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法律の留保とは?意味・種類・侵害留保説をわかりやすく解説|行書塾

法律の留保とは、行政機関が一定の行政活動を行う場合、あらかじめ法律によってその権限が定められていなければならない(法律の根拠・授権が必要)という原則です。

例えば、不動産を所有している人は、「固定資産税」が課せられます。これも、法律によって定められているから課せられるのです。

行政機関が勝手に、時計を持っている人には「時計税」を課します!といっても法律にそのようなルールは定められていないので、それはできません。

法律の留保の範囲

行政のすべての活動に「法律の留保の原則」が当てはまるかというと、色々な考え方があります。

それが、①侵害留保説、②全部留保説、③権力留保説、④重要事項留保説

①侵害留保説

行政書士試験では、この侵害留保説を覚えておきましょう!

侵害留保説とは、「国民の自由」や「財産」を侵害する行政活動のみ、法律の根拠が必要ということです。

上記事例の、税金を課す行為については、国民の財産を侵害する行政活動と言えます。そのため、法律に「〇〇税は課していいですよ!」と規定されていなければ、〇〇税を課すことができないということです。

つまり、上記「時計税」は法律に規定されていないので課すことができないということです。

②全部留保説

全ての行政活動について法律の根拠が必要という考え方です。

「国民の自由」や「財産」を侵害する行為だけでなく、侵害しない行為であっても法律の根拠が必要ということです。

この考えによると、警察官が、道案内をする場合も法律の根拠が必要ということになります。

そして、行政書士試験のレベルであれば、③権力留保説、④重要事項留保説は勉強しなくてもよいでしょう!

法律による行政の原理

法律の法規創造力 国民の権利義務に関するルールは法律のみ定めることができ、行政機関は、法律の授権なく法規を作れない
法律の優位 行政活動は法律に違反してはならず、違反したら、取消されたり、無効となる
法律の留保 一定の行政の活動が行われるためには、法律の根拠・授権が必要

行政法の一般原則

信義誠実の原則
権利濫用の禁止
比例原則
平等原則
適正手続の原則

義務付けの訴え(抗告訴訟の一種)

行政事件訴訟法の類型でも勉強した通り、主観訴訟の中の抗告訴訟の一つに「義務付けの訴え」があります。

主観訴訟とは、個人の権利利益の救済を目的とし、自分自身に直接関係する行政活動に対する訴訟を指し、抗告訴訟とは、行政庁の公権力の行使に関して違法でないかと不服がある場合の訴訟です。

義務付けの訴えとは?

義務付けの訴え義務付け訴訟)とは、下記場合において、行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求める訴訟を言います。
  1. 行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないとき(申請を前提としない義務付け訴訟非申請型義務付け訴訟
  2. 行政庁に対し一定の処分又は裁決を求める旨の法令に基づく申請又は審査請求がされた場合において、当該行政庁がその処分又は裁決をすべきであるにかかわらずこれがされないとき(申請を前提とする義務付け訴訟申請型義務付け訴訟

非申請型義務付け訴訟:1号義務付け訴訟

非申請型義務付け訴訟は、「非申請型」の通り、申請者でない者が行政庁に対して「こういった処分を行ってください!」と求める訴訟です。

例えば、甲市内に違法建築物があるにも関わらず、甲市が何ら権限を行使せず放っておいている場合、隣地の住民は、甲市に対して、建物の除去命令を下してください!と義務付けの訴えを提起することができます。

この場合、隣地の住民は、事前に何かしらの申請をしたかというと、何の申請もしていません。単に、隣地の住民は建物の除去命令がされないことにより、重大な損害を受ける可能性があるから除去命令を求めているだけです。

非申請型義務付け訴訟の訴訟要件

1号義務付け訴訟を提起できる要件は下記3つです。すべて満たした場合に適法となり審理されます。いずれか一つでも満たさない場合は、不適法として却下されます。

  1. 一定の処分がなされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあること
  2. その損害を避けるため他に適当な方法がないこと
  3. 行政庁が一定の処分をすべき旨を命ずることを求めるにつき法律上の利益を有する者であること

