日本の地方自治体の財政状況として、義務的経費の増大による財政の硬直化が指摘されている。次のア~オの記述のうち、この「義務的経費の増大」の事例として妥当なものの組合せはどれか。
ア.大規模な運動場の建設を行うこととなり、今年度の予算規模が大幅に増大することとなった。
イ.職員数を削減し、民間委託を行った結果、委託費の支出が大きく増大した。
ウ.過去に、不況の影響による法人事業税の減収分を補填するため、追加的な起債を行なった結果、後年度の元利償還費が大幅に増大した。
エ.生活保護世帯の増加により、扶助費の支出が大幅に増大した。
オ.下水道事業経営が厳しくなったため、一般会計からの繰出額が大幅に増大した。
- ア・イ・ウ
- ア・エ
- イ・ウ・エ
- ウ・エ
- エ・オ
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【答え】:4
【解説】
地方財政の経費
地方財政の経費は、①義務的経費、②投資的経費、③その他経費の3つに分けることができます。
①義務的経費
法令又は性質上、必ず必要な経費で任意に減額できない経費です。
例えば、人件費・公債費・扶助費など
②投資的経費
支出の効果が長期間に及ぶ経費です。
例えば、建設費、災害復旧費、失業対策費など
③その他経費
①と②以外の経費です。
例えば、物件費、積立金、繰出金、委託費など
ア.大規模な運動場の建設を行うこととなり、今年度の予算規模が大幅に増大することとなった。
ア・・・妥当ではない
運動場の建設は、②投資的経費の中の建設費にあたります。したがって、運動場の建設を増やしても「①義務的経費の増大」にはあたりません。
イ.職員数を削減し、民間委託を行った結果、委託費の支出が大きく増大した。
イ・・・妥当ではない
職員に支払う人件費は「義務的経費」ですが、委託先に払う経費は「③その他経費」です。したがって、委託費が増えても「①義務的経費の増大」にはあたりません。
ウ.過去に、不況の影響による法人事業税の減収分を補填するため、追加的な起債を行なった結果、後年度の元利償還費が大幅に増大した。
ウ・・・妥当
「元利償還費=借金の元本と利息の返済額の合計」は公債費なので、①義務的経費にあたります。したがって、後年度の元利償還費が増えることは「①義務的経費の増大」にはあたります。
エ.生活保護世帯の増加により、扶助費の支出が大幅に増大した。
エ・・・妥当
扶助費は①義務的経費です。
そのため、生活保護世帯の増加による扶助費の支出の増大は、「①義務的経費の増大」にはあたります。
オ.下水道事業経営が厳しくなったため、一般会計からの繰出額が大幅に増大した。
オ・・・妥当ではない
下水道工事の費用は「投資的経費」ですが、経営が厳しくなった結果の繰出(穴埋め費用)は「③その他経費」に当たります。そのため、一般会計からの繰出額の増大は「①義務的経費の増大」にはあたりません。
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