行政法の過去問

平成23年・2011|問8|行政法

行政の実効性確保の手段についての次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 行政上の義務履行の確保に関しては、行政代執行法が一般法とされ、別に法律で定めるところを除いては、この法律の定めるところによる。
  2. 条例に基づく命令によって課された義務を相手方が履行しない場合には、代執行等の他の手段が存在しない場合に限り、地方公共団体は民事訴訟によりその履行を求めることができる、とするのが判例である。
  3. 食品衛生法に基づく保健所職員による立入検査に際して、受忍義務に反してこれを拒否する相手方に対しては、職員は、実力を行使して調査を実施することが認められる。
  4. 法令上の義務に違反した者について、その氏名や違反事実を公表することは、義務違反に対する制裁と解されるので、行政手続法上、聴聞の対象とされている。
  5. 義務違反に対する課徴金の賦課は、一種の制裁であるから、罰金などの刑罰と併科することは二重処罰の禁止に抵触し、許されない。

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【答え】:1【解説】
1.行政上の義務履行の確保に関しては、行政代執行法が一般法とされ、別に法律で定めるところを除いては、この法律の定めるところによる。
1・・・妥当
行政上の義務の履行確保に関しては、別に法律で定めるものを除いては、この法律の定めるところによります(行政代執行法1条)。
つまり、行政上の義務履行の確保に関しては、行政代執行法が一般法で、別に法律がある場合は、その法律が特別法となります。
2.条例に基づく命令によって課された義務を相手方が履行しない場合には、代執行等の他の手段が存在しない場合に限り、地方公共団体は民事訴訟によりその履行を求めることができる、とするのが判例である。
2・・・妥当ではない
条例に基づく命令によって課された義務を相手方が履行しない場合について判例によると
「国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって、自己の権利利益の保護救済を目的とするものということはできないから、法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるものではなく、法律に特別の規定がある場合に限り、提起することが許されるものと解される。」
と判示しています。

つまり、地方公共団体は、条例に基づく命令違反を理由に原則、民事訴訟を提起することはできません
法律に特別な規定がある場合に限って、例外的に民事訴訟を提起できます

よって、本肢は誤りです。

3.食品衛生法に基づく保健所職員による立入検査に際して、受忍義務に反してこれを拒否する相手方に対しては、職員は、実力を行使して調査を実施することが認められる。
3・・・妥当ではない
当該職員の臨検検査を拒み、妨げ、又は忌避した者は、これを50万円以下の罰金に処されます(食品衛生法75条1号)。
食品衛生法において、職員が、実力を行使して調査を実施することを認めた規定はないので妥当ではないです。
4.法令上の義務に違反した者について、その氏名や違反事実を公表することは、義務違反に対する制裁と解されるので、行政手続法上、聴聞の対象とされている。
4・・・妥当ではない
行政庁は、不利益処分をしようとする場合には、当該不利益処分の名あて人となるべき者について、意見陳述の手続(聴聞または弁明の機会の付与)を執らなければなりません(行政手続法13条)。本肢の「法令上の義務違反者について、その氏名や違反事実を公表すること」は、行政手続法上の不利益処分には該当しません

そのため、聴聞や弁明の機会の付与などの意見陳述の手続きは不要です。

したがって、妥当ではありません。

5.義務違反に対する課徴金の賦課は、一種の制裁であるから、罰金などの刑罰と併科することは二重処罰の禁止に抵触し、許されない。
5・・・妥当ではない
最判平10.10.13の判例によると、
「義務違反者に対する課徴金の賦課」と「刑罰」の併科は、その目的が異なるため、二重処罰の禁止に抵触しない、としています。「義務違反者に対する課徴金の賦課」は「違法に得た利益を行政的に没収することを目的」で、

「刑罰」は「行政上の義務違反に対する制裁が目的」です。

よって、併科も許されます

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平成23年度(2011年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 新しい人権 問33 民法・債権
問4 参政権 問34 民法:債権
問5 精神的自由 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 法改正により削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・経済
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 基礎知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 基礎知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成24年・2012|問43|行政法

次の文章の空欄[ ア ]~[ エ ]に当てはまる語句を、枠内の選択肢(1~20)から選びなさい。

[ ア ]法上の基礎概念である[ イ ]は、大きく二つの類型に分類して理解されている。一つは、行政主体とその外部との関係を基準として捉える作用法的[ イ ]概念である。例えば、行政処分を行う[ ウ ]がその権限に属する事務の一部をその[ エ ]である職員に委任し、またはこれに臨時に代理させて、私人に対する権限行使を行うような場合、この[ ウ ]と[ エ ]という区分は、上記の作用法的[ イ ]概念に基づくものである。もう一つは、各々の[ イ ]が担当する事務を単位として捉える事務配分的[ イ ]概念である。この概念は、現行法制の下では、国家[ ア ]法のとる制定法上の[ イ ]概念であって、行政事務を外部関係・内部関係に区分することなく全体として把握するとともに、さまざまな行政の行為形式を現実に即して理解するために適している。

1:行政指導 2:行政訴訟 3:損失補償 4:公務員 5:行政委員会 6:諮問機関 7:責任者 8:賠償 9:警察 10:行政庁 11:行政代執行 12:土地収用 13:内閣 14:行政手続 15:補助機関 16:行政機関 17:参与機関 18:行政救済 19:行政組織 20:法治主義

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【答え】:ア:19、イ:16、ウ:10、エ:15【解説】

[ア:行政組織]法上の基礎概念である[イ:行政機関]は、大きく二つの類型に分類して理解されている。一つは、行政主体とその外部との関係を基準として捉える作用法的[イ:行政機関]概念である。例えば、行政処分を行う[ウ:行政庁]がその権限に属する事務の一部をその[エ:補助機関]である職員に委任し、またはこれに臨時に代理させて、私人に対する権限行使を行うような場合、この[ウ:行政庁]と[エ:補助機関]という区分は、上記の作用法的[イ:行政機関]概念に基づくものである。もう一つは、各々の[イ:行政機関]が担当する事務を単位として捉える事務配分的[イ:行政機関]概念である。この概念は、現行法制の下では、国家[ア:行政組織]法のとる制定法上の[イ:行政機関]概念であって、行政事務を外部関係・内部関係に区分することなく全体として把握するとともに、さまざまな行政の行為形式を現実に即して理解するために適している。