非申請型義務付け訴訟の勝訴要件

1号義務付け訴訟で原告が勝訴するためには下記2つのいずれかを満たす必要があります。

  1. 行政庁がその処分をすべきことが明らかであること
  2. 行政庁がその処分をしないことが裁量権の逸脱・濫用となると認められること

上記のいずれかを満たせば、認容判決(原告勝訴)となり、どちらも満たさない場合は棄却判決(原告敗訴)となります。

申請型義務付け訴訟:2号義務付け訴訟

申請型義務付け訴訟は、「申請型」の通り、申請したけど、拒否処分を下されたり、不作為状態が続く場合に、「申請に対して許可処分を下してください!」と義務付けよう求める訴訟です。

例えば、Aが甲県の建築主事に対して、建築確認の申請をした。しかし、建築主事は拒否処分をした。その場合、Aは甲県に対して、建築確認を認めてください!と義務付けを求めることが申請型義務付け訴訟です。

申請型義務付け訴訟の訴訟要件

2号義務付け訴訟を提起できる要件は、不作為型と拒否処分型とで異なり、それぞれ、2つの要件を同時に満たす必要があります。

不作為型
  1. 法令に基づく申請又は審査請求がなされたにも関わらず、相当期間内に処分または裁決がされなかったとき
  2. 不作為の違法確認の訴えと併せて提起すること
拒否処分型
  1. 法令に基づく申請又は審査請求が、却下または棄却された場合に、当該処分または裁決が取り消されるべきものであったり、無効または不存在であったとき
  2. 取消訴訟」又は「無効確認の訴え」と併せて提起すること

上記不作為型については、「不作為の違法確認訴訟」と関連する部分です。

申請型義務付け訴訟の勝訴要件

2号義務付け訴訟で原告が勝訴するための要件は「不作為型」と「拒否処分型」とで異なります。

不作為型 行政庁が処分・裁決すべきことが根拠法令から明らかである場合
拒否処分型 行政庁が処分・裁決をしないことが裁量権の逸脱・濫用である場合

上記を満たせば、認容判決(原告勝訴)となり、満たさない場合は棄却判決(原告敗訴)となります。

<<不作為の違法確認の訴え | 差止めの訴え>>

国家賠償法1条(公権力の行使に基づく賠償責任)

国家賠償法1条は、条文の内容とその判例が、行政書士の試験で問われます。そのため、条文と判例を見ていきます。個別の判例については、リンク先が具体例となっています。

国家賠償法
第一条 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
2 前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。

国家賠償責任の法的性質

上記国家賠償法(国賠法)1条の条文の通り、公務員の職務上の行為で、他人に損害を与えた場合、国や公共団体が賠償責任を負うことになっています。つまり、本来公務員が負うべき責任を国や公共団体が代わって賠償責任を負うこととしています。これを代位責任と言います。

加害者の特定性

代位責任説によると、違法行為を行った公務員自身に損害賠償責任が生ずることが前提なので、論理的に考えると、加害者が特定できない場合、損害賠償責任を問えないことになります。しかし、被害者保護の観点から、厳密な特定までは不要としています(最判昭57.4.1:「加害行為の不特定」と「国等の損害賠償責任」)。

公共団体とは?

公共団体とは、地方公共団体(都道府県や市町村)、公共組合(土地区画整理組合、国民健康保険組合)、独立行政法人だけでなく、弁護士会も含まれます。

国家賠償法1条の要件

国賠法1条に基づく責任が生ずるための要件は、下記5つです。

  1. 公権力の行使にあたる公務員の行為であること
  2. 公務員が「職務を行うについて」行った行為であること
  3. 公務員に故意または過失があること
  4. 公務員の行為が違法であること
  5. 損害が発生したこと

上記の中において、行政書士で重要なキーワードを抜粋すると、下記6つです。これから細かく解説していきます。

  1. 公務員
  2. 公権力の行使
  3. 職務を行うについて(職務関連性)
  4. 故意または過失
  5. 違法(違法性)

公務員

公務員とは、地方公務員、国家公務員はもちろん、「公権力の行使」に当たる行為を行う民間人も含まれます。

例えば、建築確認を行う民間の指定確認検査機関による建築確認により、相手方に損害を与えてしまった場合、地方公共団体が国家賠償責任を負う判例(最判平17.6.24)があります。つまり、建築確認という公権力の行使を行う「指定確認検査機関」も「公務員」として扱っているわけです。

また、弁護士会の懲戒委員会の委員が、弁護士に対して懲戒処分する場合、当該委員は、懲戒処分という一種の公権力の行使を行っているため、当該委員を「公務員」として、弁護士会(公共団体)が賠償責任を負う判例(東京高判平19.11.29)があります。

公権力の行使

公権力の行使とは、国賠法1条では、「国家賠償法2条の対象となるもの(公の営造物の設置・管理)および私経済作用を除くすべての行政作用」を指します(判例・通説)。

分かりやすく言えば、下記2つ以外のすべての行政作用ということです。

  1. 国家賠償法2条の対象となるもの(公の営造物の設置・管理)
  2. 私経済作用

私経済作用とは?

