
よって、「効力停止の申立てのみ、抗告訴訟(取消訴訟)の提起の前に行うことができる」という記述は妥当ではありません。
2.特定の市立保育所を廃止する条例の制定行為については、住民訴訟によってその差止めを求めることができる。
2・・・妥当ではない
まず、住民訴訟は、住民監査請求をしたにも関わらず、①その監査結果に不服あるときや、②監査委員が勧告したが、議会や長等がその勧告に従わない場合に、裁判所に訴えを提起するものです(地方自治法242条の2)。
そして、住民監査請求の対象は、「財務会計上の違法・不当な行為または不作為」です(地方自治法242条)。
したがって、住民訴訟の対象も「財務会計上の違法な行為または不作為」です。
よって、条例制定行為について、住民訴訟を行うことはできません。
そして、「特定の市立保育所を廃止する条例の制定行為」については、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるため、抗告訴訟によって差止めを求めること(差止め訴訟)は可能です。
ちなみに、下記判例の事案では「取消訴訟」を提起しています。
3.条例の制定行為は、普通地方公共団体の議会が行う立法行為に属するが、一般的に抗告訴訟の対象となる行政処分に当たると解されている。
3・・・妥当ではない
選択肢の2の判例の詳細解説にも記載されていますが、
条例の制定は、普通地方公共団体の議会が行う立法作用に属するから、一般的には、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるものでない、とされています。
したがって、妥当ではありません。
事案の内容は、条例の制定行為ではあるが、限られた特定の者らに対して、直接、当該保育所において保育を受けることを期待し得る上記の法的地位を奪う結果を生じさせるため、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるとしています(「最判平21.11.26:保育所廃止条例の制定行為」の解説参照)。
4.特定の市立保育所の廃止条例の制定に関する議決を阻止するため、一定数の選挙人の署名により、地方自治法上の直接請求をすることができる。
4・・・妥当ではない
普通地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有する者(有権者)は、その総数の50分の1以上の者の連署をもって、その代表者から、普通地方公共団体の長に対し、条例の制定又は改廃の請求をすることができます(地方自治法74条1項)。
上記直接請求に関する規定は、
「制定されていない条例を制定しろ!」と請求したり
「制定された条例を変更しろ!廃止しろ!」と請求したりすることです。
条例制定議決の阻止を請求することはできません。
5.処分の取消判決や執行停止の決定には第三者効が認められているため、市立保育所廃止条例の制定行為の適法性を抗告訴訟によって争うことには合理性がある。
5・・・妥当
選択肢1、3で解説した「最判平21.11.26:保育所廃止条例の制定行為」の解説にも記載していますが、
「処分の取消判決や執行停止の決定に第三者効(行政事件訴訟法32条)が認められている取消訴訟において市立保育所廃止条例の制定行為の適法性を争い得るとすることには合理性がある」
と判示しています。
したがって、本肢は妥当です。

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平成30年度(2018年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 法令用語 問32 民法:債権
問3 判決文の理解 問33 民法:債権
問4 学問の自由 問34 民法:親族
問5 生存権 問35 民法:親族
問6 参政権 問36 商法
問7 天皇・内閣 問37 会社法
問8 行政代執行法 問38 会社法
問9 公法と私法 問39 会社法
問10 無効と取消し 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・社会
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・その他
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・その他
問24 地方自治法 問54 基礎知識・社会
問25 行政法の判例 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法の判例 問56 基礎知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成26年・2014|問26|行政法

市町村に転入した者は市町村長に届出なければならないこととされているが、この転入の届出について、妥当な記述はどれか。争いがあれば、最高裁判所の判例による。

  1. 転入届については、届出書の提出により届出がなされたものと扱われ、市町村長は、居住の実態がないといった理由で、その受理を拒否することは許されない。
  2. 転入届を受理せずに住民票を作成しないことは、事実上の取扱いに過ぎず、行政処分には該当しないから、届出をした者は、これを処分取消訴訟により争うことはできない。
  3. 正当な理由なく転入届を所定の期間内にしなかった者に科される過料は、行政上の秩序罰であり、非訟事件手続法の手続により裁判所により科される。
  4. 転入により、地域の秩序が破壊され住民の安全が害されるような特別の事情がある場合には、市町村長は、緊急の措置として、転入届の受理を拒否することができる。
  5. 転入届に基づき作成された住民票が市町村長により職権で消除された場合、消除の効力を停止しても、消除された住民票が復活するわけではないから、消除をうけた者には、その効力の停止を申し立てる利益はない。

