令和4年度(2022年度)過去問

令和4年・2022|問9|行政法

行政契約に関する次のア~オの記述のうち、法令または最高裁判所の判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア.行政手続法は、行政契約につき定義規定を置いており、国は、それに該当する行政契約の締結及び履行にあたっては、行政契約に関して同法の定める手続に従わなければならない。

イ.地方公共団体が必要な物品を売買契約により調達する場合、当該契約は民法上の契約であり、専ら民法が適用されるため、地方自治法には契約の締結に関して特別な手続は規定されていない。

ウ.水道事業者たる地方公共団体は、給水契約の申込みが、適正かつ合理的な供給計画によっては対応することができないものである場合には、水道法の定める「正当の理由」があるものとして、給水契約を拒むことができる。

エ.公害防止協定など、地方公共団体が締結する規制行政にかかる契約は、法律に根拠のない権利制限として法律による行政の原理に抵触するため、法的拘束力を有しない。

オ.法令上、随意契約によることができない契約を地方公共団体が随意契約で行った場合であっても、当該契約の効力を無効としなければ法令の規定の趣旨を没却する結果となる特別の事情が存在しない限り、当該契約は私法上有効なものとされる。

  1. ア・イ
  2. ア・エ
  3. イ・ウ
  4. ウ・オ
  5. エ・オ

>解答と解説はこちら


【答え】:4(ウ・オが妥当)

【解説】
ア.行政手続法は、行政契約につき定義規定を置いており、国は、それに該当する行政契約の締結及び履行にあたっては、行政契約に関して同法の定める手続に従わなければならない。

ア・・・妥当ではない

行政手続法は、処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続に関し、共通する事項を定めることによって、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することを目的とする(行政手続法1条)。

つまり、行政契約に関する手続については、行政手続法の対象外です。

行政手続法の対象
処分、行政指導、届出、命令
行政手続法の対象外
行政計画、行政契約、行政調査、即時強制、入札手続など
イ.地方公共団体が必要な物品を売買契約により調達する場合、当該契約は民法上の契約であり、専ら民法が適用されるため、地方自治法には契約の締結に関して特別な手続は規定されていない。

イ・・・妥当ではない

売買、貸借、請負その他の契約は、一般競争入札、指名競争入札、随意契約又はせり売りの方法により締結するものとされています(地方自治法234条1項)。

つまり、「地方自治法には契約の締結に関して特別な手続は規定されていない」としている点が妥当ではないです。

地方自治法の勉強していて、「一般競争入札、指名競争入札、随意契約又はせり売り」について勉強したことがあると思うので、正解していただきたい問題です。

もし、上記を知っていて、間違えた方は、基本事項を勉強する必要があります

基本事項については、無料講座で行っているので、ぜひ、ご利用ください!

ウ.水道事業者たる地方公共団体は、給水契約の申込みが、適正かつ合理的な供給計画によっては対応することができないものである場合には、水道法の定める「正当の理由」があるものとして、給水契約を拒むことができる。

ウ・・・妥当

水道事業者は、事業計画に定める給水区域内の需要者から給水契約の申込みを受けたときは、正当の理由がなければ、これを拒んではなりません(水道法15条1項)。

そして、下記判例では、給水契約の申込みが、適正かつ合理的な供給計画によっては対応することができないものである場合には、水道法の定める「正当の理由」があるものとして、給水契約を拒むことができると判示しているので、本肢は妥当です。

【最判平11.1.21:志免町水道給水拒否事件】漫然と新規の給水申込みに応じていると、近い将来需要に応じきれなくなり深刻な水不足を生ずることが予測される状態にあるということができる。
このようにひっ迫した状況の下においては、被上告人が、新たな給水申込みのうち、需要量が特に大きく、住宅を供給する事業を営む者が住宅を分譲する目的であらかじめしたものについて契約の締結を拒むことにより、急激な水道水の需要の増加を抑制する施策を講ずることも、やむを得ない措置として許されるものというべきである。
そして、上告人の給水契約の申込みは、マンション420戸を分譲するという目的のためにされたものであるから、所論のように、建築計画を数年度に分け、井戸水を併用することにより水道水の使用量を押さえる計画であることなどを考慮しても、被上告人がこれを拒んだことには水道法15条1項にいう「正当の理由」があるものと認めるのが相当である
エ.公害防止協定など、地方公共団体が締結する規制行政にかかる契約は、法律に根拠のない権利制限として法律による行政の原理に抵触するため、法的拘束力を有しない。

エ・・・妥当ではない

公害防止協定など、地方公共団体が締結する規制行政にかかる契約については、下記判例の通り、法的拘束力を有します。

【最判平21.7.10】廃棄物処理法は、廃棄物の排出の抑制、適正な再生、処分等を行い、生活環境を清潔にすることによって、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的とし(1条)、その目的を達成するために廃棄物の処理に関する規制等を定めるものである。

そして、廃棄物処理法の規定は、知事が、処分業者としての適格性や処理施設の要件適合性を判断し、産業廃棄物の処分事業が廃棄物処理法の目的に沿うものとなるように適切に規制できるようにするために設けられたものである。

したがって、知事の許可が、処分業者に対し、許可が効力を有する限り事業や処理施設の使用を継続すべき義務を課すものではないことは明らかである。(知事は許可したからといって、知事が、使用継続を許す義務を負うわけではない)

また、処分業者(Y)が、公害防止協定において、協定の相手方(X)に対し、その事業や処理施設を将来廃止する旨を約束することは、処分業者自身の自由な判断で行えることであり(民法における契約自由の原則、私法上の契約)、その結果、許可が効力を有する期間内に事業や処理施設が廃止されることがあったとしても、同法に何ら抵触するものではない。

したがって、当該期限の条項が廃棄物処理法の趣旨に反するということはできないし、本件期限条項が本件協定が締結された当時の廃棄物処理法の趣旨に反するということもできない。

よって、本件期限条項の法的拘束力を否定することはできない(法的拘束力はある)。

オ.法令上、随意契約によることができない契約を地方公共団体が随意契約で行った場合であっても、当該契約の効力を無効としなければ法令の規定の趣旨を没却する結果となる特別の事情が存在しない限り、当該契約は私法上有効なものとされる。

オ・・・妥当

下記判例の通り、法令上、随意契約によることができない契約を地方公共団体が随意契約で行った場合であっても、原則、契約は有効であり、例外的に、無効としなければ、法令の規定の趣旨を無視(没却)する結果となるような特別ば場合に限って無効となります。

【最判昭62.5.19】

随意契約の制限に関する法令に違反して締結された契約の私法上の効力については別途考察する必要があり、かかる違法な契約であっても私法上当然に無効になるものではなく、随意契約によることができる場合として前記令(地方自治法施行令)の規定の掲げる事由のいずれにもあたらないことが何人の目にも明らかである場合や契約の相手方において随意契約の方法による当該契約の締結が許されないことを知り又は知り得べかりし場合のように当該契約の効力を無効としなければ随意契約の締結に制限を加える前記法(地方自治法)及び令の規定の趣旨を没却する結果となる特段の事情が認められる場合に限り、私法上無効になるものと解するのが相当である。

この問題は、5選択肢ともすべて正解すべき問題です!