例えば、「国公立病院が行う医療行為」や「公務員が事務用品を購入する行為」が私経済作用で、民法が適用されます。これらの行為は、私人と同等の立場で行い、公権力の行使とは言えないからです。

上記の通り、「国家賠償法2条の対象となるもの」および「私経済作用」を除くすべての行政作用なので、「行政手続法における公権力の行使」、「行政不服審査法における公権力の行使」、「行政事件訴訟法における公権力の行使」と比べて、国賠法1条の方が対象範囲が非常に広くなるわけです。

公権力の行使の具体例

国賠法1条では、下記行為も公権力の行使として損害賠償の対象となります。

  • 行政指導
  • 国公立学校・市立学校の教育活動(最判昭58.2.18、最判昭62.2.6、最判平5.2.18)
  • 国会議員による立法行為(最判昭60.11.21、最判平17.9.14)
  • 裁判所による裁判(最判昭57.3.12)
  • 「拘置所職員たる医師」による「拘留されている患者」に対する医療行為(最判平17.12.8)
  • 県から委託を受けた社会福祉法人の施設職員による養育監護行為(最判平19.1.25)

公権力の行使に該当しない場合どうなるか?

公権力の行使にあたる 国家賠償法1条の対象
公権力の行使にあたらない 民法709条不法行為責任)の対象

職務を行うについて(職務関連性)

国賠法1条では、公務員が、職務上の行為によって、国民に損害を与えた場合を対象としているのですが、加害行為が職務で行われた場合はもちろん、職務との間に一定の関連性職務関連性)があればよいとしています。

外形標準説(外形理論)

また、判例(最判昭31.11.30:「公務員の私利を図る目的の行為」と「国家賠償法」)では、加害行為が客観的に職務行為の外形を備えるものであればよく、実際には職務上の行為でなかったとしてもよいとしています。

このように、外見から判断して、職務行為に見える場合も「職務上の行為」として、賠償責任の対象としています。これも被害者救済の見地からきています。

故意または過失

国家賠償責任は、公務員の行った不法行為(民法709条)が前提なので、公務員の故意または過失が要件となってきます。

(不法行為による損害賠償)
民法第709条
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

公務員が上記不法行為を行った場合、「公務員個人」に賠償責任を負わせるよりも「国や公共団体」に責任を負わせた方が被害者を保護できるということです。

故意とは?

民法上の故意とは、一定の侵害結果の発生を認識しながらそれを認容して行う場合(その心理状態)を言います(通説)。そして、国賠法も同様と考えてよいです。

過失とは?

過失とは、判例(最判平5.3.11:「所得税更正処分の取消し」と「国家賠償法」)では、公務員が職務上要求される注意能力を欠く場合を指します。

細かいことをいえば、客観的過失があったかどうかで判断し、主観的過失(公務員自身の注意能力を基準としている)ではないということです。

違法(違法性)

国家賠償責任は、公務員の行った不法行為(民法709条)が前提なので、公務員の違法行為が要件となってきます。

これは法令違反だけでなく、裁量の範囲を逸脱・濫用した場合最判昭52.12.20:神戸税関事件)や社会的相当性を欠く場合最判昭61.2.27:「パトカー追跡」と「国家賠償法」)も違法とされています。

公務員の不作為・権限不行使は違法となるか?

最判平元.11.24:「宅建業法の免許基準」と「国家賠償法」)や(最判平7.6.23)の判例では、公務員の不作為によって、私人に損害が発生した場合も国家賠償の対象としており、また、法律上与えられた権限を行使せずに(権限不行使で)損害が発生した場合も同様に国家賠償の対象としています。

公務員に対する求償

国や公共団体が私人(国民)に対して損害賠償した場合、公務員に故意又は重大な過失があったときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償できます。

行政書士の試験対策として注意点としては、下記部分です。

  • 国等から公務員に対して求償できるが、公務員から国等に対しては求償できない
  • 公務員に故意または重過失があった場合のみ、国等は求償できるが、公務員に故意がなく、かつ、無重過失の場合は求償できない

<<国家賠償と損失補償の全体像 | 国家賠償法2条3条>>

当事者訴訟(形式的当事者訴訟・実質的当事者訴訟)

当事者訴訟は、主観訴訟ではあるものの、これまで勉強してきた抗告訴訟ではありません。主観訴訟は、個人の権利利益の救済を目的とし、自分自身に直接関係する行政活動に対する訴訟を指します。

そして、当事者訴訟は非常に分かりにくい訴訟なので、イメージを頭に入れることが重要です!