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【答え】:3

【解説】

1.転入届については、届出書の提出により届出がなされたものと扱われ、市町村長は、居住の実態がないといった理由で、その受理を拒否することは許されない。
1・・・誤り
判例によると、ホームレスXで、公園に住んでいた者が、当該公園を住所として転入届をしたにもかかわらず、受理を拒否した事例について
「Xが、都市公園法に違反して、都市公園内に不法に設置されたキャンプ用テントを起居の場所とし、公園施設である水道設備等を利用して日常生活を営んでいるなど原判示の事実関係の下においては、Xは、上記テントの所在地に住所を有するものとはいえない。」
として、受理を拒否することを許しています。
よって、本肢は誤りです。
2.転入届を受理せずに住民票を作成しないことは、事実上の取扱いに過ぎず、行政処分には該当しないから、届出をした者は、これを処分取消訴訟により争うことはできない。
2・・・誤り
転入届を受理しない行為(受理を拒否する処分)行政処分にあたると解されているので、取消訴訟を提起することは可能です。
よって、本肢は誤りです。
3.正当な理由なく転入届を所定の期間内にしなかった者に科される過料は、行政上の秩序罰であり、非訟事件手続法の手続により裁判所により科される。
3・・・正しい
転入届を所定の期間内に行わなかった者(届出義務違反者)に対する過料は「秩序罰」に該当します。
よって、非訟事件手続法の手続きにより、地方裁判所が科します。
したがって、本肢は正しいです。
4.転入により、地域の秩序が破壊され住民の安全が害されるような特別の事情がある場合には、市町村長は、緊急の措置として、転入届の受理を拒否することができる。
4・・・誤り
判例によると
「市町村長は,『住民基本台帳法の適用が除外される者(外国籍である一定の者)以外の者』から同法の規定による転入届があった場合に,その者に新たに当該市町村の区域内に住所を定めた事実があれば,法定の届出事項に係る事由以外の事由を理由として転入届を受理しないことはできず,住民票を作成しなければならない。 」
と判示しています。
つまり、転入してきて新たにその住民になった者が、転入届をしたら、「受理しない」ということはできず、受理をした上で、住民票を作成しなければならない、ということです。そして、「地域の秩序が破壊され住民の安全が害されるような特別の事情がある場合」であっても、適用除外とはならず、転入届を受理しなければならないので、本肢は誤りです。
「住民基本台帳法の適用が除外される者」は住民基本台帳法35条の45に規定されています。
5.転入届に基づき作成された住民票が市町村長により職権で消除された場合、消除の効力を停止しても、消除された住民票が復活するわけではないから、消除をうけた者には、その効力の停止を申し立てる利益はない。
5・・・誤り
執行停止の決定があると、削除された住民票が復活するため、本肢の「消除された住民票が復活するわけではない」という記述は誤りです。

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平成26年度(2014年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 幸福追求権など 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 投票価値の平等 問35 民法:親族
問6 内閣 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政調査 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 損失補償 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・経済
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・社会
問25 行政法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成26年・2014|問25|行政法

鉄道事業者Xが輸送の安全対策を疎かにして多数の鉄道事故を引き起こしたことから、Y(国土交通大臣)はXに対して鉄道事業法に基づく事業改善命令を行うとともに(法23条)、Xの安全統括管理者(鉄道事業者が、輸送安全に関する業務を統括管理させるため、事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にあり、かつ、鉄道事業に関する一定の実務の経験その他の国土交通省令で定める要件を備える者のうちから選任する者をいう)の解任を命じることとした(法18条の3第7項)※ 。この事例に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。なお、鉄道事業法には、行政手続きや訴訟に関する特段の定めはない。

  1. Yが事業改善命令を行うに際して、当該命令が許認可の取消しに相当するほどの重大な損害をXに与える場合には、行政手続法に基づき、Xに対して、聴聞を実施しなければならない。
  2. Yが事業改善命令を行うに際して、公益上、緊急にこれをする必要がある場合には、行政手続法に基づき、Xに対して、聴聞に換えて、より簡易な手続である弁明の機会の付与の手続をとらなければならない。
  3. Yが業務改善命令を行わない旨を決定した場合、それによって安全を脅かされる利用者は、これに対して取消訴訟を提起することができる。
  4. Yが安全統括管理者の解任命令を行った場合、Xの法的地位が侵害されるわけではないから、Xには当該命令に対する取消訴訟を提起する原告適格は認められない。
  5. Yが安全統括管理者の解任命令を行うに際しては、当該命令の許認可の取消しには当たらないものの、行政手続法に基づき、Xに対して、聴聞を実施しなければならない。

(注)※鉄道事業法18条の3第7項
国土交通大臣は、安全統括管理者又は運転管理者がその職務を怠つた場合であつて、当該安全統括管理者又は運転管理者が引き続きその職務を行うことが輸送の安全の確保に著しく支障を及ぼすおそれがあると認められるときは、鉄道事業者に対し、当該安全統括管理者又は運転管理者を解任すべきことを命ずることができる。