ア.[ ア ]法上の基礎概念である[ イ ]は、大きく二つの類型に分類して理解されている。一つは、行政主体とその外部との関係を基準として捉える・・・
国家[ ア ]法
ア・・・行政組織
前半部分の「行政主体」と「その外部」ということから、行政組織に関する内容と分かります。
さらに、「国家~法」という記述から官がられるのは「国家行政組織法」「国家賠償法」「国家公務員法」です。よって、「アには行政組織」が入ります。

イ.行政主体とその外部との関係を基準として捉える作用法的[ イ ]概念

イ・・・行政機関
行政機関の概念には
  • 作用法的・行政機関概念
  • 事務配分的・行政機関概念

の2つがあります。ただ、上記2つは完全に区切ることはできないです。

  • 作用法的行政機関概念」は、
    行政作用法上(行政が私人に何かをする)は行政主体の意思を決定表示する機関を行政庁とし、行政庁概念を中心として行政機関概念を構成します。
  • 事務配分的行政機関概念」は、行政機関が担当する事務を単位として扱うものです。
    国家行政組織法上(行政内部の役割分担)は行政機関として省、庁、委員会等を中心とした分類を用い、行政組織の所掌事務や内部部局の組織、事務分担を定めるのに便利です。

ウ.エ.行政主体とその外部との関係を基準として捉える作用法的[イ:行政機関]概念である。例えば、行政処分を行う[ ウ ]がその権限に属する事務の一部をその[ エ ]である職員に委任し、またはこれに臨時に代理させて、私人に対する権限行使を行うような場合、この[ ウ ]と[ エ ]という区分は、上記の作用法的[ イ ]概念に基づくものである。

ウ・・・行政庁
エ・・・補助機関
行政処分を行う権限を持っているのは、知事や市長といった「行政庁」なので「ウには行政庁」が入ります。そして、知事が事務を委任するのは、職員などの「補助機関」です。
よって、「行政処分を行う[ウ:行政庁が]がその権限に属する事務の一部をその[ エ ]である職員に委任し」ということは、
エには「補助機関」が入ります。

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平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 内閣 問33 民法・債権
問4 内閣 問34 民法:債権
問5 財政 問35 民法:親族
問6 法の下の平等 問36 商法
問7 社会権 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成24年・2012|問42|行政法

次の文章は、学校行事において教職員に国歌の起立斉唱等を義務付けることの是非が争われた最高裁判所判決の一節(一部を省略)である。空欄[ ア ]~[ エ ]に当てはまる語句を、枠内の選択肢(1~20)から選びなさい。

本件[ ア ]は、・・・学習指導要領を踏まえ、上級行政機関である都教委(※)が関係下級行政機関である都立学校の各校長を名宛人としてその職務権限の行使を指揮するために発出したものであって、個々の教職員を名宛人とするものではなく、本件[ イ ]の発出を待たずに当該[ ア ]自体によって個々の教職員に具体的な義務を課すものではない。また、本件[ ア ]には、・・・各校長に対し、本件[ イ ]の発出の必要性を基礎付ける事項を示すとともに、教職員がこれに従わない場合は服務上の責任を問われることの周知を命ずる旨の文言があり、これらは国歌斉唱の際の起立斉唱又はピアノ伴奏の実施が必要に応じて[ イ ]により確保されるべきことを前提とする趣旨と解されるものの、本件[ イ ]の発出を命ずる旨及びその範囲等を示す文言は含まれておらず、具体的にどの範囲の教職員に対し本件[ イ ]を発するか等については個々の式典及び教職員ごとの個別的な事情に応じて各校長の[ ウ ]に委ねられているものと解される。そして、本件[ ア ]では、上記のとおり、本件[ イ ]の違反について教職員の責任を問う方法も、[ エ ]に限定されておらず、訓告や注意等も含み得る表現が採られており、具体的にどのような問責の方法を採るかは個々の教職員ごとの個別的な事情に応じて都教委の[ ウ ]によることが前提とされているものと解される。原審の指摘する都教委の校長連絡会等を通じての各校長への指導の内容等を勘案しても、本件[ ア ]それ自体の文言や性質等に則したこれらの[ ウ ]の存在が否定されるものとは解されない。したがって、本件[ ア ]をもって、本件[ イ ]と不可分一体のものとしてこれと同視することはできず、本件[ イ ]を受ける教職員に条件付きで[ エ ]を受けるという法的効果を生じさせるものとみることもできない。

(最一小判平成24年2月9日裁判所時報1549号4頁)

1:分限処分 2:処分基準 3:行政罰 4:同意 5:行政指導 6:指示 7:法規命令 8:職務命令 9:指導指針 10:下命 11:懲戒処分 12:監督処分 13:政治的判断 14:執行命令 15:告示 16:審査基準 17:裁量 18:勧告 19:通達 20:行政規則

(注)※東京都教育委員会

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【答え】:ア:19、イ:8、ウ:17、エ:11【解説】

本件[ア:通達]は、・・・学習指導要領を踏まえ、上級行政機関である都教委*が関係下級行政機関である都立学校の各校長を名宛人としてその職務権限の行使を指揮するために発出したものであって、個々の教職員を名宛人とするものではなく、本件[イ:職務命令]の発出を待たずに当該[ア:通達]自体によって個々の教職員に具体的な義務を課すものではない。また、本件[ア:通達]には、・・・各校長に対し、本件[イ:職務命令]の発出の必要性を基礎付ける事項を示すとともに、教職員がこれに従わない場合は服務上の責任を問われることの周知を命ずる旨の文言があり、これらは国歌斉唱の際の起立斉唱又はピアノ伴奏の実施が必要に応じて[イ:職務命令]により確保されるべきことを前提とする趣旨と解されるものの、本件[イ:職務命令]の発出を命ずる旨及びその範囲等を示す文言は含まれておらず、具体的にどの範囲の教職員に対し本件[イ:職務命令]を発するか等については個々の式典及び教職員ごとの個別的な事情に応じて各校長の[ウ:裁量]に委ねられているものと解される。そして、本件[ア:通達]では、上記のとおり、本件[イ:職務命令]の違反について教職員の責任を問う方法も、[エ:懲戒処分]に限定されておらず、訓告や注意等も含み得る表現が採られており、具体的にどのような問責の方法を採るかは個々の教職員ごとの個別的な事情に応じて都教委の[ウ:裁量]によることが前提とされているものと解される。原審の指摘する都教委の校長連絡会等を通じての各校長への指導の内容等を勘案しても、本件[ア:通達]それ自体の文言や性質等に則したこれらの[ウ:裁量]の存在が否定されるものとは解されない。したがって、本件[ア:通達]をもって、本件[イ:職務命令]と不可分一体のものとしてこれと同視することはできず、本件[イ:職務命令]を受ける教職員に条件付きで[エ:懲戒処分]を受けるという法的効果を生じさせるものとみることもできない。