当事者訴訟とは?

当事者訴訟とは、①当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの及び②公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟をいう。

上記、「①当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で、法律関係の当事者の一方を被告とするもの」が形式的当事者訴訟で、「②公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟」が実質的当事者訴訟です。

上記を読んだだけでは全く意味が分からないと思いますので、具体例を出しながら解説していきます。

形式的当事者訴訟

例えば、Aの土地について、土地収用に関する収用委員会の裁決について,不服がある場合、本来、収用委員会の属する都道府県を被告として、収用裁決の取消しの訴えを提起します。

しかし、Aが収用自体は納得しているけど、収用に対する補償金額に不服がある場合があります。この場合、Aは補償額についてのみ争えばよいです。

そして、この補償額については、事業の起業者(事業を行う者)が決め、収用委員会が認定するのですが、補償額(損失補償額)に争いがある場合,土地を収用されたAと起業者との間で争います。

本来であれば,「補償額を認定した収用委員会の属する行政主体である都道府県」を被告として裁決を争う抗告訴訟によるべきです。
これが、「当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟」ということです。

しかし、補償金額については,補償金の支払いに関係する当事者間で直接争わせたほうが適切であるため、被告を起業者として訴訟を提起します。
これが、「法律関係の当事者の一方を被告とする」ということです。

上記訴えが、当事者訴訟の中の形式的当事者訴訟です。

上記は、土地を収用されたAが、「補償額が少なすぎる!」と主張する場合で、逆に起業者が「補償額が高すぎる!」と主張する場合、被告がAとなり、同じく形式的当事者訴訟で争います。

形式的当事者訴訟は、上記「収用における補償金の増額・減額の訴訟」 を具体例として覚えた方が早いです。

実質的当事者訴訟

次に実質的当事者訴訟を解説するのですが、形式的当事者訴訟と全く違うものに見えると思います。そのため、形式的当事者訴訟と実質的当事者訴訟は分けて考えた方がよいでしょう!つなげて考えると、逆に分かりづらくなります。

今から解説する具体例は、無効等確認訴訟でも勉強した内容です。

例えば、国家公務員Cが懲戒免職処分を受けた。Cは、この処分が無効であることを前提に、「公務員の地位確認訴訟」や「給料支払請求訴訟」を行うことができます。この訴えは、被告が国であるというだけで、内容としては、民事訴訟と同じです。

例えば、会社員Dが会社から不当解雇を受け、この解雇が無効であることを前提に、「社員たる地位の確認訴訟」を提起することは、民事訴訟です。

単に、「私人と私人の争い」ではなく「国と公務員」という公法上の法律関係なっているにすぎません。

このような訴訟が実質的当事者訴訟です。

まずは、具体例を覚えることが理解への第一歩なので、具体例を覚えていきましょう。

上記以外にも、

等があります。

実質的当事者訴訟と争点訴訟の違い

上記実質的当事者訴訟と争点訴訟は似ていますが、違います。

何が違うかというと、
実質的当事者訴訟は、私人と行政主体との争い(=行政訴訟)で、
争点訴訟は私人間の争い(=民事訴訟)です。

また、上図の通り、現在の法律関係の確認を求める訴え(実質的当事者訴訟や争点訴訟)では目的達成ができない場合に限って、無効等確認の訴え(無効確認訴訟)を提起できる点も併せて覚えておきましょう。

<<当事者訴訟(形式的当事者訴訟・実質的当事者訴訟) | 争点訴訟>>

行政行為の「取消し」と「撤回」の違い

取消しと撤回の違い

行政行為の取消しは、行政行為の成立当初から瑕疵があり、その瑕疵を理由として、行政行為がなされた時にさかのぼって、その効力を失われることです。例えば、不正手段を使って行政書士の登録を受けた場合、行政庁が登録した(行政行為の)時点で、すでに瑕疵があると言えます。そのため、その後、不正手段を行政庁が知った場合、登録を取り消さなければなりません。これは「取消し」です。