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【答え】:5

【解説】

1.Yが事業改善命令を行うに際して、当該命令が許認可の取消しに相当するほどの重大な損害をXに与える場合には、行政手続法に基づき、Xに対して、聴聞を実施しなければならない。
1・・・誤り
行政庁は、下記行為を行う場合、聴聞の手続を執らなければなりません(行政手続法13条1項)。
  1. 許認可等を取り消す不利益処分をしようとするとき。
  2. 1に規定するもののほか、名あて人の資格又は地位を直接にはく奪する不利益処分をしようとするとき。
  3. 名あて人が法人である場合におけるその役員の解任を命ずる不利益処分、名あて人の業務に従事する者の解任を命ずる不利益処分又は名あて人の会員である者の除名を命ずる不利益処分をしようとするとき。・・・選択肢5の内容
  4. 1から3までに掲げる場合以外の場合であって行政庁が相当と認めるとき。

本肢の「業務改善命令」は、たとえ、許認可の取消しに相当するほどの重大な損害をXに与える場合であっても、上記1~4のどれにも当てはまらないので、聴聞は実施する必要はありません。

2.Yが事業改善命令を行うに際して、公益上、緊急にこれをする必要がある場合には、行政手続法に基づき、Xに対して、聴聞に換えて、より簡易な手続である弁明の機会の付与の手続をとらなければならない。
2・・・誤り
公益上、緊急に不利益処分をする必要がある場合意見陳述のための手続(聴聞および弁明の機会の付与)を執る必要はありません行政手続法13条2項1号)。
したがって、「聴聞に換えて、より簡易な手続である弁明の機会の付与の手続をとらなければならない」という記述も誤りです。
3.Yが業務改善命令を行わない旨を決定した場合、それによって安全を脅かされる利用者は、これに対して取消訴訟を提起することができる。
3・・・誤り
取消訴訟は、処分又は裁決の取消しを求めるにつき「法律上の利益」を有する者に限り、提起することができます(行政事件訴訟法9条1項)。鉄道利用者は業務改善命令を行わない旨を決定についての取消訴訟において、原告適格を有しません。したがって、取消訴訟を行うことはできません。
この点は理解しないといけない部分なので、個別指導で解説します!
よって、本肢は誤り。
4.Yが安全統括管理者の解任命令を行った場合、Xの法的地位が侵害されるわけではないから、Xには当該命令に対する取消訴訟を提起する原告適格は認められない。
4・・・誤り
取消訴訟を提起するためには「法律上の利益」が必要です(行政事件訴訟法9条:原告適格)。そして、「鉄道事業者Xは、当該安全統括管理者又は運転管理者を解任すべきことを命じられた」ということは、Xは「法律上の利益」があります。
したがって、Xは取消訴訟を提起するための原告適格は認められます。
よって、本肢は誤りです。
5.Yが安全統括管理者の解任命令を行うに際しては、当該命令の許認可の取消しには当たらないものの、行政手続法に基づき、Xに対して、聴聞を実施しなければならない。
5・・・正しい
選択肢1の解説の「3」にあたるので、Yが安全統括管理者の解任命令を行うに際して、Xに対して、聴聞を実施しなければなりません。

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平成26年度(2014年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 幸福追求権など 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 投票価値の平等 問35 民法:親族
問6 内閣 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政調査 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 損失補償 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・経済
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・社会
問25 行政法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成26年・2014|問24|行政法

国家公務員と地方公務員の相違について、妥当な記述はどれか。

  1. 国家公務員については、国家公務員法に、原則として日本国籍を有する者のみを任用する旨の規定があるが、地方公務員については、地方公務員法に、類似の明文規定は設けられていない。
  2. 国家公務員による争議行為は、一般的に禁止されているが、地方公務員による争議行為は、地方公務員法上、単純な労務に従事する職員について、一定の範囲で認められている。
  3. 国家公務員の政治的活動に対する制限の範囲は、国家公務員法およびその委任を受けた人事院規則により定められるが、地方公務員については、地方公務員法および条例により定められる。
  4. 国家公務員の給与や勤務条件の基準は、法律によって定められることとされているが、地方公務員の給与や勤務条件の基準は、議会の同意を得て長によって定められることとされている。
  5. 国家公務員については、職員団体の結成のみが認められているが、地方公務員については、警察職員および消防職員を除き、労働組合法に基づく労働組合の結成が認められている。

