機械部品の製造販売を行うAは、材料供給者Bと継続的取引関係を結ぶにあたり、A所有の甲土地に、極度額5,000万円、被担保債権の範囲を「BのAに対する材料供給にかかる継続的取引関係から生じる債権」とする第1順位の根抵当権(以下「本件根抵当権」という。)をBのために設定してその旨の登記をした。その後、AはCから事業資金の融資を受け、その債務の担保として甲土地に第2順位の普通抵当権をCのために設定した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし、明らかに誤っているものはどれか。
- 本件根抵当権について元本確定期日が定められていない場合、Aは、根抵当権の設定から3年が経過したときに元本確定を請求することができ、Bは、いつでも元本確定を請求することができる。
- 本件根抵当権について元本確定前に被担保債権の範囲を変更する場合、Cの承諾は不要であるが、その変更について元本確定前に登記をしなかったときは、その変更をしなかったものとみなす。
- 本件根抵当権について元本が確定した後、当該確定した元本の額が極度額に満たない場合には、Aは、Bに対して、極度額を法の定める額に減額することを請求することができる。
- 本件根抵当権について元本が確定した後、当該確定した元本の額が極度額に満たない場合には、Bは、当該確定した元本に係る最後の2年分の利息、損害金については、極度額を超えても、本件根抵当権を行使して優先弁済を受けることができる。
- 本件根抵当権について元本が確定する前に、BがAに対して有する材料供給にかかる債権の一部をDに譲渡した場合、当該債権譲渡の対抗要件を具備していても、Dは、当該譲渡された債権について根抵当権を行使することはできない。
【答え】:4
【解説】
1.機械部品の製造販売を行うAは、材料供給者Bと継続的取引関係を結ぶにあたり、A所有の甲土地に、極度額5,000万円、被担保債権の範囲を「BのAに対する材料供給にかかる継続的取引関係から生じる債権」とする第1順位の根抵当権(本件根抵当権)をBのために設定してその旨の登記をした。その後、AはCから事業資金の融資を受け、その債務の担保として甲土地に第2順位の普通抵当権をCのために設定した。
本件根抵当権について元本確定期日が定められていない場合、Aは、根抵当権の設定から3年が経過したときに元本確定を請求することができ、Bは、いつでも元本確定を請求することができる。
1・・・正しい
【根抵当権設定者から元本確定請求をした場合】
元本確定期日が定められていない場合、根抵当権設定者は、根抵当権の設定の時から3年を経過したときは、担保すべき元本の確定を請求することができます。そして、この場合の元本確定日は、その請求の時から2週間を経過したときです(民法398条の19第1項)。
【根抵当権者から元本確定請求をした場合】
根抵当権者は、いつでも、担保すべき元本の確定を請求することができ、担保すべき元本は、その請求の時に確定します(民法398条の19第2項)。
よって、
根抵当権設定者Aは、根抵当権の設定の時から3年を経過したときは、元本の確定を請求することができ、
根抵当権者Bは、いつでも、担保すべき元本の確定を請求することができます。
これはどちらも基本事項です!
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2.機械部品の製造販売を行うAは、材料供給者Bと継続的取引関係を結ぶにあたり、A所有の甲土地に、極度額5,000万円、被担保債権の範囲を「BのAに対する材料供給にかかる継続的取引関係から生じる債権」とする第1順位の根抵当権(本件根抵当権)をBのために設定してその旨の登記をした。その後、AはCから事業資金の融資を受け、その債務の担保として甲土地に第2順位の普通抵当権をCのために設定した。
本件根抵当権について元本確定前に被担保債権の範囲を変更する場合、Cの承諾は不要であるが、その変更について元本確定前に登記をしなかったときは、その変更をしなかったものとみなす。
2・・・正しい
元本の確定前においては、根抵当権の担保すべき債権(被担保債権)の範囲の変更をすることができます(民法398条の4第1項)。
そして、被担保債権の範囲の変更するに当たって、「後順位抵当権者」の承諾はいりません(民法398条の4第2項)。
また、元本の確定前に登記をしなかったときは、その変更をしなかったものとみなされます(民法398条の4第3項)。
よって、本肢は正しいです。
3.機械部品の製造販売を行うAは、材料供給者Bと継続的取引関係を結ぶにあたり、A所有の甲土地に、極度額5,000万円、被担保債権の範囲を「BのAに対する材料供給にかかる継続的取引関係から生じる債権」とする第1順位の根抵当権(本件根抵当権)をBのために設定してその旨の登記をした。その後、AはCから事業資金の融資を受け、その債務の担保として甲土地に第2順位の普通抵当権をCのために設定した。
本件根抵当権について元本が確定した後、当該確定した元本の額が極度額に満たない場合には、Aは、Bに対して、極度額を法の定める額に減額することを請求することができる。
3・・・正しい
元本の確定「後」においては、根抵当権設定者は、その根抵当権の極度額を、「現に存する債務の額と以後2年間に生ずべき利息その他の定期金及び債務の不履行による損害賠償の額とを加えた額」に減額することを請求することができます(民法398条の21第1項)。
よって、根抵当権について元本が確定した後、当該確定した元本の額が極度額に満たない場合には、
根抵当権設定者Aは、根抵当権者Bに対して、極度額を法の定める額(「①現に存する債務の額」と「②以後2年間に生ずべき利息その他の定期金及び債務の不履行による損害賠償の額」とを加えた額)に減額することを請求することができます。
ちょっと、ややこしいので、個別指導で分かりやすく解説します!
