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令和4年・2022|問9|行政法

行政契約に関する次のア~オの記述のうち、法令または最高裁判所の判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア.行政手続法は、行政契約につき定義規定を置いており、国は、それに該当する行政契約の締結及び履行にあたっては、行政契約に関して同法の定める手続に従わなければならない。

イ.地方公共団体が必要な物品を売買契約により調達する場合、当該契約は民法上の契約であり、専ら民法が適用されるため、地方自治法には契約の締結に関して特別な手続は規定されていない。

ウ.水道事業者たる地方公共団体は、給水契約の申込みが、適正かつ合理的な供給計画によっては対応することができないものである場合には、水道法の定める「正当の理由」があるものとして、給水契約を拒むことができる。

エ.公害防止協定など、地方公共団体が締結する規制行政にかかる契約は、法律に根拠のない権利制限として法律による行政の原理に抵触するため、法的拘束力を有しない。

オ.法令上、随意契約によることができない契約を地方公共団体が随意契約で行った場合であっても、当該契約の効力を無効としなければ法令の規定の趣旨を没却する結果となる特別の事情が存在しない限り、当該契約は私法上有効なものとされる。

  1. ア・イ
  2. ア・エ
  3. イ・ウ
  4. ウ・オ
  5. エ・オ

>解答と解説はこちら


【答え】:4(ウ・オが妥当)

【解説】
ア.行政手続法は、行政契約につき定義規定を置いており、国は、それに該当する行政契約の締結及び履行にあたっては、行政契約に関して同法の定める手続に従わなければならない。

ア・・・妥当ではない

行政手続法は、処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続に関し、共通する事項を定めることによって、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することを目的とする(行政手続法1条)。

つまり、行政契約に関する手続については、行政手続法の対象外です。

行政手続法の対象
処分、行政指導、届出、命令
行政手続法の対象外
行政計画、行政契約、行政調査、即時強制、入札手続など
イ.地方公共団体が必要な物品を売買契約により調達する場合、当該契約は民法上の契約であり、専ら民法が適用されるため、地方自治法には契約の締結に関して特別な手続は規定されていない。

イ・・・妥当ではない

売買、貸借、請負その他の契約は、一般競争入札、指名競争入札、随意契約又はせり売りの方法により締結するものとされています(地方自治法234条1項)。

つまり、「地方自治法には契約の締結に関して特別な手続は規定されていない」としている点が妥当ではないです。

地方自治法の勉強していて、「一般競争入札、指名競争入札、随意契約又はせり売り」について勉強したことがあると思うので、正解していただきたい問題です。

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ウ.水道事業者たる地方公共団体は、給水契約の申込みが、適正かつ合理的な供給計画によっては対応することができないものである場合には、水道法の定める「正当の理由」があるものとして、給水契約を拒むことができる。

ウ・・・妥当

水道事業者は、事業計画に定める給水区域内の需要者から給水契約の申込みを受けたときは、正当の理由がなければ、これを拒んではなりません(水道法15条1項)。

そして、下記判例では、給水契約の申込みが、適正かつ合理的な供給計画によっては対応することができないものである場合には、水道法の定める「正当の理由」があるものとして、給水契約を拒むことができると判示しているので、本肢は妥当です。

【最判平11.1.21:志免町水道給水拒否事件】漫然と新規の給水申込みに応じていると、近い将来需要に応じきれなくなり深刻な水不足を生ずることが予測される状態にあるということができる。
このようにひっ迫した状況の下においては、被上告人が、新たな給水申込みのうち、需要量が特に大きく、住宅を供給する事業を営む者が住宅を分譲する目的であらかじめしたものについて契約の締結を拒むことにより、急激な水道水の需要の増加を抑制する施策を講ずることも、やむを得ない措置として許されるものというべきである。
そして、上告人の給水契約の申込みは、マンション420戸を分譲するという目的のためにされたものであるから、所論のように、建築計画を数年度に分け、井戸水を併用することにより水道水の使用量を押さえる計画であることなどを考慮しても、被上告人がこれを拒んだことには水道法15条1項にいう「正当の理由」があるものと認めるのが相当である
エ.公害防止協定など、地方公共団体が締結する規制行政にかかる契約は、法律に根拠のない権利制限として法律による行政の原理に抵触するため、法的拘束力を有しない。

エ・・・妥当ではない

公害防止協定など、地方公共団体が締結する規制行政にかかる契約については、下記判例の通り、法的拘束力を有します。

【最判平21.7.10】廃棄物処理法は、廃棄物の排出の抑制、適正な再生、処分等を行い、生活環境を清潔にすることによって、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的とし(1条)、その目的を達成するために廃棄物の処理に関する規制等を定めるものである。

そして、廃棄物処理法の規定は、知事が、処分業者としての適格性や処理施設の要件適合性を判断し、産業廃棄物の処分事業が廃棄物処理法の目的に沿うものとなるように適切に規制できるようにするために設けられたものである。

したがって、知事の許可が、処分業者に対し、許可が効力を有する限り事業や処理施設の使用を継続すべき義務を課すものではないことは明らかである。(知事は許可したからといって、知事が、使用継続を許す義務を負うわけではない)

また、処分業者(Y)が、公害防止協定において、協定の相手方(X)に対し、その事業や処理施設を将来廃止する旨を約束することは、処分業者自身の自由な判断で行えることであり(民法における契約自由の原則、私法上の契約)、その結果、許可が効力を有する期間内に事業や処理施設が廃止されることがあったとしても、同法に何ら抵触するものではない。

したがって、当該期限の条項が廃棄物処理法の趣旨に反するということはできないし、本件期限条項が本件協定が締結された当時の廃棄物処理法の趣旨に反するということもできない。

よって、本件期限条項の法的拘束力を否定することはできない(法的拘束力はある)。

オ.法令上、随意契約によることができない契約を地方公共団体が随意契約で行った場合であっても、当該契約の効力を無効としなければ法令の規定の趣旨を没却する結果となる特別の事情が存在しない限り、当該契約は私法上有効なものとされる。

オ・・・妥当

下記判例の通り、法令上、随意契約によることができない契約を地方公共団体が随意契約で行った場合であっても、原則、契約は有効であり、例外的に、無効としなければ、法令の規定の趣旨を無視(没却)する結果となるような特別ば場合に限って無効となります。

【最判昭62.5.19】

随意契約の制限に関する法令に違反して締結された契約の私法上の効力については別途考察する必要があり、かかる違法な契約であっても私法上当然に無効になるものではなく、随意契約によることができる場合として前記令(地方自治法施行令)の規定の掲げる事由のいずれにもあたらないことが何人の目にも明らかである場合や契約の相手方において随意契約の方法による当該契約の締結が許されないことを知り又は知り得べかりし場合のように当該契約の効力を無効としなければ随意契約の締結に制限を加える前記法(地方自治法)及び令の規定の趣旨を没却する結果となる特段の事情が認められる場合に限り、私法上無効になるものと解するのが相当である。

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令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

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