>解答と解説はこちら


【答え】:3

【解説】

1.国家公務員については、国家公務員法に、原則として日本国籍を有する者のみを任用する旨の規定があるが、地方公務員については、地方公務員法に、類似の明文規定は設けられていない。
1・・・誤り
国家公務員法・地方公務員法のどちらにも、「日本国籍を有する者のみ公務員になれる」といった条文はありません
したがって、誤りです。
2.国家公務員による争議行為は、一般的に禁止されているが、地方公務員による争議行為は、地方公務員法上、単純な労務に従事する職員について、一定の範囲で認められている。
2・・・誤り
国家公務員法では、
「職員は、政府が代表する使用者としての公衆に対して同盟罷業、怠業その他の争議行為をなし、又は政府の活動能率を低下させる怠業的行為をしてはならない」とされています(国家公務員法98条2項)。
つまり、国家公務員には争議権(ストライキをする権利)が認められていません。一方、
地方公務員法でも、
「職員は、地方公共団体の機関が代表する使用者としての住民に対して同盟罷業、怠業その他の争議行為をし、又は地方公共団体の機関の活動能率を低下させる怠業的行為をしてはならない」とされています(地方公務員法37条1項)。
つまり、地方公務員にも争議権が認められていません
したがって、本肢は誤り。
3.国家公務員の政治的活動に対する制限の範囲は、国家公務員法およびその委任を受けた人事院規則により定められるが、地方公務員については、地方公務員法および条例により定められる。
3・・・正しい
国家法務員法では、
「職員は、政党又は政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法を以てするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除く外、人事院規則で定める政治的行為をしてはならない」とされています(国家公務員法102条1項)。
つまり、国家公務員の政治的活動に対する制限の範囲は、「国家公務員法と人事院規則」で定められています。一方、
地方公務員法では
「職員は、政党その他の政治的団体の結成に関与し、若しくはこれらの団体の役員となってはならず、又はこれらの団体の構成員となるように、若しくはならないように勧誘運動をしてはならない」とされています(地方公務員法36条1項)。
また、「職員は、条例で定める政治的行為をしてはならない」とされています(同条2項)。つまり、地方公務員の政治的活動に対する制限の範囲は、「地方公務員法と条例」で定められています
したがって、本肢は正しい。
4.国家公務員の給与や勤務条件の基準は、法律によって定められることとされているが、地方公務員の給与や勤務条件の基準は、議会の同意を得て長によって定められることとされている。
4・・・誤り
国家公務員法では
「職員の給与は、別に定める法律に基づいてなされ、これに基づかずには、いかなる金銭又は有価物も支給することはできない」とされています(国家公務員法63条)。
つまり、国家公務員の給与の基準は、「法律」で定められています。また、「職員の勤務条件その他職員の服務に関し必要な事項は、人事院規則でこれを定めることができる」と定められています(国家公務員法106条)。
つまり、国家公務員の勤務条件の基準は「人事院規則」で定められています
よって、誤りです。一方、
地方公務員法では
「職員の給与、勤務時間その他の勤務条件は、条例で定める」とされています(地方公務員法24条5項)。
つまり、地方公務員の給与や勤務条件の基準は「条例」で定められています
よって、「議会の同意を得て長によって定められる」という部分も誤りです。
5.国家公務員については、職員団体の結成のみが認められているが、地方公務員については、警察職員および消防職員を除き、労働組合法に基づく労働組合の結成が認められている。
5・・・誤り
国家公務員法では
「職員は、職員団体を結成し、若しくは結成せず、又はこれに加入し、若しくは加入しないことができる」とされています(国家公務員法108条の2第の2項)。
ただし、警察職員及び海上保安庁又は刑事施設において勤務する職員は、職員の勤務条件の維持改善を図ることを目的とし、かつ、当局と交渉する団体を結成し、又はこれに加入してはなりません(同条5項)。一方、
地方公務員法では
「職員は、職員団体を結成し、若しくは結成せず、又はこれに加入し、若しくは加入しないことができる」とされています(地方公務員法52条3項)。
ただし、警察職員及び消防職員は、職員の勤務条件の維持改善を図ることを目的とし、かつ、地方公共団体の当局と交渉する団体を結成し、又はこれに加入してはなりません(同条5項)。
本肢は「労働組合法に基づく労働組合の結成が認められている」が誤りです。
労働組合法の労働組合の結成が認められている旨の規定はありません。

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平成26年度(2014年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 幸福追求権など 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 投票価値の平等 問35 民法:親族
問6 内閣 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政調査 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 損失補償 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・経済
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・社会
問25 行政法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成26年・2014|問23|地方自治法

条例に関する地方自治法の規定について、次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 選挙権を有する者からの一定の者の連署による条例の制定又は改廃の請求がなされた場合、適法な請求を受理した長は、これを議会に付議しなければならず、付議を拒否することは認められていない。
  2. 選挙権を有する者は、一定の者の連署によって、条例の制定及び改廃の請求をすることができるが、その対象となる条例の内容については、明文の制約はない。
  3. 地方公共団体の条例制定権限は、当該地方公共団体の自治事務に関する事項に限られており、法定受託事務に関する事項については、及ばない。
  4. 条例の議決は、議会の権限であるから、条例の公布も、議会の議長の権限とされているが、議長から送付を受けた長が公報などにより告示する。
  5. 条例の制定は、議会に固有の権限であるから、条例案を議会に提出できるのは議会の議員のみであり、長による提出は認められていない。

