商法・会社法

名板貸

名板貸とは、ある商人(名板貸人)が、他の商人(名板借人)に自分の商号を使って営業または事業を行うことを許諾することを言います。

読み方は下記の通りです。

名板貸人:ないたがしにん
名板借人:ないたがりにん


名板貸の成立要件

名板貸が成立するには、下記3つを満たす必要があります。

  1. 名板借人が名板貸人の商号を使用すること(外観の存在)。
  2. 名板貸人が名板借人に商号の使用を許諾したこと(帰責事由)
  3. 第三者の誤信(相手方の信頼)

例えば、名板貸Aが、名板借人Bに、Aの商号使用を許諾をしたとします。
そして、BがAの商号を使って、Cと契約しました。
Cが、BをAと勘違いして契約した場合、名板貸が成立するこということです。

より細かく要件を見ていきます。

1について、名板貸人と名板借人は営業の同種性が必要です。(最判昭43.6.13)
つまり、名板貸人Aが飲食業を行っていて、名板借人が運送業を行っていては要件を満たさないということです。

2について、商号使用の許諾は、黙示の許諾であっても構いません。
客観的に見て許諾したように見える場合も許諾したことになる、ということです。

3について、取引相手が、善意無過失で、名板貸人と契約したと勘違いしたことが必要です。

では、名板貸が成立するとどうなるか?

名板貸人の責任

まず、名板借人Bと相手方Cとで契約した場合、名板借人Bと相手方Cとの間で契約が成立したことになります。

つまり、名板借人Bは取引における債務を負います。

また、名板貸人は、自己の商号を使って名板借人が行った「取引による債務」について、名板借人と連帯して責任を負います

つまり、名板貸人Aも名板借人Bも取引における債務を負うということです。

名板貸人の責任の範囲

取引による債務の範囲ですが、下記も責任の範囲内として責任を負います。

  • 名板借人の債務不履行による損害賠償債務
  • 契約解除による原状回復義務
  • 手付金返還義務

一方、名板借人Bの不法行為による損害賠償債務は、原則、名板貸人の責任の範囲外で、責任を負わなくてもよいです。
ただし、名板借人Bの詐欺的行為の場合は、名板貸人の責任の範囲内として責任を負います。

<<商号(商号の選定、登記、譲渡) | 支配人・表見支配人>>

商号(商号の選定、登記、譲渡)

商号とは、商人が営業上、自己を表示するために用いる名称を言います。

会社の場合は、法人名(会社名)が商号で、
個人の場合は、法人名がありません。そのため、営業上用いる名前が商号です。

イメージとしては、個人事業主(個人商人)が、その事業を行うために使う名称で、例えば、あなたが、蕎麦屋を開こうと思い、会社にせずに個人事業をして行おうとしました。その際に、商号として「そば処やすらぎ」といった名称を付けたりします。これを登記すれば「商号」となり、登記をせずに、「屋号」として使うこともできます。

商号選定の自由の原則

商法第11条(商号の選定)
商人は、その氏、氏名その他の名称をもってその商号とすることができる。

原則、上記の通り、商人は、自分の名前を商号とすることができます。また、その他自由に商号を選ぶことができます。

また、個人商人の場合は、複数の営業を営むことができ、複数の商号を使用することができます。

ただし、何でもよいというわけではありません。一定のルールがあります。

例えば下記のような制限(例外)があります。

  • 会社は、株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社の種類に従い、それぞれその商号中に株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社という文字を用いなければならない(会社法6条2項)
  • 会社は、その商号中に、他の種類の会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。(会社法6条3項)
  • 個人商人は、商号中に会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない(会社法7条
  • 不正の目的をもって、他の商人または他の会社と誤認させる商号を使用してはならない(商法12条会社法8条
  • 〇〇銀行、〇〇信用金庫いった商号を付けることはできない。

商号の登記

個人商人の場合、その商号を登記してもよいし、しなくてもよい(任意)(商法11条2項)。

商号の譲渡

商法第15条(商号の譲渡)
商人の商号は、営業とともにする場合又は営業を廃止する場合に限り、譲渡することができる。
前項の規定による商号の譲渡は、登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

商号は、①営業とともに譲渡する場合、または、②営業を廃止する場合いずれかの場合に限って譲渡できます

つまり、商号だけ譲渡して、営業(事業)は譲渡しない、ということはできません。

また、登記をしなければ、第三者に対抗することはできません第三者の善意・悪意は関係ないです。

<<「商法の概要」と「商人・商行為」 | 名板貸>>

「商法の概要」と「商人・商行為」

商法とは?

ここから商法を学んでいくのですが、商法とはいったいどのような法律なのか?これは、商法の1条の趣旨を見ると分かります。

商法第1条
商人の営業、商行為その他商事については、他の法律に特別の定めがあるものを除くほか、この法律の定めるところによる。
2 商事に関し、この法律に定めがない事項については商慣習に従い、商慣習がないときは、民法の定めるところによる。

上記1条から、商法は「商人の営業、商行為その他商事」について定めた法律であることが分かります。

そして、1項で重要な内容は、「商人」と「商行為」です。
「商人」については、このページで解説し、
「商行為」については、次のページで解説します。

「商事」とは、商業・商売に関する事といたイメージで大丈夫です。

商法と民法の関係

2項では、商事については、まず初めに、商法を適用し、商法に定められていない場合、商慣習に従い、商慣習もない場合に、民法を適用するということになっています。

つまり、優先順位が高い方から、

商法>商慣習>民法

ということになります。

商法が民法の特別法であることを考えれば、必然と、商法が優先して適用されることは分かるでしょう。

商法の適用

  1. 当事者双方にとって商行為である行為(双方的商行為
  2. 当事者の一方にとってだけ商行為である行為(一方的商行為

上記1、2どちらであっても商法が適用されます。

つまり、「消費者―商人」との契約でも商法が適用されるわけです。

商人とは?

商法第4条
この法律において「商人」とは、自己の名をもって商行為をすることをとする者をいう。

上記の通り、「商人」とは、自己の名をもって商行為を業として行う者ですが、「自己の名をもって」および「業」とはどういうことか?

「自己の名をもって」とは?

