令和5年度(2023年度)過去問

令和5年・2023|問38|会社法・種類株式

株式会社の種類株式に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、誤っているものはどれか。なお、定款において、単元株式数の定めはなく、また、株主総会における議決権等について株主ごとに異なる取扱いを行う旨の定めはないものとする。

  1. 株式会社が2以上の種類の株式を発行する場合には、各々の種類の株式について発行可能種類株式総数を定款で定めなければならない。
  2. 公開会社および指名委員会等設置会社のいずれでもない株式会社は、1つの株式につき2個以上の議決権を有することを内容とする種類株式を発行することができる。
  3. 株式会社は、株主総会または取締役会において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を必要とすることを内容とする種類株式を発行することができる。
  4. 公開会社および指名委員会等設置会社のいずれでもない株式会社は、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役または監査役を選任することを内容とする種類株式を発行することができる。
  5. 株式会社は、株主総会の決議事項の全部について議決権を有しないことを内容とする種類株式を発行することができる。

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【答え】:2
【解説】
1.株式会社が2以上の種類の株式を発行する場合には、各々の種類の株式について発行可能種類株式総数を定款で定めなければならない。

1・・・正しい

株式会社は、内容の異なる2以上の種類の株式を発行する場合には、一定事項及び発行可能種類株式総数定款で定めなければなりません(会社法108条2項)。よって、正しいです。

【具体例】「剰余金配当に関する種類株式」の場合、当該種類の株主に交付する配当財産の価額の決定の方法、剰余金の配当をする条件その他剰余金の配当に関する取扱いの内容、発行可能種類株式総数を定款で定めます。

2.公開会社および指名委員会等設置会社のいずれでもない株式会社は、1つの株式につき2個以上の議決権を有することを内容とする種類株式を発行することができる。

2・・・誤り

株式会社は、株主を、その有する株式の内容及び数に応じて、平等に取り扱わなければななりません(会社法109条1項)。ただし、公開会社でない株式会社(非公開会社)は、「剰余金の配当を受ける権利」「残余財産の分配を受ける権利」「株主総会における議決権」について、株主ごとに異なる取扱いを行う旨を定款で定めることができます(会社法109条2項)。

3.株式会社は、株主総会または取締役会において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を必要とすることを内容とする種類株式を発行することができる。

3・・・正しい

株式会社は、「株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会)において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とする」旨の種類株式を発行することができます(会社法108条1項8号)。この種類株式を「拒否権付種類株式」と呼ばれます。

【具体例】 例えば、取締役の選任について、「当会社の取締役の選任については、株主総会の決議のほか、A種類株式を有する株主の種類株主総会の決議を要する。」という規定があった場合、 株主総会によって取締役としてXを選任する決議が成立したときも、拒否権付種類株主総会で当該議案が否決されたときは、Xは取締役となることができません。

4.公開会社および指名委員会等設置会社のいずれでもない株式会社は、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役または監査役を選任することを内容とする種類株式を発行することができる。

4・・・正しい

公開会社および指名委員会等設置会社のいずれでもない株式会社は、「当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役または監査役を選任すること」を内容とする種類株式を発行することができます(会社法108条1項9号)。この種類の株式を「役員選任権付種類株式」といいます。「役員選任権付種類株式」が利用される会社については、個別指導で解説します。具体例があると理解が深まり、応用問題にも対応できるようになります!

5.株式会社は、株主総会の決議事項の全部について議決権を有しないことを内容とする種類株式を発行することができる。

5・・・正しい

株式会社は、「株主総会の決議事項の全部について議決権を有しないこと」を内容とする種類株式を発行することができます(会社法108条1項3号)。この株式を持つ人は議決権を行使できません。しかし、一方で、配当や残余財産の配当が多くもらえたりする場合があります。

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令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問37|会社法

設立時取締役に関する次のア~オの記述のうち、会社法の規定に照らし、誤っているものの組合せはどれか。なお、設立しようとする株式会社は、種類株式発行会社ではないものとする。

ア.発起設立においては、発起人は、出資の履行が完了した後、遅滞なく、設立時取締役を選任しなければならないが、定款で設立時取締役として定められた者は、出資の履行が完了した時に、設立時取締役に選任されたものとみなす。

イ.募集設立においては、設立時取締役の選任は、創立総会の決議によって行わなければならない。

ウ.設立しようとする株式会社が監査等委員会設置会社である場合には、設立時監査等委員である設立時取締役は3人以上でなければならない。

エ.発起設立においては、法人でない発起人は設立時取締役に就任することができるが、募集設立においては、発起人は設立時取締役に就任することはできない。

オ.設立時取締役は、その選任後、株式会社が成立するまでの間、発起人と共同して、株式会社の設立の業務を執行しなければならない。

  1. ア・ウ
  2. ア・オ
  3. イ・ウ
  4. イ・エ
  5. エ・オ

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【答え】:5(エ・オが誤り)

【解説】
ア.発起設立においては、発起人は、出資の履行が完了した後、遅滞なく、設立時取締役を選任しなければならないが、定款で設立時取締役として定められた者は、出資の履行が完了した時に、設立時取締役に選任されたものとみなす。

ア・・・正しい

発起人は、出資の履行が完了した後、遅滞なく設立時取締役を選任しなければなりません(会社法38条1項)。定款で設立時取締役、設立時会計参与、設立時監査役又は設立時会計監査人として定められた者は、出資の履行が完了した時に、それぞれ設立時取締役、設立時会計参与、設立時監査役又は設立時会計監査人に選任されたものとみなします(会社法38条4項)。よって、本肢は正しいです。

イ.募集設立においては、設立時取締役の選任は、創立総会の決議によって行わなければならない。

イ・・・正しい

募集設立の場合、発起人以外の引受人を募集をするので、設立時取締役、設立時会計参与、設立時監査役又は設立時会計監査人の選任は、創立総会の決議によって行わなければなりません(会社法88条1項)。

