商法の過去問

令和2年・2020|問36|商法

運送品が高価品である場合における運送人の責任に関する特則について述べた次のア~オの記述のうち、商法の規定および判例に照らし、誤っているものの組合せはどれか。

ア.商法にいう「高価品」とは、単に高価な物品を意味するのではなく、運送人が荷送人から収受する運送賃に照らして、著しく高価なものをいう。

イ.運送品が高価品であるときは、荷送人が運送を委託するにあたりその種類および価額を通知した場合を除き、運送人は運送品に関する損害賠償責任を負わない。

ウ.荷送人が種類および価額の通知をしないときであっても、運送契約の締結の当時、運送品が高価品であることを運送人が知っていたときは、運送人は免責されない。

エ.運送人の故意によって高価品に損害が生じた場合には運送人は免責されないが、運送人の重大な過失によって高価品に損害が生じたときは免責される。

オ.高価品について運送人が免責されるときは、運送人の不法行為による損害賠償責任も同様に免除される。

  1. ア・イ
  2. ア・エ
  3. イ・ウ
  4. ウ・オ
  5. エ・オ

>解答と解説はこちら


【答え】:2

【解説】
ア.商法にいう「高価品」とは、単に高価な物品を意味するのではなく、運送人が荷送人から収受する運送賃に照らして、著しく高価なものをいう。

ア・・・誤り

判例(最判昭45.4.21)によると、

「商法の高価品とは、容積または重量の割に著しく高価な物品をいうものと解すべきところ、原審の確定する事実によれば、本件研磨機は容積重量ともに相当巨大であって、その高価なことも一見明瞭な品種であるというのであるから、本件研磨機は同条所定の高価品にはあたらないというべきである。」

としています。

よって、「運送人が荷送人から収受する運送賃に照らして」という部分が誤りです。

「容量・重量の割に著しく高価な物品」が「高価品」です。

イ.運送品が高価品であるときは、荷送人が運送を委託するにあたりその種類および価額を通知した場合を除き、運送人は運送品に関する損害賠償責任を負わない。

イ・・・正しい

貨幣、有価証券その他の高価品については、荷送人が運送を委託するに当たりその種類及び価額を通知した場合を除き、運送人は、その滅失、損傷又は延着について損害賠償の責任を負いません(商法577条1項)

よって、正しいです。

具体例を入れた詳細解説は個別指導で解説します!

ウ.荷送人が種類および価額の通知をしないときであっても、運送契約の締結の当時、運送品が高価品であることを運送人が知っていたときは、運送人は免責されない。

ウ・・・正しい

貨幣、有価証券その他の高価品については、荷送人が運送を委託するに当たりその種類及び価額を通知した場合を除き、運送人は、その滅失、損傷又は延着について損害賠償の責任を負いません(商法577条1項)

そして、上記1項の規定は、下記の場合には、適用されません(商法577条2項)。

一 物品運送契約の締結の当時、運送品が高価品であることを運送人が知っていたとき。

二 運送人の故意又は重大な過失によって高価品の滅失、損傷又は延着が生じたとき。

荷送人が種類および価額の通知をしないときであっても、運送契約の締結の当時、運送品が高価品であることを運送人が知っていたときは、運送人は責任を負います。

よって、正しいです。

詳細解説は個別指導で解説します!

エ.運送人の故意によって高価品に損害が生じた場合には運送人は免責されないが、運送人の重大な過失によって高価品に損害が生じたときは免責される。

エ・・・誤り

選択肢ウの解説のとおり、運送人の故意又は重大な過失によって高価品の滅失、損傷又は延着が生じたときは、運送人は免責とはなりません。

よって、本肢は誤りです。

これも、詳細解説は個別指導で行います!

