令和5年度(2023年度)過去問

令和5年・2023|問8|行政法

行政行為の瑕疵に関する次のア~オの記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア.ある行政行為が違法である場合、仮にそれが別の行政行為として法の要件を満たしていたとしても、これを後者の行為として扱うことは、新たな行政行為を行うに等しいから当然に許されない。

イ.普通地方公共団体の長に対する解職請求を可とする投票結果が無効とされたとしても、前任の長の解職が有効であることを前提として、当該解職が無効とされるまでの間になされた後任の長の行政処分は、当然に無効となるものではない。

ウ.複数の行政行為が段階的な決定として行われる場合、先行行為が違法であるとして、後行行為の取消訴訟において先行行為の当該違法を理由に取消しの請求を認めることは、先行行為に対する取消訴訟の出訴期間の趣旨を没却することになるので許されることはない。

エ.行政行為の瑕疵を理由とする取消しのうち、取消訴訟や行政上の不服申立てによる争訟取消しの場合は、当該行政行為は行為時当初に遡って効力を失うが、職権取消しの場合は、遡って効力を失うことはない。

オ.更正処分における理由の提示(理由附記)に不備の違法があり、審査請求を行った後、これに対する裁決において処分の具体的根拠が明らかにされたとしても、理由の提示にかかる当該不備の瑕疵は治癒されない。

  1. ア・イ
  2. ア・エ
  3. イ・オ
  4. ウ・エ
  5. ウ・オ

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【答え】:3


【解説】
ア.ある行政行為が違法である場合、仮にそれが別の行政行為として法の要件を満たしていたとしても、これを後者の行為として扱うことは、新たな行政行為を行うに等しいから当然に許されない。

ア・・・妥当でない

【違法行為の転換とは】
ある行政行為が違法である場合、仮にそれが別の行政行為として法の要件を満たしていたときは、これを後者の行為として扱うことが許されることがあります。これを「違法行為の転換」といいます。
本肢は「新たな行政行為を行うに等しいから当然に許されない」が妥当ではありません。「後者の行為(別の行為)として扱うことが許されます」。

イ.普通地方公共団体の長に対する解職請求を可とする投票結果が無効とされたとしても、前任の長の解職が有効であることを前提として、当該解職が無効とされるまでの間になされた後任の長の行政処分は、当然に無効となるものではない。

イ・・・妥当である

①普通地方公共団体の長Aに対する解職請求の結果、解職が認められた。
②その後、後任の長Bが行政処分(村と奈良市の合併に関する処分)を行った。
③しかし、その後、①の長Aに対する解職請求についての投票結果が無効とされた。
この場合、「たとえ賛否投票の効力の無効が宣言されても、賛否投票の有効なことを前提として、それまでの間になされた後任村長の行政処分は無効となるものではないと解すべきである」としています(最大判昭36.12.7)。よって、本肢の場合、前任の長Aの解職が有効であることを前提として、当該解職が無効とされるまでの間になされた後任の長Bの行政処分は、当然に無効となるものではないので妥当です。

ウ.複数の行政行為が段階的な決定として行われる場合、先行行為が違法であるとして、後行行為の取消訴訟において先行行為の当該違法を理由に取消しの請求を認めることは、先行行為に対する取消訴訟の出訴期間の趣旨を没却することになるので許されることはない。

ウ・・・妥当でない

【違法性の承継とは】 複数の行政行為が段階的な決定として行われる場合、先行行為が違法であるとして、後行行為の取新訟において、先行行為の当該違法を理由に取消しの請求を認めることを「違法性の承継」といいます。よって、「先行行為に対する取消訴訟の出訴期間の趣旨を没却することになる(反することになる)ので許されることはない。」というのは妥当ではありません。

【具体例】 例えば、ある都市計画に基づいて建設される予定の公共施設の計画について、都市計画(先行行為)が行われ、建設のための用地の取得手続き(後行行為)が行われたとします。しかし、後になって、都市計画行為に違法性があることが判明し、その都市計画行為(先行行為)が取り消されることになった。この場合、先行行為として行われた都市計画行為が違法であることが判明したため、その後行行為である用地の取得手続きも違法とみなされる可能性があります。そして、用地の取得手続きが違法であることを理由に、後行行為である用地の取得の取消しを求める訴訟が起こされることがあります。

エ.行政行為の瑕疵を理由とする取消しのうち、取消訴訟や行政上の不服申立てによる争訟取消しの場合は、当該行政行為は行為時当初に遡って効力を失うが、職権取消しの場合は、遡って効力を失うことはない。

エ・・・妥当でない

行政行為の瑕疵を理由とする取消しについては、「取消訴訟」や「行政上の不服申立てによる争訟取消し」、「職権取消し」の場合も、当該行政行為は、行為時当初に通って効力を失います。

