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令和4年・2022|問8|憲法

公法上の権利の一身専属性に関する次の文章の空欄[ A ]~[ C ]に当てはまる文章の組合せとして、妥当なものはどれか。

最高裁判所昭和42年5月24日判決(いわゆる朝日訴訟判決)においては、生活保護を受給する地位は、一身専属のものであって相続の対象とはなりえず、その結果、原告の死亡と同時に当該訴訟は終了して、同人の相続人らが当該訴訟を承継し得る余地はないとされた。そして、この判決は、その前提として、[ A ]。
その後も公法上の権利の一身専属性が問題となる事例が散見されたが、労働者等のじん肺に係る労災保険給付を請求する権利については最高裁判所平成29年4月6日判決が、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律に基づく認定の申請がされた健康管理手当の受給権については最高裁判所平成29年12月18日判決が、それぞれ判断をしており、[ B ]。
なお、この健康管理手当の受給権の一身専属性について、最高裁判所平成29年12月18日判決では、受給権の性質が[ C ]。

空欄[ A ]
ア.生活保護法の規定に基づき、要保護者等が国から生活保護を受けるのは、法的利益であって、保護受給権とも称すべきものであるとしている
イ.生活保護法の規定に基づき、要保護者等が国から生活保護を受けるのは、国の恩恵ないし社会政策の実施に伴う反射的利益であるとしている
 
空欄[ B ]
ウ.両判決ともに、権利の一身専属性を認めて、相続人による訴訟承継を認めなかった
エ.両判決ともに、権利の一身専属性を認めず、相続人による訴訟承継を認めた
 
空欄[ C ]
オ.社会保障的性質を有することが、一身専属性が認められない根拠の一つになるとの考え方が示されている
カ.国家補償的性質を有することが、一身専属性が認められない根拠の一つになるとの考え方が示されている
  1. A:ア B:ウ C:オ
  2. A:ア B:エ C:力
  3. A:イ B:ウ C:オ
  4. A:イ B:ウ C:力
  5. A:イ B:エ C:力

>解答と解説はこちら


【答え】:2

【解説】

最高裁判所昭和42年5月24日判決(いわゆる朝日訴訟判決)においては、生活保護を受給する地位は、一身専属のものであって相続の対象とはなりえず、その結果、原告の死亡と同時に当該訴訟は終了して、同人の相続人らが当該訴訟を承継し得る余地はないとされた。そして、この判決は、その前提として、[ A ]。

空欄[ A ]
ア.生活保護法の規定に基づき、要保護者等が国から生活保護を受けるのは、法的利益であって、保護受給権とも称すべきものであるとしている
イ.生活保護法の規定に基づき、要保護者等が国から生活保護を受けるのは、国の恩恵ないし社会政策の実施に伴う反射的利益であるとしている

A・・・ア:生活保護法の規定に基づき、要保護者等が国から生活保護を受けるのは、法的利益であって、保護受給権とも称すべきものであるとしている

[ A ]という前提があって、→ 朝日訴訟判決においては、生活保護を受給する地位は、一身専属のものであって相続の対象とはなりえず、その結果、原告の死亡と同時に当該訴訟は終了して、同人の相続人らが当該訴訟を承継し得る余地はないとされた。

という流れです。

要保護者等が国から生活保護を受けるのが、「法的利益でなく」「国の恩恵ないし社会政策の実施に伴う反射的利益」であれば、そもそも、訴えの利益がなく却下となります。

今回の内容は、却下(門前払いで審理をしない)となっておらず、
審理を行った上で「生活保護を受給する地位は、相続人らが当該訴訟を承継しない」と結論づけています。

よって、[ A ]には、「法的利益」という文言を含む「生活保護法の規定に基づき、要保護者等が国から生活保護を受けるのは、法的利益であって、保護受給権とも称すべきものであるとしている」が入ります。