この点について、判例では、下記のように言っています。

自己の名をもってとは、自己が法律上の商行為から生ずる権利義務の帰属主体になることを言います。(大判大8.5.19)

例えば、Aが、ビールメーカーBからビールを1ケース購入する契約をしたとします。
この場合、
「法律上の商行為」=「ビール1ケースを購入する契約」
「権利義務」=「ビール1ケースを引き渡してもらえる権利」「代金を支払う義務」
「帰属主体」=A(Aが上記権利義務を負う)

つまり、Aは自己の名をもって、商行為を行ったということです。

また、その者自身が現実に営業活動をする必要はなく、他人に実行させることもできます。例えば、Aの従業員が行っても、Aは商人として、商行為をしていることになるわけです。

業とは?

とは、営利目的で、同種の業務を、反復的かつ継続的に行うことを言います。

例えば、上記Aの事例でいうと、「Aが、繰り返しビールの仕入れを行うこと」は業に当たるということです。

単に、自分が飲むためにビール1ケースを買ったとしても、それは業ではありません。

擬制商人とは?

擬制商人とは、上記4条2項に規定されている内容です。

店舗その他これに類似する設備によって、
「①物品を販売することを業とする者」又は「②鉱業を営む者」は、
商行為を行うことを業としない者であっても、商人とみなされます。

店舗その他これに類似する設備

店舗その他これに類似する設備とは、例えば、自分の畑で採れた野菜を、その畑の端でテントを張って販売する場合の「テント張りの販売店」がこれに当たります。

商人資格の取得

自然人(ヒト)の場合、特定の営業を開始する目的で準備行為をした者は、その行為により営業を開始する意思を実現したものであり、これにより商人である資格を取得します。(最判昭33.6.19)

例えば、不動産会社を始めようと思って、営業車を購入することは、準備行為に当たります。

そして、営業の準備行為は、相手方だけでなく、それ以外の者にも、客観的に開業準備行為を認められるものであることが必要です。(最判昭47.2.24)

未成年者、成年被後見人が商人として営業を行うときは、登記が必要です。

商人資格の喪失

自然人は、営業目的行為の終了時でなく、残務処理の終了時に商人資格を失います

小商人

小商人とは、商人のうち、営業の用に供する財産につき最終の営業年度に係る貸借対照表(最終の営業年度がない場合にあっては、開業時における貸借対照表)に計上した額が、50万円を超えないものをいいます。

商行為

商行為には、大きく分けて①絶対的商行為、②営業的商行為、③附属的商行為の3つに分けることができます。

先にポイントだけまとめると下表のとおりです。

絶対的商行為 営業としてしたか否かを問わず、商行為となる
商人ではない者が、1回だけ行った場合でも、商行為となる
営業的商行為 営利目的かつ反復継続して行うことで初めて商行為となる
附属的商行為 前提として「商人の行為」である
営業開始前であっても、商人資格を取得したとされれば、開業準備行為も商行為となる

絶対的商行為

絶対的商行為とは、行為自体の客観的性質によって商行為とされる行為を言います。

行為自体に営利性が強いので、営業としてしたか否かを問わず、商行為とされます。

この絶対的商行為は、商人ではない者が、1回だけ行った場合でも、商行為として商法が適用されます。

例えば、下記のようなものが絶対的商行為に当たります。

商法第501条(絶対的商行為とは?)
次に掲げる行為は、商行為とする。

  1. 利益を得て譲渡する意思をもってする動産、不動産若しくは有価証券の有償取得又はその取得したものの譲渡を目的とする行為
  2. 他人から取得する動産又は有価証券の供給契約及びその履行のためにする有償取得を目的とする行為
  3. 取引所においてする取引
  4. 手形その他の商業証券に関する行為

1については、高く売る目的で、安く買う行為や、安く買ったものを高く売る行為です。

2については、先に高く売っておいて(売る契約をしておく)、その後、安く買う行為

3については、証券取引所や商品取引所での、有価証券や商品の取引(トレーダーと呼ばれる人)

4については、手形を振出したり、裏書をする行為(製造業者がよく行う行為ですが、分からなくても大丈夫です。)

営業的商行為

営業的商行為は下記のような行為ですが、営利目的反復継続して行うことで初めて商行為となります。

下記内容をさらっと読めばある程度は分かると思います。細かい理解までは不要です。

商法第502条(営業的商行為とは?)
次に掲げる行為は、営業としてするときは、商行為とする。ただし、専ら賃金を得る目的で物を製造し、又は労務に従事する者の行為は、この限りでない。

  1. 賃貸する意思をもってする動産若しくは不動産の有償取得若しくは賃借又はその取得し若しくは賃借したものの賃貸を目的とする行為
  2. 他人のためにする製造又は加工に関する行為
  3. 電気又はガスの供給に関する行為
  4. 運送に関する行為
  5. 作業又は労務の請負
  6. 出版、印刷又は撮影に関する行為
  7. 客の来集を目的とする場屋における取引
  8. 両替その他の銀行取引
  9. 保険
  10. 寄託の引受け
  11. 仲立ち又は取次ぎに関する行為
  12. 商行為の代理の引受け
  13. 信託の引受け

