令和4年度(2022年度)過去問

令和4年・2022|問19|行政事件訴訟法

行政事件訴訟法が定める処分無効確認訴訟(以下「無効確認訴訟」という。)に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか

  1. 無効確認訴訟は、処分が無効であることを主張して提起する訴訟であるから、当該処分に無効原因となる瑕疵が存在しない場合、当該訴えは不適法なものとして却下される。
  2. 無効確認訴訟には、取消訴訟の原告適格を定める規定が準用されておらず、原告適格に関する制約はない。
  3. 無効確認訴訟は、処分の取消訴訟につき審査請求の前置が要件とされている場合においても、審査請求に対する裁決を経ずにこれを提起することができる。
  4. 無効確認訴訟においては、訴訟の対象となる処分は当初から無効であるのが前提であるから、当該処分の執行停止を申し立てることはできない。
  5. 無効確認訴訟は、処分が無効であることを前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができる場合にも、提起することができる。

>解答と解説はこちら


【答え】:3

【解説】
1.無効確認訴訟は、処分が無効であることを主張して提起する訴訟であるから、当該処分に無効原因となる瑕疵が存在しない場合、当該訴えは不適法なものとして却下される。

1・・・妥当ではない

無効確認訴訟において、当該処分に無効原因となる瑕疵が存在しない場合は、棄却されます。

本肢は、「当該訴えは不適法なものとして却下される」となっているので妥当ではありません。

これは基本事項ですが、理解学習を実践できていない方は、ひっかかる問題です。

ヒッカケ問題にひっかかるのは、凡ミスをしたからではありません。

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2.無効確認訴訟には、取消訴訟の原告適格を定める規定が準用されておらず、原告適格に関する制約はない。

2・・・妥当ではない

無効確認訴訟は、取消訴訟の原告適格が準用されていません(行政事件訴訟法38条1項3項、9条)。
よって、前半部分は妥当です。

しかし、無効確認訴訟は、行政事件訴訟法36条に、原告適格の規定を特別に定めています。

よって、妥当ではありません。

無効確認訴訟は、当該処分又は裁決に続く処分により損害を受けるおそれのある者その他当該処分又は裁決の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者で、当該処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができないものに限り、提起することができる(行政事件訴訟法36条:無効等確認の訴えの原告適格)。

3.無効確認訴訟は、処分の取消訴訟につき審査請求の前置が要件とされている場合においても、審査請求に対する裁決を経ずにこれを提起することができる。

3・・・妥当

処分の取消しの訴えは、当該処分につき法令の規定により審査請求をすることができる場合においても、直ちに提起することをできます。
ただし、法律に当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ処分の取消しの訴えを提起することができない旨の定めがあるときは、審査請求に対する裁決を経た後でなければ取消訴訟を提起することができません(行政事件訴訟法8条1項)。

そして、本肢の「処分の取消訴訟につき審査請求の前置が要件とされている場合においても、審査請求に対する裁決を経ずにこれを提起することができる」旨の規定は、上記「行政事件訴訟法8条1項ただし書き」の内容です。

そして、上記規定は、無効確認訴訟では、準用されていません(行政事件訴訟法38条1項3項)。

つまり、審査請求に対する裁決を経た後でなくても、無効確認訴訟を提起することができます。

よって、本肢は、妥当です。

4.無効確認訴訟においては、訴訟の対象となる処分は当初から無効であるのが前提であるから、当該処分の執行停止を申し立てることはできない。

4・・・妥当ではない

無効確認訴訟においては、執行停止の申立てができるので、本肢は妥当ではありません。

「執行停止の申立て」は、行政事件訴訟法25条であり、行政事件訴訟法38条3項で、「執行停止の申立て」は、無効確認訴訟について準用していることが分かります。

無効確認訴訟にかかる処分については、無効と判断されるまで、行政庁は、「処分が無効」だと分かっていません。

そのため、強制執行される可能性があります。

よって、権利保護手段として執行停止制度が準用されています。

このような基本事項は、たくさん頭に入れる必要があります!

そのためにも、たくさん問題に触れる必要があります。

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5.無効確認訴訟は、処分が無効であることを前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができる場合にも、提起することができる。

5・・・妥当ではない

本肢は「目的を達することができる場合にも」という部分が妥当ではありません。

無効確認訴訟は、当該処分又は裁決に続く処分により損害を受けるおそれのある者その他当該処分又は裁決の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者で、当該処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができないものに限り、提起することができます(行政事件訴訟法36条)。

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令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問20|国家賠償法

国家賠償法1条1項に基づく国家賠償責任に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 検察官が公訴を提起したものの、裁判で無罪が確定した場合、当該公訴提起は、国家賠償法1条1項の適用上、当然に違法の評価を受けることとなる。
  2. 指定確認検査機関による建築確認事務は、当該確認に係る建築物について確認権限を有する建築主事が置かれた地方公共団体の事務であり、当該地方公共団体が、当該事務について国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任を負う。
  3. 公立学校における教職員の教育活動は、私立学校の教育活動と変わるところはないため、原則として、国家賠償法1条1項にいう「公権力の行使」に当たらない。
  4. 税務署長のする所得税の更正が所得金額を過大に認定していた場合、当該更正は、国家賠償法1条1項の適用上、当然に違法の評価を受けることとなる。
  5. 警察官が交通法規に違反して逃走する車両をパトカーで追跡する職務執行中に、逃走車両の走行によって第三者が負傷した場合、当該追跡行為は、当該第三者との関係において、国家賠償法1条1項の適用上、当然に違法の評価を受けることとなる。

>解答と解説はこちら


【答え】:2

【解説】
1.検察官が公訴を提起したものの、裁判で無罪が確定した場合、当該公訴提起は、国家賠償法1条1項の適用上、当然に違法の評価を受けることとなる。

1・・・妥当ではない

下記判例の通り、公訴が無罪だったとしても、当然に違法と評価されるわけではないので、妥当ではありません。

下記判例は基本的な判例です。

かみ砕いて、整理して、頭に入れておきましょう!

かみ砕いて、整理した内容は、個別指導で解説します!

【判例:最判昭53.10.20】刑事事件において無罪の判決が確定したというだけで直ちに起訴前の逮捕・勾留、公訴の提起・追行、起訴後の勾留が違法となるということはない。

けだし(なぜならば)、逮捕・勾留はその時点において犯罪の嫌疑について相当な理由があり、かつ、必要性が認められるかぎりは適法であり、公訴の提起は、検察官が裁判所に対して犯罪の成否、刑罰権の存否につき審判を求める意思表示にほかならないのであるから、起訴時あるいは公訴追行時における検察官の心証は、その性質上、判決時における裁判官の心証と異なり、起訴時あるいは公訴追行時における各種の証拠資
料を総合勘案して合理的な判断過程により有罪と認められる嫌疑があれば足りるものと解するのが相当であるからである。

2.指定確認検査機関による建築確認事務は、当該確認に係る建築物について確認権限を有する建築主事が置かれた地方公共団体の事務であり、当該地方公共団体が、当該事務について国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任を負う。

2・・・妥当

本肢は、下記判例の通り、妥当です。

関連ポイントは個別指導で解説します!