【詳細解説】 募集設立によって会社を設立する場合、発起人だけでなく、多くの人々から出資を募集します。この出資を引き受けた人々は「引受人」と呼びます。発起人と引受人が、設立される会社の株主(オーナー)になるので、設立時取締役などは、発起人と引受人によって構成される創立総会で決めることになります。

ウ.設立しようとする株式会社が監査等委員会設置会社である場合には、設立時監査等委員である設立時取締役は3人以上でなければならない。

ウ・・・正しい

設立しようとする株式会社が監査等委員会設置会社である場合には、設立時監査等委員である設立時取締役は、3人以上必要です(会社法39条3項)。よって、正しいです。

エ.発起設立においては、法人でない発起人は設立時取締役に就任することができるが、募集設立においては、発起人は設立時取締役に就任することはできない。

エ・・・誤り

設立時取締役とは、株式会社の設立に際して取締役となる者をいいます(会社法38条1項)。そして、発起設立、募集設立のいずれであっても、法人が設立時取締役に就任することはできません(会社法331条1項1号)。一方、発起人は設立時取締役に就任することはできます。よって、「募集設立においては、発起人は設立時取締役に就任することはできない」が誤りです。前半部分の「発起設立においては、法人でない発起人は設立時取締役に就任することができる」は正しいです。

オ.設立時取締役は、その選任後、株式会社が成立するまでの間、発起人と共同して、株式会社の設立の業務を執行しなければならない。

オ・・・誤り

設立時取締役は、設立手続きに関する調査を行います(会社法46条、93条)。発起人と共同して、株式会社の設立の業務を執行するわけではありません。よって、誤りです。

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令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問36|商法

商行為に関する次の記述のうち、商法の規定に照らし、誤っているものはどれか。

  1. 商行為の代理人が本人のためにすることを示さないで商行為をした場合であっても、その行為は、本人に対してその効力を生ずる。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知らなかったときは、代理人に対して履行の請求をすることを妨げない。
  2. 商行為の受任者は、委任の本旨に反しない範囲内において、委任を受けていない行為をすることができる。
  3. 商人である隔地者の間において承諾の期間を定めないで契約の申込みを受けた者が相当の期間内に承諾の通知を発しなかったときは、その申込みは、その効力を失う。
  4. 商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく、契約の申込みに対する諾否の通知を発しなければならず、当該通知を発することを怠ったときは、その商人はその申込みを承諾したものとみなす。
  5. 商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けた場合において、その申込みとともに受け取った物品があるときは、その申込みを拒絶したかどうかにかかわらず、申込みを受けた商人の費用をもって、その物品を保管しなければならない。

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【答え】:5

【解説】
1.商行為の代理人が本人のためにすることを示さないで商行為をした場合であっても、その行為は、本人に対してその効力を生ずる。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知らなかったときは、代理人に対して履行の請求をすることを妨げない。

1・・・正しい

商行為の代理人が本人のためにすることを示さないでこれをした場合であっても、その行為は、本人に対してその効力を生じます。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知らなかったときは、代理人に対して履行の請求をすることを妨げません(商法504条)。よって、正しいです。
商法504条は、代理人が本人のために行った行為に関する規定です。代理人が本人のために行った行為は、本人に帰属し、本人と相手方の間で法的効力を持ちます。ただし、相手方が、代理人が本人のために行動していることを知らなかったとき(善意)は、代理人に対して、その行為の履行を求めることができます

2.商行為の受任者は、委任の本旨に反しない範囲内において、委任を受けていない行為をすることができる。

2・・・正しい

商行為の受任者は、委任の本旨に反しない範囲内において、委任を受けていない行為をすることができます(商法505条)。よって正しいです。

【具体例】 例えば、AさんがBさんに自分の車を売却する代理を依頼しました。この場合、Bさんは「売買契約の締結」「車の引渡し」等の売却手続きが「委任の本旨に反しない範囲内」なので行うことができます。

3.商人である隔地者の間において承諾の期間を定めないで契約の申込みを受けた者が相当の期間内に承諾の通知を発しなかったときは、その申込みは、その効力を失う。

3・・・正しい

商人である隔地者の間において承諾の期間を定めないで契約の申込みを受けた者が相当の期間内に承諾の通知を発しなかったときは、その申込みは、その効力を失います(商法508条1項)。よって、正しいです。

【具体例】 例えば、AさんがBさんに手紙で商品の購入を申し込みました。しかし、Bさんはその手紙に対する返事を一定期間内に送らなかった場合、Aさんの申し込みは無効になります。これは、Bさんが「Aさんの申し込み」を受けたことに対して、承諾をするかしないかの決断を下すために、合理的な期間が与えられたにもかかわらず、承諾の通知を怠った場合に適用されます。

4.商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく、契約の申込みに対する諾否の通知を発しなければならず、当該通知を発することを怠ったときは、その商人はその申込みを承諾したものとみなす。

4・・・正しい

商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく、契約の申込みに対する諾否の通知を発しなければなりません(商法509条1項)。 商人が上記通知を発することを怠ったときは、その商人は、同項の契約の申込みを承諾したものとみなします(商法509条2項)。

【具体例】 例えば、A商店とB商店が、日常的に取引をしているとします。ある日、B商店からA商店に商品の購入を申し込むメールが届きました。この場合、A商店は迅速にその申し込みに対する返答をしなければなりません。もしA商店が返答を怠った場合、商法509条ではその申し込みを承諾したものとみなされます。
つまり、商法509条は、商取引において迅速なコミュニケーションが重要であり、申し込みを受けた商人が速やかに返答をすることを義務付けています。返答が遅れた場合は、申し込みを受け入れたとみなされるため、商人は注意して期限内に返答をする必要があります。

5.商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けた場合において、その申込みとともに受け取った物品があるときは、その申込みを拒絶したかどうかにかかわらず、申込みを受けた商人の費用をもって、その物品を保管しなければならない。

5・・・誤り

商人がその営業の部類に属する契約の申込みを受けた場合において、その申込みとともに受け取った物品があるときは、その申込みを拒絶したときであっても、申込者の費用をもってその物品を保管しなければなりません(商法510条本文)。本肢は「申込みを受けた商人の費用をもって」が誤りです。正しくは「申込者の費用をもって」です。

