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行政不服審査法82条:不服申立てをすべき行政庁等の教示

教示とは?

教示とは、処分を行う行政庁が、処分相手や利害関係人に対して、「不服がある場合は、こういう方法がありますよ!」と教えてくれる制度です。

行政不服審査法は、国民みんなが知っている法律ではないので、国民の権利利益の救済の方法を教えるルールを定めています。

教示しなければならない場合

教示をしなければならないのは、下記2つの場合です。

審査請求、再調査請求等をすることができる処分について

  1. 相手方に対して書面で処分を行う場合
  2. 利害関係人から教示を求められた場合

教示すべき内容

教示すべき内容は下記3つです。

  1. 不服申立てをすることができる旨
  2. 不服申立てをすべき行政庁
  3. 不服申立てをすることができる期間

教示すべき相手方と教示の方法

教示相手 教示の方法
処分の相手方に対して 処分を口頭でする場合を除いて書面で教示すること
利害関係人に対して 教示すべき求めがあった場合に教示する
その際、書面による教示を求められた場合書面で教示すること

(不服申立てをすべき行政庁等の教示)
行政不服審査法第82条 行政庁は、審査請求若しくは再調査の請求又は他の法令に基づく不服申立て(以下この条において「不服申立て」と総称する。)をすることができる処分をする場合には、処分の相手方に対し、当該処分につき不服申立てをすることができる旨並びに不服申立てをすべき行政庁及び不服申立てをすることができる期間を書面で教示しなければならない。ただし、当該処分を口頭でする場合は、この限りでない。
2 行政庁は、利害関係人から、当該処分が不服申立てをすることができる処分であるかどうか並びに当該処分が不服申立てをすることができるものである場合における不服申立てをすべき行政庁及び不服申立てをすることができる期間につき教示を求められたときは、当該事項を教示しなければならない。
3 前項の場合において、教示を求めた者が書面による教示を求めたときは、当該教示は、書面でしなければならない。

<<行政不服審査法66条:審査請求に関する規定の準用 | 行政不服審査法83条:教示をしなかった場合の不服申立て

行政不服審査法65条:再審査請求の認容の裁決

再審査請求の認容裁決(原裁決の取消し)

再審査請求の認容とは、再審査請求に理由がある(再審査請求を認める)ということです。例えば、免許取消処分について、それはおかしいと思って審査請求をし、結果として棄却された。その棄却裁決にも不服があり、再審査請求をして、再審査請求が認められるということです。この場合、再審査庁は、裁決で当該原裁決の「全部もしくは一部」の「取消し」をすることができます。

再審査請求については、変更裁決はできないので注意しましょう!

事実上の行為についての再審査請求の認容裁決(事実上の行為の撤廃)

事実行為とは?

事実上の行為とは、「行政がする、国民の権利や義務が発生しない行為」です。

事実行為の例としては、行政指導や即時強制があります。

例えば、「勧告(注意といったイメージ)」は行政指導の一つです。勧告を受けたからと言って、勧告に従う必要はありません。従わなかったとしても、罰則などはないです。

しかし、勧告に従わないと、「この会社は勧告に従いませんでした」と公表されたりします。

事実上の行為の撤廃

そして、上記勧告(事実上の行為)について、不服があり、審査請求を行い、結果として棄却された。その棄却裁決にも不服があり、再審査請求をして、再審査請求が認められるということです。この場合、再審査庁は、裁決で当該事実上の行為が違法又は不当である旨を宣言するとともに、処分庁に対し、当該事実上の行為の全部又は一部を撤廃すべき旨を命じます

(再審査請求の認容の裁決)
行政不服審査法第65条 原裁決等(事実上の行為を除く。)についての再審査請求が理由がある場合(前条第3項に規定する場合及び同条第四項の規定の適用がある場合を除く。)には、再審査庁は、裁決で、当該原裁決等の全部又は一部を取り消す。
2 事実上の行為についての再審査請求が理由がある場合(前条第四項の規定の適用がある場合を除く。)には、裁決で、当該事実上の行為が違法又は不当である旨を宣言するとともに、処分庁に対し、当該事実上の行為の全部又は一部を撤廃すべき旨を命ずる。