「関連ポイント学習」も「理解学習」の一つです!

行政書士試験に合格するために、1つの問題から複数のポイントをまとめて勉強する「関連ポイント学習」を行っていきましょう!

【判例:最判平17.6.24】
指定確認検査機関による確認に関する事務は、建築主事による確認に関する事務の場合と同様に、地方公共団体の事務であり、その事務の帰属する行政主体は、当該確認に係る建築物について確認をする権限を有する建築主事が置かれた地方公共団体であると解するのが相当である。
したがって、指定確認検査機関の確認に係る建築物について確認をする権限を有する建築主事が置かれた地方公共団体は、指定確認検査機関の当該確認につき行政事件訴訟法21条1項所定の当該処分又は裁決に係る事務の帰属する国又は公共団体にあたるとし、建築確認を行う民間の指定確認検査機関による建築確認により、相手方に損害を与えてしまった場合、地方公共団体が国家賠償責任を負う
3.公立学校における教職員の教育活動は、私立学校の教育活動と変わるところはないため、原則として、国家賠償法1条1項にいう「公権力の行使」に当たらない。

3・・・妥当ではない

下記判例の通り、公立学校における教職員の教育活動は、私立学校の教育活動と異なり、原則として、国家賠償法1条1項にいう「公権力の行使」に当たります。

よって、妥当ではありません。

(国家賠償法1条1項)
国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。

【最判昭62.2.6】

国家賠償法1条1項にいう「公権力の行使」には、公立学校における教師の教育活動も含まれるものと解するのが相当である

4.税務署長のする所得税の更正が所得金額を過大に認定していた場合、当該更正は、国家賠償法1条1項の適用上、当然に違法の評価を受けることとなる。

4・・・妥当ではない

【判例:最判平5.3.11】
税務署長のする所得税の更正は、所得金額を過大に認定していたとしても、そのことから直ちに国家賠償法1条1項にいう違法があったとの評価を受けるものではなく、税務署長が資料を収集し、これに基づき課税要件事実を認定、判断する上において、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と更正をしたと認め得るような事情がある場合に限り、右の評価を受ける

つまり、税務署長のする所得税の更正が所得金額を過大に認定していた場合、当然に違法の評価を受けることとはなりません。よって妥当ではありません

「違法の評価を受ける」のは、税務署長が、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と更正をしたと認め得るような事情がある場合です。

5.警察官が交通法規に違反して逃走する車両をパトカーで追跡する職務執行中に、逃走車両の走行によって第三者が負傷した場合、当該追跡行為は、当該第三者との関係において、国家賠償法1条1項の適用上、当然に違法の評価を受けることとなる。

5・・・妥当ではない

【判例:最判昭61.2.27】

追跡行為が違法であるというためには、「①右追跡が当該職務目的を遂行する上で不必要であるか」、又は「②逃走車両の逃走の態様及び道路交通状況等から予測される被害発生の具体的危険性の有無及び内容に照らし、追跡の開始・継続若しくは追跡の方法が不相当である」ことを要するものと解すべきである。

本肢は、「当然に違法の評価を受けることとなる」という部分が妥当ではありません。

警察官が交通法規に違反して逃走する車両をパトカーで追跡する職務執行中に、逃走車両の走行によって第三者が負傷した場合、当該追跡行為が違法となるのは、上記判例の①又は②を満たす場合です。

①も②も満たさないにもかかわらず、当然に違法とはなりません。

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令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問21|国家賠償法

国家賠償法2条1項に基づく国家賠償責任に関する次のア~エの記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア.営造物の設置または管理の瑕疵には、当該営造物が供用目的に沿って利用されることとの関連においてその利用者以外の第三者に対して危害を生ぜしめる危険性がある場合を含むものと解されるが、具体的に道路の設置または管理につきそのような瑕疵があったと判断するにあたっては、当該第三者の被害について、道路管理者において回避可能性があったことが積極的要件とされる。

イ.営造物の供用が第三者に対する関係において違法な権利侵害ないし法益侵害となり、当該営造物の設置・管理者が賠償義務を負うかどうかを判断するにあたっては、侵害行為の開始とその後の継続の経過および状況、その間に採られた被害の防止に関する措置の有無およびその内容、効果等の事情も含めた諸要素の総合的な考察によりこれを決すべきである。

ウ.道路等の施設の周辺住民からその供用の差止めが求められた場合に差止請求を認容すべき違法性があるかどうかを判断するにあたって考慮すべき要素は、周辺住民から損害の賠償が求められた場合に賠償請求を認容すべき違法性があるかどうかを判断するにあたって考慮すべき要素とほぼ共通するが、双方の場合の違法性の有無の判断に差異が生じることがあっても不合理とはいえない。

エ.営造物の設置または管理の瑕疵には、当該営造物が供用目的に沿って利用されることとの関連においてその利用者以外の第三者に対して危害を生ぜしめる危険性がある場合を含むものと解すべきであるが、国営空港の設置管理は、営造物管理権のみならず、航空行政権の行使としても行われるものであるから、事理の当然として、この法理は、国営空港の設置管理の瑕疵には適用されない。

  1. ア・ウ
  2. ア・エ
  3. イ・ウ
  4. イ・エ
  5. ウ・エ

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【答え】:3(イ・ウが妥当)

【解説】
ア.営造物の設置または管理の瑕疵には、当該営造物が供用目的に沿って利用されることとの関連においてその利用者以外の第三者に対して危害を生ぜしめる危険性がある場合を含むものと解されるが、具体的に道路の設置または管理につきそのような瑕疵があったと判断するにあたっては、当該第三者の被害について、道路管理者において回避可能性があったことが積極的要件とされる。

ア・・・妥当ではない

本肢は前半部分は妥当ですが、後半部分の「道路管理者において回避可能性があったことが積極的要件とされる」が妥当ではありません。
下記判例では、「道路管理者において回避可能性があったことが積極的要件とされるものではない」としています。

国家賠償法2条1項

  1. 道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があったために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、この賠償責任を負う。
  2. 前項の場合において、他に損害の原因について責任を負う者があるときは、国又は公共団体は、これに対して求償権を有する。
【判例:最判平7.7.7】 国家賠償法2条1項にいう営造物の設置又は管理の瑕疵とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いている状態、すなわち他人に危害を及ぼす危険性のある状態をいうのであるが、これには営造物が供用目的に沿って利用されることとの関連においてその利用者以外の第三者に対して危害を生ぜしめる危険性がある場合をも含むものであり、・・・・
(中略)
国家賠償法2条1項は、危険責任の法理に基づき被害者の救済を図ることを目的として、国又は公共団体の責任発生の要件につき、公の営造物の設置又は管理に瑕疵があったために他人に損害を生じたときと規定しているところ、所論の回避可能性があったことが本件道路の設置又は管理に瑕疵を認めるための積極的要件に
なるものではないと解すべきである。

分かりづらい部分なので、かみ砕いた解説は、個別指導で行います。

こういった部分をしっかり理解していくことが合格するために重要な要素となります!

