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義務付け訴訟とは?要件・類型・判例をわかりやすく解説|行書塾

行政事件訴訟法の類型でも勉強した通り、主観訴訟の中の抗告訴訟の一つに「義務付けの訴え」があります。

主観訴訟とは、個人の権利利益の救済を目的とし、自分自身に直接関係する行政活動に対する訴訟を指し、抗告訴訟とは、行政庁の公権力の行使に関して違法でないかと不服がある場合の訴訟です。

義務付けの訴えとは?

義務付けの訴え(義務付け訴訟)とは、下記場合において、行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求める訴訟を言います。
  1. 行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないとき(申請を前提としない義務付け訴訟:非申請型義務付け訴訟)
  2. 行政庁に対し一定の処分又は裁決を求める旨の法令に基づく申請又は審査請求がされた場合において、当該行政庁がその処分又は裁決をすべきであるにかかわらずこれがされないとき(申請を前提とする義務付け訴訟:申請型義務付け訴訟)

非申請型義務付け訴訟:1号義務付け訴訟

非申請型義務付け訴訟は、「非申請型」の通り、申請者でない者が行政庁に対して「こういった処分を行ってください!」と求める訴訟です。

例えば、甲市内に違法建築物があるにも関わらず、甲市が何ら権限を行使せず放っておいている場合、隣地の住民は、甲市に対して、建物の除去命令を下してください!と義務付けの訴えを提起することができます。

この場合、隣地の住民は、事前に何かしらの申請をしたかというと、何の申請もしていません。単に、隣地の住民は建物の除去命令がされないことにより、重大な損害を受ける可能性があるから除去命令を求めているだけです。

非申請型義務付け訴訟の訴訟要件

1号義務付け訴訟を提起できる要件は下記3つです。すべて満たした場合に適法となり審理されます。いずれか一つでも満たさない場合は、不適法として却下されます。

  1. 一定の処分がなされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあること
  2. その損害を避けるため他に適当な方法がないこと
  3. 行政庁が一定の処分をすべき旨を命ずることを求めるにつき法律上の利益を有する者であること

非申請型義務付け訴訟の勝訴要件

1号義務付け訴訟で原告が勝訴するためには下記2つのいずれかを満たす必要があります。

  1. 行政庁がその処分をすべきことが明らかであること
  2. 行政庁がその処分をしないことが裁量権の逸脱・濫用となると認められること

上記のいずれかを満たせば、認容判決(原告勝訴)となり、どちらも満たさない場合は棄却判決(原告敗訴)となります。

【比較表】非申請型と申請型の義務付け訴訟 要件の違い一覧

非申請型(1号)と申請型(2号)は混同しやすいため、訴訟要件・勝訴要件・併合提起の有無を表で整理しておきましょう。

比較項目 非申請型(1号) 申請型(2号)
前提となる申請 不要(第三者が提起) 必要(法令に基づく申請・審査請求が前提)
原告適格 法律上の利益を有する者 申請・審査請求をした者
損害要件 重大な損害のおそれ+補充性(他に適当な方法がないこと) 不要
併合提起 不要(単独提起が可能) 必要(不作為型→不作為の違法確認訴訟、拒否処分型→取消訴訟または無効等確認訴訟)
勝訴要件 処分をすべきことが明らか、または裁量権の逸脱・濫用 併合提起した訴訟に理由があり、かつ処分をすべきことが明らかまたは裁量権の逸脱・濫用
仮の義務付け 償うことのできない損害+本案について理由があるとみえるとき 同左

試験対策のポイント:非申請型は「重大な損害+補充性」が必要な一方、申請型は損害要件が不要で「併合提起」が必須です。この対比は択一式で頻出するため、セットで押さえておきましょう。

申請型義務付け訴訟:2号義務付け訴訟

申請型義務付け訴訟は、「申請型」の通り、申請したけど、拒否処分を下されたり、不作為状態が続く場合に、「申請に対して許可処分を下してください!」と義務付けよう求める訴訟です。

例えば、Aが甲県の建築主事に対して、建築確認の申請をした。しかし、建築主事は拒否処分をした。その場合、Aは甲県に対して、建築確認を認めてください!と義務付けを求めることが申請型義務付け訴訟です。

申請型義務付け訴訟の訴訟要件

2号義務付け訴訟を提起できる要件は、不作為型と拒否処分型とで異なり、それぞれ、2つの要件を同時に満たす必要があります。

不作為型
  1. 法令に基づく申請又は審査請求がなされたにも関わらず、相当期間内に処分または裁決がされなかったとき
  2. 不作為の違法確認の訴えと併せて提起すること
拒否処分型
  1. 法令に基づく申請又は審査請求が、却下または棄却された場合に、当該処分または裁決が取り消されるべきものであったり、無効または不存在であったとき
  2. 「取消訴訟」又は「無効確認の訴え」と併せて提起すること

上記不作為型については、「不作為の違法確認訴訟」と関連する部分です。

申請型義務付け訴訟の勝訴要件

2号義務付け訴訟で原告が勝訴するための要件は「不作為型」と「拒否処分型」とで異なります。

不作為型 行政庁が処分・裁決すべきことが根拠法令から明らかである場合
拒否処分型 行政庁が処分・裁決をしないことが裁量権の逸脱・濫用である場合

上記を満たせば、認容判決(原告勝訴)となり、満たさない場合は棄却判決(原告敗訴)となります。

<<不作為の違法確認の訴え | 差止めの訴え>>

行政手続法3条:適用除外

行政手続法の適用除外については、行政書士試験では、覚えておかないといけない部分です。行政不服審査法の適用除外と混乱しやすい部分なので、対比しながら覚えていくとよいでしょう!