行政不服審査法64条:再審査請求の却下又は棄却の裁決 | 行政不服審査法66条:審査請求に関する規定の準用>>

行政不服審査法63条:裁決書の送付

再審査を行う行政庁は、再審査請求について、審理をするために、「原裁決をした行政庁」に対し原裁決に関する裁決書の送付を求めます。

つまり、審査請求について、行政庁Aが裁決し、再審査請求について行政庁Bが行う場合、行政庁Bが行政庁Aに対して、裁決書を送付してください!と求めます。

これは、行政庁Aがどのような審査をしたのかを、再審査請求を行う行政庁Bが確認するためです。

(裁決書の送付)
行政不服審査法第63条 第66条第1項において読み替えて準用する第11条第2項に規定する審理員又は第66条第1項において準用する第9条第1項各号に掲げる機関である再審査庁(他の法律の規定により再審査請求がされた行政庁(第66条第1項において読み替えて準用する第14条の規定により引継ぎを受けた行政庁を含む。)をいう。以下同じ。)は、原裁決をした行政庁に対し、原裁決に係る裁決書の送付を求めるものとする。

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行政不服審査法64条:再審査請求の却下又は棄却の裁決

再審査請求期間(1か月もしくは1年)が過ぎた場合(不適法である場合)、審査庁は、裁決で却下します。

再審査請求について、理由がない場合、審査庁は、裁決で棄却します。

却下と棄却の違い

この2つの違いについてよく行政書士試験で出題されるので必ず頭に入れておきましょう!

却下 手続の不備など、不適法な場合に、審理をせずに門前払いをすること
棄却 手続の不備はなく適法に行われているため、審理はするが、請求に理由がないとして請求などを退けること

再審査請求の棄却裁決

再審査請求に係る原裁決(審査請求について却下もしくは棄却した裁決)が違法又は不当な場合で、かつ、当該審査請求に係る処分が違法又は不当のいずれでもないときは、再審査庁は、裁決で、当該再審査請求を棄却します。

どういうことかというと、下記場合において、④が違法で②が適法の場合、⑤の再審査請求について棄却裁決します。なぜなら、審査庁Bの判断は間違っていても、処分庁Aの処分が正しいから、処分庁Aの処分内容を尊重して、Xからの再審査請求を棄却するということです。

①Xが許可申請した。

②処分庁Aが却下処分or拒否処分(審査請求に係る処分)がした。(←これは違法でも不当でもない=適法)

③Xが審査請求(不服申立て)をした。

④審査庁Bが却下裁決or棄却裁決(原裁決)をした。(←これが違法または不当)

⑤Xが再審査請求した。

再審査請求における事情裁決

再審査請求に係る原裁決が違法又は不当ではあるけど、処分を取り消し、又は撤廃してしまうと、公の利益に著しい障害を生ずる場合、諸事情を考慮した上で、公共の福祉に適合しないと認めるときは、例外的に、再審査庁は裁決で棄却することができます。

つまり、審査庁の裁決は違法・不当だけど、公の利益を優先して、再審査請求を棄却することができるということです。

この場合、再審査庁は、裁決の主文で、当該原裁決が違法又は不当であることを宣言しなければなりません。

(再審査請求の却下又は棄却の裁決)
行政不服審査法第64条 再審査請求が法定の期間経過後にされたものである場合その他不適法である場合には、再審査庁は、裁決で、当該再審査請求を却下する。
2 再審査請求が理由がない場合には、再審査庁は、裁決で、当該再審査請求を棄却する。
3 再審査請求に係る原裁決(審査請求を却下し、又は棄却したものに限る。)が違法又は不当である場合において、当該審査請求に係る処分が違法又は不当のいずれでもないときは、再審査庁は、裁決で、当該再審査請求を棄却する。
4 前項に規定する場合のほか、再審査請求に係る原裁決等が違法又は不当ではあるが、これを取り消し、又は撤廃することにより公の利益に著しい障害を生ずる場合において、再審査請求人の受ける損害の程度、その損害の賠償又は防止の程度及び方法その他一切の事情を考慮した上、原裁決等を取り消し、又は撤廃することが公共の福祉に適合しないと認めるときは、再審査庁は、裁決で、当該再審査請求を棄却することができる。この場合には、再審査庁は、裁決の主文で、当該原裁決等が違法又は不当であることを宣言しなければならない。

<<行政不服審査法63条:裁決書の送付 | 行政不服審査法65条:再審査請求の認容の裁決>>

行政不服審査法62条:再審査請求期間

再審査請求の請求期間

再審査請求は下記期間内に請求しないといけません。下記期間を過ぎて再調査請求をしても不適法として却下されてしまいます。

下記主観的期間と客観的期間である1か月または1年のどちらか一方でも経過してしまうと再審査請求ができなくなります。

主観的期間 原則、原裁決があったことを知った日の翌日から起算して1か月以内
例外として、正当な理由があるときは、1か月を超えてもよい
客観的期間 原則処分があった日の翌日から起算して1年以内
正当な理由があるときは、1年を超えてもよい

原裁決とは?

