商法・会社法

株式交換と株式移転

株式交換と株式移転は、いずれも親会社と子会社の関係を作り出す持株会社の創設のための手段と言えます。

親会社と子会社の関係を作り出す原理については、下の「株式交換」と「株式移転」をご覧ください。

ここで先に持株会社について簡単に解説します。

持株会社

持株会社とは、他の会社の株式を保有することによって、その会社の支配することを目的とする会社です。

複数の会社を統括する会社(親会社)ともいえる存在で、「〇〇ホールディングス」と名の付く会社が持株会社です。

株式交換

株式交換とは、株式会社が、「その株式の全部」を、他の「株式会社または合同会社」に取得させることを言います。

下図の場合、B社の株式全部をA社に取得させています。つまり、B社の株主が持つ「B社の株式」をA社が取得して、その見返りとして、B社の株主に「A社の株式」を与えます。したがって、B社の株主から見ると、「B社の株式」と「A社の株式」を交換したことになります。

そのことにより、A社は、B社の株式の全部を取得することから、A社がB社の完全親会社となり、B社がA社の子会社となります。


株式移転

株式移転とは、1つまたは2つ以上の株式会社がその株式全部を新たに設立する株式会社に取得させることを言います。

下図は、2つの株式会社(A社とB社)の株式全部を、新たに設立する株式会社(C社)に取得させる図です。

A社の株主が持つ「A社の株式」をC社が取得し、その代わりに、C社の株式をA社の株主に交付します。そのことにより、「もともとA社の株主だった者」は、C社の株主となります。逆に、C社は、A社の株式の全部を取得するので、C社はA社の完全親会社となり、A社がC社の子会社となります。

B社についても同じ考え方です。

B社の株主が持つ「B社の株式」をC社が取得し、その代わりに、C社の株式をB社の株主に交付します。そのことにより、「もともとB社の株主だった者」は、C社の株主となります。逆に、C社は、B社の株式の全部を取得するので、C社はB社の完全親会社となり、B社がC社の子会社となります。


株式交換と株式移転の手続き

株式分割や株式移転の手続きの流れは「合併の手続き」や「会社分割の手続き」の流れとほとんど同じです。

合併手続きの1について、
株式交換では、「株式交換契約」を締結し
株式移転では、「株式移転計画」を作成します。

5について、
株式交換では、株式交換契約で定めた効力発生日にの効力が発生する(769条1項)。
株式移転の場合、(完全)親会社成立の日(設立登記の日)に効力が発生する(774条1項)

組織再編の無効の訴え

合併・分割・株式交換・株式移転のことを「組織再編」と言い、組織再編の無効は、「合併の無効」で学んだ内容と同じです。

組織再編の効力が生じた日から6か月以内に、訴えをもってのみ主張でき(828条1項7~12号)、

提訴権者は、当事会社もしくは設立会社の株主、もしくは、組織再編を承認しなかった会社債権者です(828条2項7~12号)。

<<会社分割(吸収分割、新設分割) |

会社分割(吸収分割、新設分割)

会社分割とは、ある会社が「一定の事業の権利義務」を他の会社に承継させることを言います。そして、会社分割には、「吸収分割」と「新設分割」の2つがあります。

吸収分割

吸収分割とは、ある会社が「一定の事業の権利義務」を別会社に承継させることを言います。

下図の場合、B社の小売事業(小売事業の権利義務)をA社に承継させた図です。

この場合、「B社が分割会社」、「A社が承継会社」となります。


新設分割

新設分割とは、1つまたは2つ以上の株式会社または合同会社が「一定の事業の権利義務」を、新設する会社に承継させることを言います。

下図は、1つの会社が新設分割する場合と、2つの会社が新設分割する事例です。


会社分割の手続き

会社分割の手続きは、合併の手続きの場合とほとんど同じです。

違いというと、下記2点です。

  1. 合併手続きの1の「合併契約」が「吸収分割契約」「新設分割契約」に代わる
  2. 5の効力発生日についても、ほぼ同じです。
    吸収分割の場合、吸収分割契約で定めた効力発生日に吸収合併の効力が発生する(759条1項)。
    新設分割の場合、会社成立の日(設立登記の日)に効力が発生する(764条1項)

<<合併(吸収合併・新設合併) | 株式交換と株式移転>>

合併(吸収合併・新設合併)