附属的商行為

附属的商行為とは、商人がその営業のためにする補助的行為を言います。

前提として、「商人の行為」であることが必要ですが、営業開始前であっても、商人資格を取得したとされれば、開業準備行為も、商人の最初の附属的商行為となります。

例えば、不動産会社を経営するために、事務所(ビルの1室)を借りる行為も附属的行為です。

<<会社法のテキスト一覧 | 商号(商号の選定、登記、譲渡)>>

平成21年・2009|問40|会社法・取締役

取締役の選任および解任に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
  1. すべての株式会社は、定款において、取締役の資格として当該株式会社の株主である旨を定めることができる。
  2. 取締役の辞任により員数が欠けた場合、当該取締役は、直ちに取締役としての地位を失うのではなく、新たな取締役が就任するまでの間は、引き続き取締役としての権利義務を有する。
  3. 解任された取締役であっても、正当な事由がなく解任された場合には、新たな取締役が就任するまでの間は、当該取締役は引き続き取締役としての権利義務を有する。
  4. 利害関係人の申立により裁判所が一時取締役を選任した場合、当該一時取締役が株式会社の常務に属しない行為をするには、裁判所の許可が必要である。
  5. 取締役が法令もしくは定款に違反する行為をし、当該行為によって株式会社に著しい損害が生じるおそれがある場合には、株主は直ちに当該取締役の解任の訴えを提起することができる。
>解答と解説はこちら
【答え】:2 【解説】
1.すべての株式会社は、定款において、取締役の資格として当該株式会社の株主である旨を定めることができる。
1・・・誤り 取締役になれる人の要件として「株主でなければならない旨」を定款で定めることができません。ただし、非公開会社においては、「株主のみ取締役になれる旨」を定款に定めることができます会社法331条2項)。よって、「すべての株式会社」が誤りです。
2.取締役の辞任により員数が欠けた場合、当該取締役は、直ちに取締役としての地位を失うのではなく、新たな取締役が就任するまでの間は、引き続き取締役としての権利義務を有する。
2・・・正しい 役員が欠けた場合、「①任期の満了」又は「②辞任」により退任した役員は、新たに選任された役員が就任するまで、なお役員としての権利義務を有します(会社法346条1項)。よって、本肢は正しいです。 辞任したからといって、いきなり「取締役でなくなる」わけではありません
3.解任された取締役であっても、正当な事由がなく解任された場合には、新たな取締役が就任するまでの間は、当該取締役は引き続き取締役としての権利義務を有する。
3・・・誤り解任された(辞めさせられた)」場合、選択肢2のように、新たに選任された役員が就任するまで、なお役員としての権利義務を有するわけではありません。「解任された(辞めさせられた)」場合は、直ちに取締役としての地位を失います。 よって、誤りです。
4.利害関係人の申立により裁判所が一時取締役を選任した場合、当該一時取締役が株式会社の常務に属しない行為をするには、裁判所の許可が必要である。
4・・・誤り 役員が欠けた場合において、裁判所は、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより、一時役員の職務を行うべき者(一時取締役)を選任することができます(会社法346条2項)。そして、一時取締役も、他の取締役と同じ権限を持つので、会社の常務に属しない行為をする場合でも裁判所の許可はいりません。 よって、誤りです。 「会社の常務に属しない行為」については、個別指導で解説します!
5.取締役が法令もしくは定款に違反する行為をし、当該行為によって株式会社に著しい損害が生じるおそれがある場合には、株主は直ちに当該取締役の解任の訴えを提起することができる。
オ・・・誤り 役員の職務の執行に関し「不正の行為」又は「法令若しくは定款に違反する重大な事実」があったにもかかわらず、当該役員を解任決議が株主総会において否決されたときは、株主は、当該株主総会の日から30日以内に、訴えをもって当該役員の解任を請求することができます(854条1項)。つまり、いきなり、解任の訴えができるのではなく、まずは、株主総会の解任決議の手続きを踏んで、それでも解任できない場合に限って、解任の訴え(訴訟)ができるということです。

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平成21年度(2009年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 憲法 問33 民法・債権
問4 職業選択の自由 問34 民法:債権
問5 精神的自由 問35 民法:親族
問6 学問の自由 問36 商法
問7 国会 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・社会
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成21年・2009|問39|会社法・事業譲渡

株式会社の事業譲渡に関する次のア~オの記述のうち、妥当なものの組合せはどれか。
ア.事業譲渡を行う場合には、譲渡会社と譲受会社の間で、譲渡する資産、債務、雇用契約その他の権利義務に関する事項を包括的に定めた事業譲渡契約を締結しなければならない。 イ.譲受会社が譲渡会社の商号を引き続き使用する場合には、譲受会社は、譲渡会社の事業によって生じた債務を弁済する責任を負い、譲渡会社は当該債務を弁済する責任を免れる。 ウ.譲渡会社は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村の区域内およびこれに隣接する市町村の区域内においては、その事業を譲渡した日から20年間は、同一の事業を行ってはならない。 エ.会社がその事業の全部または重要な一部の譲渡を行う場合には、譲渡会社において株主総会の特別決議による承認を要するが、譲渡する資産の帳簿価格が譲渡会社の総資産の額の5分の1を超えないときは、株主総会の承認は不要である。 オ.会社が他の会社の事業の全部または重要な一部を譲り受ける場合には、譲受会社において株主総会の特別決議による承認を要するが、譲受会社が対価として交付する財産の帳簿価格の合計額が譲受会社の総資産の額の5分の1を超えないときは、株主総会の承認は不要である。
  1. ア・イ
  2. ア・オ
  3. イ・ウ
  4. ウ・エ
  5. ウ・オ
>解答と解説はこちら
【答え】:4 【解説】
ア.事業譲渡を行う場合には、譲渡会社と譲受会社の間で、譲渡する資産、債務、雇用契約その他の権利義務に関する事項を包括的に定めた事業譲渡契約を締結しなければならない。
ア・・・妥当ではない 株式会社は、事業譲渡をする場合、譲渡の効力を生ずる日の前日までに、株主総会の決議によって、事業譲渡契約の承認を受けなければなりません(会社法467条1項)。そして、事業譲渡については、事業譲渡契約で決めた財産等のみの譲渡であり、 譲渡する資産、債務、雇用契約その他の権利義務に関する事項を包括的に定める必要はありません。 よって、本肢は妥当ではないです。
イ.譲受会社が譲渡会社の商号を引き続き使用する場合には、譲受会社は、譲渡会社の事業によって生じた債務を弁済する責任を負い、譲渡会社は当該債務を弁済する責任を免れる。
イ・・・妥当ではない 事業を譲り受けた会社(譲受会社)が「譲渡会社の商号を引き続き使用する場合」には、その譲受会社も、譲渡会社の事業によって生じた債務を弁済する責任を負います(会社法22条1項)。つまり、上記の場合、譲渡会社も譲受会社もどちらも債務の弁済責任を負います。 よって、「譲渡会社は当該債務を弁済する責任を免れる」は妥当ではないです。
ウ.譲渡会社は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村の区域内およびこれに隣接する市町村の区域内においては、その事業を譲渡した日から20年間は、同一の事業を行ってはならない。
ウ・・・妥当 事業を譲渡した会社(譲渡会社)は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村の区域内及びこれに隣接する市町村の区域内においては、その事業を譲渡した日から20年間は、同一の事業を行ってはいけません会社法21条)。よって、本肢は妥当です。
エ.会社がその事業の全部または重要な一部の譲渡を行う場合には、譲渡会社において株主総会の特別決議による承認を要するが、譲渡する資産の帳簿価格が譲渡会社の総資産の額の5分の1を超えないときは、株主総会の承認は不要である。
エ・・・妥当 会社の事業の「全部の譲渡」、または「事業の重要な一部の譲渡」を行う場合、原則、「譲渡会社(渡す方)」は、株主総会の特別決議による承認が必要です(会社法309条2項11号)。ただし、譲渡する資産の帳簿価格が譲渡会社の総資産の額の「5分の1を超えないとき」は、株主総会の承認は不要です(会社法467条1項2号)。 よって、本肢は妥当です。
オ.会社が他の会社の事業の全部または重要な一部を譲り受ける場合には、譲受会社において株主総会の特別決議による承認を要するが、譲受会社が対価として交付する財産の帳簿価格の合計額が譲受会社の総資産の額の5分の1を超えないときは、株主総会の承認は不要である。
オ・・・妥当ではない 他の会社の「事業の全部の譲受け」の場合、「譲受会社(もらう方)」は、株主総会の特別決議が必要です。一方、重要な一部を譲り受ける場合には、「譲受会社(もらう方)」は、株主総会の決議自体不要です(会社法467条1項)。 ただし、譲受会社が取締役設置会社の場合、取締役会決議は必要です(会社法362条4項1号)。

