令和5年度(2023年度)過去問

令和5年・2023|問28|取得時効・物権変動

Aが所有する甲土地(以下「甲」という。)につき、Bの所有権の取得時効が完成し、その後、Bがこれを援用した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. Bの時効完成前に、CがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、Bは、Cに対して、登記なくして時効による所有権取得をもって対抗することができる。
  2. Bの時効完成後に、DがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、Bは、Dに対して、Dが背信的悪意者であったと認められる特段の事情があるときでも、登記なくして時効による所有権取得を対抗することはできない。
  3. Bの時効完成後に、EがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、その後さらにBが甲の占有を取得時効の成立に必要な期間継続したときは、Bは、Eに対し時効を援用すれば、時効による所有権取得をもって登記なくして対抗することができる。
  4. Bの時効完成後に、FがAから甲につき抵当権の設定を受けてその登記を了した場合、Bは、抵当権設定登記後引き続き甲の占有を取得時効の成立に必要な期間継続したときは、BがFに対し時効を援用すれば、Bが抵当権の存在を容認していたなどの抵当権の消滅を妨げる特段の事情がない限り、甲を時効取得し、その結果、Fの抵当権は消滅する。
  5. Bの時効完成後に、GがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、Bは、Gに対して、登記なくして時効による所有権取得をもって対抗することはできず、その際にBが甲の占有開始時点を任意に選択してその成立を主張することは許されない。

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【答え】:2

【解説】
1.Bの時効完成前に、CがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、Bは、Cに対して、登記なくして時効による所有権取得をもって対抗することができる。

1・・・妥当

時効取得者は、登記がなくても、時効完成前の第三者に対し、権利を主張することができます(大判大正7.3.2)。よって、時効取得者Bは、登記がなくても、時効完成前の第三者であるCに対して時効による所有権取得を対抗することができるので、本肢は妥当です。この点は理解が必要なので、個別指導で解説します!

2.Bの時効完成後に、DがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、Bは、Dに対して、Dが背信的悪意者であったと認められる特段の事情があるときでも、登記なくして時効による所有権取得を対抗することはできない。

2・・・妥当でない

時効取得者と時効完成後の第三者は、二重譲渡の対抗関係となり、時効取得者は、登記を備えなければ「時効完成後の第三者D」に対して、時効取得を対抗することができません(大連判大正14.7.8)。しかし、「時効完成後の第三者D」が背信的悪意者の場合は、例外的に、時効取得者は登記がなくても時効取得を対抗することができます(最判昭和43.8.2)。よって、時効完成後の第三者Dが背信的悪意者であったと認められる特段の事情がある場合、時効取得者Bは、登記がなくても、時効による所有権取得を対抗することができるので、本肢は「登記なくして時効による所有権取得を対抗することはできない」が妥当ではありません。理解すべき内容なので、詳細解説は個別指導で行います。

3.Bの時効完成後に、EがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、その後さらにBが甲の占有を取得時効の成立に必要な期間継続したときは、Bは、Eに対し時効を援用すれば、時効による所有権取得をもって登記なくして対抗することができる。

3・・・妥当

時効取得者と時効完成後の第三者は、二重譲渡の対抗関係となり、時効取得者は、登記を備えなければ「時効完成後の第三者E」に対して、時効取得を対抗することができません(大連判大正14.7.8)。ここまでは選択肢2と同じです。しかし、時効取得者が、時効完成後の第三者の登記後に、再度、取得時効の要件を満たしたとき(再度、取得時効の成立に必要な期間継続したとき)は、その第三者Eに対し、登記がなくても、権利を主張することができます(最判昭和36.7.20)。よって、時効取得者Bは、時効完成後の第三者であるEに対し時効を援用すれば、時効による所有権取得を登記なくして、対抗することができるので、妥当です。理解すべき内容なので、詳細解説は個別指導で行います。

4.Bの時効完成後に、FがAから甲につき抵当権の設定を受けてその登記を了した場合、Bは、抵当権設定登記後引き続き甲の占有を取得時効の成立に必要な期間継続したときは、BがFに対し時効を援用すれば、Bが抵当権の存在を容認していたなどの抵当権の消滅を妨げる特段の事情がない限り、甲を時効取得し、その結果、Fの抵当権は消滅する。

4・・・妥当

Bの取得時効の完成後、所有権移転登記がされることのないまま、第三者Fが原所有者Aから抵当権の設定を受けて抵当権設定登記をした場合において、不動産の時効取得者である占有者Bが、その後引き続き時効取得に必要な期間占有を継続したときは、占有者Bが抵当権の存在を容認していたなど抵当権の消滅を妨げる特段の事情がない限り、占有者Bは、不動産を時効取得し、その結果、Fの抵当権は消滅します(最判平成24.3.16)。よって、Bが、再度、甲を時効取得すれば甲に設定されていたFの抵当権は消滅します。理解すべき内容なので、詳細解説は個別指導で行います。

5.Bの時効完成後に、GがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、Bは、Gに対して、登記なくして時効による所有権取得をもって対抗することはできず、その際にBが甲の占有開始時点を任意に選択してその成立を主張することは許されない。

5・・・妥当

時効の起算点は占有開始時と決まっています。取得時効を援用する者は、その起算点を任意に(事由に)選択することはできません(最判昭和35.7.27)。よって、Bが甲の占有開始時点を任意に選択してその成立を主張することは許されません。起算点を選択するとどうなるかについては、理解すべき内容なので、詳細解説は個別指導で行います。

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令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問27|民法・消滅時効

消滅時効に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし、誤っているものはどれか。

  1. 債権者が権利を行使できることを知った時から5年間行使しないときは、その債権は、時効によって消滅する。
  2. 不法行為による損害賠償請求権以外の債権(人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権を除く)は、その権利について行使することができることを知らない場合でも、その権利を行使できる時から10年間行使しないときには、時効によって消滅する。
  3. 人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権は、その権利について行使することができることを知らない場合でも、その債権を行使できる時から20年間行使しないときには、時効によって消滅する。
  4. 人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。
  5. 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から20年間行使しないときは、時効によって消滅する。

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【答え】:4

【解説】
1.債権者が権利を行使できることを知った時から5年間行使しないときは、その債権は、時効によって消滅する。

1・・・正しい

債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないときは、その債権は、時効によって消滅します(民法166条1項1号)。この点は、応用問題も解けるように、条文を覚えるだけでなく、色々理解しなければなりません。この点は個別指導で解説します。

(債権等の消滅時効)
民法166条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき
二 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。

2.不法行為による損害賠償請求権以外の債権(人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権を除く)は、その権利について行使することができることを知らない場合でも、その権利を行使できる時から10年間行使しないときには、時効によって消滅する。

2・・・正しい

債権は、権利を行使することができる時から10年間行使しないとき時効によって消滅します(民法166条1項2号)。そのため、不法行為による損害賠償請求権以外の債権(人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権を除く)は、その権利について行使することができることを知らない場合でも、その権利を行使できる時から10年間行使しないときには、時効によって消滅します。不法行為による損害賠償請求権以外の債権(人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権を除く)とは、何か?理解が必要なので個別指導で解説します。

3.人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権は、その権利について行使することができることを知らない場合でも、その債権を行使できる時から20年間行使しないときには、時効によって消滅する。

3・・・正しい

人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権は、その権利について行使できることを知らない場合でも、権利を行使することができる時から20年間行使しないときは、時効によって消滅します(民法166条1項2号、民法167条)。よって、妥当です。

(債権等の消滅時効)
民法166条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき
(人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効)
民法167条 人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一項第二号の規定の適用については、同号中「10年間」とあるのは、「20年間」とする。