>解答と解説はこちら


【答え】:1

【解説】

1.選挙権を有する者からの一定の者の連署による条例の制定又は改廃の請求がなされた場合、適法な請求を受理した長は、これを議会に付議しなければならず、付議を拒否することは認められていない。
1・・・正しい
普通地方公共団体の長は、「条例の制定又は改廃の請求」を受理した日から20日以内に議会を招集し、意見を附けてこれを議会に付議し、その結果を同項の代表者に通知するとともに、これを公表しなければならない(地方自治法74条3項)。
よって、本肢は正しいです。
2.選挙権を有する者は、一定の者の連署によって、条例の制定及び改廃の請求をすることができるが、その対象となる条例の内容については、明文の制約はない。
2・・・誤り
選挙権を有する者は、その総数の50分の1以上の者の連署をもって、その代表者から、普通地方公共団体の長に対し、条例(地方税の賦課徴収並びに分担金、使用料及び手数料の徴収に関するものを除く。)の制定又は改廃の請求をすることができます(地方自治法74条)。つまり、「地方税の賦課徴収並びに分担金、使用料及び手数料の徴収」に関する条例の制定・改廃の請求はできない、という風に、対象となる条例の内容について明文により制約しています
3.地方公共団体の条例制定権限は、当該地方公共団体の自治事務に関する事項に限られており、法定受託事務に関する事項については、及ばない。
3・・・誤り
普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて「自治事務および法定受託事務(どちらも)」に関し、条例を制定することができます地方自治法14条)。
4.条例の議決は、議会の権限であるから、条例の公布も、議会の議長の権限とされているが、議長から送付を受けた長が公報などにより告示する。
4・・・誤り
普通地方公共団体の議会の議長は、条例の制定又は改廃の議決があったときは、その日から3日以内にこれを当該普通地方公共団体の長に送付しなければなりません(地方自治法16条1項)。
そして、上記送付を受けた場合、普通地方公共団体のは、その日から20日以内にこれを公布しなければなりません(地方自治法16条2項)。
したがって、条例の公布は、「普通地方公共団体の長」の権限なので、本肢は誤りです。
5.条例の制定は、議会に固有の権限であるから、条例案を議会に提出できるのは議会の議員のみであり、長による提出は認められていない。
5・・・誤り
普通地方公共団体の長は、下記事務の権限を有します(地方自治法149条)。
  1. 普通地方公共団体の議会の議決を経べき事件につきその議案を提出すること
  2. 予算を調製し、及びこれを執行すること。
  3. 地方税を賦課徴収し、分担金、使用料、加入金又は手数料を徴収し、及び過料を科すること。
  4. 決算を普通地方公共団体の議会の認定に付すること。
  5. 会計を監督すること。
  6. 財産を取得し、管理し、及び処分すること。
  7. 公の施設を設置し、管理し、及び廃止すること。
  8. 証書及び公文書類を保管すること。
  9. 前各号に定めるものを除く外、当該普通地方公共団体の事務を執行すること。

よって、本肢は誤りです。

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平成26年度(2014年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 幸福追求権など 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 投票価値の平等 問35 民法:親族
問6 内閣 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政調査 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 損失補償 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・経済
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・社会
問25 行政法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成26年・2014|問21|地方自治法

普通地方公共団体の長についての地方自治法の規定に関する次のア~オの記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

ア 長は、その管理に属する行政庁の処分が法令、条例または規則に違反すると認めるときは、その処分を取り消し、または停止することができる。

イ 当該普通地方公共団体の議会が長の不信任の議決をした場合において、長は議会を解散することができ、その解散後初めて招集された議会においては、再び不信任の議決を行うことはできない。

ウ 当該普通地方公共団体の議会の議決がその権限を超えまたは法令もしくは会議規則に違反すると認めるときは、長は、議決の日から所定の期間内に、議会を被告として、当該議決の無効確認の請求を裁判所に行うことができる。

エ 長は、当該普通地方公共団体に対し請負をする者およびその支配人になることができないが、地方自治法の定める要件をみたした場合で、かつ議会の同意を得た場合にはその限りではない。

オ 会計管理者は、当該普通地方公共団体の長の補助機関である職員のうちから長が命ずるが、長と一定の親族関係にある者は、会計管理者となることができず、また長と会計管理者の間にこれらの関係が生じたときは、会計管理者は、その職を失う。