職権取消しとは、上級行政庁や処分庁など行政機関が職権で行政行為を取り消すことを言います。

行政上の不服申立てによる争訟取消しとは、審査請求が行われて、裁決によって取り消すことを言います。

行政行為の瑕疵とは、行政機関が法律や規則に違反して行ったり、不適切な理由に基づいて行ったりした場合の欠陥や不備のことを指します。
【具体例】 例えば、行政手続法や地方自治法に基づく手続きが適切に行われなかった場合です。もっと具体的に言えば「公告期間が不足していた場合」等です。

オ.更正処分における理由の提示(理由附記)に不備の違法があり、審査請求を行った後、これに対する裁決において処分の具体的根拠が明らかにされたとしても、理由の提示にかかる当該不備の瑕疵は治癒されない。

オ・・・妥当である

株式会社Xは青色申告の承認を受けたが、税務署長Yから増額更正(更正処分)を受けた。更正通知書には増額の理由が簡単に記載されていたが、詳細が欠けていた。Xは、国税局長(上級行政庁)に審査請求したが、国税局長は、裁決書に、処分の具体的根拠が明らかにした。この事案において、判例(最判昭47.12.5)によると、「更正処分で、理由が書かれていなかった不備(瑕疵)は、裁決において処分の具体的根拠が明らかにされたとしても、当該不備(瑕疵)は治癒されない」と判示しています。よって、妥当です。

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令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問7|憲法・財政

財政に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 国会が議決した予算の公布は、法律、政令、条約などの公布と同様に、憲法上、天皇の国事行為とされている。
  2. 国会による予算の修正をめぐっては、内閣の予算提出権を侵すので予算を増額する修正は許されないとする見解もあるが、現行法には、予算の増額修正を予想した規定が置かれている。
  3. 予算が成立したにもかかわらず、予算が予定する支出の根拠となる法律が制定されていないような場合、法律が可決されるまでの間、内閣は暫定的に予算を執行することができる。
  4. 皇室の費用はすべて、予算に計上して国会の議決を経なければならないが、皇室が財産を譲り受けたり、賜与したりするような場合には、国会の議決に基く必要はない。
  5. 国の収入支出の決算は、内閣が、毎年そのすべてについて国会の承認の議決を得たうえで、会計検査院に提出し、その審査を受けなければならない。

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【答え】:2
【解説】
1.国会が議決した予算の公布は、法律、政令、条約などの公布と同様に、憲法上、天皇の国事行為とされている。

1・・・妥当でない

「憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること」は天皇の国事行為とされています(憲法7条一号)。この中に「国会が議決した予算の公布」は含まれていません。そのほか「国会が議決した予算の公布が天皇の国事行為である」旨の規定はないため、本肢は妥当ではありません。

2.国会による予算の修正をめぐっては、内閣の予算提出権を侵すので予算を増額する修正は許されないとする見解もあるが、現行法には、予算の増額修正を予想した規定が置かれている。

2・・・妥当

国会法57条の3には「各議院又は各議院の委員会は、予算総額の増額修正、委員会の提出若しくは議員の発議にかかる予算を伴う法律案又は法律案に対する修正で、予算の増額を伴うもの若しくは予算を伴うこととなるものについては、内閣に対して、意見を述べる機会を与えなければならない。」と規定しています。つまり、この条文から予算の増額修正を予想した規定が置かれていることが分かります。また、「国会による予算の修正をめぐっては、内閣の予算提出権を侵すので予算を増額する修正は許されないとする見解もある」という記述も妥当です。

3.予算が成立したにもかかわらず、予算が予定する支出の根拠となる法律が制定されていないような場合、法律が可決されるまでの間、内閣は暫定的に予算を執行することができる。

3・・・妥当でない

「予算が成立したにもかかわらず、予算が予定する支出の根拠となる法律が制定されていないような場合でも、法律が可決されるまでの間、内閣は暫定的に予算を執行することができる」わけではありません。よって妥当ではありません。予算が成立したとしても、その予算の支出について根拠となる法律が制定されていない場合、内閣は予算を執行することができません

【理由】 なぜなら、予算の支出は法的な根拠がなければ行うことができないからです。法律がなければ、予算を執行するための具体的な手続きや条件が定められていないため、支出の正当性や適法性が保証されません。 したがって、内閣は予算案が成立する際に、予算の支出に関する法律を同時に制定する必要があります。この法律には、予算の使途や条件、支出の範囲などが明確に定められます。

【具体例】 例えば、「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」です。補助金について予算が成立しても、執行するための法律がなければ執行できません。そのため、上記のような法律を作って、予算が正しくかつ適法に執行されるようにします。