原裁決とは、再審査請求をすることができる処分についての審査請求の裁決を言います。

例えば、A市長から、営業停止処分を受けたXが、B知事に審査請求し、B知事が棄却裁決をした。この棄却裁決について、Xが再審査請求をした場合、当該棄却裁決が原裁決です。

対比して覚えていただきたいのは下記部分です!

審査請求の期間制限>>

再調査請求の期間制限>>

(再審査請求期間)
行政不服審査法第62条 再審査請求は、原裁決があったことを知った日の翌日から起算して1月を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
2 再審査請求は、原裁決があった日の翌日から起算して1年を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。

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行政不服審査法61条:審査請求に関する規定の準用(再調査請求)

審査請求の規定が、再調査請求に準用されるもの

下記内容は審査請求のルールですが、この審査請求のルールが再調査請求にも適用されるということです。

第9条第4項 審査庁職員による意見聴取
第10条 法人でない社団又は財団の審査請求
第11条 総代
第12条 代理人による審査請求
第13条 参加人
第14条 行政庁が裁決をする権限を有しなくなった場合の措置
第15条 審理手続の承継
第16条 標準審理期間
第19条の一部 審査請求書の提出
第20条 口頭による審査請求
第23条 審査請求書の補正
第24条 審理手続を経ないでする却下裁決
第25条
(第3項を除く。)
執行停止
第26条 執行停止の取消し
第27条 審査請求の取下げ
第31条
(第5項を除く。)
口頭意見陳述
第32条
(第2項を除く。)
証拠書類等の提出
第39条 審理手続の併合又は分離
第51条 裁決の効力発生
第53条 証拠書類等の返還

(審査請求に関する規定の準用)
行政不服審査法第61条 第9条第4項、第10条から第16条まで、第18条第3項、第19条(第3項並びに第5項第1号及び第2号を除く。)、第20条、第23条、第24条、第25条(第3項を除く。)、第26条、第27条、第31条(第5項を除く。)、第32条(第2項を除く。)、第39条、第51条及び第53条の規定は、再調査の請求について準用する。この場合において、別表第二の上欄に掲げる規定中同表の中欄に掲げる字句は、それぞれ同表の下欄に掲げる字句に読み替えるものとする。

<<行政不服審査法60条:再調査請求の決定の方式 | 行政不服審査法62条:再審査請求期間>>

行政不服審査法60条:再調査請求の決定の方式

再調査請求の決定のやり方

再調査の請求の却下又は棄却の決定」および「再調査の請求の認容の決定」は、決定書という書面で行う必要があります。そして、この決定書には、主文及び理由を記載し、処分庁が記名押印します。

再調査請求の決定の際の教示

処分庁は、決定書に、再調査の請求に係る処分につき審査請求をすることができる旨並びに審査請求をすべき行政庁及び審査請求期間を記載して、これらを教示しなければなりません。

教示とは?>>

(決定の方式)
行政不服審査法第60条 前2条の決定は、主文及び理由を記載し、処分庁が記名押印した決定書によりしなければならない。
2 処分庁は、前項の決定書(再調査の請求に係る処分の全部を取り消し、又は撤廃する決定に係るものを除く。)に、再調査の請求に係る処分につき審査請求をすることができる旨(却下の決定である場合にあっては、当該却下の決定が違法な場合に限り審査請求をすることができる旨)並びに審査請求をすべき行政庁及び審査請求期間を記載して、これらを教示しなければならない。

<<行政不服審査法59条:再調査の請求の認容の決定 | 行政不服審査法61条:審査請求に関する規定の準用>>

行政不服審査法59条:再調査の請求の認容の決定

処分についての再調査請求の認容

処分についての再調査の請求が理由がある場合には、処分庁は、決定で、当該処分の全部若しくは一部を取り消し、又はこれを変更します。

例えば、営業停止の処分を受けて、それに対して、再調査請求をしたとします。再調査の結果、処分庁は、営業停止処分は妥当ではないと判断した場合、処分庁は、営業停止処分を取り消したり、処分を指示処分など、軽い処分に変更できたりします。

事実上の行為についての再調査請求の認容

事実上の行為についての再調査請求に理由がある場合、処分庁は、決定で、当該事実上の行為が違法または不当である旨を宣言します。そして、この宣言とともに当該事実上の行為の全部若しくは一部を撤廃し、又は、変更します。

撤廃とは?

