2012年過去問

平成24年・2012|問13|行政手続法

行政手続に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、誤っているものはどれか。

  1. 行政手続は刑事手続とその性質においておのずから差異があることから、常に必ず行政処分の相手方等に事前の告知、弁解、防御の機会を与えるなどの一定の手続を設けることを必要とするものではない。
  2. 公害健康被害補償法(※)に基づく水俣病患者認定申請を受けた処分庁は、早期の処分を期待していた申請者が手続の遅延による不安感や焦燥感によって内心の静穏な感情を害されるとしても、このような結果を回避すべき条理上の作為義務を負うものではない。
  3. 一般旅客自動車運送事業の免許拒否処分につき、公聴会審理において申請者に主張立証の機会が十分に与えられなかったとしても、運輸審議会(当時)の認定判断を左右するに足る資料等が追加提出される可能性がなかった場合には、当該拒否処分の取消事由とはならない。
  4. 国税犯則取締法上、収税官吏が犯則嫌疑者に対し質問する際に拒否権の告知は義務付けられていないが、供述拒否権を保障する憲法の規定はその告知を義務付けるものではないから、国税犯則取締法上の質問手続は憲法に違反しない。
  5. 教育委員会の秘密会で為された免職処分議決について、免職処分の審議を秘密会で行う旨の議決に公開原則違反の瑕疵があるとしても、当該瑕疵は実質的に軽微なものであるから、免職処分の議決を取り消すべき事由には当たらない。

(注)※公害健康被害の補償に関する法律

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【答え】:2【解説】
1.行政手続は刑事手続とその性質においておのずから差異があることから、常に必ず行政処分の相手方等に事前の告知、弁解、防御の機会を与えるなどの一定の手続を設けることを必要とするものではない。
1・・・正しい
憲法31条では、「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」と定めています。
これに対して判例によると
「憲法31条の定める法定手続の保障は、直接には刑事手続に関するものであるが、行政手続については、それが刑事手続ではないとの理由のみで、そのすべてが当然に同条による保障の枠外にあると判断することは相当ではない。しかしながら、同条による保障が及ぶと解すべき場合であっても、一般に、行政手続は、刑事手続とその性質においておのずから差異があり、また、行政目的に応じて多種多様であるから、行政処分の相手方に事前の告知、弁解、防御の機会を与えるかどうかは、行政処分により制限を受ける権利利益の内容、性質、制限の程度、行政処分により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等を総合較量して決定されるべきものであって、常に必ずそのような機会を与えることを必要とするものではない。」
と判示しています。よって、本肢の内容は正しいです。
2.公害健康被害補償法に基づく水俣病患者認定申請を受けた処分庁は、早期の処分を期待していた申請者が手続の遅延による不安感や焦燥感によって内心の静穏な感情を害されるとしても、このような結果を回避すべき条理上の作為義務を負うものではない。
2・・・誤り
判例によると、
「一般に、処分庁が認定申請を相当期間内に処分すべきは当然であり、これにつき不当に長期間にわたって処分がされない場合には、早期の処分を期待していた申請者が不安感、焦燥感を抱かされ内心の静穏な感情を害されるに至るであろうことは容易に予測できることである。したがって、処分庁には、こうした結果を回避すべき条理上の作為義務があるということができる。」
と判示しています。
よって、本肢は、「作為義務を負うものではない。」としているので誤りです。
3.一般旅客自動車運送事業の免許拒否処分につき、公聴会審理において申請者に主張立証の機会が十分に与えられなかったとしても、運輸審議会(当時)の認定判断を左右するに足る資料等が追加提出される可能性がなかった場合には、当該拒否処分の取消事由とはならない。
3・・・正しい
一般旅客自動車運送事業の免許拒否処分につき、
運輸審議会は申請者に主張立証の機会が十分に与えられなかった不備があった。
このような事案について、
判例によると
「仮に運輸審議会が、公聴会審理においてより具体的に上告人の申請計画の問題点を指摘し、この点に関する意見及び資料の提出を促したとしても、上告人において、運輸審議会の認定判断を左右するに足る意見及び資料を追加提出しうる可能性があったとは認め難いのである。このような事情のもとにおいて、本件免許申請についての運輸審議会の審理手続における上記のような不備は、結局において、前記公聴会審理を要求する法の趣旨に違背する重大な違法とするには足りず、右審理の結果に基づく運輸審議会の決定(答申)自体に瑕疵があるということはできないから、右諮問を経てなされた運輸大臣の本件処分を違法として取り消す理由とはならないものといわなければならない。」
と判示しました。つまり、
申請者に主張立証の機会が十分に与えられなかった、という不備があっても、
運輸審議会(当時)の認定判断を左右するに足る資料等が追加提出される可能性がなかった場合には、
当該拒否処分の取消事由とはなりません

よって、正しいです。

4.国税犯則取締法上、収税官吏が犯則嫌疑者に対し質問する際に拒否権の告知は義務付けられていないが、供述拒否権を保障する憲法の規定はその告知を義務付けるものではないから、国税犯則取締法上の質問手続は憲法に違反しない。
4・・・正しい
判例によると、
「国税犯則取締法上の質問調査の手続は、犯則嫌疑者については、自己の刑事上の責任を問われるおそれのある事項についても供述を求めることになるものなので、「実質上刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する」ものというべきである。そのため、憲法38条1項の規定による供述拒否権の保障が及ぶものと解するのが相当である。しかしながら、・・・国税犯則取締法に供述拒否権告知の規定を欠き収税官吏が犯則嫌疑者に対し質問をするにあたりあらかじめ右の告知をしなかったからといって、その質問手続が憲法38条1項(何人も、自己に不利益な供述を強要されない)に違反することとなるものでない」よって、

国税犯則取締法上、収税官吏が犯則嫌疑者に対し質問する際に拒否権の告知は義務付けられていない。
しかし、供述拒否権を保障する憲法の規定はその告知を義務付けるものではないから、国税犯則取締法上の質問手続は憲法に違反しない、という本肢は正しいです。

判決文の理解の仕方は個別指導で解説します!

