A県収用委員会は、起業者であるB市の申請に基づき、同市の市道の用地として、2,000万円の損失補償によってX所有の土地を収用する旨の収用裁決(権利取得裁決)をなした。この場合についての次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- Xが土地の収用そのものを違法として争う場合には、収用裁決の取消しを求めることとなるが、この訴訟は、B市を被告とする形式的当事者訴訟となる。
- 収用裁決が無効な場合には、Xは、その無効を前提として、B市を被告として土地の所有権の確認訴訟を提起できるが、この訴訟は、抗告訴訟である。
- Xが収用裁決に示された損失補償の額に不服がある場合には、A県を被告として、損失補償を増額する裁決を求める義務付け訴訟を提起すべきこととなる。
- Xが収用裁決に示された損失補償の増額を求める訴訟を提起する場合については、裁決書が送達された日から法定の期間内に提起しなければならない。
- 収用裁決に示された損失補償の額について、高額に過ぎるとしてB市が不服であるとしても、行政機関相互の争いで、法律上の争訟には当たらないから、B市が出訴することは許されない。
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【答え】:4【解説】
1.Xが土地の収用そのものを違法として争う場合には、収用裁決の取消しを求めることとなるが、この訴訟は、B市を被告とする形式的当事者訴訟となる。
1・・・妥当ではない
Xが土地の収用そのものを違法として争う場合には、
収用裁決の取消しを求めることとなり、この訴訟は、抗告訴訟の一種である
取消訴訟です(
土地収用法133条1項、行政事件訴訟法3条1項)。
したがって、「形式的当事者訴訟」は誤りです。
2.収用裁決が無効な場合には、Xは、その無効を前提として、B市を被告として土地の所有権の確認訴訟を提起できるが、この訴訟は、抗告訴訟である。
2・・・妥当ではない
収用裁決が無効な場合には、Xは、その無効を前提として、B市を被告として土地の所有権の確認訴訟を提起できるが、この訴訟は、
争点訴訟(民事訴訟)です(
行政事件訴訟法45条)。
したがって、抗告訴訟ではありません。
3.Xが収用裁決に示された損失補償の額に不服がある場合には、A県を被告として、損失補償を増額する裁決を求める義務付け訴訟を提起すべきこととなる。
3・・・妥当ではない
Xが収用裁決に示された損失補償の額に不服がある場合には、B市を被告として、損失補償を増額する裁決を求める「形式的当事者訴訟」を提起すべきです(
土地収用法133条2項、3項、
行政事件訴訟法4条)。したがって、「A県を被告として、損失補償を増額する裁決を求める義務付け訴訟」は誤りです。
4.Xが収用裁決に示された損失補償の増額を求める訴訟を提起する場合については、裁決書が送達された日から法定の期間内に提起しなければならない。
4・・・妥当
収用委員会の裁決のうち損失の補償に関する訴えは、
裁決書の正本の送達を受けた日から6か月以内に提起しなければなりません(
土地収用法133条2項)。よって、本肢は妥当です。
5.収用裁決に示された損失補償の額について、高額に過ぎるとしてB市が不服であるとしても、行政機関相互の争いで、法律上の争訟には当たらないから、B市が出訴することは許されない。
5・・・妥当ではない
収用裁決に示された損失補償の額について、高額に過ぎるとしてB市が不服である場合、Xを被告として、
減額請求の訴え(形式的当事者訴訟)をすることはできます。よって、本肢は誤りです。
平成23年度(2011年度)|行政書士試験の問題と解説