  1. ア・イ
  2. ア・オ
  3. イ・エ
  4. ウ・オ
  5. エ・オ

>解答と解説はこちら


【答え】:2

【解説】

ア 長は、その管理に属する行政庁の処分が法令、条例または規則に違反すると認めるときは、その処分を取り消し、または停止することができる。
ア・・・正しい
普通地方公共団体の長は、その管理に属する行政庁の処分が法令、条例又は規則に違反すると認めるときは、その処分を取り消し、又は停止することができます(地方自治法154条2項)。
よって本肢は正しいです。
イ 当該普通地方公共団体の議会が長の不信任の議決をした場合において、長は議会を解散することができ、その解散後初めて招集された議会においては、再び不信任の議決を行うことはできない。
イ・・・誤り
議会において当該普通地方公共団体の長の不信任の議決をした場合において、①不信任決議の通知を受けた日から10日以内に議会を解散しないとき、又は
②その解散後初めて招集された議会において再び不信任の議決があり、議長から当該普通地方公共団体の長に対しその旨の通知があったときは、普通地方公共団体の長は、上記①10日が経過した日又は②議長から通知があった日において失職します(地方自治法178条2項)
したがって、②の通り、再び不信任の議決を行うことができるので、本肢は誤りです。
ウ 当該普通地方公共団体の議会の議決がその権限を超えまたは法令もしくは会議規則に違反すると認めるときは、長は、議決の日から所定の期間内に、議会を被告として、当該議決の無効確認の請求を裁判所に行うことができる。
ウ・・・誤り
普通地方公共団体の議会の議決又は選挙がその権限を超え又は法令若しくは会議規則に違反すると認めるときは、当該普通地方公共団体の長は、①理由を示してこれを再議に付し又は②再選挙を行わせなければなりません地方自治法176条4項)。
したがって、本肢の「議会を被告として、当該議決の無効確認の請求を裁判所に行うことができる」という記述は誤りです。
正しくは、「長は、理由を示して再議させるか、再選挙を行う義務がある」となります。
エ 長は、当該普通地方公共団体に対し請負をする者およびその支配人になることができないが、地方自治法の定める要件をみたした場合で、かつ議会の同意を得た場合にはその限りではない。
エ・・・誤り
普通地方公共団体の長は、当該普通地方公共団体に対し「請負をする者及びその支配人又は主として同一の行為をする法人(当該普通地方公共団体が出資している法人で政令で定めるものを除く)」の無限責任社員、取締役、執行役若しくは監査役若しくはこれらに準ずべき者、支配人及び清算人になることができません地方自治法142条)。
上記について例外はないので「地方自治法の定める要件をみたした場合で、かつ議会の同意を得た場合にはその限りではない」という記述が誤りです。
オ 会計管理者は、当該普通地方公共団体の長の補助機関である職員のうちから長が命ずるが、長と一定の親族関係にある者は、会計管理者となることができず、また長と会計管理者の間にこれらの関係が生じたときは、会計管理者は、その職を失う。
オ・・・正しい
会計管理者は、普通地方公共団体の長の補助機関である職員のうちから、普通地方公共団体の長が命じます地方自治法168条2項)。
そして、普通地方公共団体の長、副知事若しくは副市町村長又は監査委員と親子、夫婦又は兄弟姉妹の関係にある者は、会計管理者となることができません。もし、会計管理者が、上記の関係にある者になった場合、会計管理者の職を失います地方自治法169条)。
したがって、本肢の内容は正しいです。
「会計管理者」の詳細解説はこちら>>

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平成26年度(2014年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 幸福追求権など 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 投票価値の平等 問35 民法:親族
問6 内閣 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政調査 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 損失補償 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・経済
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・社会
問25 行政法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成26年・2014|問16|行政事件訴訟法

行政事件訴訟法による不作為の違法確認の訴えに関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 不作為の違法確認の訴えは、行政庁が、法令に基づく申請に対して、相当の期間内に申請を認める処分又は審査請求を認容する裁決をすべきであるにかかわらず、これをしないことについての違法の確認を求める訴訟をいう。
  2. 不作為の違法確認の訴えが提起できる場合においては、申請を認める処分を求める申請型義務付け訴訟を単独で提起することもでき、その際には、不作為の違法確認の訴えを併合提起する必要はない。
  3. 不作為の違法確認の訴えの提起があった場合において、当該申請に対して何らかの処分がなされないことによって生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、仮の義務付けの規定の準用により、仮の義務付けを申し立てることができる。
  4. 不作為の違法確認の訴えは、公法上の当事者訴訟の一類型であるから、法令以外の行政内部の要綱等に基づく申請により、行政機関が申請者に対して何らかの利益を付与するか否かを決定することとしているものについても、その対象となりうる。
  5. 不作為の違法確認の訴えについては、取消訴訟について規定されているような出訴期間の定めは、無効等確認の訴えや処分の差止めの訴えと同様、規定されていない。

>解答と解説はこちら


【答え】:5

【解説】

1.不作為の違法確認の訴えは、行政庁が、法令に基づく申請に対して、相当の期間内に申請を認める処分又は審査請求を認容する裁決をすべきであるにかかわらず、これをしないことについての違法の確認を求める訴訟をいう。
1・・・誤り
「不作為の違法確認の訴え」とは、行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らかの処分又は裁決をすべきであるにかかわらず、これをしないことについての違法の確認を求める訴訟をいいます(行政事件訴訟法3条5項)。
つまり、申請をしたにも関わらず「何にも処分しないこと」を言います。
「処分又は審査請求を認容する裁決をすべきであるにかかわらず、これをしないこと」ではありません。
これだと、拒否処分をした場合でも不作為の違法確認訴訟が提起できることになります。
それはできません。
なぜなら、処分は行っているから、不作為には当たらないからです。
2.不作為の違法確認の訴えが提起できる場合においては、申請を認める処分を求める申請型義務付け訴訟を単独で提起することもでき、その際には、不作為の違法確認の訴えを併合提起する必要はない。
2・・・誤り
「法令に基づく申請又は審査請求に対し相当の期間内に何らの処分又は裁決がされない」場合、「不作為の違法確認訴訟」を提起できます。
そして、上記において、「義務付けの訴え」を提起するときは、「不作為の違法確認訴訟」をその義務付けの訴えに併合して提起しなければなりません行政事件訴訟法37条の3の3項1号)
したがって、「不作為の違法確認の訴えを併合提起する必要はない」は誤りです。

この点は基本知識から理解すべき内容なので、個別指導で解説します!

