国家賠償法6条では、外国人が被害者である場合、相互保証があるときに限って、国家賠償法が適用されるとしています。
国家賠償法第六条
この法律は、外国人が被害者である場合には、相互の保証があるときに限り、これを適用する。
分かりやすくいうと、外国Aにおいて、日本人が国家賠償を受けることができる場合、外国Aの外国人が、日本で国家賠償を受けることができるということです。
国家賠償法6条では、外国人が被害者である場合、相互保証があるときに限って、国家賠償法が適用されるとしています。
国家賠償法第六条
この法律は、外国人が被害者である場合には、相互の保証があるときに限り、これを適用する。
分かりやすくいうと、外国Aにおいて、日本人が国家賠償を受けることができる場合、外国Aの外国人が、日本で国家賠償を受けることができるということです。
損失補償とは、適法な公権力の行使によって加えられた財産上の特別の犠牲に対して、公平負担の見地からこれを調整するためにする財産的補償です。
例えば、バスが通る道路にも関わらず、狭い道路のため、道路を拡幅する都市計画が決定されたとします。すると、その狭い道路の両側の土地の所有者は、強制的に、土地の一部を収用(買取・買収)されてしまいます。
これは、違法行為ではなく、都市計画法等の法律によって行われるため、適法な公権力の行使です。
この場合、買収された土地部分については、補償を受けることができる(その分、お金をもらうことができる)ということです。
※違法な公権力の行使による損害は、国家賠償法1条が適用されます。
損失補償の根拠は、日本国憲法29条3項です。
日本国憲法29条3項
私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。
国家賠償については、国家賠償法という一般法が存在しましたが、
損失補償については、損失補償法といった一般法は存在しません。
そのため、個別法の中で、損失補償が置かれています。ただし、個別法で損失補償の規定が置かれていない場合も、上記憲法29条3項を直接適用して、補償請求をする余地はあります。
上記憲法29条3項には「正当な補償」と規定されています。正当な補償とは、どの程度の補償なのかが問題になってきます。
この点について、「相当補償説」を採る判例と「完全補償説」を採る判例があります。
「正当な補償とは、その当時の経済状態において成立することを考えられる価格に基づき合理的に算出される相当な額をいう」(最大判昭28.12.23:農地改革訴訟)としています。この考え方を「相当補償説」と言います。
相当補償説の考え方は、時価(一般的な取引価格)よりも低額の価格を保障すればよいことになります。
この判例の背景として、戦前、大地主が小作人に農地を貸して、農業を行われていたが、戦後、国が全国の大地主(たくさん土地を持つ人達)から土地を買い上げ、安い価格で小作人に売渡し、自作農民を増やす改革を行いました。その時の大地主への補償が上記相当補償説です。
土地収用法による損失補償の判例(最判昭48.10.18)では「土地収用法における損失の補償は、特定の公益上必要な事業のために土地が収用される場合、その収用によって当該土地の所有者等が被る特別な犠牲の回復をはかることを目的とするものであるから、完全な補償、すなわち、収用の前後を通じて被収用者の財産価値を等しくならしめるような補償をなすべきであり、金銭をもって補償する場合には、被収用者が近傍において被収用地と同等の代替地等を取得することをうるに足りる金額の補償を要する」としています。この考え方を「完全補償説」と言います。
完全補償説の考え方は、財産の客観的価値が全部保障されることになります。
| 相当補償 | その当時の経済状態において成立することを考えられる価格に基づき合理的に算出される相当な額が保障される |
|---|---|
| 完全補償 | 財産の客観的価値が全部保障される |
補償は、原則、金銭をもって支払われます。例外として、土地収用法は、付近の代替地の提供による補償も認めています。
| 原則 | 金銭 |
|---|---|
| 例外 | 土地収用法では、代替地の提供でもよい |
実際、土地収用がなされる場合、収用の対象となる土地の対価を補償するだけでは不十分な場合もあります。例えば、収用された土地で飲食店を営業していた場合、移転費用や営業上の損失などの付随的損失が生じることもあります。これも含めないと完全補償とはならないので、これらの付随的損失も補償対象となります。
憲法29条3項を直接根拠として、国または公共団体に補償を請求する場合、公法上の法律関係に関する訴訟なので、実質的当事者訴訟に当たります。
一方、土地収用における損失補償の増額を請求する場合、当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令(土地収用法)の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするものなので、形式的当事者訴訟に当たります。
