令和4年度(2022年度)過去問

令和4年・2022|問29|民法

機械部品の製造販売を行うAは、材料供給者Bと継続的取引関係を結ぶにあたり、A所有の甲土地に、極度額5,000万円、被担保債権の範囲を「BのAに対する材料供給にかかる継続的取引関係から生じる債権」とする第1順位の根抵当権(以下「本件根抵当権」という。)をBのために設定してその旨の登記をした。その後、AはCから事業資金の融資を受け、その債務の担保として甲土地に第2順位の普通抵当権をCのために設定した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし、明らかに誤っているものはどれか。

  1. 本件根抵当権について元本確定期日が定められていない場合、Aは、根抵当権の設定から3年が経過したときに元本確定を請求することができ、Bは、いつでも元本確定を請求することができる。
  2. 本件根抵当権について元本確定前に被担保債権の範囲を変更する場合、Cの承諾は不要であるが、その変更について元本確定前に登記をしなかったときは、その変更をしなかったものとみなす。
  3. 本件根抵当権について元本が確定した後、当該確定した元本の額が極度額に満たない場合には、Aは、Bに対して、極度額を法の定める額に減額することを請求することができる。
  4. 本件根抵当権について元本が確定した後、当該確定した元本の額が極度額に満たない場合には、Bは、当該確定した元本に係る最後の2年分の利息、損害金については、極度額を超えても、本件根抵当権を行使して優先弁済を受けることができる。
  5. 本件根抵当権について元本が確定する前に、BがAに対して有する材料供給にかかる債権の一部をDに譲渡した場合、当該債権譲渡の対抗要件を具備していても、Dは、当該譲渡された債権について根抵当権を行使することはできない。

>解答と解説はこちら


【答え】:4

【解説】

1.機械部品の製造販売を行うAは、材料供給者Bと継続的取引関係を結ぶにあたり、A所有の甲土地に、極度額5,000万円、被担保債権の範囲を「BのAに対する材料供給にかかる継続的取引関係から生じる債権」とする第1順位の根抵当権(本件根抵当権)をBのために設定してその旨の登記をした。その後、AはCから事業資金の融資を受け、その債務の担保として甲土地に第2順位の普通抵当権をCのために設定した。

本件根抵当権について元本確定期日が定められていない場合、Aは、根抵当権の設定から3年が経過したときに元本確定を請求することができ、Bは、いつでも元本確定を請求することができる。

1・・・正しい

行政書士:令和4年問29の問題の状況図
【根抵当権設定者から元本確定請求をした場合】

元本確定期日が定められていない場合、根抵当権設定者は、根抵当権の設定の時から3年を経過したときは、担保すべき元本の確定を請求することができます。そして、この場合の元本確定日は、その請求の時から2週間を経過したときです(民法398条の19第1項)。

【根抵当権者から元本確定請求をした場合】

根抵当権者は、いつでも、担保すべき元本の確定を請求することができ、担保すべき元本は、その請求の時に確定します(民法398条の19第2項)。

よって、

根抵当権設定者Aは、根抵当権の設定の時から3年を経過したときは、元本の確定を請求することができ、

根抵当権者Bは、いつでも、担保すべき元本の確定を請求することができます。

これはどちらも基本事項です!

基本事項の積み重ねが、行政書士試験合格の第一歩です。

この第一歩は、無料講座で、教えているのでぜひご活用ください!

2.機械部品の製造販売を行うAは、材料供給者Bと継続的取引関係を結ぶにあたり、A所有の甲土地に、極度額5,000万円、被担保債権の範囲を「BのAに対する材料供給にかかる継続的取引関係から生じる債権」とする第1順位の根抵当権(本件根抵当権)をBのために設定してその旨の登記をした。その後、AはCから事業資金の融資を受け、その債務の担保として甲土地に第2順位の普通抵当権をCのために設定した。

本件根抵当権について元本確定前に被担保債権の範囲を変更する場合、Cの承諾は不要であるが、その変更について元本確定前に登記をしなかったときは、その変更をしなかったものとみなす。

2・・・正しい

元本の確定前においては、根抵当権の担保すべき債権(被担保債権)の範囲の変更をすることができます(民法398条の4第1項)。

そして、被担保債権の範囲の変更するに当たって、「後順位抵当権者」の承諾はいりません(民法398条の4第2項)。

また、元本の確定前に登記をしなかったときは、その変更をしなかったものとみなされます(民法398条の4第3項)。

よって、本肢は正しいです。

3.機械部品の製造販売を行うAは、材料供給者Bと継続的取引関係を結ぶにあたり、A所有の甲土地に、極度額5,000万円、被担保債権の範囲を「BのAに対する材料供給にかかる継続的取引関係から生じる債権」とする第1順位の根抵当権(本件根抵当権)をBのために設定してその旨の登記をした。その後、AはCから事業資金の融資を受け、その債務の担保として甲土地に第2順位の普通抵当権をCのために設定した。

本件根抵当権について元本が確定した後、当該確定した元本の額が極度額に満たない場合には、Aは、Bに対して、極度額を法の定める額に減額することを請求することができる。

3・・・正しい

元本の確定「後」においては、根抵当権設定者は、その根抵当権の極度額を、「現に存する債務の額と以後2年間に生ずべき利息その他の定期金及び債務の不履行による損害賠償の額とを加えた額」に減額することを請求することができます(民法398条の21第1項)。

よって、根抵当権について元本が確定した後、当該確定した元本の額が極度額に満たない場合には、
根抵当権設定者Aは、根抵当権者Bに対して、極度額を法の定める額(「①現に存する債務の額」と「②以後2年間に生ずべき利息その他の定期金及び債務の不履行による損害賠償の額」とを加えた額)に減額することを請求することができます。

ちょっと、ややこしいので、個別指導で分かりやすく解説します!

4.機械部品の製造販売を行うAは、材料供給者Bと継続的取引関係を結ぶにあたり、A所有の甲土地に、極度額5,000万円、被担保債権の範囲を「BのAに対する材料供給にかかる継続的取引関係から生じる債権」とする第1順位の根抵当権(本件根抵当権)をBのために設定してその旨の登記をした。その後、AはCから事業資金の融資を受け、その債務の担保として甲土地に第2順位の普通抵当権をCのために設定した。

本件根抵当権について元本が確定した後、当該確定した元本の額が極度額に満たない場合には、Bは、当該確定した元本に係る最後の2年分の利息、損害金については、極度額を超えても、本件根抵当権を行使して優先弁済を受けることができる。

4・・・誤り

本肢は「限度額を超えても」という部分が誤りです。

そもそも「根抵当権の極度額」とは、根抵当権者が、根抵当権に基づいて優先弁済を受ける最大限度額のことを言います。

つまり、「元本+利息+遅延損害金等」を含めて、極度額までしか保証(担保)されないということです。

本肢でいえば、最大5000万円までしか保証されないので、もし「元本+利息+遅延損害金等」の合計額が6000万円だったとしても、本件根抵当権を行使して優先弁済を受けることができる上限は5000万円までということです。