5.教育委員会の秘密会で為された免職処分議決について、免職処分の審議を秘密会で行う旨の議決に公開原則違反の瑕疵があるとしても、当該瑕疵は実質的に軽微なものであるから、免職処分の議決を取り消すべき事由には当たらない。
5・・・正しい
判例によると、
「教育委員会法のもとにおいて、教育委員会が秘密会で免職処分の議決をした場合に、右秘密会で審議する旨の議決に公開違反の瑕疵があったとしても、
  1. 同委員会においては、従来から人事案件はすべて秘密会で審議しており、各委員がこれを了知したうえ全員一致で秘密会で審議する旨を議決したものであって、
  2. その議決を公開の会議で行うことが議決の公正確保のために実質的にさして重要な意義を有せず、
  3. また、その議決は、一部関係者だけが傍聴できない状況のもとで行われた点において公開違反があるにとどまり、全く秘密裡にされたものであるとはいえないなど判示のような事情があるときは、

公開違反の瑕疵は、実質的に公開制度の趣旨目的に反するというに値しないほど軽微なものとして、免職処分の議決を取り消すべき事由にはあたらないものと解するのが相当である。」
と判示しています。

つまり、上記1~3くらいであれば、免職処分の議決の取消し事由にはならない、ということです。

よって、
教育委員会の秘密会で為された免職処分議決について、免職処分の審議を秘密会で行う旨の議決に公開原則違反の瑕疵があるとしても、当該瑕疵は実質的に軽微なものであるから、免職処分の議決を取り消すべき事由には当たりません。

したがって、正しいです。

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平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 内閣 問33 民法・債権
問4 内閣 問34 民法:債権
問5 財政 問35 民法:親族
問6 法の下の平等 問36 商法
問7 社会権 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成24年・2012|問14|行政不服審査法

行政不服審査法に基づく不服申立てに関する次の記述のうち、法令または判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 行政不服申立てにおいては、行政処分の取消しを求めることだけではなく、公法上の法律関係の確認を求めることも許される。
  2. 行政不服審査法は、不服申立ての対象となる行政処分については、いわゆる一般概括主義を採用しており、不服申立てをすることができない処分を列挙してはいない。
  3. 行政処分について審査請求の申立適格を有するのは、処分の相手方に限られ、それ以外の第三者は、他の法律に特別の定めがない限り、申立適格を有しない。
  4. 憲法による適正手続の保障の趣旨は、不服申立ての審理手続にも及ぶので、その手続においても、口頭弁論主義が原則とされている。
  5. 審査請求の裁決は、書面でしなければならず、緊急を要する場合であっても、口頭ですることは認められていない。

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【答え】:5【解説】
1.行政不服申立てにおいては、行政処分の取消しを求めることだけではなく、公法上の法律関係の確認を求めることも許される。
1・・・妥当ではない
行政不服申し立てとは、行政庁の処分に不服がある場合に、「審査してください」とか「調査してください」と請求できるだけです。「公法上の法律関係の確認」はできません。
公法上の法律関係の確認」ができるのは「行政事件訴訟(形式的当事者訴訟)」です。
2.行政不服審査法は、不服申立ての対象となる行政処分については、いわゆる一般概括主義を採用しており、不服申立てをすることができない処分を列挙してはいない。
2・・・妥当ではない
行政不服審査法は、不服申立ての対象となる行政処分については、いわゆる一般概括主義を採用していますが、
下記のように、一部不服申し立てをすることができない処分(例外)についても列挙しています。

行政不服審査法7条
次に掲げる処分及びその不作為については、不服申し立てはできない。

  1. 国会の両院若しくは一院又は議会の議決によってされる処分
  2. 裁判所若しくは裁判官の裁判により、又は裁判の執行としてされる処分
3.行政処分について審査請求の申立適格を有するのは、処分の相手方に限られ、それ以外の第三者は、他の法律に特別の定めがない限り、申立適格を有しない。
3・・・妥当ではない
行政不服審査法では、不服申立適格に関する規定は設けていません。
しかし、判例によると
「不服申立をする法律上の利益がある者、すなわち、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者」
と判示しています。したがって、処分について不服申立適格を有するのは、処分の相手方に限られたものではなく、「法律上の利益がある者」であれば、処分の相手方以外の第三者であっても不服申立適格を有します。よって、本肢は妥当ではないです。
4.憲法による適正手続の保障の趣旨は、不服申立ての審理手続にも及ぶので、その手続においても、口頭弁論主義が原則とされている。
4・・・妥当ではない
憲法による適正手続の保障の趣旨は、不服申立ての審理手続きに及ぶという規定はなく、また、判例もありません。そして、
審査請求人は、前条第五項の規定により送付された弁明書に記載された事項に対する反論を記載した書面(反論書)を提出することができます(行政不服審査法30条)。
したがって、不服申立ての審理手続きは、原則、書面審理です。よって、本肢は上記2点について妥当ではありません。
5.審査請求の裁決は、書面でしなければならず、緊急を要する場合であっても、口頭ですることは認められていない。
5・・・妥当
裁決は、一定事項を記載し、審査庁が記名押印した裁決書によりしなければなりません(行政不服審査法50条1項)。
よって、緊急を要する場合も例外ではなく、必ず書面で裁決しないといけません。

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平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 内閣 問33 民法・債権
問4 内閣 問34 民法:債権
問5 財政 問35 民法:親族
問6 法の下の平等 問36 商法
問7 社会権 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成24年・2012|問12|行政手続法

行政手続法における意見公募手続に関する定めについての次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 意見公募手続の対象となる命令等は、外部に対して法的拘束力を有するものに限られるから、行政処分の基準は含まれるが、行政指導の指針は含まれない。
  2. 意見公募手続における意見提出期間について、やむを得ない理由により、同法が定める期間を下回ることとされる場合には、その理由を明らかにしなければならない。
  3. 意見公募手続を実施して命令等を定めた場合には、その公布と同時期に、その題名や公示日とともに、提出された意見のうち、同一の意見が法定された数を超えたものについて、その意見を考慮した結果を公示しなければならない。
  4. 意見公募手続を実施して一般の意見を公募した以上、命令等を制定しないことは許されず、命令等を制定して、提出された意見等を公示しなければならない。
  5. 意見公募手続を実施した結果、提出された意見が法定された数に満たない場合には、緊急に命令等を定める必要がある場合を除き、再度の意見公募手続を実施しなければならない。

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【答え】:2【解説】
1.意見公募手続の対象となる命令等は、外部に対して法的拘束力を有するものに限られるから、行政処分の基準は含まれるが、行政指導の指針は含まれない。
1・・・誤り
命令等とは、内閣又は行政機関が定める下記事項です(行政手続法2条8号)。
  1. 法律に基づく命令又は規則
  2. 審査基準
  3. 処分基準
  4. 行政指導指針