4.人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。

4・・・誤り

本肢は、「3年間」が誤りで、「5年間」とすれば正しいです。人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から5年間行使しないときは、時効によって消滅します(民法724条1号、民法724条の2)。

(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
民法724条 不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき
二 不法行為の時から20年間行使しないとき。
(人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
民法724条の2 人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一号の規定の適用については、同号中「3年間」とあるのは、「5年間」とする。

5.債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から20年間行使しないときは、時効によって消滅する。

5・・・正しい

債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から20年間行使しないときは、時効によって消滅します(民法166条2項)。具体例が分かりやすいので、個別指導で解説します。

(債権等の消滅時効)
第百六十六条 
2 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から20年間行使しないときは、時効によって消滅する。

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令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問26|行政法

地方公共団体に対する法律の適用に関する次の説明のうち、妥当なものはどれか。
(注)*1 公文書等の管理に関する法律  *2 行政機関の保有する情報の公開に関する法律

  1. 行政手続法は、地方公共団体の機関がする処分に関して、その根拠が条例に置かれているものについても行政手続法が適用されると定めている。
  2. 行政不服審査法は、地方公共団体には、それぞれ常設の不服審査機関(行政不服審査会等)を置かなければならないと定めている。
  3. 公文書管理法 *1は、地方公共団体が保有する公文書の管理および公開等に関して、各地方公共団体は条例を定めなければならないとしている。
  4. 行政代執行法は、条例により直接に命ぜられた行為についての履行の確保に関しては、各地方公共団体が条例により定めなければならないとしている。
  5. 行政機関情報公開法 *2は、地方公共団体は、同法の趣旨にのっとり、その保有する情報の公開に関して必要な施策を策定し、これを実施するよう努めなければならないと定めている。

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【答え】:5

【解説】
1.行政手続法は、地方公共団体の機関がする処分に関して、その根拠が条例に置かれているものについても行政手続法が適用されると定めている。

1・・・妥当でない

行政手続法は、地方公共団体の機関がする処分に関して、その根拠が条例に置かれているものについては、行政手続法が適用されないと定めています(行政手続法3条3項)。よって、妥当ではありません。

行政手続法3条3項 地方公共団体の機関がする処分(その根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)及び行政指導、地方公共団体の機関に対する届出(根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)並びに地方公共団体の機関が命令等を定める行為については、次章から第六章までの規定(行政手続法の規定)は、適用しない
2.行政不服審査法は、地方公共団体には、それぞれ常設の不服審査機関(行政不服審査会等)を置かなければならないと定めている。

2・・・妥当でない

地方公共団体は、当該地方公共団体における不服申立ての状況等に鑑み同項の機関を置くことが不適当又は困難であるときは、条例で定めるところにより、事件ごとに、執行機関の附属機関として、この法律の規定によりその権限に属させられた事項を処理するための機関((不服審査機関)を置くこととすることができます(行政不服審査法81条2項)。地方公共団体は、常設の不服審査機関を置かず事件ごとに臨時の不服審査機関を置くようにできます。不服審査とは、例えば、〇〇市行政不服審査会と呼ばれるものです。

3.公文書管理法 *1は、地方公共団体が保有する公文書の管理および公開等に関して、各地方公共団体は条例を定めなければならないとしている。

3・・・妥当でない

地方公共団体は、公文書管理法の趣旨にのっとり、その保有する文書の適正な管理に関して必要な施策を策定し、及びこれを実施するよう努めなければなりません(公文書管理法34条)。また、地方公共団体は、情報公開法の趣旨にのっとり、その保有する情報の公開に関し必要な施策を策定し、及びこれを実施するよう努めなければなりません(行政機関情報公開法25条)。つまり、地方公共団体が保有する公文書の管理も公開も、努力義務であり、条例で定める必要はありません。本肢は「条例を定めなければならない」となっているので妥当ではありません。

4.行政代執行法は、条例により直接に命ぜられた行為についての履行の確保に関しては、各地方公共団体が条例により定めなければならないとしている。

4・・・妥当でない

行政上の義務の履行確保に関しては、別に法律で定めるものを除いては、行政代執行法の定めるところによります(行政代執行法1条)。よって、「条例により直接に命ぜられた行為についての履行の確保に関しては、各地方公共団体が条例により定めなければならない」とはしていません。条例により直接に命ぜられた行為についての履行の確保に関しても、別に法律で定めるか、もしくは、行政代執行法で定めます。この点は理解できていない人も多いので個別指導で解説します。

5.行政機関情報公開法 *2は、地方公共団体は、同法の趣旨にのっとり、その保有する情報の公開に関して必要な施策を策定し、これを実施するよう努めなければならないと定めている。

5・・・妥当である

選択肢3でも解説した通り、地方公共団体は、情報公開法の趣旨にのっとり、その保有する情報の公開に関し必要な施策を策定し、及びこれを実施するよう努めなければなりません(行政機関情報公開法25条)。よって、本肢は努力義務となっており、妥当です。

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令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問25|行政事件訴訟法

空港や航空関連施設をめぐる裁判に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. いわゆる「新潟空港訴訟」(最二小判平成元年2月17日民集43巻2号56頁)では、定期航空運送事業免許の取消訴訟の原告適格が争点となったところ、飛行場周辺住民には、航空機の騒音によって社会通念上著しい障害を受けるとしても、原告適格は認められないとされた。
  2. いわゆる「大阪空港訴訟」(最大判昭和56年12月16日民集35巻10号1369頁)では、空港の供用の差止めが争点となったところ、人格権または環境権に基づく民事上の請求として一定の時間帯につき航空機の離着陸のためにする国営空港の供用についての差止めを求める訴えは適法であるとされた。
  3. いわゆる「厚木基地航空機運航差止訴訟」(最一小判平成28年12月8日民集70巻8号1833頁)では、周辺住民が自衛隊機の夜間の運航等の差止めを求める訴訟を提起できるかが争点となったところ、当該訴訟は法定の抗告訴訟としての差止訴訟として適法であるとされた。
  4. いわゆる「成田新法訴訟」(最大判平成4年7月1日民集46巻5号437頁)では、新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法(当時)の合憲性が争点となったところ、憲法31条の法定手続の保障は刑事手続のみでなく行政手続にも及ぶことから、適正手続の保障を欠く同法の規定は憲法31条に違反するとされた。
  5. いわゆる「成田新幹線訴訟」(最二小判昭和53年12月8日民集32巻9号1617頁)では、成田空港と東京駅を結ぶ新幹線の建設について、運輸大臣の工事実施計画認可の取消訴訟の原告適格が争点となったところ、建設予定地付近に居住する住民に原告適格が認められるとされた。

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【答え】:3

【解説】
1.いわゆる「新潟空港訴訟」(最二小判平成元年2月17日民集43巻2号56頁)では、定期航空運送事業免許の取消訴訟の原告適格が争点となったところ、飛行場周辺住民には、航空機の騒音によって社会通念上著しい障害を受けるとしても、原告適格は認められないとされた。

1・・・妥当でない

判例(最判平1.2.17新潟空港訴訟)によると「新たに付与された定期航空運送事業免許に係る路線の使用飛行場の周辺に居住していて、当該免許に係る事業が行われる結果、当該飛行場を使用する各種航空機の騒音の程度、当該飛行場の一日の離着陸回数、離着陸の時間帯等からして、当該免許に係る路線を航行する航空機騒音によって社会通念上着しい障害を受けることとなる者は、当該免許の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として、その取消訴訟における原告適格を有する」と判示しています。分かりやすく言えば、航空運送事業免許に関連する航空路線の使用飛行場周辺に住む人々は、航空機の騒音や離着陸の回数などによって受ける影響が大きい場合、その航空免許を取り消すことを求める訴訟を起こす権利がある(原告適格を有する)ということです。