オ.高価品について運送人が免責されるときは、運送人の不法行為による損害賠償責任も同様に免除される。

オ・・・正しい

「高価品について運送人が免責されるとき」とは、「高価品の種類及び価額」を通知していない場合です(商法577条1項)。

この場合、不法行為による損害賠償の責任も免責される(商法587条)ので、正しいです。

8月から逆転合格:模試ad


令和2年(2020年)過去問

問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 基礎法学 問33 民法:債権
問4 憲法 問34 民法:債権
問5 憲法 問35 民法:親族
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・経済
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・経済
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・社会
問25 情報公開法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政法 問56 基礎知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:物権 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

令和3年・2021|問36|商法

商人でない個人の行為に関する次のア~オの記述のうち、商法の規定および判例に照らし、これを営業として行わない場合には商行為とならないものの組合せはどれか。

ア.利益を得て売却する意思で、時計を買い入れる行為

イ.利益を得て売却する意思で、買い入れた木材を加工し、製作した机を売却する行為

ウ.報酬を受ける意思で、結婚式のビデオ撮影を引き受ける行為

エ.賃貸して利益を得る意思で、レンタル用のDVDを買い入れる行為

オ.利益を得て転売する意思で、取得予定の時計を売却する行為

  1. ア・イ
  2. ア・エ
  3. ウ・エ
  4. ウ・オ
  5. エ・オ

>解答と解説はこちら


【答え】:3

【解説】
ア.利益を得て売却する意思で、時計を買い入れる行為

ア・・・常に商行為となる

次に掲げる行為が、商行為です(商法501条:絶対的商行為)。

  1. 利益を得て譲渡する意思をもってする動産、不動産若しくは有価証券の有償取得又はその取得したものの譲渡を目的とする行為
  2. 他人から取得する動産又は有価証券の供給契約及びその履行のためにする有償取得を目的とする行為・・・選択肢オ
  3. 取引所においてする取引
  4. 手形その他の商業証券に関する行為

よって、「利益を得て売却する意思で、時計を買い入れる行為」は上記1号に当たるので、常に商行為です。

 

イ.利益を得て売却する意思で、買い入れた木材を加工し、製作した机を売却する行為

イ・・・常に商行為となる

選択肢アの商法501条1号の通り

「利益を得て売却する意思で、買い入れた木材を加工し、製作した机を売却する行為」は、常に商行為です。

 

ウ.報酬を受ける意思で、結婚式のビデオ撮影を引き受ける行為

ウ・・・営業として行わない場合には商行為とならない

次に掲げる行為は、営業としてするときは、商行為となります。ただし、専ら賃金を得る目的で物を製造し、又は労務に従事する者の行為は、商行為ではないです(商法502条:営業的商行為)。

  1. 賃貸する意思をもってする動産若しくは不動産の有償取得若しくは賃借又はその取得し若しくは賃借したものの賃貸を目的とする行為・・・選択肢エ
  2. 他人のためにする製造又は加工に関する行為
  3. 電気又はガスの供給に関する行為
  4. 運送に関する行為
  5. 作業又は労務の請負
  6. 出版、印刷又は撮影に関する行為
  7. 客の来集を目的とする場屋における取引
  8. 両替その他の銀行取引
  9. 保険
  10. 寄託の引受け
  11. 仲立ち又は取次ぎに関する行為
  12. 商行為の代理の引受け
  13. 信託の引受け

「報酬をもらうつもりで、結婚式のビデオ撮影を引き受ける行為」は、商法502条6号の行為(営業的商行為)に該当するので、営業として行わない場合は、商行為になりません。

 

エ.賃貸して利益を得る意思で、レンタル用のDVDを買い入れる行為

エ・・・営業として行わない場合には商行為とならない

選択肢ウの商法502条1号の通り、「賃貸して利益を得る意思で、レンタル用のDVDを買い入れる行為」は、営業として行わない場合は、商行為になりません。

 

オ.利益を得て転売する意思で、取得予定の時計を売却する行為

オ・・・商行為となる

選択肢アの商法501条2号の通り

「利益を得て転売する意思で、取得予定の時計を売却する行為」は、常に商行為です。

8月から逆転合格:模試ad


令和3年(2021年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政手続法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略