【具体例】 例えば、Aさんが、オーダーメイドのバックを作ってもらうために、Bさんに類似のバッグを郵送して、注文しました。しかし、Bさんは、そのようなバッグを作るんは難しいためも申込を拒絶した。この場合、類似のバッグは保管しないといけないですが、その保管費用は、申込者であるAさんの負担となります。

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令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問35|民法・遺言

遺言に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア.重度の認知症により成年被後見人となった高齢者は、事理弁識能力を一時的に回復した場合であっても、後見開始の審判が取り消されない限り、遺言をすることができない。

イ.自筆証書遺言の作成に際し、カーボン紙を用いて複写の方法で作成が行われた場合であっても、自書の要件を満たし、当該遺言は有効である。

ウ.夫婦は、同一の証書によって遺言をすることはできない。

エ.遺言において受遺者として指定された者が、遺言者の死亡以前に死亡した場合には、受遺者の相続人が受遺者の地位を承継する。

オ.遺言は、遺言者が死亡して効力を生じるまでは、いつでも撤回することができるが、公正証書遺言を撤回するには公正証書遺言により、自筆証書遺言を撤回するには自筆証書遺言により行わなければならない。

  1. ア・エ
  2. ア・オ
  3. イ・ウ
  4. イ・エ
  5. ウ・オ

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【答え】:3(イ・ウが妥当)

【解説】
ア.重度の認知症により成年被後見人となった高齢者は、事理弁識能力を一時的に回復した場合であっても、後見開始の審判が取り消されない限り、遺言をすることができない。

ア・・・妥当でない

成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには、医師2人以上の立会いがなければなりません(民法973条1項)。しかし、本肢のように「後見開始の審判が取り消されない限り、遺言をすることができない」という定めはありません。よって、妥当ではありません。

イ.自筆証書遺言の作成に際し、カーボン紙を用いて複写の方法で作成が行われた場合であっても、自書の要件を満たし、当該遺言は有効である。

イ・・・妥当

自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印(ハンコ)を押さなければなりません(民法968条1項)。そして、カーボン複写の方法によって記載された自筆の遺言であっても「自書」の要件を満たします最判平5.10.19)。

ウ.夫婦は、同一の証書によって遺言をすることはできない。

ウ・・・妥当

遺言について、2人以上の者が同一の証書ですることはできません(民法975条)。つまり、1つの証書(遺言書)に夫婦二人が遺言を記載することはできないということです。夫婦であっても、別々の証書に遺言しなければなりません。

エ.遺言において受遺者として指定された者が、遺言者の死亡以前に死亡した場合には、受遺者の相続人が受遺者の地位を承継する。

エ・・・妥当でない

遺贈について、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、遺贈の効力は生じません(民法994条1項)。

オ.遺言は、遺言者が死亡して効力を生じるまでは、いつでも撤回することができるが、公正証書遺言を撤回するには公正証書遺言により、自筆証書遺言を撤回するには自筆証書遺言により行わなければならない。

オ・・・妥当でない

遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができます(民法1022条)。そして、「公正証書遺言を撤回するには公正証書遺言により、自筆証書遺言を撤回するには自筆証書遺言により行わなければならない」という規定はないので、妥当ではありません。遺言の方式に従ってさえいれば、後の遺言が優先し、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなします(民法1023条1項)。

(前の遺言と後の遺言との抵触等)
第千二十三条 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。)
2 前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。

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令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問34|民法・損益相殺

損益相殺ないし損益相殺的調整に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 幼児が死亡した場合には、親は将来の養育費の支出を免れるので、幼児の逸失利益の算定に際して親の養育費は親に対する損害賠償額から控除される。
  2. 被害者が死亡した場合に支払われる生命保険金は、同一の損害についての重複填補に当たるので、被害者の逸失利益の算定に当たって支払われる生命保険金は損害賠償額から控除される。
  3. 退職年金の受給者が死亡し遺族が遺族年金の受給権を得た場合には、遺族年金は遺族の生活水準の維持のために支給されるものなので、退職年金受給者の逸失利益の算定に際して、いまだ支給を受けることが確定していない遺族年金の額についても損害賠償額から控除されることはない。
  4. 著しく高利の貸付けという形をとっていわゆるヤミ金融業者が元利金等の名目で借主から高額の金員を違法に取得し多大な利益を得る、という反倫理的行為に該当する不法行為の手段として金員を交付した場合、この貸付けによって損害を被った借主が得た貸付金に相当する利益は、借主から貸主に対する不法行為に基づく損害賠償請求に際して損害賠償額から控除されない。
  5. 新築の建物が安全性に関する重大な瑕疵があるために、社会通念上、社会経済的な価値を有しないと評価される場合であっても、建て替えまで買主がその建物に居住していた居住利益は、買主からの建て替え費用相当額の損害賠償請求に際して損害賠償額から控除される。

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【答え】:4
【解説】
1.幼児が死亡した場合には、親は将来の養育費の支出を免れるので、幼児の逸失利益の算定に際して親の養育費は親に対する損害賠償額から控除される。

1・・・妥当でない

まず、損益相殺とは、収益と費用、又は損失と収益を相殺して、純損益を算出することを指します。「被害者が不法行為によって損害を被る(マイナス)」と同時に、「同一の原因によって利益を受けた(プラス)」場合には、賠償されるべき損害額が全額もらえるわけではなく、その利益分を控除する(差し引く)ことをいいます。