行政手続法が適用されないのは、下記の通りです。

  1. 国会若しくは地方議会の議決によってされる処分
  2. 裁判により、又は裁判の執行としてされる処分
  3. 国会若しくは地方議会の議決又は同意等を経てされる処分
  4. 検査官会議で決すべきものとされている処分及び会計検査の際にされる行政指導
  5. 刑事事件に関する検察官等がする処分及び行政指導
  6. ①国税又は地方税の犯則事件に関する処分及び行政指導
    ②金融商品取引の犯則事件に関する処分及び行政指導
  7. 学校、講習所、訓練所又は研修所で、学生、生徒、児童若しくは幼児若しくはこれらの保護者、講習生、訓練生又は研修生に対してされる処分及び行政指導
  8. 刑務所、少年刑務所、拘置所、留置施設、海上保安留置施設、少年院、少年鑑別所又は婦人補導院において、収容の目的を達成するためにされる処分及び行政指導
  9. 公務員に対する処分及び行政指導
    (例えば、懲戒処分(懲罰)・・・免職・停職・減給・戒告
    分限処分・・・降任・免職・休職・降級)
  10. 外国人の出入国、難民の認定、補完的保護対象者の認定又は帰化に関する処分及び行政指導
  11. 専ら人の学識技能に関する試験又は検定の結果についての処分(例えば、行政書士試験の結果等)
  12. 相反する利害を有する者の間の利害の調整を目的として法令の規定に基づいてされる裁定その他の処分及び行政指導
  13. 公衆衛生、環境保全、防疫、保安のために、警察官若しくは海上保安官等によってされる処分及び行政指導
  14. 報告又は物件の提出を命ずる処分その他その職務の遂行上必要な情報の収集を直接の目的としてされる処分及び行政指導(行政調査も含む)
  15. 審査請求、再調査の請求その他の不服申立てに対する行政庁の裁決、決定その他の処分
  16. 行政手続法の聴聞若しくは弁明の機会の付与の手続その他の意見陳述のための手続において法令に基づいてされる処分及び行政指導

行政手続法と行政不服審査法の適用除外の違い

行政手続法のみ適用除外の内容 9.公務員の懲戒処分
10.難民認定
12.利害の反する者の利害調整を目的とした処分
13.公衆衛生・環境保全・防疫・保安のための処分
14.報告または物件提出等の情報収集を目的とした処分
15.不服申立て(審査請求・再調査請求)による裁決・決定
16.聴聞・弁明の機会付与手続き(意見陳述の手続き)において法令に基づいてされる処分
不服審査法のみ適用除外の内容 当事者の法律関係を確認し、又は形成する処分で、その処分に関する訴えにおいて当事者の一方が被告となるもの

行政手続法における地方公共団体の適用除外

地方公共団体について、行政手続法が適用されないものは下記内容です。

  1. 地方公共団体の機関がする処分で、その根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る
  2. 行政指導
  3. 地方公共団体の機関に対する届出で、その根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る
  4. 地方公共団体の機関が命令等を定める行為

1と3について、地方公共団体の機関がする処分および届出について、その根拠となる規定が法律に置かれているものは、行政手続法が適用されます。

(適用除外)
第3条 次に掲げる処分及び行政指導については、次章から第4章の2までの規定は、適用しない。
一 国会の両院若しくは一院又は議会の議決によってされる処分
二 裁判所若しくは裁判官の裁判により、又は裁判の執行としてされる処分
三 国会の両院若しくは一院若しくは議会の議決を経て、又はこれらの同意若しくは承認を得た上でされるべきものとされている処分
四 検査官会議で決すべきものとされている処分及び会計検査の際にされる行政指導
五 刑事事件に関する法令に基づいて検察官、検察事務官又は司法警察職員がする処分及び行政指導
六 国税又は地方税の犯則事件に関する法令(他の法令において準用する場合を含む。)に基づいて国税庁長官、国税局長、税務署長、国税庁、国税局若しくは税務署の当該職員、税関長、税関職員又は徴税吏員(他の法令の規定に基づいてこれらの職員の職務を行う者を含む。)がする処分及び行政指導並びに金融商品取引の犯則事件に関する法令(他の法令において準用する場合を含む。)に基づいて証券取引等監視委員会、その職員(当該法令においてその職員とみなされる者を含む。)、財務局長又は財務支局長がする処分及び行政指導
七 学校、講習所、訓練所又は研修所において、教育、講習、訓練又は研修の目的を達成するために、学生、生徒、児童若しくは幼児若しくはこれらの保護者、講習生、訓練生又は研修生に対してされる処分及び行政指導
八 刑務所、少年刑務所、拘置所、留置施設、海上保安留置施設、少年院、少年鑑別所又は婦人補導院において、収容の目的を達成するためにされる処分及び行政指導
九 公務員(国家公務員法第二条第一項に規定する国家公務員及び地方公務員法第三条第一項に規定する地方公務員をいう。以下同じ。)又は公務員であった者に対してその職務又は身分に関してされる処分及び行政指導
十 外国人の出入国、難民の認定又は帰化に関する処分及び行政指導
十一 専ら人の学識技能に関する試験又は検定の結果についての処分
十二 相反する利害を有する者の間の利害の調整を目的として法令の規定に基づいてされる裁定その他の処分(その双方を名宛人とするものに限る。)及び行政指導
十三 公衆衛生、環境保全、防疫、保安その他の公益に関わる事象が発生し又は発生する可能性のある現場において警察官若しくは海上保安官又はこれらの公益を確保するために行使すべき権限を法律上直接に与えられたその他の職員によってされる処分及び行政指導
十四 報告又は物件の提出を命ずる処分その他その職務の遂行上必要な情報の収集を直接の目的としてされる処分及び行政指導
十五 審査請求、再調査の請求その他の不服申立てに対する行政庁の裁決、決定その他の処分
十六 前号に規定する処分の手続又は第三章に規定する聴聞若しくは弁明の機会の付与の手続その他の意見陳述のための手続において法令に基づいてされる処分及び行政指導
2 次に掲げる命令等を定める行為については、第六章の規定は、適用しない。
一 法律の施行期日について定める政令
二 恩赦に関する命令
三 命令又は規則を定める行為が処分に該当する場合における当該命令又は規則
四 法律の規定に基づき施設、区間、地域その他これらに類するものを指定する命令又は規則
五 公務員の給与、勤務時間その他の勤務条件について定める命令等
六 審査基準、処分基準又は行政指導指針であって、法令の規定により若しくは慣行として、又は命令等を定める機関の判断により公にされるもの以外のもの
3 第一項各号及び前項各号に掲げるもののほか、地方公共団体の機関がする処分(その根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)及び行政指導、地方公共団体の機関に対する届出(前条第七号の通知の根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)並びに地方公共団体の機関が命令等を定める行為については、次章から第6章までの規定は、適用しない。