合併とは、2つ以上の会社が、契約によって1つの会社に合体することを言います。

この合併には、①吸収合併と②新設合併の2つがあります。

吸収合併

下図の場合、A社(吸収合併存続会社)が、B社の権利義務の一切を承継して、B社(吸収合併消滅会社)は解散・消滅します。

そして、B社の株主は、吸収合併後、A社の株式等または金銭が交付されます。株式を交付された者はA社の株主となります。

A社が交付できるのは、株式だけでなく、社債や新株予約権でもよいです。


新設合併

下図の場合、A社(新設合併消滅会社)とB社(新設合併消滅会社)が新設合併をして、C社(新設合併設立会社)が設立されます。この場合、A社およびB社の権利義務の一切を、C社が承継します。

そして、A社の株主とB社の株主には、C社の株式が交付され、C社の株主となります。


合併の手続き

下記流れで合併を行います。

  1. A社とB社との間で合併契約を締結する(748条749条753条)。
  2. 合併に関する書面等を本店に備え置かなければならない782条794条803条)。
  3. 原則、A社およびB社の株主総会の特別決議により承認を得る(783条1項、795条1項、804条1項、309条3項2号)
    ※反対株主に対しては、原則として株式買取請求権が認められます。
  4. 会社債権者を保護するために、債権者に対して異議を述べる機会を与える必要がある(789条799条810条
    会社は、1か月以上の期間を定めて、異議を述べることができる旨を官報に公告し、かつ、合併を知っている債権者には、各別催告しなければならない。
  5. 吸収合併の場合、合併契約で定めた効力発生日に吸収合併の効力が発生する(750条1項)。
    新設合併の場合、会社成立の日(設立登記の日)に効力が発生する(754条1項)

消滅会社合併により解散します(471条4号、641条5号)。この場合、消滅会社の権利義務は存続会社・設立会社に承継されるため、清算手続きは行いません475条1号、644条1項)。

合併無効の訴え

合併の効力を争うには、合併の効力が生じた日から6ヶ月以内に、合併無効の訴えを提起することによってのみ行うことができます(828条1項7号8号)

被告

吸収合併の無効の訴えにおいては、吸収合併後存続する会社が被告となり、

新設合併の無効の訴えにおいては、新設合併により設立する会社を被告として訴えます(834条7号8号)。

合併無効の判決は、将来に向かって無効となります(839条)。

<<組織変更 | 会社分割(吸収分割、新設分割)>>

組織変更

組織変更とは、株式会社を持分会社に変えたり、持分会社を株式会社に変えたりすることを言います(2条26号)。

組織変更の手続き

組織変更をする場合、下記流れに沿って行います。

  1. 組織変更計画を作成する(743条
  2. 効力発生日の前日までに、組織変更計画について当該株式会社の総株主の同意(持分会社の場合、総社員の同意)を得なければならない(776条781条)。
  3. 会社債権者を保護するため、会社債権者の異議手続きを経る(779条781条2項)。
    →会社債権者は、会社に対し、組織変更について異議を述べることができる
  4. 組織変更の登記を行う(920条)。

<<持分会社の社員の責任、社員の加入・退社 | 合併(吸収合併・新設合併)>>

持分会社の社員の責任、社員の加入・退社

持分会社の社員の責任

会社は法人なので、会社の債務は、会社自身の債務であって、社員(個人)の債務ではありません。

しかし、持分会社の社員(無限責任社員および有限責任社員)は、会社債権者に対して、直接責任を負います。ただし、この責任の範囲が、無限責任社員と有限責任社員とで異なります。

無限責任社員 すべて責任を負う
有限責任社員 出資した分を限度に責任を負う。出資した金額以上の責任は負わない

どのような場合に責任を負うか?

持分会社の社員は、下記2つのいずれかに該当する場合には、連帯して、持分会社の債務を弁済する責任を負います(580条1項)。

  1. 当該持分会社の財産をもってその債務を完済することができない場合
  2. 当該持分会社の財産に対する強制執行がその効を奏しなかった場合
    (社員が、当該持分会社に弁済をする資力があり、かつ、強制執行が容易であることを証明した場合は、責任を免れることができる)

上記の通り、持分会社の社員は、会社の債務の保証人といった立場にあります。

社員の加入と退社

加入

持分会社は、新たに社員を加入させることができます(604条1項)。

ここでいう「社員」とは従業員ではなく、「出資者」を意味します。
株式会社でいえば株主と同じ立場の人です。

社員に関する情報は登記事項なので、社員が加入する場合、変更登記が必要です。

そして、変更登記をすることで、効力が生じます(604条2項)。

条文では、「持分会社の社員の加入は、当該社員に係る定款の変更をした時に、その効力を生ずる(604条2項)」と規定しているが、内容は上記の通りです。

もっとも、合同会社新たに社員を加入させる場合において、新たに社員となろうとする者が定款の変更をした時にその出資に係る払込み又は給付の全部又は一部を履行していないときは、その者は、当該払込み又は給付を完了した時に、合同会社の社員となります604条3項)。