4.皇室の費用はすべて、予算に計上して国会の議決を経なければならないが、皇室が財産を譲り受けたり、賜与したりするような場合には、国会の議決に基く必要はない。

4・・・妥当でない

【前半部分】 憲法88条には「すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない。」と規定しています。よって、前半部分は妥当です。

【後半部分】 憲法8条には「皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与することは、国会の議決に基かなければならない。」と規定しています。そのため、皇室が財産を譲り受けたり、賜与したりするような場合にも、国会の議決に基く必要があります。よって、後半部分が妥当ではないので、本肢は妥当ではありません。

5.国の収入支出の決算は、内閣が、毎年そのすべてについて国会の承認の議決を得たうえで、会計検査院に提出し、その審査を受けなければならない。

5・・・妥当でない

憲法90条には「国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。」と規定しています。つまり、順番としては「会計検査院が検査」→「内閣が国会に報告・提出」です。本肢は「国会の承認の議決」→「会計検査院に提出し、審査」と順番になっています。順番が違うので妥当ではありません。なお、90条には「国会に提出しなければならない」とまでしか規定していませんが、毎年度の決算は、内閣から衆議院、参議院の両院に同時に提出され、それぞれの院で審査されます。そのため、「両院での審査」も必要となります。

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令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問6|憲法

国政調査権の限界に関する次の文章の趣旨に照らして、妥当でないものはどれか。

ところで司法権の独立とは、改めていうまでもなく、裁判官が何らの「指揮命令」に服さないこと、裁判活動について何ら職務上の監督を受けないことを意味するが、単に「指揮命令」を禁止するにとどまらず、その実質的な意義は、身分保障その他、裁判官の内心における法的確信の自由な形成をつねに担保することにある。司法権の独立が、・・・(中略)・・・、「あらゆる現実の諸条件を考えた上で、社会通念上、裁判官が独立に裁判を行うことに対して、事実上重大な影響をおよぼす可能性ある行動」を排斥するのは、かような趣旨にもとづくものといえよう。その結果、第一に、立法権・行政権による現に裁判所に係属中の訴訟手続への干渉は一切禁止されるのみならず、第二に、他の国家機関による判決の内容の批判はいかに適切であろうとも許容されないという原則が要請される。

(出典 芦部信喜「憲法と議会政」から)

  1. 議院が刑事事件について調査する際には、その経済的・社会的・政治的意義などを明らかにすることで立法や行政監督に資する目的などで行われるべきである。
  2. 裁判への干渉とは、命令によって裁判官の判断を拘束することを意味するから、議院による裁判の調査・批判は何らの法的効果を持たない限り司法権の独立を侵害しない。
  3. 議院の国政調査権によって、裁判の内容の当否につきその批判自体を目的として調査を行うことは、司法権の独立を侵害する。
  4. 刑事裁判で審理中の事件の事実について、議院が裁判所と異なる目的から、裁判と並行して調査することは、司法権の独立を侵害しない。
  5. 議院の国政調査権によって、裁判所に係属中の事件につき裁判官の法廷指揮など裁判手続自体を調査することは許されない。

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【答え】:2

【解説】

ところで司法権の独立とは、改めていうまでもなく、裁判官が何らの「指揮命令」に服さないこと、裁判活動について何ら職務上の監督を受けないことを意味するが、単に「指揮命令」を禁止するにとどまらず、その実質的な意義は、身分保障その他、裁判官の内心における法的確信の自由な形成をつねに担保することにある。司法権の独立が、・・・(中略)・・・、「あらゆる現実の諸条件を考えた上で、社会通念上、裁判官が独立に裁判を行うことに対して、事実上重大な影響をおよぼす可能性ある行動」を排斥するのは、かような趣旨にもとづくものといえよう。その結果、第一に、立法権・行政権による現に裁判所に係属中の訴訟手続への干渉は一切禁止されるのみならず、第二に、他の国家機関による判決の内容の批判はいかに適切であろうとも許容されないという原則が要請される。

(出典 芦部信喜「憲法と議会政」から)

1.議院が刑事事件について調査する際には、その経済的・社会的・政治的意義などを明らかにすることで立法や行政監督に資する目的などで行われるべきである。

1・・・妥当

問題文に「第一に、立法権・行政権による現に裁判所に係属中の訴訟手続への干渉は一切禁止される」と書いてあるので、議院(立法権)が刑事事件について調査する場合、現に裁判所に係属中の訴訟手続への干渉をすることは許されません、しかし、立法や行政監督に資する目的などで行われるのであれば、これは、裁判所に対する干渉は行っていないので、可能です。そして、その場合、経済的・社会的・政治的意義などを明らかにした上で行われるべきです。 立法・行政が、裁判に干渉することは禁止される、ということなので、調査をする際はそれ以外の目的(例:その事件の経済的意義などを明らかにする)で行われる必要があります。