ア.本件[ ア ]は、・・・学習指導要領を踏まえ、上級行政機関である都教委(※)が関係下級行政機関である都立学校の各校長を名宛人としてその職務権限の行使を指揮するために発出したものであって

ア・・・通達
「本件[ ア ]は、都立学校の各校長を名宛人として、その職務権限の行使を指揮するために発出したもの」ということは
行政機関内部のやり取りと分かります。
つまり、「行政規則」です。
今回の内容は「行政規則」でも、具体的には「通達」に当たります。
よって「アには通達」を入れる方が妥当です。
イ.本件[ ア ]には、・・・各校長に対し、本件[ イ ]の発出の必要性を基礎付ける事項を示すとともに、教職員がこれに従わない場合は服務上の責任を問われることの周知を命ずる旨の文言があり、・・・・
本件[ イ ]の違反について教職員の責任を問う方法も
イ・・・職務命令
「[ イ ]を出して、教職員が[ イ ]に従わない場合は、服務上の責任を問われる」と書いてあります。また、「[ イ ]の違反について教職員の責任を問う」ということから「イには職務命令」が入ります。

ウ.具体的にどの範囲の教職員に対し本件[イ;職務命令]を発するか等については個々の式典及び教職員ごとの個別的な事情に応じて各校長の[ ウ ]に委ねられているものと解される。

ウ・・・裁量
「教職員ごとの個別的な事情に応じて各校長の[ ウ ]に委ねられている」という記述から、どの範囲の教職員に対して職務命令を出すかは各校長が事情に応じて行うということなので、
「ウには裁量」が入ります。

エ.本件[イ:職務命令 ]の違反について教職員の責任を問う方法も、[ エ ]に限定されておらず

エ・・・懲戒処分
勤務実績がよくない場合(欠勤ばかりしている)」「心身の故障のため職務の遂行に支障」については「分限処分」の対象です(国家公務員法78条)。一方、「職務上の義務に違反し、又は職務を怠った場合」は懲戒処分の対象です(国家公務員法82条1項2号)。職務命令違反は、後者にあたるので、「エには懲戒処分」が入ります。

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平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 内閣 問33 民法・債権
問4 内閣 問34 民法:債権
問5 財政 問35 民法:親族
問6 法の下の平等 問36 商法
問7 社会権 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成24年・2012|問25|行政法

Xは、消費者庁長官に対して、同庁が実施したA社の製品の欠陥に関する調査の記録につき、行政機関情報公開法(※)に基づき、その開示を請求したが、消費者庁長官は、A社の競争上の地位を害するため同法所定の不開示事由に該当するとして、これを不開示とする決定をした。この場合についての次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. Xは、不開示決定に対して、総務省におかれた情報公開・個人情報保護審査会に対して審査請求をすることができるが、これを経ることなく訴訟を提起することもできる。
  2. Xは、消費者庁長官を被告として、文書の開示を求める義務付け訴訟を提起することができる。
  3. Xは、仮の救済として、文書の開示を求める仮の義務付けを申立てることができるが、これには、不開示決定の執行停止の申立てを併合して申立てなければならない。
  4. Xが提起した訴訟について、A社は自己の利益を守るために訴訟参加を求めることができるが、裁判所が職権で参加させることもできる。
  5. Xは、不開示決定を争う訴訟の手続において、裁判所に対して、当該文書を消費者庁長官より提出させて裁判所が見分することを求めることができる。

(注)※ 行政機関の保有する情報の公開に関する法律

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【答え】:4【解説】
1.Xは、不開示決定に対して、総務省におかれた情報公開・個人情報保護審査会に対して審査請求をすることができるが、これを経ることなく訴訟を提起することもできる。
1・・・妥当ではない
審査請求は、法律に特別の定めがある場合を除くほか、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める行政庁に対してするものとします(行政不服審査法4条1項)。
  1. 「処分庁又は不作為庁に上級行政庁がない場合」又は「処分庁等が主任の大臣若しくは宮内庁長官若しくは庁の長である場合」→当該処分庁
  2. 宮内庁長官又はその他の庁の長が処分庁等の上級行政庁である場合→宮内庁長官又は当該庁の長
  3. 主任の大臣が処分庁等の上級行政庁である場(前2号に掲げる場合を除く)→当該主任の大臣