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平成21年度(2009年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 憲法 問33 民法・債権
問4 職業選択の自由 問34 民法:債権
問5 精神的自由 問35 民法:親族
問6 学問の自由 問36 商法
問7 国会 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・社会
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成21年・2009|問38|会社法・株主名簿

株主名簿に関する次のア~オの記述のうち、会社法の規定および判例に照らし、妥当でないものの組合せはどれか。
ア.すべての株式会社は、株主名簿を作成して、株主の氏名または名称および住所ならびに当該株主の有する株式の種類および数などを記載または記録しなければならない。 イ.基準日以前に株式を取得した者で、株主名簿に株主として記載または記録されていない者について、会社は、その者を株主として扱い、権利の行使を認容することができる。 ウ.株券発行会社においては、株式の譲受人は、株主名簿の名義書換えをしなければ、当該会社および第三者に対して株式の取得を対抗できない。 エ.会社が株主による株主名簿の名義書換え請求を不当に拒絶した場合には、当該株主は、会社に対して、損害賠償を請求することができるが、株主であることを主張することはできない。 オ.会社が株主に対してする通知または催告は、株主名簿に記載または記録された株主の住所または株主が別に通知した場所もしくは連絡先に宛てて発すれば足り、当該通知または催告は、それが通常到達すべきであった時に、到達したものとみなされる。
  1. ア・イ
  2. ア・オ
  3. イ・ウ
  4. ウ・エ
  5. エ・オ
>解答と解説はこちら
【答え】:4 【解説】
ア.すべての株式会社は、株主名簿を作成して、株主の氏名または名称および住所ならびに当該株主の有する株式の種類および数などを記載または記録しなければならない。
ア・・・妥当 株式会社は、株主名簿を作成し、これに次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければなりません(会社法121条)。
  1. 株主の氏名又は名称及び住所
  2. 前号の株主の有する株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数
  3. 第一号の株主が株式を取得した日
  4. 株式会社が株券発行会社である場合には、株券の番号
よって、本肢は妥当です。
イ.基準日以前に株式を取得した者で、株主名簿に株主として記載または記録されていない者について、会社は、その者を株主として扱い、権利の行使を認容することができる。
イ・・・妥当 株式の譲渡は、その株式を取得した者の氏名又は名称及び住所を株主名簿に記載し、又は記録しなければ、株式会社その他の第三者に対抗することができません会社法130条1項)。そして、判例によると 「株式の譲渡があったにかかわらず株主名簿の名義書換が会社の都合で遅れていても、会社が譲渡を認め譲受人を株主として取り扱うことは認められている」 と判示しています。よって、本肢は妥当です。
ウ.株券発行会社においては、株式の譲受人は、株主名簿の名義書換えをしなければ、当該会社および第三者に対して株式の取得を対抗できない。
ウ・・・妥当ではない 株券発行会社においては、株式の譲渡は、その株式を取得した者の氏名又は名称及び住所を株主名簿に記載し、又は記録しなければ、株式会社に対抗することができません(会社法130条2項)。第三者に対しては、株券を持っていれば、それで対抗できます。よって、「第三者に対して株式の取得を対抗できない」が妥当ではありません。
エ.会社が株主による株主名簿の名義書換え請求を不当に拒絶した場合には、当該株主は、会社に対して、損害賠償を請求することができるが、株主であることを主張することはできない。
エ・・・妥当ではない 判例によると 「株式譲受人から株式会社に対し株式名義の書換の請求をした場合において、会社の過失により書換が行なわれなかったときは、会社は、株式名義の書換のないことを理由として、株式の譲渡を否認することができない。」 と判示しています。したがって、株主からの名義書き換えの請求に対して、会社が、不当に拒絶した場合、株主は、自分が株主であることを主張することはできます。よって、妥当ではありません。
オ.会社が株主に対してする通知または催告は、株主名簿に記載または記録された株主の住所または株主が別に通知した場所もしくは連絡先に宛てて発すれば足り、当該通知または催告は、それが通常到達すべきであった時に、到達したものとみなされる。
オ・・・妥当 株式会社が株主に対してする通知又は催告は、株主名簿に記載し、又は記録した当該株主の住所(当該株主が別に通知又は催告を受ける場所又は連絡先を当該株式会社に通知した場合にあっては、その場所又は連絡先)にあてて発すれば足ります(会社法126条1項)。通知又は催告は、その通知又は催告が通常到達すべきであった時に、到達したものとみなします(同条2項)。分かりやすくいうと、 会社が株主に通知・催告する場合
  1. 株主名簿に記載されたの住所、または
  2. 別の住所に通知・催告してください!とお知らせがある場合はその住所
に通知・催告すればよく、通常到達すべきであった時に、到達したものとみなされます。 よって、妥当です。