※持分会社の成立後に加入した社員は、その加入前に生じた持分会社の債務についても、これを弁済する責任を負います605条)。

退社

退社とは、会社が存立している間に、社員がその地位を失うことです。分かりやすく言えば、「会社のオーナー」を辞めるイメージです。よって、後でも解説する通り、出資したお金をあとで取り戻せます。

そして、退社には、任意退社と法定退社の2種類があります。

任意退社

任意退社とは、社員自らの意思によって退社することです。

「①持分会社の存続期間を定款で定めなかった場合」又は「②ある社員の終身の間持分会社が存続することを定款で定めた場合」には、各社員は、事業年度の終了の時において退社をすることができます(606条1項)。

この場合においては、各社員は、6か月前までに持分会社に退社の予告をしなければなりません。

しかし、やむを得ない事由があるときは、いつでも退社することができます(606条3項)。

法定退社

社員は、下記事由によって、自動的に退社します(607条)。

  1. 定款で定めた事由の発生
  2. 総社員の同意
  3. 死亡
  4. 合併(合併により当該法人である社員が消滅する場合に限る。)
  5. 破産手続開始の決定
  6. 解散
  7. 後見開始の審判を受けた
  8. 除名

退社に伴う持分の払戻し

退社した社員は、その出資の種類を問わず、金銭によりその持分の払戻しを受けることができます(611条1項3項)。

ただし、合同会社の場合、全員有限責任社員のため、原則、払い戻しはできません。

例外として、定款変更して出資価額を減少する場合は払い戻しができます。

<<持分会社の設立の流れ | 組織変更>>

持分会社の設立の流れ、設立無効・設立取消しの訴え

持分会社とは、合同会社、合名会社、合資会社の3種類を指します。どれも持分会社です。

持分会社を設立する流れについて解説していきます。

持分会社を設立するには下記3つのステップを踏みます。

  1. 定款作成
  2. 出資
  3. 設立登記

1.定款作成

持分会社(合名会社、合資会社又は合同会社)を設立するには、その社員になろうとする者が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければなりません(575条1項)。

株式会社との違い

持分会社の場合、定款について公証人の認証は不要です。

2.出資

出資については、無限責任社員と有限責任社員によって異なります。

無限責任社員とは、会社に対して無限に責任を負う社員のことを言います。つまり、 会社が倒産し、さらに債務を会社の財産だけでは弁済できなかった場合、無限責任社員は自己の財産を使って弁済しなければなりません。一方、

有限責任社員とは、自分が出資した分だけ会社に対して責任を負う社員のことを言います。つまり、会社が倒産し、会社に債務が残っていても、有限責任社員は、その残債について責任を負わなくても大丈夫です。

無限責任社員 金銭だけでなく、労務、信用で出資してもよい
有限責任社員 金銭等の出資に限られ、労務や信用で出資はできない

持分会社の社員の違い

合同会社 有限責任社員のみ
合名会社 無限責任社員のみ
合資会社 無限責任社員と有限責任社員が混在

出資の時期

合名会社合資会社については、社員の出資の時期について制限はありません。一方、

合同会社については、社員になろうとするものは、定款作成後、合同会社の設立登記の時までに、その出資額の全額を払込みまたは給付しなければなりません(578条)。

上記の違いは、合名会社や合資会社の社員は無限責任社員がいるため、万一会社が倒産等しても、会社債権者は、無限責任社員に対して弁済を求めることができます。一方、合同会社の場合、社員は全員、有限責任社員なので、会社が倒産しても有限責任社員に対して請求をすることができません。そのため、設立登記までに全額払込みをさせるルールになっています。