また、「幼児の逸失利益」とは、幼児が成長していく過程で得られるべきであった経済的利益や社会的利益のことを指します。具体的には、将来の収入、教育を受ける機会、職業の選択肢、人間関係の形成などが挙げられます。幼児が不法行為によって亡くなった場合、彼らが成長していく過程で得られるはずだったこれらの利益(プラス)を逸失した(失った)とされ、その逸失利益について損害賠償を求めることができます。 そして、不法行為により死亡した幼児の損害賠償債権(逸失利益)を相続した者が、幼児の養育費の支出を必要としなくなった場合、養育費の支出がなくなっているのでプラス(利益部分)です。しかし、養育費(プラス)は損益相殺の対象となりません最判昭53.10.20)。よって、幼児の逸失利益の算定に際して親の養育費は親に対する損害賠償額から控除されません。よって、妥当ではありません。 【具体例】 例えば、逸失利益が1億円、かかるはずだった養育費が2000万円だった場合、逸失利益について損害賠償額は。1億円ということです。

2.被害者が死亡した場合に支払われる生命保険金は、同一の損害についての重複填補に当たるので、被害者の逸失利益の算定に当たって支払われる生命保険金は損害賠償額から控除される。

2・・・妥当でない

不法行為により被保険者が死亡して相続人に保険金(プラス)の給付がされた場合であっても、損益相殺の対象となりません(最判昭39.9.25)。よって、被害者の逸失利益の算定に当たって支払われる生命保険金は損害賠償額から控除されません。

3.退職年金の受給者が死亡し遺族が遺族年金の受給権を得た場合には、遺族年金は遺族の生活水準の維持のために支給されるものなので、退職年金受給者の逸失利益の算定に際して、いまだ支給を受けることが確定していない遺族年金の額についても損害賠償額から控除されることはない。

3・・・妥当でない

「退職年金を受給していた者」が不法行為によって死亡した場合には、相続人は、加害者に対し、退職年金の受給者が生存していれば、その平均余命期間に受給することができた退職年金の現在額を同人の損害として、損害賠償請求できます。
この場合において、相続人のうちに、退職年金の受給者の死亡を原因として、遺族年金の受給権を取得した者があるときは、遺族年金の支給を受けるべき者につき、給を受けることが確定した遺族年金の額の限度で、その者が加害者に対して賠償を求め得る損害額からこれを控除すべきものであるが、いまだ支給を受けることが確定していない遺族年金の額についてまで損害額から控除されないです(最大判平5.3.24)。

まず、退職年金の受給者が生存していれば、その平均余命期間に受給することができた退職年金の現在額を、その人の損害として損害賠償請求できます。つまり、被害者が生存していた場合に受給するはずだった退職年金の額を基準として、その損害額が算定されます。

また、被害者の相続人の中に、遺族年金の受給権を取得した者がいる場合、その者が加害者に対して賠償を求める損害額から、実際に受給されるべき遺族年金の額を控除することができます。ただし、遺族年金の支給が確定していない場合は、その額については控除しなくても構いません。つまり、支給が確定している遺族年金の額だけを損害額から差し引くことができます

【本肢】 「いまだ支給を受けることが確定していない遺族年金の額についても」となっています。「~についても」ということは、「①支給を受けることが確定した遺族年金」も「②支給を受けることが確定していない遺族年金」も両方とも、損害賠償額からは控除されない、という意味になります。これは妥当ではありません。①は控除されるので妥当ではありません。

4.著しく高利の貸付けという形をとっていわゆるヤミ金融業者が元利金等の名目で借主から高額の金員を違法に取得し多大な利益を得る、という反倫理的行為に該当する不法行為の手段として金員を交付した場合、この貸付けによって損害を被った借主が得た貸付金に相当する利益は、借主から貸主に対する不法行為に基づく損害賠償請求に際して損害賠償額から控除されない。

4・・・妥当

いわゆるヤミ金融業者が、元利金等の名目で違法に金員を取得する手段として著しく高利の貸付けの形をとって借主に金員を交付し、借主が貸付金に相当する利益を得た場合に、借主からの不法行為に基づく損害賠償請求において同利益を損益相殺等の対象として借主の損害額から控除することは、民法708条(不法原因給付)の趣旨に反するものとして許されません(最判平20.6.10)。言い換えると、ヤミ金融業者が高金利で貸し付けを行い、借主がその貸し付けによって利益を得た場合その利益を借主の損害額から控除して損害賠償を軽減することはできませんなぜなら、その利益自体がヤミ金融業者の違法行為によって生じたものであり、このような利益を損益相殺等の手段で補填することは、不法原因給付の趣旨に反するからです。 この点は具体例があると分かりやすいので、個別指導では具体例を出して解説します!

5.新築の建物が安全性に関する重大な瑕疵があるために、社会通念上、社会経済的な価値を有しないと評価される場合であっても、建て替えまで買主がその建物に居住していた居住利益は、買主からの建て替え費用相当額の損害賠償請求に際して損害賠償額から控除される。

5・・・妥当でない

売買の目的物である新築建物に重大な瑕疵がありこれを建て替えざるを得ない場合において、当該瑕疵が構造耐力上の安全性にかかわるものであるため建物が倒壊する具体的なおそれがあるなど、社会通念上、建物自体が社会経済的な価値を有しないと評価すべきものであるときには、上記建物の買主がこれに居住していたという利益については、当該買主からの工事施工者等に対する建て替え費用相当額の損害賠償請求において損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象として損害額から控除することはできません(最判平22.6.17)。

分かりやすくいうと、建物の瑕疵が構造耐力上の安全性に深刻な影響を与え、倒壊のおそれがあるほど深刻である場合、その建物は社会的・経済的な価値を有していないとみなされます。このような場合、建物の買主がその建物に居住していたという利益については、建て替え費用相当額の損害賠償請求から控除されることはできません

言い換えると建物の買主は建て替え費用を請求することができますが、その建物に居住していたことから得られる利益は、その費用から控除されませんなぜなら、建物が社会的・経済的な価値を有していない場合、その利益は補填すべきものではないとされるからです。

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令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問33|民法・解除

契約の解除等に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものの組合せはどれか。

ア.使用貸借契約においては、期間や使用収益の目的を定めているか否かにかかわらず、借主は、いつでも契約の解除をすることができる。

イ.賃貸借契約は、期間の定めがある場合であっても、賃借物の全部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなったときには、当該賃貸借契約は終了する。