2.いわゆる「大阪空港訴訟」(最大判昭和56年12月16日民集35巻10号1369頁)では、空港の供用の差止めが争点となったところ、人格権または環境権に基づく民事上の請求として一定の時間帯につき航空機の離着陸のためにする国営空港の供用についての差止めを求める訴えは適法であるとされた。

2・・・妥当でない

航空機の離着陸によって生じる騒音や環境への影響に対する争いについて、判例(最大判昭56.12.16:大阪空港訴訟)によると、「「空港管理権に基づく管理」と「航空行政権に基づく規制」とが、「空港管理権者としての運輸大臣」と「航空行政権の主管者としての運輸大臣」の両者が不即不離(継続して進め)、不可分一体的に行使実現されているものと解するのが相当なため、人格権または環境権に基づく民事上の請求として一定の時間帯につき航空機の離着陸のためにする国営空港の供用についての差止めを求める訴えは、不適法である」と判示しています。つまり、民事訴訟で訴えることはできないということです。

3.いわゆる「厚木基地航空機運航差止訴訟」(最一小判平成28年12月8日民集70巻8号1833頁)では、周辺住民が自衛隊機の夜間の運航等の差止めを求める訴訟を提起できるかが争点となったところ、当該訴訟は法定の抗告訴訟としての差止訴訟として適法であるとされた。

3・・・妥当

自衛隊が設置した「厚木基地(海上自衛隊とアメリカ海軍が使用する飛行場)」の周辺住民が、その飛行場の騒音被害を理由に、飛行機を飛ばすことの差止める訴えを提起した。これに対して判例(最判平28.12.8)では、『①住民は、当該飛行場に離着陸する航空機の発する騒音により、睡眠妨害、聴取妨害及び精神的作業の妨害や不快感等を始めとする精神的苦痛を反復継続的に受けており、その程度は軽視し難いこと②このような被害の発生に自衛隊の使用する航空機の運航が一定程度寄与していること③上記騒音は、当該飛行場において内外の情勢等に応じて配備され運航される航空機の離着陸が行われる度に発生するものであり、上記被害もそれに応じてその都度発生し、これを反復継続的に受けることにより蓄積していくおそれのあるものであることなど判示の事情の下においては、当該飛行場における自衛隊の使用する航空機の運航の内容、性質を勘案しても、行政事件訴訟法37条の4第1項所定の「重大な損害を生ずるおそれ」があると認められる』と判示しています。

(差止めの訴えの要件)
行政事件訴訟法37条の4第1項 差止めの訴えは、一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合に限り、提起することができる。ただし、その損害を避けるため他に適当な方法があるときは、この限りでない。
4.いわゆる「成田新法訴訟」(最大判平成4年7月1日民集46巻5号437頁)では、新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法(当時)の合憲性が争点となったところ、憲法31条の法定手続の保障は刑事手続のみでなく行政手続にも及ぶことから、適正手続の保障を欠く同法の規定は憲法31条に違反するとされた。

4・・・妥当でない

成田新法の条文が憲法31条の適正手続の保障に違反していないか争われた事件について、判例(最大判平4.7.1:成田新法訴訟)によると「憲法31条の定める法定手続の保障は、直接には刑事手続に関するものであるが、行政手続については、それが刑事手続ではないとの理由のみで、そのすべてが当然に同条による保障の枠外にあると判断することは相当ではない。」と判示しており、憲法31条の法定手続の保障は、刑事手続のみでなく行政手続にも及ぶ可能性を認めています。しかし、成田新法の条文は、憲法31条に違反しない」としました(最大判平成4.7.1)。これは理解が必要なので、個別指導で解説します。

5.いわゆる「成田新幹線訴訟」(最二小判昭和53年12月8日民集32巻9号1617頁)では、成田空港と東京駅を結ぶ新幹線の建設について、運輸大臣の工事実施計画認可の取消訴訟の原告適格が争点となったところ、建設予定地付近に居住する住民に原告適格が認められるとされた。

5・・・妥当でない

判例(最判昭53.12.8:成田新幹線訴訟)によると、『新幹線を作るために、日本鉄道建設公団が工事実施計画を作成し、この(新幹線)工事実施計画に対して行う国土交通大臣の認可は、いわば「日本鉄道建設公団の上級行政機関(国土交通大臣)」が、「下級行政機関(日本鉄道建設公団)」に対し、一定の審査をするという監督手段としての承認の性質を有するもので、行政機関相互の行為と同視すべきものであり、行政行為として外部に対する効力を有するものではなく、また、これによって直接国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定する効果を伴うものではないから、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたらない(処分性を有しない)』と判示しました。よって、「建設予定地付近に居住する住民に原告適格が認められるとした。」とはいえない。

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令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問24|地方自治法

地方自治法に定める事務の共同処理(普通地方公共団体相互間の協力)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

  1. 連携協約とは、普通地方公共団体が、他の普通地方公共団体と事務を処理するに当たっての連携を図るため、協議により、連携して事務を処理するための基本的な方針および役割分担を定める協約をいう。
  2. 協議会とは、普通地方公共団体が、事務の一部を共同して管理・執行し、もしくは事務の管理・執行について連絡調整を図り、または広域にわたる総合的な計画を共同して作成するため、協議により規約を定めて設置するものをいう。
  3. 機関等の共同設置とは、協議により規約を定め、共同して、議会事務局、附属機関、長の内部組織等を置くことをいう。
  4. 事務の代替執行とは、協議により規約を定め、普通地方公共団体の事務の一部の管理および執行を、他の地方公共団体に委託する制度であり、事務を受託した地方公共団体が受託事務の範囲において自己の事務として処理することにより、委託した地方公共団体が自ら当該事務を管理および執行した場合と同様の効果が生じる。
  5. 職員の派遣とは、当該普通地方公共団体の事務の処理のため特別の必要があると認めるとき、当該普通地方公共団体の長または委員会もしくは委員が、他の普通地方公共団体の長または委員会もしくは委員に対し、職員の派遣を求めるものをいう。

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【答え】:4

【解説】
1.連携協約とは、普通地方公共団体が、他の普通地方公共団体と事務を処理するに当たっての連携を図るため、協議により、連携して事務を処理するための基本的な方針および役割分担を定める協約をいう。

1・・・正しい

普通地方公共団体は、「当該普通地方公共団体及び他の普通地方公共団体の区域」における「当該普通地方公共団体及び当該他の普通地方公共団体」の事務の処理に当たっての当該他の普通地方公共団体との連携を図るため、協議により、「当該普通地方公共団体及び当該他の普通地方公共団体」が連携して事務を処理するに当たっての基本的な方針及び役割分担を定める協約(連携協約)を当該他の普通地方公共団体と締結することができます(地方自治法252条の2第1項)。これを簡潔にまとめると、「連携協約とは、普通地方公共団体が、他の普通地方公共団体と事務を処理するに当たっての連携を図るため、協議により、連携して事務を処理するための基本的な方針および役割分担を定める協約をいいます」。 分かりやすく言うと、地方自治法252条の2第1項は、普通地方公共団体同士が連携して事務を処理するために連携協約を締結することができることを規定しています。具体的には、ある普通地方公共団体と他の普通地方公共団体が、共同で事務を処理する場合、両者は連携協約を締結することができます。この連携協約は、異なる地方公共団体同士が連携して共同で事務を処理する際のルールや取り決めを定めるものであり、効果的な地方自治の推進や事務の効率化を図るための枠組みとなっています。

2.協議会とは、普通地方公共団体が、事務の一部を共同して管理・執行し、もしくは事務の管理・執行について連絡調整を図り、または広域にわたる総合的な計画を共同して作成するため、協議により規約を定めて設置するものをいう。