こういった基本事項をしっかり得点できれば、行政書士試験は合格できます!

基本事項をしっかり押さえた勉強をしていきましょう!

基本事項については、無料講座で行っているので、ぜひ、ご利用ください!

8月から逆転合格:模試ad


令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問8|憲法

公法上の権利の一身専属性に関する次の文章の空欄[ A ]~[ C ]に当てはまる文章の組合せとして、妥当なものはどれか。

最高裁判所昭和42年5月24日判決(いわゆる朝日訴訟判決)においては、生活保護を受給する地位は、一身専属のものであって相続の対象とはなりえず、その結果、原告の死亡と同時に当該訴訟は終了して、同人の相続人らが当該訴訟を承継し得る余地はないとされた。そして、この判決は、その前提として、[ A ]。
その後も公法上の権利の一身専属性が問題となる事例が散見されたが、労働者等のじん肺に係る労災保険給付を請求する権利については最高裁判所平成29年4月6日判決が、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律に基づく認定の申請がされた健康管理手当の受給権については最高裁判所平成29年12月18日判決が、それぞれ判断をしており、[ B ]。
なお、この健康管理手当の受給権の一身専属性について、最高裁判所平成29年12月18日判決では、受給権の性質が[ C ]。

空欄[ A ]
ア.生活保護法の規定に基づき、要保護者等が国から生活保護を受けるのは、法的利益であって、保護受給権とも称すべきものであるとしている
イ.生活保護法の規定に基づき、要保護者等が国から生活保護を受けるのは、国の恩恵ないし社会政策の実施に伴う反射的利益であるとしている
 
空欄[ B ]
ウ.両判決ともに、権利の一身専属性を認めて、相続人による訴訟承継を認めなかった
エ.両判決ともに、権利の一身専属性を認めず、相続人による訴訟承継を認めた
 
空欄[ C ]
オ.社会保障的性質を有することが、一身専属性が認められない根拠の一つになるとの考え方が示されている
カ.国家補償的性質を有することが、一身専属性が認められない根拠の一つになるとの考え方が示されている
  1. A:ア B:ウ C:オ
  2. A:ア B:エ C:力
  3. A:イ B:ウ C:オ
  4. A:イ B:ウ C:力
  5. A:イ B:エ C:力

>解答と解説はこちら


【答え】:2

【解説】

最高裁判所昭和42年5月24日判決(いわゆる朝日訴訟判決)においては、生活保護を受給する地位は、一身専属のものであって相続の対象とはなりえず、その結果、原告の死亡と同時に当該訴訟は終了して、同人の相続人らが当該訴訟を承継し得る余地はないとされた。そして、この判決は、その前提として、[ A ]。

空欄[ A ]
ア.生活保護法の規定に基づき、要保護者等が国から生活保護を受けるのは、法的利益であって、保護受給権とも称すべきものであるとしている
イ.生活保護法の規定に基づき、要保護者等が国から生活保護を受けるのは、国の恩恵ないし社会政策の実施に伴う反射的利益であるとしている

A・・・ア:生活保護法の規定に基づき、要保護者等が国から生活保護を受けるのは、法的利益であって、保護受給権とも称すべきものであるとしている

[ A ]という前提があって、→ 朝日訴訟判決においては、生活保護を受給する地位は、一身専属のものであって相続の対象とはなりえず、その結果、原告の死亡と同時に当該訴訟は終了して、同人の相続人らが当該訴訟を承継し得る余地はないとされた。

という流れです。

要保護者等が国から生活保護を受けるのが、「法的利益でなく」「国の恩恵ないし社会政策の実施に伴う反射的利益」であれば、そもそも、訴えの利益がなく却下となります。

今回の内容は、却下(門前払いで審理をしない)となっておらず、
審理を行った上で「生活保護を受給する地位は、相続人らが当該訴訟を承継しない」と結論づけています。

よって、[ A ]には、「法的利益」という文言を含む「生活保護法の規定に基づき、要保護者等が国から生活保護を受けるのは、法的利益であって、保護受給権とも称すべきものであるとしている」が入ります。

その後も公法上の権利の一身専属性が問題となる事例が散見されたが、労働者等のじん肺に係る労災保険給付を請求する権利については最高裁判所平成29年4月6日判決が、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律に基づく認定の申請がされた健康管理手当の受給権については最高裁判所平成29年12月18日判決が、それぞれ判断をしており、[ B ]。

空欄[ B ]
ウ.両判決ともに、権利の一身専属性を認めて、相続人による訴訟承継を認めなかった
エ.両判決ともに、権利の一身専属性を認めず、相続人による訴訟承継を認めた

B・・・エ:両判決ともに、権利の一身専属性を認めず、相続人による訴訟承継を認めた

下記判例の通り、いずれの判決も「権利の一身専属性を認めず、相続人による訴訟承継を認めています」。

【最判平29.4.6】

原審は、・・・じん肺管理区分の決定を受けるという労働者等の地位は,当該労働者等に固有のものであり,一身専属的なものであると解されるから、上告人らがAの相続人としてこれを承継することはできず,本件訴訟はAの死亡により当然に終了すると判断し、第1審判決(ただし,国家賠償請求に関する部分を除く。)を取り消し、訴訟終了宣言をした。

しかしながら、原審の上記判断は是認することができない。・・・

じん肺管理区分決定が管理1に該当する旨の決定を受けた労働者等が当該決定の取消しを求める訴訟の係属中に死亡した場合、当該訴訟は当該労働者等の死亡によって当然に終了するものではなく、当該労働者等のじん肺に係る未支給の労災保険給付を請求することができる労災保険法11条1項所定の遺族においてこれを承継すべきものと解するのが相当である

【最判平29.12.18】

被爆者援護法の性格や健康管理手当の目的及び内容に鑑みると、同条に基づく認定の申請がされた健康管理手当の受給権は、当該申請をした者の一身に専属する権利ということはできず、相続の対象となるものであるから、被爆者健康手帳交付申請及び健康管理手当認定申請の各却下処分の取消しを求める訴訟並びに同取消しに加えて被爆者健康手帳の交付の義務付けを求める訴訟について、訴訟の係属中に申請者が死亡した場合には、当該訴訟は当該申請者の死亡により当然に終了するものではなく、その相続人がこれを承継するものと解するのが相当である。