ウ.請負契約においては、請負人が仕事を完成しているか否かにかかわらず、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。

エ.委任契約は、委任者であると受任者であるとにかかわらず、いつでも契約の解除をすることができる。

オ.寄託契約においては、寄託物を受け取るべき時期を経過しても寄託者が受寄者に寄託物を引き渡さない場合には、書面による寄託でも無報酬の受寄者は、直ちに契約の解除をすることができる。

  1. ア・イ
  2. ア・エ
  3. イ・ウ
  4. ウ・オ
  5. エ・オ

>解答と解説はこちら


【答え】:4(ウ・オが妥当でない)

【解説】
ア.使用貸借契約においては、期間や使用収益の目的を定めているか否かにかかわらず、借主は、いつでも契約の解除をすることができる。

ア・・・妥当

使用貸借において、借主は、いつでも契約の解除をすることができます(民法598条3項)。期間や使用収益の目的を定めているか否かに関係なく、また、理由がなくても解除ができます。関連ポイントが重要なので、関連ポイントは個別指導で解説します。

イ.賃貸借契約は、期間の定めがある場合であっても、賃借物の全部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなったときには、当該賃貸借契約は終了する。

イ・・・妥当

賃貸借契約において、賃借物の全部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合には、賃貸借は、賃借物の全部滅失等によって終了します(民法616条の2)。よって、妥当です。上記内容を言い換えると、賃借物が全て失われたり、何らかの理由で使用や収益が不可能になった場合、賃貸借契約は終了し、貸主と借主の間での法的な関係も終了することになります。これにより、借主は賃借物を返却する義務がなくなり貸主も賃料を請求する権利を失います

ウ.請負契約においては、請負人が仕事を完成しているか否かにかかわらず、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。

ウ・・・妥当でない

請負契約において、請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができます(民法641条)。本肢は「請負人が仕事を完成しているか否かにかかわらず」というのが誤りです。完成すると、民法641条に基づいて解除することはできません。よって、妥当ではありません。なぜ、このようなルールがあるのか?理解すると頭に残りやすいので個別指導で解説します。

エ.委任契約は、委任者であると受任者であるとにかかわらず、いつでも契約の解除をすることができる。

エ・・・妥当

委任は、各当事者いつでも解除をすることができます(民法651条1項)。つまり、委任者から解除も可能ですし、受任者から解除することも可能です。よって、妥当です。民法では契約の自由が重視されており、契約を締結した当事者が自らの意思に基づいて契約を解除できることが重要です。委任契約もこの自由な契約の一つであり、当事者が必要に応じて契約を解除できることが保障されています。

オ.寄託契約においては、寄託物を受け取るべき時期を経過しても寄託者が受寄者に寄託物を引き渡さない場合には、書面による寄託でも無報酬の受寄者は、直ちに契約の解除をすることができる。

オ・・・妥当でない

寄託契約とは、物を預かってもらう契約です。そして、「預けた人を寄託者」「預かった人を受寄者(じゅきしゃ)」と言います。そして、受寄者(無報酬で寄託を受けた場合にあっては、書面による寄託の受寄者に限る。)は、寄託物(預かったもの)を受け取るべき時期を経過したにもかかわらず、寄託者が寄託物を引き渡さない場合において、相当の期間を定めてその引渡しの催告をし、その期間内に引渡しがないときは、契約の解除をすることができます(民法657条の2第3項)。つまり、有償寄託及び書面による無償寄託の場合において、寄託物が引き渡されないときは、受寄者は、相当期間を定めて引渡しの催告を行い、期間内に引渡しがなければ、契約を解除できます。本肢は「書面による寄託でも無報酬の受寄者は、直ちに契約の解除をすることができる。」が妥当ではありません。相当期間を定めて引き渡しの催告が必要です。

【具体例】 例えば、Aさん(受寄者)は、友人Bさん(寄託者)から、夏休み中に家具を預かる契約をしました。夏休みが終わり、Aさんが家具を取りに行ったにもかかわらず、Bさんが家具を引き渡さない場合、Aさんは催告をして一定の期間を設け、その期間内に家具が引き渡されない場合、契約を解除することができます。

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令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問32|民法・契約不適合責任

AとBとの間でA所有の美術品甲(以下「甲」という。)をBに売却する旨の本件売買契約が締結された。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし、妥当なものはどれか。

  1. Aは、Bが予め甲の受領を明確に拒んでいる場合であっても、甲につき弁済期に現実の提供をしなければ、履行遅滞の責任を免れない。
  2. Aは、Bが代金の支払を明確に拒んでいる場合であっても、相当期間を定めて支払の催告をしなければ、本件売買契約を解除することができない。
  3. Aが弁済期に甲を持参したところ、Bが甲を管理するための準備が整っていないことを理由に受領を拒んだため、Aは甲を持ち帰ったが、隣人の過失によって生じた火災により甲が損傷した。このような場合であっても、Bは、Aに対して甲の修補を請求することができる。
  4. Aが弁済期に甲を持参したところ、Bが甲を管理するための準備が整っていないことを理由に受領を拒んだため、Aは甲を持ち帰ったが、隣人の過失によって生じた火災により甲が滅失した。このような場合であっても、Bは、代金の支払を拒むことはできない。
  5. Aが弁済期に甲を持参したところ、Bが甲を管理するための準備が整っていないことを理由に受領を拒んだため、Aは甲を持ち帰ったが、隣人の過失によって生じた火災により甲が滅失した。このような場合であっても、Bは、本件売買契約を解除することができる。

>解答と解説はこちら


【答え】:4

【解説】
1.Aは、Bが予め甲の受領を明確に拒んでいる場合であっても、甲につき弁済期に現実の提供をしなければ、履行遅滞の責任を免れない。

1・・・妥当でない

債務者は、弁済の提供の時から、債務を履行しないことによって生ずべき責任を免れます(民法492条)。分かりやすくいうと、弁済の提供をすれば、債務不履行責任から免れるというこです。そして、「弁済の提供の方法」には、「現実の提供」と「口頭の提供」があります。原則、「現実の提供」が必要ですが、債権者が受領を明確に拒んでいる場合には、「現実の提供」だけでなく口頭の提供も不要と判示しています(最大判昭32.6.5)。よって、甲の引渡債権の債権者であるBが、予め甲の受領を明確に拒んでいる場合、Aは、現実の提供をしなくても履行遅滞の責任を免れます。よって、本肢は妥当ではありません。