一方、行政行為の撤回は、成立当時は瑕疵はなく、その後の瑕疵によって、将来に向かって効力を失わせることです。例えば、行政書士の登録は正当な手段で受けたが、その後、強盗を行い、拘禁刑を受けた場合、登録消除処分の対象となります。この場合、当初の行政書士の登録に瑕疵はなかったが、その後、拘禁刑を受けることが瑕疵が生じ、登録取り消しとなります。これを法律上「撤回」と言います。「取消し」という文言があっても「撤回」になるので注意しましょう。

原因 効力
取消し 成立時に瑕疵 遡及的に効力消滅
撤回 成立後に瑕疵 将来に向かって効力消滅

行政行為の取消し

そもそも、行政行為が行われると、たとえ違法な行政行為であっても、取消しされるまで一応有効なものとして扱われます。これを「公定力」と言います。

行政行為の取消には、職権取消し争訟取消しの2つがあります。

職権取消し

職権取消しとは、行政行為の相手方からの取消しの主張を待たずに、行政庁が、違法又は不当であることを理由に行政庁自ら取り消しをすることです。上記事例でも解説しましたが、例えば、不正手段を使って行政書士の登録の申請を受けて、その不正を見抜けずに行政庁が登録の処分を下したとします。その後、「この登録は不正だ!」と見抜いて、「この登録は違法だったので、登録を取り消します!」というのが職権取消しです。

争訟取消し

争訟取消しとは、行政処分に対して、不服がある場合、審査請求や取消訴訟を行うことができます。これにより、審査庁や裁判所が取消しをすることを争訟取消しと言います。例えば、行政書士の登録を受けた者が、不正手段を理由に取り消し(職権取消し)をされ、その取消し処分に対して、「この取消処分はおかしい!取消処分を取り消せ!」と取消訴訟を行い、裁判所が、「この者は不正をしていない!だから取消処分は取消しなさい!」といった場合が争訟取消しです。

実際、行政書士試験では、上記2つの違いについては出題される可能性は低いので参考程度でよいでしょう。これより下の内容についても、判例だけ押さえておけば大丈夫でしょう!

取消しをする際の法律の根拠

行政庁が取消しを行う場合、法律の特別な根拠は不要です。なぜなら、行政行為の取消は、違法な行政行為の効力を失わせる行為であり、そもそも、取消さなければならないものだからです

ただし、授益的行政行為を取消すことは、相手方に対して大きな不利益を与える可能性があります。
例えば、営業許可を受けた後に飲食店の営業を準備のために色々機材を購入したにも関わらず、営業許可が突然取消されたら大きな損害を受けます。

そのため、授益的行政行為(相手に権利利益を与える行為)の職権取消しは一定の制限があります。

取消権者

取消権者とは、取消しすることができる者(職権取消しの権限を持つ者)を言います。そして、職権取消しの権限を持つのは、処分庁上級行政庁(処分庁を監督する行政庁)です。

職権取消しの制限(職権取消しは自由にできるか?)

  1. 不可変更力がある行政行為の職権取消しはできない
    不服申立てに対する裁決には、不可変更力が働きます。そのため、裁決した行政庁自身は職権取消しができません
    ※この点は行政不服審査法を勉強してから理解すれば大丈夫です!
  2. 侵害的行政行為の職権取消しは、自由に行える
    侵害的行政行為とは、私人の権利を侵害する行為で、例えば、Aさんの行政書士の登録を取り消す行為です。この取消し行為(取消処分)を職権取消しすることは、Aさんにとっては、不利益にはなりません。むしろ、利益です。そのため、自由に行えます。
  3. 授益的行政行為の職権取消しは、慎重な判断が必要
    授益的行政行為とは、私人に利益を与える行為です。例えば、Bさんに対する生活保護の支給決定処分です。これを取り消すとなると、Bさんは不利益を受けます。そのため、この支給決定処分を取り消す場合、慎重な判断が必要となります。慎重な判断とは、処分を取り消すだけの公益上必要性がある場合や、生活保護の申請内容に不正があったなどの場合です。