5.機械部品の製造販売を行うAは、材料供給者Bと継続的取引関係を結ぶにあたり、A所有の甲土地に、極度額5,000万円、被担保債権の範囲を「BのAに対する材料供給にかかる継続的取引関係から生じる債権」とする第1順位の根抵当権(本件根抵当権)をBのために設定してその旨の登記をした。その後、AはCから事業資金の融資を受け、その債務の担保として甲土地に第2順位の普通抵当権をCのために設定した。

本件根抵当権について元本が確定する前に、BがAに対して有する材料供給にかかる債権の一部をDに譲渡した場合、当該債権譲渡の対抗要件を具備していても、Dは、当該譲渡された債権について根抵当権を行使することはできない。

5・・・正しい

「元本確定前」に根抵当権者から債権を取得した者は、その債権について根抵当権を行使することができません(民法398条の7第1項前段)。

これは「根抵当権に随伴性がない」ということを表しています。

つまり、元本確定前に債権が譲渡されても、その債権は当該根抵当権によって保証(担保)されないということです。

よって、根抵当権者Bが、根抵当権設定者Aに対して有する材料供給にかかる債権の一部をDに譲渡して債権譲渡の対抗要件を備えたとしても、Dは譲渡された債権について根抵当権を行使することはできません。

したがって、正しいです。

ちなみに、Dは、保証なく、債権のみを譲り受けたことになります。

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令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問30|民法

Aは、BにCから贈与を受けた動産甲を売却する旨の契約(以下「本件契約」という。)をBと締結したが、引渡し期日が過ぎても動産甲の引渡しは行われていない。この場合についての次の記述のうち、民法の規定に照らし、正しいものはどれか。

  1. 本件契約に「Cが亡くなった後に引き渡す」旨が定められていた場合、Cの死亡後にBから履行請求があったとしても、Aが実際にCの死亡を知るまではAの履行遅滞の責任は生じない。
  2. 動産甲が、契約締結前に生じた自然災害により滅失していたために引渡しが不能である場合、本件契約は、その成立の時に不能であるから、Aは、Bに履行の不能によって生じた損害を賠償する責任を負わない。
  3. 動産甲の引渡しについて、Aが履行補助者であるDを用いた場合、Dの過失により甲が滅失し引渡しができないときには、Aに当然に債務不履行責任が認められる。
  4. 動産甲が本件契約締結後引渡しまでの間にA・B双方責めに帰すことができない事由によって滅失したときは、Aの引渡し債務は不能により消滅するが、Bの代金債務は消滅しないから、Bは、Aからの代金支払請求に応じなければならない。
  5. Aが本件契約に基づき動産甲をBのもとに持参して引き渡そうとしたが、Bがその受領を拒んだ場合、その後にA・B双方の責めに帰すことができない事由によって甲が滅失したときは、Bは、本件契約の解除をすることも、Aからの代金支払請求を拒絶することもできない。

>解答と解説はこちら


【答え】:5

【解説】

1.Aは、BにCから贈与を受けた動産甲を売却する旨の契約(本件契約)をBと締結したが、引渡し期日が過ぎても動産甲の引渡しは行われていない。

本件契約に「Cが亡くなった後に引き渡す」旨が定められていた場合、Cの死亡後にBから履行請求があったとしても、Aが実際にCの死亡を知るまではAの履行遅滞の責任は生じない。

1・・・誤り

「Cが亡くなった後に引き渡す」旨の定めは、「不確定期限」です。

「不確定期限」は、必ず起きるけど、それがいつ起こるか分からない場合に使います。

債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、①その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又は②その期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負います(民法412条2項)。

①と②のどちらか一方でも満たせば、履行遅滞責任を負うので、
Cの死亡後にBから履行請求があった場合、Aが実際にCの死亡を知らなくても、Aの履行遅滞の責任は生じるので、本肢は誤りです。

2.Aは、BにCから贈与を受けた動産甲を売却する旨の契約(本件契約)をBと締結したが、引渡し期日が過ぎても動産甲の引渡しは行われていない。

動産甲が、契約締結前に生じた自然災害により滅失していたために引渡しが不能である場合、本件契約は、その成立の時に不能であるから、Aは、Bに履行の不能によって生じた損害を賠償する責任を負わない。

2・・・誤り

契約成立時に、すでに引渡しが不能であっても、売主Aは、買主Bに履行不能に基づく損害を賠償する責任を負います。

よって、本肢は誤りです。

契約時に履行不能だから、「契約は無効」と考えないように注意しましょう!

契約時に履行不能であっても、契約は有効であり、履行できないから損害が発生したら、賠償請求されるという流れです。

3.Aは、BにCから贈与を受けた動産甲を売却する旨の契約(本件契約)をBと締結したが、引渡し期日が過ぎても動産甲の引渡しは行われていない。

動産甲の引渡しについて、Aが履行補助者であるDを用いた場合、Dの過失により甲が滅失し引渡しができないときには、Aに当然に債務不履行責任が認められる。

3・・・誤り

動産甲の引渡しについて、Aが履行補助者であるDを用いた場合、Dの過失により甲が滅失し引渡しができないときには、Aに当然に債務不履行責任が認められるわけではないので誤りです。

4.Aは、BにCから贈与を受けた動産甲を売却する旨の契約(本件契約)をBと締結したが、引渡し期日が過ぎても動産甲の引渡しは行われていない。

動産甲が本件契約締結後引渡しまでの間にA・B双方責めに帰すことができない事由によって滅失したときは、Aの引渡し債務は不能により消滅するが、Bの代金債務は消滅しないから、Bは、Aからの代金支払請求に応じなければならない。

4・・・誤り

当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができます(民法536条1項)。

「A・B双方責めに帰すことができない事由」とは、例えば、天災(津波)などです。

例えば、津波によって動産甲が壊れて使い物にならなくなった(=滅失した)ときは、
売主Aの引渡義務は履行不能により消滅します。

一方、買主Bは、売主Aから動産甲の引渡しを受けていないので、「反対給付である代金支払」を行う必要はありません(=代金支払請求を拒絶できる)。

よって、誤りです。

5.Aは、BにCから贈与を受けた動産甲を売却する旨の契約(本件契約)をBと締結したが、引渡し期日が過ぎても動産甲の引渡しは行われていない。

Aが本件契約に基づき動産甲をBのもとに持参して引き渡そうとしたが、Bがその受領を拒んだ場合、その後にA・B双方の責めに帰すことができない事由によって甲が滅失したときは、Bは、本件契約の解除をすることも、Aからの代金支払請求を拒絶することもできない。

5・・・正しい

債権者(買主B)が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、債権者(買主B)の責めに帰すべき事由によるものとみなします(民法413条の2第2項)。

そして、債務の不履行が債権者(買主B)の責めに帰すべき事由によるものであるときは、債権者(買主B)は、契約解除ができません(民法543条)。

また、債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができません(民法536条2項前段)。

よって、買主Bは、契約の解除をすることも、「反対給付である代金支払」を拒絶することもできないので正しいです。

基本事項も体系立てて頭に入れると、さらに頭が整理されて忘れにくくなります

無料講座でも、体系立てた解説を行っておりますので、整理できていない方は、無料講座をお気軽にご活用ください!