よって、行政指導指針も「意見公募手続の対象となる命令等」に含まれるので、誤りです。

2.意見公募手続における意見提出期間について、やむを得ない理由により、同法が定める期間を下回ることとされる場合には、その理由を明らかにしなければならない。
2・・・正しい
命令等制定機関は、命令等を定めようとする場合において、30日以上の意見提出期間を定めることができないやむを得ない理由があるときは、30日を下回る意見提出期間を定めることができる。そして、30日を下回る意見提出期間を定める場合においては、当該命令等の案の公示の際その理由を明らかにしなければなりません(行政手続法40条)。
3.意見公募手続を実施して命令等を定めた場合には、その公布と同時期に、その題名や公示日とともに、提出された意見のうち、同一の意見が法定された数を超えたものについて、その意見を考慮した結果を公示しなければならない。
3・・・誤り
命令等制定機関は、意見公募手続を実施して命令等を定めた場合には、当該命令等の公布と同時期に、次に掲げる事項を公示しなければなりません(行政手続法43条1項)。
  1. 命令等の題名
  2. 命令等の案の公示の日
  3. 提出意見(提出意見がなかった場合にあっては、その旨)
  4. 提出意見を考慮した結果及びその理由

よって、「提出された意見のうち、同一の意見が法定された数を超えたものについて、その意見を考慮した結果」というのは誤りで
法定数はそもそもなく、提出意見は公示しなければならないし、提出意見を考慮した結果とその理由も公示しなければなりません。

4.意見公募手続を実施して一般の意見を公募した以上、命令等を制定しないことは許されず、命令等を制定して、提出された意見等を公示しなければならない。
4・・・誤り
命令等制定機関は、意見公募手続を実施したにもかかわらず命令等を定めないこととした場合には、「その旨」「命令等の題名」「命令等の案の公示日」を速やかに公示しなければなりません(行政手続法43条4項)。したがって、意見公募手続を実施した後に、命令等を制定しないことも可能です。
5.意見公募手続を実施した結果、提出された意見が法定された数に満たない場合には、緊急に命令等を定める必要がある場合を除き、再度の意見公募手続を実施しなければならない。
5・・・誤り
選択肢3でも触れましたが、提出意見について法定数は、そもそもありません
よって、誤りです。

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平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 内閣 問33 民法・債権
問4 内閣 問34 民法:債権
問5 財政 問35 民法:親族
問6 法の下の平等 問36 商法
問7 社会権 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成24年・2012|問11|行政手続法

廃棄物処理法(※)に基づく産業廃棄物処理業の許可は、都道府県知事の権限とされているが、それに関する行政手続についての次の記述のうち、妥当なものはどれか。ただし、廃棄物処理法には、行政手続に関する特別の定めはない。

  1. 申請に対する処分の手続に関し、当該都道府県の行政手続条例に行政手続法と異なる定めがあったとしても、この処理業許可の申請の知事による処理については、行政手続法が適用される。
  2. 国の法律である廃棄物処理法の適用は、全国一律になされるべきであるから、同法に基づく知事による処理業許可に関する審査基準は、当該都道府県の知事ではなく、主務大臣が設定することとなる。
  3. 申請に対する処分の審査基準は、行政手続法によって設定が義務付けられた法規命令であるから、廃棄物処理法に基づき知事がする処理業の許可についても、その申請を審査基準に違反して拒否すれば、その拒否処分は違法となる。
  4. 一度なされた処理業の許可を知事が取り消す場合には、相手方に対して聴聞を実施しなければならないが、処理業の許可申請を拒否する処分をする場合には、申請者に弁明の機会を付与すべきこととされる。
  5. 提出された処理業の許可申請書の記載に形式上の不備があった場合については、知事は、期限を定めて申請者に補正を求めなければならず、直ちに申請を拒否する処分をすることは許されない。

(注)※廃棄物の処理及び清掃に関する法律

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【答え】:1【解説】
1.申請に対する処分の手続に関し、当該都道府県の行政手続条例に行政手続法と異なる定めがあったとしても、この処理業許可の申請の知事による処理については、行政手続法が適用される。
1・・・正しい
地方公共団体については、下記行為は、行政手続法の次章(申請に対する処分)から第六章(意見公募手続等)までの規定は、適用しません(行政手続法3条3項)。
  1. 地方公共団体の機関がする処分(根拠規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)
  2. 行政指導
  3. 地方公共団体の機関に対する届出(根拠規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)
  4. 地方公共団体の機関が命令等を定める行為

本肢は、地方公共団体の機関(都道府県知事)が法律(廃棄物処理法)に基づいてする処分(許可)の手続きなので、行政手続法の適用がある

ちなみに、1には該当しません。なぜなら、根拠が条例又は規則ではないからです。

2.国の法律である廃棄物処理法の適用は、全国一律になされるべきであるから、同法に基づく知事による処理業許可に関する審査基準は、当該都道府県の知事ではなく、主務大臣が設定することとなる。
2・・・誤り
行政庁は、審査基準を定めます(行政手続法5条1項)。
つまり、処理業許可に関する審査基準は知事が定めるので、本肢は誤りです。
3.申請に対する処分の審査基準は、行政手続法によって設定が義務付けられた法規命令であるから、廃棄物処理法に基づき知事がする処理業の許可についても、その申請を審査基準に違反して拒否すれば、その拒否処分は違法となる。
3・・・誤り
申請に対する処分の審査基準は、行政規則であって、法規命令ではありません。
行政規則については、行政機関内部のルールであり、行政規則に従わなかったとしても、「不当」の問題にはなるが、「違法」にはなりません。※法規命令の場合、従わないと「違法」となります。
4.一度なされた処理業の許可を知事が取り消す場合には、相手方に対して聴聞を実施しなければならないが、処理業の許可申請を拒否する処分をする場合には、申請者に弁明の機会を付与すべきこととされる。
4・・・誤り
行政庁は、不利益処分をしようとする場合には、当該不利益処分の名あて人となるべき者について、意見陳述のための手続(聴聞もしくは弁明の機会の付与)を執らなければなりません(行政手続法13条1項)。
そして、申請拒否の処分は不利益処分に含まれません(行政手続法2条4号ロ)。
したがって、申請を拒否する場合、「弁明の機会を付与」も「聴聞」も不要です。
5.提出された処理業の許可申請書の記載に形式上の不備があった場合については、知事は、期限を定めて申請者に補正を求めなければならず、直ちに申請を拒否する処分をすることは許されない。
5・・・誤り
行政庁は、申請がその事務所に到達したときは遅滞なく当該申請の審査を開始しなければならず、かつ、申請書の記載事項に不備がないこと、申請書に必要な書類が添付されていること、申請をすることができる期間内にされたものであることその他の法令に定められた申請の形式上の要件に適合しない申請については、速やかに、申請者に対し相当の期間を定めて当該申請の補正を求め又は当該申請により求められた許認可等を拒否しなければなりません行政手続法7条)。
よって、必ずしも「期限を定めて申請者に補正を求めなければならない」わけではありません。「補正を求める」もしくは「拒否」いずれかを行います。