2. 裁判への干渉とは、命令によって裁判官の判断を拘束することを意味するから、議院による裁判の調査・批判は何らの法的効果を持たない限り司法権の独立を侵害しない。

2・・・妥当ではない

裁判への干渉とは、命令によって裁判官の判断を拘束することを意味します。この点は妥当です。そして、問題文に「第二に、他の国家機関による判決の内容の批判はいかに適切であろうとも許容されない」と書いてあるので、議院による裁判の調査・批判は、何らの法的効果を持たなくても、司法権の独立を侵害するので、許されません。よって、妥当ではありません。

3.議院の国政調査権によって、裁判の内容の当否につきその批判自体を目的として調査を行うことは、司法権の独立を侵害する。

3・・・妥当

問題文に「第二に、他の国家機関による判決の内容の批判はいかに適切であろうとも許容されない」と書いてあるので、他の国会機関である「議院」が、判決の内容を批判することは許されません。今回、選択肢には、「裁判の内容の当否につきその批判自体を目的」としているので、司法権の独立を侵害します。

4.刑事裁判で審理中の事件の事実について、議院が裁判所と異なる目的から、裁判と並行して調査することは、司法権の独立を侵害しない。

4・・・妥当

議院が、裁判所と「異なる目的」で調査するのであれば、裁判に干渉しているわけではないので、司法権の独立を侵害しません。

5.議院の国政調査権によって、裁判所に係属中の事件につき裁判官の法廷指揮など裁判手続自体を調査することは許されない。

5・・・妥当

問題文に「第一に、立法権・行政権による現に裁判所に係属中の訴訟手続への干渉は一切禁止される」と書いてあるので、「議院の国政調査権によって、裁判官の法廷指揮など裁判手続自体を調査する」ということは、「訴訟手続への干渉」に当たります。そのため議院の国政調査権によって、裁判所に係属中の事件につき裁判官の法廷指揮など裁判手続自体を調査することは許されません。よって、妥当です。

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令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問5|憲法

罷免・解職に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 衆議院比例代表選出議員または参議院比例代表選出議員について、名簿を届け出た政党から、除名、離党その他の事由により当該議員が政党に所属する者でなくなった旨の届出がなされた場合、当該議員は当選を失う。
  2. 議員の資格争訟の裁判は、国権の最高機関である国会に認められた権能であるから、両院から選出された国会議員による裁判の結果、いずれかの議院の議員が議席を失った場合には、議席喪失の当否について司法審査は及ばない。
  3. 閣議による内閣の意思決定は、慣例上全員一致によるものとされてきたので、これを前提にすれば、衆議院の解散の決定にあたり反対する大臣がいるような場合には、当該大臣を罷免して内閣としての意思決定を行うことになる。
  4. 最高裁判所の裁判官は、任命後初めて行われる衆議院議員総選挙の際に国民の審査に付されるが、その後、最高裁判所の長官に任命された場合は、任命後最初の衆議院議員総選挙の際に、長官として改めて国民の審査に付される。
  5. 裁判官は、公の弾劾によらなければ罷免されず、また、著しい非行があった裁判官を懲戒免職するためには、最高裁判所裁判官会議の全員一致の議決が必要である。

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【答え】:3
【解説】
1.衆議院比例代表選出議員または参議院比例代表選出議員について、名簿を届け出た政党から、除名、離党その他の事由により当該議員が政党に所属する者でなくなった旨の届出がなされた場合、当該議員は当選を失う。

1・・・妥当でない

国会法109条の2によると、衆議院や参議院の比例代表選挙において、政党が名簿を提出して選挙に参加し、その名簿から当選した議員が、除名や離党などの事由によってその政党に所属しなくなった場合でも、他の政党に所属しなかった場合、当該議員は当選を失わないとされています。よって、本肢は妥当でないです。

国会法109条の2では、衆議院や参議院の比例代表選挙で政党名簿から当選した議員が、離党して、他の政党に所属した場合当選を失うとしています。

(※)他の政党とは、その比例代表選挙で、名簿を届け出た他の政党を指します。

2.議員の資格争訟の裁判は、国権の最高機関である国会に認められた権能であるから、両院から選出された国会議員による裁判の結果、いずれかの議院の議員が議席を失った場合には、議席喪失の当否について司法審査は及ばない。

2・・・妥当でない

議員の資格争訟の裁判は、両議院に認められた権能です(憲法55条)。本肢は「国権の最高機関である国会に認められた権能」となっているので妥当ではありません。

なお、資格争訟の裁判の結果、いずれかの議院の議員が議席を失った場合には、議席喪失の当否について司法審査は及ばない点は正しいです。

憲法55条 両議院は、各々その議員の資格に関する争訟を裁判する。但し、議員の議席を失はせるには、出席議員の3分の2以上の多数による議決を必要とする。
3.閣議による内閣の意思決定は、慣例上全員一致によるものとされてきたので、これを前提にすれば、衆議院の解散の決定にあたり反対する大臣がいるような場合には、当該大臣を罷免して内閣としての意思決定を行うことになる。