本問では、消費者庁長官が不開示の決定をしているので、審査請求先は、上記1号の通り、消費者庁長官となります。

よって、「情報公開・個人情報保護審査会に対して審査請求をすることができる」は誤りです。

また、情報公開法には、不服審査前置主義の規定はないので、「これを経ることなく訴訟を提起することもできる」という点は正しいです。

2.Xは、消費者庁長官を被告として、文書の開示を求める義務付け訴訟を提起することができる。
2・・・妥当ではない
処分又は裁決をした行政庁が国又は公共団体に所属する場合には、取消訴訟は、「国又は公共団体」を被告として提起しなければなりません(行政事件訴訟法11条1項)。
上記規定は、義務付け訴訟にも準用されています(同法38条1項)
よって、義務付け訴訟の被告は「国」です。
「消費者庁長官」は妥当ではありません。
3.Xは、仮の救済として、文書の開示を求める仮の義務付けを申立てることができるが、これには、不開示決定の執行停止の申立てを併合して申立てなければならない。
3・・・妥当ではない
仮の義務付けは、義務付け訴訟の判決の確定を待っていては遅い場合に、仮の救済制度してあります。そのため、仮の義務付けは、事前に義務付け訴訟を提起していることが要件です。
ただ、問題文では、義務付け訴訟を提起しているかどうかの記載はありません。本肢でいうと、
「不開示決定の執行停止の申立てを併合して申立てなければならない」が誤りです。
執行停止の申立てを併合する旨の規定はありません
よって、妥当ではないです。
4.Xが提起した訴訟について、A社は自己の利益を守るために訴訟参加を求めることができるが、裁判所が職権で参加させることもできる。
4・・・妥当
裁判所は、訴訟の結果により権利を害される第三者があるときは、当事者若しくはその第三者の申立てにより又は職権で、決定をもって、その第三者を訴訟に参加させることができます(行政事件訴訟法22条1項)。
よって、本肢は妥当です。
5.Xは、不開示決定を争う訴訟の手続において、裁判所に対して、当該文書を消費者庁長官より提出させて裁判所が見分することを求めることができる。
5・・・妥当ではない
裁判所だけが文書等を直接見分する方法により行われる非公開の審理」を「インカメラ審理」と言います。
本肢は、Xは不開示決定を争う訴訟の手続において、インカメラ審理を求めることができるかを問われています。
判例によると、
「情報公開法に基づく行政文書の開示請求に対する不開示決定の取消訴訟において、インカメラ審理を求めることは許されない。」と判示しています。
よって、本肢は妥当ではありません。

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平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 内閣 問33 民法・債権
問4 内閣 問34 民法:債権
問5 財政 問35 民法:親族
問6 法の下の平等 問36 商法
問7 社会権 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成24年・2012|問24|行政法

Xは、A川の河川敷においてゴルフ練習場を経営すべく、河川管理者であるY県知事に対して、河川法に基づく土地の占用許可を申請した。この占用許可についての次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. この占用許可は、行政法学上の「許可」であるから、Xの申請に許可を与えるか否かについて、Y県知事には、裁量の余地は認められない。
  2. 申請が拒否された場合、Xは、不許可処分の取消訴訟と占用許可の義務付け訴訟を併合提起して争うべきであり、取消訴訟のみを単独で提起することは許されない。
  3. Y県知事は、占用を許可するに際して、行政手続法上、同時に理由を提示しなければならず、これが不十分な許可は、違法として取り消される。
  4. Xが所定の占用料を支払わない場合、Y県知事は、行政代執行法の定めによる代執行によって、その支払いを強制することができる。
  5. Y県知事は、河川改修工事などのやむをえない理由があれば、許可を撤回できるが、こうした場合でも、Xに損失が生ずれば、通常生ずべき損失を補償しなければならない。

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【答え】:5【解説】
1.この占用許可は、行政法学上の「許可」であるから、Xの申請に許可を与えるか否かについて、Y県知事には、裁量の余地は認められない。
1・・・妥当ではない
河川の使用許可・占有許可」は行政講学上、「形成的行為」の中の「特許」に当たります。よって、本肢は誤りです。
特許とは、特別な権利や能力を設定する行為です。
そして、特許については、裁量の余地は広いです。
この点も誤りです。一方、
命令的行為」の中の「許可」は、禁止されている行為を、特定の場合に解除して、適法に特定の行為を行わせる行為です。
例えば、自動車の運転免許です。運転は禁止されていますが、免許を受けた者だけが、自動車を運転することが認められます。そして、許可については、裁量の余地は狭いです。
つまり、決められた基準があり、その基準を満たせば、許可を受けることができ、基準を満たさない場合は許可を受けることができない、という風に機械的に判断します。

「命令的行為・形成的行為」の詳細解説はこちら>>

2.申請が拒否された場合、Xは、不許可処分の取消訴訟と占用許可の義務付け訴訟を併合提起して争うべきであり、取消訴訟のみを単独で提起することは許されない。
2・・・妥当ではない
取消訴訟については、単独で提起できます。よって、誤りです。本肢、申請を拒否されたから、「申請を認めてください!」と占有許可の義務付け訴訟を行う場合(申請型義務付け訴訟)は、「申請拒否の取消訴訟」等を併合して提起する必要があります(行政事件訴訟法37条の3の3項2号)。
3.Y県知事は、占用を許可するに際して、行政手続法上、同時に理由を提示しなければならず、これが不十分な許可は、違法として取り消される。
3・・・妥当ではない
行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければなりません。
ただし、法令に定められた許認可等の要件又は公にされた審査基準が数量的指標その他の客観的指標により明確に定められている場合であって、当該申請がこれらに適合しないことが申請書の記載又は添付書類その他の申請の内容から明らかであるときは、申請者の求めがあったときにこれを示せば足ります(行政手続法8条)。上記ルールは、「拒否する処分をする場合」です。
本肢は、許可をしているので、その場合、理由の提示は不要です。
よって、理由を提示しなくても違法ではありません。
4.Xが所定の占用料を支払わない場合、Y県知事は、行政代執行法の定めによる代執行によって、その支払いを強制することができる。
4・・・妥当ではない
代執行とは、公法上の代替的作為義務が履行されない場合(その義務を、第三者が代わりに行うことができるけど、それを行わない場合)に、
行政庁が自ら義務者のなすべき行為をなし、又は第三者にさせて、その費用を義務者から徴収することです。
Xが占有料を支払わないから、行政庁が代わりに支払うというのはおかしいです。
つまり、本肢は代執行ではありません。本肢の内容は「強制徴収」です。
国や地方公共団体が有する金銭債権について、その履行がされない場合に、それを強制的に回収するのが、強制徴収です。
5.Y県知事は、河川改修工事などのやむをえない理由があれば、許可を撤回できるが、こうした場合でも、Xに損失が生ずれば、通常生ずべき損失を補償しなければならない。
5・・・妥当
河川管理者は、許可の撤回などの処分をした場合において、当該処分により損失を受けた者があるときは、その者に対して通常生ずべき損失を補償しなければなりません(河川法76条1項)。
よって、本肢は正しいです。

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平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 内閣 問33 民法・債権
問4 内閣 問34 民法:債権
問5 財政 問35 民法:親族
問6 法の下の平等 問36 商法
問7 社会権 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成24年・2012|問23|地方自治法