行政行為の取消しに関する判例

  • 処分をした行政庁その他正当な権限を有する行政庁においては、みずからその違法または不当を認めて、処分の取消しによって生じる不利益と、取消しをしないことによってかかる処分に基づきすでに生じた効果をそのまま維持することの不利益とを比較考量し、しかもその処分を放置することが公共の福祉の要請に照らし著しく不当であると認められるときに限り、これを取り消すことができる。(最判昭43.11.7:農地の買収売渡計画職権取消し)

行政行為の撤回

撤回をする際の法律の根拠

行政庁が撤回を行う場合、法律の特別な根拠は不要です(最判昭63.6.17)。なぜなら、撤回の原因は、私人にあるため、それを理由に撤回することは私人の権利の侵害には当たらないからです。例えば、運転免許をCさん与えて、その後、Cさんが、飲酒運転を行って運転免許の取消し(撤回)を行う場合、撤回するかどうか行政庁の裁量によります。法律に飲酒運転をした場合、撤回しなければならないと規定されていなくても、撤回をすることができます。もちろん、ほんのちょっとの飲酒で捕まえたとしても、それだけで撤回というのは厳しすぎるので、そういった場合は、免許取消ではなく、罰金くらいでしょう。つまり、比例原則は適用されます。

撤回権者

撤回権者とは、撤回することができる者(撤回できる権限を持つ者)を言います。そして、撤回権者は、処分庁のみです。

撤回の制限(撤回は自由にできるか?)

撤回の場合も、職権取消しと同じように、不可変更力がある行政行為は撤回できません。」「侵害的行政行為の場合、自由に撤回できます。」一方、「授益的行政行為の撤回は、原則、できません。

行政行為の撤回に関する判例

  • 【要旨】都有行政財産である土地について建物所有を目的とし期間の定めなくされた使用許可が当該行政財産本来の用途又は目的上の必要に基づき将来に向つて取り消されたときは、使用権者は、特別の事情のないかぎり、右取消による土地使用権喪失についての補償を求めることはできない。【判決理由】使用許可に際し別段の定めがされている等により、行政財産についての右の必要にかかわらず使用権者がなお当該使用権を保有する実質的理由を有すると認めるに足りる特別の事情が存する場合に限られるというべきである。(最判昭49.2.5:撤回にかかる損失補償の要否)

行政事件訴訟法の概要

行政事件訴訟法とは?

行政事件訴訟法は、裁判によって、違法な行政活動によって権利利益を侵害された国民の救済を図るものです。

行政不服審査法 違法または不当な行政行為
行政事件訴訟法 違法な行政行為(不当な行政行為は行政事件訴訟法の対象外

訴訟は、民事訴訟、刑事訴訟、行政事件訴訟に区別でき、行政事件訴訟法は、公権力の行使に関する争いを含む公法上の法律関係に関する紛争解決を目的としてます。

民事事件 民事訴訟法
刑事事件 刑事訴訟法
行政事件 行政事件訴訟法

行政事件訴訟法の経緯

1945年(昭和20年)第二次世界大戦が終戦。

1946年(昭和21年)日本国憲法が公布。

1948年(昭和23年)に「行政事件訴訟特例」が制定(戦後に制定)。

行政事件訴訟特例法は、民事訴訟法の特例を定めたものであり、全文でわずか12条のみの簡単なものでした。この法律は、制定が急がれたため、欠陥も多かったため、
1962年(昭和37年)に法改正され、現行の「行政事件訴訟法」が制定されました。

行政事件訴訟法の類型

行政事件訴訟法は大きく分けて主観訴訟客観訴訟に分けることができます。

主観訴訟は、個人の権利利益の救済を目的とし、自分自身に直接関係する行政活動に対する訴訟を指し、客観訴訟は、行政の適法性の確保を目的とし、自分には直接関係ない行政活動に対する訴訟を指します。

主観訴訟

主観訴訟とは、個人の権利利益の救済を目的とし、自分自身に直接関係する行政活動に対する訴訟を指し、大きく分けて、抗告訴訟当事者訴訟に分けることができます。

主観訴訟は、個人の権利利益が侵害され、または侵害されそうになっている場合、その救済を求める訴えを指します。

抗告訴訟とは、行政庁の公権力の行使に関して違法でないかと不服がある場合の訴訟で、当事者訴訟は、当事者間の公法上の法律関係を争う訴訟です。

抗告訴訟

抗告訴訟には、下記5つがあります。詳細は下記リンク先で解説しています。

  1. 取消訴訟(処分の取消しの訴え、裁決の取消しの訴え)
  2. 無効等確認の訴え
  3. 不作為の違法確認の訴え
  4. 義務付けの訴え
  5. 差止めの訴え