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平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 内閣 問33 民法・債権
問4 内閣 問34 民法:債権
問5 財政 問35 民法:親族
問6 法の下の平等 問36 商法
問7 社会権 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成24年・2012|問9|行政法

行政契約に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。見解が分かれる場合は、最高裁判所の判例による。

  1. 行政契約でも、その内容が国民に義務を課したり、その権利を制限するものについては、法律の留保の原則に関する侵害留保理論に立った場合、法律の根拠が必要であると解される。
  2. 地方公共団体が、地方自治法上、随意契約によることができない場合であるにもかかわらず、随意契約を行ったとしても、かかる違法な契約は、私法上、当然に無効となるものではない。
  3. 地方公共団体がごみ焼却場を建設するために、建設会社と建築請負契約を結んだ場合、ごみ焼却場の操業によって重大な損害が生ずるおそれのある周辺住民は、当該契約の締結行為について、当該地方公共団体を被告として、抗告訴訟としての差止めの訴えを提起することができる。
  4. 地方公共団体の長が、指名競争入札の際に行う入札参加者の指名に当たって、法令の趣旨に反して域内の業者のみを指名する運用方針の下に、当該運用方針に該当しないことのみを理由に、継続して入札に参加してきた業者を指名競争入札に参加させない判断をしたとしても、その判断は、裁量権の逸脱、濫用には当たらず、違法ではない。
  5. 地方公共団体が、産業廃棄物処理施設を操業する企業との間で、一定の期日をもって当該施設の操業を停止する旨の公害防止協定を結んだものの、所定の期日を過ぎても当該企業が操業を停止しない場合において、当該地方公共団体が当該企業を被告として操業差止めを求める訴訟は、法律上の争訟に該当せず、不適法である。

>解答と解説はこちら


【答え】:2【解説】
1.行政契約でも、その内容が国民に義務を課したり、その権利を制限するものについては、法律の留保の原則に関する侵害留保理論に立った場合、法律の根拠が必要であると解される。
1・・・誤り
行政契約とは、行政主体が、「他の行政主体や私人(国民や法人等)」と対等な立場で締結する契約を言います。
「対等な立場で行う」というのがポイントで、行政行為のように、行政庁が上から公権力を行使するのとは違うということです。
よって、契約により、国民に義務を課したり、その権利を制限するものであっても、法律の根拠は不要です。
したがって、「法律の根拠が必要」は、誤りです。
2.地方公共団体が、地方自治法上、随意契約によることができない場合であるにもかかわらず、随意契約を行ったとしても、かかる違法な契約は、私法上、当然に無効となるものではない。
2・・・正しい
判例によると、
「普通地方公共団体が随意契約の制限に関する法令に違反して締結した契約は、
  1. 地方自治法施行令167条の2第1項の掲げる事由(随意契約ができる場合)のいずれにも当たらないことが何人の目にも明らかである場合や
  2. 契約の相手方において随意契約の方法によることが許されないことを知り又は知り得べかりし(知ることができた)場合など

当該契約を無効としなければ随意契約の締結に制限を加える法令の趣旨を没却する結果となる特段の事情が認められる場合に限り、

私法上無効となる。」
と判示しています。

つまり、上記、1や2のような特段の事情があれば無効となるが
それ以外は、有効ということです。

本肢の内容は、上記1、2のような特段の事情に該当する旨の記載はないので
原則、有効です。

3.地方公共団体がごみ焼却場を建設するために、建設会社と建築請負契約を結んだ場合、ごみ焼却場の操業によって重大な損害が生ずるおそれのある周辺住民は、当該契約の締結行為について、当該地方公共団体を被告として、抗告訴訟としての差止めの訴えを提起することができる。
3・・・誤り
判例によると、
「本件ごみ焼却場は、東京都Yが先に私人から買収した都所有の土地の上に、私人との間に対等の立場に立って締結した私法上の契約により設置されたものである。
そのため、「行政庁の処分」にあたらないから、抗告訴訟はできない
としています。よって、本肢の「抗告訴訟としての差止めの訴えを提起することができる。」は誤りです。抗告訴訟(行政訴訟)はできないですが、
民事訴訟は可能です。
4.地方公共団体の長が、指名競争入札の際に行う入札参加者の指名に当たって、法令の趣旨に反して域内の業者のみを指名する運用方針の下に、当該運用方針に該当しないことのみを理由に、継続して入札に参加してきた業者を指名競争入札に参加させない判断をしたとしても、その判断は、裁量権の逸脱、濫用には当たらず、違法ではない。
4・・・誤り
判例によると、
「主たる営業所が村内にないなどの事情から形式的に村外業者に当たると判断し,そのことのみを理由として,他の条件いかんにかかわらず,村外業者を指名せず指名競争入札に参加させない措置を採ったとすれば,それは,考慮すべき事項を十分考慮することなく,一つの考慮要素にとどまる村外業者であることのみを重視している点において,極めて不合理であり,社会通念上著しく妥当性を欠くものといわざるを得ず,そのような措置に裁量権の逸脱又は濫用があったと判断できる。」
としています。よって、「区域内の業者でない」ことのみを理由に指名入札に参加させないことは、裁量権の逸脱・濫用に当たり違法ということです。よって、本肢は誤りです。
5.地方公共団体が、産業廃棄物処理施設を操業する企業との間で、一定の期日をもって当該施設の操業を停止する旨の公害防止協定を結んだものの、所定の期日を過ぎても当該企業が操業を停止しない場合において、当該地方公共団体が当該企業を被告として操業差止めを求める訴訟は、法律上の争訟に該当せず、不適法である。
5・・・誤り
判例によると、
処分業者(企業)が、公害防止協定において、地方自治体に対し、その事業や処理施設を将来廃止する旨を約束することは、企業自身の自由な判断で行えることであり(民法における契約自由の原則、私法上の契約)、その結果、許可が効力を有する期間内に事業や処理施設が廃止されることがあったとしても、契約自体、法律違反ではない。したがって、当該契約には法的拘束力があるから、一定期間を過ぎても、契約に違反して操業を停止しない場合、地方公共団体が当該企業を被告として操業差止めを求める訴訟を提起することは、可能です。よって「法律上の争訟に該当せず、不適法である」は誤りです。「法律上の争訟に該当し、適法」が正しいです。

上記解説で、「あれ?」と思われた方はしっかり読んでいる方です。

この解説(判例の内容)は実は非常にややこしく理解が必要な内容です。

この点を理解しておかないと、本試験でひっかけ問題にひっかかってしまい失点してしまいます。 なので、この点については個別指導で解説いたします! しっかり理解ポイントを理解していきましょう!