3.設立行為

持分会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立します(579条)。

持分会社の設立無効の訴え

設立無効の原因がある場合、株式会社同様、設立無効の訴えにより設立無効を主張できます(828条1項)。

株式会社の設立無効の訴えはこちら>>

持分会社の設立取消しの訴え

持分会社には、設立取消しの訴えという独自の制度があります(832条)。これは、株式会社にはありません

設立取消しの原因となるのは下記2つです。

  1. 社員が民法などの法律の規定により設立に係る意思表示を取り消すことができるとき
  2. 社員がその債権者を害することを知って持分会社を設立したとき

そして、1の場合、当該社員が設立取消しを主張でき、2の場合、債権者が設立取消を主張できます。

設立取消しの訴えは、持分会社の成立の日から2年以内に、行う必要があります。

<<資本金、準備金、剰余金 | 持分会社の社員の責任、社員の加入・退社>>

資本金、準備金、剰余金

資本金

資本金とは、原則、「設立」又は「株式の発行」に際して株主となる者が当該株式会社に対して「払込み又は給付」をした財産の合計額です(445条)。 イメージとしては、株主が出資したお金の合計です。 ただし、「払込み又は給付」に係る額の2分の1を超えない額は、資本金として計上せずに、「資本準備金(準備金)」として計上できます。

資本金の額の増加と減少

株式会社は、株主総会の決議(普通決議)により、剰余金の額を減少して、資本金の額を増加することができます(450条309条1項)。 つまり、剰余金にあるお金を資本金に移すことができる、ということです。 一方、資本金の額を減少させるには、株主総会の特別決議が必要です(447条1項、309条2項9号)。 そして、資本金の額を減少させる場合、原則として、債権者保護手続が必要となります(449条)。

債権者保護手続

債権者保護手続とは、債権者に異議を述べる機会を与えなければならない、ということです。 そして、株式会社は、会社債権者が異議を述べるために、1か月以上の期間を定めて、官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければなりません(449条2項)。

準備金

準備金には、①資本準備金と利益準備金の2つがあります。 ①資本準備金とは、株主が払い込みまたは給付をしたお金のうち、資本金に組み入れられなかった部分の金額が積み立てられたものをいいます利益準備金とは、利益剰余金のうち、会社法によって積み立てることが義務付けられているお金です。

準備金の額の増加と減少

株式会社は、株主総会の決議(普通決議)により、剰余金の額を減少して、準備金の額を増加することができる(451条309条1項)。 つまり、剰余金にあるお金を準備金に移すことができる、ということです。 一方、準備金の額を減少させるには、原則として、株主総会の普通決議が必要です(448条309条1項)。 ただし、準備金の額を減少させる場合、原則として、債権者保護手続が必要となります(449条)。

資本金 準備金
増加 普通決議 普通決議
減少 特別決議 債権者保護手続が必要 普通決議 債権者保護手続が必要

剰余金

剰余金とは、簡単に言えば、会社が儲けて余ったお金です。この剰余金の中から、株主に配当を行います。 しかし、いくらでも株主に配当できるかというとそうではありません。 会社は、分配可能額の範囲内で、いつでも配当することができます(453条461条1項2項)。 ただし、純資産額が300万円を下回る場合、剰余金を配当することができません458条)。 ※分配可能額の計算方法までは覚えなくても大丈夫です。

配当の流れ

株式会社は、剰余金の配当をしようとするときは、その都度、株主総会の普通決議が必要です(454条1項)。 ※取締役会設置会社では、一事業年度の途中に、1回だけ取締役会の決議によって剰余金の配当(中間配当)ができる旨を定款で定めることができます(454条5項)。

違法な配当を行った場合

分配可能額を超えて配当した場合、「①業務執行者」と「②剰余金の配当等の議事を提案した取締役等」「③金銭などの交付を受けた者」は、会社に対して、連帯して、交付を受けた金銭などの支払い義務を負います(462条1項)。

<<株主からの責任追及(株主代表訴訟・差止請求・検査役の調査) | 持分会社の設立の流れ>>

株主からの責任追及(株主代表訴訟・差止請求・検査役の調査)

取締役が任務を怠った(任務懈怠)場合、会社が、当該取締役に対して損害賠償の責任を追及することができます。

しかし、会社と取締役の関係上、会社が取締役に対して責任追及をしないことも多いです。そうなると、株主に不利益になるため、会社法では、株主が会社を代表して取締役を訴える「株主代表訴訟(847条)」を規定しています。

株主代表訴訟

株主代表訴訟については、流れをしっかり覚えておくことが重要です。というのも、取締役の任務懈怠により、会社に損害を与えたからと言って、株主がいきなり訴えを起こせる訳ではないからです。