2・・・正しい

普通地方公共団体は、普通地方公共団体の事務の一部を共同して管理し及び執行し、若しくは普通地方公共団体の事務の管理及び執行について連絡調整を図り、又は広域にわたる総合的な計画を共同して作成するため、協議により規約を定め、普通地方公共団体の協議会を設けることができます(地方自治法252条の2の2第1項)。つまり、協議会とは、普通地方公共団体が、事務の一部を共同して管理・執行し、もしくは事務の管理・執行について連絡調整を図り、または広域にわたる総合的な計画を共同して作成するため、協議により規約を定めて設置するものをいいます。 協議会の具体例としては、以下のようなものがあります。

  • 地域振興協議会:複数の市町村が協力して地域の振興や活性化を図るための協議会。地域振興の計画策定やイベントの企画などが行われます。
  • 災害対策協議会:複数の自治体が協力して災害時の対策や復旧作業の計画を策定し、連携して行動するための協議会。災害時の対応や避難計画の策定などが主な活動です。
  • 交通安全協議会:複数の地域の交通安全を確保するために、警察や交通関連機関、地方自治体などが協力して設立される協議会。交通事故の予防策や安全キャンペーンの実施などが行われます。
  • 観光振興協議会:地域の観光資源を活用し、観光産業の振興を図るための協議会。観光施設の整備や観光プロモーションの計画が行われます。
  • 環境保全協議会:地域の環境保護や持続可能な開発を推進するための協議会。環境問題の調査研究や環境保護活動の計画が主な活動です。
これらの協議会は、地域の課題やニーズに応じて設立され、関係する自治体や関係機関が協力して問題解決や計画策定を行います。;

3.機関等の共同設置とは、協議により規約を定め、共同して、議会事務局、附属機関、長の内部組織等を置くことをいう。

3・・・正しい

普通地方公共団体は、協議により規約を定め共同して、事務局若しくはその内部組織(議会事務局)、委員会若しくは委員、附属機関、普通地方公共団体の議会、長、委員会若しくは委員の事務を補助する職員、専門委員又は監査専門委員を置くことができます(地方自治法252条の7第1項:機関等の共同設置)。つまり、機関等の共同設置とは、協議により規約を定め、共同して、議会事務局、附属機関、長の内部組織等を置くことをいいます。

4.事務の代替執行とは、協議により規約を定め、普通地方公共団体の事務の一部の管理および執行を、他の地方公共団体に委託する制度であり、事務を受託した地方公共団体が受託事務の範囲において自己の事務として処理することにより、委託した地方公共団体が自ら当該事務を管理および執行した場合と同様の効果が生じる。

4・・・誤り

普通地方公共団体は、他の普通地方公共団体の求めに応じて、協議により規約を定め、当該他の普通地方公共団体の事務の一部を、当該他の普通地方公共団体又は当該他の普通地方公共団体の長若しくは同種の委員会若しくは委員の名において管理し及び執行すること(事務の代替執行)ができます(地方自治法252条の16の2第1項)。つまり、事務の代替執行とは、普通地方公共団体が、他の普通地方公共団体の求めに応じて、協議により規約を定め、当該他の普通地方公共団体の事務の一部を、当該他の普通地方公共団体又は当該他の普通地方公共団体の長若しくは同種の委員会若しくは委員の名において管理し及び執行することです。 本肢の前半部分の「協議により規約を定め、普通地方公共団体の事務の一部の管理および執行を、他の地方公共団体に委託する制度」とは「事務の委託」のことです(地方自治法252条の14)。したがって誤りです。 違いについては、個別指導で解説します。

5.職員の派遣とは、当該普通地方公共団体の事務の処理のため特別の必要があると認めるとき、当該普通地方公共団体の長または委員会もしくは委員が、他の普通地方公共団体の長または委員会もしくは委員に対し、職員の派遣を求めるものをいう。

5・・・正しい

普通地方公共団体の長又は委員会若しくは委員は、法律に特別の定めがあるものを除くほか、当該普通地方公共団体の事務の処理のため特別の必要があると認めるときは、他の普通地方公共団体の長又は委員会若しくは委員に対し、当該普通地方公共団体の職員の派遣を求めることができます(地方自治法252条の17第1項:職員の派遣)。つまり、職員の派遣とは、当該普通地方公共団体の事務の処理のため特別の必要があると認めるとき、当該普通地方公共団体の長または委員会もしくは委員が他の普通地方公共団体の長または委員会もしくは委員に対し職員の派遣を求めるものをいいます。

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令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問23|地方自治法

地方自治法(以下「法」という。)が定める直接請求に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。なお、以下「選挙権」とは、「普通地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権」をいう。

  1. 事務監査請求は、当該普通地方公共団体の住民であれば、日本国民であるか否か、また選挙権を有するか否かにかかわらず、これを請求することができる。
  2. 普通地方公共団体の事務のうち法定受託事務に関する条例については、条例の制定改廃の直接請求の対象とすることはできない。
  3. 市町村の条例の制定改廃の直接請求における署名簿の署名に関し異議があるとき、関係人は、法定の期間内に総務大臣にこれを申し出ることができる。
  4. 議会の解散請求は、日本国民たる普通地方公共団体の住民であって選挙権を有する者の総数のうち、法所定の数以上の連署をもって成立するが、この総数が一定数以上の普通地方公共団体については、成立要件を緩和する特例が設けられている。
  5. 議会の解散請求が成立した後に行われる解散の住民投票において、過半数の同意があった場合、議会は解散するが、選挙権を有する者の総数が一定以上の普通地方公共団体については、過半数の同意という成立要件を緩和する特例が設けられている。

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【答え】:4

【解説】
1.事務監査請求は、当該普通地方公共団体の住民であれば、日本国民であるか否か、また選挙権を有するか否かにかかわらず、これを請求することができる。

1・・・誤り

選挙権を有する者は、政令で定めるところにより、その総数の50分の1以上の者の連署をもって、その代表者から、普通地方公共団体の監査委員に対し、当該普通地方公共団体の事務の執行に関し、監查の請求(事務監査請求)をすることができます(地方自治法75条1項)。よって、「選挙権を有する者」とは、満18年以上の日本国民で、引き続き3ヵ月以上、その市町村の区域内に住所を有する者を指します(地方自治法18条)。したがって、「日本国民であるか否か、また選挙権を有するか否かにかかわらず」という記述が誤りです。日本国民で、かつ選挙権を有していないと事務監査請求はできません。 対比ポイント個別指導で解説します。

2.普通地方公共団体の事務のうち法定受託事務に関する条例については、条例の制定改廃の直接請求の対象とすることはできない。

2・・・誤り

結論からいうと、本肢のような「普通地方公共団体の事務のうち法定受託事務に関する条例については、条例の制定改廃の直接請求の対象とすることはできない。」という制限はありません。よって、誤りです。 「条例の制定改廃の直接請求」に関するルールは、下記の通りです。

選挙権を有する者は、政令で定めるところにより、その総数の50分の1以上の者の連署をもって、その代表者から、普通地方公共団体の長に対し条例の制定又は改廃の請求をすることができます。ただし、例外的に「地方税の賦課徴収並びに分担金、使用料及び手数料の徴収に関する条例」については、制定又は改廃の請求ができません(地方自治法74条1項)。