イ.営造物の供用が第三者に対する関係において違法な権利侵害ないし法益侵害となり、当該営造物の設置・管理者が賠償義務を負うかどうかを判断するにあたっては、侵害行為の開始とその後の継続の経過および状況、その間に採られた被害の防止に関する措置の有無およびその内容、効果等の事情も含めた諸要素の総合的な考察によりこれを決すべきである。

イ・・・妥当

本肢は、下記判例の内容の通りです。よって、妥当です。

【判例:最大判昭56.12.16】 本件空港の供用のような国の行う公共事業が第三者に対する関係において違法な権利侵害ないし法益侵害となるかどうかを判断するにあたっては、上告人の主張するように、侵害行為の態様と侵害の程度、被侵害利益の性質と内容、侵害行為のもつ公共性ないし公益上の必要性の内容と程度等を比較検討するほか、侵害行為の開始とその後の継続の経過及び状況、その間にとられた被害の防止に関する措置の有無及びその内容、効果等の事情をも考慮し、これらを総合的に考察してこれを決すべきものである。

詳細解説個別指導で行います!

判例はしっかり理解しておきましょう!

ウ.道路等の施設の周辺住民からその供用の差止めが求められた場合に差止請求を認容すべき違法性があるかどうかを判断するにあたって考慮すべき要素は、周辺住民から損害の賠償が求められた場合に賠償請求を認容すべき違法性があるかどうかを判断するにあたって考慮すべき要素とほぼ共通するが、双方の場合の違法性の有無の判断に差異が生じることがあっても不合理とはいえない。

ウ・・・妥当

本肢は、下記判例の内容の通りです。よって、妥当です。

少しわかりづらいので、分かりやすい解説個別指導で解説します!

【判例:最判平7.7.7】 道路等の施設の周辺住民からその供用の差止めが求められた場合に差止請求を認容すべき違法性があるかどうかを判断するにつき考慮すべき要素は、周辺住民から損害の賠償が求められた場合に賠償請求を認容すべき違法性があるかどうかを判断するにつき考慮すべき要素とほぼ共通するのであるが、施設の供用の差止めと金銭による賠償という請求内容の相違に対応して、違法性の判断において各要素の重要性をどの程度のものとして考慮するかにはおのずから相違があるから、右両場合の違法性の有無の判断に差異が生じることがあっても不合理とはいえない

エ.営造物の設置または管理の瑕疵には、当該営造物が供用目的に沿って利用されることとの関連においてその利用者以外の第三者に対して危害を生ぜしめる危険性がある場合を含むものと解すべきであるが、国営空港の設置管理は、営造物管理権のみならず、航空行政権の行使としても行われるものであるから、事理の当然として、この法理は、国営空港の設置管理の瑕疵には適用されない。

エ・・・妥当ではない

本肢は、「国営空港の設置管理は、営造物管理権のみならず、航空行政権の行使としても行われるものであるから、事理の当然として、この法理は、国営空港の設置管理の瑕疵には適用されない。」が妥当ではありません。

下記判例の内容の通り、施設(空港)に危険性がなかった場合でも、限度を超える施設の利用があり、利用者や第三者が損害を受ける危険性があれば、国営空港の設置管理の瑕疵があることとなり、本肢は妥当ではありません。

【判例:最判昭56.12.16】 国家賠償法2条1項の営造物の設置又は管理の瑕疵とは、営造物が有すべき安全性を欠いている状態をいう。そこにいう安全性の欠如、すなわち、他人に危害を及ぼす危険性のある状態とは、ひとり当該営造物を構成する物的施設自体に存する物理的、外形的な欠陥ないし不備によって一般的に右のような危害を生じさせる危険性がある場合のみならず、その営造物が供用目的に沿って利用されることとの関連において危害を生ぜしめる危険性がある場合をも含む。また、その危害は、営造物の利用者に対してのみならず、利用者以外の第三者(周辺住民Xら)に対するそれをも含むものと解すべきである。

すなわち、当該営造物の利用の態様及び程度が一定の限度にとどまる限りにおいてはその施設に危害を生ぜしめる危険性がなくても、これを超える利用によつて危害を生ぜしめる危険性がある状況にある場合には、そのような利用に供される限りにおいて右営造物の設置、管理には瑕疵があるといえる

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令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問22|地方自治法

A市議会においては、屋外での受動喫煙を防ぐために、繁華街での路上喫煙を禁止し、違反者に罰金もしくは過料のいずれかを科することを定める条例を制定しようとしている。この場合に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. この条例に基づく過料は、行政上の秩序罰に当たるものであり、非訟事件手続法に基づき裁判所が科する。
  2. 条例の効力は属人的なものであるので、A市の住民以外の者については、この条例に基づき処罰することはできない。
  3. この条例で過料を定める場合については、その上限が地方自治法によって制限されている。
  4. 地方自治法の定める上限の範囲内であれば、この条例によらず、A市長の定める規則で罰金を定めることもできる。
  5. この条例において罰金を定める場合には、A市長は、あらかじめ総務大臣に協議しなければならない。

>解答と解説はこちら


【答え】:3

【解説】

1.A市議会においては、屋外での受動喫煙を防ぐために、繁華街での路上喫煙を禁止し、違反者に罰金もしくは過料のいずれかを科することを定める条例を制定しようとしている。

この条例に基づく過料は、行政上の秩序罰に当たるものであり、非訟事件手続法に基づき裁判所が科する。

1・・・妥当ではない

前半部分の「この条例に基づく過料は、行政上の秩序罰に当たる」という部分は妥当です。

一方、後半部分が妥当ではありません。

「条例に基づく過料」は、地方自治法に基づき普通地方公共団体の長が科します。

つまり、本肢は「非訟事件手続法に基づき裁判所が科する」を「地方自治法に基づき普通地方公共団体の長が科する」とすれば妥当です。

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2.A市議会においては、屋外での受動喫煙を防ぐために、繁華街での路上喫煙を禁止し、違反者に罰金もしくは過料のいずれかを科することを定める条例を制定しようとしている。