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平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 内閣 問33 民法・債権
問4 内閣 問34 民法:債権
問5 財政 問35 民法:親族
問6 法の下の平等 問36 商法
問7 社会権 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成24年・2012|問10|行政法

次の文章の空欄ア~オに当てはまる語句の組合せとして、正しいものはどれか。

 許認可等の法効果について法律で規定された事項以外の内容が付加されることがある。行政法学上、これを、附款という。附款とは、行政行為の効果を制限するため、行政庁の意思表示の主たる内容に付加された従たる意思表示であると説明されている。
附款のうち、条件とは、行政行為の効力の発生・消滅を発生[ ア ]事実にかからしめる附款である。条件成就により効果が発生する[ イ ] 条件と、効果が消滅する[ ウ ]条件とに区別される。
許認可等を行うに際し、法令により課される義務とは別に作為義務又は不作為義務を課すことがあるが、これは、負担と呼ばれ、附款の一種であるとされている。条件と負担との相違は、各々の附款に違反した場合の行政処分の効力への影響にあるとされている。すなわち、ある行政行為に付された附款を条件とみると、これが満たされない場合、本体たる行政行為の効力に影響が[ エ ] ことになる。一方、負担 とみると、これが満たされない場合、本体たる行政行為の効力に影響が[オ]ことになる。しかし、条件と負担との区別は実際には困難であるという意見もある。

  1. ア:不確実な イ:停止 ウ:解除 エ:及ばない オ:及ぶ
  2. ア:確実な イ:停止 ウ:解除 エ:及ばない オ:及ぶ
  3. ア:確実な イ:解除 ウ:停止 エ:及ぶ オ:及ばない
  4. ア:不確実な イ:解除 ウ:停止 エ:及ばない オ:及ぶ
  5. ア:不確実な イ:停止 ウ:解除 エ:及ぶ オ:及ばない

>解答と解説はこちら


【答え】:5

 

【解説】
ア.条件とは、行政行為の効力の発生・消滅を発生[ ア ]事実にかからしめる附款である。
条件成就により効果が発生する[ イ ] 条件と、効果が消滅する[ ウ ]条件とに区別される。
ア・・・不確実
イ・・・停止
ウ・・・解除
条件とは、民法でもある「停止条件」「解除条件」の2種類と同じです。
行政行為の効果の発生・消滅を将来発生するかどうかが「不確実」な事実にかからせる意思表示です。停止条件とは、条件が成就することで(満たされることで)、行政行為の効果が発生する条件を言います。
例えば、「会社が成立したら免許を与える」といった場合、会社が成立することで、「免許を与える」という行政行為の効果が発生します。解除条件とは、条件が成就することで(満たされることで)、行政行為の効果が消滅する条件を言います。
例えば、「定められた期間内に事業報告をしないと免許を取り消す」といった場合、事業報告をしないことで、「免許付与」の効果が消滅することになります。
  • 「付款・附款(条件、期限、負担、撤回権の留保、法律効果の一部除外)」の詳細解説はこちら>>

エ.オ.許認可等を行うに際し、法令により課される義務とは別に作為義務又は不作為義務を課すことがあるが、これは、負担と呼ばれ、附款の一種であるとされている。

条件と負担との相違は、各々の附款に違反した場合の行政処分の効力への影響にあるとされている。

すなわち、ある行政行為に付された附款を条件とみると、これが満たされない場合、本体たる行政行為の効力に影響が[ エ ] ことになる。

一方、負担 とみると、これが満たされない場合、本体たる行政行為の効力に影響が[オ]ことになる。しかし、条件と負担との区別は実際には困難であるという意見もある。

エ・・・及ぶ
オ・・・及ばない
条件については、条件を満たさないと、効力に影響を及ぼします
例えば、「会社が成立したら免許を与える」といった場合、会社が成立しなかった場合、「免許を与えない」ことになり、効力に影響を与えたことになります。一方、
負担については、負担の満たさない場合でも効力に影響は与えません
例えば、運転「免許」の負担として「眼鏡等」を付けて運転してください、というのがあります。
これは、負担なので、もし眼鏡等を付けずに運転して捕まっても、違反で反則金を取られるだけで、「免許」自体には影響を及ぼしません。
つまり、免許取消しとはなりません。

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平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 内閣 問33 民法・債権
問4 内閣 問34 民法:債権
問5 財政 問35 民法:親族
問6 法の下の平等 問36 商法
問7 社会権 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成24年・2012|問8|行政法

行政法における信頼保護に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、正しいものはどれか。

  1. 地方公共団体が、将来にわたって継続すべき一定内容の施策を決定した後に、社会情勢の変動等が生じたとしても、決定された施策に応じた特定の者の信頼を保護すべき特段の事情がある場合には、当該地方公共団体は、信義衡平の原則によりー度なされた当該決定を変更できない。
  2. 公務員として採用された者が有罪判決を受け、その時点で失職していたはずのところ、有罪判決の事実を秘匿して相当長期にわたり勤務し給与を受けていた場合には、そのような長期にわたり事実上勤務してきたことを理由に、信義誠実の原則に基づき、新たな任用関係ないし雇用関係が形成される。
  3. 課税処分において信義則の法理の適用により当該課税処分が違法なものとして取り消されるのは、租税法規の適用における納税者間の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお、当該課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合に限られる。
  4. 課税庁が課税上の取扱いを変更した場合において、それを通達の発出などにより納税者に周知する措置をとらなかったとしても、そのような事情は、過少申告加算税が課されない場合の要件として国税通則法に規定されている「正当な理由があると認められる」場合についての判断において考慮の対象とならない。
  5. 従来課税の対象となっていなかった一定の物品について、課税の根拠となる法律所定の課税品目に当たるとする通達の発出により新たに課税の対象とすることは、仮に通達の内容が根拠法律の解釈として正しいものであったとしても、租税法律主義及び信義誠実の原則に照らし、違法である。