上記以外にも、どのような場合に補償されるのかも問題になってきます。
この点について、判例(最判平17.11.1)では、「一般的に当然に受忍すべきものとされる制限の範囲を超えて特別の犠牲を課せられたものということがいまだ困難であるから、直接憲法29条3項を根拠として上記の損失につき補償請求をすることはできない」として、社会的制約として受忍すべき限度を超えていて、かつ、それが平等原則に反するような個別的負担である特別の犠牲に当たる場合は補償すべきだとしています。
つまり、下記2点を基準にして、2つとも満たす場合に限って損失補償するということです。
国家賠償法1条では、「公務員による違法な公権力の行使」という行為に着目しました。一方、国家賠償法2条では、「営造物の設置管理の瑕疵」という物の状態に着目します。
国家賠償法
第二条 道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。
2 前項の場合において、他に損害の原因について責に任ずべき者があるときは、国又は公共団体は、これに対して求償権を有する。
行政書士の試験では、まず、「公の営造物」とは何か?を頭に入れる必要があります。その後、瑕疵に関する具体的な判例を覚えれば得点できます。
「公の営造物」とは、公の目的に供されている有体物を言います。
「有体物」とは「物や設備」と考えていただいて大丈夫です。
そして、「公の営造物」と「公物」は同義(同じもの)で、大きく分けて「自然公物」と「人工公物」があります。
| 自然公物 | 河川、湖、沼、海、砂浜等 |
|---|---|
| 人工公物 | 道路、上下水道、庁舎、庁舎内の机・椅子、校舎、公用車、けん銃等 |
公の営造物かどうかの判断基準は「公の用に供されているか(国民みんなが使うものか)」です。
つまり、所有権が誰かは問題ありません。
例えば、道路が私道(私人が所有する道路)であっても、公の用に供されているのであれば、公の営造物です。このように、私人が所有する公の営造物を「私有公物」と言います。
一方、公の用に供されていない国公有地などは、公の営造物に含みません。
(=行政活動に用いられていない「普通財産」は、公の営造物に含まれない)
そして、判例(最判昭59.11.29)では、「公の営造物の設置又は管理は、必ずしも国又は公共団体が法律上の権限に基づいて行うことを要せず、事実上これを管理することになったときは管理責任を負う。」としています。例えば、上記私道もこれに当たる場合があります。私道のため、法律上は、国や地方公共団体は、管理義務がありません。しかし、事実上、私道を管理する場合、国や地方公共団体が管理責任を負います。
公の営造物の「設置又は管理の瑕疵」とは、公の営造物が通常有すべき安全性を欠いていることを言います。これは、客観的な瑕疵が存在すれば足り、損害の発生に関して設置者や管理者の過失の有無は関係ありません(無過失責任)。つまり、設置者や管理者に過失(落ち度)がなかったとしても、公の営造物の設置に瑕疵があったり、管理に瑕疵があれば、国等が賠償責任を負うことになります。
ただし、地震や大洪水といった自然災害のような不可抗力から生じた損害について、国賠法の対象にはなりません。
「公の営造物の設置又は管理に瑕疵があった」と認められる場合、国賠法2条の責任が成立し、被害者は、営造物の設置管理する国や公共団体に対して損害賠償を請求できます。そして、国や公共団体が賠償した場合、他に損害の原因について責に任ずべき者があるときは、国又は公共団体は、これに対して求償することができます。
例えば、河川とダムについてA県が河川管理者として管理していて
その費用の2分の1は国が負担しているとします。
そして、「A県職員であるB」の誤ったダムの放流操作によって、周辺住民に損害を与えてしまった場合、A県だけでなく、国(費用負担者)も損害賠償責任を負います。
そして、賠償した者は、責任になる者に対して求償することができます。例えば、上記事例で、国が損賠賠償した場合、国は、A県に求償できます。
国家賠償法
第三条 前二条の規定によつて国又は公共団体が損害を賠償する責に任ずる場合において、公務員の選任若しくは監督又は公の営造物の設置若しくは管理に当る者と公務員の俸給、給与その他の費用又は公の営造物の設置若しくは管理の費用を負担する者とが異なるときは、費用を負担する者もまた、その損害を賠償する責に任ずる。
2 前項の場合において、損害を賠償した者は、内部関係でその損害を賠償する責任ある者に対して求償権を有する。
国家賠償法1条では、公務員による公権力の行使によって他人に損害を与えた場合の国または公共団体の賠償責任を規定しており、
国家賠償法2条では、公の営造物の設置・管理の瑕疵によって他人に損害を与えた場合の国または公共団体の賠償責任を規定しています。