条例の効力は属人的なものであるので、A市の住民以外の者については、この条例に基づき処罰することはできない。

2・・・妥当ではない

下記判例の通り、条例の効力は「属地的」です。

そのため、たとえA市の住民以外の者であっても、A市域内の繁華街で路上喫煙した場合、本条例に基づき処罰することができます。

【判例:最判昭29.11.24】 

条例を制定する権能もその効力も、法律の認める範囲を越えることを得ないとともに、法律の範囲内に在るかぎり原則としてその効力は当然属地的に生ずるものと解すべきである。
それゆえ本件条例は、新潟県の地域内においては、この地域に来れる何人に対してもその効力を及ぼすものといわなければならない。」

3.A市議会においては、屋外での受動喫煙を防ぐために、繁華街での路上喫煙を禁止し、違反者に罰金もしくは過料のいずれかを科することを定める条例を制定しようとしている。

この条例で過料を定める場合については、その上限が地方自治法によって制限されている。

3・・・妥当

普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、2年以下の懲役若しくは禁錮、100万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑又は5万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができます(地方自治法14条3項)。

したがって、地方自治法によって上限が設定されています。

4.A市議会においては、屋外での受動喫煙を防ぐために、繁華街での路上喫煙を禁止し、違反者に罰金もしくは過料のいずれかを科することを定める条例を制定しようとしている。

地方自治法の定める上限の範囲内であれば、この条例によらず、A市長の定める規則で罰金を定めることもできる。

4・・・妥当ではない

結論から言うと、「長の規則」で違反者に罰金を科することはできません。よって、妥当ではないです・

地方自治法15条2項では、「普通地方公共団体の長は、5万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる」と規定しており、長が、規則で罰金(刑罰の一種)を科する旨の規定を定めることはできないことになっています。

ちなみに、条例中に罰金を科する旨を定めることは認められているが(地方自治法14条3項:選択肢3の解説参照)、
長が普通地方公共団体の規則中に罰金を科することを認める条文はありません。

5.この条例において罰金を定める場合には、A市長は、あらかじめ総務大臣に協議しなければならない。

5・・・妥当ではない

本肢は、「あらかじめ総務大臣に協議しなければならない」という部分が妥当ではありません。

罰金を科することは「刑罰」に該当します。

そして、判例(最判昭37.5.30)によると、

「国民の公選した議員をもって組織する国会の議決を経て制定される法律に類するものであるから、条例によって刑罰を定める場合には、法律の授権が相当な程度に具体的であり、限定されていれば足りる」

と判示しています。

つまり、地方自治法14条3項に

「普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、・・・100万円以下の罰金・・・を科する旨の規定を設けることができる」
と相当な程度に具体的に設定されているので、
この法律に基づいて、条例で罰金を定めることは可能です。

その際、「あらかじめ総務大臣に協議が必要」という旨のルールもありません。

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令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問23|地方自治法

住民監査請求および住民訴訟に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 住民訴訟は、普通地方公共団体の住民にのみ出訴が認められた客観訴訟であるが、訴訟提起の時点で当該地方公共団体の住民であれば足り、その後他に転出しても当該訴訟が不適法となることはない。
  2. 普通地方公共団体における違法な財務会計行為について住民訴訟を提起しようとする者は、当該財務会計行為が行われた時点において当該地方公共団体の住民であったことが必要となる。
  3. 普通地方公共団体における違法な財務会計行為について住民訴訟を提起しようとする者は、当該財務会計行為について、その者以外の住民が既に提起した住民監査請求の監査結果が出ている場合は、自ら別個に住民監査請求を行う必要はない。
  4. 普通地方公共団体において違法な財務会計行為があると認めるときは、当該財務会計行為と法律上の利害関係のある者は、当該地方公共団体の住民でなくとも住民監査請求をすることができる。
  5. 違法に公金の賦課や徴収を怠る事実に関し、住民が住民監査請求をした場合において、それに対する監査委員の監査の結果または勧告に不服があるとき、当該住民は、地方自治法に定められた出訴期間内に住民訴訟を提起することができる。

>解答と解説はこちら


【答え】:5

【解説】
1.住民訴訟は、普通地方公共団体の住民にのみ出訴が認められた客観訴訟であるが、訴訟提起の時点で当該地方公共団体の住民であれば足り、その後他に転出しても当該訴訟が不適法となることはない。

1・・・妥当ではない

住民訴訟は、普通地方公共団体の住民にのみ出訴が認められた客観訴訟です(地方自治法242条の2)。

そして、普通地方公共団体の住民が、住民訴訟を提起した後で、口頭弁論の終結時点までにその普通地方公共団体から引っ越していた場合どうなるか?については、判例があります。

【判例:大阪高判昭59.1.25】 

普通地方公共団体の住民が、地方自治法242条の2に基づく訴えを提起した後、事実審の口頭弁論終結時までに当該普通地方公共団体から転出した場合には、右訴えは、当事者適格を欠く者の訴えとして不適法となる。

つまり、本肢の「訴訟提起の時点で当該地方公共団体の住民であれば足り、その後他に転出しても当該訴訟が不適法となることはない」というのは妥当ではありません。

住民訴訟の訴えを提起後、他に転出したら、当該訴訟は不適法となり、却下されます。

2.普通地方公共団体における違法な財務会計行為について住民訴訟を提起しようとする者は、当該財務会計行為が行われた時点において当該地方公共団体の住民であったことが必要となる。

2・・・妥当ではない

本肢は「当該財務会計行為が行われた時点において当該地方公共団体の住民であったことが必要となる。」という部分が妥当ではありません。
上記のような規定は、地方自治法にはありません。

違法な財務会計行為が行われた時点において、他の地方公共団体の住民であったとしても
その後、違法な財務会計行為が行われた地方公共団体の住民となったのであれば、住民訴訟を提起することは可能です。

3.普通地方公共団体における違法な財務会計行為について住民訴訟を提起しようとする者は、当該財務会計行為について、その者以外の住民が既に提起した住民監査請求の監査結果が出ている場合は、自ら別個に住民監査請求を行う必要はない。

3・・・妥当ではない

住民訴訟を提起できる者は、事前に住民監査請求をしている者です(地方自治法242条の2第1項)。

したがって、他の住民が既に提起した住民監査請求の監査結果が出ていたとしても、自ら住民訴訟を提起するのであれば、自ら住民監査請求を行う必要があります。

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4.普通地方公共団体において違法な財務会計行為があると認めるときは、当該財務会計行為と法律上の利害関係のある者は、当該地方公共団体の住民でなくとも住民監査請求をすることができる。