3.不作為の違法確認の訴えの提起があった場合において、当該申請に対して何らかの処分がなされないことによって生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、仮の義務付けの規定の準用により、仮の義務付けを申し立てることができる。
3・・・誤り
義務付けの訴えの提起があった場合において、①その義務付けの訴えに係る処分又は裁決がされないことにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、②本案について理由があるとみえるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもって、仮に行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずること(仮の義務付け)ができます(行政事件訴訟法37条の5の1項)。
つまり、「義務付けの訴え」を提起した後でないと、「仮の義務付け」はできません
本肢は、「不作為の違法確認訴訟」しか提起していていないので「仮の義務付け」を行うことはできません。
4.不作為の違法確認の訴えは、公法上の当事者訴訟の一類型であるから、法令以外の行政内部の要綱等に基づく申請により、行政機関が申請者に対して何らかの利益を付与するか否かを決定することとしているものについても、その対象となりうる。
4・・・誤り
当事者訴訟」とは、
①「当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決」に関する訴訟で、法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの(形式的当事者訴訟)及び
②公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟(実質的当事者訴訟)をいいます(行政事件訴訟法4条)。
不作為の違法確認訴訟」は、当事者訴訟の一類型ではなく、抗告訴訟の一類型です。
よって本肢は誤りです。
5.不作為の違法確認の訴えについては、取消訴訟について規定されているような出訴期間の定めは、無効等確認の訴えや処分の差止めの訴えと同様、規定されていない。
5・・・正しい
不作為の違法確認訴訟は、不作為状態が継続する間はずっと、訴えを提起することができます。
したがって、取消訴訟の出訴期間に関する規定(行政事件訴訟法第14条)は、不作為の違法確認の訴えについて準用されません(行政事件訴訟法第38条)。
また、無効確認の訴えや処分の差止めの訴えについても、準用されていません。

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平成26年度(2014年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 幸福追求権など 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 投票価値の平等 問35 民法:親族
問6 内閣 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政調査 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 損失補償 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・経済
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・社会
問25 行政法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成26年・2014|問17|行政事件訴訟法

原告適格に関する最高裁判所の判決についての次のア~オの記述のうち、正しいものはいくつあるか。

ア 公衆浴場法の適正配置規定は、許可を受けた業者を濫立による経営の不合理化から守ろうとする意図まで有するものとはいえず、適正な許可制度の運用によって保護せらるべき業者の営業上の利益は単なる事実上の反射的利益にとどまるから、既存業者には、他業者への営業許可に対する取消訴訟の原告適格は認められない。

イ 森林法の保安林指定処分は、一般的公益の保護を目的とする処分であるから、保安林の指定が違法に解除され、それによって自己の利益を侵害された者であっても、解除処分に対する取消しの訴えを提起する原告適格は認められない。

ウ 定期航空運送事業に対する規制に関する法体系は、飛行場周辺の環境上の利益を一般的公益として保護しようとするものにとどまるものであり、運送事業免許に係る路線を航行する航空機の騒音によって社会通念上著しい障害を受けることになる者であっても、免許取消訴訟を提起する原告適格は認められない。

エ 自転車競技法に基づく場外車券発売施設の設置許可の処分要件として定められている位置基準は、用途の異なる建物の混在を防ぎ都市環境の秩序有る整備を図るという一般的公益を保護するにすぎないから、当該場外施設の設置・運営に伴い著しい業務上の支障が生ずるおそれがあると位置的に認められる区域に医療施設等を開設する者であっても、位置基準を根拠として当該設置許可の取消しを求める原告適格は認められない。

オ (旧)地方鉄道法に定める料金改定の認可処分に関する規定の趣旨は、もっぱら、公共の利益を確保することにあるのであって、当該地方鉄道の利用者の個別的な権利利益を保護することにあるのではないから、通勤定期券を利用して当該鉄道で通勤する者であっても、当該認可処分によって自己の権利利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者に当たるということはできず、認可処分の取消しを求める原告適格は認められない。