なお、この健康管理手当の受給権(原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律に基づく認定の申請がされた健康管理手当の受給権)の一身専属性について、最高裁判所平成29年12月18日判決では、受給権の性質が[ C ]。

空欄[ C ]
オ.社会保障的性質を有することが、一身専属性が認められない根拠の一つになるとの考え方が示されている
カ.国家補償的性質を有することが、一身専属性が認められない根拠の一つになるとの考え方が示されている

C・・・カ:国家補償的性質を有することが、一身専属性が認められない根拠の一つになるとの考え方が示されている

「国家補償」とは、国家の活動によって私人に損失が生じた場合に、その損失を填補することによって救済を図る制度のことを言います。

そして、下記判例では、
原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律に基づく認定の申請がされた健康管理手当の受給権の性質は、国家補償的性質を有することが、申請者の死亡により当然に終了するものではなく、その相続人がこれを承継すると言っています。

つまり、一身専属性が認められない根拠の一つになるとの考え方が示されています。

【最判平29.12.18】被爆者援護法は原子爆弾の投下の結果として生じた放射能に起因する特殊な戦争被害において、戦争遂行主体であった国の責任により救済を図るという一面を有し、実質的に国家補償的配慮が制度の根底にあるとした。

そして、被爆者健康手帳交付申請及び健康管理手当認定申請の各却下処分の取消しを求める訴訟と被爆者健康手帳の交付の義務付けを求める訴訟の係属中に申請者が死亡した場合には、当該訴訟は当該申請者の死亡により当然に終了するものではなく、その相続人がこれを承継する。

この点は理解していただきたい部分なので、理解すべきポイントは、個別指導で解説します!

8月から逆転合格:模試ad


令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問7|憲法

裁判の公開に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。
  1. 裁判は、公開法廷における対審および判決によらなければならないので、カメラ取材を裁判所の許可の下に置き、開廷中のカメラ取材を制限することは、原則として許されない。
  2. 裁判所が過料を科する場合は、それが純然たる訴訟事件である刑事制裁を科す作用と同質であることに鑑み、公開法廷における対審および判決によらなければならない。
  3. 証人尋問の際に、傍聴人と証人との間で遮へい措置が採られても、審理が公開されていることに変わりはないから、裁判の公開に関する憲法の規定には違反しない。
  4. 傍聴人は法廷で裁判を見聞できるので、傍聴人が法廷でメモを取る行為は、権利として保障されている。
  5. 裁判官の懲戒の裁判は行政処分の性質を有するが、裁判官の身分に関わる手続であるから、裁判の公開の原則が適用され、審問は公開されなければならない。
>解答と解説はこちら
【答え】:3 【解説】
1.裁判は、公開法廷における対審および判決によらなければならないので、カメラ取材を裁判所の許可の下に置き、開廷中のカメラ取材を制限することは、原則として許されない。
1・・・妥当ではない 裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行います(憲法82条1項)。 「対審」とは、裁判官の目の前で当事者が口頭でそれぞれの主張を述べる手続きです。 そして、下記判例によると、開廷中のカメラ取材、写真撮影の許可等は裁判所の裁量に委ねられ、開廷中のカメラ取材を制限することは、原則として許されています。 よって、妥当ではないです。
【判例(最判昭33.2.17:北海タイムス事件:)】 憲法が裁判の対審及び判決を公開法廷で行うことを規定しているのは、手続を一般に公開してその審判が公正に行われることを保障する趣旨にほかならないのであるから、たとい公判廷の状況を一般に報道するための取材活動であっても、その活動が公判廷における審判の秩序を乱し被告人その他訴訟関係人の正当な利益を不当に害するがごときものは、もとより許されないところであるといわなければならない。 ところで、公判廷における写真の撮影等は、その行われる時、場所等のいかんによっては、前記のような好ましくない結果を生ずる恐れがあるので、刑事訴訟規則215条(公判廷における写真の撮影、録音又は放送は、裁判所の許可を得なければ、これをすることができない。)は写真撮影の許可等を裁判所の裁量に委ね、その許可に従わないかぎりこれらの行為をすることができないことを明らかにしたのであって、右規則は憲法に違反するものではない
2.裁判所が過料を科する場合は、それが純然たる訴訟事件である刑事制裁を科す作用と同質であることに鑑み、公開法廷における対審および判決によらなければならない。
2・・・妥当ではない 下記判例によると、裁判所が過料を科する場合、対審および判決を公開(裁判を公開)する必要はないとしています。
【最大判昭41.12.27】 民事上の秩序罰としての過料を科する作用は、国家のいわゆる後見的民事監督の作用であり、その実質においては、一種の行政処分としての性質を有するものであるから、必ずしも裁判所がこれを科することを憲法上の要件とするものではなく、行政庁がこれを科する(地方自治法149条3号、255条の2参照)ことにしても、なんら違憲とすべき理由はない。 従って、法律上、裁判所がこれを科することにしている場合でも、過料を科する作用は、もともと純然たる訴訟事件としての性質の認められる刑事制裁を科する作用とは異なるのであるから、憲法82条、32条の定めるところにより、公開の法廷における対審及び判決によって行なわれなければならないものではない。」
今回の5つの選択肢は全て基本的な判例です。 基本的な判例が頭に入っていない方は、無料講座で、少しずつでも判例を頭に入れていきましょう! 毎日コツコツ知識を増やすことが、行政書士試験合格の「コツ」です!
3.証人尋問の際に、傍聴人と証人との間で遮へい措置が採られても、審理が公開されていることに変わりはないから、裁判の公開に関する憲法の規定には違反しない。
3・・・妥当 すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有します(憲法37条1項)。 そして、下記判例によると、証人尋問の際に、傍聴人と証人との間で遮へい措置が採られる行為は、「裁判の公開の原則(憲法37条1項)」に違反しないと判示しています。
【最判平17.4.14】 証人尋問が公判期日において行われる場合、傍聴人と証人との間で遮へい措置が採られ、あるいはビデオリンク方式によることとされ、さらには、ビデオリンク方式によった上で傍聴人と証人との間で遮へい措置が採られても、審理が公開されていることに変わりはないから、これらの規定は、憲法82条1項、37条1項に違反するものではない。
4.傍聴人は法廷で裁判を見聞できるので、傍聴人が法廷でメモを取る行為は、権利として保障されている。
4・・・妥当ではない 判例によると、法廷でメモを取る行為は「尊重に値する」ものの、権利として保障されているとまではいえないと判示しています。
【最大判平元.3.8:レペタ事件】 憲法82条1項の規定は、・・・傍聴人に対して法廷においてメモを取ることを権利として保障しているものでない・・・(しかし)傍聴人が法廷においてメモを取ることは、その見聞する裁判を認識、記憶するためになされるものである限り、尊重に値し、故なく妨げられてはならないものというべきである。
関連ポイントは個別指導で解説します! 関連ポイントも一緒に勉強して効率的かつ効果的な学習をしていきましょう! 行政書士試験は範囲が広いので「非効率な勉強」をしていたら 「覚えて・忘れて・覚えて・忘れて・・・・」 の繰り返しになります。 そうならないためにも、効率的に勉強していきましょう!
5.裁判官の懲戒の裁判は行政処分の性質を有するが、裁判官の身分に関わる手続であるから、裁判の公開の原則が適用され、審問は公開されなければならない。
5・・・妥当ではない 下記判例によると、 裁判官の懲戒の裁判は、裁判公開の原則が適用されず、審問は公開しなくてもよいと判示しているので、妥当ではないです。
【最大判平10.12.1:寺西判事補事件】 憲法82条1項は、裁判の対審及び判決は公開の法廷で行わなければならない旨を規定している。・・・ 裁判官に対する懲戒は、裁判所が裁判という形式をもってすることとされているが、一般の公務員に対する懲戒と同様、その実質においては裁判官に対する行政処分の性質を有するものである。 したがって、裁判官に懲戒を課する作用は、固有の意味における司法権の作用ではなく、懲戒の裁判は、純然たる訴訟事件についての裁判にはあたらないことが明らかである。・・・分限事件は、訴訟とは全く構造を異にするというほかはない。 したがって、分限事件については憲法82条1項の適用はないものというべきである」
この判例とみて、「懲戒」と「分限」が混ざっていて、懲戒処分についても疑問に思いませんか? この点は理解が必要なので、個別指導で解説します! 基本事項ですが理解できていない人も多いので、合否の分かれ目になる内容です!

