40字問題

平成26年・2014|問45|民法・記述

Aは複数の債権者から債務を負っていたところ、債権者の一人で懇意にしているBと相談の上、Bに優先的な満足を得させる意図で、A所有の唯一の財産である甲土地を、代物弁済としてBに譲渡した。その後、Bは同土地を、上記事情を知らないCに時価で売却し、順次、移転登記がなされた。この場合において、Aのほかの債権者Xは、自己の債権を保全するために、どのような権利に基づき、誰を相手として、どのような対応をとればよいか。判例の立場を踏まえて40字程度で記述しなさい。

>解答と解説はこちら

【答え】:詐害行為取消権に基づき、Bを相手に、裁判により、代物弁済契約を取消し、価格賠償を求める。(44字)

【解説】

状況としては

  1. Aは複数の債権者から債務を負っていた(債務者A)
  2. 債権者の一人で懇意にしているBに優先的な満足を得させる意図で、A所有の唯一の財産である甲土地を、代物弁済としてBに譲渡した
  3. その後、Bは同土地を、上記事情を知らないCに時価で売却し、順次、移転登記がなされた。

上記の状況において、Aのほかの債権者Xは、自己の債権を保全するための対応を考えます。

考えるべき点は

①どのような権利」に基づき、「②誰を相手」として、「③どのような対応」をとるかです。

「①どのような権利」「②誰を相手にするか」について

まず、頭に入れておくべきルールは詐害行為取消請求です。

債権者Xは、債務者Aが債権者Xを害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者(受益者B)がその行為の時において債権者Xを害することを知らなかったときは、この限りでない(民法424条1項)。

本問の場合、受益者B以外に、転得者Cもいます。

そして、この点については

債権者は、受益者に対して詐害行為取消請求をすることができる場合において、受益者に移転した財産を転得した者があるときは、転得者が「債務者がした行為が債権者を害すること」を知っていたとき(悪意のとき)に限り、その転得者に対しても、詐害行為取消請求をすることができます(民法424条の5)。

本問をみると、「事情を知らないC」となっているので、Cは善意です。
したがって、善意の転得者Cに対して詐害取消請求を行うことはできません

よって、「①どのような権利」に基づき、「②誰を相手」にするかについては

「①詐害行為取消権に基づき、②Bを相手に」となります。

では、「③どのような対応」を取るか?

「裁判上の請求により、代物弁済契約を取消し、価格賠償を求める」対応を取ります。

これらをまとめると

詐害行為取消権に基づき、Bを相手に、裁判上の請求により、代物弁済契約を取消し、価格賠償を求める。(48字)

ですが、文字数が多いので。一部省略して、

詐害行為取消権に基づき、Bを相手に、裁判により、代物弁済契約を取消し、価格賠償を求める。(44字)

となります。

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平成26年度(2014年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 幸福追求権など 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 投票価値の平等 問35 民法:親族
問6 内閣 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政調査 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 損失補償 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・経済
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・社会
問25 行政法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成26年・2014|問44|行政法・記述

A市は、同市内に市民会館を設置しているが、その運営は民間事業者である株式会社Bに委ねられており、利用者の申請に対する利用の許可なども、Bによってなされている。住民の福利を増進するためその利用に供するために設置される市民会館などを地方自治法は何と呼び、また、その設置などに関する事項は、特別の定めがなければ、どの機関によりどのような形式で決定されるか。さらに、同法によれば、その運営に当たるBのような団体は、何と呼ばれるか。40字程度で記述しなさい。

>解答と解説はこちら


【答え】:公の施設と呼び、A市議会による条例で定められ、Bのような団体は指定管理者と呼ばれる。(42字)

【解説】

問題文の状況

  • A市は、同市内に市民会館を設置している
  • 市民会館の運営は民間事業者である株式会社Bに委ねられている
  • 利用者の申請に対する利用の許可なども、Bによってなされている

質問内容

質問内容は、下記4点です。

  1. 住民の福利を増進するためその利用に供するために設置される市民会館などを地方自治法は何と呼ぶか?
  2. 市民会館等の設置などに関する事項は、特別の定めがなければ、どの機関により決定されるか?
  3. また、どのような形式で決定されるか?
  4. 市民会館等の運営に当たるBのような団体は、何と呼ばれるか?