3・・・妥当である

内閣は、行政権の行使について、全国民を代表する議員からなる国会に対し連帯して責任を負います(憲法66条3項)。そのため、閣議による内閣の意思決定は、慣例上、全員一致で行うものとされてきました。そして、内閣総理大臣は任意に大臣を罷免することができるため(憲法68条2項)、衆議院の解散の決定に反対する大臣がいる場合、内閣総理大臣は、その大臣を罷免して、内閣としての意思決定を行うことになります。

4.最高裁判所の裁判官は、任命後初めて行われる衆議院議員総選挙の際に国民の審査に付されるが、その後、最高裁判所の長官に任命された場合は、任命後最初の衆議院議員総選挙の際に、長官として改めて国民の審査に付される。

4・・・妥当でない

最高裁判所の裁判官は、任命後初めて行われる衆議院議員総選挙の際に国民の審査に付されます(憲法79条2項)。しかし、その後、最高裁判所の「長官に任命」された場合に、任命後最初の衆議院議員総選挙で、「長官として改めて国民審査」を受けるわけではありません。よって、妥当ではないです。

憲法79条2項  最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行われる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後10年を経過した後初めて行われる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。
5.裁判官は、公の弾劾によらなければ罷免されず、また、著しい非行があった裁判官を懲戒免職するためには、最高裁判所裁判官会議の全員一致の議決が必要である。

5・・・妥当でない

裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾(弾劾裁判)によらなければ罷免されません(憲法78条)。

したがって、裁判官は、心身の故障のために職務を執ることができないと決定があれば、公の弾劾によらずに罷免されます。よって、本肢は「裁判官は、公の弾劾によらなければ罷免されず」が妥当ではないです。

また、最高裁判所裁判官会議の全員一致の議決で、著しい非行があった裁判官を懲戒免職することはできません。この点も妥当ではありません。著しい非行があった裁判官についても、国会に設けられた弾劾裁判によって罷免するどうか決めます。

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令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問3|憲法

基本的人権の間接的、付随的な制約についての最高裁判所の判決に関する次のア~エの記述のうち、妥当なものの組合せはどれか。

ア.選挙における戸別訪問の禁止が、意見表明そのものの制約ではなく、意見表明の手段方法のもたらす弊害の防止をねらいとして行われる場合、それは戸別訪問以外の手段方法による意見表明の自由を制約するものではなく、単に手段方法の禁止に伴う限度での間接的、付随的な制約にすぎない。

イ.芸術的価値のある文学作品について、そこに含まれる性描写が通常人の性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反することを理由に、その頒布が処罰される場合、そこでの芸術的表現の自由への制約は、わいせつ物の規制に伴う間接的、付随的な制約にすぎない。

ウ.裁判官が「積極的に政治運動をすること」の禁止が、意見表明そのものの制約ではなく、その行動のもたらす弊害の防止をねらいとして行われる場合、そこでの意見表明の自由の制約は、単に行動の禁止に伴う限度での間接的、付随的な制約にすぎない。

エ.刑事施設の被収容者に対する新聞閲読の自由の制限が、被収容者の知ることのできる思想内容そのものの制約ではなく、施設内の規律・秩序の維持をねらいとして行われる場合、そこでの制約は、施設管理上必要な処置に伴う間接的、付随的な制約にすぎない。

  1. ア・イ
  2. ア・ウ
  3. ア・エ
  4. イ・ウ
  5. イ・エ

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【答え】:2(ア・ウが妥当)

【解説】
ア.選挙における戸別訪問の禁止が、意見表明そのものの制約ではなく、意見表明の手段方法のもたらす弊害の防止をねらいとして行われる場合、それは戸別訪問以外の手段方法による意見表明の自由を制約するものではなく、単に手段方法の禁止に伴う限度での間接的、付随的な制約にすぎない。

ア・・・妥当

最判昭56.6.15では、「戸別訪問の禁止によって失われる利益は、それにより戸別訪問という手段方法による意見表明の自由が制約されることではあるが、それは、もとより戸別訪問以外の手段方法による意見表明の自由を制約するものではなく、単に手段方法の禁止に伴う限度での間接的、付随的な制約にすぎない反面、禁止により得られる利益は、戸別訪問という手段方法のもたらす弊害を防止することによる選挙の自由と公正の確保であるから、得られる利益は失われる利益に比してはるかに大きいということができる」と判示しています。よって、本肢は妥当です。

イ.芸術的価値のある文学作品について、そこに含まれる性描写が通常人の性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反することを理由に、その頒布が処罰される場合、そこでの芸術的表現の自由への制約は、わいせつ物の規制に伴う間接的、付随的な制約にすぎない。