当事者訴訟

当事者訴訟には、下記2つがあります。詳細は下記リンク先で解説しています。

  1. 形式的当事者訴訟
  2. 実質的当事者訴訟

客観訴訟

客観訴訟は、行政の適法性の確保を目的とし、自分には直接関係ない行政活動に対する訴訟を指し、民衆訴訟機関訴訟があります。

この客観訴訟は、行政活動が法律に違反している場合に個人の利益に関係なく、違法状態を回復するための訴訟です。

<<行政不服審査法 | 取消訴訟の概要原処分主義裁決主義審査請求前置主義>>

 

行政不服審査法66条:審査請求に関する規定の準用

審査請求の規定が、再審査請求に準用されないもの

下記内容は審査請求のルールですが、下記審査請求のルールは再審査請求には適用されません

第9条第3項 審理員指名の例外機関への除外規定
第18条
第1項・2項
審査請求期間
第19条第3項 不作為についての審査請求書の記載事項
第19条第5項
1号・2号
再調査請求の年月日
決定を経ないことについての正当な理由
第22条 誤った教示をした場合の救済
第25条第2項 執行停止
第29条2~5項 弁明書の提出
第30条第1項 反論書の提出
第41条第2項
第1号イ及びロ
審理手続の終結
弁明書の未提出、反論書の未提出
第43条 行政不服審査会等への諮問
第45条 処分についての審査請求の却下又は棄却
第46条 処分についての審査請求の認容
第47条 事実上の行為についての審査請求の認容
第48条 不利益変更の禁止
第49条 不作為についての審査請求の裁決
第50条
第1項・2項
裁決の方式

審査請求の規定が、再審査請求に準用されるもの

再審査庁が、審理員指名の例外機関(例えば内閣府等)である場合には、下記規定は適用されます

第17条 審理員となるべき者の名簿
第40条 審理員による執行停止の意見書の提出
第42条 審理員意見書
第50条第2項 諮問を要しない場合の裁決書への審理員意見書の添付

(審査請求に関する規定の準用)
行政不服審査法第66条 第二章(第9条第3項、第18条(第3項を除く。)、第19条第3項並びに第5項第1号及び第2号、第22条、第25条第2項、第29条(第1項を除く。)、第30条第1項、第41条第2項第1号イ及びロ、第四節、第45条から第49条まで並びに第50条第3項を除く。)の規定は、再審査請求について準用する。この場合において、別表第三の上欄に掲げる規定中同表の中欄に掲げる字句は、それぞれ同表の下欄に掲げる字句に読み替えるものとする。
2 再審査庁が前項において準用する第九条第1項各号に掲げる機関である場合には、前項において準用する第17条、第40条、第42条及び第50条第2項の規定は、適用しない。

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行政不服審査法41条:審理手続の終結

審査請求の大まかな流れは下記の通りです。下記6の反論書の提出まで終わり、処分庁と審査請求人・参加人の意見を聴いて、必要な審理を終えたと認めるときは、審理員は審理手続を終結します。このページでは、審理手続を終える場面についての行政書士試験のポイントをお伝えします。

審査請求から裁決までの流れ

処分が行われ、その処分に不服があると、下記流れで審査請求が行われます。

  1. 審査請求人は審査請求書を審査庁に提出します。
  2. 審査庁は審査請求書に不備がないかを審査します。
  3. 不備がなければ審査庁は、審査請求の手続きを担当する審理員を指名します。
  4. 審理員は処分庁に審査請求書を送付します。
  5. 処分庁は審理員に弁明書を提出します。
  6. 審査請求人は審理員に反論書を提出します。

審理手続の終結

どのような場合に審理手続を終結するか?

  1. 審理員は、必要な審理を終えたと認めるとき
  2. 弁明書反論書意見書証拠書類等が、相当期間内に提出されなかったとき
  3. 申立人が、正当な理由なく、口頭意見陳述に出頭しないとき

審理手続を終結したら何をするのか?