株主代表訴訟の流れ

  1. 6か月から引き続き株式を有する株主は、会社に対して書面等をもって、取締役の責任を追及する訴訟を提起するよう請求する
  2. 株主が請求をしたもかかわらず、会社が60日以内に訴訟を提起しない
  3. 株主は会社の代わりに、自らが原告となって訴訟(株主による責任追及等の訴え:株主代表訴訟)を提起することができる

このような流れになります。

非公開会社の場合は6か月前から持っていなくてもよく、株主であれば株主代表訴訟を提起できます。

2において、会社が訴えを提起した場合は、株主代表訴訟は行えません

株主からの請求に基づいて会社が訴えを提起する場合、原則、代表取締役(指名委員会等設置会社では代表執行役)が会社を代表します(349条1項4項、420条3項)。

ただし、監査役設置会社について取締役の責任を追及する訴えを行う場合、監査役が会社を代表します(386条2項1号)。

単独株主請求権である株主代表訴訟>>

違法行為の差止請求

取締役や執行役が違法行為をした場合、当該取締役等は会社に対して損害賠償責任を負います(423条1項)。

しかし、できれば、違法行為が行われる前にその行為を差止めでできれば、その方がよいです。

そこで、会社法では、一定要件を満たせば、株主は、当該取締役等に対して違法行為の差止めができる権利(差止請求権)を認めています(360条422条)。

株主による差止請求の要件

  1. 6か月から引き続き株式を有する株主であること(非公開会社の場合は6か月前から持っていなくてもよい
  2. 取締役が株式会社の①目的の範囲外の行為や②法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある
  3. 株式会社に著しい損害が生ずるおそれがある(監査役設置会社又は指名委員会等設置会社監査等委員会設置会社の場合、回復することができない損害が生ずるおそれがある)

業務の執行に関する検査役による調査

株式会社の業務の執行に関し、「不正の行為」又は「法令若しくは定款に違反する重大な事実があること」を疑うに足りる事由があるときは、一定要件を満たした株主は、当該株式会社の業務及び財産の状況を調査させるため、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをすることができます(358条)。

検査役の選任の申立てができる株主の要件

下記2つのいずれか一方を満たす株主は、検査役の選任の申立てができます。

  1. 総株主の議決権の100分の3(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主
  2. 発行済株式自己株式を除く)の100分の3(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の数の株式を有する株主

検査役の役割

ここでいう検査役とは、株式会社の業務や財産状況の調査などを職務とする臨時的な監査機関といったイメージです。

会社の取締役が不正な行為や法令違反行為を行っていることが疑われる場合、株主としては、計算書類・会計帳簿や取締役会議事録を閲覧することによって情報を収集し、取締役に不正・不法な行為があれば、最終的に株主総会や取締役解任の訴えによって当該取締役を解任させることができます。

しかし、実際のところ、計算書類や会計帳簿の閲覧の対象は一定の資料に限定されており、株主であっても、細かい部分まで調べることは難しいです。

そのような場合に、「検査役」を選任して、その検査役に細かく調べてもらい、報告してもらうことができます。

これによって、取締役を解任させることができます。

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指名委員会等設置会社

指名委員会等設置会社には、①指名委員会、②監査委員会、③報酬委員会の3委員会が置かれます。

それぞれの委員会は、委員3人以上で組織されます。この委員は、取締役の中から取締役決議によって選定されます。つまり、委員は全員取締役です。また、各委員会の委員の過半数が社外取締役でなければなりません(400条1項・2項)。


指名委員会

指名委員会は、株主総会に提出する取締役及び会計参与の選任及び解任に関する議案の内容を決定します(404条1項)。

監査委員会

監査委員会は、下記内容を行います(404条2項)。

  1. 執行役等(執行役・取締役・会計参与)の「職務の執行の監査」及び「監査報告の作成」
  2. 「株主総会に提出する会計監査人の選任及び解任」並びに「会計監査人を再任しないこと」に関する議案の内容の決定

監査委員による調査

 

①監査委員会が選定する監査委員は、いつでも、「執行役・取締役・会計参与」に対し、その職務の執行に関する事項の報告を求め、又は

指名委員会等設置会社の業務及び財産の状況の調査をすることができます。(405条1項)

②監査委員会が選定する監査委員は、監査委員会の職務を執行するため必要があるときは、指名委員会等設置会社の子会社に対して事業の報告を求め、又は

その子会社の業務及び財産の状況の調査をすることができる。(405条2項)

取締役会への報告義務

監査委員は、①執行役又は取締役が不正の行為をし、若しくは当該行為をするおそれがあると認めるとき、又は②法令若しくは定款に違反する事実若しくは③著しく不当な事実があると認めるときは、遅滞なく、その旨を取締役会に報告しなければなりません(406条