その後も公法上の権利の一身専属性が問題となる事例が散見されたが、労働者等のじん肺に係る労災保険給付を請求する権利については最高裁判所平成29年4月6日判決が、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律に基づく認定の申請がされた健康管理手当の受給権については最高裁判所平成29年12月18日判決が、それぞれ判断をしており、[ B ]。

空欄[ B ]
ウ.両判決ともに、権利の一身専属性を認めて、相続人による訴訟承継を認めなかった
エ.両判決ともに、権利の一身専属性を認めず、相続人による訴訟承継を認めた

B・・・エ:両判決ともに、権利の一身専属性を認めず、相続人による訴訟承継を認めた

下記判例の通り、いずれの判決も「権利の一身専属性を認めず、相続人による訴訟承継を認めています」。

【最判平29.4.6】

原審は、・・・じん肺管理区分の決定を受けるという労働者等の地位は,当該労働者等に固有のものであり,一身専属的なものであると解されるから、上告人らがAの相続人としてこれを承継することはできず,本件訴訟はAの死亡により当然に終了すると判断し、第1審判決(ただし,国家賠償請求に関する部分を除く。)を取り消し、訴訟終了宣言をした。

しかしながら、原審の上記判断は是認することができない。・・・

じん肺管理区分決定が管理1に該当する旨の決定を受けた労働者等が当該決定の取消しを求める訴訟の係属中に死亡した場合、当該訴訟は当該労働者等の死亡によって当然に終了するものではなく、当該労働者等のじん肺に係る未支給の労災保険給付を請求することができる労災保険法11条1項所定の遺族においてこれを承継すべきものと解するのが相当である

【最判平29.12.18】

被爆者援護法の性格や健康管理手当の目的及び内容に鑑みると、同条に基づく認定の申請がされた健康管理手当の受給権は、当該申請をした者の一身に専属する権利ということはできず、相続の対象となるものであるから、被爆者健康手帳交付申請及び健康管理手当認定申請の各却下処分の取消しを求める訴訟並びに同取消しに加えて被爆者健康手帳の交付の義務付けを求める訴訟について、訴訟の係属中に申請者が死亡した場合には、当該訴訟は当該申請者の死亡により当然に終了するものではなく、その相続人がこれを承継するものと解するのが相当である。

なお、この健康管理手当の受給権(原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律に基づく認定の申請がされた健康管理手当の受給権)の一身専属性について、最高裁判所平成29年12月18日判決では、受給権の性質が[ C ]。

空欄[ C ]
オ.社会保障的性質を有することが、一身専属性が認められない根拠の一つになるとの考え方が示されている
カ.国家補償的性質を有することが、一身専属性が認められない根拠の一つになるとの考え方が示されている

C・・・カ:国家補償的性質を有することが、一身専属性が認められない根拠の一つになるとの考え方が示されている

「国家補償」とは、国家の活動によって私人に損失が生じた場合に、その損失を填補することによって救済を図る制度のことを言います。

そして、下記判例では、
原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律に基づく認定の申請がされた健康管理手当の受給権の性質は、国家補償的性質を有することが、申請者の死亡により当然に終了するものではなく、その相続人がこれを承継すると言っています。

つまり、一身専属性が認められない根拠の一つになるとの考え方が示されています。

【最判平29.12.18】被爆者援護法は原子爆弾の投下の結果として生じた放射能に起因する特殊な戦争被害において、戦争遂行主体であった国の責任により救済を図るという一面を有し、実質的に国家補償的配慮が制度の根底にあるとした。

そして、被爆者健康手帳交付申請及び健康管理手当認定申請の各却下処分の取消しを求める訴訟と被爆者健康手帳の交付の義務付けを求める訴訟の係属中に申請者が死亡した場合には、当該訴訟は当該申請者の死亡により当然に終了するものではなく、その相続人がこれを承継する。

この点は理解していただきたい部分なので、理解すべきポイントは、個別指導で解説します!

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令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

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