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令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問32|民法

Aは、Bとの間でA所有の甲建物の賃貸借契約を締結し、甲建物を引き渡したが、その後、Aは、同建物をCに譲渡した。Aは、同賃貸借契約締結時にBから敷金を提供され、それを受け取っていた。この場合についての次の記述のうち、民法の規定に照らし、誤っているものはどれか。

  1. 甲建物についてのAのBに対する賃貸人たる地位は、Bの承諾を要しないで、AとCとの合意により、Cに移転させることができる。
  2. 甲建物の譲渡によるCへの賃貸人たる地位の移転は、甲建物についてAからCへの所有権移転登記をしなければ、Bに対抗することができない。
  3. AとCが甲建物の賃貸人たる地位をAに留保する旨の合意および甲建物をCがAに賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位はCに移転しない。
  4. 賃貸人たる地位がCに移転した場合、Bは、Cの承諾を得なければ、甲建物の賃借権を譲り渡すことはできないが、甲建物を転貸するときは、Cの承諾を要しない。
  5. 賃貸人たる地位がCに移転した場合、敷金の返還に係る債務はCに承継され、Cが、Bに対し、その債務を負う。

>解答と解説はこちら


【答え】:4

【解説】

1.Aは、Bとの間でA所有の甲建物の賃貸借契約を締結し、甲建物を引き渡したが、その後、Aは、同建物をCに譲渡した。Aは、同賃貸借契約締結時にBから敷金を提供され、それを受け取っていた。

甲建物についてのAのBに対する賃貸人たる地位は、Bの承諾を要しないで、AとCとの合意により、Cに移転させることができる。

1・・・正しい

賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転します(民法605条の2第1項)。

建物の賃貸借の場合「引渡し」又は「賃借権の登記」により対抗要件を備えます(民法605条、借地借家法31条)。

そして、本肢の場合、Bは甲建物の引渡しを受けているため、賃貸借の対抗要件(対抗力)を備えています。

したがって、甲建物についてのAのBに対する賃貸人たる地位は、Bの承諾を要しないで、Cに移転します。

これは基本事項です!

基本事項の積み重ねが、行政書士試験合格の第一歩です。

この第一歩は、無料講座で、教えているのでぜひご活用ください!

2.Aは、Bとの間でA所有の甲建物の賃貸借契約を締結し、甲建物を引き渡したが、その後、Aは、同建物をCに譲渡した。Aは、同賃貸借契約締結時にBから敷金を提供され、それを受け取っていた。

甲建物の譲渡によるCへの賃貸人たる地位の移転は、甲建物についてAからCへの所有権移転登記をしなければ、Bに対抗することができない。

2・・・正しい

賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができません(民法605条の2第3項)。

よって、本肢は正しいです。

3.Aは、Bとの間でA所有の甲建物の賃貸借契約を締結し、甲建物を引き渡したが、その後、Aは、同建物をCに譲渡した。Aは、同賃貸借契約締結時にBから敷金を提供され、それを受け取っていた。

AとCが甲建物の賃貸人たる地位をAに留保する旨の合意および甲建物をCがAに賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位はCに移転しない。

3・・・正しい

不動産の譲渡人及び譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及びその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は、譲受人に移転しません(民法605条の2第2項前段)。

つまり、AC間で「賃貸人は引き続きAのままにしましょう!」と合意した場合、賃貸人は、「建物の新所有者C」ではなく、そのままAとなります。

4.Aは、Bとの間でA所有の甲建物の賃貸借契約を締結し、甲建物を引き渡したが、その後、Aは、同建物をCに譲渡した。Aは、同賃貸借契約締結時にBから敷金を提供され、それを受け取っていた。

賃貸人たる地位がCに移転した場合、Bは、Cの承諾を得なければ、甲建物の賃借権を譲り渡すことはできないが、甲建物を転貸するときは、Cの承諾を要しない。

4・・・誤り

賃借人Bは、賃貸人Cの承諾を得なければ、「その賃借権を譲り渡し」、又は「賃借物を転貸すること」ができません(民法612条1項)。

よって、本肢は「甲建物を転貸するときは、Cの承諾を要しない。」と言う部分が誤りです。

正しくは「甲建物を転貸するときは、Cの承諾を要する」です。

※ 賃借人が賃貸人の承諾を得ず第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができます(民法612条2項)。

ただし、背信的行為と認められない場合は、解除できません(最判昭31.5.8)。

5.Aは、Bとの間でA所有の甲建物の賃貸借契約を締結し、甲建物を引き渡したが、その後、Aは、同建物をCに譲渡した。Aは、同賃貸借契約締結時にBから敷金を提供され、それを受け取っていた。

賃貸人たる地位がCに移転した場合、敷金の返還に係る債務はCに承継され、Cが、Bに対し、その債務を負う。

5・・・正しい

賃貸人たる地位が譲受人C又はその承継人に移転したときは、費用の償還に係る債務及び敷金の返還に係る債務は、譲受人C又はその承継人が承継します(民法605条の2第4項)。

よって、敷金の返還に係る債務は新賃貸人C(譲受人)に承継され、Cが、Bに対し、その債務を負います。

したがって、本肢は正しいです。

※ 旧賃貸人Aに差し入れられた敷金は、未払賃料債務があれば、当然充当され、残額についてその権利義務関係が新賃貸人Cに承継されます(最判昭44.7.17)。

これがどういうことを言っているかは、個別指導で解説します!

この辺りは理解しておかないと、ヒッカケ問題に引っかかります。。。。

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令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問33|民法

法定利率に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. 利息付金銭消費貸借契約において、利息について利率の定めがなかったときは、利息の利率は借主が金銭を受け取った日の法定利率による。
  2. 利息付金銭消費貸借契約において、当初適用された法定利率が変動したときは、当該消費貸借の利息に適用される法定利率も一緒に変動する。
  3. 利息付金銭消費貸借契約において、利息について利率の定めがあったが遅延損害の額の定めがなかった場合に、当該利息の約定利率が法定利率より低かったときは、遅延損害の額は法定利率によって定める。
  4. 不法行為に基づく損害賠償において、遅延損害金は、原則として不法行為時の法定利率によって定める。
  5. 将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において、その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは、その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により、これをする。

>解答と解説はこちら


【答え】:2

【解説】
1.利息付金銭消費貸借契約において、利息について利率の定めがなかったときは、利息の利率は借主が金銭を受け取った日の法定利率による。

1・・・妥当

利息について定めをして、利率について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点(金銭を受け取った日)における「法定利率」になります(民法404条1項)。

ただし、この法定利率は、3年ごとに見直しがされ(民法404条3項)、見直し時期は「令和5年4月1日、令和8年4月1日、令和11年4月1日・・・」となります。

令和5年1月1日時点では、法定利率は「3%」です(民法404条2項)。

2.利息付金銭消費貸借契約において、当初適用された法定利率が変動したときは、当該消費貸借の利息に適用される法定利率も一緒に変動する。

2・・・妥当ではない

利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率によります(民法404条1項)。

したがって、利息付金銭消費貸借契約において、当初適用された法定利率が変動があったとしても、当該債権に適用される利率は変動しません。

どういうことを言っているかは、個別指導で解説します!