3.市町村の条例の制定改廃の直接請求における署名簿の署名に関し異議があるとき、関係人は、法定の期間内に総務大臣にこれを申し出ることができる。

3・・・誤り

結論からいうと、「総務大臣に」という記述が誤りです。正しくは「当該市町村の選挙管理委員会」です。 市町村の条例の制定改廃の直接請求における署名簿の署名に関し異議があるときは、関係人は、法定の期間内に「当該市町村の選挙管理委員会」にこれを申し出ることができます(地方自治法74条の2第4項)。つまり、「市町村の条例の制定改廃の直接請求における署名簿の署名に関し異議」は、総務大臣ではなく当該市町村の選挙管理委員会に申し出るものです。

4.議会の解散請求は、日本国民たる普通地方公共団体の住民であって選挙権を有する者の総数のうち、法所定の数以上の連署をもって成立するが、この総数が一定数以上の普通地方公共団体については、成立要件を緩和する特例が設けられている。

4・・・正しい

 

5.議会の解散請求が成立した後に行われる解散の住民投票において、過半数の同意があった場合、議会は解散するが、選挙権を有する者の総数が一定以上の普通地方公共団体については、過半数の同意という成立要件を緩和する特例が設けられている。

5・・・誤り

選挙権を有する者は、政令の定めるところにより、その総数の3分の1(その総数が40万を超え80万以下の場合にあってはその40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が80万を超える場合にあってはその80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と40万に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもって、その代表者から、普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し、当該普通地方公共団体の議会の解散の請求をすることができる(地方自治法76条1項)。よって、総数が一定数以上の普通地方公共団体については、成立要件を緩和する特例が設けられています。これは分かりづらい部分なので、個別指導で具体例を入れて解説します。

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令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問22|地方自治法

地方自治法が定める普通地方公共団体に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 普通地方公共団体の区域は、地方自治法において「従来の区域」によるとされており、同法施行時の区域が基準となる。
  2. 市町村の境界変更は、関係市町村の申請に基づき、都道府県知事が当該都道府県の議会の議決を経てこれを定め、国会が承認することによって成立する。
  3. 都道府県の境界変更は、関係都道府県がその旨を定めた協定を締結し、総務大臣に届け出ることによって成立する。
  4. 市となるべき普通地方公共団体の要件として、地方自治法それ自体は具体的な数を示した人口要件を規定していないが、当該都道府県の条例で人口要件を定めることはできる。
  5. 市町村の境界に関し争論があるときは、都道府県知事は、関係市町村の申請に基づき又は職権で当該争論を裁判所の調停に付すことができる。

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【答え】:1
【解説】
1.普通地方公共団体の区域は、地方自治法において「従来の区域」によるとされており、同法施行時の区域が基準となる。

1・・・正しい

普通地方公共団体の区域は、従来の区域によります(地方自治法5条1項)。そして、これは地方自治法施行時の区域が基準となります。分かりやすく言えば地方自治体の区域は、その地域の歴史的な経緯や既存の制度に基づいて決定されるということを意味しています。具体的には、地方自治体の区域は従来から存在しており、その範囲や境界は歴史的な経緯や地理的な条件、人口分布、行政上の便宜などに基づいて形成されています。この規定は、地方自治体の区域を安定させ、一定の基準に基づいて変更されないようにするために設けられています。

2.市町村の境界変更は、関係市町村の申請に基づき、都道府県知事が当該都道府県の議会の議決を経てこれを定め、国会が承認することによって成立する。

2・・・誤り

市町村の廃置分合又は市町村の境界変更は、関係市町村の申請に基き、都道府県知事が当該都道府県の議会の議決を経てこれを定め、直ちにその旨を総務大臣に届け出なければなりません(地方自治法7条1項)。「国会が承認」は不要なので、誤りです。

3.都道府県の境界変更は、関係都道府県がその旨を定めた協定を締結し、総務大臣に届け出ることによって成立する。

3・・・誤り

都道府県の廃置分合又は境界変更をしようとするときは、法律でこれを定めます(地方自治法6条1項)。分かりやすくいうと、都道府県の廃止、新設、合併、または境界変更を行う場合には、それに関する具体的な手続きや条件を、法律で定める必要があるということです。つまり、協定の締結や総務大臣への届出で成立するわけではないので、誤りです。

4.市となるべき普通地方公共団体の要件として、地方自治法それ自体は具体的な数を示した人口要件を規定していないが、当該都道府県の条例で人口要件を定めることはできる。

4・・・誤り

となるべき普通地方公共団体は、下記要件を備えなければなりません(地方自治法8条1項)。

  1. 人口が5万人以上であること。
  2. 当該普通地方公共団体の中心の市街地を形成している区域内に存在戸数が、全戸数の6割以上であること。
  3. 商工業その他の都市的業態に従事する者及びその者と同一世帯に属する者の数が、全人口の6割以上であること。
  4. 上記1~3に定めるものの他、当該都道府県の条例で定める都市的施設その他の都市としての要件を具えていること。
よって、「地方自治法それ自体は具体的な数を示した人口要件を規定していない」というのは誤りです。市となる人口要件として5万人以上と定めています。

5.市町村の境界に関し争論があるときは、都道府県知事は、関係市町村の申請に基づき又は職権で当該争論を裁判所の調停に付すことができる。

5・・・誤り

市町村の境界に関し争論があるときは、都道府県知事は、関係市町村の申請に基づき、調停に付することができます(地方自治法9条)。本肢は「又は職権で当該争論を裁判所の調停に付すことはできる」となっているので誤りです。「職権」では調停に付することはできません。この条文は何を言っているのか理解していただきたい部分なので、個別指導で解説します。

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令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問21|国家賠償法

次の文章は、国家賠償法1条2項に基づく求償権の性質が問われた事件において、最高裁判所が下した判決に付された補足意見のうち、同条1項の責任の性質に関して述べられた部分の一部である(文章は、文意を損ねない範囲で若干修正している)。空欄[ ア ]~[ エ ]に当てはまる語句の組合せとして、正しいものはどれか。

国家賠償法1条1項の性質については[ ア ]説と[ イ ]説が存在する。両説を区別する実益は、加害公務員又は加害行為が特定できない場合や加害公務員に[ ウ ]がない場合に、[ ア ]説では国家賠償責任が生じ得ないが[ イ ]説では生じ得る点に求められていた。しかし、最一小判昭和57年4月1日民集36巻4号519頁は、[ ア ]説か[ イ ]説かを明示することなく、「国又は公共団体の公務員による一連の職務上の行為の過程において他人に被害を生ぜしめた場合において、それが具体的にどの公務員のどのような違法行為によるものであるかを特定することができなくても、右の一連の行為のうちのいずれかに行為者の故意又は過失による違法行為があったのでなければ右の被害が生ずることはなかったであろうと認められ、かつ、それがどの行為であるにせよこれによる被害につき行為者の属する国又は公共団体が法律上賠償の責任を負うべき関係が存在するときは、国又は公共団体は損害賠償責任を免れることができない」と判示している。さらに、公務員の過失を[ エ ]過失と捉える裁判例が支配的となっており、個々の公務員の[ ウ ]を問題にする必要はないと思われる。したがって、[ ア ]説、[ イ ]説は、解釈論上の道具概念としての意義をほとんど失っているといってよい。

None.(最三小判令和2年7月14日民集74巻4号1305頁、字賀克也裁判官補足意見)

  1. ア:代位責任 イ:自己責任 ウ:有責性 エ:組織的
  2. ア:代位責任 イ:自己責任 ウ:有責性 エ:重大な
  3. ア:代位責任 イ:自己責任 ウ:職務関連性 エ:重大な
  4. ア:自己責任 イ:代位責任 ウ:有責性 エ:組織的
  5. ア:自己責任 イ:代位責任 ウ:職務関連性 エ:重大な