<<行政手続法2条:定義 | 行政手続法4条:国の機関等に対する処分等の適用>>

行政不服審査法7条:適用除外

行政不服審査法7条は、下記事項は「2条・3条の規定を適用しない」としています。どういうことかというと、下記事項については、審査請求できないということです。

では、どういった場合に審査請求ができないのか?

審査請求ができない場合

  1. 国会若しくは地方議会の議決によってされる処分
  2. 裁判により、又は裁判の執行としてされる処分
  3. 国会若しくは地方議会の議決又は同意等を経てされる処分
  4. 検査官会議で決すべきものとされている処分
  5. 当事者間の法律関係を確認し、又は形成する処分で、法令の規定により当該処分に関する訴え(形式的当事者訴訟)においてその法律関係の当事者の一方を被告とすべきものと定められているもの
  6. 刑事事件に関する検察官等がする処分
  7. ①国税又は地方税の犯則事件に関する処分
    ②金融商品取引の犯則事件に関する処分
  8. 学校、講習所、訓練所又は研修所で、学生、生徒、児童若しくは幼児若しくはこれらの保護者、講習生、訓練生又は研修生に対してされる処分
  9. 刑務所、少年刑務所、拘置所、留置施設、海上保安留置施設、少年院、少年鑑別所又は婦人補導院において、収容の目的を達成するためにされる処分
  10. 外国人の出入国又は帰化に関する処分
  11. 専ら人の学識技能に関する試験又は検定の結果についての処分(例えば、行政書士試験の結果等)
  12. 行政不服審査法に基づいて行われる処分

この点については、行政手続法で適用除外になっているものと、行政不服審査法で適用除外になっているものの違いを覚えるとよいでしょう!

行政手続法と行政不服審査法の適用除外の違い

手続法のみ適用除外 ① 公務員の懲戒処分
② 利害の反する者の利害調整を目的とした処分
③ 難民認定
④ 報告または物件提出等の情報収集を目的とした処分
⑤ 公衆衛生・環境保全・防疫・保安のための処分
⑥ 不服申立て(審査請求・再調査請求)による裁決・決定
⑦ 聴聞・弁明の機会付与手続き(意見陳述の手続き)において法令に基づいてされる処分
不服審査法のみ適用外 形式的当事者訴訟によるべきとされている処分

行政不服審査法における国の機関または地方公共団体等の適用除外

「国の機関」又は「地方公共団体」その他の「公共団体」若しくはその機関に対する処分で、これらの機関又は団体がその固有の資格において当該処分の相手方となるもの及びその不作為については、行政不服審査法の規定は、適用しません。

これは、行政手続法と同様に行政不服審査法も適用しないことを意味します。

イメージとしては、国の機関や地方公共団体に対する処分については、審査請求できないということです。

(適用除外)
第7条 次に掲げる処分及びその不作為については、第2条及び第3条の規定は、適用しない。
一 国会の両院若しくは一院又は議会の議決によってされる処分
二 裁判所若しくは裁判官の裁判により、又は裁判の執行としてされる処分
三 国会の両院若しくは一院若しくは議会の議決を経て、又はこれらの同意若しくは承認を得た上でされるべきものとされている処分
四 検査官会議で決すべきものとされている処分
五 当事者間の法律関係を確認し、又は形成する処分で、法令の規定により当該処分に関する訴えにおいてその法律関係の当事者の一方を被告とすべきものと定められているもの
六 刑事事件に関する法令に基づいて検察官、検察事務官又は司法警察職員がする処分
七 国税又は地方税の犯則事件に関する法令(他の法令において準用する場合を含む。)に基づいて国税庁長官、国税局長、税務署長、国税庁、国税局若しくは税務署の当該職員、税関長、税関職員又は徴税吏員(他の法令の規定に基づいてこれらの職員の職務を行う者を含む。)がする処分及び金融商品取引の犯則事件に関する法令(他の法令において準用する場合を含む。)に基づいて証券取引等監視委員会、その職員(当該法令においてその職員とみなされる者を含む。)、財務局長又は財務支局長がする処分
八 学校、講習所、訓練所又は研修所において、教育、講習、訓練又は研修の目的を達成するために、学生、生徒、児童若しくは幼児若しくはこれらの保護者、講習生、訓練生又は研修生に対してされる処分
九 刑務所、少年刑務所、拘置所、留置施設、海上保安留置施設、少年院、少年鑑別所又は婦人補導院において、収容の目的を達成するためにされる処分
十 外国人の出入国又は帰化に関する処分
十一 専ら人の学識技能に関する試験又は検定の結果についての処分
十二 この法律に基づく処分(第五章第一節第一款の規定に基づく処分を除く。)

2 国の機関又は地方公共団体その他の公共団体若しくはその機関に対する処分で、これらの機関又は団体がその固有の資格において当該処分の相手方となるもの及びその不作為については、この法律の規定は、適用しない。