この辺りは簡単に理解できます!

理解して、行政書士試験を一発で合格しましょう!

3.利息付金銭消費貸借契約において、利息について利率の定めがあったが遅延損害の額の定めがなかった場合に、当該利息の約定利率が法定利率より低かったときは、遅延損害の額は法定利率によって定める。

3・・・妥当

金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率となります。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率となります(民法419条1項)。

つまり、利息の約定利率が法定利率を超えないとき(低かったとき)は、損害賠償の額(遅延損害の額)は「法定利率」となります。

よって、妥当です。

4.不法行為に基づく損害賠償において、遅延損害金は、原則として不法行為時の法定利率によって定める。

4・・・妥当

金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率となります(民法419条1項本文)。

そして、不法行為に基づく損害賠償請求権について、履行遅滞(債務不履行)となる時期(起算点)は、「不法行為があった時」です(最判昭37.9.4)。

つまり、不法行為があった瞬間から、加害者は損害賠償金を支払う義務を負い、その瞬間から遅延損害金が発生していることになります。
(実際は、損害額や治療費等をそのまま払えば済む場合が多いです。)

上記をまとめると、

不法行為に基づく損害賠償において、遅延損害金は、原則として不法行為時の法定利率によって定めることになるので、本肢は、妥当です。

5.将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において、その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは、その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により、これをする。

5・・・妥当

将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において、その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは、その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により、これをする(民法417条の2第1項)。

これはどういうことか理解した方がよい部分なので、個別指導で解説します。

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令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問34|民法

不法行為に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 未成年者が他人に損害を加えた場合、道徳上の是非善悪を判断できるだけの能力があるときは、当該未成年者は、損害賠償の責任を負う。
  2. 精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、過失によって一時的にその状態を招いたとしても、損害賠償の責任を負わない。
  3. 野生の熊が襲ってきたので自己の身を守るために他人の宅地に飛び込み板塀を壊した者には、正当防衛が成立する。
  4. 路上でナイフを振り回して襲ってきた暴漢から自己の身を守るために他人の家の窓を割って逃げ込んだ者には、緊急避難が成立する。
  5. 路上でナイフを持った暴漢に襲われた者が自己の身を守るために他人の家の窓を割って逃げ込んだ場合、窓を壊された被害者は、窓を割った者に対して損害賠償を請求できないが、当該暴漢に対しては損害賠償を請求できる。

>解答と解説はこちら


【答え】:5

【解説】
1.未成年者が他人に損害を加えた場合、道徳上の是非善悪を判断できるだけの能力があるときは、当該未成年者は、損害賠償の責任を負う。

1・・・妥当ではない

未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負いません(民法712条:責任能力)。

ここで「自己の行為の責任を弁識するに足りる知能」とは、道徳上不正の行為たることを弁識する知能の意にあらず加害行為の法律上の責任を弁識するに足るべき知能を指すものと解するを相当とする(大判大6.4.30)」としている。

イメージとしては、おおよそ12歳から13歳以上であれば責任能力ありと考えられているのですが、
上記どういうことを言っているのかは、個別指導で解説します。

こういった判例は、内容を理解することが重要です。

単に、言葉だけを覚えても使い物にならず、本試験ではヒッカケ問題に引っかかってしまいます

しっかり理解しておきましょう!

2.精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、過失によって一時的にその状態を招いたとしても、損害賠償の責任を負わない。

2・・・妥当ではない

精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、原則、損害賠償責任を負いません(民法713条本文)。

ただし例外として、故意又は過失によって一時的にその状態を招いたときは、損害賠償責任を負います(民法713条ただし書き)。

よって、本肢は、「過失によって一時的にその状態を招いた場合、損害賠償の責任を負う」ので妥当ではありません。

例えば、お酒の飲みすぎによって、酩酊状態となり、他人に損害を加えた場合、損害賠償責任を負うことになります。

3.野生の熊が襲ってきたので自己の身を守るために他人の宅地に飛び込み板塀を壊した者には、正当防衛が成立する。

3・・・妥当ではない

本肢は、「正当防衛」ではなく、「緊急避難」です。

【正当防衛】

他人の不法行為に対し、自己又は第三者の権利又は法律上保護される利益を防衛するため、やむを得ず加害行為をした者は、損害賠償の責任を負いません(民法720条1項)。

これが「正当防衛」です。

例えば、Aは、通りすがり人Bに、ナイフで襲われそうになり、自分の身を守るために、持っていたバックでBの顔を殴った際に、Bが負傷した。この場合、Bに対してやむを得ずした反撃が「正当防衛」です。

この場合、Aは損害賠償責任を負いません。

【緊急避難】

他人の物から生じた急迫の危難を避けるためその物を損傷した場合、損害賠償の責任を負いません(民法720条2項)。

例えば、本肢のように「野生の熊」による急迫の危難から逃れるため、「他人の宅地の板塀」を壊した場合、「緊急避難」となり、損害賠償責任を負いません。

4.路上でナイフを振り回して襲ってきた暴漢から自己の身を守るために他人の家の窓を割って逃げ込んだ者には、緊急避難が成立する。

4・・・妥当ではない

本肢は、選択肢3の解説の通り「正当防衛」となります。

なぜなら、他人の不法行為(路上でナイフを振り回して襲ってきた)に対し、「自己又は第三者の権利又は法律上保護される利益(自己の身)」を防衛するため、やむを得ず加害行為をした(人の家の窓を割った)ので、「正当防衛」にあたります。

5.路上でナイフを持った暴漢に襲われた者が自己の身を守るために他人の家の窓を割って逃げ込んだ場合、窓を壊された被害者は、窓を割った者に対して損害賠償を請求できないが、当該暴漢に対しては損害賠償を請求できる。

5・・・妥当

正当防衛や緊急避難による被害者(損害を受けた者)は、不法行為をした者に対して損害賠償の請求をすることはできます(民法720条1項ただし書き、2項)。

したがって、「窓を壊された被害者」は、「暴漢」に対して損害賠償請求ができます。

一方、「窓を割った者(暴漢に襲われた者)」に対しては、損害賠償請求ができません。
これは、選択肢3の「民法720条1項本文」の内容でもあります。

よって、妥当です。

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令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問35|民法