8月から逆転合格:模試ad

令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問6|憲法

内閣の権限に関する次の記述のうち、憲法の規定に照らし、妥当なものはどれか。
  1. 内閣は、事前に、時宜によっては事後に、国会の承認を経て条約を締結するが、やむを得ない事情があれば、事前または事後の国会の承認なく条約を締結できる。
  2. 内閣は、国会が閉会中で法律の制定が困難な場合には、事後に国会の承認を得ることを条件に、法律にかわる政令を制定することができる。
  3. 参議院の緊急集会は、衆議院の解散により国会が閉会している期間に、参議院の総議員の4分の1以上の要求があった場合、内閣によりその召集が決定される。
  4. 内閣総理大臣が欠けたとき、内閣は総辞職をしなければならないが、この場合の内閣は、あらたに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行う。
  5. 新年度開始までに予算が成立せず、しかも暫定予算も成立しない場合、内閣は、新年度予算成立までの間、自らの判断で予備費を設け予算を執行することができる。
>解答と解説はこちら
【答え】:4 【解説】
1.内閣は、事前に、時宜によっては事後に、国会の承認を経て条約を締結するが、やむを得ない事情があれば、事前または事後の国会の承認なく条約を締結できる。
1・・・妥当ではない 内閣が条約を締結するには、事前に時宜によっては事後に、国会の承認を経ることを必要とします(憲法73条3号ただし書き)。 やむを得ない事情があっても、事前または事後の国会の承認がなければ、条約は締結できません。 よって、妥当ではないです。
2.内閣は、国会が閉会中で法律の制定が困難な場合には、事後に国会の承認を得ることを条件に、法律にかわる政令を制定することができる。
2・・・妥当ではない 内閣は、憲法及び法律の規定を実施するために、「政令」を制定することができます(憲法73条6号本文)。 政令は以下の手続きによって制定される。
  1. 各国務大臣より、制定の閣議を求める(内閣法4条3項)。
  2. 閣議において決定される(内閣法4条1項)。
  3. 主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署する(憲法74条)。
  4. 天皇が公布する(憲法第7条1号)
  5. 官報に掲載。
よって、政令の制定に国会は関わらないので、妥当ではないです。 これは基本事項です。基本事項が身に付いていないと、応用問題も解けず、行政書士試験に合格するのは難しいです。 もし、「基本事項が身に付いていない」と感じるようでしたら、行書塾の無料講座をご利用ください! 1日3問、基本的な過去問を無料で解説しております!
3.参議院の緊急集会は、衆議院の解散により国会が閉会している期間に、参議院の総議員の4分の1以上の要求があった場合、内閣によりその召集が決定される。
3・・・妥当ではない 結論からいうと、本肢の内容は、臨時会の内容に近い内容です。よって、妥当ではないです。 【臨時会】 衆議院または参議院の総議員の1/4以上の要求があった場合、内閣は、臨時会を召集しなければなりません(憲法53条)。 この「臨時会」は、常会・特別会以外であって、臨時に召集される国会のことを指します。 たとえば、緊急を要する災害対策のための補正予算や法律案の審議を求めるときなどに、臨時会を召集し、臨時会の会期は、そのつど国会が決定し、2回まで延長することができます(国会法第12条)。 【緊急集会】 衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となります。 ただし、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができます(憲法54条2項)。 分かりやすくいうと、 衆議院が解散されると、同時に、参議院は閉会され、国会の活動は停止します。 しかし、「衆議院解散」から総選挙を経て「特別国会の召集」までの間に、国に緊急の必要が生じる場合があります。 そのようなときに、国会が活動していないと困るので、内閣は「参議院の緊急集会」を求めることができます。 「緊急集会」は、「参議院のみ」で行われるため、緊急集会で決議された内容は、次の国会で「衆議院の同意」が必要です。 もし、衆議院の同意が得られない場合、緊急集会で決議された内容の効力は失われます。
4.内閣総理大臣が欠けたとき、内閣は総辞職をしなければならないが、この場合の内閣は、あらたに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行う。
4・・・妥当 内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければなりません(憲法69条)。 上記総辞職のあと、あらたに内閣総理大臣が任命されるまでの間は、内閣(旧内閣)が引き続きその職務を行います(憲法71条)。 これは、国政が停滞しないようにするためです。
5.新年度開始までに予算が成立せず、しかも暫定予算も成立しない場合、内閣は、新年度予算成立までの間、自らの判断で予備費を設け予算を執行することができる。
5・・・妥当ではない 年度開始までに予算が成立せず、しかも暫定予算も成立しない場合の規定は、存在しません。 そのため、本肢は妥当ではないです。 本肢は関連ポイントも一緒に勉強すると効果的な勉強ができるので 個別指導では、関連ポイントも併せて解説いたします!