そして、今回解説する、国家賠償法4条では、①公権力の行使とは言えない場合の損害や②公の営造物に該当しない場合の損害については、民法のルールが適用されると規定しています。
国家賠償法第四条
国又は公共団体の損害賠償の責任については、前三条の規定によるの外、民法の規定による。
例えば、公務員が、庁舎間を車で移動中に事故を起こしてしまった場合、民法715条の使用者責任が適用されます。
→車の運転は、公権力の行使とは言えないから。
例えば、「老朽化してすでに使用されていない市営住宅」の塀が崩れて、通行人に損害を与えてしまった場合、民法717条の工作物責任が適用されます。
→「老朽化してすでに使用されていない市営住宅」は、公の目的のために使用されているわけではないので、公の営造物に該当しないから。
上記以外にも、過失相殺(民法722条)、不法行為による損害賠償請求権の期間の制限(724条)なども適用されます。
上記民法の中には、失火法といった特別法も含みます。
例えば、消防職員の消火ミスによって火災の再燃について判例(最判昭53.7.17)では「公権力の行使にあたる公務員の失火による国又は公共団体の損害賠償責任については、国家賠償法四条により失火責任法が適用され、当該公務員に重大な過失のあることを必要とするものといわなければならない。」としています。
行政書士のここまでの勉強、行政不服審査法、行政事件訴訟法と勉強してきました。これらは、争訟による救済制度です。もし、公権力の行使によって、金銭的に損害を受けた場合、行政不服審査法や行政事件訴訟法での救済だけでは不十分です。そのため、国家賠償や損失補償という制度があります。
の全体像.gif)
そもそも、国家賠償法は、憲法17条を受けて制定されました。
憲法17条
何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。
一方、損失補償は、憲法29条3項で定めております。しかし、国家賠償法のように、一般法はなく、個別の法律で損失補償の規定がされています。ただし、たとえ、個別法に損失補償の規定がない場合も、上記憲法29条3項を根拠に(直接適用して)損失補償されることもあります。
憲法29条3項
私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。
| 国家賠償 | 違法行為による損害の賠償を求める制度 |
|---|---|
| 損失補償 | 適法行為ではあるもの損失を受けた場合に補償を求める制度 |
そして、国家賠償には、「国家賠償法1条による損害賠償責任」と「国家賠償法2条による損害賠償責任」があります。
| 1条 | 公権力の行使について、故意または過失により他人に損害を与えた場合(過失責任) |
|---|---|
| 2条 | 営造物の設置管理の瑕疵により他人に損害を与えた場合(無過失責任) |
このページでは、民衆訴訟と機関訴訟をまとめて解説します。
民衆訴訟も機関訴訟も客観訴訟に当たります。

行政事件訴訟法は大きく分けて主観訴訟と客観訴訟に分けることができます。
主観訴訟は、個人の権利利益の救済を目的とし、自分自身に直接関係する行政活動に対する訴訟を指し、客観訴訟は、行政の適法性の確保を目的とし、自分には直接関係ない行政活動に対する訴訟を指します。つまり、民衆訴訟も客観訴訟も個人(自分自身)には直接関係しない訴訟と言えます。これは具体例を見ていくと分かると思います。
民衆訴訟とは、国又は公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、選挙人たる資格その他自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起するものを言います。
分かりやすくいうと、住民や選挙人が、国や地方公共団体に対して、「法律違反しているでしょ!だから正しなさい!」というのが民衆訴訟です。
具体的には、「地方自治法に基づく住民訴訟」や「選挙又は当選の効力に関する訴訟」です。
例えば、市長が、公金を違法に支出してしまい、自治体に損害を与えた場合、監査請求を経たうえで、被害回復を求めて住民が住民訴訟を提訴できます。
例えば、甲市の市議会議員選挙があり、AとBが立候補し、選挙が行われ、Aが当選した。しかし、Aは選挙期間中に、住民にお金を配るなどして、違法な選挙活動を行っていた場合、当選の効力の無効の訴えを提起することができます。
機関訴訟とは、国又は公共団体の機関相互間における権限の存否又はその行使に関する紛争についての訴訟を言います。
分かりやすく言えば、行政機関同士の争いです。
例えば、市長が「議会の議決が法令に即して手続きをしていないから議決は無効だ!」と訴える場合、市長と議会という行政機関同士で争っているので機関訴訟です。