相続に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときを除き、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。
  2. 相続人は、相続開始の時から、一身専属的な性質を有するものを除き、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するが、不法行為による慰謝料請求権は、被害者自身の精神的損害を填補するためのものであるから相続財産には含まれない。
  3. 相続財産中の預金債権は、分割債権であるから、相続開始時に共同相続人に対してその相続分に応じて当然に帰属し、遺産分割の対象とはならない。
  4. 相続開始後、遺産分割前に共同相続人の1人が、相続財産に属する財産を処分した場合、当該財産は遺産分割の対象となる相続財産ではなくなるため、残余の相続財産について遺産分割を行い、共同相続人間の不公平が生じたときには、別途訴訟等により回復する必要がある。
  5. 共同相続人は、相続の開始後3ヵ月を経過した場合、いつでもその協議で遺産の全部または一部の分割をすることができる。

>解答と解説はこちら


【答え】:1

【解説】
1.系譜、祭具及び墳墓の所有権は、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときを除き、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。

1・・・妥当

系譜(家系図)、祭具及び墳墓の所有権は、相続の一般的効力にかかわらず、慣習に従って「祖先の祭祀を主宰すべき者」が承継します。
ただし、被相続人の指定に従って「祖先の祭祀を主宰すべき者(祭祀主宰者)」があるときは、その者が承継します(民法897条1項)。

よって、本肢は妥当です。

まず、お墓、祭壇等などは「祭祀(さいし)財産」と呼ばれます。

この祭祀財産は相続人の間で分割すると、「祖先の祭祀」をするときに不都合を生じますので、相続財産とは別に「特定の1人」に受け継がせることになっています。

これを「祭祀主宰者」と言います。

祭祀主宰者は、第1に、被相続人(故人)が、生前に指定していたのであれば、その人が、祭祀主宰者となります。

第2に、上記指定がない場合には、被相続人が亡くなった地域や属していた地方の慣習に従い祭祀主宰者が決められます。

この第1、第2の方法によっても祭祀主宰者が決まらない場合には、第3として、家庭裁判所の調停、もしくは審判によって決めます(民法897条1項2項)。

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2.相続人は、相続開始の時から、一身専属的な性質を有するものを除き、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するが、不法行為による慰謝料請求権は、被害者自身の精神的損害を填補するためのものであるから相続財産には含まれない。

2・・・妥当ではない

【前半部分】 

相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します。ただし、被相続人の一身に専属したものは、承継しません(民法896条)。
よって、前半部分は妥当です。

【後半部分】 

判例(最大判昭42.11.1)によると、「被害者がこの請求権を放棄したものと解しうる特別の事情のない限り、生前に請求の意思を表明しなくても、その相続人は、当然にこの慰謝料請求権を相続する」と判示しています。

したがって、不法行為による慰謝料請求権も、相続財産に含まれるので、後半部分が妥当ではありません。

3.相続財産中の預金債権は、分割債権であるから、相続開始時に共同相続人に対してその相続分に応じて当然に帰属し、遺産分割の対象とはならない。

3・・・妥当ではない

判例(最大決平28.12.19)では、「共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となる」としています。

よって、本肢は「相続財産中の預金債権は、相続分に応じて当然に帰属し、遺産分割の対象とはならない」という記述が妥当ではありません。

※ 遺産分割は共同相続人間の実質的公平を図るためにあります。公平を図るために、被相続人の財産をできる限り幅広く対象とすることが望ましいことから、預貯金も遺産分割の対象になるとしています。

4.相続開始後、遺産分割前に共同相続人の1人が、相続財産に属する財産を処分した場合、当該財産は遺産分割の対象となる相続財産ではなくなるため、残余の相続財産について遺産分割を行い、共同相続人間の不公平が生じたときには、別途訴訟等により回復する必要がある。

4・・・妥当ではない

遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、その全員の同意により、当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができます(民法906条の2第1項)。

よって、「相続開始後、遺産分割前に共同相続人の1人が、相続財産に属する財産を処分した場合、当該財産は遺産分割の対象となる相続財産ではなくなる」という部分は妥当ではありません。

そして、「処分された財産」は、遺産として存在するものとみなすことができるので、別途訴訟等により回復する必要はありません。

そのまま遺産分割を行うことができ、その遺産分割協議書に基づいて、遺産は分割されます。

5.共同相続人は、相続の開始後3ヵ月を経過した場合、いつでもその協議で遺産の全部または一部の分割をすることができる。

5・・・妥当ではない

共同相続人は、被相続人が遺言で禁じた場合又は分割をしない旨の契約をした場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができます(民法907条1項)。

したがって、本肢は「相続の開始後3ヵ月を経過した場合」という部分が妥当ではありません。

3ヵ月を経過しなくても遺産分割は可能です。

基本事項の積み重ねが、行政書士試験合格の第一歩です。

この第一歩は、無料講座で、教えているのでぜひご活用ください!

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令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問36|商法

営業譲渡に関する次の記述のうち、商法の規定に照らし、正しいものはどれか。なお、営業を譲渡した商人を甲、営業を譲り受けた商人を乙とし、甲および乙は小商人ではないものとする。

  1. 甲が営業とともにその商号を乙に譲渡する場合には、乙が商号の登記をしなければその効力は生じない。
  2. 乙が甲の商号を引き続き使用する場合には、乙は、甲の営業によって生じた債務を弁済する貢任を負う。ただし、営業譲渡後、遅滞なく、乙が第三者である丙に対して、甲の債務を弁済する責任を負わない旨の通知をした場合には、乙は、丙に対して弁済責任を負わない。
  3. 乙が甲の商号を引き続き使用する場合に、甲の営業によって生じた債権について、債務者である丙が乙に対して行った弁済は、丙の過失の有無を問わず、丙が善意であるときに、その効力を有する。
  4. 乙が甲の商号を引き続き使用しない場合において、乙が甲の営業によって生じた債務を引き受ける旨の広告をしたときは、甲の弁済責任が消滅するため、甲の債権者である丙は、乙に対して弁済の請求をしなければならない。
  5. 甲および乙が、乙に承継されない債務の債権者(残存債権者)である丙を害することを知りながら、無償で営業を譲渡した場合には、丙は、乙に対して、甲から承継した財産の価額を限度として、当該債務の履行を請求することができる。