<<行政不服審査法6条:再審査請求 | 行政不服審査法8条:特別の不服申立ての制度>>

行政事件訴訟法とは?全体像・訴訟類型を図解でわかりやすく解説|行書塾

行政事件訴訟法の訴訟類型【全体構造マップ】

行政事件訴訟法で定められた訴訟は、「誰のために争うか」で大きく2つに分かれます。まず全体像を押さえてから、各類型の詳細に進みましょう。

行政事件訴訟

■ 主観訴訟

個人の権利利益の救済が目的

抗告訴訟

  • 取消訴訟
  • 無効等確認の訴え
  • 不作為の違法確認の訴え
  • 義務付けの訴え
  • 差止めの訴え

当事者訴訟

  • 形式的当事者訴訟
  • 実質的当事者訴訟

■ 客観訴訟

行政の適法性の確保が目的

  • 民衆訴訟 ― 選挙人など一般資格で提起
  • 機関訴訟 ― 国・公共団体の機関相互の争い

主観訴訟は自分の権利を守る訴え、客観訴訟は法秩序を守る訴えと整理すると覚えやすくなります。

行政事件訴訟法とは?

行政事件訴訟法は、裁判によって、違法な行政活動によって権利利益を侵害された国民の救済を図るものです。

行政不服審査法 違法または不当な行政行為
行政事件訴訟法 違法な行政行為(不当な行政行為は行政事件訴訟法の対象外)

訴訟は、民事訴訟、刑事訴訟、行政事件訴訟に区別でき、行政事件訴訟法は、公権力の行使に関する争いを含む公法上の法律関係に関する紛争解決を目的としてます。

民事事件 民事訴訟法
刑事事件 刑事訴訟法
行政事件 行政事件訴訟法

行政事件訴訟法の経緯

1945年(昭和20年)第二次世界大戦が終戦。

1946年(昭和21年)日本国憲法が公布。

1948年(昭和23年)に「行政事件訴訟特例法」が制定(戦後に制定)。

行政事件訴訟特例法は、民事訴訟法の特例を定めたものであり、全文でわずか12条のみの簡単なものでした。この法律は、制定が急がれたため、欠陥も多かったため、
1962年(昭和37年)に法改正され、現行の「行政事件訴訟法」が制定されました。

行政事件訴訟法の類型

行政事件訴訟法は大きく分けて主観訴訟と客観訴訟に分けることができます。

主観訴訟は、個人の権利利益の救済を目的とし、自分自身に直接関係する行政活動に対する訴訟を指し、客観訴訟は、行政の適法性の確保を目的とし、自分には直接関係ない行政活動に対する訴訟を指します。

主観訴訟

主観訴訟とは、個人の権利利益の救済を目的とし、自分自身に直接関係する行政活動に対する訴訟を指し、大きく分けて、抗告訴訟と当事者訴訟に分けることができます。

主観訴訟は、個人の権利利益が侵害され、または侵害されそうになっている場合、その救済を求める訴えを指します。

抗告訴訟とは、行政庁の公権力の行使に関して違法でないかと不服がある場合の訴訟で、当事者訴訟は、当事者間の公法上の法律関係を争う訴訟です。

抗告訴訟

抗告訴訟には、下記5つがあります。詳細は下記リンク先で解説しています。

  1. 取消訴訟(処分の取消しの訴え、裁決の取消しの訴え)
  2. 無効等確認の訴え
  3. 不作為の違法確認の訴え
  4. 義務付けの訴え
  5. 差止めの訴え

当事者訴訟

当事者訴訟には、下記2つがあります。詳細は下記リンク先で解説しています。

  1. 形式的当事者訴訟
  2. 実質的当事者訴訟

客観訴訟

客観訴訟は、行政の適法性の確保を目的とし、自分には直接関係ない行政活動に対する訴訟を指し、民衆訴訟と機関訴訟があります。

この客観訴訟は、行政活動が法律に違反している場合に個人の利益に関係なく、違法状態を回復するための訴訟です。

<<行政不服審査法 | 取消訴訟の概要|原処分主義、裁決主義、審査請求前置主義>>

 

議会の権限(①議決権、②選挙権、③監査権、④自律権)

地方公共団体の議会には、普通地方公共団体の意思決定機関としての①議決権と、②選挙権、③監査権、④自律権といった権限があります。

議決権

普通地方公共団体の議会が行う議決事件は、必ず議決しなければならない必要的議決事件と、必要に応じて条例で議決事項に定めることができる任意的議決事件があります。

必要的議決事件

必要的議決事項は15項目に限定されています(制限列挙)。その中でも、行政書士の試験で出題されやすいものは、下記5つなので、それだけでも頭に入れておきましょう!

  1. 条例の制定と改廃
    条例の提案権は、一般的には、議会と長の双方にある。特定の場合のみいずれかのみに専属する。
  2. 予算の議決
    議会は、予算を増額修正できるが、長の予算発案権の侵害となるような修正は許されない。
    また、議会は、長が提出した予算案を減額修正できる。減額修正には、増額修正のような長の予算提出権に関する特別の制限はない。
  3. 決算の認定
  4. 地方税の賦課徴収又は分担金、使用料、加入金若しくは手数料の徴収に関すること
  5. 条例で定める重要な公の施設につき条例で定める長期かつ独占的な利用をさせること

任意的議決事件

上記以外にも条例で普通地方公共団体に関する事件につき、議会の議決すべきものを定めることができます。

そして、自治事務については、すべて任意的議決事件の対象となります。

一方、法定受託事務については、国の安全に関することなど普通地方公共団体の議会で議決すべきでないもの以外は、任意的議決事件の対象となります。

選挙権

議会は、議長、副議長、選挙管理員等の選挙を行わなければなりません。

監査権

住民の代表機関である議会は、長などの執行機関の行為が適正に行われているかを監視する権限(同意権、調査権、書類の検閲・検査権、監査請求権)を持っています。

同意権

地方公共団体の長が、「副知事、副市町村長、監査委員、教育委員会の委員、都道府県公安委員会の委員」などを選任する場合、議会の同意が必要となります。

調査権(100条調査権)