これらを一つ一つ考えていき、それを繋げればよいです。

住民の福利を増進するためその利用に供するために設置される市民会館などを地方自治法は何と呼ぶか?

普通地方公共団体は、住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するための施設(これを公の施設という。)を設けるものとします(地方自治法244条1項)。
つまり、市民会館のような公共の施設を、地方自治法では「公の施設」と呼びます。

市民会館等の設置などに関する事項は、特別の定めがなければ、どの機関により決定されるか?

条例を設け又は改廃することは、普通地方公共団体の議会の議決によります(地方自治法96条1項1号)。
したがって、どの機関により決定するかというと「議会の議決」により決定します。

また、どのような形式で決定されるか?

普通地方公共団体は、法律又はこれに基づく政令に特別の定めがあるものを除くほか、公の施設の設置及びその管理に関する事項は、「条例」でこれを定めなければなりません(地方自治法244条の2の1項)。
つまり、どのような形式かというと「条例」という形式で決定されます。

市民会館等の運営に当たるBのような団体は、何と呼ばれるか?

普通地方公共団体は、公の施設の設置の目的を効果的に達成するため必要があると認めるときは、条例の定めるところにより、法人その他の団体であって当該普通地方公共団体が指定するもの(「指定管理者」という。)に、当該公の施設の管理を行わせることができます(地方自治法244条の2の3項)。

したがって、市民会館等の運営に当たるBのような団体は「指定管理者」と呼ばれます。

そして、1~4をまとめると、

公の施設と呼び、A市議会による条例で定められ、Bのような団体は指定管理者と呼ばれる。(42字)
となります。

平成27年・2015|問45|民法・記述

権原の性質上、占有者に所有の意思のない他主占有が、自主占有に変わる場合として2つの場合がある。民法の規定によると、ひとつは、他主占有者が自己に占有させた者に対して所有の意思があることを表示した場合である。もうひとつはどのような場合か、40字程度で記述しなさい。

>解答と解説はこちら


【答え】:他主占有者が、新たな権原により更に所有の意思をもって占有を始めた場合。(35字)

【解説】

「権原の性質上、占有者に所有の意思のない他主占有が、自主占有に変わる場合として2つの場合がある。」
ということから、
「他主占有」から「自主占有」に変わる場合について問題と分かります。

そして、
「他主占有」から「自主占有」に変わる場合の一つが

「他主占有者が自己に占有させた者に対して所有の意思があることを表示した場合」

そして、もう一つが何かが質問されています。

民法185条では、
権原の性質上占有者に所有の意思がないものとされる場合には、その占有者が、自己に占有をさせた者に対して所有の意思があることを表示し、又は新たな権原により更に所有の意思をもって占有を始めるのでなければ、占有の性質は、変わらない。
としています。

言い換えると、

  1. 占有者が、自己に占有をさせた者に対して所有の意思があることを表示した場合
  2. 占有者が、新たな権原により更に所有の意思をもって占有を始めた場合

この2つの場合については、占有の性質が変わる(「他主占有」から「自主占有」に変わる)、ということです。

問題文の一つは、1の内容なので
40字の記述には2の内容を記載すればよいです。

したがって、

他主占有者が、新たな権原により更に所有の意思をもって占有を始めた場合。(35字)

が答えの一例となります。

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平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政法 問56 基礎知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 基礎知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問44|行政法・記述

Xは、Y県内で開発行為を行うことを計画し、Y県知事に都市計画法に基づく開発許可を申請した。しかし、知事は、この開発行為によりがけ崩れの危険があるなど、同法所定の許可要件を充たさないとして、申請を拒否する処分をした。これを不服としたXは、Y県開発審査会に審査請求をしたが、同審査会も拒否処分を妥当として審査請求を棄却する裁決をした。このため、Xは、申請拒否処分と棄却裁決の両方につき取消訴訟を提起した。このうち、裁決取消訴訟の被告はどこか。また、こうした裁決取消訴訟においては、一般に、どのような主張が許され、こうした原則を何と呼ぶか。40字程度で記述しなさい。