審理員が審理手続を終結したときは、審理員は、速やかに審理関係人(審査請求人、参加人、処分庁)に対し、審理手続を終結した旨並びに審理員意見書及び事件記録を審査庁に提出する予定時期を通知しなければなりません。当該予定時期を変更したときも、同様に通知が必要です。

(審理手続の終結)
行政不服審査法第41条 審理員は、必要な審理を終えたと認めるときは、審理手続を終結するものとする。
2 前項に定めるもののほか、審理員は、次の各号のいずれかに該当するときは、審理手続を終結することができる。
一 次のイからホまでに掲げる規定の相当の期間内に、当該イからホまでに定める物件が提出されない場合において、更に一定の期間を示して、当該物件の提出を求めたにもかかわらず、当該提出期間内に当該物件が提出されなかったとき。
イ 第29条第二項 弁明書
ロ 第30条第一項後段 反論書
ハ 第30条第二項後段 意見書
ニ 第32条第三項 証拠書類若しくは証拠物又は書類その他の物件
ホ 第33条前段 書類その他の物件
二 申立人が、正当な理由なく、口頭意見陳述に出頭しないとき。
3 審理員が前二項の規定により審理手続を終結したときは、速やかに、審理関係人に対し、審理手続を終結した旨並びに次条第一項に規定する審理員意見書及び事件記録(審査請求書、弁明書その他審査請求に係る事件に関する書類その他の物件のうち政令で定めるものをいう。同条第二項及び第四十三条第二項において同じ。)を審査庁に提出する予定時期を通知するものとする。当該予定時期を変更したときも、同様とする。

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差止めの訴え(抗告訴訟の一種)

行政事件訴訟法の類型でも勉強した通り、主観訴訟の中の抗告訴訟の一つに「差止めの訴え」があります。

主観訴訟とは、個人の権利利益の救済を目的とし、自分自身に直接関係する行政活動に対する訴訟を指し、抗告訴訟とは、行政庁の公権力の行使に関して違法でないかと不服がある場合の訴訟です。

差止めの訴えとは?

差止めの訴え差止め訴訟)とは、行政庁が一定の処分又は裁決をすべきでないにかかわらずこれがされようとしている場合において、行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟を言います。

上記「処分や裁決がされようとしている場合」に行う訴訟なので、処分や裁決がされる前に提起するものだということです。行政書士の試験ではここが非常に重要です。

例えば、Aが建物を建築したが、甲県が「この建物は違法建築物です。直してくれませんか?」という行政指導をAに対して行った。しかし、Aは違法建築物ではないと思っていた。このまま放っておくと、除去命令の処分をされかねません。そのためAは甲県に対して、除去命令をしないように差止めの訴えを提起することができます。

差止め訴訟の訴訟要件

差止め訴訟を提起できる要件は下記3つです。すべて満たした場合に適法となり審理されます。いずれか一つでも満たさない場合は、不適法として却下されます。

非申請型の義務付け訴訟と同じ訴訟要件です。

  1. 一定の処分や裁決がなされることにより重大な損害を生ずるおそれがあること
  2. その損害を避けるため他に適当な方法がないこと
  3. 行政庁が一定の処分をしてはならない旨を命ずることを求めるにつき法律上の利益を有する者であること

差止め訴訟の勝訴要件

差止め訴訟で原告が勝訴するためには下記2つのいずれかを満たす必要があります。

  1. 行政庁がその処分をすべきでないことが明らかであること
  2. 行政庁がその処分をすることが裁量権の逸脱・濫用となると認められること

上記のいずれかを満たせば、認容判決(原告勝訴)となり、どちらも満たさない場合は棄却判決(原告敗訴)となります。

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行政不服審査法58条:再調査の請求の却下又は棄却の決定

再調査の請求が法定の期間を過ぎた場合(不適法である場合)、処分庁は、決定により却下します。

再調査請求について、理由がない場合、処分庁は、決定で棄却します。

再調査請求について、結論を出すことを「決定」という文言を使います。

審査請求について、結論を出すことは「裁決」でしたね!

却下と棄却の違い

この2つの違いについてよく行政書士試験で出題されるので必ず頭に入れておきましょう!

却下 手続の不備など、不適法な場合に、審理をせずに門前払いをすること
棄却 手続の不備はなく適法に行われているため、審理はするが、請求に理由がないとして請求などを退けること

(再調査の請求の却下又は棄却の決定)
行政不服審査法第58条 再調査の請求が法定の期間経過後にされたものである場合その他不適法である場合には、処分庁は、決定で、当該再調査の請求を却下する。
2 再調査の請求が理由がない場合には、処分庁は、決定で、当該再調査の請求を棄却する。

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