4・・・妥当ではない

本肢は「当該地方公共団体の住民でなくとも住民監査請求をすることができる」とう部分が妥当ではありません。

住民監査請求ができるのは、「当該普通地方公共団体の住民」のみです。

たとえ当該財務会計行為と法律上の利害関係があったとしても、当該地方公共団体の住民でないのであれば、その者は、住民監査請求はできません。

5.違法に公金の賦課や徴収を怠る事実に関し、住民が住民監査請求をした場合において、それに対する監査委員の監査の結果または勧告に不服があるとき、当該住民は、地方自治法に定められた出訴期間内に住民訴訟を提起することができる。

5・・・妥当

住民が住民監査請求をした場合において、監査委員の監査の結果または勧告に不服があるときは、当該監査の結果又は当該勧告の内容の通知があった日から30日以内に住民訴訟を提起することができます(地方自治法242条の2第1項・2項)。

よって、本肢は妥当です。

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令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問24|地方自治法

都道府県の事務にかかる地方自治法の規定に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 都道府県は、都道府県知事の権限に属する事務の一部について、条例の定めるところにより、市町村が処理するものとすることができるとされている。
  2. 都道府県の事務の根拠となる法律が、当該事務について都道府県の自治事務とする旨を定めているときに限り、当該事務は自治事務となるとされている。
  3. 都道府県知事がする処分のうち、法定受託事務にかかるものについての審査請求は、すべて総務大臣に対してするものとするとされている。
  4. 都道府県は、その法定受託事務の処理に対しては、法令の規定によらずに、国の関与を受けることがあるとされている。
  5. 都道府県は、その自治事務について、独自の条例によって、法律が定める処分の基準に上乗せした基準を定めることができるとされている。

>解答と解説はこちら


【答え】:1

【解説】
1.都道府県は、都道府県知事の権限に属する事務の一部について、条例の定めるところにより、市町村が処理するものとすることができるとされている。

1・・・妥当

条例による事務処理の特例により、都道府県知事の権限に属する事務の一部を、都道府県の条例で定めるところにより、市町村が処理することとすることができます(地方自治法252条の17の2第1項前段)。

よって、本肢は妥当です。

横浜市や名古屋市、大阪市などの大都市では、知事の権限の一部を市町村が処理することが多いです。

2.都道府県の事務の根拠となる法律が、当該事務について都道府県の自治事務とする旨を定めているときに限り、当該事務は自治事務となるとされている。

2・・・妥当ではない

本肢は「当該事務について都道府県の自治事務とする旨を定めているときに限り自治事務となる」という部分が妥当ではありません。

地方公共団体の事務は、自治事務と法定受託事務の2つに分けることができます。

そして、地方自治法において「自治事務」とは、地方公共団体が処理する事務のうち、法定受託事務以外のものをいいます(地方自治法2条8項)。

そもそも、都道府県の事務について、個別に「この事務が自治事務です」と地方自治法で定められていません。

逆に、「この事務が法定受託事務です」と定めておいて、それ以外はすべて自治事務となります。

3.都道府県知事がする処分のうち、法定受託事務にかかるものについての審査請求は、すべて総務大臣に対してするものとするとされている。

3・・・妥当ではない

本肢は「すべて総務大臣に対してするものとする」という部分が妥当ではありません。

法定受託事務に係る審査請求先は、下記の通り、処分を行った執行機関によって異なります(地方自治法255条の2第1項柱書き)。

都道府県知事その他の都道府県の執行機関の処分
当該処分に係る事務を規定する法律又はこれに基づく政令を所管する各大臣
市町村長その他の市町村の執行機関(教育委員会及び選挙管理委員会を除く。)の処分
都道府県知事
市町村教育委員会の処分
都道府県教育委員会
市町村選挙管理委員会の処分
都道府県選挙管理委員会

例えば、市町村長が法定受託事務についての処分を行った場合、知事に対して審査請求をします。

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4.都道府県は、その法定受託事務の処理に対しては、法令の規定によらずに、国の関与を受けることがあるとされている。

4・・・妥当ではない

本肢は「法令の規定によらずに、国の関与を受けることがあるとされている」という部分が妥当ではありません。

普通地方公共団体は、その事務の処理に関し、法律又はこれに基づく政令によらなければ、普通地方公共団体に対する国又は都道府県の関与を受け、又は要することとされることはありません(地方自治法245条の2)。

これは、自治事務・法定受託事務どちらにも当てはまります。

5.都道府県は、その自治事務について、独自の条例によって、法律が定める処分の基準に上乗せした基準を定めることができるとされている。

5・・・妥当ではない

本肢は「独自の条例によって、法律が定める処分の基準に上乗せした基準を定めることができるとされている」という部分が妥当ではありません。

独自の条例で上乗せした基準を定めて違法になる場合もあります。

判例(最判昭50.9.10)によると、「両者の対象事項と規定文言を対比するのみならず、それぞれの趣旨、目的、内容および効果を比較し、両者の間に矛盾抵触があるかどうかによって決定しなければならない」と判示しており、法律と異なる目的で基準を上乗せすると違法となります。

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令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問25|行政法

次に掲げる国家行政組織法の条文の空欄[ ア ]~[ オ ]に当てはまる語句の組合せとして、妥当なものはどれか。

第1条 この法律は、内閣の統轄の下における行政機関で[ ア ]及びデジタル庁以外のもの(以下「国の行政機関」という。)の組織の基準を定め、もって国の行政事務の能率的な遂行のために必要な国家行政組織を整えることを目的とする。

第3条第1項 国の行政機関の組織は、この法律でこれを定めるものとする。

同第2項 行政組織のため置かれる国の行政機関は、省、[ イ ]及び庁とし、その設置及び廃止は、別に[ ウ ]の定めるところによる。

同第3項 省は、内閣の統轄の下に第5条第1項の規定により各省大臣の[ エ ]する行政事務及び同条第2項の規定により当該大臣が掌理する行政事務をつかさどる機関として置かれるものとし、[ イ ]及び庁は、省に、その外局として置かれるものとする。

第5条第1項 各省の長は、それぞれ各省大臣とし、内閣法にいう主任の大臣として、それぞれ行政事務を[ エ ]する。

同第2項 各省大臣は、前項の規定により行政事務を[ エ ]するほか、それぞれ、その[ エ ]する行政事務に係る各省の任務に関連する特定の内閣の重要政策について、当該重要政策に関して閣議において決定された基本的な方針に基づいて、行政各部の施策の統一を図るために必要となる企画及び立案並びに総合調整に関する事務を掌理する。

同第3項 各省大臣は、国務大臣のうちから、[ オ ]が命ずる。(以下略)