イ・・・妥当でない

大判昭和32.3.13(チャタレー事件)によると「芸術性と猥褻性(わいせつせい)とは別異の次元に属する概念であり、両立し得ないものではない」と判示しています。したがって、芸術的表現の自由への制約は、わいせつ物の規制(わいせつ物の頒布販売の制約)に伴う間接的、付随的な制約とは言えません。よって、妥当ではありません。
ウ.裁判官が「積極的に政治運動をすること」の禁止が、意見表明そのものの制約ではなく、その行動のもたらす弊害の防止をねらいとして行われる場合、そこでの意見表明の自由の制約は、単に行動の禁止に伴う限度での間接的、付随的な制約にすぎない。

ウ・・・妥当である

最大決平成10.12.1によると「裁判官が積極的に政治運動をすることを、これに内包される意見表明そのものの制約をねらいとしてではなく、その行動のもたらす弊害の防止をねらいとして禁止するときは、同時にそれにより意見表明の自由が制約されることにはなるが、それは単に行動の禁止に伴う限度での間接的、付随的な制約にすぎず、かつ、積極的に政治運動をすること以外の行為により意見を表明する自由までをも制約するものではない」と判示しています。
エ.刑事施設の被収容者に対する新聞閲読の自由の制限が、被収容者の知ることのできる思想内容そのものの制約ではなく、施設内の規律・秩序の維持をねらいとして行われる場合、そこでの制約は、施設管理上必要な処置に伴う間接的、付随的な制約にすぎない。

エ・・・妥当でない

最大判昭和58.6.22(よど号ハイジャック新聞記事抹消事件)によると「監獄は、多数の被拘禁者を外部から隔離して収容する施設であり、右施設内でこれらの者を集団として管理するにあたっては、内部における規律及び秩序を維持し、その正常な状態を保持する必要があるから、この目的のために必要がある場合には、未決勾留によって拘禁された者についても、この面からその者の身体的自由及びその他の行為の自由に一定の制限が加えられることは、やむをえないところというべきである。そして、この場合において、これらの自由に対する制限が必要かつ合理的なものとして是認されるかどうかは、右の目的のために制限が必要とされる程度と、制限される自由の内容及び性質、これに加えられる具体的制限の態様及び程度等を較量して決せられるべきものである」と判示しています。つまり、「施設内の規律・秩序の維持のため必要に応じて、制限を加える」のであって、「施設管理上必要な処置に伴う間接的、付随的な制約にすぎない」という記述は妥当ではありません。

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令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問2|基礎法学

法人等に関する次のア~オの記述のうち、妥当なものの組合せはどれか。

ア.いわゆる「権利能力なき社団」は、実質的には社団法人と同様の実態を有するが、法人格がないため、訴訟上の当事者能力は認められていない。

イ.法人は、営利法人と非営利法人に大別されるが、合名会社やそれと実質的に同様の実態を有する行政書士法人、弁護士法人および司法書士法人は非営利法人である。

ウ.一般社団法人および一般財団法人は、いずれも非営利法人であることから、一切の収益事業を行うことはできない。

エ.公益社団法人および公益財団法人とは、一般社団法人および一般財団法人のうち、学術、技芸、慈善その他の法令で定められた公益に関する種類の事業であって、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与する事業を行うことを主たる目的とし、行政庁(内閣総理大臣または都道府県知事)から公益認定を受けた法人をいう。

オ.特定非営利活動法人(いわゆる「NPO法人」)とは、不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とする保健、医療または福祉の増進その他の法令で定められた特定の活動を行うことを主たる目的とし、所轄庁(都道府県の知事または指定都市の長)の認証を受けて設立された法人をいう。

  1. ア・ウ
  2. ア・エ
  3. イ・ウ
  4. イ・オ
  5. エ・オ

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【答え】:5(エ・オが妥当)

【解説】
ア.いわゆる「権利能力なき社団」は、実質的には社団法人と同様の実態を有するが、法人格がないため、訴訟上の当事者能力は認められていない。

ア・・・妥当でない

権利能力なき社団」は、実質的には社団法人と同様の実態を有するので、法人格がなくても、訴訟上の当事者能力は認められます。よって、妥当ではありません。 「権利能力なき社団」とは、法人格を持たない団体のことを指します。一般的に、法人格を持たない団体は、法人としての権利や義務を持たないため、「権利能力なき」と呼ばれます。 しかし、権利能力なき社団は、法人格を持っていなくても、社団としての実態や活動を持っている場合があります。たとえば、集合体や団体、クラブ、協会などがこれに該当します。 そして、これらの団体は、民事訴訟法29条にある通り、代表者の定めがある場合、団体名で訴え、又は訴えられることができます。つまり、訴訟上の当事者能力が認められます。