>解答と解説はこちら


【答え】:被告はY県であり、一般に、裁決の違法の主張が許され、この原則を原処分主義という。(40字)

【解説】

問題文の状況理解

問題文の状況は下記の通りです。

  • Xは、Y県内で開発行為を行うことを計画し、Y県知事に都市計画法に基づく開発許可を申請した。
  • しかし、知事は、この開発行為によりがけ崩れの危険があるなど、同法所定の許可要件を充たさないとして、申請を拒否する処分をした。
  • これを不服としたXは、Y県開発審査会に審査請求をしたが、同審査会も拒否処分を妥当として審査請求を棄却する裁決をした。
  • このため、Xは、申請拒否処分と棄却裁決の両方につき取消訴訟を提起した。

質問内容の理解

質問内容は、下記3つです。

  1. 裁決取消訴訟の被告はどこか?
  2. こうした裁決取消訴訟においては、一般に、どのような主張が許されるか?
  3. こうした原則を何と呼ぶか?

裁決取消訴訟の被告はどこか?

処分・裁決をした行政庁が国又は公共団体に所属する場合には、取消訴訟は、「当該処分・裁決をした行政庁の所属する国又は公共団体」を被告として提起しなければなりません(行政事件訴訟法11条)。

本問では、審査請求に対して、「Y県開発審査会」が拒否処分の裁決をしています。
したがって、被告となるのは、「Y県」です。

よって、「裁決取消訴訟の被告はY県」となります。

こうした裁決取消訴訟においては、一般に、どのような主張が許されるか?

処分の取消しの訴えとその処分についての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えとを提起することができる場合には、裁決の取消しの訴えにおいては、処分の違法を理由として取消しを求めることができません(行政事件訴訟法10条)。

したがって、本肢の場合、裁決取消しの訴え(裁決取消訴訟)を提起しているので、処分の違法は主張できず、裁決の違法のみ主張が許されます。

こうした原則を何と呼ぶか?

上記原則を「原処分主義」と言います。

上記をまとめると、

「被告はY県であり、一般に、裁決の違法の主張が許され、この原則を原処分主義という。(40字)」となります。

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平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政法 問56 基礎知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 基礎知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成29年・2017|問46|民法・記述

不法行為による損害賠償請求権は、被害者またはその法定代理人が、いつの時点から何年間行使しないときに消滅するかについて、民法が規定する2つの場合を、40字程度で記述しなさい。

>解答と解説はこちら


【答え】:損害および加害者を知った時から3年間、または不法行為の時から20年間行使しないとき。(42字)

【解説】

この問題は、民法の条文そのままの内容です。

聞かれている質問内容は

①いつから
②何年間
権利を行使しないときに損害賠償請求権が消滅するか?
2つの場合を答えよ
という基本的な内容です。

改正民法724条では、下記の通り、規定されています。

第724条(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。

したがって、これをまとめると

「損害および加害者を知った時から3年間、または不法行為の時から20年間行使しないとき(42字)」不法行為による損害賠償請求権は時効により消滅します。

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平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・政治
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 基礎知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

平成30年・2018|問46|民法・記述

甲自動車(以下「甲」という。)を所有するAは、別の新車を取得したため、友人であるBに対して甲を贈与する旨を口頭で約し、Bも喜んでこれに同意した。しかしながら、Aは、しばらくして後悔するようになり、Bとの間で締結した甲に関する贈与契約をなかったことにしたいと考えるに至った。甲の引渡しを求めているBに対し、Aは、民法の規定に従い、どのような理由で、どのような法的主張をすべきか。40字程度で記述しなさい。なお、この贈与契約においては無効および取消しの原因は存在しないものとする。