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平成21年度(2009年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 憲法 問33 民法・債権
問4 職業選択の自由 問34 民法:債権
問5 精神的自由 問35 民法:親族
問6 学問の自由 問36 商法
問7 国会 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・社会
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成21年・2009|問36|商法・商行為

商人間の取引に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。
  1. A株式会社は、輸入業者Bとの間で牛肉の売買契約を締結し、Aの仕入れ担当者が引渡しに立ち会った。4ヵ月後に、当該牛肉に狂牛病の可能性のある危険部位があることが分かったため、直ちにBに通知した。この場合に、AはBに対して売買契約の解除、代金の減額または損害賠償を請求することができる。
  2. A株式会社は、輸入業者Bとの間でコーヒー豆の売買契約を締結した。Aの仕入れ担当者はコーヒー豆の納入に立ち会い、数量の確認および品質の検査を行った。その際、コーヒー豆の品質の劣化を認識していたが、Bに直ちには通知しなかった。この場合に、AはBに対して売買契約の解除、代金の減額または損害賠償を請求することができない。
  3. A株式会社は、輸入業者Bとの間でチューリップの球根の売買契約を締結した。Aの仕入れ担当者が引渡しに立ち会ったところ、球根の種類が予定していたものと異なっていた。そこで、Aは直ちに売買契約の解除をBに通知した。Bの営業所が同一市内にあったため、Bが引き取りに来るまでの間、Aは球根を放置していたところ、発芽し、売り物には適さないものになったが、Aには責任はない。
  4. A株式会社は、輸入業者Bとの間でバナナの売買契約を締結した。履行期日になったが、Aの加工工場でストライキが起こり、Aは期日にバナナを受領することができなかった。そこでBは、Aへの催告なしに、そのバナナを競売に付し、競売の代金をバナナの代金に充当したが、これについて、Bに責任はない。
  5. A株式会社は、輸入業者Bとの間でクリスマス商品の売買契約を締結したが、輸出国の工場での製造工程にトラブルが生じ、商品の製造が遅れたため、納入がクリスマスに間に合わなかった。Aが、Bに対して契約の解除等何らの意向を示さずに、Bからの度重なる連絡を無視し続けた場合、クリスマス商品の受領を拒むことはできない。
>解答と解説はこちら
【答え】:5 【解説】
1.A株式会社は、輸入業者Bとの間で牛肉の売買契約を締結し、Aの仕入れ担当者が引渡しに立ち会った。4ヵ月後に、当該牛肉に狂牛病の可能性のある危険部位があることが分かったため、直ちにBに通知した。この場合に、AはBに対して売買契約の解除、代金の減額または損害賠償を請求することができる。
1・・・妥当 買主は、売買の目的物に瑕疵があること又はその数量に不足があることを発見したときは、直ちに売主に対してその旨の通知を発しなければ、その瑕疵又は数量の不足を理由として契約の解除又は代金減額若しくは損害賠償の請求をすることができません(商法526条2項)。売買の目的物に直ちに発見することのできない瑕疵がある場合において、買主が6ヵ月以内にその瑕疵を発見したときも、上記同様のルールが適用されます(商法526条2項)。本肢は、引渡しを受けたときは、瑕疵(危険部位があること)に気づかず、その後、4か月後に瑕疵に気づき、直ちに売主に通知しています。 そのため、買主Aは売主Bに売買契約の解除、代金の減額または損害賠償を請求することができるので妥当です。
2.A株式会社は、輸入業者Bとの間でコーヒー豆の売買契約を締結した。Aの仕入れ担当者はコーヒー豆の納入に立ち会い、数量の確認および品質の検査を行った。その際、コーヒー豆の品質の劣化を認識していたが、Bに直ちには通知しなかった。この場合に、AはBに対して売買契約の解除、代金の減額または損害賠償を請求することができない。
2・・・妥当 選択肢1の解説の通り、本肢の場合、引渡しを受けたときに、瑕疵を知っていたが、直ちに売主に通知していません。したがって、この時点で、売主に対して責任追及はできなくなるので、本肢は正しいです。
3.A株式会社は、輸入業者Bとの間でチューリップの球根の売買契約を締結した。Aの仕入れ担当者が引渡しに立ち会ったところ、球根の種類が予定していたものと異なっていた。そこで、Aは直ちに売買契約の解除をBに通知した。Bの営業所が同一市内にあったため、Bが引き取りに来るまでの間、Aは球根を放置していたところ、発芽し、売り物には適さないものになったが、Aには責任はない。
3・・・妥当 商人間売買における買主による目的物の検査及び通知によって、買主が、契約の解除をしたときであっても、売主の費用をもって売買の目的物を保管し、又は供託しなければなりません(商法527条1項)。ただし、売主及び買主の営業所が同一の市町村の区域内にある場合には、保管義務や供託義務はありません。(商法527条4項)。本肢の場合、Bの営業所は同一市内なので、たとえ、球根が発芽し、売り物には適さなくなっても、引き取りに来なかったBの責任です。 したがって、Aには責任はありません。
4.A株式会社は、輸入業者Bとの間でバナナの売買契約を締結した。履行期日になったが、Aの加工工場でストライキが起こり、Aは期日にバナナを受領することができなかった。そこでBは、Aへの催告なしに、そのバナナを競売に付し、競売の代金をバナナの代金に充当したが、これについて、Bに責任はない。
4・・・妥当 商人間の売買において、買主がその目的物の受領を拒み、又はこれを受領することができないときは、売主は、その物を供託し、又は相当の期間を定めて催告をした後に競売に付することができます。そして、上記の場合において、売主がその物を供託し、又は競売に付したときは、遅滞なく、買主に対してその旨の通知しなければなりません(商法524条1項)。ただし、損傷その他の事由による価格の低落のおそれがある物は、上記催告をしないで競売に付することができます商法524条2項)。 本肢の「バナナ」は、短期間で腐ってしまうため、価格の低下のおそれがあります。 よって、Bは、Aへの催告なしに、そのバナナを競売に付し、競売の代金をバナナの代金に充当することができます。
5.A株式会社は、輸入業者Bとの間でクリスマス商品の売買契約を締結したが、輸出国の工場での製造工程にトラブルが生じ、商品の製造が遅れたため、納入がクリスマスに間に合わなかった。Aが、Bに対して契約の解除等何らの意向を示さずに、Bからの度重なる連絡を無視し続けた場合、クリスマス商品の受領を拒むことはできない。
5・・・妥当ではない 商人間の売買において、売買の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、当事者の一方が履行をしないでその時期を経過したときは、相手方は、直ちにその履行の請求をした場合を除き、契約の解除をしたものとみなします商法525条)。クリスマス商品については、クリスマス当日までに納品されなかったら、契約の目的を達成することができません。したがって、原則、クリスマス当日を過ぎてしまったら、当然に契約解除したものとみなされます。 よって、Aはクリスマス商品の受領を拒むことができるので、妥当ではありません。