民事訴訟法29条 法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものは、その名において訴え、又は訴えられることができる。

イ.法人は、営利法人と非営利法人に大別されるが、合名会社やそれと実質的に同様の実態を有する行政書士法人、弁護士法人および司法書士法人は非営利法人である。

イ・・・妥当でない

行政書士法人、弁護士法人および司法書士法人」は営利法人なので、妥当ではないです。そのほかは妥当です。 法人は、営利法人と非営利法人に大別されます。営利法人は、法人で得た利益を構成員(株主や社員)に分配します。つまり、お金を稼いで構成員に分配することを目的として設立されます。つまり、利益を追求することが主な目的です。 一方、非営利法人は、法人で得た利益を構成員に分配しません。社会的な目的や公益の増進を目指して設立されます。つまり、お金を稼ぐことが主な目的ではありません。【具体例】非営利法人には、例えば、慈善団体、宗教団体、文化団体、スポーツ団体などがあります。これらの法人は、社会に役立つ活動やサービスを提供し、一般の人々や特定の社会的グループの利益や福祉を増進することを目指します。 「行政書士法人、弁護士法人および司法書士法人」は、一般的に利益を追求する目的で設立されます。 また、「行政書士法人、弁護士法人および司法書士法人」は、合名会社に準じた法人です。例えば、行政書士法人は、2人以上の行政書士が集まり、法人化するもので、行政書士は全員が理事になり、理事全員が無限責任を負います。つまり、法人を構成する事務所の行政書士の一人に不祥事があれば、全員の連帯責任となります。これは、弁護士法人も司法書士法人も同じです。

ウ.一般社団法人および一般財団法人は、いずれも非営利法人であることから、一切の収益事業を行うことはできない。

ウ・・・妥当でない

一般社団法人および一般財団法人には、営利型(普通型)非営利型の2種類があります。つまり、「非営利法人であることから、一切の収益事業を行うことはできない。」は妥当ではありません。営利型一般社団法人は、収益事業を普通に行うため、税制上は株式会社と同じように課税されます。

エ.公益社団法人および公益財団法人とは、一般社団法人および一般財団法人のうち、学術、技芸、慈善その他の法令で定められた公益に関する種類の事業であって、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与する事業を行うことを主たる目的とし、行政庁(内閣総理大臣または都道府県知事)から公益認定を受けた法人をいう。

エ・・・妥当である

公益目的事業」を行う一般社団法人又は一般財団法人は、行政庁の認定を受けることで、公益社団法人又は公益財団法人となります(公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律4条)。 そして、「公益目的事業」とは、学術、技芸、慈善その他の公益に関する事業であって、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものをいいます。 また、公益認定を行うのは、「内閣総理大臣又は都道府県知事」です(同法3条)。 ちなみに、公益社団法人は、一定の目的のもとで集まった「」から成り立つ非営利法人です。 公益財団法人は、一定の目的のもとに集まった「財産そのもの」が法人格になります。

オ.特定非営利活動法人(いわゆる「NPO法人」)とは、不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とする保健、医療または福祉の増進その他の法令で定められた特定の活動を行うことを主たる目的とし、所轄庁(都道府県の知事または指定都市の長)の認証を受けて設立された法人をいう。

オ・・・妥当である

特定非営利活動法人(NPO法人)」とは、「特定非営利活動」を行うことを主たる目的とし、一定要件を満たした団体であって、特定非営利活動促進法(NPO法)の定めるところにより設立された法人をいいます(特定非営利活動促進法(NPO法)2条2項)。「特定非営利活動」とは、下記に掲げる活動に該当する活動であって、不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とするものをいいます。

  1. 保健、医療又は福祉の増進を図る活動
  2. 社会教育の推進を図る活動
  3. まちづくりの推進を図る活動
  4. 観光の振興を図る活動
  5. 農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
  6. 学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動等

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令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和5年・2023|問1|基礎法学

次の文章の空欄[ ア ]~[ エ ]に当てはまる語句の組合せとして、妥当なものはどれか。

明治8年太政官布告103号裁判事務心得の3条には、「民事の裁判に成文の法律なきものは[ ア ]に依り[ ア ]なきものは[ イ ]を推考して裁判すべし」という規定があり、民事裁判について「法の欠如」があるばあいに[ イ ]によるべきことがうたわれている。[ ウ ]の支配する刑法では罰則の欠如は当の行為につき犯罪の成立を否定する趣旨であるから、それは「法の欠如」ではない。ところが、民事裁判では、法の欠如があっても当事者に対して[ エ ](フランス民法4条)をすることはできず(憲法32条参照)、また、当然に原告を敗訴にすることももちろん法の趣旨ではない。 (出典 団藤重光「法学の基礎〔第2版〕」から<文章を一部省略した。>)