>解答と解説はこちら


【答え】:Aは、書面によらず、履行が終わっていないことを理由に、贈与契約を解除すべき。(38字)

【解説】

問題文の状況整理

質問内容は
「Aは、Bとの贈与契約をなかったことにしたい場合、どのような理由で、どのような法的主張をすべきか?」
です。

つまり、

①どのような理由
②どのような法的主張

この2つを記述することが重要です。

問題文の状況を整理すると

  • Aは、Bと口頭で、甲自動車を贈与する契約を締結した。
  • その後、Aは、当該贈与契約をなかったことにしたいと考えている

という状況です。

解答の検討

贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生じます(改正民法549条)。
そして、書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができます(行政書士,過去問,平成30年,2019,問46,民法・記述)。
ただし、履行の終わった部分については、解除できません(同条但し書き)。

本問を見ると、口頭で贈与契約をしています。
したがって、書面によらない贈与です。
書面によらない贈与(口頭による贈与)において、甲自動車の贈与契約をなかったことにするには、「履行が終わっていないこと」が必要です。

そして、法的主張については、「解除」です。

したがって、
Aは、書面によらず、履行が終わっていないことを理由に、贈与契約を解除すべき。(38字)

平成30年・2018|問45|民法・記述

画家Aは、BからAの絵画(以下「本件絵画」といい、評価額は500万円~600万円であるとする。)を購入したい旨の申込みがあったため、500万円で売却することにした。ところが、A・B間で同売買契約(本問では、「本件契約」とする。)を締結したときに、Bは、成年被後見人であったことが判明したため(成年後見人はCであり、その状況は現在も変わらない。)、Aは、本件契約が維持されるか否かについて懸念していたところ、Dから本件絵画を気に入っているため600万円ですぐにでも購入したい旨の申込みがあった。Aは、本件契約が維持されない場合には、本件絵画をDに売却したいと思っている。Aが本件絵画をDに売却する前提として、Aは、誰に対し、1か月以上の期間を定めてどのような催告をし、その期間内にどのような結果を得る必要があるか。なお、AおよびDは、制限行為能力者ではない。
「Aは、」に続け、下線部分につき40字程度で記述しなさい。記述に当たっては、「本件契約」を入れることとし、他方、「1か月以上の期間を定めて」および「その期間内に」の記述は省略すること。

>解答と解説はこちら


【答え】:「Aは、」Cに対し、本件契約を追認するか否か確答すべき旨の催告をし、追認拒絶の結果を得る。(40字)

【解説】

問題文の状況整理

質問内容は
「Aは、誰に対し、1か月以上の期間を定めてどのような催告をし、その期間内にどのような結果を得る必要があるか。」

①誰に対して
②どのような催告をし
③どのような結果を得る必要があるか

この3つを記述することが重要です。

問題文の状況を整理すると

  1. 画家AはBに絵画を売却した(本件契約)。
  2. しかし、売却した当時、買主Bは、成年被後見人であった。
    (成年後見人はC)
  3. 現在も、Bは成年被後見人である。
  4. 一方、Aは、Dから本件絵画の購入したい旨の申込みがあった。
  5. Aは、本件契約が維持されない場合には、本件絵画をDに売却したいと思っている。
  6. Aが本件絵画をDに売却することを前提した場合、Aは、誰に対し、1か月以上の期間を定めてどのような催告をし、その期間内にどのような結果を得る必要があるか?
  7. なお、AおよびDは、制限行為能力者ではない。

という内容です。

解答の検討

AはDに売りたいと思っているので、AB間の売買契約を取消す必要があります。

その場合のどのような手続きが必要か?