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【答え】:1(ア:代位責任 イ:自己責任 ウ:有責性 エ:組織的)
国家賠償法1条1項の性質については[ ア:代位責任 ]説と[ イ:自己責任 ]説が存在する。両説を区別する実益は、加害公務員又は加害行為が特定できない場合や加害公務員に[ ウ:有責性 ]がない場合に、[ ア:代位責任 ]説では国家賠償責任が生じ得ないが[ イ:自己責任 ]説では生じ得る点に求められていた。しかし、最一小判昭和57年4月1日民集36巻4号519頁は、[ ア:代位責任 ]説か[ イ:自己責任 ]説かを明示することなく、「国又は公共団体の公務員による一連の職務上の行為の過程において他人に被害を生ぜしめた場合において、それが具体的にどの公務員のどのような違法行為によるものであるかを特定することができなくても、右の一連の行為のうちのいずれかに行為者の故意又は過失による違法行為があったのでなければ右の被害が生ずることはなかったであろうと認められ、かつ、それがどの行為であるにせよこれによる被害につき行為者の属する国又は公共団体が法律上賠償の責任を負うべき関係が存在するときは、国又は公共団体は損害賠償責任を免れることができない」と判示している。さらに、公務員の過失を[ エ:組織的 ]過失と捉える裁判例が支配的となっており、個々の公務員の[ ウ:有責性 ]を問題にする必要はないと思われる。したがって、[ ア:代位責任 ]説、[ イ:自己責任 ]説は、解釈論上の道具概念としての意義をほとんど失っているといってよい。

【解説】
ア.イ.国家賠償法1条1項の性質については[ ア ]説と[ イ ]説が存在する。両説を区別する実益は、加害公務員又は加害行為が特定できない場合・・・に、[ ア ]説では国家賠償責任が生じ得ないが[ イ ]説では生じ得る点に求められていた。

ア・・・代位責任、イ・・・自己責任

国家賠償法1条1項では、「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責任を負う。」としています。これは、公務員が、その職務の執行にともなって国民に損害を与えた場合に、国又は公共団体がその賠償責任を負うという意味です。そして、この公務員と国家との責任関係を説明するために「代位責任説」と「自己責任説」があります。

代位責任説(通説・判例)
もともと加害行為(不法行為)を行ったのは、公務員(個人)だから、①公務員個人の不法行為責任が発生する。しかし、公務員個人に賠償させるとなると、多額となる場合、賠償できず、結果として、被害者を十分に救済できない可能性が出てくる。そのため、公務員個人の代わりに、国や公共団体が賠償責任を負うという考え方です。つまり、①初めに、加害行為を行った公務員個人の不法行為責任が成立する②その責任を国または公共団体が代わりに負う。という考え方、だから「代位責任説」と呼びます。

自己責任説)
もともと不法行為を行ったのは、公務員(個人)だけれども、これは、国や公共団体の職務執行として行った行為だから、公務員個人が行った不法行為であっても、はじめから国や公共団体の責任として損害賠償責任を負うという考え方。この場合、公務員個人の不法行為責任とはとらえない

ここで問題文を見ると「加害公務員又は加害行為が特定できない場合・・・に、[ ア ]説では国家賠償責任が生じ得ないが[ イ ]説では生じ得る」と書いてあります。代位責任説で考えると、加害公務員を特定できない場合①不法行為責任が発生しません。誰に不法行為責任が生じるか判断できないからです。そのため、国または公共団体には、責任が発生しません(賠償責任を負わない)。そのため、「ア」には「代位責任」が入ります。

逆に、自己責任説で考えると、加害公務員を特定できない場合でも、公務員の誰かしらが加害行為行ったのであれば、その時点で、国または公共団体の責任となります。そのため、「イ」には「自己責任」が入ります。

ウ.国家賠償法1条1項の性質については[ ア:代位責任 ]説と[ イ:自己責任 ]説が存在する。両説を区別する実益は、加害公務員又は加害行為が特定できない場合や加害公務員に[ ウ ]がない場合に、[ ア:代位責任 ]説では国家賠償責任が生じ得ないが[ イ:自己責任 ]説では生じ得る点に求められていた。

ウ・・・有責性

問題文を見ると「害公務員又は加害行為が特定できない場合や加害公務員に[ ウ ]がない場合に、[ ア:代位責任 ]説では国家賠償責任が生じ得ない」と書いてあります。つまり、代位責任説に立った場合、どんな場合に、国家賠償責任が生じないのかを考えればよいです。選択肢は「有責性」又は「職務関連性」です。

【有責性を入れた場合】 加害公務員に「有責性」がないと仮定すると、『加害公務員に「有責性(故意または過失)」がない場合、国家賠償責任は生じない』となります。これは正しいです。なぜなら、不法行為責任が成立するのは、「故意または過失によって、他人の権利や法律上保護される利益を違法に侵害した場合」だからです(民法709条)。公務員に有責性がないと、公務員に不法行為責任は発生せず、結果として、国家賠償責任も生じない、ということです。そのため、「有責性」を入れれば妥当な記述となります。

【職務執行性を入れた場合】 加害公務員に「職務執行性」がないと仮定すると、公務員は、プライベートで加害行為を行ったことになります。この場合、そもそも、国家賠償責任の対象ではなくなるので、代位責任説でも自己責任説を考える理由がなくなります。よって、職務執行性は入りません。

エ.公務員の過失を[ エ ]過失と捉える裁判例が支配的となっており、個々の公務員の[ ウ:有責性 ]を問題にする必要はないと思われる。

エ・・・組織的

問題文を見ると「公務員の過失を[ エ ]過失と捉える裁判例が支配的となっており、個々の公務員の[ ウ:有責性 ]を問題にする必要はない」と言っています。選択肢は「組織的」又は「重大な」です。

【重大を入れた場合】 「公務員の過失を[ エ:重大な ]過失と捉える裁判例が支配的となっており、個々の公務員の[ ウ:有責性 ]を問題にする必要はない」となります。公務員に重過失があるのであれば、当然に、この公務員に有責性があることになるのですが、何か意味が通じません。

【組織的を入れた場合】 「公務員の過失を[ エ:組織的 ]過失と捉える裁判例が支配的となっており、個々の公務員の[ ウ:有責性 ]を問題にする必要はない」となります。公務員の過失が組織的過失ととらえると、その前の判例の文章

「国又は公共団体の公務員による一連の職務上の行為の過程において他人に被害を生ぜしめた場合において、それが具体的にどの公務員のどのような違法行為によるものであるかを特定することができなくても、右の一連の行為のうちのいずれかに行為者の故意又は過失による違法行為があったのでなければ右の被害が生ずることはなかったであろうと認められ、かつ、それがどの行為であるにせよこれによる被害につき行為者の属する国又は公共団体が法律上賠償の責任を負うべき関係が存在するときは、国又は公共団体は損害賠償責任を免れることができない

つまり、加害行為に、複数の公務員が関わっていて、誰が加害行為をしたか特定できない場合であっても、「組織的」な過失ととらえることで、国家賠償責任を認めるということです。つまり、組織としての有責性をもとに不法行為責任を考えるので、「個々の公務員の有責性を問題にする必要はない」ということです。よって、「エ」には、組織的が入ります。

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令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問20|国家賠償法

