不利益処分の取消訴訟において原告勝訴判決(取消判決)が確定した場合に、当該判決について生ずる効力に関する次のア~エの記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
ア.処分をした行政庁は、判決確定の後、判決の拘束力により、訴訟で争われた不利益処分を職権で取り消さなければならない。
イ.判決後に新たな処分理由が発生した場合、処分をした行政庁は、これを根拠として、判決の拘束力と関わりなく、原告に対して、より厳しい内容の不利益処分を行うことができる。
ウ.不利益処分をした処分庁が地方公共団体に所属する場合、不利益処分にかかわった関係行政庁のうち国に所属する行政庁には、判決の拘束力は及ばない。
エ.判決の拘束力が生じるのは主文に限られず、主文に含まれる判断を導くために不可欠な理由中の判断についても及ぶ。
- ア・イ
- ア・ウ
- イ・ウ
- イ・エ
- ウ・エ
【答え】:4
【解説】
ア.処分をした行政庁は、判決確定の後、判決の拘束力により、訴訟で争われた不利益処分を職権で取り消さなければならない。
ア・・・誤り
取消判決には拘束力があるため、行政庁は、判決の内容にしたがって、行動する義務があります。
ただし、取消訴訟において、取消判決が下されると、行政庁が処分(本肢の場合不利益処分)を取消すことなく、判決により、自動的に、行政庁の処分は初めからなかったものとされます(形成力)。したがって、本肢の「訴訟で争われた不利益処分を職権で取り消さなければならない」が誤りです。
取消判決には拘束力があるため、行政庁は、判決の内容にしたがって、行動する義務があります。
ただし、取消訴訟において、取消判決が下されると、行政庁が処分(本肢の場合不利益処分)を取消すことなく、判決により、自動的に、行政庁の処分は初めからなかったものとされます(形成力)。したがって、本肢の「訴訟で争われた不利益処分を職権で取り消さなければならない」が誤りです。
イ.判決後に新たな処分理由が発生した場合、処分をした行政庁は、これを根拠として、判決の拘束力と関わりなく、原告に対しより厳しい内容の不利益処分を行うことができる。
イ・・・正しい
判決には、拘束力があり、行政庁は判決の内容にしたがって行動する義務が発生します。
また、判決があると、同一理由に基づく同一処分をすることが出来なくなります。ただし、判決後、別の理由があれば、その理由をもとに同一処分をすることは可能です。本肢は、「判決後に新たな処分理由が発生した場合」なので、処分をした行政庁は、これを根拠として、判決の拘束力と関わりなく、原告に対しより厳しい内容の不利益処分を行うことができます。
判決には、拘束力があり、行政庁は判決の内容にしたがって行動する義務が発生します。
また、判決があると、同一理由に基づく同一処分をすることが出来なくなります。ただし、判決後、別の理由があれば、その理由をもとに同一処分をすることは可能です。本肢は、「判決後に新たな処分理由が発生した場合」なので、処分をした行政庁は、これを根拠として、判決の拘束力と関わりなく、原告に対しより厳しい内容の不利益処分を行うことができます。
ウ.不利益処分をした処分庁が地方公共団体に所属する場合、不利益処分にかかわった関係行政庁のうち国に所属する行政庁には、判決の拘束力は及ばない。
ウ・・・誤り
処分又は裁決を取り消す判決は、その事件について、処分又は裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束します(行政事件訴訟法33条1項)。したがって、「不利益処分にかかわった関係行政庁のうち国に所属する行政庁には、判決の拘束力は及ばない」は誤りです。判決の拘束力は及びます。
処分又は裁決を取り消す判決は、その事件について、処分又は裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束します(行政事件訴訟法33条1項)。したがって、「不利益処分にかかわった関係行政庁のうち国に所属する行政庁には、判決の拘束力は及ばない」は誤りです。判決の拘束力は及びます。
エ.判決の拘束力が生じるのは主文に限られず、主文に含まれる判断を導くために不可欠な理由中の判断についても及ぶ。
エ・・・正しい
判例によると「拘束力は、判決主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断にわたる」と判示しています。
判例によると「拘束力は、判決主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断にわたる」と判示しています。
つまり、判決の拘束力が生じるのは主文だけでなく、主文に含まれる判断を導くために不可欠な理由中の判断についても及びます。
よって、正しいです。
どういうことかは、個別指導で解説します!
平成22年度(2010年度)|行政書士試験の問題と解説
問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法:債権 |
---|---|---|---|
問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法:債権 |
問3 | 基本的人権 | 問33 | 民法・債権 |
問4 | 法の下の平等 | 問34 | 民法:親族 |
問5 | 精神的自由 | 問35 | 民法:親族 |
問6 | 財政 | 問36 | 会社法 |
問7 | 国会 | 問37 | 会社法 |
問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
問10 | 行政法 | 問40 | 法改正により削除 |
問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政事件訴訟法 |
問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政事件訴訟法 |
問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
問16 | 行政事件訴訟法 | 問46 | 民法・40字 |
問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識・政治 |
問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識・政治 |
問19 | 国家賠償法 | 問49 | 基礎知識・社会 |
問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識・経済 |
問21 | 地方自治法 | 問51 | 基礎知識・経済 |
問22 | 地方自治法 | 問52 | 基礎知識・社会 |
問23 | 地方自治法 | 問53 | 基礎知識・社会 |
問24 | 地方自治法 | 問54 | 基礎知識・個人情報保護 |
問25 | 行政法 | 問55 | 基礎知識・情報通信 |
問26 | 行政法 | 問56 | 基礎知識・個人情報保護 |
問27 | 民法:総則 | 問57 | 基礎知識・情報通信 |
問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
問30 | 民法:物権 | 問60 | 著作権の関係上省略 |