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平成21年度(2009年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 憲法 問33 民法・債権
問4 職業選択の自由 問34 民法:債権
問5 精神的自由 問35 民法:親族
問6 学問の自由 問36 商法
問7 国会 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・社会
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成21年・2009|問37|会社法・定款

株式会社の定款に関する次の記述のうち、会社法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 会社設立時に株式会社が発行する株式数は、会社法上の公開会社の場合には、発行可能株式総数の4分の1を下回ることができないため、定款作成時に発行可能株式総数を定めておかなければならないが、会社法上の公開会社でない会社の場合には、発行株式数について制限がなく、発行可能株式総数の定めを置かなくてよい。
  2. 株式会社は株券を発行するか否かを定款で定めることができるが、会社法は、株券を発行しないことを原則としているので、株券を発行する旨を定款に定めた会社であっても、会社は、株主から株券の発行を請求された段階で初めて株券を発行すれば足りる。
  3. 株主総会は株主が議決権を行使するための重要な機会であるため、本人が議決権を行使する場合のほか、代理人による議決権行使の機会が保障されているが、会社法上の公開会社であっても、当該代理人の資格を株主に制限する旨を定款に定めることができる。
  4. 取締役会は、取締役が相互の協議や意見交換を通じて意思決定を行う場であるため、本来は現実の会議を開くことが必要であるが、定款の定めにより、取締役の全員が書面により提案に同意した場合には、これに異議を唱える者は他にありえないため、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなすことができる。
  5. 取締役会設置会社は監査役を選任しなければならないが、会社法上の公開会社でない取締役会設置会社の場合には、会計監査人設置会社であっても、定款で、監査役の監査権限を会計監査に限定することができる。

>解答と解説はこちら


【答え】:3
【解説】
1.会社設立時に株式会社が発行する株式数は、会社法上の公開会社の場合には、発行可能株式総数の4分の1を下回ることができないため、定款作成時に発行可能株式総数を定めておかなければならないが、会社法上の公開会社でない会社の場合には、発行株式数について制限がなく、発行可能株式総数の定めを置かなくてよい。
1・・・妥当ではない
公開会社の場合、会社設立時に株式会社が発行する株式数は、発行可能株式総数の1/4を下回ることができません会社法37条3項)。この点は正しいです。

しかし、「定款作成時に発行可能株式総数を定めておかなければならない」および「会社法上の公開会社でない会社の場合には、発行株式数について制限がなく、発行可能株式総数の定めを置かなくてよい」が誤りです。

発行可能株式総数」は、「株式会社の成立の時まで」に、その全員の同意によって、定款変更して定めればよいです(会社法37条1項)。

公開会社でない会社(非公開会社)の場合にも、発行可能株式総数の定めは必要です。

2.株式会社は株券を発行するか否かを定款で定めることができるが、会社法は、株券を発行しないことを原則としているので、株券を発行する旨を定款に定めた会社であっても、会社は、株主から株券の発行を請求された段階で初めて株券を発行すれば足りる。
2・・・妥当ではない
株式会社は株券を発行するか否かを定款で定めることができます(会社法214条)。つまり、会社法は、株券を発行しないことを原則としています(=株券を発行したい場合は発行できる)。そして、株券発行会社の場合(=株券を発行する旨を定款に定めた会社の場合)、

公開会社でない株券発行会社は、株主から請求がある時までは、これらの規定の株券を発行しないことができます。

一方、公開会社の株券発行会社は、株式を発行した日以後遅滞なく、当該株式に係る株券を発行しなければなりません(会社法215条1項4項)。

したがって、本肢の「会社は、株主から株券の発行を請求された段階で初めて株券を発行すれば足りる」は誤りです。

公開会社の場合は、請求されるかどうかに関係なく、株式を発行した日以後遅滞なく株券の発行が必要です。

3.株主総会は株主が議決権を行使するための重要な機会であるため、本人が議決権を行使する場合のほか、代理人による議決権行使の機会が保障されているが、会社法上の公開会社であっても、当該代理人の資格を株主に制限する旨を定款に定めることができる。
3・・・妥当
株主は、代理人によってその議決権を行使することができます(会社法310条1項)。そして、判例によると

代理人は株主にかぎる旨の定款の規定は、株主総会が、株主以外の第三者によって攪乱されることを防止し、会社の利益を保護する趣旨にでたものと認められ、合理的な理由による相当程度の制限ということができるから、有効であると解するのが相当である。」

と判示しています。

よって、本人が議決権を行使する場合のほか、代理人による議決権行使の機会が保障されています。

また、公開会社であっても、当該代理人の資格を株主に制限する旨を定款に定めることができます。

したがって、妥当です。

4.取締役会は、取締役が相互の協議や意見交換を通じて意思決定を行う場であるため、本来は現実の会議を開くことが必要であるが、定款の定めにより、取締役の全員が書面により提案に同意した場合には、これに異議を唱える者は他にありえないため、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなすことができる。
4・・・妥当ではない
取締役会設置会社は、取締役が取締役会の決議の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき取締役の「全員が書面」又は「電磁的記録により同意」の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす旨を定款で定めることができます。
ただし、監査役設置会社にあっては、監査役が当該提案について異議を述べたときは、提案は可決されません会社法370条)。つまり、「これに異議を唱える者は他にありえない」は誤りです。
もし、監査役がいる場合は、監査役が異議を唱える可能性があるからです。
5.取締役会設置会社は監査役を選任しなければならないが、会社法上の公開会社でない取締役会設置会社の場合には、会計監査人設置会社であっても、定款で、監査役の監査権限を会計監査に限定することができる。
5・・・妥当ではない
非公開会社(監査役会設置会社及び会計監査人設置会社を除く。)は、その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めることができます(会社法389条1項)。つまり、会計監査人設置会社の場合は、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定することはできないので、妥当ではないです。

