行政不服審査法における手続の終了に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 行政不服審査制度には権利保護機能の他に行政統治機能があるため、審理員の同意がなければ、審査請求人は審査請求を取り下げることができない。
- 事実行為に関する審査請求を認容する場合、審査庁は違法又は不当な当該事実行為を自ら撤廃することができる。
- 上級行政庁としての審査庁は、処分庁の処分を変更する旨の裁決をすることができず、処分庁の処分を取り消した上で、処分庁に当該処分の変更を命じなければならない。
- 処分についての審査請求は、原則として、処分があったことを知った日の翌日から起算して3ヵ月を経過したときは、することができない。
- 行政不服審査法には、それに基づく裁決について、行政事件訴訟法が定める取消判決の拘束力に相当する規定は設けられていない。
【答え】:4
【解説】
1.行政不服審査制度には権利保護機能の他に行政統治機能があるため、審理員の同意がなければ、審査請求人は審査請求を取り下げることができない。
1・・・誤り
審査請求の取り下げについて、下記2つしか規定されていません(行政不服審査法27条)。
審査請求の取り下げについて、下記2つしか規定されていません(行政不服審査法27条)。
- 審査請求人は、裁決があるまでは、いつでも審査請求を取り下げることができる。
- 審査請求の取下げは、書面でしなければならない。
したがって、「審理員の同意がなければ、審査請求人は審査請求を取り下げることができない」といった規定はないので、誤りです。
2.事実行為に関する審査請求を認容する場合、審査庁は違法又は不当な当該事実行為を自ら撤廃することができる。
2・・・誤り
事実上の行為についての審査請求が理由がある場合には、審査庁は、裁決で、当該事実上の行為が違法又は不当である旨を宣言し、下記のとおり措置をとります(行政不服審査法47条)。ただし、審査庁が処分庁の上級行政庁以外の審査庁である場合には、当該事実上の行為を変更すべき旨を命ずることはできない。
事実上の行為についての審査請求が理由がある場合には、審査庁は、裁決で、当該事実上の行為が違法又は不当である旨を宣言し、下記のとおり措置をとります(行政不服審査法47条)。ただし、審査庁が処分庁の上級行政庁以外の審査庁である場合には、当該事実上の行為を変更すべき旨を命ずることはできない。
- 「処分庁以外の審査庁」の場合、審査庁は、当該処分庁に対し、当該事実上の行為の全部若しくは一部を撤廃し、又はこれを変更すべき旨を命ずる。
- 「処分庁である審査庁」の場合、審査庁は、当該事実上の行為の全部若しくは一部を撤廃し、又はこれを変更する。
よって、「審査庁は違法又は不当な当該事実行為を自ら撤廃することができる」は誤りです。
もし、審査庁が、1の通り、「処分庁以外の審査庁」の場合、自ら撤廃することはできないからです。できるのは、「処分庁に、撤廃しろ!」と命じることです。
3.上級行政庁としての審査庁は、処分庁の処分を変更する旨の裁決をすることができず、処分庁の処分を取り消した上で、処分庁に当該処分の変更を命じなければならない。
3・・・誤り
処分についての審査請求に理由がある場合には、審査庁は、裁決で、当該処分の全部若しくは一部を取り消し、又はこれを変更します。ただし、審査庁が処分庁の上級行政庁又は処分庁のいずれでもない場合には、当該処分を変更することはできません(行政不服審査法46条)。
処分についての審査請求に理由がある場合には、審査庁は、裁決で、当該処分の全部若しくは一部を取り消し、又はこれを変更します。ただし、審査庁が処分庁の上級行政庁又は処分庁のいずれでもない場合には、当該処分を変更することはできません(行政不服審査法46条)。
「上級行政庁としての審査庁」は、上記原則の通り、処分庁の処分を変更する裁決ができます。
よって、「処分庁の処分を変更する旨の裁決をすることができず、・・・」は誤りです。
4.処分についての審査請求は、原則として、処分があったことを知った日の翌日から起算して3ヵ月を経過したときは、することができない。
4・・・正しい
処分についての審査請求は、処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月を経過したときは、することができません。
ただし、正当な理由があるときは、3か月を経過しても審査請求できます(行政不服審査法18条)。よって、本肢は原則の話なので、正しいです。
処分についての審査請求は、処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月を経過したときは、することができません。
ただし、正当な理由があるときは、3か月を経過しても審査請求できます(行政不服審査法18条)。よって、本肢は原則の話なので、正しいです。
5.行政不服審査法には、それに基づく裁決について、行政事件訴訟法が定める取消判決の拘束力に相当する規定は設けられていない。
5・・・誤り
裁決は、関係行政庁を拘束します(行政不服審査法52条1項:拘束力)。また、処分又は裁決を取り消す判決は、その事件について、処分又は裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束します(行政事件訴訟法33条1項:拘束力)。
裁決は、関係行政庁を拘束します(行政不服審査法52条1項:拘束力)。また、処分又は裁決を取り消す判決は、その事件について、処分又は裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束します(行政事件訴訟法33条1項:拘束力)。
つまり、裁決についても、取消判決同様、拘束力はあるので、本肢は誤りです。
平成22年度(2010年度)|行政書士試験の問題と解説
問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法:債権 |
---|---|---|---|
問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法:債権 |
問3 | 基本的人権 | 問33 | 民法・債権 |
問4 | 法の下の平等 | 問34 | 民法:親族 |
問5 | 精神的自由 | 問35 | 民法:親族 |
問6 | 財政 | 問36 | 会社法 |
問7 | 国会 | 問37 | 会社法 |
問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
問10 | 行政法 | 問40 | 法改正により削除 |
問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政事件訴訟法 |
問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政事件訴訟法 |
問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
問16 | 行政事件訴訟法 | 問46 | 民法・40字 |
問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識・政治 |
問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識・政治 |
問19 | 国家賠償法 | 問49 | 基礎知識・社会 |
問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識・経済 |
問21 | 地方自治法 | 問51 | 基礎知識・経済 |
問22 | 地方自治法 | 問52 | 基礎知識・社会 |
問23 | 地方自治法 | 問53 | 基礎知識・社会 |
問24 | 地方自治法 | 問54 | 基礎知識・個人情報保護 |
問25 | 行政法 | 問55 | 基礎知識・情報通信 |
問26 | 行政法 | 問56 | 基礎知識・個人情報保護 |
問27 | 民法:総則 | 問57 | 基礎知識・情報通信 |
問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
問30 | 民法:物権 | 問60 | 著作権の関係上省略 |