監査委員による執行役等の行為の差止め

監査委員は、執行役又は取締役が指名委員会等設置会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合で、かつ、当該行為によって当該指名委員会等設置会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該執行役又は取締役に対し、当該行為をやめることを請求(差止請求)することができます(407条1項)。

報酬委員会

報酬委員会は、「執行役・取締役・会計参与」の個人別の報酬等の内容を決定する権限を有しています(404条3項)。

執行役が指名委員会等設置会社の支配人その他の使用人を兼ねているときは、当該支配人その他の使用人の報酬等の内容についても、同様とする。

執行役

 

指名委員会等設置会社には、1人又は2人以上の執行役を置かなければなりません(402条1項)。また、執行役は、取締役会の決議によって選任します(402条2項)。

執行役の権限

執行役は、①取締役会の決議によって委任を受けた業務の執行の決定と②業務の執行を行います(418条)。

執行役の任期

執行役の任期は、選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結後最初に招集される取締役会の終結の時までです。

ただし、定款によって、その任期を短縮することができます。

指名委員会等設置会社でない取締役の任期は2年です。

執行役の選任・解任

執行役は、取締役会決議によって選任されます(402条2項)。

また、いつでも、取締役会決議によって解任することができます(403条1項)。

執行役の義務

執行役は、3か月に1回以上、自己の職務の執行の状況を取締役会に報告しなければなりません。この場合において、執行役は、「他の執行役を代理人」として報告をすることができます。(417条4項)

また、取締役会の要求があった場合、執行役は、取締役会に出席し、取締役会が求めた事項について説明をしなければなりません(417条5項)。

さらに、執行役は、指名委員会等設置会社に著しい損害を及ぼすおそれのある事実を発見したときは、直ちに、当該事実を監査委員に報告しなければなりません(419条1項)。報告先は取締役会ではないので注意しましょう!

代表執行役

選定と解職

代表執行役は、取締役会が、執行役の中から選定します(420条1項)。

※執行役が1人のときは、その者が代表執行役に選定されたものとします。

また、代表執行役は、いつでも、取締役会の決議によって解職することができます(420条2項)。

代表執行役の権限

代表執行役は、指名委員会等設置会社の業務に関する一切の裁判上・裁判外の行為をする権限を有します(420条3項、349条5項)。

この権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することはできません420条3項、349条5項)。

表見代表執行役

指名委員会等設置会社は、代表執行役以外の執行役に「社長、副社長など」といった代表する権限を有するものと認められる名称を付した場合には、当該執行役がした行為について、善意の第三者に対してその責任を負います(421条)。

<<監査等委員会設置会社 | 株主からの責任追及(株主代表訴訟・差止請求・検査役の調査)>>

監査等委員会設置会社

行政書士の試験においては、監査等委員会については下記の中でも、太文字部分と図の内容からの出題がほとんどです。

権限などは優先順位が低いので、太文字部分と図の内容を覚えていきましょう!

監査等委員会設置会社とは、監査等委員会を置く株式会社です。

そして、この監査等委員会は、取締役会の一機関として、監査役の担ってきた監査業務を行うとともに、一定の権限を持ちます。

そして、この「監査等委員会」は全員取締役(監査等委員という)なのですが、過半数が社外取締役です。

そして、監査等委員は、取締役なので、監査役とは異なり、取締役会での議決権を有しています。


監査等委員会の権限

監査等委員会は、指名委員会等設置会社の監査委員会と同じ権限を有します。

  1. 取締役(会計参与設置会社にあっては、取締役及び会計参与)の職務の執行の監査及び監査報告の作成(指名委員会等設置会社の監査委員会と同様)
  2. 株主総会に提出する「会計監査人の選任及び解任」並びに「会計監査人を再任しないこと」に関する議案の内容の決定
  3. 監査等委員でない取締役の選任・解任・報酬についての意見の決定

監査等委員の選任と解任

監査等委員は全員取締役で、他の取締役とは区別して、株主総会の決議(普通決議)によって選任されます(329条1項・2項)。

解任については、株主総会の特別決議で行う必要があります(309条2項7号)。

監査等委員の任期

監査等委員である取締役の任期は、原則2年です。

一方、監査等委員以外の取締役の任期は、原則1年です。

監査等委員である取締役の任期は、定款や株主総会の決議でも短縮することができず、その身分が保障されています(332条4項)。

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