道路をめぐる国家賠償に関する最高裁判所の判決について説明する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 落石事故の発生した道路に防護柵を設置する場合に、その費用の額が相当の多額にのぼり、県としてその予算措置に困却するであろうことが推察できる場合には、そのことを理由として、道路管理者は、道路の管理の瑕疵によって生じた損害に対する賠償責任を免れ得るものと解するのが相当である。
  2. 事故発生当時、道路管理者が設置した工事標識板、バリケードおよび赤色灯標柱が道路上に倒れたまま放置されていたことは、道路の安全性に欠如があったといわざるをえず、それが夜間の事故発生直前に生じたものであり、道路管理者において時間的に遅滞なくこれを原状に復し道路を安全良好な状態に保つことが困難であったとしても、道路管理には瑕疵があったと認めるのが相当である。
  3. 防護柵は、道路を通行する人や車が誤って転落するのを防止するために設置されるものであり、材質、高さその他その構造に徴し、通常の通行時における転落防止の目的からみればその安全性に欠けるところがないものであったとしても、当該転落事故の被害者が危険性の判断能力に乏しい幼児であった場合、その行動が当該道路および防護柵の設置管理者において通常予測することができなくとも、営造物が本来具有すべき安全性に欠けるところがあったと評価され、道路管理者はその防護柵の設置管理者としての責任を負うと解するのが相当である。
  4. 道路の周辺住民から道路の設置・管理者に対して損害賠償の請求がされた場合において、当該道路からの騒音、排気ガス等が周辺住民に対して現実に社会生活上受忍すべき限度を超える被害をもたらしたことが認定判断されたとしても、当該道路が道路の周辺住民に一定の利益を与えているといえるときには、当該道路の公共性ないし公益上の必要性のゆえに、当該道路の供用の違法性を認定することはできないものと解するのが相当である。
  5. 走行中の自動車がキツネ等の小動物と接触すること自体により自動車の運転者等が死傷するような事故が発生する危険性は高いものではなく、通常は、自動車の運転者が適切な運転操作を行うことにより死傷事故を回避することを期待することができるものというべきであって、金網の柵をすき間なく設置して地面にコンクリートを敷くという小動物の侵入防止対策が全国で広く採られていたという事情はうかがわれず、そのような対策を講ずるためには多額の費用を要することは明らかであり、当該道路には動物注意の標識が設置され自動車の運転者に対して道路に侵入した動物についての適切な注意喚起がされていたということができるなどの事情の下においては、高速道路で自動車の運転者がキツネとの衝突を避けようとして起こした自損事故において、当該道路に設置または管理の瑕疵があったとはいえない。

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【答え】:5
【解説】
1.落石事故の発生した道路に防護柵を設置する場合に、その費用の額が相当の多額にのぼり、県としてその予算措置に困却するであろうことが推察できる場合には、そのことを理由として、道路管理者は、道路の管理の瑕疵によって生じた損害に対する賠償責任を免れ得るものと解するのが相当である。

1・・・妥当でない

判例(最判昭45.8.20)によると、「落石事故の発生した道路に防護柵を設置する場合に、その費用の額が相当の多額にのぼり、県として、その予算措置に困却するであろうことは推察できる(予算的な制約があり、困ってしまうことは考えられる)が、だからといって、直ちに道路の管理の瑕疵によって生じた損害に対する賠償責任を免れることができると考えることはできない」と判示しています。

分かりやすく言えば
県が予算的な制約を理由に安全対策を講じるのが難しいからといって、損害の賠償責任が免除されるわけではない、ということです。

2.事故発生当時、道路管理者が設置した工事標識板、バリケードおよび赤色灯標柱が道路上に倒れたまま放置されていたことは、道路の安全性に欠如があったといわざるをえず、それが夜間の事故発生直前に生じたものであり、道路管理者において時間的に遅滞なくこれを原状に復し道路を安全良好な状態に保つことが困難であったとしても、道路管理には瑕疵があったと認めるのが相当である。

2・・・妥当でない

判例(最判昭50.6.26)によると、「事故発生当時、道路管理者が設置した工事標識板、バリケードおよび赤色灯標柱が道路上に倒れたまま放置されていたことは、道路の安全性に欠如があったといわざるをえないが、それが夜間の事故発生の直前に先行した他車によって惹起されたものであり、時間的に、遅滞なくこれを原状回復させ道路を安全良好な状態に保つことが困難であったときは、道路管理に瑕疵がなかったと認めるのが相当である」と判示しています。

分かりやすく言うと
倒れた標識等が、道路上に放置されていることは、道路の安全性に欠如があるといえる。しかし、事故発生直前に他の車両によって標識等が倒され、その復旧が直ちに行って、安全な状態に保つことが困難であった場合には、道路管理者は免責されるということです。 本肢は「事故発生当時、道路管理者が設置した工事標識板、バリケードおよび赤色灯標柱が道路上に倒れたまま放置されていたことは、道路の安全性に欠如があったといわざるをえず」という部分は妥当です。後半部分の「時間的に遅滞なくこれを原状に復し道路を安全良好な状態に保つことが困難であったとしても、道路管理には瑕疵があったと認めるのが相当」が妥当ではありません。

3.防護柵は、道路を通行する人や車が誤って転落するのを防止するために設置されるものであり、材質、高さその他その構造に徴し、通常の通行時における転落防止の目的からみればその安全性に欠けるところがないものであったとしても、当該転落事故の被害者が危険性の判断能力に乏しい幼児であった場合、その行動が当該道路および防護柵の設置管理者において通常予測することができなくとも、営造物が本来具有すべき安全性に欠けるところがあったと評価され、道路管理者はその防護柵の設置管理者としての責任を負うと解するのが相当である。

3・・・妥当でない

判例(最判昭53.7.4)によると、「防護柵は、道路を通行する人や車が誤って転落するのを防止するために設置されるものであり、材質、高さその他その構造に徴し、通常の通行時における転落防止の目的からみれば、その安全性に欠けるところがないものであれば、転落事故の被害者が危険性の判断能力に乏しい幼児であったとしても、道路及び防護柵の設置管理者が通常予測することのできない行動に起因するものであった場合、営造物につき本来それが具有すべき安全性に欠けるところがあったとはいえず、道路管理者はその設置管理者としての責任を負うべき理由はない」と判示しています。

分かりやすく言うと防護柵は通行者や車両の転落を防止するために設置されるものであり、その安全性が通常の通行時において欠けていない場合、転落事故の被害者が幼児であったとしても、防護柵の設置管理者は予測できない行動によって事故が発生した場合には責任を負わない、ということです。つまり、防護柵が本来の安全性を備えており、通常の状況では安全性に問題がない場合には、その設置管理者は事故の責任を負わないということです。

本肢は「通常予測することができなくとも、・・・、道路管理者はその防護柵の設置管理者としての責任を負うと解するのが相当である」と書いてあるので妥当ではありません。

4.道路の周辺住民から道路の設置・管理者に対して損害賠償の請求がされた場合において、当該道路からの騒音、排気ガス等が周辺住民に対して現実に社会生活上受忍すべき限度を超える被害をもたらしたことが認定判断されたとしても、当該道路が道路の周辺住民に一定の利益を与えているといえるときには、当該道路の公共性ないし公益上の必要性のゆえに、当該道路の供用の違法性を認定することはできないものと解するのが相当である。

4・・・妥当でない

判例(最判平7.7.7)によると「道路の周辺住民から道路の設置・管理者に対して損害賠償の請求がされた場合において、当該道路からの騒音、排気ガス等が右住民に対して現実に社会生活上受忍すべき限度を超える被害をもたらしたことが認定判断されたときは、当然に当該住民との関係において道路が他人に危害を及ぼす危険性のある状態にあったことが認定判断されたことになる」と判示しています。

分かりやすくいうと道路からの騒音や排気ガスが、住民に実際に受け入れられるべき限度を超える被害をもたらしたと認定された場合道路は他人に危害を及ぼす危険性のある状態にあったと判断され道路設置者や管理者は被害の責任を負うということです。よって、本肢は「道路の供用の違法性を認定することはできないものと解するのが相当」と書いてあるので妥当ではありません。