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平成21年度(2009年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 憲法 問33 民法・債権
問4 職業選択の自由 問34 民法:債権
問5 精神的自由 問35 民法:親族
問6 学問の自由 問36 商法
問7 国会 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・社会
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成24年・2012|問40|会社法・吸収合併

吸収合併に関する次の記述のうち、会社法の規定および判例に照らし、正しいものはどれか。

  1. 吸収合併は、株式会社と持分会社との間で行うこともできるが、株式会社を消滅会社とする場合には、社員の責任の加重など複雑な法律問題が生じるため、株式会社が存続会社とならなければならない。
  2. 吸収合併存続会社は、消滅会社の株主に対して、消滅会社の株式に代えて存続会社の株式を交付し、消滅会社のすべての株主を存続会社の株主としなければならない。
  3. 吸収合併存続会社の株主総会において、消滅会社の債務の一部を承継しない旨の合併承認決議が成立しても、債務を承継しない旨の条項は無効であって、すべての債務が存続会社に承継される。
  4. 吸収合併存続会社の株主で当該吸収合併に反対した株主が株式買取請求権を行使し、当該会社が分配可能額を超えて自己株式を取得した場合には、当該会社の業務執行者は、取得対価につき支払義務を負う。
  5. 財務状態の健全な会社を存続会社として吸収合併を行う場合には、消滅会社の債権者の利益を害するおそれがないことから、消滅会社の債権者は、消滅会社に対し、当該合併について異議を述べることはできない。

>解答と解説はこちら


【答え】:3【解説】
1.吸収合併は、株式会社と持分会社との間で行うこともできるが、株式会社を消滅会社とする場合には、社員の責任の加重など複雑な法律問題が生じるため、株式会社が存続会社とならなければならない。
1・・・誤り
会社が吸収合併をする場合において、吸収合併存続会社を持分会社とすることも可能です(会社法751条1項)。
つまり、 「吸収合併は、・・・株式会社が存続会社とならなければならない」は誤りです。
ちなみに、会社が吸収合併をする場合において、吸収合併存続会社を株式会社とすることも可能です(会社法749条1項)。
2.吸収合併存続会社は、消滅会社の株主に対して、消滅会社の株式に代えて存続会社の株式を交付し、消滅会社のすべての株主を存続会社の株主としなければならない。
2・・・誤り
吸収合併存続会社は、消滅する会社の株主に対して、消滅会社の株式に代えて「存続会社の株式(又は持分)」を交付することができます(会社法749条1項2号)。
これは、任意なので、存続会社の株式等以外でもよいです。
例えば「社債、新株予約権、現金等」を与えることも可能です(同項2号イ~ホ)
よって、誤りです。
3.吸収合併存続会社の株主総会において、消滅会社の債務の一部を承継しない旨の合併承認決議が成立しても、債務を承継しない旨の条項は無効であって、すべての債務が存続会社に承継される。
3・・・正しい
吸収合併存続株式会社は、効力発生日に、吸収合併消滅会社の権利義務を承継します(会社法750条)。
そして、判例によると「消滅会社の債務の一部を承継しない旨の合併承認決議が成立しても、債務を承継しない旨の条項は無効」としています(大判大6.9.26)。
よって、本肢は正しいです。
4.吸収合併存続会社の株主で当該吸収合併に反対した株主が株式買取請求権を行使し、当該会社が分配可能額を超えて自己株式を取得した場合には、当該会社の業務執行者は、取得対価につき支払義務を負う。
4・・・誤り
株式会社が「株主併合や単元株式数についての定款の変更等に反対した株主による買取請求」に応じて株式を取得する場合において、当該請求をした株主に対して支払った金銭の額が当該支払の日における分配可能額を超えるときは、当該株式の取得に関する職務を行った業務執行者は、株式会社に対し、連帯して、その超過額を支払う義務を負います(会社法464条1項)。本肢の「吸収合併に反対した株主が株式買取請求」については、上記ルールは適用されません
よって、業務執行者は支払い義務を負わないので誤りです。
5.財務状態の健全な会社を存続会社として吸収合併を行う場合には、消滅会社の債権者の利益を害するおそれがないことから、消滅会社の債権者は、消滅会社に対し、当該合併について異議を述べることはできない。
オ・・・誤り
吸収合併をする場合、吸収合併消滅株式会社の債権者は、消滅株式会社に対し、吸収合併等について異議を述べることができます会社法789条1項1号)。よって、本肢は「消滅会社の債権者は、消滅会社に対し、当該合併について異議を述べることはできない」となっているので誤りです。
「異議を述べることは可能」です。

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平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 内閣 問33 民法・債権
問4 内閣 問34 民法:債権
問5 財政 問35 民法:親族
問6 法の下の平等 問36 商法
問7 社会権 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成24年・2012|問36|商法・商行為

商人間において、その双方のために商行為となる行為によって生じた債権が弁済期にあるときは、当事者の別段の意思表示がない限り、債権者は一定の要件の下で、留置権(いわゆる商人間の留置権)を行使することができる。この「一定の要件」に関する次の記述のうち、商法の規定に照らし、正しいものはどれか。

