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令和4年・2022|問43|行政法

次の文章の空欄[ ア ]~[ エ ]に当てはまる語句を、枠内の選択肢(1~20)から選びなさい。

国家補償制度は、国家賠償と損失補償によって構成されるが、両者のいずれによっても救済されない問題が存在する。公務員の[ ア ]の違法行為による被害は、国家賠償法の救済の対象とはならず、他方、憲法29条3項によって求められる損失補償は、[ イ ]以外の権利利益についての被害には及ばないと考えられるからである。この救済の空白地帯は「国家補償の谷間」と呼ばれている。

「国家補償の谷間」の典型事例は予防接種による副反応被害である。この事例を損失補償により救済するアプローチは、[ イ ]よりも重要な利益である生命・身体の利益は、当然に憲法29条3項に規定する損失補償の対象となるとする[ ウ ]解釈によって、救済を図ろうとする。

これに対して、国家賠償による救済のアプローチをとる場合、予防接種の性質上、予診を尽くしたとしても、接種を受けることが適切でない者(禁忌者)を完全に見分けることが困難であり、医師による予診を初めとする公務員の行為は[ ア ]とされる可能性が残る。この点について、最高裁判所昭和51年9月30日判決は、予防接種により重篤な副反応が発生した場合に、担当医師がこうした結果を予見しえたのに、過誤により予見しなかったものと[ エ ]することで、実質的に、自らが[ ア ]であることの立証貢任を国側に負わせることで救済を図った。

1: 自由裁量 2:合憲限定 3:生存権 4:無過失 5:正当な補償 6:文理 7:証明 8:緊急避難 9:重過失 10:特別の犠牲 11:推定 12:職務外 13:決定 14:事実行為 15:財産権 16:確定 17:反対 18:憲法上の権利 19:償うことのできない損害 20:勿論

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【答え】:ア:無過失 イ:財産権 ウ:勿論 エ:推定

【解説】

国家補償制度は、国家賠償と損失補償によって構成されるが、両者のいずれによっても救済されない問題が存在する。公務員の[ ア:無過失 ]の違法行為による被害は、国家賠償法の救済の対象とはならず、他方、憲法29条3項によって求められる損失補償は、[ イ:財産権 ]以外の権利利益についての被害には及ばないと考えられるからである。この救済の空白地帯は「国家補償の谷間」と呼ばれている。

「国家補償の谷間」の典型事例は予防接種による副反応被害である。この事例を損失補償により救済するアプローチは、[ イ:財産権 ]よりも重要な利益である生命・身体の利益は、当然に憲法29条3項に規定する損失補償の対象となるとする[ ウ:勿論 ]解釈によって、救済を図ろうとする。

これに対して、国家賠償による救済のアプローチをとる場合、予防接種の性質上、予診を尽くしたとしても、接種を受けることが適切でない者(禁忌者)を完全に見分けることが困難であり、医師による予診を初めとする公務員の行為は[ ア:無過失 ]とされる可能性が残る。この点について、最高裁判所昭和51年9月30日判決は、予防接種により重篤な副反応が発生した場合に、担当医師がこうした結果を予見しえたのに、過誤により予見しなかったものと[ エ:推定 ]することで、実質的に、自らが[ ア:無過失 ]であることの立証貢任を国側に負わせることで救済を図った。

国家補償制度は、国家賠償と損失補償によって構成されるが、両者のいずれによっても救済されない問題が存在する。公務員の[ ア ]の違法行為による被害は、国家賠償法の救済の対象とはならず、・・・国家賠償による救済のアプローチをとる場合、予防接種の性質上、予診を尽くしたとしても、接種を受けることが適切でない者(禁忌者)を完全に見分けることが困難であり、医師による予診を初めとする公務員の行為は[ ア ]とされる可能性が残る。

ア・・・無過失

国又は公共団体の公権力の行使にあたる公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、賠償責任を負う(国家賠償法1条)。

