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令和4年・2022|問20|国家賠償法

国家賠償法1条1項に基づく国家賠償責任に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 検察官が公訴を提起したものの、裁判で無罪が確定した場合、当該公訴提起は、国家賠償法1条1項の適用上、当然に違法の評価を受けることとなる。
  2. 指定確認検査機関による建築確認事務は、当該確認に係る建築物について確認権限を有する建築主事が置かれた地方公共団体の事務であり、当該地方公共団体が、当該事務について国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任を負う。
  3. 公立学校における教職員の教育活動は、私立学校の教育活動と変わるところはないため、原則として、国家賠償法1条1項にいう「公権力の行使」に当たらない。
  4. 税務署長のする所得税の更正が所得金額を過大に認定していた場合、当該更正は、国家賠償法1条1項の適用上、当然に違法の評価を受けることとなる。
  5. 警察官が交通法規に違反して逃走する車両をパトカーで追跡する職務執行中に、逃走車両の走行によって第三者が負傷した場合、当該追跡行為は、当該第三者との関係において、国家賠償法1条1項の適用上、当然に違法の評価を受けることとなる。

>解答と解説はこちら


【答え】:2

【解説】
1.検察官が公訴を提起したものの、裁判で無罪が確定した場合、当該公訴提起は、国家賠償法1条1項の適用上、当然に違法の評価を受けることとなる。

1・・・妥当ではない

下記判例の通り、公訴が無罪だったとしても、当然に違法と評価されるわけではないので、妥当ではありません。

下記判例は基本的な判例です。

かみ砕いて、整理して、頭に入れておきましょう!

かみ砕いて、整理した内容は、個別指導で解説します!

【判例:最判昭53.10.20】刑事事件において無罪の判決が確定したというだけで直ちに起訴前の逮捕・勾留、公訴の提起・追行、起訴後の勾留が違法となるということはない。

けだし(なぜならば)、逮捕・勾留はその時点において犯罪の嫌疑について相当な理由があり、かつ、必要性が認められるかぎりは適法であり、公訴の提起は、検察官が裁判所に対して犯罪の成否、刑罰権の存否につき審判を求める意思表示にほかならないのであるから、起訴時あるいは公訴追行時における検察官の心証は、その性質上、判決時における裁判官の心証と異なり、起訴時あるいは公訴追行時における各種の証拠資
料を総合勘案して合理的な判断過程により有罪と認められる嫌疑があれば足りるものと解するのが相当であるからである。

2.指定確認検査機関による建築確認事務は、当該確認に係る建築物について確認権限を有する建築主事が置かれた地方公共団体の事務であり、当該地方公共団体が、当該事務について国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任を負う。

2・・・妥当

本肢は、下記判例の通り、妥当です。

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【判例:最判平17.6.24】
指定確認検査機関による確認に関する事務は、建築主事による確認に関する事務の場合と同様に、地方公共団体の事務であり、その事務の帰属する行政主体は、当該確認に係る建築物について確認をする権限を有する建築主事が置かれた地方公共団体であると解するのが相当である。
したがって、指定確認検査機関の確認に係る建築物について確認をする権限を有する建築主事が置かれた地方公共団体は、指定確認検査機関の当該確認につき行政事件訴訟法21条1項所定の当該処分又は裁決に係る事務の帰属する国又は公共団体にあたるとし、建築確認を行う民間の指定確認検査機関による建築確認により、相手方に損害を与えてしまった場合、地方公共団体が国家賠償責任を負う
3.公立学校における教職員の教育活動は、私立学校の教育活動と変わるところはないため、原則として、国家賠償法1条1項にいう「公権力の行使」に当たらない。

3・・・妥当ではない

下記判例の通り、公立学校における教職員の教育活動は、私立学校の教育活動と異なり、原則として、国家賠償法1条1項にいう「公権力の行使」に当たります。

よって、妥当ではありません。

(国家賠償法1条1項)
国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。

【最判昭62.2.6】

国家賠償法1条1項にいう「公権力の行使」には、公立学校における教師の教育活動も含まれるものと解するのが相当である

4.税務署長のする所得税の更正が所得金額を過大に認定していた場合、当該更正は、国家賠償法1条1項の適用上、当然に違法の評価を受けることとなる。

4・・・妥当ではない

【判例:最判平5.3.11】
税務署長のする所得税の更正は、所得金額を過大に認定していたとしても、そのことから直ちに国家賠償法1条1項にいう違法があったとの評価を受けるものではなく、税務署長が資料を収集し、これに基づき課税要件事実を認定、判断する上において、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と更正をしたと認め得るような事情がある場合に限り、右の評価を受ける

つまり、税務署長のする所得税の更正が所得金額を過大に認定していた場合、当然に違法の評価を受けることとはなりません。よって妥当ではありません

「違法の評価を受ける」のは、税務署長が、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と更正をしたと認め得るような事情がある場合です。

5.警察官が交通法規に違反して逃走する車両をパトカーで追跡する職務執行中に、逃走車両の走行によって第三者が負傷した場合、当該追跡行為は、当該第三者との関係において、国家賠償法1条1項の適用上、当然に違法の評価を受けることとなる。

5・・・妥当ではない

【判例:最判昭61.2.27】

追跡行為が違法であるというためには、「①右追跡が当該職務目的を遂行する上で不必要であるか」、又は「②逃走車両の逃走の態様及び道路交通状況等から予測される被害発生の具体的危険性の有無及び内容に照らし、追跡の開始・継続若しくは追跡の方法が不相当である」ことを要するものと解すべきである。

本肢は、「当然に違法の評価を受けることとなる」という部分が妥当ではありません。

警察官が交通法規に違反して逃走する車両をパトカーで追跡する職務執行中に、逃走車両の走行によって第三者が負傷した場合、当該追跡行為が違法となるのは、上記判例の①又は②を満たす場合です。

①も②も満たさないにもかかわらず、当然に違法とはなりません。

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令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

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