地方自治法に定める、普通地方公共団体の長と議会との関係に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

  1. 議会の権限に属する軽易な事項で、その議決により特に指定したものは、長において専決処分にすることができる。
  2. 議会において長の不信任の議決がなされた場合には、長は議会を解散することができる。
  3. 議会の審議に必要な説明のため議長から出席を求められたときは、長は議場に出席しなければならないが、出席できない正当な理由があり、その旨を議長に届け出たときは、出席しなくてもよい。
  4. 議会の議決が法令に違反すると認められるときは、長は専決処分により、議決を適法なものとするための是正措置をとることができる。
  5. 議会の議決において、収入又は支出に関し執行することができないものがあったとしても、長は必ずしも再議に付す法的義務を負うわけではない。

>解答と解説はこちら


【答え】:4【解説】
1.議会の権限に属する軽易な事項で、その議決により特に指定したものは、長において専決処分にすることができる。
1・・・正しい
普通地方公共団体の議会の権限に属する軽易な事項で、その議決により特に指定したものは、普通地方公共団体のにおいて、これを専決処分にすることができます(地方自治法180条1項)。
よって、正しいです。
2.議会において長の不信任の議決がなされた場合には、長は議会を解散することができる。
2・・・正しい
普通地方公共団体の議会において、当該普通地方公共団体の長の不信任の議決をしたときは、直ちに議長からその旨を当該普通地方公共団体の長に通知しなければなりません。
この場合においては、普通地方公共団体の長は、その通知を受けた日から10日以内に議会を解散することができます(地方自治法178条1項)。よって、議会において長の不信任の議決がなされた場合には、長は議会を解散することができるので、本肢は正しいです。
3.議会の審議に必要な説明のため議長から出席を求められたときは、長は議場に出席しなければならないが、出席できない正当な理由があり、その旨を議長に届け出たときは、出席しなくてもよい。
3・・・正しい
普通地方公共団体の長等は、議会の審議に必要な説明のため議長から出席を求められたときは、原則、議場に出席しなければなりません。
ただし、出席すべき日時に議場に出席できないことについて正当な理由がある場合において、その旨を議長に届け出たときは、出席しなくてもよいです(地方自治法121条1項)。
よって、本肢は正しいです。
4.議会の議決が法令に違反すると認められるときは、長は専決処分により、議決を適法なものとするための是正措置をとることができる。
4・・・誤り
「普通地方公共団体の議会の議決又は選挙」が「その権限を超え又は法令若しくは会議規則に違反する」と認めるときは、当該普通地方公共団体の長は、理由を示してこれを再議に付し又は再選挙を行わせなければなりません:(地方自治法176条4項:違法再議)。
つまり、「専決処分により是正措置をとることができる」のではありません。
正しくは「理由を示して再議(再度議決のやり直し)に付さなければならない」です。
5.議会の議決において、収入又は支出に関し執行することができないものがあったとしても、長は必ずしも再議に付す法的義務を負うわけではない。
5・・・正しい
収入又は支出に関し執行することができないものがあった(収支執行不可能)」場合については、一般再議に該当するので、再議するか否かは、長の判断によります。
そのため、必ずしも再議に付す義務はないので、正しいです。

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平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 内閣 問33 民法・債権
問4 内閣 問34 民法:債権
問5 財政 問35 民法:親族
問6 法の下の平等 問36 商法
問7 社会権 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成24年・2012|問22|地方自治法

地方自治法およびその内容に関する次のア~オの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。

ア 地方自治法の廃止は、日本国憲法の定めるところにより、住民投票を経て行わなければならない。

イ 地方自治法は、その目的として、「地方公共団体の健全な発達を保障すること」をあげている。

ウ 地方自治法は、「地方自治の本旨」の内容につき、それが「住民自治」と「団体自治」とを意味すると規定している。

エ 地方自治法には、地方財政法や地方公務員法等に優先して適用されるとの規定があり、地方自治の基本法としての位置づけが明確にされている。

オ 現行の地方自治法は、第二次世界大戦前の(旧)地方自治法を抜本的に改正して制定されたものである。

  1. 一つ
  2. 二つ
  3. 三つ
  4. 四つ
  5. 五つ

>解答と解説はこちら


【答え】:4【解説】
ア 地方自治法の廃止は、日本国憲法の定めるところにより、住民投票を経て行わなければならない。
ア・・・誤り
地方自治法の廃止について、特別な規定はないので、通常の法律を定める場合と同じく国会の決議によって行います。
なので、住民投票は不要です。
イ 地方自治法は、その目的として、「地方公共団体の健全な発達を保障すること」をあげている。
イ・・・正しい
地方自治法の目的は1条に規定されています。

地方自治法1条
この法律は、地方自治の本旨に基いて、地方公共団体の区分並びに地方公共団体の組織及び運営に関する事項の大綱を定め、併せて国と地方公共団体との間の基本的関係を確立することにより、地方公共団体における民主的にして能率的な行政の確保を図るとともに、地方公共団体の健全な発達を保障することを目的とする

地方自治法は、その目的として、「地方公共団体の健全な発達を保障すること」をあげています。

ウ 地方自治法は、「地方自治の本旨」の内容につき、それが「住民自治」と「団体自治」とを意味すると規定している。
ウ・・・誤り
地方自治法に、「地方自治の本旨」の内容について規定されていません
よって、誤りです。ただ、地方自治の本旨には「住民自治」と「団体自治」の2つの要素があると考えられています。
  • 住民自治地方政治はその地方の住民によって行われるべきという考え方
  • 団体自治地方政治が国から独立した機関によって行われるべきという考え方
エ 地方自治法には、地方財政法や地方公務員法等に優先して適用されるとの規定があり、地方自治の基本法としての位置づけが明確にされている。
エ・・・誤り
本肢のような、地方自治法が、地方財政法や地方公務員法等に優先して適用されるとの規定はありません。
よって、誤りです。
オ 現行の地方自治法は、第二次世界大戦前の(旧)地方自治法を抜本的に改正して制定されたものである。
オ・・・誤り
(旧)地方自治法は、第二次世界大戦前にはありませんでした。
第二次世界大戦後に、日本国憲法が制定され、92条地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。」に基づいて、地方自治法が制定されました。
つまり、地方自治法は、戦後初めて制定されました。