地方公共団体の議会は、地方公共団体の事務に関する調査を行うことができ、地方自治法第100条に規定された権利なので、100条調査権と言います。

ほとんどの事務が100条調査権の対象になりますが、
「自治事務については、労働委員会、収用委員会の権限に属する事務」は対象外となり、「法定受託事務については、国の安全、個人の秘密にかかわるもの」は対象外となります。

調査を行うために特に必要があると認めるときは、選挙人その他の関係人の出頭および証言ならびに記録の提出を請求することができます。

この100条調査権については、2013年、当時の東京都知事であった猪瀬直樹知事が徳洲会グループより5000万円を受け取った事件で使われています。ただし、東京都議会が百条委員会の設置を決定し、百条調査権を行使しようとする前に、猪瀬知事は辞職しました。

書類の検閲・検査権

議会は、普通地方公共団体の事務に関して書類等を検閲し、執行機関の報告を請求して、事務の管理、議決の執行および出納を検査することができます。

分かりやすく言えば、議会で決めたとおりに仕事をしているか、検査・調査するわけです。

この検査の対象についても、100条調査権同様下記については検査の対象外となっています。

「自治事務については、労働委員会、収用委員会の権限に属する事務」は検査権の対象外となり、「法定受託事務については、国の安全、個人の秘密にかかわるもの」は検査権の対象外となります。

監査請求権

議会は、監査委員に対し、普通地方公共団体に関する監査を求め、監査の結果に対する報告を請求することができます。

この監査請求の対象についても、100条調査権同様下記については検査の対象外となっています。

「自治事務については、労働委員会、収用委員会の権限に属する事務」は監査請求の対象外となり、「法定受託事務については、国の安全、個人の秘密にかかわるもの」は監査請求の対象外となります。

自律権

議会の自律権とは、議会自らの意思で、議会の組織・運営の決定や処理する権利のことを言い、「会議規則の制定権、会期の決定権、懲罰権、自主的に解散する権利」等があります。

懲罰権の判例(最判昭35.10.19)(最大判令2.11.25)

地方議会議員の除名処分・地方議会議員の議会への出席停止処分は議会の内部規律の問題に当たらないため司法審査が及ぶ。

当事者訴訟とは?形式的・実質的当事者訴訟の違いをわかりやすく解説【行政書士】

当事者訴訟は、主観訴訟ではあるものの、これまで勉強してきた抗告訴訟ではありません。主観訴訟は、個人の権利利益の救済を目的とし、自分自身に直接関係する行政活動に対する訴訟を指します。

そして、当事者訴訟は非常に分かりにくい訴訟なので、イメージを頭に入れることが重要です!


当事者訴訟とは?

当事者訴訟とは、①当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの及び②公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟をいう。

上記、「①当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で、法律関係の当事者の一方を被告とするもの」が形式的当事者訴訟で、「②公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟」が実質的当事者訴訟です。

上記を読んだだけでは全く意味が分からないと思いますので、具体例を出しながら解説していきます。

形式的当事者訴訟

例えば、Aの土地について、土地収用に関する収用委員会の裁決について,不服がある場合、本来、収用委員会の属する都道府県を被告として、収用裁決の取消しの訴えを提起します。

しかし、Aが収用自体は納得しているけど、収用に対する補償金額に不服がある場合があります。この場合、Aは補償額についてのみ争えばよいです。

そして、この補償額については、事業の起業者(事業を行う者)が決め、収用委員会が認定するのですが、補償額(損失補償額)に争いがある場合,土地を収用されたAと起業者との間で争います。

本来であれば,「補償額を認定した収用委員会の属する行政主体である都道府県」を被告として裁決を争う抗告訴訟によるべきです。
これが、「当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟」ということです。

しかし、補償金額については,補償金の支払いに関係する当事者間で直接争わせたほうが適切であるため、被告を起業者として訴訟を提起します。
これが、「法律関係の当事者の一方を被告とする」ということです。

上記訴えが、当事者訴訟の中の形式的当事者訴訟です。

上記は、土地を収用されたAが、「補償額が少なすぎる!」と主張する場合で、逆に起業者が「補償額が高すぎる!」と主張する場合、被告がAとなり、同じく形式的当事者訴訟で争います。

形式的当事者訴訟は、上記「収用における補償金の増額・減額の訴訟」 を具体例として覚えた方が早いです。

実質的当事者訴訟

次に実質的当事者訴訟を解説するのですが、形式的当事者訴訟と全く違うものに見えると思います。そのため、形式的当事者訴訟と実質的当事者訴訟は分けて考えた方がよいでしょう!つなげて考えると、逆に分かりづらくなります。

今から解説する具体例は、無効等確認訴訟でも勉強した内容です。

例えば、国家公務員Cが懲戒免職処分を受けた。Cは、この処分が無効であることを前提に、「公務員の地位確認訴訟」や「給料支払請求訴訟」を行うことができます。この訴えは、被告が国であるというだけで、内容としては、民事訴訟と同じです。

例えば、会社員Dが会社から不当解雇を受け、この解雇が無効であることを前提に、「社員たる地位の確認訴訟」を提起することは、民事訴訟です。

単に、「私人と私人の争い」ではなく「国と公務員」という公法上の法律関係なっているにすぎません。

このような訴訟が実質的当事者訴訟です。

まずは、具体例を覚えることが理解への第一歩なので、具体例を覚えていきましょう。

上記以外にも、

等があります。

実質的当事者訴訟と争点訴訟の違い

上記実質的当事者訴訟と争点訴訟は似ていますが、違います。

何が違うかというと、
実質的当事者訴訟は、私人と行政主体との争い(=行政訴訟)で、
争点訴訟は私人間の争い(=民事訴訟)です。

また、上図の通り、現在の法律関係の確認を求める訴え(実質的当事者訴訟や争点訴訟)では目的達成ができない場合に限って、無効等確認の訴え(無効確認訴訟)を提起できる点も併せて覚えておきましょう。