最終的には、相手方(B側)に追認拒絶をしてもらえれば、契約取消しとなり、AはDに売却できます。

成年被後見人に対して催告しても、催告自体無効です。
「追認するかどうかの催告」は、保護者である成年後見人Cに対して行う必要があります

そして、成年後見人Cが追認拒絶をしてくれれば、無事AはDに売却できます。

上記をまとめると

Aは、Cに対し、本件契約を追認するか否か確答すべき旨の催告をし、追認拒絶の結果を得ることができれば、Dに絵画を売却できます。

40字でまとめると

「Aは、」Cに対し、本件契約を追認するか否か確答すべき旨の催告をし、追認拒絶の結果を得る。(40字)

平成30年・2018|問44|行政法・記述

Xは、A県B市内において、農地を所有し、その土地において農業を営んできた。しかし、高齢のため農作業が困難となり、後継者もいないため、農地を太陽光発電施設として利用することを決めた。そのために必要な農地法4条1項所定のA県知事による農地転用許可を得るため、その経由機関とされているB市農業委員会の担当者と相談したところ、「B市内においては、太陽光発電のための農地転用は認められない。」として、申請用紙の交付を拒否された。そこで、Xは、インターネットから入手した申請用紙に必要事項を記入してA県知事宛ての農地転用許可の申請書を作成し、必要な添付書類とともにB市農業委員会に郵送した。ところが、これらの書類は、「この申請書は受理できません。」とするB市農業委員会の担当者名の通知を添えて返送されてきた。この場合、農地転用許可を得るため、Xは、いかなる被告に対し、どのような訴訟を提起すべきか。40字程度で記述しなさい。

(参照条文)
農地法
(農地の転用の制限)
第4条 農地を農地以外のものにする者は、都道府県知事(中略)の許可を受けなければならない。(以下略)
2 前項の許可を受けようとする者は、農林水産省令で定めるところにより、農林水産省令で定める事項を記載した申請書を、農業委員会を経由して、都道府県知事等に提出しなければならない。
3 農業委員会は、前項の規定により申請書の提出があったときは、農林水産省令で定める期間内に、当該申請書に意見を付して、都道府県知事等に送付しなければならない。

>解答と解説はこちら


【答え】:A県を被告として、不作為の違法確認訴訟と農地転用許可の義務付け訴訟を併合提起すべき。(42字)

【解説】

質問内容は
「Xは、①いかなる被告に対し、②どのような訴訟を提起すべきか」
となっているので、

①被告は誰とすべきか?
②どのような訴訟を提起すべきか?

この2つを記述することが重要です。

①どのような訴訟をすべきか?

農地転用許可を得ることが目的の訴訟です。
つまり、「農地転用許可の義務付け訴訟」は必要です。

そして、申請型の義務付け訴訟を提起するには、
「取消訴訟」、「無効確認の訴え」、「不作為の違法確認訴訟」と併せて提起することが要件となっています。

問題文を見ると、
『申請用紙に必要事項を記入してA県知事宛ての農地転用許可の申請書を作成し、必要な添付書類とともにB市農業委員会に郵送した。ところが、これらの書類は、「この申請書は受理できません。」とするB市農業委員会の担当者名の通知を添えて返送されてきた。』
と記載されています。
つまり、申請書は、B市農業委員会に到達しています。
よって、行政庁は、遅滞なく審査を開始しなければなりません(行政手続法7条)。
それにもかかわらず、「この申請書は受理できません。」と返答が来たわけです。
行政庁は、受理しないということはできないため、
処分を行っていない以上、不作為状態にあるといえます。

したがって、本問の場合、「不作為の違法確認訴訟」と併せて提起する必要があります。

そのため、「不作為の違法確認訴訟」と「農地転用許可の義務付け訴訟」を併合して提起しなければなりません。

①被告は誰とすべきか?

処分又は裁決をした行政庁が国又は公共団体に所属する場合には、取消訴訟は、処分または裁決をした行政庁の所属する国又は公共団体を被告として提起しなければなりません(行政事件訴訟法11条取消訴訟の被告適格)。

本問の場合、「A県知事宛ての農地転用許可を申請」したにも関わらず不作為状態なので、A県を被告とします。

よって、まとめると、
A県を被告として、不作為の違法確認訴訟と農地転用許可の義務付け訴訟を併合提起すべき。(42字)
となります。