撤廃とは、例えば、収容されている者を放免したり(収容をやめて解放すること)、領置(押収)している物を返還したりすることを言います。

不利益変更の禁止

そして、上記変更をする場合、もともとの処分と比べて、不利益な処分(重い処分)に変更することはできません。(不利益変更の禁止

(再調査の請求の認容の決定)
行政不服審査法第59条 処分(事実上の行為を除く。)についての再調査の請求が理由がある場合には、処分庁は、決定で、当該処分の全部若しくは一部を取り消し、又はこれを変更する。
2 事実上の行為についての再調査の請求が理由がある場合には、処分庁は、決定で、当該事実上の行為が違法又は不当である旨を宣言するとともに、当該事実上の行為の全部若しくは一部を撤廃し、又はこれを変更する。
3 処分庁は、前2項の場合において、再調査の請求人の不利益に当該処分又は当該事実上の行為を変更することはできない。

<<行政不服審査法58条:再調査の請求の却下又は棄却の決定 | 行政不服審査法60条:再調査請求の決定の方式>>

行政不服審査法57条:三月後の教示

3か月を経過しても再調査請求が係属している場合

処分庁は、再調査の請求がされた日の翌日から起算して3か月を経過しても当該再調査の請求が係属している(続いている)ときは、遅滞なく、当該処分について直ちに審査請求をすることができる旨を書面でその再調査の請求人に教示しなければなりません。(行政不服審査法57条)

教示とは、「教えること」です。

教示の詳細はこちら>>

つまり、再調査請求を行い、その翌日から3か月経っても、処分庁が再調査を行っている状況の場合、処分庁は、請求人に対して「直ちに審査請求を行うことができる旨」を伝えて、請求人は直ちに審査請求を行うことができるということです。

そして、審査請求を行うと、再調査請求は取消しされたものとみなされます。

(三月後の教示)
行政不服審査法第57条 処分庁は、再調査の請求がされた日(第61条において読み替えて準用する第23条の規定により不備を補正すべきことを命じた場合にあっては、当該不備が補正された日)の翌日から起算して3月を経過しても当該再調査の請求が係属しているときは、遅滞なく、当該処分について直ちに審査請求をすることができる旨を書面でその再調査の請求人に教示しなければならない。

<<行政不服審査法56条:再調査の請求についての決定を経ずに審査請求がされた場合 | 行政不服審査法58条:再調査の請求の却下又は棄却の決定>>

行政不服審査法56条:再調査の請求についての決定を経ずに審査請求がされた場合

再調査請求後の審査請求

再調査請求をした後に審査請求を行うことも可能です。その場合、再調査請求の決定を経た後でなければ、原則審査請求はできません

ただし、例外として、次の2つの場合、再調査請求の決定を経る前に審査請求ができます

  1. 再調査の請求をした日の翌日から起算して3か月を経過しても、処分庁が当該再調査の請求につき決定をしない場合
    ※再調査請求書に不備があり、その補正を命じられた時は、その補正をしたときから3か月を経過しても、処分庁が当該再調査の請求につき決定をしない場合
  2. 再調査の請求についての決定を経ないことにつき正当な理由がある場合

再調査請求は取り下げとみなされる

そして、上記例外規定に基づいて、再調査請求の決定を経る前に審査請求を行った場合、もともと行っていた再調査請求は取り下げたものとみなされます

(再調査の請求についての決定を経ずに審査請求がされた場合)
行政不服審査法第56条 第5条第2項ただし書の規定により審査請求がされたときは、同項の再調査の請求は、取り下げられたものとみなす。ただし、処分庁において当該審査請求がされた日以前に再調査の請求に係る処分(事実上の行為を除く。)を取り消す旨の第60条第1項の決定書の謄本を発している場合又は再調査の請求に係る事実上の行為を撤廃している場合は、当該審査請求(処分(事実上の行為を除く。)の一部を取り消す旨の第59条第1項の決定がされている場合又は事実上の行為の一部が撤廃されている場合にあっては、その部分に限る。)が取り下げられたものとみなす。

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