8月から逆転合格:模試ad

令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問5|憲法

適正手続に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 告知、弁解、防御の機会を与えることなく所有物を没収することは許されないが、貨物の密輸出で有罪となった被告人が、そうした手続的保障がないままに第三者の所有物が没収されたことを理由に、手続の違憲性を主張することはできない。
  2. 憲法は被疑者に対して弁護人に依頼する権利を保障するが、被疑者が弁護人と接見する機会の保障は捜査権の行使との間で合理的な調整に服さざるを得ないので、憲法は接見交通の機会までも実質的に保障するものとは言えない。
  3. 審理の著しい遅延の結果、迅速な裁判を受ける被告人の権利が害されたと認められる異常な事態が生じた場合であっても、法令上これに対処すべき具体的規定が存在しなければ、迅速な裁判を受ける権利を根拠に救済手段をとることはできない。
  4. 不利益供述の強要の禁止に関する憲法の保障は、純然たる刑事手続においてばかりだけでなく、それ以外にも、実質上、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する手続には、等しく及ぶ。
  5. 不正な方法で課税を免れた行為について、これを犯罪として刑罰を科すだけでなく、追徴税(加算税)を併科することは、刑罰と追徴税の目的の違いを考慮したとしても、実質的な二重処罰にあたり許されない。

>解答と解説はこちら


【答え】:4
【解説】
1.告知、弁解、防御の機会を与えることなく所有物を没収することは許されないが、貨物の密輸出で有罪となった被告人が、そうした手続的保障がないままに第三者の所有物が没収されたことを理由に、手続の違憲性を主張することはできない。

1・・・妥当ではない

第三者所有物没収事件において判例(最大判昭37.11.28)によると、「所有者に対して事前に告知、弁解、防禦の機会を与えることなく、その所有物を没収することは、憲法31条に反する」としてします

ここでいう所有物を没収する前に「所有者に対して事前に告知、弁解、防禦の機会を与えること」が「手続的保障」です。

つまり、この手続的保障がないままに第三者の所有物が没収された場合、そのことを理由に、手続の違憲性を主張することはできるので、本肢は妥当ではないです。

基本事項を押さえられていない方は、無料講座で基本事項を毎日コツコツ頭に入れてくのがよいです!

無料なので、ぜひ、ご活用ください!

2.憲法は被疑者に対して弁護人に依頼する権利を保障するが、被疑者が弁護人と接見する機会の保障は捜査権の行使との間で合理的な調整に服さざるを得ないので、憲法は接見交通の機会までも実質的に保障するものとは言えない。

2・・・妥当ではない

まず、本肢は、憲法34条の内容と関連するのですが、そもそも私たちが身柄の拘束を受ける場合、「なぜ抑留・拘禁されなければならなのか?」という理由が示されなければならないとされています。また、弁護人を依頼する権利が与えられます。
これを前提知識として、下記判例をご覧ください。

【最大判平11.3.24】

憲法34条前段は、「何人も、理由を直ちに告げられ、かつ、直ちに弁護人に依頼する権利を与えられなければ、抑留又は拘禁されない。」と定める。
この弁護人に依頼する権利は、身体の拘束を受けている被疑者が、拘束の原因となっている嫌疑を晴らしたり、人身の自由を回復するための手段を講じたりするなど自己の自由と権利を守るため弁護人から援助を受けられるようにすることを目的とするものである。
したがって、右規定は、単に被疑者が弁護人を選任することを官憲が妨害してはならないというにとどまるものではなく、被疑者に対し、弁護人を選任した上で、弁護人に相談し、その助言を受けるなど弁護人から援助を受ける機会を持つことを実質的に保障しているものと解すべきである。

そして、「接見交通の機会」とは、刑事事件の被疑者・被告人として身柄拘束を受けている者が、弁護士等と面談する(接見)する機会、物品を受領する(交通)機会という意味です。

上記の通り、「弁護人に相談し、その助言を受けるなど弁護人から援助を受ける機会を持つことを実質的に保障している」という部分から、「接見交通の機会も実質的に保障しています」。

よって、本肢は「接見交通の機会までも実質的に保障するものとは言えない。」という部分が妥当でないです。

3.審理の著しい遅延の結果、迅速な裁判を受ける被告人の権利が害されたと認められる異常な事態が生じた場合であっても、法令上これに対処すべき具体的規定が存在しなければ、迅速な裁判を受ける権利を根拠に救済手段をとることはできない。

3・・・妥当ではない

下記判例は、「公判が、特段の理由なく15年以上にわたって中断されていた」場合の判例です。

【判例(最大判昭47.12.20:高田事件)】

憲法37条1項の保障する迅速な裁判をうける権利は、憲法の保障する基本的な人権の一つであり、右条項は、単に迅速な裁判を一般的に保障するために必要な立法上および司法行政上の措置をとるべきことを要請するにとどまらず、さらに個々の刑事事件について、現実に右の保障に明らかに反し、審理の著しい遅延の結果、迅速な裁判をうける被告人の権利が害せられたと認められる異常な事態が生じた場合には、これに対処すべき具体的規定がなくても、もはや当該被告人に対する手続の続行を許さず、その審理を打ち切るという非常救済手段がとられるべきことをも認めている趣旨の規定であると解する。

つまり、迅速な裁判を受ける被告人の権利が害されたと認められる異常な事態が生じた場合であれば、法令上これに対処すべき具体的規定が存在しなくても、迅速な裁判を受ける権利を根拠に救済手段をとることができます。

よって、妥当ではないです。

4.不利益供述の強要の禁止に関する憲法の保障は、純然たる刑事手続においてばかりだけでなく、それ以外にも、実質上、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する手続には、等しく及ぶ。

4・・・妥当

「不利益供述の強要の禁止」は、憲法38条1項「何人も、自己に不利益な供述を強制されない」という規定の内容です。
わかりやすくいうと、誰でも黙秘権があり、供述を強要することは禁止だということです。

上記規定は「刑事手続」について規定していますが、判例では、「それ以外(行政手続)」にも及ぶとしています。

それが、下記判例(最大判昭47.11.22:川崎民商事件)です。

憲法38条1項の法意が、何人も自己の刑事上の責任を問われるおそれのある事項について供述を強要されないことを保障したものであると解すべきことは、当裁判所大法廷の判例とするところであるが、右規定による保障は、純然たる刑事手続においてばかりではなく、それ以外の手続(行政手続)においても、実質上、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する手続には、ひとしく及ぶものと解するのを相当とする。

