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令和4年・2022|問22|地方自治法

A市議会においては、屋外での受動喫煙を防ぐために、繁華街での路上喫煙を禁止し、違反者に罰金もしくは過料のいずれかを科することを定める条例を制定しようとしている。この場合に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. この条例に基づく過料は、行政上の秩序罰に当たるものであり、非訟事件手続法に基づき裁判所が科する。
  2. 条例の効力は属人的なものであるので、A市の住民以外の者については、この条例に基づき処罰することはできない。
  3. この条例で過料を定める場合については、その上限が地方自治法によって制限されている。
  4. 地方自治法の定める上限の範囲内であれば、この条例によらず、A市長の定める規則で罰金を定めることもできる。
  5. この条例において罰金を定める場合には、A市長は、あらかじめ総務大臣に協議しなければならない。

>解答と解説はこちら


【答え】:3

【解説】

1.A市議会においては、屋外での受動喫煙を防ぐために、繁華街での路上喫煙を禁止し、違反者に罰金もしくは過料のいずれかを科することを定める条例を制定しようとしている。

この条例に基づく過料は、行政上の秩序罰に当たるものであり、非訟事件手続法に基づき裁判所が科する。

1・・・妥当ではない

前半部分の「この条例に基づく過料は、行政上の秩序罰に当たる」という部分は妥当です。

一方、後半部分が妥当ではありません。

「条例に基づく過料」は、地方自治法に基づき普通地方公共団体の長が科します。

つまり、本肢は「非訟事件手続法に基づき裁判所が科する」を「地方自治法に基づき普通地方公共団体の長が科する」とすれば妥当です。

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2.A市議会においては、屋外での受動喫煙を防ぐために、繁華街での路上喫煙を禁止し、違反者に罰金もしくは過料のいずれかを科することを定める条例を制定しようとしている。

条例の効力は属人的なものであるので、A市の住民以外の者については、この条例に基づき処罰することはできない。

2・・・妥当ではない

下記判例の通り、条例の効力は「属地的」です。

そのため、たとえA市の住民以外の者であっても、A市域内の繁華街で路上喫煙した場合、本条例に基づき処罰することができます。

【判例:最判昭29.11.24】 

条例を制定する権能もその効力も、法律の認める範囲を越えることを得ないとともに、法律の範囲内に在るかぎり原則としてその効力は当然属地的に生ずるものと解すべきである。
それゆえ本件条例は、新潟県の地域内においては、この地域に来れる何人に対してもその効力を及ぼすものといわなければならない。」

3.A市議会においては、屋外での受動喫煙を防ぐために、繁華街での路上喫煙を禁止し、違反者に罰金もしくは過料のいずれかを科することを定める条例を制定しようとしている。

この条例で過料を定める場合については、その上限が地方自治法によって制限されている。

3・・・妥当

普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、2年以下の懲役若しくは禁錮、100万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑又は5万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができます(地方自治法14条3項)。

したがって、地方自治法によって上限が設定されています。

4.A市議会においては、屋外での受動喫煙を防ぐために、繁華街での路上喫煙を禁止し、違反者に罰金もしくは過料のいずれかを科することを定める条例を制定しようとしている。

地方自治法の定める上限の範囲内であれば、この条例によらず、A市長の定める規則で罰金を定めることもできる。

4・・・妥当ではない

結論から言うと、「長の規則」で違反者に罰金を科することはできません。よって、妥当ではないです・

地方自治法15条2項では、「普通地方公共団体の長は、5万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる」と規定しており、長が、規則で罰金(刑罰の一種)を科する旨の規定を定めることはできないことになっています。

ちなみに、条例中に罰金を科する旨を定めることは認められているが(地方自治法14条3項:選択肢3の解説参照)、
長が普通地方公共団体の規則中に罰金を科することを認める条文はありません。

5.この条例において罰金を定める場合には、A市長は、あらかじめ総務大臣に協議しなければならない。

5・・・妥当ではない

本肢は、「あらかじめ総務大臣に協議しなければならない」という部分が妥当ではありません。

罰金を科することは「刑罰」に該当します。

そして、判例(最判昭37.5.30)によると、

「国民の公選した議員をもって組織する国会の議決を経て制定される法律に類するものであるから、条例によって刑罰を定める場合には、法律の授権が相当な程度に具体的であり、限定されていれば足りる」

と判示しています。

つまり、地方自治法14条3項に

「普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、・・・100万円以下の罰金・・・を科する旨の規定を設けることができる」
と相当な程度に具体的に設定されているので、
この法律に基づいて、条例で罰金を定めることは可能です。

その際、「あらかじめ総務大臣に協議が必要」という旨のルールもありません。

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令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

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