>解答と解説はこちら


【答え】:5

【解説】

1.営業を譲渡した商人を甲、営業を譲り受けた商人を乙とし、甲および乙は小商人ではないものとする。

甲が営業とともにその商号を乙に譲渡する場合には、乙が商号の登記をしなければその効力は生じない。

1・・・誤り

商人の商号は、「①営業とともにする場合」又は「②営業を廃止する場合」に限り、譲渡することができます(商法15条1項)。

そして、商号の譲渡は、登記をしなければ、第三者に対抗することはできません(商法15条2項)。

登記は、第三者に対する要件であり、
当事者間においては、合意があれば商号の譲渡は効力が生じます。

よって、本肢は「登記をしなければ効力は生じない」と言う部分が誤りです。

2.営業を譲渡した商人を甲、営業を譲り受けた商人を乙とし、甲および乙は小商人ではないものとする。

乙が甲の商号を引き続き使用する場合には、乙は、甲の営業によって生じた債務を弁済する貢任を負う。ただし、営業譲渡後、遅滞なく、乙が第三者である丙に対して、甲の債務を弁済する責任を負わない旨の通知をした場合には、乙は、丙に対して弁済責任を負わない。

2・・・誤り

営業を譲り受けた商人(譲受人乙)が譲渡人甲の商号を引き続き使用する場合には、その譲受人も、譲渡人甲の営業によって生じた債務を弁済する責任を負います(商法17条1項:譲渡人の商号を使用した譲受人の責任)。

そして、上記のルールは、営業を譲渡した後、遅滞なく、①「譲受人乙が譲渡人甲の債務を弁済する責任を負わない」旨を登記した場合には、適用しません(商法17条2項前段)。

また、営業を譲渡した後、遅滞なく、②「譲受人乙及び譲渡人甲」から「第三者」に対しその旨の通知をした場合において、その通知を受けた第三者についても、上記ルールは適用しません(商法17条2項後段)。

したがって、本肢は②に関する問題ですが
②の場合「譲受人乙」と「譲渡人甲」の両方が、「第三者丙」に対して「乙が甲の債務を弁済する責任を負わない旨の通知」をした場合、乙は「甲の債務を弁済する責任」を負わないということです。

本肢は、「乙のみ」が「第三者」丙に対してする「乙が甲の債務を弁済する責任を負わない旨の通知」をしているので、②のルールは適用されず、原則通り、乙は責任を負います。

基本事項なので、絶対解けるようにしておきましょう!

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3.営業を譲渡した商人を甲、営業を譲り受けた商人を乙とし、甲および乙は小商人ではないものとする。

乙が甲の商号を引き続き使用する場合に、甲の営業によって生じた債権について、債務者である丙が乙に対して行った弁済は、丙の過失の有無を問わず、丙が善意であるときに、その効力を有する。

3・・・誤り

営業を譲り受けた商人(譲受人乙)が譲渡人甲の商号を引き続き使用する場合において、譲渡人甲の営業によって生じた債権について、その譲受人乙にした弁済は、弁済者丙が「善意」でかつ「重大な過失がない」ときは、その効力を有します(商法17条4項)。

つまり、丙が「善意無重過失」の場合、弁済は有効となります。

本肢は「丙の過失の有無を問わず」となっているので誤り。

4.営業を譲渡した商人を甲、営業を譲り受けた商人を乙とし、甲および乙は小商人ではないものとする。

乙が甲の商号を引き続き使用しない場合において、乙が甲の営業によって生じた債務を引き受ける旨の広告をしたときは、甲の弁済責任が消滅するため、甲の債権者である丙は、乙に対して弁済の請求をしなければならない。

4・・・誤り

譲受人乙が譲渡人甲の商号を引き続き使用しない場合においても、譲渡人甲の営業によって生じた債務を引き受ける旨の広告をしたときは、譲渡人甲の債権者は、その譲受人乙に対して弁済の請求をすることができます(商法18条1項:譲受人による債務の引受け)。

そして、譲受人乙が上記ルールにより譲渡人甲の債務を弁済する責任を負う場合には、譲渡人甲の責任は、上記広告があった日後2年以内に「請求」又は「請求の予告」をしない債権者に対しては、その期間を経過した時に消滅します(商法18条2項)。

つまり、「広告をしたときは、甲の弁済責任が消滅する」というのは誤りです。

この広告があった時点では債権者丙は、甲、乙どちらに対しても請求が可能です。

請求できなくなるのは、広告があった日以降2年以内に、債権者丙が「請求」又は「請求の予告」をしない場合です。

5.営業を譲渡した商人を甲、営業を譲り受けた商人を乙とし、甲および乙は小商人ではないものとする。

甲および乙が、乙に承継されない債務の債権者(残存債権者)である丙を害することを知りながら、無償で営業を譲渡した場合には、丙は、乙に対して、甲から承継した財産の価額を限度として、当該債務の履行を請求することができる。

5・・・正しい

譲渡人甲が譲受人乙に承継されない債務の債権者(残存債権者:丙)を害することを知って営業を譲渡した場合には、残存債権者丙は、その譲受人乙に対して、承継した財産の価額を限度として、当該債務の履行を請求することができます(商法18条の2第1項本文)。

例えば、甲が、「不動産業」と「運送業」と行っており、「不動産業は黒字」だったが「運送業は赤字」だった、

甲が、赤字の運送業を残して、黒字の運送業を乙に譲渡した場合、甲は、赤字の運送業のみ残ります。

この場合、丙は、債権回収が難しくなります。

そのため、営業譲渡について丙を害すると知っていた場合には、原則、丙は、譲受人乙に対して「譲り受けた不動産業(黒字)」の価額を限度として債務の履行を請求することができます。

ただし、ただし、その譲受人が営業の譲渡の効力が生じた時において残存債権者を害することを知らなかったときは、債務の履行請求ができません(商法18条の2第1項ただし書き)。

本試験では、基本事項を使って、色々な角度から出題してきます。

こういった過去問からの別角度からの出題は絶対解けるようにしなければなりません。

そのためにも、基本事項を押さえることは、合格するための最低条件です。

もし、基本事項を「覚えているだけ」で「使えてない」という方は、ぜひ、無料講座をご活用ください!

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令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問37|会社法

株式会社の設立における発行可能株式総数の定め等に関する次のア~オの記述のうち、会社法の規定に照らし、誤っているものの組合せはどれか。

ア.発起設立において、発行可能株式総数を定款で定めていない場合には、発起人は、株式会社の成立の時までに、その全員の同意によって、定款を変更して発行可能株式総数の定めを設けなければならない。

イ.発起設立においては、発行可能株式総数を定款で定めている場合であっても、発起人は、株式会社の成立の時までに、その過半数の同意によって、発行可能株式総数についての定款を変更することができる。

ウ.募集設立において、発行可能株式総数を定款で定めていない場合には、発起人は、株式会社の成立の時までに、その全員の同意によって、定款を変更して発行可能株式総数の定めを設けなければならない。

エ.募集設立においては、発行可能株式総数を定款で定めている場合であっても、株式会社の成立の時までに、創立総会の決議によって、発行可能株式総数についての定款を変更することができる。

