次の文章の空欄[ ア ]~[ エ ]に当てはまる語句の組合せとして、妥当なものはどれか。
ヨーロッパ大陸において、伝統的に[ ア ]制に対して消極的な態度がとられていることは知られるが、これはそこでの裁判観につながると考えられる。それによれば、裁判官の意見が区々に分れていることを外部に明らかにすることは、裁判所の権威を害するとされる。[ ア ]制は、その先例としての力を弱めるのみではなく、裁判所全体の威信を減退すると考えられているようである。裁判所内部にいかに意見の分裂があっても、[ イ ]として力をもつ[ ウ ]のみが一枚岩のように示されることが、裁判への信頼を生むとされるのであろう。しかし、果たして外観上つねに[ エ ]の裁判の形をとり、異なる意見の表明を抑えることが、裁判所の威信を高めることになるであろうか。英米的な考え方からすると、各裁判官に自らの意見を独自に述べる機会を与える方が、外部からみても裁判官の独立を保障し、司法の威信を増すともいえよう。ここには、大陸的な裁判観と英米的な裁判観のちがいがあるように思われる。
(出典 伊藤正己「裁判官と学者の間」1993年から)
- ア:少数意見 イ:判決理由 ウ:主文 エ:多数決
- ア:合議 イ:判例 ウ:多数意見 エ:全員一致
- ア:少数意見 イ:判例 ウ:多数意見 エ:全員一致
- ア:合議 イ:判決理由 ウ:主文 エ:多数決
- ア:少数意見 イ:判例 ウ:主文 エ:多数決
【答え】:3(ア:少数意見、イ:判例、ウ:多数意見、エ:全員一致)
【解説】
ヨーロッパ大陸において、伝統的に[ ア:少数意見 ]制に対して消極的な態度がとられていることは知られるが、これはそこでの裁判観につながると考えられる。それによれば、裁判官の意見が区々に分れていることを外部に明らかにすることは、裁判所の権威を害するとされる。[ ア:少数意見 ]制は、その先例としての力を弱めるのみではなく、裁判所全体の威信を減退すると考えられているようである。裁判所内部にいかに意見の分裂があっても、[ イ:判例 ]として力をもつ[ ウ:多数意見 ]のみが一枚岩のように示されることが、裁判への信頼を生むとされるのであろう。しかし、果たして外観上つねに[ エ:全員一致 ]の裁判の形をとり、異なる意見の表明を抑えることが、裁判所の威信を高めることになるであろうか。英米的な考え方からすると、各裁判官に自らの意見を独自に述べる機会を与える方が、外部からみても裁判官の独立を保障し、司法の威信を増すともいえよう。ここには、大陸的な裁判観と英米的な裁判観のちがいがあるように思われる。
(出典 伊藤正己「裁判官と学者の間」1993年から)
ア・・・少数意見
「ヨーロッパ大陸において、伝統的に[ ア ]制に対して消極的な態度がとられていることは知られる」
という部分から、ヨーロッパ大陸(例えば、イギリスやドイツ、フランス)では、裁判は合議制が採られています。
つまり、アに「合議」を入れたら、上記内容と矛盾します。
したがって、アには「少数意見」が入ります。
また、「[ ア ]制について、裁判所の権威を害するとされる。」
と書いてあります。
「少数意見制」とは、裁判官の少数意見についても尊重するという考え方に基づいています。
最高裁の判決は、「多数決の原則」により、多数派の意見が通るのですが、この少数意見を尊重しすぎると、結果として、裁判所の判断にブレが生じることになり、裁判所の権威を害することとなります。
ウ・・・多数意見
ウの方が分かりやすいので、ウから考えます。
ウには「主文」か「多数意見」が入ります。
「一枚岩」とは、組織が、内部に分裂や対立を含まず、しっかりとまとまっていることを意味します。
このことから考えると、ウには、「主文」は入らないです。
「多数意見」を入れれば、「多数意見のみが一枚岩のように示される」という事になります。
イ・・・判例
「判決理由としての力をもつ多数意見」なのか「判例としての力を持つ多数意見」なのかを考えると、「判例」が妥当です。
多数意見が、裁判所の判断(判例)となるからです。
最高裁判所は多数決で最終的な判断が下されます。
エ・・・全員一致
上記文章を言い換えていきます。
判例としての力を持つ多数意見のみが一枚岩にように示されることが裁判への信頼を生む。
しかし、
[ エ ]の裁判の形をとり、異なる意見の表明を抑えることが、裁判所の威信を高めることになるであろうか。
↓
判例として、1つの判断として示すことが裁判の信頼を生む。
しかし、
1つの判断として示して、他の意見を示さないことが、裁判所の威信を高めることになるであろうか。
↓
「1つの判断として示して」=「外観上つねに[ エ ]の裁判の形をとること」
となります。
よって、エには「全員一致」が入ります。
令和4年(2022年)過去問
問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法 |
---|---|---|---|
問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法 |
問3 | 憲法 | 問33 | 民法 |
問4 | 憲法 | 問34 | 民法 |
問5 | 憲法 | 問35 | 民法 |
問6 | 憲法 | 問36 | 商法 |
問7 | 憲法 | 問37 | 会社法 |
問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
問10 | 行政法 | 問40 | 会社法 |
問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法 |
問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法 |
問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
問16 | 行政不服審査法 | 問46 | 民法・40字 |
問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識 |
問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識 |
問19 | 行政事件訴訟法 | 問49 | 基礎知識 |
問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識 |
問21 | 国家賠償法 | 問51 | 基礎知識 |
問22 | 地方自治法 | 問52 | 基礎知識 |
問23 | 地方自治法 | 問53 | 基礎知識 |
問24 | 地方自治法 | 問54 | 基礎知識 |
問25 | 行政法 | 問55 | 基礎知識 |
問26 | 行政法 | 問56 | 基礎知識 |
問27 | 民法 | 問57 | 基礎知識 |
問28 | 民法 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
問29 | 民法 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
問30 | 民法 | 問60 | 著作権の関係上省略 |