「個人情報の保護に関する法律」に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。(2023年改正対応)
- この法律は、行政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、個人の権利利益を保護することを目的とするが、ここでいう「個人の権利利益」は、公権力によるプライバシーの侵害から個人を守るという意味での人格的利益を意味し、財産的な利益を保護の対象とするものではない。(改)
- この法律では、死者に関する情報も「個人情報」として保護されており、遺族が死者に代わってその開示訂正等を求めることができる。この点は、この法律に固有の考え方であって、死者に関する情報を「個人情報」に含めない。(改)
- この法律は、保有個人情報について目的外利用や第三者提供の制限に関する規律が存在する一方、本人は保有個人情報を対象としていて、開示・訂正・利用停止の請求権を行使することができるという仕組みになっている。(改)
- 本人の開示請求に対して処分庁が不開示の決定を行い、この不開示決定に対して行政不服申立てがなされた場合には、行政機関の長は、原則として、情報公開・個人情報保護審査会に諮問をしなければならず、また、裁決または決定に際しては、諮問に対する審査会の答申に法的に拘束される。
- この法律では、開示請求をする者が納めなければならない手数料は、請求の対象となっているのが自己の情報であることにかんがみて、無料となっている。この点は、政府保有情報に対する開示請求であっても、開示請求にかかる手数料を徴収していない情報公開法と同じである。
【答え】:3
【解説】
1.この法律は、行政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、個人の権利利益を保護することを目的とするが、ここでいう「個人の権利利益」は、公権力によるプライバシーの侵害から個人を守るという意味での人格的利益を意味し、財産的な利益を保護の対象とするものではない。(改)
1・・・誤り
個人情報保護法は、行政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、個人の権利利益を保護することを目的としています(個人情報保護法1条)。この点は正しいです。「開示請求者の生命、健康、生活又は財産を害するおそれがある情報」は、個人情報の開示請求がなされた際の不開示情報となっています(個人情報保護法78条1号)。つまり、「個人の権利利益」は、人格的利益のみならず、財産的な利益の保護も対象としています。よって、誤りです。
個人情報保護法は、行政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、個人の権利利益を保護することを目的としています(個人情報保護法1条)。この点は正しいです。「開示請求者の生命、健康、生活又は財産を害するおそれがある情報」は、個人情報の開示請求がなされた際の不開示情報となっています(個人情報保護法78条1号)。つまり、「個人の権利利益」は、人格的利益のみならず、財産的な利益の保護も対象としています。よって、誤りです。
2.この法律では、死者に関する情報も「個人情報」として保護されており、遺族が死者に代わってその開示訂正等を求めることができる。この点は、この法律に固有の考え方であって、死者に関する情報を「個人情報」に含めない、主として民間部門を規律する「個人情報の保護に関する法律」との相違点である。
2・・・誤り
「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日等それにより特定の個人を識別することができるものとしています(個人情報保護法2条)。したがって、「死者に関する情報」は個人情報に含みません。よって、誤りです。
「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日等それにより特定の個人を識別することができるものとしています(個人情報保護法2条)。したがって、「死者に関する情報」は個人情報に含みません。よって、誤りです。
3.この法律は、保有個人情報について目的外利用や第三者提供の制限に関する規律が存在する一方、本人は保有個人情報を対象としていて、開示・訂正・利用停止の請求権を行使することができるという仕組みになっている。(改)
3・・・正しい
この法律(個人情報保護法)は、保有個人情報について目的外利用や第三者提供の制限に関する規律(69条)が存在する一方、本人は保有個人情報を対象としていて、開示請求権(76条)・訂正請求権(90条)・利用停止請求権(98条)を行使することができるという仕組みになっています。よって、正しいです。
この法律(個人情報保護法)は、保有個人情報について目的外利用や第三者提供の制限に関する規律(69条)が存在する一方、本人は保有個人情報を対象としていて、開示請求権(76条)・訂正請求権(90条)・利用停止請求権(98条)を行使することができるという仕組みになっています。よって、正しいです。
4.本人の開示請求に対して処分庁が不開示の決定を行い、この不開示決定に対して行政不服申立てがなされた場合には、行政機関の長は、原則として、情報公開・個人情報保護審査会に諮問をしなければならず、また、裁決または決定に際しては、諮問に対する審査会の答申に法的に拘束される。
4・・・誤り
開示決定等、訂正決定等、利用停止決定等又は開示請求、訂正請求若しくは利用停止請求に係る不作為について審査請求があったときは、当該審査請求に対する裁決をすべき行政機関の長等は、原則、情報公開・個人情報保護審査会等に諮問しなければなりません(個人情報保護法105条)。ただし、諮問に対する審査会の答申(回答)に法的に拘束されません。よって、誤りです。
開示決定等、訂正決定等、利用停止決定等又は開示請求、訂正請求若しくは利用停止請求に係る不作為について審査請求があったときは、当該審査請求に対する裁決をすべき行政機関の長等は、原則、情報公開・個人情報保護審査会等に諮問しなければなりません(個人情報保護法105条)。ただし、諮問に対する審査会の答申(回答)に法的に拘束されません。よって、誤りです。
5.この法律では、開示請求をする者が納めなければならない手数料は、請求の対象となっているのが自己の情報であることにかんがみて、無料となっている。この点は、政府保有情報に対する開示請求であっても、開示請求にかかる手数料を徴収していない情報公開法と同じである。
5・・・誤り
開示請求をする者は、政令で定めるところにより、実費の範囲内において政令で定める額の手数料を納めなければなりません(個人情報保護法89条)。一方、情報公開法(16条)でも「開示請求をする者又は行政文書の開示を受ける者は、政令で定めるところにより、それぞれ、実費の範囲内において政令で定める額の開示請求に係る手数料又は開示の実施に係る手数料を納めなければならない。」と規定しています。つまり、どちらも有料です。
開示請求をする者は、政令で定めるところにより、実費の範囲内において政令で定める額の手数料を納めなければなりません(個人情報保護法89条)。一方、情報公開法(16条)でも「開示請求をする者又は行政文書の開示を受ける者は、政令で定めるところにより、それぞれ、実費の範囲内において政令で定める額の開示請求に係る手数料又は開示の実施に係る手数料を納めなければならない。」と規定しています。つまり、どちらも有料です。
平成22年度(2010年度)|行政書士試験の問題と解説
問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法:債権 |
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問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法:債権 |
問3 | 基本的人権 | 問33 | 民法・債権 |
問4 | 法の下の平等 | 問34 | 民法:親族 |
問5 | 精神的自由 | 問35 | 民法:親族 |
問6 | 財政 | 問36 | 会社法 |
問7 | 国会 | 問37 | 会社法 |
問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
問10 | 行政法 | 問40 | 法改正により削除 |
問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政事件訴訟法 |
問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政事件訴訟法 |
問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
問16 | 行政事件訴訟法 | 問46 | 民法・40字 |
問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識・政治 |
問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識・政治 |
問19 | 国家賠償法 | 問49 | 基礎知識・社会 |
問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識・経済 |
問21 | 地方自治法 | 問51 | 基礎知識・経済 |
問22 | 地方自治法 | 問52 | 基礎知識・社会 |
問23 | 地方自治法 | 問53 | 基礎知識・社会 |
問24 | 地方自治法 | 問54 | 基礎知識・個人情報保護 |
問25 | 行政法 | 問55 | 基礎知識・情報通信 |
問26 | 行政法 | 問56 | 基礎知識・個人情報保護 |
問27 | 民法:総則 | 問57 | 基礎知識・情報通信 |
問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
問30 | 民法:物権 | 問60 | 著作権の関係上省略 |