<<当事者訴訟(形式的当事者訴訟・実質的当事者訴訟) | 争点訴訟>>

訴訟参加

訴訟が行われた場合に、その訴訟に参加できる者として「訴訟の結果により権利を害される第三者」および「処分又は裁決をした行政庁以外の行政庁」を挙げることができます。訴訟に参加する「第三者」と「行政庁」を分けて解説していきます。

第三者の訴訟参加

  • 訴訟の結果により権利を害される第三者があるときは、当事者若しくはその第三者の申立てにより又は職権で、裁判所の決定によって、その第三者を訴訟に参加させることができます。
  • 上記第三者の参加の決定をするには、裁判所は、あらかじめ、当事者及び第三者の意見をきかなければなりません。

訴訟の結果により権利を害される第三者

訴訟の結果により権利を害される第三者とは、例えば、A建設会社がマンションの建築のために、甲県の建築主事から建築確認を受けた。近隣住民が、日当たりが悪くなるということで、甲県に対して、建築確認処分の取消しの訴えを行った。この場合、近隣住民が原告、甲県が被告となるのですが、A建設会社は、この建築確認が取り消されると、マンションを建築できる権利を害されます。そのため、A建設会社が「訴訟の結果により権利を害される第三者」となります。

行政庁の訴訟参加

  • 裁判所は、処分又は裁決をした行政庁以外の行政庁を訴訟に参加させることが必要であると認めるときは、当事者若しくはその行政庁の申立てにより又は職権で、決定をもつて、その行政庁を訴訟に参加させることができる。
  • 上記行政庁の参加の決定をするには、裁判所は、あらかじめ、当事者及び当該行政庁の意見をきかなければなりません。

<<訴えの変更 | 執行停止(取消訴訟)>>

法律の留保とは?意味・種類・侵害留保説をわかりやすく解説|行書塾

法律の留保とは、行政機関が一定の行政活動を行う場合、あらかじめ法律によってその権限が定められていなければならない(法律の根拠・授権が必要)という原則です。

例えば、不動産を所有している人は、「固定資産税」が課せられます。これも、法律によって定められているから課せられるのです。

行政機関が勝手に、時計を持っている人には「時計税」を課します!といっても法律にそのようなルールは定められていないので、それはできません。

法律の留保の範囲

行政のすべての活動に「法律の留保の原則」が当てはまるかというと、色々な考え方があります。

それが、①侵害留保説、②全部留保説、③権力留保説、④重要事項留保説

①侵害留保説

行政書士試験では、この侵害留保説を覚えておきましょう!

侵害留保説とは、「国民の自由」や「財産」を侵害する行政活動のみ、法律の根拠が必要ということです。

上記事例の、税金を課す行為については、国民の財産を侵害する行政活動と言えます。そのため、法律に「〇〇税は課していいですよ!」と規定されていなければ、〇〇税を課すことができないということです。

つまり、上記「時計税」は法律に規定されていないので課すことができないということです。

②全部留保説

全ての行政活動について法律の根拠が必要という考え方です。

「国民の自由」や「財産」を侵害する行為だけでなく、侵害しない行為であっても法律の根拠が必要ということです。

この考えによると、警察官が、道案内をする場合も法律の根拠が必要ということになります。

そして、行政書士試験のレベルであれば、③権力留保説、④重要事項留保説は勉強しなくてもよいでしょう!

法律による行政の原理

法律の法規創造力 国民の権利義務に関するルールは法律のみ定めることができ、行政機関は、法律の授権なく法規を作れない
法律の優位 行政活動は法律に違反してはならず、違反したら、取消されたり、無効となる
法律の留保 一定の行政の活動が行われるためには、法律の根拠・授権が必要

行政法の一般原則

信義誠実の原則
権利濫用の禁止
比例原則
平等原則
適正手続の原則

国家賠償法1条(公権力の行使に基づく賠償責任)

国家賠償法1条は、条文の内容とその判例が、行政書士の試験で問われます。そのため、条文と判例を見ていきます。個別の判例については、リンク先が具体例となっています。

国家賠償法
第一条 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
2 前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。

国家賠償責任の法的性質

上記国家賠償法(国賠法)1条の条文の通り、公務員の職務上の行為で、他人に損害を与えた場合、国や公共団体が賠償責任を負うことになっています。つまり、本来公務員が負うべき責任を国や公共団体が代わって賠償責任を負うこととしています。これを代位責任と言います。

加害者の特定性

代位責任説によると、違法行為を行った公務員自身に損害賠償責任が生ずることが前提なので、論理的に考えると、加害者が特定できない場合、損害賠償責任を問えないことになります。しかし、被害者保護の観点から、厳密な特定までは不要としています(最判昭57.4.1:「加害行為の不特定」と「国等の損害賠償責任」)。

公共団体とは?

公共団体とは、地方公共団体(都道府県や市町村)、公共組合(土地区画整理組合、国民健康保険組合)、独立行政法人だけでなく、弁護士会も含まれます。

国家賠償法1条の要件

国賠法1条に基づく責任が生ずるための要件は、下記5つです。

  1. 公権力の行使にあたる公務員の行為であること
  2. 公務員が「職務を行うについて」行った行為であること
  3. 公務員に故意または過失があること
  4. 公務員の行為が違法であること
  5. 損害が発生したこと

上記の中において、行政書士で重要なキーワードを抜粋すると、下記6つです。これから細かく解説していきます。

  1. 公務員
  2. 公権力の行使
  3. 職務を行うについて(職務関連性)
  4. 故意または過失
  5. 違法(違法性)

公務員

公務員とは、地方公務員、国家公務員はもちろん、「公権力の行使」に当たる行為を行う民間人も含まれます。

例えば、建築確認を行う民間の指定確認検査機関による建築確認により、相手方に損害を与えてしまった場合、地方公共団体が国家賠償責任を負う判例(最判平17.6.24)があります。つまり、建築確認という公権力の行使を行う「指定確認検査機関」も「公務員」として扱っているわけです。

また、弁護士会の懲戒委員会の委員が、弁護士に対して懲戒処分する場合、当該委員は、懲戒処分という一種の公権力の行使を行っているため、当該委員を「公務員」として、弁護士会(公共団体)が賠償責任を負う判例(東京高判平19.11.29)があります。

公権力の行使

公権力の行使とは、国賠法1条では、「国家賠償法2条の対象となるもの(公の営造物の設置・管理)および私経済作用を除くすべての行政作用」を指します(判例・通説)。

分かりやすく言えば、下記2つ以外のすべての行政作用ということです。

  1. 国家賠償法2条の対象となるもの(公の営造物の設置・管理)
  2. 私経済作用

私経済作用とは?