5.不正な方法で課税を免れた行為について、これを犯罪として刑罰を科すだけでなく、追徴税(加算税)を併科することは、刑罰と追徴税の目的の違いを考慮したとしても、実質的な二重処罰にあたり許されない。

5・・・妥当ではない

結論からいうと「刑罰(罰金)」と「追徴税(加算税)」は、二重処罰に当たらないので許されているため、本肢は妥当ではないです。

【判例(最大判昭33.4.30)】
法人税法43条の追徴税は、単に過少申告・不申告による納税義務違反の事実があれば、同条所定の已むを得ない事由のない限り、その違反の法人に対し課せられるものであり、これによつて、過少申告・不申告による納税義務違反の発生を防止し、以つて納税の実を挙げんとする趣旨に出でた行政上の措置であると解すべきである。
法が追徴税を行政機関の行政手続により租税の形式により課すべきものとしたことは追徴税を課せらるべき納税義務違反者の行為を犯罪とし、これに対する刑罰として、これを課する趣旨でないこと明らかである。追徴税のかような性質にかんがみれば、憲法39条の規定は刑罰たる罰金と追徴税とを併科することを禁止す
る趣旨を含むものでないと解するのが相当である

わかりやすくいうと、
「脱税に対する刑罰は、反社会性・反道徳性に対する制裁」であるのに対して、「追徴税(加算税)は、納税義務違反を防止するための行政上の措置」です。
両者は性質が異なるから二重処罰の禁止に当たらない、ということです。

このように、分かりやすく言い換えると、理解しやすいと思います!

行書塾の個別指導では、このようにできるだけ理解しやすく解説しているので、行政書士試験の問題・解説が理解できない方は、ぜひ、個別指導をご利用ください!

その方が、手っ取り早く、合格しやすくなります

無料講座もありますが、行書塾の解説を知らない方は、こちらの無料講座でお試していただくのもよいでしょう!

8月から逆転合格:模試ad


令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問4|憲法

薬局を営むXは、インターネットを介した医薬品の通信販売を始めたが、法律は一定の種類の医薬品の販売については、薬剤師が対面で情報の提供および薬学的知見に基づく指導を行うことを求めている。そこでXは、この法律の規定が違憲であり、この種の医薬品についてもネットで販売する権利が自らにあることを主張して出訴した。この問題に関する最高裁判所の判決の趣旨として、妥当なものはどれか。

  1. 憲法22条1項が保障するのは職業選択の自由のみであるが、職業活動の内容や態様に関する自由もまた、この規定の精神に照らして十分尊重に値する。後者に対する制約は、公共の福祉のために必要かつ合理的なものであることを要する。
  2. 規制の合憲性を判断する際に問題となる種々の考慮要素を比較考量するのは、第一次的には立法府の権限と責務であり、規制措置の内容や必要性・合理性については、立法府の判断が合理的裁量の範囲にとどまる限り、裁判所はこれを尊重する。
  3. 本件規制は、専らインターネットを介して販売を行う事業者にとっては職業選択の自由そのものに対する制限を意味するため、許可制の場合と同様にその必要性・合理性が厳格に審査されなければならない。
  4. 本件規制は、国民の生命および健康に対する危険の防止という消極目的ないし警察目的のための規制措置であり、この場合は積極目的の場合と異なり、基本的人権への制約がより小さい他の手段では立法目的を達成できないことを要する。
  5. 本件規制は、積極的な社会経済政策の一環として、社会経済の調和的発展を目的に設けられたものであり、この種の規制措置については、裁判所は立法府の政策的、技術的な裁量を尊重することを原則とする。

>解答と解説はこちら


【答え】:2
【解説】本問題は、下記判例(最判令和3.3.18)の内容です。

憲法22条1項は、狭義における職業選択の自由のみならず、職業活動の自由も保障しているところ、職業の自由に対する規制措置は事情に応じて各種各様の形をとるため、その同項適合性を一律に論ずることはできず、その適合性は、具体的な規制措置について、規制の目的、必要性、内容、これによって制限される職業の自由の性質、内容及び制限の程度を検討し、これらを比較考量した上で慎重に決定されなければならない。要指導医薬品について薬剤師の対面による販売又は授与を義務付ける本件各規定は、職業選択の自由そのものに制限を加えるものであるとはいえず、職業活動の内容及び態様に対する規制にとどまるものであることはもとより、その制限の程度が大きいということもできない。本件各規定による規制の目的、必要性、内容、これによって制限される職業の自由の性質、内容及び制限の程度に照らすと、本件各規定による規制に必要性と合理性があるとした判断が、立法府の合理的裁量の範囲を超えるものであるということはできない。

したがって、本件各規定が憲法22条1項に違反するものということはできない。

1.憲法22条1項が保障するのは職業選択の自由のみであるが、職業活動の内容や態様に関する自由もまた、この規定の精神に照らして十分尊重に値する。後者に対する制約は、公共の福祉のために必要かつ合理的なものであることを要する。

1・・・妥当ではない

判例では「憲法22条1項は、狭義における職業選択の自由のみならず、職業活動の自由も保障している」と言っています。

つまり、「憲法22条1項が保障するのは職業選択の自由のみであるが、職業活動の内容や態様に関する自由もまた、この規定の精神に照らして十分尊重に値する。」という本肢は妥当ではありません。

また、「後者に対する制約は、公共の福祉のために必要かつ合理的なものであることを要する。」とも言っていません。

「職業の自由に対する規制措置(制約)は、規制の目的、必要性、内容、これによって制限される職業の自由の性質、内容及び制限の程度を検討し、これらを比較考量した上で慎重に決定されなければならない。」という風に比較考量して判断します。

基本的な考え方が身に付いていない方は、無料講座をご利用ください!

行政書士試験は基本的な知識が必要不可欠です。

それを無料講座では、無料で解説しています!