ここから、国家賠償法の救済の対象とはならないのは、公務員が「無過失」で行った違法行為と判断できます。

また、後半部分「国家賠償による救済のアプローチをとる場合~」を見ると、
「予診を尽くしたとしても、接種を受けることが適切でない者(禁忌者)を完全に見分けることが困難」
だから、「医師による予診を初めとする公務員の行為は[ ア:無過失 ]とされる可能性が残る」
となります。

他方、憲法29条3項によって求められる損失補償は、[ イ ]以外の権利利益についての被害には及ばないと考えられるからである。この救済の空白地帯は「国家補償の谷間」と呼ばれている。・・・

「国家補償の谷間」の典型事例は予防接種による副反応被害である。この事例を損失補償により救済するアプローチは、[ イ ]よりも重要な利益である生命・身体の利益は、当然に憲法29条3項に規定する損失補償の対象となるとする[ ウ ]解釈によって、救済を図ろうとする。

イ・・・財産権

私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる(憲法29条3項)。

憲法29条3項が「財産権」に関する規定なので、この条文を覚えていれば、ここから「財産権」と判断してもよいです。

一方、上記を覚えていなくても、
キーとなる文章である
「[ イ ]以外の権利利益」と「[ イ ]よりも重要な利益である生命・身体の利益」
から判断する方法もあります。

ここから、イには「財産権」が入ることを推測します。

「財産」と「生命・身体」を比べたら、もちろん、「生命・身体」の方が重要です。

「国家補償の谷間」の典型事例は予防接種による副反応被害である。この事例を損失補償により救済するアプローチは、[ イ:財産権 ]よりも重要な利益である生命・身体の利益は、当然に憲法29条3項に規定する損失補償の対象となるとする[ ウ ]解釈によって、救済を図ろうとする。

ウ・・・勿論

憲法29条3項に規定する損失補償の対象は「財産権」ですが、それよりも重要な「生命・身体の利益」は、もちろん解釈によって(=当然)に損失補償の対象として救済が図られます。

よって、ウには「勿論(もちろん)」が入ります。

「勿論解釈」とは、法制定の沿革・意義・目的を考えて、法に書かれていなくても、類似する事項と同様に適用することが当然であるとする解釈方法です。

最高裁判所昭和51年9月30日判決は、予防接種により重篤な副反応が発生した場合に、担当医師がこうした結果を予見しえたのに、過誤により予見しなかったものと[エ:推定]することで、実質的に、自らが[ア:無過失]であることの立証貢任を国側に負わせることで救済を図った。

国家賠償による救済のアプローチをとる場合、予防接種の性質上、予診を尽くしたとしても、接種を受けることが適切でない者(禁忌者)を完全に見分けることが困難であり、医師による予診を初めとする公務員の行為は[ ア:無過失 ]とされる可能性が残る。この点について、最高裁判所昭和51年9月30日判決は、予防接種により重篤な副反応が発生した場合に、担当医師がこうした結果を予見しえたのに、過誤により予見しなかったものと[ エ ]することで、実質的に、自らが[ ア:無過失 ]であることの立証貢任を国側に負わせることで救済を図った。

エ・・・推定

判例(最判昭51.9.30)では、
「適切な問診を尽さなかったため、 接種対象者の症状、疾病その他異常な身体的条件及び体質的素因を認識することができず、禁忌すべき者の識別判断を誤って予防接種を実施した場合において、予防接種の異常な副反応により接種対象者が死亡又は罹病したときには、担当医師は接種に際し右結果を予見しえたものであるのに過誤により予見しなかったものと推定するのが相当である。」と判示しています。

「推定」なので、反証があれば、担当医師の過失を覆す(くつがえす)ことができます。

つまり、国側が無過失を証明できれば、無過失となるわけです。

したがって、実質的に、「自らが無過失であること」の立証貢任を国側に負わせることで、被害者の救済を図っています。

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令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

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