例えば、「国公立病院が行う医療行為」や「公務員が事務用品を購入する行為」が私経済作用で、民法が適用されます。これらの行為は、私人と同等の立場で行い、公権力の行使とは言えないからです。

上記の通り、「国家賠償法2条の対象となるもの」および「私経済作用」を除くすべての行政作用なので、「行政手続法における公権力の行使」、「行政不服審査法における公権力の行使」、「行政事件訴訟法における公権力の行使」と比べて、国賠法1条の方が対象範囲が非常に広くなるわけです。

公権力の行使の具体例

国賠法1条では、下記行為も公権力の行使として損害賠償の対象となります。

  • 行政指導
  • 国公立学校・市立学校の教育活動(最判昭58.2.18、最判昭62.2.6、最判平5.2.18)
  • 国会議員による立法行為(最判昭60.11.21、最判平17.9.14)
  • 裁判所による裁判(最判昭57.3.12)
  • 「拘置所職員たる医師」による「拘留されている患者」に対する医療行為(最判平17.12.8)
  • 県から委託を受けた社会福祉法人の施設職員による養育監護行為(最判平19.1.25)

公権力の行使に該当しない場合どうなるか?

公権力の行使にあたる 国家賠償法1条の対象
公権力の行使にあたらない 民法709条(不法行為責任)の対象

職務を行うについて(職務関連性)

国賠法1条では、公務員が、職務上の行為によって、国民に損害を与えた場合を対象としているのですが、加害行為が職務で行われた場合はもちろん、職務との間に一定の関連性(職務関連性)があればよいとしています。

外形標準説(外形理論)

また、判例(最判昭31.11.30:「公務員の私利を図る目的の行為」と「国家賠償法」)では、加害行為が客観的に職務行為の外形を備えるものであればよく、実際には職務上の行為でなかったとしてもよいとしています。

このように、外見から判断して、職務行為に見える場合も「職務上の行為」として、賠償責任の対象としています。これも被害者救済の見地からきています。

故意または過失

国家賠償責任は、公務員の行った不法行為(民法709条)が前提なので、公務員の故意または過失が要件となってきます。

(不法行為による損害賠償)
民法第709条
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

公務員が上記不法行為を行った場合、「公務員個人」に賠償責任を負わせるよりも「国や公共団体」に責任を負わせた方が被害者を保護できるということです。

故意とは?

民法上の故意とは、一定の侵害結果の発生を認識しながらそれを認容して行う場合(その心理状態)を言います(通説)。そして、国賠法も同様と考えてよいです。

過失とは?

過失とは、判例(最判平5.3.11:「所得税更正処分の取消し」と「国家賠償法」)では、公務員が職務上要求される注意能力を欠く場合を指します。

細かいことをいえば、客観的過失があったかどうかで判断し、主観的過失(公務員自身の注意能力を基準としている)ではないということです。

違法(違法性)

国家賠償責任は、公務員の行った不法行為(民法709条)が前提なので、公務員の違法行為が要件となってきます。

これは法令違反だけでなく、裁量の範囲を逸脱・濫用した場合(最判昭52.12.20:神戸税関事件)や社会的相当性を欠く場合(最判昭61.2.27:「パトカー追跡」と「国家賠償法」)も違法とされています。

公務員の不作為・権限不行使は違法となるか?

(最判平元.11.24:「宅建業法の免許基準」と「国家賠償法」)や(最判平7.6.23)の判例では、公務員の不作為によって、私人に損害が発生した場合も国家賠償の対象としており、また、法律上与えられた権限を行使せずに(権限不行使で)損害が発生した場合も同様に国家賠償の対象としています。

公務員に対する求償

国や公共団体が私人(国民)に対して損害賠償した場合、公務員に故意又は重大な過失があったときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償できます。

行政書士の試験対策として注意点としては、下記部分です。

  • 国等から公務員に対して求償できるが、公務員から国等に対しては求償できない
  • 公務員に故意または重過失があった場合のみ、国等は求償できるが、公務員に故意がなく、かつ、無重過失の場合は求償できない

<<国家賠償と損失補償の全体像 | 国家賠償法2条3条>>

行政行為の「取消し」と「撤回」の違い

取消しと撤回の違い

行政行為の取消しは、行政行為の成立当初から瑕疵があり、その瑕疵を理由として、行政行為がなされた時にさかのぼって、その効力を失われることです。例えば、不正手段を使って行政書士の登録を受けた場合、行政庁が登録した(行政行為の)時点で、すでに瑕疵があると言えます。そのため、その後、不正手段を行政庁が知った場合、登録を取り消さなければなりません。これは「取消し」です。

一方、行政行為の撤回は、成立当時は瑕疵はなく、その後の瑕疵によって、将来に向かって効力を失わせることです。例えば、行政書士の登録は正当な手段で受けたが、その後、強盗を行い、拘禁刑を受けた場合、登録消除処分の対象となります。この場合、当初の行政書士の登録に瑕疵はなかったが、その後、拘禁刑を受けることが瑕疵が生じ、登録取り消しとなります。これを法律上「撤回」と言います。「取消し」という文言があっても「撤回」になるので注意しましょう。