2.Aは、Bが代金の支払を明確に拒んでいる場合であっても、相当期間を定めて支払の催告をしなければ、本件売買契約を解除することができない。

2・・・妥当でない

債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したときは、債権者は、催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができます(民法542条1項2号)。よって、代金債権の債務者であるBが代金の支払いを明確に拒んでいる場合、債権者Aは支払いの催告をすることなく直ちに売買契約を解除できます。

(催告によらない解除)
民法542条 次に掲げる場合には、債権者は、催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
  1. 債務の全部の履行が不能であるとき。
  2. 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき
  3. 債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。
  4. 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。
  5. 前各号に掲げる場合のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。

3.Aが弁済期に甲を持参したところ、Bが甲を管理するための準備が整っていないことを理由に受領を拒んだため、Aは甲を持ち帰ったが、隣人の過失によって生じた火災により甲が損傷した。このような場合であっても、Bは、Aに対して甲の修補を請求することができる。

3・・・妥当でない

売主が契約の内容に適合する目的物を使って、その引渡しの債務の履行を提供したにもかかわらず、買主がその履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合、その履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその目的物が滅失し、又は損傷したその滅失又は損傷したとしても、買主は、契約不適合責任を追及できなくなります(民法567条2項)。よって、売主Aが契約の内容に適合する目的物(甲)を使って、その引渡しの債務の履行を提供したにもかかわらず、買主Bが受領を拒み、隣人の過失によって生じた火災により甲が損傷した場合、Aに責任はないので、買主Bは、Aに対して甲の修補を請求することはできません。
※「契約不適合責任の追及」とは、①履行の追完請求、②代金減額請求、③損害賠償請求及び④契約解除の4つです。

4.Aが弁済期に甲を持参したところ、Bが甲を管理するための準備が整っていないことを理由に受領を拒んだため、Aは甲を持ち帰ったが、隣人の過失によって生じた火災により甲が滅失した。このような場合であっても、Bは、代金の支払を拒むことはできない。

4・・・妥当

選択肢3の「民法567条2項」のルールを使います。すると、売主Aが契約の内容に適合する目的物(甲)を使って、その引渡しの債務の履行を提供したにもかかわらず、買主Bが受領を拒み、隣人の過失によって生じた火災により甲が滅失した場合、買主Bは、代金の支払いを拒むことはできません。

5.Aが弁済期に甲を持参したところ、Bが甲を管理するための準備が整っていないことを理由に受領を拒んだため、Aは甲を持ち帰ったが、隣人の過失によって生じた火災により甲が滅失した。このような場合であっても、Bは、本件売買契約を解除することができる。

5・・・妥当でない

選択肢3の「民法567条2項」のルールを使います。すると、売主Aが契約の内容に適合する目的物(甲)を使って、その引渡しの債務の履行を提供したにもかかわらず、買主Bが受領を拒み、隣人の過失によって生じた火災により甲が滅失した場合、Bは、売買契約を解除することができません。

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令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問31|民法・相殺

相殺に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし、誤っているものはどれか。

  1. 差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権が差押え前の原因に基づいて生じたものであれば、その第三債務者が、差押え後に他人の債権を取得したときでなければ、その債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができる。
  2. 時効によって消滅した債権が、その消滅以前に相殺適状にあった場合には、その債権者は、当該債権を自働債権として相殺することができる。
  3. 相殺禁止特約のついた債権を譲り受けた者が当該特約について悪意又は重過失である場合には、当該譲渡債権の債務者は、当該特約を譲受人に対抗することができる。
  4. 債務者に対する貸金債権の回収が困難なため、債権者がその腹いせに悪意で債務者の物を破損した場合には、債権者は、当該行為による損害賠償債務を受働債権として自己が有する貸金債権と相殺することはできない。
  5. 過失によって人の生命又は身体に損害を与えた場合、その加害者は、その被害者に対して有する貸金債権を自働債権として、被害者に対する損害賠償債務と相殺することができる。

>解答と解説はこちら


【答え】:5

【解説】
1.差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権が差押え前の原因に基づいて生じたものであれば、その第三債務者が、差押え後に他人の債権を取得したときでなければ、その債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができる。

1・・・正しい

差押え後に取得した債権が差押え前の原因に基づいて生じたものであるときは、その第三債務者は、原則、その債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができます(民法511条1項)。ただし、第三債務者が差押え後に他人の債権を取得したときは、相殺をもって差押債権者に対抗することができません(民法511条2項)。本肢は、原則の内容なので、正しいです。この内容は、理解しないと角度を変えて出題されたときに失点してしまうので、個別指導で、理解すべき部分を解説します。

2.時効によって消滅した債権が、その消滅以前に相殺適状にあった場合には、その債権者は、当該債権を自働債権として相殺することができる。

2・・・正しい

時効によって消滅した債権が、その消滅以前に相殺適状になっていた場合には、その債権者は、相殺をすることができます(民法508条)。よって、正しいです。

【具体例】 例えば、AがBに対して100万円の貸していたとします。しかし、このAの債権が20年間行使されずに時効によって消滅しました。一方、AはBから100万円の時計を購入していて、Bは100万円の債権をもていました。この2つの債権は、Aの債権の時効消滅前に相殺の要件を満たしていた場合、Aは、時効によって消滅した債権(Aの債権)を使って、相殺することができます。

3.相殺禁止特約のついた債権を譲り受けた者が当該特約について悪意又は重過失である場合には、当該譲渡債権の債務者は、当該特約を譲受人に対抗することができる。

3・・・正しい

当事者が相殺を禁止し、又は制限する旨の意思表示をした場合には、その意思表示は、第三者がこれを知り(悪意)、又は重大な過失によって知らなかったとき(重過失)に限り、その第三者に対抗することができます(民法505条2項)。よって、本肢は正しいです。