オ.設立時発行株式の総数は、設立しようとする株式会社が公開会社でない場合を除いて、発行可能株式総数の4分の1を下ることができない。

  1. ア・ウ
  2. ア・エ
  3. イ・ウ
  4. イ・オ
  5. エ・オ

>解答と解説はこちら


【答え】:3(イ・ウが誤り)

【解説】
ア.発起設立において、発行可能株式総数を定款で定めていない場合には、発起人は、株式会社の成立の時までに、その全員の同意によって、定款を変更して発行可能株式総数の定めを設けなければならない。

ア・・・正しい

発起人は、株式会社が発行することができる株式の総数(発行可能株式総数)を定款で定めていない場合には、株式会社の成立の時までに、その全員の同意によって、定款を変更して発行可能株式総数の定めを設けなければなりません(会社法37条1項)。

  1. 発行可能株式総数→定款の「絶対的記載事項」
  2. 会社設立の際は、定款の認証(公証人による認証)を受けなければなりませんが、設立後に株式発行可能株式総数を変更する場合、公証人の認証は不要です。
イ.発起設立においては、発行可能株式総数を定款で定めている場合であっても、発起人は、株式会社の成立の時までに、その過半数の同意によって、発行可能株式総数についての定款を変更することができる。

イ・・・誤り

発起人は、発行可能株式総数を定款で定めている場合には、株式会社の成立の時までに、その全員の同意によって、発行可能株式総数についての定款の変更をすることができます(会社法37条2項)。

本肢は「過半数の同意によって」が誤りです。正しくは「発起人全員の同意」です。

ウ.募集設立において、発行可能株式総数を定款で定めていない場合には、発起人は、株式会社の成立の時までに、その全員の同意によって、定款を変更して発行可能株式総数の定めを設けなければならない。

ウ・・・誤り

募集設立をする場合において、発行可能株式総数を定款で定めていないときは、株式会社の成立の時までに、創立総会の決議によって、定款を変更して発行可能株式総数の定めを設けなければなりません(会社法98条)。

よって、本肢は「その全員の同意」が誤りです。正しくは、「創立総会の決議」です。

※ 募集設立における株式の引受人が払込によって確定する払込期間初日以後は、発起人全員の同意があっても定款を変更することはできません(会社法95条)。これは、募集設立の場合、株主となるのは、「発起人」だけでなく「引受人」も存在するため、発起人だけで、定款変更するのは、不適当だからです。

エ.募集設立においては、発行可能株式総数を定款で定めている場合であっても、株式会社の成立の時までに、創立総会の決議によって、発行可能株式総数についての定款を変更することができる。

エ・・・正しい

募集設立においては、創立総会の決議によって、定款の変更をすることができます(会社法96条)。

よって、募集設立においては、発行可能株式総数を定款で定めている場合であっても、株式会社の成立の時までに、創立総会の決議によって、発行可能株式総数についての定款を変更することができます。

※ 株式会社の成立後は「創立総会」を開くことはできません。創立総会は、会社が成立するまでに行うものです。そのため、本肢の通り「株式会社の成立の時まで」という期限が入っています。

オ.設立時発行株式の総数は、設立しようとする株式会社が公開会社でない場合を除いて、発行可能株式総数の4分の1を下ることができない。

オ・・・正しい

公開会社の場合、設立時発行株式の総数は、発行可能株式総数の1/4を下ることができません(会社法37条3項)。これを4倍規制(4倍ルール)といいます。

ちなみに、公開会社では、「募集株式発行」は「取締役会」で決議します。

4倍規制(4倍ルール)については、基本事項ですが、理解学習を実践できていない方は、ひっかかる問題です。

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令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問38|会社法

特別支配株主の株式売渡請求に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、誤っているものはどれか。

  1. 特別支配株主は、株式売渡請求に係る株式を発行している対象会社の他の株主(当該対象会社を除く。)の全員に対し、その有する当該対象会社の株式の全部を当該特別支配株主に売り渡すことを請求することができる。
  2. 株式売渡請求をしようとする特別支配株主は、株式売渡請求に係る株式を発行している対象会社に対し、株式売渡請求をする旨および対価として交付する金銭の額や売渡株式を取得する日等の一定の事項について通知し、当該対象会社の株主総会の承認を受けなければならない。
  3. 株式売渡請求をした特別支配株主は、株式売渡請求において定めた取得日に、株式売渡請求に係る株式を発行している対象会社の株主が有する売渡株式の全部を取得する。
  4. 売渡株主は、株式売渡請求が法令に違反する場合であって、売渡株主が不利益を受けるおそれがあるときは、特別支配株主に対し、売渡株式の全部の取得をやめることを請求することができる。
  5. 株式売渡請求において定めた取得日において公開会社の売渡株主であった者は、当該取得日から6ヵ月以内に、訴えをもってのみ当該株式売渡請求に係る売渡株式の全部の取得の無効を主張することができる。

>解答と解説はこちら


【答え】:2

【解説】
1.特別支配株主は、株式売渡請求に係る株式を発行している対象会社の他の株主(当該対象会社を除く。)の全員に対し、その有する当該対象会社の株式の全部を当該特別支配株主に売り渡すことを請求することができる。

1・・・正しい

「特別支配株主」とは、株式会社の総株主の議決権の10分の9以上を保有する株主を言います。

そして、株式会社の特別支配株主は、当該株式会社の株主の全員に対し、その有する当該株式会社の株式の全部を当該特別支配株主に売り渡すことを請求することができます(会社法179条1項)。

【特別支配株主による株式等売渡請求制度のメリット】

  1. 特別支配株主が全株式を保有することになるので「株主総会開催を省略」できます。
  2. 少数株主がいなくなるので、将来の訴訟リスクを減らせる

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2.株式売渡請求をしようとする特別支配株主は、株式売渡請求に係る株式を発行している対象会社に対し、株式売渡請求をする旨および対価として交付する金銭の額や売渡株式を取得する日等の一定の事項について通知し、当該対象会社の株主総会の承認を受けなければならない。

2・・・誤り

特別支配株主は、株式売渡請求をしようとするときは、対象会社に対し、「株式売渡請求をする旨および対価として交付する金銭の額や売渡株式を取得する日等の一定の事項」を通知し、その承認を受けなければなりません(会社法179条の3第1項)。

そして、取締役会設置会社が上記承認をするか否かの決定をするには、「取締役会の決議」によらなければなりません(会社法179条の3第3項)。

よって、本肢は「株主総会の承認」が誤りです。

ちなみに、「非取締役会設置会社」の場合、「取締役の過半数の同意」で承認するか否かを決めます(会社法348条2項)。

3.株式売渡請求をした特別支配株主は、株式売渡請求において定めた取得日に、株式売渡請求に係る株式を発行している対象会社の株主が有する売渡株式の全部を取得する。

3・・・正しい

株式等売渡請求をした特別支配株主は、取得日(売渡請求において定めた日)に、売渡株式等の全部を取得します(会社法179条の9第1項)。

よって、本肢は正しいです。

ちなみに、取得する株式について、譲渡制限が付いている場合、当該株式会社が譲渡の承認をしたものとみなされます(会社法179条の9第2項)。したがって、別途譲渡承認の手続は不要です。