2.規制の合憲性を判断する際に問題となる種々の考慮要素を比較考量するのは、第一次的には立法府の権限と責務であり、規制措置の内容や必要性・合理性については、立法府の判断が合理的裁量の範囲にとどまる限り、裁判所はこれを尊重する。

2・・・妥当

判例(最大判昭50.4.30、最判令3.3.18)

職業選択の自由に対する規制措置が憲法22条1項にいう公共の福祉のために要求されるものとして是認されるかどうかは、これを一律に論ずることができず、具体的な規制措置について、規制の目的、必要性、内容、これによって制限される職業の自由の性質、内容及び制限の程度を検討し、これらを比較考量したうえで慎重に決定されなければならない。
この場合、右のような検討と考量をするのは、第一次的には立法府の権限と責務であり、裁判所としては、規制の目的が公共の福祉に合致するものと認められる以上、そのための規制措置の具体的内容及びその必要性と合理性については、立法府の判断がその合理的裁量の範囲にとどまるかぎり、立法政策上の問題としてその判断を尊重すべきものである

本肢は上記部分の内容なので、妥当です。

3.本件規制は、専らインターネットを介して販売を行う事業者にとっては職業選択の自由そのものに対する制限を意味するため、許可制の場合と同様にその必要性・合理性が厳格に審査されなければならない。

3・・・妥当ではない

判例(最判令3.3.18)

要指導医薬品について薬剤師の対面による販売又は授与を義務付ける本件各規定は、職業選択の自由そのものに制限を加えるものであるとはいえず、職業活動の内容及び態様に対する規制にとどまるものであることはもとより、その制限の程度が大きいということもできない。

本件規制とは、「要指導医薬品について薬剤師の対面による販売又は授与を義務付ける」を指します。
そして、判例では、「本件規制は、職業選択の自由そのものに制限を加えるものであるとはいえない」といっているので、本肢の「件規制は、専らインターネットを介して販売を行う事業者にとっては職業選択の自由そのものに対する制限を意味する」というのは、妥当ではないです。

4.本件規制は、国民の生命および健康に対する危険の防止という消極目的ないし警察目的のための規制措置であり、この場合は積極目的の場合と異なり、基本的人権への制約がより小さい他の手段では立法目的を達成できないことを要する。

4・・・妥当ではない

本肢の内容は、薬事法距離制限事件(最大判昭50.4.30)の内容で、
「規制をするためには、基本的人権への制約がより小さい他の手段では立法目的を達成できないことが要件」と言っています。

一方、本問の判例では、
「規制(本件規制)の適合性は、具体的な規制措置について、規制の目的、必要性、内容、これによって制限される職業の自由の性質、内容及び制限の程度を検討し、これらを比較考量した上で慎重に決定されなければならない。」
と言っています。

よって、妥当ではないです。

詳細解説は、個別指導で行います!
ここはしっかり理解しておきましょう!

5.本件規制は、積極的な社会経済政策の一環として、社会経済の調和的発展を目的に設けられたものであり、この種の規制措置については、裁判所は立法府の政策的、技術的な裁量を尊重することを原則とする。

5・・・妥当ではない

本問の内容は、「小売市場距離制限事件(最大判昭47.11.22)の内容です。

よって、妥当ではありません。

「積極的な社会経済政策の一環として、社会経済の調和的発展を目的に設けられたもの」というのが「小売市場の許可規制」です。

「小売市場の許可規制」とは、「小売市場を設置するために、許可が必要」という規制です。

8月から逆転合格:模試ad


令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問2|基礎法学

法律用語に関する次のア~オの記述のうち、妥当でないものの組合せはどれか。

ア.「法律要件」とは、法律効果を生じさせる原因となる客観的な事実のことであり、意思表示などの主観的な要素は、これには含まれない。

イ.「法律効果」とは、法律上の権利義務関係の変動(発生、変更または消滅)のことをいう。

ウ.「構成要件」とは、犯罪行為を特徴付ける定型的な外形的事実のことであり、故意などの主観的な要素は、これには含まれない。

エ.「立法事実」とは、法律を制定する場合において、当該立法の合理性を根拠付ける社会的、経済的、政治的または科学的事実のことをいう。

オ.「要件事実」とは、法律要件に該当する具体的な事実のことをいう。

  1. ア・ウ
  2. ア・エ
  3. イ・エ
  4. イ・オ
  5. ウ・オ

>解答と解説はこちら


【答え】:1(ア・ウが妥当ではない)

【解説】
ア.「法律要件」とは、法律効果を生じさせる原因となる客観的な事実のことであり、意思表示などの主観的な要素は、これには含まれない。

ア・・・妥当ではない

「法律要件」とは、法律効果を生じさせる原因となる客観的な事実のことです。
したがって、この点は妥当です。

そして、本肢は「意思表示などの主観的な要素は、これには含まれない。」という点が妥当ではありません。

例えば、売買契約における「売ります」「買います」という意思表示は、売買契約の法律効果を生じさせる原因となります(民法522条1項)。

よって、妥当ではないです。

「理解すべき部分」については、個別指導で解説します!

「理解すべき部分」を理解することが行政書士試験の合格につながります!

イ.「法律効果」とは、法律上の権利義務関係の変動(発生、変更または消滅)のことをいう。

イ・・・妥当

「法律効果」とは、法律上の権利義務関係の変動(発生、変更または消滅)のことを言います。

よって、妥当です。

例えば、売買契約における「売ります」「買います」という意思表示は、売買契約の法律効果を生じさせる原因となり(民法522条1項)、
結果として、所有権が、売主から買主に移転します。
つまり、法律上の権利が変動しています。

ウ.「構成要件」とは、犯罪行為を特徴付ける定型的な外形的事実のことであり、故意などの主観的な要素は、これには含まれない。

ウ・・・妥当ではない

構成要件とは、犯罪が成立するための原則的な要件です。

例えば、刑法235条の窃盗罪は「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」と規定されています。
この「他人の財物を窃取した」が構成要件になります。

そして、本肢は「故意などの主観的な要素は、これには含まれない」が妥当ではないです。

「罪を犯す意思がない行為は、罰しない(刑法38条1項本文)」と規定しており、「故意」といった主観的要素も、構成要件に含まれることが分かります。

例えば、刑法246条の詐欺罪は「人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。」と規定していますが、これは、故意が無ければ成立しない犯罪です。

エ.「立法事実」とは、法律を制定する場合において、当該立法の合理性を根拠付ける社会的、経済的、政治的または科学的事実のことをいう。

エ・・・妥当

立法事実とは、法律(条例等も含む)の目的と手段を基礎付ける社会的な事実(データ、市民の意識などを含みます)をいいます。

例えば、「住宅セーフティネット法」という法律が制定された背景としては下記があり、これが「立法事実」です。

高齢者、障害者、子育て世帯等の住宅の確保に配慮が必要な方が今後も増加する見込み
住宅セーフティネットの根幹である公営住宅については大幅な増加が見込めない
一方で、民間の空き家・空き室は増加している

これらに基づいて

「高齢者、障害者、子育て世帯等の入居を拒まない賃貸住宅」については、国が経済的支援をして、高齢者、障害者、子育て世帯等の入居後押しする法律が「住宅セーフティネット法」です。

このように、しっかり理解を進めながら勉強したい方は、無料講座(1日3問)をご活用ください!

