尊属殺重罰規定違憲判決|3行でわかる結論
- 何が問われたか:尊属(親など目上の親族)を殺害した場合に死刑または無期懲役のみとする旧刑法200条が、憲法14条1項(法の下の平等)に違反するかが争われた
- 最高裁の結論:尊属殺を重く罰すること自体は合憲だが、法定刑を死刑・無期懲役のみに限定し執行猶予の余地すら排除する加重は著しく不合理であり、違憲と判断された
- 試験での意義:最高裁が法令違憲判決を下した数少ない判例であり、「目的は合憲でも手段が過剰なら違憲」という目的・手段審査の典型例として行政書士試験で繰り返し出題される
尊属殺重罰規定違憲判決とは?30秒でわかるまとめ
結論:尊属殺の重罰規定(旧刑法200条)は、死刑または無期懲役「のみ」という刑罰の重さが著しく不合理であり、憲法14条1項に違反し違憲である。
本判決(最大判昭和48年4月4日)は、最高裁が法律の規定を違憲と判断した数少ない判例の一つであり、行政書士試験では憲法14条(法の下の平等)の最重要判例として繰り返し出題されています。
- 立法目的:尊属に対する尊重報恩という道徳的観点から重罰とすること自体は、合理的な根拠があり合憲
- 手段の相当性:死刑または無期懲役のみに限定する加重は極端であり、違憲
- 判断枠組み:目的は合理的でも、手段が著しく不合理なら違憲となる(目的・手段審査)
試験頻出ポイント:「重罰にすること自体は違憲ではない」が「加重の程度が極端で違憲」という二段階の論理構造が問われます。「尊属殺の規定=即違憲」と誤解しないよう注意しましょう。
論点
事案
Yは14歳のときから、実父から姦淫され、以後、10年以上夫婦同様の生活を強いられ、5人の子供まで生むという異常な境遇にあった。その後、Yが29歳のときに、当時Yが務めていた職場の同僚と結婚の機会があったが、実父は、Yを支配下において、10日あまりにわたり脅迫虐待を加えた。この境遇から逃れようとYは、実父を殺すに至った。
Yは、自首し、尊属殺人(刑法200条)の罪で起訴された。
尊属殺重罰規定違憲判決とは
本判決は、最高裁判所が法律の規定を初めて違憲と判断した画期的な判例です。それまで最高裁は立法府の判断を尊重する傾向が強く、法令違憲判決を出すことに慎重でした。本判決により、司法が具体的事件を通じて法律の合憲性を審査する付随的違憲審査制の実効性が示された点でも、憲法史上重要な位置を占めています。
なぜ違憲と判断されたか
最高裁は、いわゆる目的・手段審査の枠組みを用いて判断しました。
- 目的の審査:尊属に対する尊重報恩を保護法益として重罰規定を設けること自体には合理的根拠がある
- 手段の審査:法定刑を死刑または無期懲役のみとし、執行猶予の余地すら認めない加重は、立法目的達成の手段として著しく均衡を失している
つまり、目的が正当でも手段が過剰であれば違憲となるという論理構造が、本判決の核心です。多数意見と異なり、田中二郎裁判官ら一部の反対意見は、尊属殺の重罰規定そのものが憲法14条に反するとしており、この意見の違いも試験で問われます。
行政書士試験での出題パターン
本判決は、主に次の形式で出題されます。
- 正誤判定型:「尊属殺の重罰規定は直ちに違憲である」→誤り。目的自体は合憲とされた点がひっかけポイント
- 判例の趣旨型:多数意見と反対意見の結論の違いを正確に区別できるかが問われる
- 他判例との横断型:薬事法距離制限違憲判決など、目的・手段審査を用いた他の違憲判決と比較して出題されることがある
特に、「重罰にすること自体は合憲」「加重の程度が極端で違憲」という二段階の論理を正確に押さえることが、得点に直結します。
判決
尊属殺を通常殺と比べて重罰に科する規定は憲法14条1項に違反するか?
→憲法に違反しない(違憲ではない)
憲法14条1項では、「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と規定されている。
憲法14条の平等の要請は、合理的な根拠に基づかない限り、差別的な取り扱いを禁止する趣旨である。
刑法200条では、『「自己または配偶者」の直系尊属を殺した者について、無期拘禁または死刑の刑に処される』とし、通常の殺人罪の刑罰規定よりも重いものになっていた。
この刑法200条の立法目的は、
尊属殺は通常殺と比べて、一般に高度の社会的道徳的非難に値するものとして、これを厳重に処罰して、特に強く禁圧しようとすることにあり、不合理とは言えない。
つまり、通常殺と比べて重罰にすること自体は違憲ではないとしている。
刑法200条は、憲法14条1項に違反するか?
→憲法に違反する(違憲である)
ただし、目的達成の手段として、死刑または無期拘禁のみに限っている点は、加重の程度が極端であり、著しく不合理な差別的取扱いをするものである。
したがって、刑法200条は合理的な差別とはいえず、憲法14条に反し、違憲である。