【具体例】 
令和5年・2023年、行政書士試験、問31の選択肢3問題の状況を表した図

そもそも相殺は、互いに相手に対する債権と債務を打ち消し合うことです。しかし、債権者A や債務者Bが相殺をしたくない場合、当事者の合意により(特約により)相殺を禁止することができます。この合意があった場合において、相殺禁止の合意に反して、Aが、債権(債務者をBとする債権)を第三者Cに譲渡した場合、第三者C(譲受人)が、相殺禁止の合意を知っており(悪意)、かつ重大な過失なく知るべきだった(重過失)場合、第三者Cは、たとえ、債務者Bに対して債務を負っていたとしても、譲り受けた「債務者をBとする債権」を使って相殺を行うことができません。

4.債務者に対する貸金債権の回収が困難なため、債権者がその腹いせに悪意で債務者の物を破損した場合には、債権者は、当該行為による損害賠償債務を受働債権として自己が有する貸金債権と相殺することはできない。

4・・・正しい

悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務者は、相殺をもって債権者(被害者)に対抗することができません(民法509条1号)。

【具体例】 例えば、貸金債権の債権者Aが、その腹いせに悪意で債務者Bの物を破損した場合、当該債権者Aは、悪意による不法行為に基づく損害賠償債務を負います。この場合、貸金債権の債権者Aは、「Bが有する不法行為に基づく損害賠償債権」を受動債権として、貸金債権(自働債権)とを相殺することはできません。

理解すべき部分については、個別指導で解説します。

(不法行為等により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止)
民法509条 次に掲げる債務の債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。ただし、その債権者がその債務に係る債権を他人から譲り受けたときは、この限りでない。
一 悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務
二 人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務(前号に掲げるものを除く。)
5.過失によって人の生命又は身体に損害を与えた場合、その加害者は、その被害者に対して有する貸金債権を自働債権として、被害者に対する損害賠償債務と相殺することができる。

5・・・誤り

人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができません(民法509条2号)。そして、過失であったとしても、人の生命又は身体に損害を与えてしまったのであれば、加害者(人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務者)は、被害者に対して、「加害者の有する貸金債権」を自働債権として、損害賠償債務と相殺することはできません。よって、誤りです。これは具体例を出した方が分かりやすいので、個別指導では、具体例を出して解説します。

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令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問30|民法・連帯債務

連帯債務者の一人について生じた次のア~オの事由のうち、民法の規定に照らし、他の連帯債務者に対して効力が生じないものの組合せとして、正しいものはどれか。

ア.連帯債務者の一人と債権者との間の混同

イ.連帯債務者の一人がした代物弁済

ウ.連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者がした相殺の援用

エ.債権者がした連帯債務者の一人に対する履行の請求

オ.債権者がした連帯債務者の一人に対する債務の免除

  1. ア・イ
  2. ア・ウ
  3. イ・エ
  4. ウ・オ
  5. エ・オ

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【答え】:5(エ・オが相対効)

【解説】
ア.連帯債務者の一人と債権者との間の混同

ア・・・他の連帯債務者に対して効力が生じる

連帯債務において、連帯債務者の一人に生じた事由が、他の連帯債務者に対して効力が生じるもの絶対効という)は次の4つです。

  1. 弁済(弁済、代物弁済、供託等)
  2. 相殺
  3. 混同
  4. 更改
上記以外の事由は、他の連帯債務者に対して効力が生じません相対効という)。 これらはすべて理解すべき内容なので、個別指導で、具体例を入れながら解説します。 本肢は、「3.混同」に当たるので、絶対効です。つまり、他の連帯債務者に対して効力が生じます。

イ.連帯債務者の一人がした代物弁済

イ・・・他の連帯債務者に対して効力が生じる

選択肢1の解説を見ると、「代物弁済」は、絶対効の「1」に当たるので、他の連帯債務者に対して効力が生じます。

ウ.連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者がした相殺の援用

ウ・・・他の連帯債務者に対して効力が生じる

選択肢1の解説を見ると、「相殺」は、絶対効の「2」に当たるので、他の連帯債務者に対して効力が生じます。

エ.債権者がした連帯債務者の一人に対する履行の請求

エ・・・他の連帯債務者に対して効力が生じない

選択肢1の解説を見ると、「履行の請求」は、絶対効の4つのいずれにも該当しません。そのため、相対効です。よって、他の連帯債務者に対して効力が生じません。

オ.債権者がした連帯債務者の一人に対する債務の免除

オ・・・他の連帯債務者に対して効力が生じない

選択肢1の解説を見ると、「債務の免除」は、絶対効の4つのいずれにも該当しません。そのため、相対効です。よって、他の連帯債務者に対して効力が生じません。

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令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問29|民法・譲渡担保

Aが家電製品の販売業者のBに対して有する貸金債権の担保として、Bが営業用動産として所有し、甲倉庫内において保管する在庫商品の一切につき、Aのために集合(流動)動産譲渡担保権(以下「本件譲渡担保権」という。)を設定した。この場合に関する次の記述のうち、判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. 構成部分が変動する集合動産についても、その種類、場所および量的範囲が指定され、目的物の範囲が特定されている場合には、一個の集合物として譲渡担保の目的とすることができ、当該集合物につき、AはBから占有改定の引渡しを受けることによって対抗要件が具備される。
  2. 本件譲渡担保権の設定後に、Bが新たな家電製品乙(以下「乙」という。)を営業用に仕入れて甲倉庫内に搬入した場合であっても、集合物としての同一性が損なわれていない限り、本件譲渡担保権の効力は乙に及ぶ。
  3. 本件譲渡担保権の設定後であっても、通常の営業の範囲に属する場合であれば、Bは甲倉庫内の在庫商品を処分する権限を有する。
  4. 甲倉庫内の在庫商品の中に、CがBに対して売却した家電製品丙(以下「丙」という。)が含まれており、Bが履行期日までに丙の売買代金を支払わない場合、丙についてAが既に占有改定による引渡しを受けていたときは、Cは丙について動産先取特権を行使することができない。
  5. 甲倉庫内の在庫商品の中に、DがBに対して所有権留保特約付きの売買契約によって売却した家電製品丁(以下「丁」という。)が含まれており、Bが履行期日までに丁の売買代金をDに支払わないときにはDに所有権が留保される旨が定められていた場合でも、丁についてAが既に占有改定による引渡しを受けていたときは、Aは、Dに対して本件譲渡担保権を当然に主張することができる。