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平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 内閣 問33 民法・債権
問4 内閣 問34 民法:債権
問5 財政 問35 民法:親族
問6 法の下の平等 問36 商法
問7 社会権 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成24年・2012|問21|地方自治法

国とA市との間の紛争に関する次の記述のうち、法令または判例に照らし、正しいものはどれか。

  1. A市長は、自治事務に関する国の関与に不服があるときは、地方裁判所に対し、当該関与を行った国の行政庁を被告として、その取消しを求める抗告訴訟を提起することができる。
  2. A市の法定受託事務に関する国の関与が違法であると認めるときは、国地方係争処理委員会は、当該関与を行った国の行政庁に対して、理由を付し、期間を示した上で、必要な措置を講ずべきことを勧告することになる。
  3. 国の所有地内にあるA市の物件の撤去を国が求める場合、担当大臣は、A市長に対して地方自治法所定の国の関与としての代執行の手続をとることになる。
  4. A市情報公開条例に基づき、A市長が国の建築物の建築確認文書について公開する旨の決定をした場合、当該決定について不服を有する国がこの決定に対して取消訴訟を提起しても、当該訴訟は法律上の争訟に該当しないとして却下されることになる。
  5. A市に対する国の補助金交付の決定について、それが少額であるとしてA市が不服をもっている場合、A市が救済を求める際の訴訟上の手段としては、地方自治法に機関訴訟が法定されている。

>解答と解説はこちら


【答え】:2【解説】
1.A市長は、自治事務に関する国の関与に不服があるときは、地方裁判所に対し、当該関与を行った国の行政庁を被告として、その取消しを求める抗告訴訟を提起することができる。
1・・・誤り
国の関与に関する審査の申出をした「普通地方公共団体の長その他の執行機関」は、高等裁判所に対し、当該審査の申出の相手方となった国の行政庁を被告として、訴えをもって当該審査の申出に係る違法な国の関与の取消し又は当該審査の申出に係る国の不作為の違法の確認を求めること(機関訴訟)ができます(地方自治法251条の5の1項)。
つまり、「地方裁判所」ではなく「高等裁判所」が正しいです。
また、「抗告訴訟」ではなく「機関訴訟」が正しいです。
2.A市の法定受託事務に関する国の関与が違法であると認めるときは、国地方係争処理委員会は、当該関与を行った国の行政庁に対して、理由を付し、期間を示した上で、必要な措置を講ずべきことを勧告することになる。
2・・・正しい
国地方係争処理委員会は、法定受託事務に関する国の関与が違法であると認めるときは、国の行政庁に対し、理由を付し、かつ、期間を示して、必要な措置を講ずべきことを勧告するとともに、勧告の内容を通知し、かつ、これを公表しなければなりません(地方自治法250条の14の2項)。
よって、本肢は正しいです。
3.国の所有地内にあるA市の物件の撤去を国が求める場合、担当大臣は、A市長に対して地方自治法所定の国の関与としての代執行の手続をとることになる。
3・・・誤り
まず、代執行の対象となるのは、「法定受託事務」です。
法定受託事務とは、そもそも「国が本来果たすべき役割に係るもの(国がすべき事務)」です。
「A市の物件の撤去」については、国がすべき事務ではないので、代執行手続きはできません。
よって、誤りです。
4.A市情報公開条例に基づき、A市長が国の建築物の建築確認文書について公開する旨の決定をした場合、当該決定について不服を有する国がこの決定に対して取消訴訟を提起しても、当該訴訟は法律上の争訟に該当しないとして却下されることになる。
4・・・誤り
那覇市が、市の情報公開条例に基づいて、自衛隊対潜水艦戦作戦センター庁舎の建築計画書付属資料を市民団体の請求に対して開示決定をしたので、「国防上の支障が生じる」として国が当該開示決定の取消訴訟を提起したという事案で
判例(最判平13.7.13)によると、「公開されることで、本件建物の内部構造などが明らかになり、警備上の支障が生じるほか、外部からの攻撃に対応する機能の減殺により建物の安全性が低減するなど、本件建物の所有者として有する固有の利益が侵害されるため「法律上の争訟に当たる」としました。
よって、「法律上の争訟に該当しない」というのは誤りです。
5.A市に対する国の補助金交付の決定について、それが少額であるとしてA市が不服をもっている場合、A市が救済を求める際の訴訟上の手段としては、地方自治法に機関訴訟が法定されている。
5・・・誤り
補助金等の交付の決定に対して不服のある地方公共団体は、各省各庁の長に対して不服を申し出ることができます(補助金適正化法25条)。
機関訴訟できる旨の規定はないので、本肢は誤りです。
本肢の場合、各省各庁の長に対して不服申し立てができます。

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平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 内閣 問33 民法・債権
問4 内閣 問34 民法:債権
問5 財政 問35 民法:親族
問6 法の下の平等 問36 商法
問7 社会権 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成24年・2012|問20|国家賠償法

国家賠償制度に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、正しいものはどれか。

  1. 国家賠償法4条に定める「民法の規定」には失火責任法(※)も含まれるが、消防署職員の消火活動上の失火による国家賠償責任については、消防署職員が消火活動の専門家であることから、失火責任法の適用はない。
  2. 国家賠償法1条1項にいう「公権力の行使」には、公立学校における教師の教育活動が含まれるが、課外クラブ活動中に教師が生徒に対して行う監視・指導は「公権力の行使」には当たらない。
  3. 税務署長のした所得税の更正処分が、税務署長が所得金額を過大に認定したとして判決によって取り消された場合、当該更正処分は直ちに国家賠償法1条1項にいう違法があったとの評価を受ける。
  4. 警察官のパトカーによる追跡を受けて車両で逃走する者が事故を起こして第三者に損害を与えた場合、損害の直接の原因が逃走車両の運転手にあるとしても、当該追跡行為は国家賠償法1条1項の適用上違法となり得る。
  5. 同一行政主体に属する数人の公務員による一連の職務上の行為の過程で他人に損害が生じた場合、被害者が国家賠償を請求するためには、損害の直接の原因となった公務員の違法行為を特定する必要がある。