>解答と解説はこちら


【答え】:3【解説】
1.地方公共団体が、将来にわたって継続すべき一定内容の施策を決定した後に、社会情勢の変動等が生じたとしても、決定された施策に応じた特定の者の信頼を保護すべき特段の事情がある場合には、当該地方公共団体は、信義衡平の原則によりー度なされた当該決定を変更できない。
1・・・誤り
判例によると
「地方公共団体において、損害を補償するなどの代償的措置を講ずることなく施策を変更することは、それがやむをえない客観的事情によるのでない限り、当事者間に形成された信頼関係を不当に破壊するものとして違法性を帯び、地方公共団体の不法行為責任を生ぜしめるものといわなければならない。」
と判示しています。したがって、損害を補償するなどの代償的措置を講ずれば、一度なされた決定を変更できます。よって、誤りです。
2.公務員として採用された者が有罪判決を受け、その時点で失職していたはずのところ、有罪判決の事実を秘匿して相当長期にわたり勤務し給与を受けていた場合には、そのような長期にわたり事実上勤務してきたことを理由に、信義誠実の原則に基づき、新たな任用関係ないし雇用関係が形成される。
2・・・誤り
判例の要旨によると、
「郵政事務官として採用された者Aが,禁錮以上の刑に処せられたという失職事由が発生した後も約26年11か月にわたり勤務を継続した場合に,国(旧日本郵政公社,郵便事業株式会社が逐次その地位を承継)において上記の者Aが失職した旨を主張することは,上記の者が上記失職事由の発生を隠して事実上勤務を継続し給与の支給を受け続けていたにすぎないという事情の下では,信義則に反し権利の濫用に当たるということはできない。」
と判示しています。
つまり、国が「Aの失職」を主張してもよい、ということです。したがって、新たな任用関係ないし雇用関係が形成されるわけではないので、誤りです。少し分かりにくい文章なので、個別指導で、読み方を解説します!
3.課税処分において信義則の法理の適用により当該課税処分が違法なものとして取り消されるのは、租税法規の適用における納税者間の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお、当該課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合に限られる。
3・・・正しい
判例によると、
「租税法規の適用における納税者間の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお当該課税処分に係る課税を免れしめて(免除して)納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合に、初めて信義則の法理の適用の是非を考えるべき」
と判示しています。つまり、納税者間の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお当該課税処分に係る課税を免れしめて(免除して)納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合に限って、信義則に反して、課税処分が違法となる、ということです。よって、本肢は正しいです。
4.課税庁が課税上の取扱いを変更した場合において、それを通達の発出などにより納税者に周知する措置をとらなかったとしても、そのような事情は、過少申告加算税が課されない場合の要件として国税通則法に規定されている「正当な理由があると認められる」場合についての判断において考慮の対象とならない。
4・・・誤り
判例によると、
「課税庁が、(課税上の)従来の取扱いを変更しようとする場合には,法令の改正によることが望ましく,仮に法令の改正によらないとしても,通達を発するなどして変更後の取扱いを納税者に周知させ,これが定着するよう必要な措置を講ずべきものである。ところが,事実関係等によれば,課税庁は,課税上の取扱いを変更したにもかかわらず,その変更をした時点では通達によりこれを明示することなく,平成14年6月の所得税基本通達の改正によって初めて変更後の取扱いを通達に明記したというのである。

そうすると,少なくともそれまでの間は,納税者において,従来の取り扱い通りの申告した(結果として過少申告となった)としても、それをもって納税者の主観的な事情に基づく単なる法律解釈の誤りにすぎないものということはできない。

以上のような事情の下においては,本件申告において,・・過少申告加算税を賦課することは不当又は酷になるというのが相当であるから,国税通則法に規定されている「正当な理由」があるものというべきである。」
と判示しています。

よって、課税庁が課税上の取扱いを変更した場合において、それを通達の発出などにより納税者に周知する措置をとらなかった場合、「正当な理由があると認められる」場合についての判断において考慮の対象となるので、本肢は誤りです。

5.従来課税の対象となっていなかった一定の物品について、課税の根拠となる法律所定の課税品目に当たるとする通達の発出により新たに課税の対象とすることは、仮に通達の内容が根拠法律の解釈として正しいものであったとしても、租税法律主義及び信義誠実の原則に照らし、違法である。
5・・・誤り
従来課税の対象となっていなかった一定の物品(パチンコ台)について、課税の根拠となる法律所定の課税品目に当たるとする通達が出た事案について、判例によると
「本件の通達による課税がたまたま通達を機縁として行われたものであっても、通達の内容が法の正しい解釈に合致するものである以上、本件課税処分は法の根拠に基く処分と解することができる
としています。つまり、本肢の「租税法律主義及び信義誠実の原則に照らし、違法である」は誤りです。

通達の内容が根拠法律の解釈として正しいものであれば、課税処分も合法と、判例では言っています。

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平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 内閣 問33 民法・債権
問4 内閣 問34 民法:債権
問5 財政 問35 民法:親族
問6 法の下の平等 問36 商法
問7 社会権 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成24年・2012|問7|憲法・社会権

労働組合の活動に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 組合員の生活向上のために、統一候補を決定し、組合を挙げてその選挙運動を推進することなども労働組合の活動として許されるので、組合の方針に反し対立候補として立候補した組合員を統制違反者として処分することも許される。
  2. 労働者の権利利益に直接関係する立法や行政措置を促進し、またはこれに反対する活動は、政治活動としての一面をもち、組合員の政治的思想・見解等とも無関係ではないが、労働組合の目的の範囲内の活動とみることができるので、組合員に費用負担などを求めることも許される。
  3. 国民全体の奉仕者である公務員の争議行為を禁止すること自体は憲法に違反しないが、争議行為をあおる行為の処罰が憲法上許されるのは、違法性が強い争議行為に対し、争議行為に通常随伴しない態様で行われる場合に限られる。
  4. 公務員の争議行為は禁止されているが、政治的目的のために行われる争議行為は、表現の自由としての側面も有するので、これを規制することは許されない。
  5. 人事院勧告は公務員の争議行為禁止の代償措置であるから、勧告にしたがった給与改定が行われないような場合には、それに抗議して争議行為を行った公務員に対し懲戒処分を行うことは許されない。

>解答と解説はこちら


【答え】:2【解説】
1.組合員の生活向上のために、統一候補を決定し、組合を挙げてその選挙運動を推進することなども労働組合の活動として許されるので、組合の方針に反し対立候補として立候補した組合員を統制違反者として処分することも許される。
1・・・誤り
判例によると、
「当該組合員に対し、勧告または説得の域を超え、立候補を取りやめることを要求し、これに従わないことを理由に当該組合員を統制違反者として処分することは、組合の統制権の限界を超えるものとして、違法といわなければならない。」
と判示しています。
つまり、本肢の「組合の方針に反し対立候補として立候補した組合員を統制違反者として処分することも許される」は誤りです。
正しくは「許されず、違法です。」

詳細解説は個別指導で行います!

2.労働者の権利利益に直接関係する立法や行政措置を促進し、またはこれに反対する活動は、政治活動としての一面をもち、組合員の政治的思想・見解等とも無関係ではないが、労働組合の目的の範囲内の活動とみることができるので、組合員に費用負担などを求めることも許される。
2・・・正しい
判例によると
「組合員個人の政治的立場の相違を超えて労働組合本来の目的を達成するための広い意味における経済的活動ないしはこれに付随する活動であるともみられるものであって、このような活動について組合員の協力を要求しても、その政治的自由に対する制約の程度は極めて軽微なものということができる。それゆえ、このような活動については、労働組合の自主的な政策決定を優先させ、組合員の費用負担を含む協力義務を肯定すべきである。」
と判示しています。よって、組合員に費用負担などを求めることも許されます。

詳細解説は個別指導で行います!
判決文はしっかり理解できるようにしましょう!
そうしないと、なかなか合格は難しいです。
個別指導では、どのように理解するかまで解説しています!