>解答と解説はこちら


【答え】:5
【解説】
1.構成部分が変動する集合動産についても、その種類、場所および量的範囲が指定され、目的物の範囲が特定されている場合には、一個の集合物として譲渡担保の目的とすることができ、当該集合物につき、AはBから占有改定の引渡しを受けることによって対抗要件が具備される。

1・・・妥当

構成部分が変動する集合動産でも、種類、所在場所、量の範囲を指定するなどの方法により、目的物の範囲が特定される場合には、ひとつの集合物として、譲渡担保の目的にできます最判昭54.2.15)また、構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権の設定者がその構成部分である動産の占有改定により取得した場合、譲渡担保権者は、譲渡担保権の対抗要件を備え、その効力は、新たにその構成部分となった動産を含む集合物に及びます最判昭62.11.10)。つまり、構成部分が変動する集合動産についても、その種類、場所および量的範囲が指定され、目的物の範囲が特定されている場合には、一個の集合物として譲渡担保の目的とすることができ、当該集合物につき、AはBから占有改定の引渡しを受けることによって対抗要件が具備されます。譲渡担保の基本事項を含めて理解すべき部分なので、詳細解説は、個別指導で解説します。

2.本件譲渡担保権の設定後に、Bが新たな家電製品乙(以下「乙」という。)を営業用に仕入れて甲倉庫内に搬入した場合であっても、集合物としての同一性が損なわれていない限り、本件譲渡担保権の効力は乙に及ぶ。

2・・・妥当

債権者と債務者との間に、集合物を目的とする譲渡担保権設定契約が締結され、その際に債権者が占有改定の方法により現に存在する動産の占有を取得した場合には、債権者は、当該集合物を目的とする譲渡担保権につき対抗要件を具備したことになり、譲渡担保権の効力は、その後、構成部分(倉庫にある在庫商品)が変動したとしても、集合物としての同一性が損なわれない限り新たにその構成部分となった動産を包含する集合物について、譲渡担保の効力が及びます最判昭62.11.10)。よって、本肢は妥当です。本肢は、理解すべき部分なので、詳細解説は、個別指導で解説します。

3.本件譲渡担保権の設定後であっても、通常の営業の範囲に属する場合であれば、Bは甲倉庫内の在庫商品を処分する権限を有する。

3・・・妥当

構成部分の変動する集合動産を目的とする譲渡担保においては、集合物の内容が譲渡担保設定者の営業活動を通じて当然に変動することが予定されているのであるから、譲渡担保設定者には、その通常の営業の範囲内で、譲渡担保の目的を構成する動産を処分する権限が付与されており、この権限内でされた処分の相手方は、当該動産について、譲渡担保の拘束を受けることなく確定的に所有権を取得することができます(最判平18.7.20)。つまり、倉庫にある在庫商品について、動産譲渡担保契約を締結したとしても、譲渡担保設定者Bは、目的物の商品を通常の営業の範囲内で第三者に売却する権限をもっており、Bは、通常の営業の範囲内なら甲倉庫内の商品を処分(売却)することができます

4.甲倉庫内の在庫商品の中に、CがBに対して売却した家電製品丙(以下「丙」という。)が含まれており、Bが履行期日までに丙の売買代金を支払わない場合、丙についてAが既に占有改定による引渡しを受けていたときは、Cは丙について動産先取特権を行使することができない。

4・・・妥当

まず、先取特権は、債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後は、その動産について行使することができなくなります(民法333条)。 そして、動産売買の先取特権の存在する動産(先取特権が付いた動産)が、譲渡担保権の目的である集合物の構成部分となった場合(倉庫に入れられた場合)、債権者は、「先取特権の付いた動産」についても引渡を受けたものとして譲渡担保権を主張することができ、特段の事情のない限り、民法333条の第三取得者に該当します(最判昭62.11.10)。よって、先取特権者Cは、丙(先取特権が付いた動産)について動産先取特権を行使することができません。よって、本肢は妥当です。本肢は、理解すべき部分なので、詳細解説は、個別指導で解説します。

5.甲倉庫内の在庫商品の中に、DがBに対して所有権留保特約付きの売買契約によって売却した家電製品丁(以下「丁」という。)が含まれており、Bが履行期日までに丁の売買代金をDに支払わないときにはDに所有権が留保される旨が定められていた場合でも、丁についてAが既に占有改定による引渡しを受けていたときは、Aは、Dに対して本件譲渡担保権を当然に主張することができる。

5・・・妥当でない

選択肢1の解説の通り、占有改定で占有権を取得した場合、譲渡担保権者は、譲渡担保権の対抗要件を備えます(最判昭62.11.10)。つまり、丁についてAが既に占有改定による引渡しを受ければ、Aは、第三者に対して譲渡担保権を主張することはできます。しかし、継続的な売買契約において目的物の所有権が売買代金の完済まで売主Dに留保される旨が定められた場合に、売主Dは買主Bに動産の転売を包括的に承諾していたが、これは売主が買主に契約の売買代金を支払うための資金を確保させる趣旨であり、売買代金が完済されていない動産については、Aは、売主Dに譲渡担保権を主張することができません(最判平30.12.7)。よって、本肢は、「丁についてAが既に占有改定による引渡しを受けていても、Aは、Dに対して本件譲渡担保権を当然に主張することはできない」ので妥当ではありません。詳細解説は、個別指導で解説します。

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令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略