原因 効力
取消し 成立時に瑕疵 遡及的に効力消滅
撤回 成立後に瑕疵 将来に向かって効力消滅

行政行為の取消し

そもそも、行政行為が行われると、たとえ違法な行政行為であっても、取消しされるまで一応有効なものとして扱われます。これを「公定力」と言います。

行政行為の取消には、職権取消しと争訟取消しの2つがあります。

職権取消し

職権取消しとは、行政行為の相手方からの取消しの主張を待たずに、行政庁が、違法又は不当であることを理由に行政庁自ら取り消しをすることです。上記事例でも解説しましたが、例えば、不正手段を使って行政書士の登録の申請を受けて、その不正を見抜けずに行政庁が登録の処分を下したとします。その後、「この登録は不正だ!」と見抜いて、「この登録は違法だったので、登録を取り消します!」というのが職権取消しです。

争訟取消し

争訟取消しとは、行政処分に対して、不服がある場合、審査請求や取消訴訟を行うことができます。これにより、審査庁や裁判所が取消しをすることを争訟取消しと言います。例えば、行政書士の登録を受けた者が、不正手段を理由に取り消し(職権取消し)をされ、その取消し処分に対して、「この取消処分はおかしい!取消処分を取り消せ!」と取消訴訟を行い、裁判所が、「この者は不正をしていない!だから取消処分は取消しなさい!」といった場合が争訟取消しです。

実際、行政書士試験では、上記2つの違いについては出題される可能性は低いので参考程度でよいでしょう。これより下の内容についても、判例だけ押さえておけば大丈夫でしょう!

取消しをする際の法律の根拠

行政庁が取消しを行う場合、法律の特別な根拠は不要です。なぜなら、行政行為の取消は、違法な行政行為の効力を失わせる行為であり、そもそも、取消さなければならないものだからです

ただし、授益的行政行為を取消すことは、相手方に対して大きな不利益を与える可能性があります。
例えば、営業許可を受けた後に飲食店の営業を準備のために色々機材を購入したにも関わらず、営業許可が突然取消されたら大きな損害を受けます。

そのため、授益的行政行為(相手に権利利益を与える行為)の職権取消しは一定の制限があります。

取消権者

取消権者とは、取消しすることができる者(職権取消しの権限を持つ者)を言います。そして、職権取消しの権限を持つのは、処分庁・上級行政庁(処分庁を監督する行政庁)です。

職権取消しの制限(職権取消しは自由にできるか?)

  1. 不可変更力がある行政行為の職権取消しはできない
    不服申立てに対する裁決には、不可変更力が働きます。そのため、裁決した行政庁自身は職権取消しができません。
    ※この点は行政不服審査法を勉強してから理解すれば大丈夫です!
  2. 侵害的行政行為の職権取消しは、自由に行える
    侵害的行政行為とは、私人の権利を侵害する行為で、例えば、Aさんの行政書士の登録を取り消す行為です。この取消し行為(取消処分)を職権取消しすることは、Aさんにとっては、不利益にはなりません。むしろ、利益です。そのため、自由に行えます。
  3. 授益的行政行為の職権取消しは、慎重な判断が必要
    授益的行政行為とは、私人に利益を与える行為です。例えば、Bさんに対する生活保護の支給決定処分です。これを取り消すとなると、Bさんは不利益を受けます。そのため、この支給決定処分を取り消す場合、慎重な判断が必要となります。慎重な判断とは、処分を取り消すだけの公益上必要性がある場合や、生活保護の申請内容に不正があったなどの場合です。

行政行為の取消しに関する判例

  • 処分をした行政庁その他正当な権限を有する行政庁においては、みずからその違法または不当を認めて、処分の取消しによって生じる不利益と、取消しをしないことによってかかる処分に基づきすでに生じた効果をそのまま維持することの不利益とを比較考量し、しかもその処分を放置することが公共の福祉の要請に照らし著しく不当であると認められるときに限り、これを取り消すことができる。(最判昭43.11.7:農地の買収売渡計画職権取消し)

行政行為の撤回

撤回をする際の法律の根拠

行政庁が撤回を行う場合、法律の特別な根拠は不要です(最判昭63.6.17)。なぜなら、撤回の原因は、私人にあるため、それを理由に撤回することは私人の権利の侵害には当たらないからです。例えば、運転免許をCさん与えて、その後、Cさんが、飲酒運転を行って運転免許の取消し(撤回)を行う場合、撤回するかどうか行政庁の裁量によります。法律に飲酒運転をした場合、撤回しなければならないと規定されていなくても、撤回をすることができます。もちろん、ほんのちょっとの飲酒で捕まえたとしても、それだけで撤回というのは厳しすぎるので、そういった場合は、免許取消ではなく、罰金くらいでしょう。つまり、比例原則は適用されます。

撤回権者

撤回権者とは、撤回することができる者(撤回できる権限を持つ者)を言います。そして、撤回権者は、処分庁のみです。

撤回の制限(撤回は自由にできるか?)

撤回の場合も、職権取消しと同じように、「不可変更力がある行政行為は撤回できません。」「侵害的行政行為の場合、自由に撤回できます。」一方、「授益的行政行為の撤回は、原則、できません。」

行政行為の撤回に関する判例

  • 【要旨】都有行政財産である土地について建物所有を目的とし期間の定めなくされた使用許可が当該行政財産本来の用途又は目的上の必要に基づき将来に向つて取り消されたときは、使用権者は、特別の事情のないかぎり、右取消による土地使用権喪失についての補償を求めることはできない。【判決理由】使用許可に際し別段の定めがされている等により、行政財産についての右の必要にかかわらず使用権者がなお当該使用権を保有する実質的理由を有すると認めるに足りる特別の事情が存する場合に限られるというべきである。(最判昭49.2.5:撤回にかかる損失補償の要否)