  1. ア:自衛隊 イ:委員会 ウ:内閣府令 エ:分担管理 オ:内閣
  2. ア:防衛省 イ:独立行政法人 ウ:政令 エ:所轄 オ:天皇
  3. ア:内閣府 イ:内部部局 ウ:政令 エ:所轄 オ:内閣
  4. ア:自衛隊 イ:内部部局 ウ:法律 エ:統轄 オ:天皇
  5. ア:内閣府 イ:委員会 ウ:法律 エ:分担管理 オ:内閣総理大臣

>解答と解説はこちら


【答え】:5(ア:内閣府 イ:委員会 ウ:法律 エ:分担管理 オ:内閣総理大臣)

【解説】本問は、基本事項を知っているかどうかを問う問題です。

条文自体を知らなくても、普段勉強している過去問やテキストに記載されている基本的な部分なので、それで対応できるはずです。

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第1条 この法律(国家行政組織法)は、内閣の統轄の下における行政機関で[ ア:内閣府 ]及びデジタル庁以外のもの(以下「国の行政機関」という。)の組織の基準を定め、もって国の行政事務の能率的な遂行のために必要な国家行政組織を整えることを目的とする。

第3条第1項 国の行政機関の組織は、この法律でこれを定めるものとする。

同第2項 行政組織のため置かれる国の行政機関は、省、[ イ:委員会 ]及び庁とし、その設置及び廃止は、別に[ ウ:法律 ]の定めるところによる。

同第3項 省は、内閣の統轄の下に第5条第1項の規定により各省大臣の[ エ:分担管理 ]する行政事務及び同条第2項の規定により当該大臣が掌理する行政事務をつかさどる機関として置かれるものとし、[ イ:委員会 ]及び庁は、省に、その外局として置かれるものとする。

第5条第1項 各省の長は、それぞれ各省大臣とし、内閣法にいう主任の大臣として、それぞれ行政事務を[ エ:分担管理 ]する。

同第2項 各省大臣は、前項の規定により行政事務を[ エ:分担管理 ]するほか、それぞれ、その[ エ:分担管理 ]する行政事務に係る各省の任務に関連する特定の内閣の重要政策について、当該重要政策に関して閣議において決定された基本的な方針に基づいて、行政各部の施策の統一を図るために必要となる企画及び立案並びに総合調整に関する事務を掌理する。

同第3項 各省大臣は、国務大臣のうちから、[ オ:内閣総理大臣 ]が命ずる。(以下略)

ア.第1条 この法律(国家行政組織法)は、内閣の統轄の下における行政機関で[ ア ]及びデジタル庁以外のもの(以下「国の行政機関」という。)の組織の基準を定め、もって国の行政事務の能率的な遂行のために必要な国家行政組織を整えることを目的とする。

ア・・・内閣府

(目的)
第1条 この法律は、内閣の統轄の下における行政機関で内閣府及びデジタル庁以外のもの(以下「国の行政機関」という。)の組織の基準を定め、もつて国の行政事務の能率的な遂行のために必要な国家行政組織を整えることを目的とする。

イ.同第2項 行政組織のため置かれる国の行政機関は、省、[ イ ]及び庁とし、その設置及び廃止は、別に[ ウ ]の定めるところによる。

イ・・・委員会 ウ・・・法律

(行政機関の設置、廃止、任務及び所掌事務)
第3条 国の行政機関の組織は、この法律でこれを定めるものとする。
2 行政組織のため置かれる国の行政機関は、省、委員会及び庁とし、その設置及び廃止は、別に法律の定めるところによる。

エ.同第3項 省は、内閣の統轄の下に第5条第1項の規定により各省大臣の[ エ ]する行政事務及び同条第2項の規定により当該大臣が掌理する行政事務をつかさどる機関として置かれるものとし、[ イ ]及び庁は、省に、その外局として置かれるものとする。

エ・・・分担管理

(行政機関の設置、廃止、任務及び所掌事務)
第3条 国の行政機関の組織は、この法律でこれを定めるものとする。
2 行政組織のため置かれる国の行政機関は、省、委員会及び庁とし、その設置及び廃止は、別に法律の定めるところによる。
3 省は、内閣の統轄の下に第五条第一項の規定により各省大臣の分担管理する行政事務及び同条第二項の規定により当該大臣が掌理する行政事務をつかさどる機関として置かれるものとし、委員会及び庁は、省に、その外局として置かれるものとする。

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オ.同第3項 各省大臣は、国務大臣のうちから、[ オ ]が命ずる。

オ・・・内閣総理大臣

(行政機関の長)
第五条 各省の長は、それぞれ各省大臣とし、内閣法にいう主任の大臣として、それぞれ行政事務を分担管理する。
2 各省大臣は、前項の規定により行政事務を分担管理するほか、それぞれ、その分担管理する行政事務に係る各省の任務に関連する特定の内閣の重要政策について、当該重要政策に関して閣議において決定された基本的な方針に基づいて、行政各部の施策の統一を図るために必要となる企画及び立案並びに総合調整に関する事務を掌理する。
3 各省大臣は、国務大臣のうちから、内閣総理大臣が命ずる。ただし、内閣総理大臣が自ら当たることを妨げない。

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令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問26|行政法

国籍と住民としての地位に関する次の記述のうち、法令に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 事務監査請求をする権利は、日本国籍を有しない住民にも認められている。
  2. 住民監査請求をする権利は、日本国籍を有する住民にのみ認められている。
  3. 公の施設の利用関係については、日本国籍を有しない住民についても、不当な差別的な取り扱いをしてはならない。
  4. 日本国籍を有しない住民のうち、一定の期間、同一地方公共団体の区域内に居住したものは、当該地方公共団体の長や議会の議員の選挙権を有する。
  5. 日本国籍を有しない住民は、住民基本台帳法に基づく住民登録をすることができない。

>解答と解説はこちら


【答え】:3

【解説】
1.事務監査請求をする権利は、日本国籍を有しない住民にも認められている。

1・・・妥当ではない

選挙権を有する者は、政令で定めるところにより、その総数の50分の1以上の者の連署をもって、その代表者から、普通地方公共団体の監査委員に対し、当該普通地方公共団体の事務の執行に関し、監査の請求をすることができます(地方自治法75条1項:事務監査請求)。

そして、「選挙権を有する者」とは、日本国民たる年齢満18年以上の者で引き続き3か月以上市町村の区域内に住所を有する者を言います(地方自治法18条)。

したがって、事務監査請求をする権利は、日本国籍を有しない住民には認められていません。

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2.住民監査請求をする権利は、日本国籍を有する住民にのみ認められている。

2・・・妥当ではない

普通地方公共団体の住民は、「当該普通地方公共団体の長若しくは委員会若しくは委員又は当該普通地方公共団体の職員」について、「①違法若しくは不当な公金の支出、財産の取得、管理若しくは処分、契約の締結若しくは履行若しくは債務その他の義務の負担があると認めるとき」、又は「②違法若しくは不当に公金の賦課若しくは徴収若しくは財産の管理を怠る事実があると認めるとき」は、監査委員に対し、監査を求め、当該行為を防止し、若しくは是正し、若しくは当該怠る事実を改め、又は当該行為若しくは怠る事実によつて当該普通地方公共団体の被つた損害を補塡するために必要な措置を講ずべきことを請求することができます(地方自治法242条1項:住民監査請求)。

「普通地方公共団体の住民」とは、日本国籍を有する住民だけでなく、外国籍の人も含みます!