3.国民全体の奉仕者である公務員の争議行為を禁止すること自体は憲法に違反しないが、争議行為をあおる行為の処罰が憲法上許されるのは、違法性が強い争議行為に対し、争議行為に通常随伴しない態様で行われる場合に限られる。
3・・・誤り
判例によると、
「あおり行為等の罪として刑事制裁を科されるのはそのうち違法性の強い争議行為に対するものに限るとし、あるいはまた、あおり行為等につき、争議行為の企画、共謀、説得、慫慂、指令等を争議行為にいわゆる通常随伴するものとして、国公法上不処罰とされる争議行為自体と同一視し、かかるあおり等の行為自体の違法性の強弱または社会的許容性の有無を論ずることは、いずれも、とうてい是認することができない。」
と判示しています。つまり、
あおり行為等の罪として刑事制裁を科されるのは、違法性の強い争議行為に対するものに限る・・・ということはとうてい認められない
また
あおり等の行為自体の違法性の強弱・・・を論ずることも、とうてい認められない」ということから、本肢の「あおる行為の処罰が憲法上許されるのは、違法性が強い争議行為に対し、争議行為に通常随伴しない態様で行われる場合に限られる。」というのは誤りです。
4.公務員の争議行為は禁止されているが、政治的目的のために行われる争議行為は、表現の自由としての側面も有するので、これを規制することは許されない。
4・・・誤り
判例によると
「公務員については、経済目的に出たものであると、はたまた、政治目的に出たものであるとを問わず、国公法上許容された争議行為なるものが存在するとすることは、とうていこれを是認することができない」
と判示しています。
つまり、公務員の争議行為は禁止されているが、政治的目的のために行われる争議行為であったとしても禁止だということです。そのため、「政治的目的のために行われる争議行為を規制することは許されない。」という記述は誤りです。
5.人事院勧告は公務員の争議行為禁止の代償措置であるから、勧告にしたがった給与改定が行われないような場合には、それに抗議して争議行為を行った公務員に対し懲戒処分を行うことは許されない。
5・・・誤り
判例の要旨によると
「人事院勧告の不実施を契機としてその完全実施等の要求を掲げて行われたストライキに関与したことを理由としてされた農林水産省職員らに対する停職六月ないし三月の各懲戒処分は、右ストライキが当局の事前警告を無視して二度にわたり敢行された大規模なものであり、右職員らが、右ストライキを指令した労働組合の幹部としてその実施に指導的な役割を果たし、過去に停職、減給等の懲戒処分を受けた経歴があるなどの原判示の事実関係の下においては、著しく妥当性を欠き懲戒権者の裁量権の範囲を逸脱したものとはいえない。」
としており、人事院勧告は公務員の争議行為禁止の代償措置であるから、勧告にしたがった給与改定が行われないような場合であっても、それに抗議して争議行為を行った公務員に対し懲戒処分を行うことは許されます

個別指導では、分かりやすく解説しています!

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平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 内閣 問33 民法・債権
問4 内閣 問34 民法:債権
問5 財政 問35 民法:親族
問6 法の下の平等 問36 商法
問7 社会権 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成24年・2012|問6|憲法・法の下の平等

次の文章は、ある最高裁判所判決において、国籍取得の際の取り扱いの区別が憲法14条に違反するか否かにつき、審査するに当たっての基本的考え方を示した部分である。次の記述のうち、この文章から読み取れない内容を述べているものはどれか。

 憲法10条は、「日本国民たる要件は、法律でこれを定める。」と規定し、これを受けて、国籍法は、日本国籍の得喪に関する要件を規定している。憲法10条の規定は、国籍は国家の構成員としての資格であり、国籍の得喪に関する要件を定めるに当たってはそれぞれの国の歴史的事情、伝統、政治的、社会的及び経済的環境等、種々の要因を考慮する必要があることから、これをどのように定めるかについて、立法府の裁量判断にゆだねる趣旨のものであると解される。しかしながら、このようにして定められた日本国籍の取得に関する法律の要作によって生じた区別が、合理的理由のない差別的取扱いとなるときは、憲法14条1項違反の問題を生ずることはいうまでもない。すなわち、立法府に与えられた上記のような裁量権を考慮しても、なおそのような区別をすることの立法目的に合理的な根拠が認められない場合、又はその具体的な区別と上記の立法目的との間に合理的関連性が認められない場合には、当該区別は、合理的な理由のない差別として、同項に違反するものと解されることになる。
日本国籍は、我が国の構成員としての資格であるとともに、我が国において基本的人権の保障、公的資格の付与、公的給付等を受ける上で意味を持つ重要な法的地位でもある。一方、父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得するか否かということは、子にとっては自らの意思や努力によっては変えることのできない父母の身分行為に係る事柄である。したがって、このような事柄をもって日本国籍取得の要件に関して区別を生じさせることに合理的な理由があるか否かについては、慎重に検討することが必要である。

(最大判平成20年6月4日民集62巻6号1367頁)

  1. 立法が不合理な差別を行っていないかどうかは、立法目的の合理性、立法目的と取り扱いの区別との合理的関連性という二点から判断される。
  2. 憲法が国籍法制の内容を立法者の裁量判断に委ねていることに鑑みれば、この裁量権を考慮してもなお区別の合理性が認められない場合に憲法違反の問題が生じる。
  3. 憲法の基礎にある個人主義と民主主義の理念に照らせば、人種差別など個人の尊厳が問題になる場合や、選挙権や表現の自由が問題となる場合には、厳格な審査が要求される。
  4. 本件で取り扱いの区別の対象となる国籍が社会生活の様々な側面に強い影響を与える重要な法的地位である以上、区別の合理性を判断する際には慎重な検討が必要となる。
  5. 取り扱いの区別が、本人の意思や努力によって左右できない事項に基づいて人を不利益に扱うものである以上、区別の合理性を判断する際には慎重な検討が必要となる。

>解答と解説はこちら


【答え】:3

【解説】

本問は「最大判平20.6.4:国籍法3条1項違憲判決」の問題で、
結婚していない「日本人の父」と「フィリピン人の母」との間に日本で生まれた子(原告)が、出生後に「日本人の父」から認知を受けたことを理由として、
法務大臣あてに日本国籍取得の届出をしたところ、国籍取得の条件を備えておらず、日本国籍を与えなかった事案です。