オ.「要件事実」とは、法律要件に該当する具体的な事実のことをいう。

オ・・・妥当

「要件事実」とは、一定の法律効果が発生するために必要な具体的事実をいいます。

例えば、「弁済した」という事実によって、債務が消滅するという法律効果が生じます。
この場合、「弁済した行為」が要件事実です。

そして、法律効果を発生させるためには、一定の要件を満たす必要があります。
その要件が「法律要件」です。

上記でいえば、弁済によって、債務が消滅するという法律効果が発生するので,
「弁済」が法律要件です。

つまり、法律要件に該当する具体的な事実は「弁済をすること=例えば、借りたお金を返すこと」です。

よって、本肢は妥当です。

基本的な部分を理解すれば、行政書士試験は合格できます!

まずは、無料講座(1日3問)で、基本事項を勉強してみてください!

8月から逆転合格:模試ad


令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問1|基礎法学

次の文章の空欄[ ア ]~[ エ ]に当てはまる語句の組合せとして、妥当なものはどれか。

ヨーロッパ大陸において、伝統的に[ ア ]制に対して消極的な態度がとられていることは知られるが、これはそこでの裁判観につながると考えられる。それによれば、裁判官の意見が区々に分れていることを外部に明らかにすることは、裁判所の権威を害するとされる。[ ア ]制は、その先例としての力を弱めるのみではなく、裁判所全体の威信を減退すると考えられているようである。裁判所内部にいかに意見の分裂があっても、[ イ ]として力をもつ[ ウ ]のみが一枚岩のように示されることが、裁判への信頼を生むとされるのであろう。しかし、果たして外観上つねに[ エ ]の裁判の形をとり、異なる意見の表明を抑えることが、裁判所の威信を高めることになるであろうか。英米的な考え方からすると、各裁判官に自らの意見を独自に述べる機会を与える方が、外部からみても裁判官の独立を保障し、司法の威信を増すともいえよう。ここには、大陸的な裁判観と英米的な裁判観のちがいがあるように思われる。

(出典 伊藤正己「裁判官と学者の間」1993年から)

  1. ア:少数意見 イ:判決理由 ウ:主文 エ:多数決
  2. ア:合議 イ:判例 ウ:多数意見 エ:全員一致
  3. ア:少数意見 イ:判例 ウ:多数意見 エ:全員一致
  4. ア:合議 イ:判決理由 ウ:主文 エ:多数決
  5. ア:少数意見 イ:判例 ウ:主文 エ:多数決

>解答と解説はこちら


【答え】:3(ア:少数意見、イ:判例、ウ:多数意見、エ:全員一致)

【解説】

ヨーロッパ大陸において、伝統的に[ ア:少数意見 ]制に対して消極的な態度がとられていることは知られるが、これはそこでの裁判観につながると考えられる。それによれば、裁判官の意見が区々に分れていることを外部に明らかにすることは、裁判所の権威を害するとされる。[ ア:少数意見 ]制は、その先例としての力を弱めるのみではなく、裁判所全体の威信を減退すると考えられているようである。裁判所内部にいかに意見の分裂があっても、[ イ:判例 ]として力をもつ[ ウ:多数意見 ]のみが一枚岩のように示されることが、裁判への信頼を生むとされるのであろう。しかし、果たして外観上つねに[ エ:全員一致 ]の裁判の形をとり、異なる意見の表明を抑えることが、裁判所の威信を高めることになるであろうか。英米的な考え方からすると、各裁判官に自らの意見を独自に述べる機会を与える方が、外部からみても裁判官の独立を保障し、司法の威信を増すともいえよう。ここには、大陸的な裁判観と英米的な裁判観のちがいがあるように思われる。

(出典 伊藤正己「裁判官と学者の間」1993年から)

ア.ヨーロッパ大陸において、伝統的に[ ア ]制に対して消極的な態度がとられていることは知られるが、これはそこでの裁判観につながると考えられる。それによれば、裁判官の意見が区々に分れていることを外部に明らかにすることは、裁判所の権威を害するとされる。

ア・・・少数意見

「ヨーロッパ大陸において、伝統的に[ ア ]制に対して消極的な態度がとられていることは知られる」
という部分から、ヨーロッパ大陸(例えば、イギリスやドイツ、フランス)では、裁判は合議制が採られています。
つまり、アに「合議」を入れたら、上記内容と矛盾します。

したがって、アには「少数意見」が入ります。

また、「[ ア ]制について、裁判所の権威を害するとされる。」
と書いてあります。

「少数意見制」とは、裁判官の少数意見についても尊重するという考え方に基づいています。
最高裁の判決は、「多数決の原則」により、多数派の意見が通るのですが、この少数意見を尊重しすぎると、結果として、裁判所の判断にブレが生じることになり、裁判所の権威を害することとなります。

ウ.[ イ ]として力をもつ[ ウ ]のみが一枚岩のように示されること

ウ・・・多数意見

ウの方が分かりやすいので、ウから考えます。
ウには「主文」か「多数意見」が入ります。

「一枚岩」とは、組織が、内部に分裂や対立を含まず、しっかりとまとまっていることを意味します。
このことから考えると、ウには、「主文」は入らないです。
多数意見」を入れれば、「多数意見のみが一枚岩のように示される」という事になります。

イ.[ イ ]として力をもつ[ ウ:多数意見 ]のみが一枚岩のように示されること

イ・・・判例

「判決理由としての力をもつ多数意見」なのか「判例としての力を持つ多数意見」なのかを考えると、「判例」が妥当です。

多数意見が、裁判所の判断(判例)となるからです。

最高裁判所は多数決で最終的な判断が下されます。

エ.[イ:判例]として力をもつ[ウ:多数意見]のみが一枚岩のように示されることが、裁判への信頼を生むとされるのであろう。しかし、果たして外観上つねに[ エ ]の裁判の形をとり、異なる意見の表明を抑えることが、裁判所の威信を高めることになるであろうか。

エ・・・全員一致

上記文章を言い換えていきます。

判例としての力を持つ多数意見のみが一枚岩にように示されることが裁判への信頼を生む。
しかし、
[ エ ]の裁判の形をとり、異なる意見の表明を抑えることが、裁判所の威信を高めることになるであろうか。

判例として、1つの判断として示すことが裁判の信頼を生む。
しかし、
1つの判断として示して、他の意見を示さないことが、裁判所の威信を高めることになるであろうか。

「1つの判断として示して」=「外観上つねに[ エ ]の裁判の形をとること」
となります。

よって、エには「全員一致」が入ります。

8月から逆転合格:模試ad


令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略