(注)※ 失火ノ責任ニ関スル法律

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【答え】:4【解説】
1.国家賠償法4条に定める「民法の規定」には失火責任法も含まれるが、消防署職員の消火活動上の失火による国家賠償責任については、消防署職員が消火活動の専門家であることから、失火責任法の適用はない。
1・・・誤り
判例の要旨によると、
公権力の行使にあたる公務員の失火による国又は公共団体の損害賠償責任については、失火の責任に関する法律が適用される。」
としています。
よって、本肢は誤りです。
2.国家賠償法1条1項にいう「公権力の行使」には、公立学校における教師の教育活動が含まれるが、課外クラブ活動中に教師が生徒に対して行う監視・指導は「公権力の行使」には当たらない。
2・・・誤り
判例によると、
「町立中学校の生徒が、放課後、体育館において、課外のクラブ活動中の運動部員の練習の妨げとなる行為をしたとして同部員から顔面を殴打されたなど判示のような事情のもとで生じた喧嘩により左眼を失明した場合に、同部顧問の教諭が右クラブ活動に立ち会つていなかつたとしても、右事故の発生する危険性を具体的に予見することが可能であるような特段の事情のない限り、右失明につき同教諭に過失があるとはいえない。 」
と判示しています。
上記内容でいうと、特段の事情がない場合、教諭に過失がないとして、国家賠償責任は負わないことになりますが
逆に、特段の事情があれば、教諭に過失があるとして、国家賠償責任を負うことになります。したがって、公立学校における教師の教育活動は、国家賠償法1条1項にいう「公権力の行使」に含まれ、さらに、課外クラブ活動中に教師が生徒に対して行う監視・指導も、国家賠償法上の「公権力の行使」に該当するということです。
3.税務署長のした所得税の更正処分が、税務署長が所得金額を過大に認定したとして判決によって取り消された場合、当該更正処分は直ちに国家賠償法1条1項にいう違法があったとの評価を受ける。
3・・・誤り
判例によると、
税務署長Yのする所得税の更正は、所得金額を過大に認定していたとしても、そのことから直ちに国家賠償法1条1項にいう違法があったとの評価を受けるものではなく、税務署長が資料を収集し、これに基づき課税要件事実を認定、判断する上において、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と更正をしたと認め得るような事情がある場合に限り、違法の評価を受けるものと解するのが相当である。」
と判示しています。よって、税務署長のした所得税の更正処分が、税務署長が所得金額を過大に認定したとして判決によって取り消された場合、当該更正処分は直ちに国家賠償法1条1項にいう違法とはなりません。したがって、誤りです。
4.警察官のパトカーによる追跡を受けて車両で逃走する者が事故を起こして第三者に損害を与えた場合、損害の直接の原因が逃走車両の運転手にあるとしても、当該追跡行為は国家賠償法1条1項の適用上違法となり得る。
4・・・正しい
判例によると
  1. 追跡が現行犯逮捕、職務質問等の職務の目的を遂行するうえで不必要であるか、又は
  2. 逃走車両の走行の態様及び道路交通状況等から予測される被害発生の具体的危険性の有無・内容に照らして追跡の開始、継続若しくは方法が不相当である場合、

違法となる、としています。

つまり、上記の1もしくは2の場合、違法となる場合もあるので、正しいです。

理解できない方は「理解の仕方」の勉強が必要です。
「理解の仕方」の解説は個別指導で行っています!

5.同一行政主体に属する数人の公務員による一連の職務上の行為の過程で他人に損害が生じた場合、被害者が国家賠償を請求するためには、損害の直接の原因となった公務員の違法行為を特定する必要がある。
5・・・誤り
判例によると、
「国又は公共団体の公務員による一連の職務上の行為の過程において他人に被害を生じさせた場合において、それが具体的にどの公務員のどのような違法行為によるものであるかを特定することができなくても、右の一連の行為のうちのいずれかに行為者の故意又は過失による違法行為があったのでなければ右の被害が生ずることはなかったであろうと認められ、かつ、それがどの行為であるにせよこれによる被害につき行為者の属する国又は公共団体が法律上賠償の責任を負うべき関係が存在するときは、国又は公共団体は、加害行為不特定の故をもって国家賠償法又は民法上の損害賠償責任を免れることができないと解するのが相当である。」
と判示しています。つまり、損害の直接の原因となった公務員の違法行為を特定できなくても、国家賠償請求はできます。

したがって、本肢は誤りです。

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平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 内閣 問33 民法・債権
問4 内閣 問34 民法:債権
問5 財政 問35 民法:親族
問6 法の下の平等 問36 商法
問7 社会権 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成24年・2012|問19|国家賠償法

以下の文章は、国家賠償法2条1項に言及した最高裁判所判決の一節である。次の記述のうち、この判決の内容と明らかに矛盾するものはどれか。

「国家賠償法二条一項の営造物の設置又は管理の瑕疵とは、営造物が有すべき安全性を欠いている状態をいうのであるが、そこにいう安全性の欠如、すなわち、他人に危害を及ぼす危険性のある状態とは、ひとり当該営造物を構成する物的施設自体に存する物理的、外形的な欠陥ないし不備によつて一般的に右のような危害を生ぜしめる危険性がある場合のみならず、その営造物が供用目的に沿つて利用されることとの関連において危害を生ぜしめる危険性がある場合をも含み、また、その危害は、営造物の利用者に対してのみならず、利用者以外の第三者に対するそれをも含むものと解すべきである。すなわち、当該営造物の利用の態様及び程度が一定の限度にとどまる限りにおいてはその施設に危害を生ぜしめる危険性がなくても、これを超える利用によつて危害を生ぜしめる危険性がある状況にある場合には、そのような利用に供される限りにおいて右営造物の設置、管理には瑕疵があるというを妨げず、 したがつて、右営造物の設置・管理者において、かかる危険性があるにもかかわらず、これにつき特段の措置を講ずることなく、また、適切な制限を加えないままこれを利用に供し、その結果利用者又は第三者に対して現実に危害を生ぜしめたときは、それが右設置・管理者の予測しえない事由によるものでない限り、国家賠償法二条一項の規定による責任を免れることができないと解されるのである。」