1.立法が不合理な差別を行っていないかどうかは、立法目的の合理性、立法目的と取り扱いの区別との合理的関連性という二点から判断される。
1・・・読み取れる
まず、
憲法10条は、「日本国民たる要件は、法律でこれを定める。」と規定し、これを受けて、国籍法は、日本国籍の得喪に関する要件を規定しています。そして、
国籍の得喪に関する要件を定めるに当たっては、立法府の裁量判断にゆだねる趣旨のものであると、言っています。そして、これを受けて、判決文では下記のように言っています。「立法府に与えられた上記のような裁量権を考慮しても、なおそのような区別をすることの立法目的に合理的な根拠が認められない場合、又はその具体的な区別と上記の立法目的との間に合理的関連性が認められない場合には、当該区別は、合理的な理由のない差別として、同項に違反するものと解されることになる」

区別をすることの立法目的に合理的な根拠が認められない場合=立法目的の合理性による判断

その具体的な区別と上記の立法目的との間に合理的関連性が認められない場合=立法目的と取り扱いの区別との合理的関連性による判断

つまり、本肢の「立法が不合理な差別を行っていないかどうかは、立法目的の合理性、立法目的と取り扱いの区別との合理的関連性という二点から判断される」は判決文から読み取れる記述です。

2.憲法が国籍法制の内容を立法者の裁量判断に委ねていることに鑑みれば、この裁量権を考慮してもなお区別の合理性が認められない場合に憲法違反の問題が生じる。
2・・・読み取れる
選択肢1の解説から、
「立法が不合理な差別を行っていないかどうかは、立法目的の合理性、立法目的と取り扱いの区別との合理的関連性という二点から判断され」続いて、判決文では、
「当該区別は、合理的な理由のない差別として、同項に違反するものと解されることになる。」と言っています。よって、区別の合理性が認められない場合に憲法違反の問題が生じるので、判決文から読み取れる記述です。
3.憲法の基礎にある個人主義と民主主義の理念に照らせば、人種差別など個人の尊厳が問題になる場合や、選挙権や表現の自由が問題となる場合には、厳格な審査が要求される。
3・・・読み取れない
本問の「厳格な審査が要求される」とは、「争いをした場合に違憲になりやすい」ことを指しています。
そして、判決文を見ると
「人種差別など個人の尊厳が問題」や、「選挙権や表現の自由の問題」については触れていません。
よって、本肢は判決文からは読み取れない記述です。
4.本件で取り扱いの区別の対象となる国籍が社会生活の様々な側面に強い影響を与える重要な法的地位である以上、区別の合理性を判断する際には慎重な検討が必要となる。
4・・・読み取れる
下記判決文の一部を見てください。「日本国籍は、我が国の構成員としての資格であるとともに、我が国において基本的人権の保障、公的資格の付与、公的給付等を受ける上で意味を持つ重要な法的地位でもある。一方、父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得するか否かということは、子にとっては自らの意思や努力によっては変えることのできない父母の身分行為に係る事柄である。したがって、このような事柄をもって日本国籍取得の要件に関して区別を生じさせることに合理的な理由があるか否かについては、慎重に検討することが必要である。」
  • 日本国籍は、我が国において基本的人権の保障、公的資格の付与、公的給付等を受ける上で意味を持つ重要な法的地位でもある→国籍が社会生活の様々な側面に強い影響を与える重要な法的地位である、ということを指し
  • 日本国籍取得の要件に関して区別を生じさせることに合理的な理由があるか否かについては、慎重に検討することが必要である→区別の合理性を判断する際には慎重な検討が必要となる、ということを指しています。

よって、本肢は判決文から読み取れます。

5.取り扱いの区別が、本人の意思や努力によって左右できない事項に基づいて人を不利益に扱うものである以上、区別の合理性を判断する際には慎重な検討が必要となる。
5・・・読み取れる
判決文の下記部分を見てください。「父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得するか否かということは、子にとっては自らの意思や努力によっては変えることのできない父母の身分行為に係る事柄である。したがって、このような事柄をもって日本国籍取得の要件に関して区別を生じさせることに合理的な理由があるか否かについては、慎重に検討することが必要である。」
  • 子にとっては自らの意思や努力によっては変えることのできない父母の身分行為に係る事柄→本人の意思や努力によって左右できない事項、ということです。
  • 日本国籍取得の要件に関して区別を生じさせることに合理的な理由があるか否かについては、慎重に検討することが必要である→区別の合理性を判断する際には慎重な検討が必要となる、ということを指しています。

よって、本肢は判決文から読み取れます。

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平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 内閣 問33 民法・債権
問4 内閣 問34 民法:債権
問5 財政 問35 民法:親族
問6 法の下の平等 問36 商法
問7 社会権 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成24年・2012|問5|憲法・財政

日本国憲法第7章の財政に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

  1. 内閣は、災害救助等緊急の必要があるときは、当該年度の予算や国会が議決した予備費によることなく、閣議の決定によって財政上必要な支出をすることができる。
  2. 内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。
  3. 国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。
  4. 予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基づいて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。
  5. すべて皇室の費用は、予算に計上することを要し、かつ、国会の議決を経なければならない。

>解答と解説はこちら


【答え】:1

【解説】

1.内閣は、災害救助等緊急の必要があるときは、当該年度の予算や国会が議決した予備費によることなく、閣議の決定によって財政上必要な支出をすることができる。
1・・・誤り
予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け内閣の責任でこれを支出することができます(憲法87条1項)。
災害救助等緊急の必要があるときは、当該年度の予算や国会が議決した予備費で対応するので、本肢の「災害救助等緊急の必要があるときは、・・予備費によることなく」は誤りです。すべての選択肢に言えますが、財政については、体系的に勉強した方が効率的です!
この点は個別指導で解説します!
2.内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。
2・・・正しい
内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければなりません(憲法86条)。
よって、正しいです。
3.国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。
3・・・正しい
国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければなりません(憲法90条1項)。
よって、本肢は正しいです。
4.予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基づいて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。
4・・・正しい
予見し難い予算の不足に充てるため国会の議決に基いて予備費を設け内閣の責任でこれを支出することができます(憲法87条1項)。
よって、正しいです。
5.すべて皇室の費用は、予算に計上することを要し、かつ、国会の議決を経なければならない。
5・・・正しい
すべて皇室財産は、国に属するすべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければなりません(憲法88条)。
よって、正しいです。

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平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 内閣 問33 民法・債権
問4 内閣 問34 民法:債権
問5 財政 問35 民法:親族
問6 法の下の平等 問36 商法
問7 社会権 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略