3.公の施設の利用関係については、日本国籍を有しない住民についても、不当な差別的な取り扱いをしてはならない。

3・・・妥当

普通地方公共団体は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではいけません(地方自治法244条2項)。

また、住民が公の施設を利用することについて、不当な差別的取扱いをしてはいけません(地方自治法244条3項)。

ここでいう「不当な差別的取扱い」とは、利用者の人種、信条、性別、身分等を理由に、利用できるできないを区別したり、また、異なる使用料にすることを指します。

よって、日本国籍を有しない住民(外国籍の方)についても、不当な差別的な取り扱いをしてはならないので、妥当です。

4.日本国籍を有しない住民のうち、一定の期間、同一地方公共団体の区域内に居住したものは、当該地方公共団体の長や議会の議員の選挙権を有する。

4・・・妥当ではない

日本国民たる年齢満18年以上の者で引き続き3か月以上市町村の区域内に住所を有する者は、別に法律の定めるところにより、その属する普通地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有します(地方自治法18条)。

つまり、日本国籍を有しない住民は、当該地方公共団体の長や議会の議員の選挙権を有しません。

5.日本国籍を有しない住民は、住民基本台帳法に基づく住民登録をすることができない。

5・・・妥当ではない

平成24年7月9日に外国人登録制度が廃止され、外国人住民についても日本人と同様に住民基本台帳法に基づく住民登録をすることができるようになりました。

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令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問27|民法

虚偽表示の無効を対抗できない善意の第三者に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. AはBと通謀してA所有の土地をBに仮装譲渡したところ、Bは当該土地上に建物を建築し、これを善意のCに賃貸した。この場合、Aは、虚偽表示の無効をCに対抗できない。
  2. AはBと通謀してA所有の土地をBに仮装譲渡したところ、Bが当該土地を悪意のCに譲渡し、さらにCが善意のDに譲渡した。この場合、Aは、虚偽表示の無効をDに対抗できない。
  3. AはBと通謀してA所有の土地をBに仮装譲渡したところ、Bは善意の債権者Cのために当該土地に抵当権を設定した。この場合、Aは、虚偽表示の無効をCに対抗できない。
  4. AはBと通謀してA所有の土地をBに仮装譲渡したところ、Bの債権者である善意のCが、当該土地に対して差押えを行った。この場合、Aは、虚偽表示の無効をCに対抗できない。
  5. AはBと通謀してAのCに対する指名債権をBに仮装譲渡したところ、Bは当該債権を善意のDに譲渡した。この場合、Aは、虚偽表示の無効をDに対抗できない。

>解答と解説はこちら


【答え】:1

【解説】
1.AはBと通謀してA所有の土地をBに仮装譲渡したところ、Bは当該土地上に建物を建築し、これを善意のCに賃貸した。この場合、Aは、虚偽表示の無効をCに対抗できない。

1・・・妥当ではない

AがBに土地を仮装譲渡し、Bがその土地上に建物を建築。その建物をBが善意のCに賃貸した。

(虚偽表示)
第94条 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
2 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

判例(最判昭57.6.8)によると、
「土地の仮装譲受人が当該土地上に建物を建築してこれを他人に賃貸した場合、当該建物賃借人は、仮装譲渡された土地については法律上の利害関係を有するものとは認められないから、民法94条2項所定の第三者にはあたらない。」と判示しています。

虚偽表示の対象は「土地」であり、Cは「建物」の賃借人です。

そのため、建物賃借人Cは、「土地」について法律上の利害関係がないので、第三者には当たりません。

よって、Cは善意であってもAに対抗することができません。

逆に、Aは、虚偽表示の無効をCに対抗できます。

この選択肢だけなく、全ての選択肢に言える事ですが、第三者に該当するか否かの判断基準を理解すれば、簡単です!

理解の仕方については、個別指導で解説します!

理解学習ができれば、行政書士試験は1回で合格できるので、理解学習を実践しましょう!

逆に、理解学習をせずに丸暗記学習を続けると、何年も落ち続けてしまうので、勉強の仕方には十分注意しましょう!

2.AはBと通謀してA所有の土地をBに仮装譲渡したところ、Bが当該土地を悪意のCに譲渡し、さらにCが善意のDに譲渡した。この場合、Aは、虚偽表示の無効をDに対抗できない。

2・・・妥当

Aが自己所有の土地をBに譲渡したが、仮装譲渡であった。この土地をBが善意のCに譲渡し、さらにCは善意のDに転売した。

判例(最判昭45.7.24)によると、「民法94条2項にいう第三者とは、虚偽表示の当事者またはその一般承継人以外の者であつて、その表示の目的につき法律上利害関係を有するに至つた者をいい、AB間における虚偽表示の相手方Bとの間で右表示の目的につき直接取引関係に立つたCが悪意の場合でも、Cからの転得者Dが善意であるときは、Dは同条項にいう善意の第三者にあたる。」と判示しています。

つまり、Cが悪意であったとしても、Cから土地を譲渡された転得者Dが善意のときは、Dは94条2項の「善意の第三者」にあたるため、Dは保護され、Aは、虚偽表示の無効をDに対抗することができません。

3.AはBと通謀してA所有の土地をBに仮装譲渡したところ、Bは善意の債権者Cのために当該土地に抵当権を設定した。この場合、Aは、虚偽表示の無効をCに対抗できない。

3・・・妥当

AはBに土地を仮装譲渡した。Bが当該土地にCのために抵当権を設定した。

判例(大判大4.12.17)によると「不動産の仮装譲受人から抵当権の設定を受けた者は、民法94条2項の第三者に含まれる」としています。

したがって、本肢のCは、「民法94条2項の第三者」に該当するため、善意のCは保護されます。

よって、Aは、虚偽表示の無効をCに対抗できないので妥当です。

4.AはBと通謀してA所有の土地をBに仮装譲渡したところ、Bの債権者である善意のCが、当該土地に対して差押えを行った。この場合、Aは、虚偽表示の無効をCに対抗できない。