  1. ア:習慣 イ:条理 ウ:罪刑法定主義 エ:裁判の拒否
  2. ア:先例 イ:習慣 ウ:罪刑法定主義 エ:裁判の拒否
  3. ア:先例 イ:条理 ウ:適正手続 エ:和解の勧奨
  4. ア:習慣 イ:条理 ウ:責任主義 エ:裁判の拒否
  5. ア:先例 イ:習慣 ウ:責任主義 エ:和解の勧奨

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【答え】:1

【解説】
明治8年太政官布告103号裁判事務心得の3条には、「民事の裁判に成文の法律なきものは[ア:習慣]に依り[ア:習慣]なきものは[イ:条理]を推考して裁判すべし」という規定があり、民事裁判について「法の欠如」があるばあいに[イ:条理]によるべきことがうたわれている。[ウ:罪刑法定主義]の支配する刑法では罰則の欠如は当の行為につき犯罪の成立を否定する趣旨であるから、それは「法の欠如」ではない。ところが、民事裁判では、法の欠如があっても当事者に対して[エ:裁判の拒否](フランス民法4条)をすることはできず(憲法32条参照)、また、当然に原告を敗訴することももちろん法の趣旨ではない。
ア. 明治8年太政官布告103号裁判事務心得の3条には、「民事の裁判に成文の法律なきものは[ ア ]に依り[ ア ]なきものは[ イ ]を推考して裁判すべし」という規定があり、民事裁判について「法の欠如」があるばあいに[ イ ]によるべきことがうたわれている。

ア・・・習慣

この問題は「裁判事務心得3条」が分からなくても答えを導けます。「民事の裁判に成文の法律なきものは[ ア ]に依り[ ア ]なきものは[ イ ]を推考して裁判すべし」という部分から、成文の法律なきもの(法律に規定されていない場合)、何を推考して(推測して考えて)裁判すべきかを考えます。すると、「法の適用に関する通則法3条」に下記規定があります。

第3条 公の秩序又は善良の風俗に反しない慣習は、法令の規定により認められたもの又は法令に規定されていない事項に関するものに限り、法律と同一の効力を有する。
つまり、法律に規定されていない事柄は、慣習が、法律と同一の効力を有するので、慣習を基準として裁判すると考えることができます。 よって、アには「慣習」が入ります。

イ.明治8年太政官布告103号裁判事務心得の3条には、「民事の裁判に成文の法律なきものは[ ア:慣習 ]に依り[ ア:慣習 ]なきものは[ イ ]を推考して裁判すべし」という規定があり、民事裁判について「法の欠如」があるばあいに[ イ ]によるべきことがうたわれている。

イ・・・条理

「[ ア:慣習 ]なきものは[ イ ]を推考して裁判すべし」という部分から、慣習がない場合は、何を推考して(推測して考えて)裁判すべきかを考えるのですが、選択肢を見ると、イには「条理」もしくは「習慣」のどちらかが入ります。「アに習慣」を入れているので、「イは条理」と導けます。条理とは、ものごとの筋道や道理です。一般人であれば誰もが納得し得るような考え方・理由に基づいて裁判をするということです。

ウ.[ ウ ]の支配する刑法では罰則の欠如は当の行為につき犯罪の成立を否定する趣旨であるから、それは「法の欠如」ではない。

ウ・・・罪刑法定主義

「刑法では罰則の欠如は当の行為につき犯罪の成立を否定する趣旨である」とは、「罰則の欠如」とは、「罰則が法令に規定されていない」ことを指します。また「当の行為につき犯罪の成立を否定する」とは、「その行為について犯罪は成立しない」という意味です。つまり、「ある行為がなされて、その行為について、法令に罰則が規定されていない場合、その行為の犯罪は成立しない」ということです。これはまさしく「罪刑法定主義」です。よって、ウには「罪刑法定主義」が入ります。

エ.民事裁判では、法の欠如があっても当事者に対して[ エ ](フランス民法4条)をすることはできず(憲法32条参照)、また、当然に原告を敗訴にすることももちろん法の趣旨ではない。

エ・・・裁判の拒否

憲法32条では「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」と規定しています。そして、「法の欠如」とは、法律上の規定が不十分である状態を指します。具体的には、特定の法律や規則が存在しない、またはある問題や事案に対する法的な規定が明確にされていない状況を指します。そういった場合でも、裁判を受ける権利があるので、裁判所としては「裁判を拒否」することはできないということです。 選択肢を見ると、エには「裁判の拒否」または「和解の勧奨」のいずれかが入ります。「和解の推奨」は、憲法32条の趣旨とは異なるので、エには「裁判の拒否」が入ります。

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令和5年(2023年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 行政手続法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政事件訴訟法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
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問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略