4.機械部品の製造販売を行うAは、材料供給者Bと継続的取引関係を結ぶにあたり、A所有の甲土地に、極度額5,000万円、被担保債権の範囲を「BのAに対する材料供給にかかる継続的取引関係から生じる債権」とする第1順位の根抵当権(本件根抵当権)をBのために設定してその旨の登記をした。その後、AはCから事業資金の融資を受け、その債務の担保として甲土地に第2順位の普通抵当権をCのために設定した。
本件根抵当権について元本が確定した後、当該確定した元本の額が極度額に満たない場合には、Bは、当該確定した元本に係る最後の2年分の利息、損害金については、極度額を超えても、本件根抵当権を行使して優先弁済を受けることができる。
4・・・誤り
本肢は「限度額を超えても」という部分が誤りです。
そもそも「根抵当権の極度額」とは、根抵当権者が、根抵当権に基づいて優先弁済を受ける最大限度額のことを言います。
つまり、「元本+利息+遅延損害金等」を含めて、極度額までしか保証(担保)されないということです。
本肢でいえば、最大5000万円までしか保証されないので、もし「元本+利息+遅延損害金等」の合計額が6000万円だったとしても、本件根抵当権を行使して優先弁済を受けることができる上限は5000万円までということです。
5.機械部品の製造販売を行うAは、材料供給者Bと継続的取引関係を結ぶにあたり、A所有の甲土地に、極度額5,000万円、被担保債権の範囲を「BのAに対する材料供給にかかる継続的取引関係から生じる債権」とする第1順位の根抵当権(本件根抵当権)をBのために設定してその旨の登記をした。その後、AはCから事業資金の融資を受け、その債務の担保として甲土地に第2順位の普通抵当権をCのために設定した。
本件根抵当権について元本が確定する前に、BがAに対して有する材料供給にかかる債権の一部をDに譲渡した場合、当該債権譲渡の対抗要件を具備していても、Dは、当該譲渡された債権について根抵当権を行使することはできない。
5・・・正しい
「元本確定前」に根抵当権者から債権を取得した者は、その債権について根抵当権を行使することができません(民法398条の7第1項前段)。
これは「根抵当権に随伴性がない」ということを表しています。
つまり、元本確定前に債権が譲渡されても、その債権は当該根抵当権によって保証(担保)されないということです。
よって、根抵当権者Bが、根抵当権設定者Aに対して有する材料供給にかかる債権の一部をDに譲渡して債権譲渡の対抗要件を備えたとしても、Dは譲渡された債権について根抵当権を行使することはできません。
したがって、正しいです。
ちなみに、Dは、保証なく、債権のみを譲り受けたことになります。
令和4年(2022年)過去問
問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法 |
---|---|---|---|
問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法 |
問3 | 憲法 | 問33 | 民法 |
問4 | 憲法 | 問34 | 民法 |
問5 | 憲法 | 問35 | 民法 |
問6 | 憲法 | 問36 | 商法 |
問7 | 憲法 | 問37 | 会社法 |
問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
問10 | 行政法 | 問40 | 会社法 |
問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法 |
問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法 |
問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
問16 | 行政不服審査法 | 問46 | 民法・40字 |
問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識 |
問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識 |
問19 | 行政事件訴訟法 | 問49 | 基礎知識 |
問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識 |
問21 | 国家賠償法 | 問51 | 基礎知識 |
問22 | 地方自治法 | 問52 | 基礎知識 |
問23 | 地方自治法 | 問53 | 基礎知識 |
問24 | 地方自治法 | 問54 | 基礎知識 |
問25 | 行政法 | 問55 | 基礎知識 |
問26 | 行政法 | 問56 | 基礎知識 |
問27 | 民法 | 問57 | 基礎知識 |
問28 | 民法 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
問29 | 民法 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
問30 | 民法 | 問60 | 著作権の関係上省略 |