4・・・妥当

AがBに土地を仮装譲渡した。Bの債権者Cが当該土地を差し押さえた。

判例(最判昭48.6.28)によると「虚偽表示の目的物を差押えた債権者は民法94条2項の第三者にあたる」と判示しています。

よって、本肢のCは、虚偽表示の目的物である土地を差押えているので、善意であれば、保護されます。

本肢は、Cは善意なので、保護され、Aは、虚偽表示の無効をCに対抗できません。

【対比】

差押えをしていない仮装譲受人の一般債権者は、民法94条2項の第三者にあたりません(大判大9.7.23)。

5.AはBと通謀してAのCに対する指名債権をBに仮装譲渡したところ、Bは当該債権を善意のDに譲渡した。この場合、Aは、虚偽表示の無効をDに対抗できない。

5・・・妥当

AがCに対する債権をBに譲渡したが、当該譲渡は虚偽表示であった。Bが当該債権を善意のDに譲渡した。

判例(大判昭13.12.17)によると、「虚偽表示に基づき発生した債権(仮装債権)を譲り受けた者は、民法94条2項の第三者に該当する。」としています。

そして、本肢のDは、「仮装債権の譲受人」であり、善意なので保護されます。

よって、Aは、虚偽表示の無効をDに対抗できません。

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令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問28|民法

占有権に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. Aが所有する動産甲(以下「甲」という。)の保管をAから委ねられ占有しているBが、甲を自己の物と称してCに売却した場合、甲に対するCの即時取得の成立要件について、占有開始におけるCの平穏、公然、善意および無過失は推定される。
  2. Aが所有する乙土地(以下「乙」という。)をBが20年以上にわたって占有し、所有権の取得時効の成否が問われる場合、Aが、Bによる乙の占有が他主占有権原に基づくものであることを証明しない限り、Bについての他主占有事情が証明されても、Bの所有の意思が認められる
  3. Aが所有する丙土地(以下「丙」という。)を無権利者であるBがCに売却し、Cが所有権を取得したものと信じて丙の占有を開始した場合、Aから本権の訴えがないときは、Cは、丙を耕作することによって得た収穫物を取得することができる。
  4. Aが所有する動産丁(以下「丁」という。)を保管することをBに寄託し、これに基づいてBが丁を占有していたところ、丁をCに盗取された場合、Bは、占有回収の訴えにより、Cに対して丁の返還を請求することができる。
  5. Aが所有する動産戊(以下「戊」という。)を保管することをBに寄託し、これをBに引き渡した後、Aは戊をCに譲渡した場合、Aが、Bに対して以後Cの所有物として戊を占有するよう指示し、Cが、これを承諾したときは、戊についてAからCへの引渡しが認められる。

>解答と解説はこちら


【答え】:2

【解説】
1.Aが所有する動産甲(以下「甲」という。)の保管をAから委ねられ占有しているBが、甲を自己の物と称してCに売却した場合、甲に対するCの即時取得の成立要件について、占有開始におけるCの平穏、公然、善意および無過失は推定される。

1・・・妥当

占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定します(民法186条:占有の態様等に関する推定)。

さらに、判例(最判昭41.6.9)では、「民法第192条(即時取得)により動産の上に行使する権利を取得したことを主張する占有者は、同条にいう「過失ナキ」ことを立証する責任を負わない。」と判示しています。
この判例では、占有者は、無過失であることも立証する義務を負わず、無過失の推定を受けるとしています。

よって、占有者Cの平穏、公然、善意および無過失は推定されるので妥当です。

基本事項の積み重ねが、行政書士試験合格の第一歩です。

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2.Aが所有する乙土地(以下「乙」という。)をBが20年以上にわたって占有し、所有権の取得時効の成否が問われる場合、Aが、Bによる乙の占有が他主占有権原に基づくものであることを証明しない限り、Bについての他主占有事情が証明されても、Bの所有の意思が認められる

2・・・妥当ではない

20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得します(民法162条1項:所有権の取得時効)。

所有の意思をもって占有することを「自主占有」と言います。

つまり、時効取得するためには「自主占有」が要件の一つということです。

逆に、所有の意思を持たずに占有することを「他主占有」と言います。

そして、自主占有は推定されるので、取得時効を否定する側が、自主占有ではないこと(他主占有であること)を主張・立証する必要があります。

したがって、本肢は「Bについての他主占有事情が証明されても、Bの所有の意思が認められる」としている部分が妥当ではありません。

他主占有事情が証明されれば、自主占有が否定されるため、所有の意思は認められないことになります。

よって、本肢は妥当ではありません。

3.Aが所有する丙土地(以下「丙」という。)を無権利者であるBがCに売却し、Cが所有権を取得したものと信じて丙の占有を開始した場合、Aから本権の訴えがないときは、Cは、丙を耕作することによって得た収穫物を取得することができる。

3・・・妥当

善意の占有者は、占有物から生ずる果実を取得する権利を有します(民法189条1項)。

そして、「善意の占有者」が本権の訴えにおいて敗訴したときは、その訴えの提起の時から「悪意の占有者」とみなされます(民法189条2項)。

【本肢】

Cが所有権を取得したものと信じて丙の占有を開始したので、この時点で、Cは「善意の占有者」です。

そして、「Aから本権の訴えがないとき」という記述から、Aから訴えの提起をされていないので、敗訴はしていないです。

つまり、Cは「善意の占有者」です。

よって、善意の占有者Cは、丙を耕作することによって得た収穫物を取得することができるので妥当です。

4.Aが所有する動産丁(以下「丁」という。)を保管することをBに寄託し、これに基づいてBが丁を占有していたところ、丁をCに盗取された場合、Bは、占有回収の訴えにより、Cに対して丁の返還を請求することができる。

4・・・妥当

占有者(他人のために占有をする者も含む)は、占有の訴えを提起することができます(民法197条)。

つまり、動産丁を預かっているB(寄託者)も民法197条の「占有者」に当たるので、占有の訴えを提起できます。

よって、寄託者Bが動産丁をCに盗取された場合(=占有を奪われた場合)、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができます(民法200条1項)。

よって、妥当です。

【注意点】

占有回収の訴えは、「占有を奪われたとき(盗まれた)」に提起できるのであって、

騙されて物を引渡した場合(詐欺)は、提起することができません。

5.Aが所有する動産戊(以下「戊」という。)を保管することをBに寄託し、これをBに引き渡した後、Aは戊をCに譲渡した場合、Aが、Bに対して以後Cの所有物として戊を占有するよう指示し、Cが、これを承諾したときは、戊についてAからCへの引渡しが認められる。

5・・・妥当

AからCに指図による占有移転があった場合の図です。

代理人Bによって占有をする場合において、本人Aがその代理人Bに対して以後第三者Cのためにその物を占有することを命じ、その第三者Cがこれを承諾したときは、その第三者Cは、占有権を取得します(民法184条:指図による占有移転)。

よって、動産戊についてAからCへの引渡しが認められます。

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令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略