4.売渡株主は、株式売渡請求が法令に違反する場合であって、売渡株主が不利益を受けるおそれがあるときは、特別支配株主に対し、売渡株式の全部の取得をやめることを請求することができる。

4・・・正しい

(売渡株式等の取得をやめることの請求)
下記1~3に掲げる場合において、売渡株主が不利益を受けるおそれがあるときは、売渡株主は、特別支配株主に対し、株式等売渡請求に係る売渡株式等の全部の取得をやめることを請求することができます(会社法179条の7)。

  1. 株式売渡請求が法令に違反する場合
  2. 売渡株主に対する通知の規定や事前開示の規定に違反した場合
  3. 売渡請求の対価として交付する金銭等が著しく不当である場合
5.株式売渡請求において定めた取得日において公開会社の売渡株主であった者は、当該取得日から6ヵ月以内に、訴えをもってのみ当該株式売渡請求に係る売渡株式の全部の取得の無効を主張することができる。

5・・・正しい

株式等売渡請求に係る売渡株式等の全部の取得の無効は、取得日から6ヵ月以内(対象会社が非公開会社の場合は、当該取得日から1年以内)に、訴えをもってのみ主張することができます(会社法846条の2第1項)。

したがって、公開会社の場合、「売渡株式の取得の無効の訴え」は、取得日から6ヵ月以内であれば、主張できるので、正しいです。

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令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和4年・2022|問39|会社法

公開会社における株主総会に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、誤っているものはどれか。なお、定款に別段の定めはなく、かつ、株主総会の目的である事項の全部または一部について議決権を有しない株主はいないものとする。

  1. 総株主の議決権の100分の3以上の議決権を6ヵ月前から引き続き有する株主は、取締役に対し、株主総会の目的である事項および招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができる。
  2. 総株主の議決権の100分の1以上の議決権または300個以上の議決権を6ヵ月前から引き続き有する株主は、取締役に対し、株主総会の日の8週間前までに、一定の事項を株主総会の目的とすることを請求することができる。
  3. 株主は、株主総会において、当該株主総会の目的である事項につき議案を提出することができる。ただし、当該議案が法令もしくは定款に違反する場合または実質的に同一の議案につき株主総会において総株主の議決権の10分の1以上の賛成を得られなかった日から3年を経過していない場合は、この限りでない。
  4. 総株主の議決権の100分の1以上の議決権を6ヵ月前から引き続き有する株主は、株主総会に係る招集の手続および決議の方法を調査させるため、当該株主総会に先立ち、取締役に対し、検査役を選任すべきことを請求することができる。
  5. 取締役、会計参与、監査役および執行役は、株主総会において、株主から特定の事項について説明を求められた場合には、当該事項について必要な説明をしなければならない。ただし、当該事項が株主総会の目的である事項に関しないものである場合、その説明をすることにより株主の共同の利益を著しく害する場合その他正当な理由があるとして法務省令で定める場合は、この限りでない。

>解答と解説はこちら


【答え】:4

【解説】
1.総株主の議決権の100分の3以上の議決権を6ヵ月前から引き続き有する株主は、取締役に対し、株主総会の目的である事項および招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができる。

1・・・正しい

原則として総株主の議決権の3/100以上の議決権を6ヵ月前から引き続き有する株主は、取締役に対し、株主総会の目的である事項及び招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができます(会社法297条1項:少数株主権)。

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2.総株主の議決権の100分の1以上の議決権または300個以上の議決権を6ヵ月前から引き続き有する株主は、取締役に対し、株主総会の日の8週間前までに、一定の事項を株主総会の目的とすることを請求することができる。

2・・・正しい

総株主の議決権の1/100以上の議決権又は300個以上の議決権を6ヵ月前から引き続き有する株主に限り、取締役に対し、一定の事項を株主総会の目的とすることを請求することができます。この場合において、その請求は、株主総会の日の8週間前までにしなければなりません(会社法303条2項:株主総会の議題提案権)。

※「株主総会の目的となる事項」が「議題」です。
例えば、「取締役の選任の件」です。

3.株主は、株主総会において、当該株主総会の目的である事項につき議案を提出することができる。ただし、当該議案が法令もしくは定款に違反する場合または実質的に同一の議案につき株主総会において総株主の議決権の10分の1以上の賛成を得られなかった日から3年を経過していない場合は、この限りでない。

3・・・正しい

株主は、株主総会において、株主総会の目的である事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る。)につき議案を提出することができます。
ただし、当該議案が法令若しくは定款に違反する場合又は実質的に同一の議案につき株主総会において総株主の議決権の1/10(これを下回る割合を定款で定めることも可能)以上の賛成を得られなかった日から3年を経過していない場合は、議案の提出はできません(会社法304条:の株主総会の議案提出権)。

※「議案」とは、議題に対する具体的な提案です。
例えば「〇〇さんを取締役として選任する件」です。

4.総株主の議決権の100分の1以上の議決権を6ヵ月前から引き続き有する株主は、株主総会に係る招集の手続および決議の方法を調査させるため、当該株主総会に先立ち、取締役に対し、検査役を選任すべきことを請求することができる。

4・・・誤り

株式会社又は総株主の議決権の100分の1(これを下回る割合を定款で定める事も可能)以上の議決権を有する株主は、株主総会に係る招集の手続及び決議の方法を調査させるため、当該株主総会に先立ち、裁判所に対し検査役の選任の申立てをすることができます(会社法306条1項:株主総会の招集手続等に関する検査役の選任)。

本肢は「取締役に対し」となっているので誤りです。
正しくは「裁判所に対し」です。

当該検査は、「株主総会の招集手続」に関する検査なので、会社内部の検査でしても意味がないので、裁判所に検査役の選任の申立が必要としています。

5.取締役、会計参与、監査役および執行役は、株主総会において、株主から特定の事項について説明を求められた場合には、当該事項について必要な説明をしなければならない。ただし、当該事項が株主総会の目的である事項に関しないものである場合、その説明をすることにより株主の共同の利益を著しく害する場合その他正当な理由があるとして法務省令で定める場合は、この限りでない。

5・・・正しい

取締役、会計参与、監査役及び執行役は、株主総会において、株主から特定の事項について説明を求められた場合には、当該事項について必要な説明をしなければなりません。

ただし、当該事項が株主総会の目的である事項に関しないものである場合、その説明をすることにより株主の共同の利益を著しく害する場合その他正当な理由がある場合として法務省令で定める場合は、説明義務はありません(会社法314条:取締役等の説明義務)。

よって、本肢は正しいです。

基本事項の積み重ねが、行政書士試験合格の第一歩です。

この第一歩は、無料講座で、教えているのでぜひご活用ください!

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令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略