5.走行中の自動車がキツネ等の小動物と接触すること自体により自動車の運転者等が死傷するような事故が発生する危険性は高いものではなく、通常は、自動車の運転者が適切な運転操作を行うことにより死傷事故を回避することを期待することができるものというべきであって、金網の柵をすき間なく設置して地面にコンクリートを敷くという小動物の侵入防止対策が全国で広く採られていたという事情はうかがわれず、そのような対策を講ずるためには多額の費用を要することは明らかであり、当該道路には動物注意の標識が設置され自動車の運転者に対して道路に侵入した動物についての適切な注意喚起がされていたということができるなどの事情の下においては、高速道路で自動車の運転者がキツネとの衝突を避けようとして起こした自損事故において、当該道路に設置または管理の瑕疵があったとはいえない。

5・・・妥当

判例(最判平22.3.2)によると「北海道内の高速道路で自動車の運転者がキツネとの衝突を避けようとして自損事故を起こした場合において、(1)走行中の自動車が上記道路に侵入したキツネ等の小動物と接触すること自体により自動車の運転者等が死傷するような事故が発生する危険性は高いものではないこと、(2)金網の柵を地面との透き間無く設置し、地面にコンクリートを敷くという小動物の侵入防止対策が全国で広く採られていたという事情はうかがわれず、そのような対策を講ずるためには多額の費用を要することは明らかであること、(3)上記道路には動物注意の標識が設置されていたことなどの事情の下においては、上記(2)のような対策が講じられていなかったからといって、上記道路に設置又は管理の瑕疵があったとはいえない。」と判示しています。

分かりやすく言うと、高速道路で自動車の運転者がキツネとの衝突を避けようとして自損事故を起こした場合において、

  1. 道路上での小動物との接触により、自動車の運転者が死傷する危険性は高くない
  2. 小動物の侵入を防ぐための柵を設置する費用が高額であり、一般的に採用されていない。
  3. 道路には動物注意の標識が設置されており、適切な注意が喚起されていた。

これらの事情から、道路に設置又は管理の瑕疵があったとはいえないと判示しています。

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令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問19|行政事件訴訟法

行政事件訴訟法が定める抗告訴訟の対象に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 登録免許税を過大に納付して登記を受けた者が登録免許税法に基づいてした登記機関から税務署長に還付通知をすべき旨の請求に対し、登記機関のする拒否通知は、当該請求者の権利に直接影響を及ぼす法的効果を有さないため、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらない。
  2. 行政庁が建築基準法に基づいて、いわゆるみなし道路を告示により一括して指定する行為は、特定の土地について個別具体的な指定をしたものではなく、一般的基準の定立を目的としたものにすぎず、告示による建築制限等の制限の発生を認めることができないので、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらない。
  3. 労災就学援護費に関する制度の仕組みに鑑みると、被災労働者またはその遺族は、労働基準監督署長の支給決定によって初めて具体的な労災就学援護費の支給請求権を取得するため、労働基準監督署長が行う労災就学援護費の支給または不支給の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。
  4. 市町村長が住民基本台帳法に基づき住民票に続柄を記載する行為は、公の権威をもって住民の身分関係を証明し、それに公の証明力を与える公証行為であるから、それ自体によって新たに国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定する法的効果を有するため、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。
  5. 都市計画法の規定に基づく用途地域指定の決定が告示された場合、その効力が生ずると、当該地域内においては、建築物の用途、容積率、建ぺい率等につき従前と異なる基準が適用され、これらの基準に適合しない建築物については建築確認を受けることができなくなる効果が生じるので、用途地域指定の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。

>解答と解説はこちら


【答え】:3

【解説】
1.登録免許税を過大に納付して登記を受けた者が登録免許税法に基づいてした登記機関から税務署長に還付通知をすべき旨の請求に対し、登記機関のする拒否通知は、当該請求者の権利に直接影響を及ぼす法的効果を有さないため、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらない。

1・・・妥当でない

登録免許税を過大に納付して登記を受けた者が登録免許税法に基づいてした登記機関から税務署長に還付通知をすべき旨の請求をした。これに対し、登記機関が拒否処分を下した。この場合の登記機関が行った拒否処分は、行政処分に当たります最判平17.4.14)。詳細解説は、個別指導で行います!

2.行政庁が建築基準法に基づいて、いわゆるみなし道路を告示により一括して指定する行為は、特定の土地について個別具体的な指定をしたものではなく、一般的基準の定立を目的としたものにすぎず、告示による建築制限等の制限の発生を認めることができないので、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらない。

2・・・妥当でない

行政庁が建築基準法に基づいて、みなし道路(二項道路)を告示により一括して指定する行為は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たります(最判平14.1.17)。2項道路が指定されると、その敷地所有者は当該道路につき道路内の建築等が制限されるなど具体的な私権の制限を受けることになります。そうすると、特定行政庁による2項道路(みなし道路)の指定は、それが一括指定の方法でされた場合であっても、個別の土地についてその本来的な効果として具体的な私権制限を発生させるものであり、個人の権利義務に対して直接影響を与えるものといえます。そのため、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たります

3.労災就学援護費に関する制度の仕組みに鑑みると、被災労働者またはその遺族は、労働基準監督署長の支給決定によって初めて具体的な労災就学援護費の支給請求権を取得するため、労働基準監督署長が行う労災就学援護費の支給または不支給の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。

3・・・妥当である

労働基準監督署長が行う労災就学援護費の支給または不支給の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たります(最判平15.9.4)。災労働者又はその遺族は、具体的に支給を受けるためには、労働基準監督署長に申請し、所定の支給要件を具備していることの確認を受けなければなりません。そして、労働基準監督署長の支給決定によって初めて具体的な労災就学援護費の支給請求権を取得します。そうすると、労働基準監督署長の行う労災就学援護費の支給又は不支給の決定は、優越的地位に基づいて一方的に行う公権力の行使であり、被災労働者又はその遺族の上記権利に直接影響を及ぼす法的効果を有するものであるから、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるものといえます。

4.市町村長が住民基本台帳法に基づき住民票に続柄を記載する行為は、公の権威をもって住民の身分関係を証明し、それに公の証明力を与える公証行為であるから、それ自体によって新たに国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定する法的効果を有するため、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。

4・・・妥当でない

市町村長が住民基本台帳法に基づき住民票に続柄を記載する行為は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たりません最判平11.1.21)。なぜなら、住民票に「続柄」を記載する行為は、何らかの法的効果を有するものではないからです。ちなみに、同じ判例の中で「市町村長が住民票に記載事項を記載する行為は、元来、公の権威をもって住民の居住関係に関するこれらの事項を証明し、それに公の証拠力を与えるいわゆる公証行為であり、それ自体によって新たに国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定する法的効果を有するものではない」と言っています。よって、本肢は妥当ではありません。詳細解説は、個別指導で行います!

5.都市計画法の規定に基づく用途地域指定の決定が告示された場合、その効力が生ずると、当該地域内においては、建築物の用途、容積率、建ぺい率等につき従前と異なる基準が適用され、これらの基準に適合しない建築物については建築確認を受けることができなくなる効果が生じるので、用途地域指定の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。

5・・・妥当でない

都市計画法の規定に基づく用途地域指定の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たりません(最判昭57.4.22)。都市計画区域内において工業地域を指定する決定は、都市計画法8条1項1号に基づき都市計画決定の一つとしてされるものであり、右決定が告示されて効力を生ずると、当該地域内においては、建築物の用途、容積率、建ぺい率等につき従前と異なる基準が適用される。しかし、これらの効果は、当該地域内の不特定多数の者に対する一般的抽象的なそれにすぎず、個別具体的な処分とは言えないので、処分性を有しません。そのため、用途地域指定の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たりません

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令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略