裁判の公開に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。
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- 裁判は、公開法廷における対審および判決によらなければならないので、カメラ取材を裁判所の許可の下に置き、開廷中のカメラ取材を制限することは、原則として許されない。
- 裁判所が過料を科する場合は、それが純然たる訴訟事件である刑事制裁を科す作用と同質であることに鑑み、公開法廷における対審および判決によらなければならない。
- 証人尋問の際に、傍聴人と証人との間で遮へい措置が採られても、審理が公開されていることに変わりはないから、裁判の公開に関する憲法の規定には違反しない。
- 傍聴人は法廷で裁判を見聞できるので、傍聴人が法廷でメモを取る行為は、権利として保障されている。
- 裁判官の懲戒の裁判は行政処分の性質を有するが、裁判官の身分に関わる手続であるから、裁判の公開の原則が適用され、審問は公開されなければならない。
【答え】:3
【解説】
1.裁判は、公開法廷における対審および判決によらなければならないので、カメラ取材を裁判所の許可の下に置き、開廷中のカメラ取材を制限することは、原則として許されない。
1・・・妥当ではない
裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行います(憲法82条1項)。
「対審」とは、裁判官の目の前で当事者が口頭でそれぞれの主張を述べる手続きです。
そして、下記判例によると、開廷中のカメラ取材、写真撮影の許可等は裁判所の裁量に委ねられ、開廷中のカメラ取材を制限することは、原則として許されています。
よって、妥当ではないです。
【判例(最判昭33.2.17:北海タイムス事件:)】
憲法が裁判の対審及び判決を公開法廷で行うことを規定しているのは、手続を一般に公開してその審判が公正に行われることを保障する趣旨にほかならないのであるから、たとい公判廷の状況を一般に報道するための取材活動であっても、その活動が公判廷における審判の秩序を乱し被告人その他訴訟関係人の正当な利益を不当に害するがごときものは、もとより許されないところであるといわなければならない。
ところで、公判廷における写真の撮影等は、その行われる時、場所等のいかんによっては、前記のような好ましくない結果を生ずる恐れがあるので、刑事訴訟規則215条(公判廷における写真の撮影、録音又は放送は、裁判所の許可を得なければ、これをすることができない。)は写真撮影の許可等を裁判所の裁量に委ね、その許可に従わないかぎりこれらの行為をすることができないことを明らかにしたのであって、右規則は憲法に違反するものではない
2.裁判所が過料を科する場合は、それが純然たる訴訟事件である刑事制裁を科す作用と同質であることに鑑み、公開法廷における対審および判決によらなければならない。
2・・・妥当ではない
下記判例によると、裁判所が過料を科する場合、対審および判決を公開(裁判を公開)する必要はないとしています。
【最大判昭41.12.27】
民事上の秩序罰としての過料を科する作用は、国家のいわゆる後見的民事監督の作用であり、その実質においては、一種の行政処分としての性質を有するものであるから、必ずしも裁判所がこれを科することを憲法上の要件とするものではなく、行政庁がこれを科する(地方自治法149条3号、255条の2参照)ことにしても、なんら違憲とすべき理由はない。
従って、法律上、裁判所がこれを科することにしている場合でも、過料を科する作用は、もともと純然たる訴訟事件としての性質の認められる刑事制裁を科する作用とは異なるのであるから、憲法82条、32条の定めるところにより、公開の法廷における対審及び判決によって行なわれなければならないものではない。」
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3.証人尋問の際に、傍聴人と証人との間で遮へい措置が採られても、審理が公開されていることに変わりはないから、裁判の公開に関する憲法の規定には違反しない。
3・・・妥当
すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有します(憲法37条1項)。
そして、下記判例によると、証人尋問の際に、傍聴人と証人との間で遮へい措置が採られる行為は、「裁判の公開の原則(憲法37条1項)」に違反しないと判示しています。
【最判平17.4.14】
証人尋問が公判期日において行われる場合、傍聴人と証人との間で遮へい措置が採られ、あるいはビデオリンク方式によることとされ、さらには、ビデオリンク方式によった上で傍聴人と証人との間で遮へい措置が採られても、審理が公開されていることに変わりはないから、これらの規定は、憲法82条1項、37条1項に違反するものではない。
4.傍聴人は法廷で裁判を見聞できるので、傍聴人が法廷でメモを取る行為は、権利として保障されている。
4・・・妥当ではない
判例によると、法廷でメモを取る行為は「尊重に値する」ものの、権利として保障されているとまではいえないと判示しています。
【最大判平元.3.8:レペタ事件】
憲法82条1項の規定は、・・・傍聴人に対して法廷においてメモを取ることを権利として保障しているものでない・・・(しかし)傍聴人が法廷においてメモを取ることは、その見聞する裁判を認識、記憶するためになされるものである限り、尊重に値し、故なく妨げられてはならないものというべきである。
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5.裁判官の懲戒の裁判は行政処分の性質を有するが、裁判官の身分に関わる手続であるから、裁判の公開の原則が適用され、審問は公開されなければならない。
5・・・妥当ではない
下記判例によると、
裁判官の懲戒の裁判は、裁判公開の原則が適用されず、審問は公開しなくてもよいと判示しているので、妥当ではないです。
【最大判平10.12.1:寺西判事補事件】
憲法82条1項は、裁判の対審及び判決は公開の法廷で行わなければならない旨を規定している。・・・
裁判官に対する懲戒は、裁判所が裁判という形式をもってすることとされているが、一般の公務員に対する懲戒と同様、その実質においては裁判官に対する行政処分の性質を有するものである。
したがって、裁判官に懲戒を課する作用は、固有の意味における司法権の作用ではなく、懲戒の裁判は、純然たる訴訟事件についての裁判にはあたらないことが明らかである。・・・分限事件は、訴訟とは全く構造を異にするというほかはない。
したがって、分限事件については憲法82条1項の適用はないものというべきである」
この判例とみて、「懲戒」と「分限」が混ざっていて、懲戒処分についても疑問に思いませんか?
この点は理解が必要なので、個別指導で解説します!
基本事項ですが理解できていない人も多いので、合否の分かれ目になる内容です!
令和4年(2022年)過去問
問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法 |
---|---|---|---|
問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法 |
問3 | 憲法 | 問33 | 民法 |
問4 | 憲法 | 問34 | 民法 |
問5 | 憲法 | 問35 | 民法 |
問6 | 憲法 | 問36 | 商法 |
問7 | 憲法 | 問37 | 会社法 |
問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
問10 | 行政法 | 問40 | 会社法 |
問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法 |
問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法 |
問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
問16 | 行政不服審査法 | 問46 | 民法・40字 |
問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識 |
問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識 |
問19 | 行政事件訴訟法 | 問49 | 基礎知識 |
問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識 |
問21 | 国家賠償法 | 問51 | 基礎知識 |
問22 | 地方自治法 | 問52 | 基礎知識 |
問23 | 地方自治法 | 問53 | 基礎知識 |
問24 | 地方自治法 | 問54 | 基礎知識 |
問25 | 行政法 | 問55 | 基礎知識 |
問26 | 行政法 | 問56 | 基礎知識 |
問27 | 民法 | 問57 | 基礎知識 |
問28 | 民法 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
問29 | 民法 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
問30 | 民法 | 問60 | 著作権の関係上省略 |