(最大判昭和56年12月16日民集35巻10号1369頁)

  1. 営造物の利用により利用者に損害が発生したとしても、それが営造物の設置、管理者の予測しえない事由による場合には、国家賠償法2条1項の責任が認められないことがある。
  2. 国家賠償法2条1項の営造物の設置又は管理の瑕疵には、営造物を構成する物的施設自体に物理的・外形的な欠陥がある場合も含まれる。
  3. 営造物の利用により危害を生ぜしめる危険性があり、営造物の設置・管理者が特段の措置を講ずることなくこれを利用に供した場合であっても、利用者又は第三者への損害の発生がなければ国家賠償法2条1項の責任は認められない。
  4. 営造物の供用によって利用者に対して危害が生じた場合には国家賠償法2条1項の責任が認められる余地があるが、第三者に対して危害が生じた場合には同項の責任が生じる余地はない。
  5. 営造物の利用により危害を生ぜしめる危険性があり、営造物がそのような利用に供されている場合には、営造物を構成する物的施設自体に物理的な瑕疵がなくても、国家賠償法2条1項の営造物の設置又は管理の暇庇があるということができる。

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【答え】:4【解説】
1.営造物の利用により利用者に損害が発生したとしても、それが営造物の設置、管理者の予測しえない事由による場合には、国家賠償法2条1項の責任が認められないことがある。
1・・・矛盾しない
判決の内容には下記のように記載されています。
「営造物の設置・管理者において、かかる危険性があるにもかかわらず、これにつき特段の措置を講ずることなく、また、適切な制限を加えないままこれを利用に供し、その結果利用者又は第三者に対して現実に危害を生ぜしめたときは、それが右設置・管理者の予測しえない事由によるものでない限り、国家賠償法二条一項の規定による責任を免れることができないと解されるのである。」つまり、「予測しえない事由でない場合、国家賠償責任を免れることができない
言い換えれば、「予測しえない事由であれば、国家賠償責任を免れることができる
ということです。したがって、「営造物の設置、管理者の予測しえない事由による場合には、国家賠償法2条1項の責任が認められないことがある」という本肢は、判決の内容と矛盾しないです。
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2.国家賠償法2条1項の営造物の設置又は管理の瑕疵には、営造物を構成する物的施設自体に物理的・外形的な欠陥がある場合も含まれる。
2・・・矛盾しない
判決文の内容には下記のように記載されています。
「国家賠償法二条一項の営造物の設置又は管理の瑕疵とは、営造物が有すべき安全性を欠いている状態をいうのであるが、そこにいう安全性の欠如、すなわち、他人に危害を及ぼす危険性のある状態とは、ひとり当該営造物を構成する物的施設自体に存する物理的、外形的な欠陥ないし不備によつて一般的に右のような危害を生ぜしめる危険性がある場合のみならず、・・・をも含むものと解すべきである。」
としています。
つまり、「国家賠償法2条1項の営造物の設置又は管理の瑕疵には、営造物を構成する物的施設自体に物理的・外形的な欠陥がある場合も含まれる」という本肢は、判決の内容と矛盾しないです。
3.営造物の利用により危害を生ぜしめる危険性があり、営造物の設置・管理者が特段の措置を講ずることなくこれを利用に供した場合であっても、利用者又は第三者への損害の発生がなければ国家賠償法2条1項の責任は認められない。
3・・・矛盾しない
判決文の内容には下記のように記載されています。
「適切な制限を加えないままこれを利用に供し、その結果利用者又は第三者に対して現実に危害を生ぜしめたときは、・・・、国家賠償法二条一項の規定による責任を免れることができないと解されるのである。」つまり、「現実の危害が生じたとき」に国家賠償責任が発生するので、
「利用者又は第三者への損害の発生がなければ国家賠償法2条1項の責任は認められない」という本肢は、判決の内容と矛盾しないです。
4.営造物の供用によって利用者に対して危害が生じた場合には国家賠償法2条1項の責任が認められる余地があるが、第三者に対して危害が生じた場合には同項の責任が生じる余地はない。
4・・・矛盾する
判決文の内容には下記のように記載されています。
「適切な制限を加えないままこれを利用に供し、その結果利用者又は第三者に対して現実に危害を生ぜしめたときは、・・・、国家賠償法二条一項の規定による責任を免れることができないと解されるのである。」つまり、第三者に対して危害が生じた場合にも、国家賠償責任が生じるので、本肢の「第三者に対して危害が生じた場合には同項の責任が生じる余地はない」は、判決文の内容と矛盾します。
5.営造物の利用により危害を生ぜしめる危険性があり、営造物がそのような利用に供されている場合には、営造物を構成する物的施設自体に物理的な瑕疵がなくても、国家賠償法2条1項の営造物の設置又は管理の暇庇があるということができる。
5・・・矛盾しない
判決文の内容には下記のように記載されています。
「国家賠償法二条一項の営造物の設置又は管理の瑕疵とは、営造物が有すべき安全性を欠いている状態をいうのであるが、そこにいう安全性の欠如、すなわち、他人に危害を及ぼす危険性のある状態とは、
  1. ひとり当該営造物を構成する物的施設自体に存する物理的、外形的な欠陥ないし不備によつて一般的に右のような危害を生ぜしめる危険性がある場合のみならず、
  2. その営造物が供用目的に沿つて利用されることとの関連において危害を生ぜしめる危険性がある場合をも含み、」

つまり、「営造物の設置又は管理の瑕疵」とは、1もしくは2を指すことが分かります。

言い換えると、1を満たさなくても、2を満たせば、「営造物の設置又は管理の瑕疵」にあたるということです。

本肢の「営造物の利用により危害を生ぜしめる危険性があり、営造物がそのような利用に供されている場合」とは、2にあたります。
2については、「営造物を構成する物的施設自体に物理的な瑕疵」がなくても2に該当するので
本肢は、2に該当するため、判決の内容と矛盾しません。

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平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 内閣 問33 民法・債権
問4 内閣 問34 民法:債権
問5 財政 問35 民法:親族
問6 法の下の平等 問36 商法
問7 社会権 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略