  1. 債権が留置の目的物に関して生じたものではなく、かつ、目的物が債務者との間における商行為によらないで債権者の占有に属した物であってもよいが、目的物が債務者所有の物であることを要する。
  2. 留置の目的物が債務者との間における商行為によらないで債権者の占有に属した物であってもよいが、債権が目的物に関して生じたものであり、かつ、目的物が債務者所有の物であることを要する。
  3. 債権が留置の目的物に関して生じたものではなく、かつ、目的物が債務者所有の物でなくてもよいが、目的物が債務者との間における商行為によって債権者の占有に属した物であることを要する。
  4. 債権が留置の目的物に関して生じたものでなくてもよいが、目的物が債務者との間における商行為によって債権者の占有に属した物であり、かつ、目的物が債務者所有の物であることを要する。
  5. 留置の目的物が債務者所有の物でなくてもよいが、債権が目的物に関して生じたものであり、かつ、目的物が債務者との間における商行為によって債権者の占有に属した物であることを要する。

>解答と解説はこちら


【答え】:4【解説】
1.債権が留置の目的物に関して生じたものではなく、かつ、目的物が債務者との間における商行為によらないで債権者の占有に属した物であってもよいが、目的物が債務者所有の物であることを要する。
1・・・誤り
商人間においてその双方のために商行為となる行為によって生じた債権が弁済期にあるときは、債権者は、その債権の弁済を受けるまで、①その債務者との間における商行為によって自己の占有に属した②債務者の所有する物又は有価証券」を留置することができます。
ただし、当事者の別段の意思表示があるときは、その意思表示に従い、留置することはできません(商法521条)。上記の通り、留置できる要件として
①その債務者との間における商行為によって自己の占有に属した「②債務者の所有する物又は有価証券」があります。本肢は「目的物が債務者との間における商行為によらないで債権者の占有に属した物」となっています。
したがって、①の要件を満たさないので、留置することはできません。よって、誤りです。

ちなみに、②の要件は満たしています。

さらに条文には、「債権は留置の目的物に関して生じたものである必要がある」旨の記載はないので、「債権は留置の目的物に関して生じたものでなくてもよい」です。
よって、「債権が留置の目的物に関して生じたものではなく」については、問題ございません。

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2.留置の目的物が債務者との間における商行為によらないで債権者の占有に属した物であってもよいが、債権が目的物に関して生じたものであり、かつ、目的物が債務者所有の物であることを要する。
2・・・誤り
考え方は選択肢1と同じです。
商人間においてその双方のために商行為となる行為によって生じた債権が弁済期にあるときは、債権者は、その債権の弁済を受けるまで、①その債務者との間における商行為によって自己の占有に属した②債務者の所有する物又は有価証券」を留置することができます。
ただし、当事者の別段の意思表示があるときは、その意思表示に従い、留置することはできません(商法521条)。上記の通り、留置できる要件として
①その債務者との間における商行為によって自己の占有に属した「②債務者の所有する物又は有価証券」があります。本肢、「留置の目的物が債務者との間における商行為によらないで債権者の占有に属した物であってもよい」となっています。
したがって、①の要件を満たさないので、留置することはできません。よって、誤りです。

②の要件は満たしています。

さらに条文には、「債権は留置の目的物に関して生じたものである必要がある」旨の記載はないので、要件にはなっていないです。
よって、「債権が目的物に関して生じたものであり」については、問題ございません。

3.債権が留置の目的物に関して生じたものではなく、かつ、目的物が債務者所有の物でなくてもよいが、目的物が債務者との間における商行為によって債権者の占有に属した物であることを要する。
3・・・誤り
考え方は選択肢1、2と同じです。
商人間においてその双方のために商行為となる行為によって生じた債権が弁済期にあるときは、債権者は、その債権の弁済を受けるまで、①その債務者との間における商行為によって自己の占有に属した②債務者の所有する物又は有価証券」を留置することができます。
ただし、当事者の別段の意思表示があるときは、その意思表示に従い、留置することはできません(商法521条)。上記の通り、留置できる要件として
①その債務者との間における商行為によって自己の占有に属した「②債務者の所有する物又は有価証券」があります。本肢、「目的物が債務者所有の物でなくてもよい」となっています。
したがって、②の要件を満たさないので、留置することはできません。よって、誤りです。

①の要件は満たしています。

さらに条文には、「債権は留置の目的物に関して生じたものである必要がある」旨の記載はないので、「債権は留置の目的物に関して生じたものでなくてもよい」です。
よって、「債権が留置の目的物に関して生じたものではなく」については、問題ございません。

4.債権が留置の目的物に関して生じたものでなくてもよいが、目的物が債務者との間における商行為によって債権者の占有に属した物であり、かつ、目的物が債務者所有の物であることを要する。
4・・・正しい
考え方は選択肢1、2、3と同じです。
商人間においてその双方のために商行為となる行為によって生じた債権が弁済期にあるときは、債権者は、その債権の弁済を受けるまで、①その債務者との間における商行為によって自己の占有に属した②債務者の所有する物又は有価証券」を留置することができます。
ただし、当事者の別段の意思表示があるときは、その意思表示に従い、留置することはできません(商法521条)。上記の通り、留置できる要件として
①その債務者との間における商行為によって自己の占有に属した「②債務者の所有する物又は有価証券」があります。本肢はすべて満たしているので、正しいです。
5.留置の目的物が債務者所有の物でなくてもよいが、債権が目的物に関して生じたものであり、かつ、目的物が債務者との間における商行為によって債権者の占有に属した物であることを要する。
5・・・誤り
考え方は選択肢1、2、3、4と同じです。
商人間においてその双方のために商行為となる行為によって生じた債権が弁済期にあるときは、債権者は、その債権の弁済を受けるまで、①その債務者との間における商行為によって自己の占有に属した②債務者の所有する物又は有価証券」を留置することができます。
ただし、当事者の別段の意思表示があるときは、その意思表示に従い、留置することはできません(商法521条)。上記の通り、留置できる要件として
①その債務者との間における商行為によって自己の占有に属した「②債務者の所有する物又は有価証券」があります。本肢、「留置の目的物が債務者所有の物でなくてもよい」となっています。
したがって、②の要件を満たさないので、留置することはできません。よって、誤りです。

①の要件は満たしています。

さらに条文には、「債権は留置の目的物に関して生じたものである必要がある」旨の記載はないので、要件にはなっていないです。
よって、「債権が目的物に関して生じたものであり」については、問題ございません。

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平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 内閣 問33 民法・債権
問4 内閣 問34 民法:債権
問5 財政 問35 民法:親族
問6 法の下の平等 問36 商法
問7 社会権 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略