  1. 一つ
  2. 二つ
  3. 三つ
  4. 四つ
  5. 五つ

>解答と解説はこちら


【答え】:1

【解説】

ア 公衆浴場法の適正配置規定は、許可を受けた業者を濫立による経営の不合理化から守ろうとする意図まで有するものとはいえず、適正な許可制度の運用によって保護せらるべき業者の営業上の利益は単なる事実上の反射的利益にとどまるから、既存業者には、他業者への営業許可に対する取消訴訟の原告適格は認められない。
ア・・・誤り
判例によると、
公衆浴場法の適正配置規定について、適正な許可制度の運用によって保護されるべき業者の営業上の利益は、単なる事実上の反射的利益というにとどまらず公衆浴場法によって保護される法的利益と解するとして、既存業者には、他業者への営業許可に対する取消訴訟の原告適格は認められています
よって、本肢の「業者の営業上の利益は単なる事実上の反射的利益にとどまるから原告適格は認められない」という記述は誤りです。
イ 森林法の保安林指定処分は、一般的公益の保護を目的とする処分であるから、保安林の指定が違法に解除され、それによって自己の利益を侵害された者であっても、解除処分に対する取消しの訴えを提起する原告適格は認められない。
イ・・・誤り
判例によると、
「森林法は、森林の存続によって不特定多数者の受ける生活利益のうち一定範囲のものを公益と並んで保護すべき個人の個別的利益としてとらえ、かかる利益の帰属者に対し保安林の指定につき「直接の利害関係を有する者」としてその利益主張をすることができる地位を法律上付与しているものと解するのが相当である。
よって、「直接の利害関係を有する者」は、保安林の指定が違法に解除され、それによって自己の利益を害された場合には、右解除処分に対する取消しの訴えを提起する原告適格を有する者ということができる」
と判示しています。
よって、本肢は、「保安林の指定が違法に解除され、それによって自己の利益を侵害された者であっても、原告適格は認められない。」という記述は誤りです。
ウ 定期航空運送事業に対する規制に関する法体系は、飛行場周辺の環境上の利益を一般的公益として保護しようとするものにとどまるものであり、運送事業免許に係る路線を航行する航空機の騒音によって社会通念上著しい障害を受けることになる者であっても、免許取消訴訟を提起する原告適格は認められない。
ウ・・・誤り
判例によると
「航空法は、単に飛行場周辺の環境上の利益を一般的公益として保護しようとするにとどまらず、飛行場周辺に居住する者が航空機の騒音によつて著しい障害を受けないという利益をこれら個々人の個別的利益としても保護すべきとする趣旨を含む。
よって、航空機の騒音によって社会通念上著しい障害を受けることとなる者は、当該免許の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として、その取消訴訟における原告適格を有する
と判示しています。
したがって、「運送事業免許に係る路線を航行する航空機の騒音によって社会通念上著しい障害を受けることになる者であっても、免許取消訴訟を提起する原告適格は認められない」という記述は誤りです。
エ 自転車競技法に基づく場外車券発売施設の設置許可の処分要件として定められている位置基準は、用途の異なる建物の混在を防ぎ都市環境の秩序有る整備を図るという一般的公益を保護するにすぎないから、当該場外施設の設置・運営に伴い著しい業務上の支障が生ずるおそれがあると位置的に認められる区域に医療施設等を開設する者であっても、位置基準を根拠として当該設置許可の取消しを求める原告適格は認められない。
エ・・・誤り
判例によると
「位置基準は、一般的公益を保護する趣旨に加えて、上記のような業務上の支障が具体的に生ずるおそれのある医療施設等の開設者において、健全で静穏な環境の下で円滑に業務を行うことのできる利益を、個々の開設者の個別的利益として保護する趣旨をも含む規定であるというべきである。
したがって、当該場外施設の設置、運営に伴い著しい業務上の支障が生ずるおそれがあると位置的に認められる区域に医療施設等を開設する者は、位置基準を根拠として当該場外施設の設置許可の取消しを求める原告適格を有する
と判示しています。
よって、本肢の「医療施設等を開設する者であっても、原告適格は認められない」という記述は誤りです。

本問は理解しづらいので、個別指導で解説します。

オ (旧)地方鉄道法に定める料金改定の認可処分に関する規定の趣旨は、もっぱら、公共の利益を確保することにあるのであって、当該地方鉄道の利用者の個別的な権利利益を保護することにあるのではないから、通勤定期券を利用して当該鉄道で通勤する者であっても、当該認可処分によって自己の権利利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者に当たるということはできず、認可処分の取消しを求める原告適格は認められない。
オ・・・正しい
判例によると
「(旧)地方鉄道法に定める料金改定の認可処分に関する規定の趣旨は、もっぱら公共の利益を確保することにあるのであって、当該地方鉄道の利用者の個別的な権利利益を保護することにあるのではなく、他に同条が当該地方鉄道の利用者の個別的な権利利益を保護することを目的として認可権の行使に制約を課していると解すべき根拠はない
そのため、通勤定期券を利用して当該鉄道で通勤する者は、本件特別急行料金の改定(変更)の認可処分によって自己の権利利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者に当たるということができず、右認可処分の取消しを求める原告適格を有しない
と判示しています。
つまり、通勤定期券を利用して当該鉄道で通勤する者は、取消訴訟の原告適格ではない、ということです。
よって、本肢は正しいです。

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平成26年度(2014年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 幸福追求権など 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 投票価値の平等 問35 民法:親族
問6 内閣 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政調査 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 損失補償 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・経済
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・社会
問25 行政法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略