争点訴訟とは、私法上の法律関係に関する訴訟ですが、その前提となる処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無が争われているものを言います。
例えば、Aの農地が買収された場合における「農地買収処分の無効を理由とする所有権確認訴訟」です。最終的には、Aは「この農地の所有権は私のものです!」と確認を求める訴訟(所有権という私法上の法律関係に関する訴訟)なのですが、争点となっているのは、農地買収処分です。この農地買収処分が無効だから、この農地の所有権はAにあるでしょ!という争いです。
また、Aが不動産を取得していないにも関わらず、不動産取得税の課税処分の通知を受け、納税した場合における「課税処分の無効を前提とする税金の還付請求訴訟」も争点訴訟です。最終的には、納税した税金を還付してください!という還付請求(返還請求)の訴訟(民事訴訟)なのですが、争点となっているのは、課税処分です。そのため、争点訴訟となります。

上記実質的当事者訴訟と争点訴訟は似ていますが、違います。
何が違うかというと、
争点訴訟は私人間の争い(=民事訴訟)で、
実質的当事者訴訟は、私人と行政主体との争い(=行政訴訟)です。
もう少し詳しくいうと、処分等の無効等を前提に「私法上の権利義務」について争う争点訴訟は民事訴訟ですが、処分等の無効等を前提に「公法上の権利義務」について争う訴訟(実質的当事者訴訟)は行政訴訟(行政事件訴訟)です。
無効等確認訴訟は、処分が当初から無効であることの確認自体を請求する訴訟であるのに対し、争点訴訟は、処分の無効を前提に、私法上の権利義務について争う訴訟です。
上の2つの事例でいうと、「農地買収処分の無効自体を争う場合」や「課税処分の無効自体を争う場合」は、無効等確認の訴えを提起します。
一方で、「農地買収処分の無効を前提として、所有権を確認する場合」や「課税処分の無効を前提として、税金の還付を求める場合」は、争点訴訟を提起します。
そして、上図の通り、現在の法律関係の確認を求める訴え(争点訴訟)では目的達成ができない場合に限って、無効等確認の訴え(無効確認訴訟)を提起できます。
取消訴訟が提起された場合、仮の救済手段として、執行停止の制度があります。
これと同様に、
義務付け訴訟が提起された場合の仮の救済手段として「仮の義務付け」
差止め訴訟が提起された場合の仮の救済手段として「仮の差止め」があります。
仮の義務付けは、義務付けの訴えがあった場合に、その判断がされる前に、暫定的に行政庁が処分または裁決をする旨を命ずることを言います。
例えば、A所有の建物が違法建築物で今にも倒壊しそうです。隣地の住民Bが当該建物の除去命令の義務付けの訴えを提起したが、判決をもらうまでに時間がかかるためその間に建物が倒壊してしまっては、Bは困ります。そのような場合に、仮の義務付けを申し立てることができます。
| 手続要件 | 義務付けの訴えがあったこと |
|---|---|
| 積極要件 |
|
| 消極要件 | 公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあること |
積極要件とは、効力を発生させるための要件を言います。
一方、消極要件とは、効力が妨げられる要件を言います。
上記事例でいうと、下記2つの要件を満たることで仮の義務付けの効力が発生します。
しかし、「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがある」という要件を満たす場合、たとえ、上記積極的要件(上記2つの要件)を満たしていても、仮の義務付けの効力は発生しません。
仮の差止めは、差止めの訴えがあった場合に、その判断がされる前に、暫定的に行政庁が処分または裁決をしてはならない旨を命ずることを言います。
例えば、A土木会社が、宅地の造成工事を行っています。隣地の住民Bの土地が、Aの造成工事により、沈下(地盤沈下)している。この場合、工事の差止めの訴えをしたが、判決をもらうまでに時間がかかるため、その間にもドンドン地盤沈下して困ってしまいます。そのような場合にBは仮の差止めを申し立てることができます。
仮の差止めの要件は、仮の義務付けと考え方は同じです。
| 手続要件 | 差止めの訴えがあったこと |
|---|---|
| 積極要件 |
|
| 消極要件 | 公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあること |
この点も仮の義務付けと同様に
下記2つの要件を満たることで仮の差止めの効力が発生します。
しかし、「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがある」という要件を満たす場合、たとえ、上記積極的要件(上記2つの要件)を満たしていても、仮の差止めの効力は発生しません。
行政事件訴訟法の類型でも勉強した通り、主観訴訟の中の抗告訴訟の一つに「不作為の違法確認の訴え」があります。
主観訴訟とは、個人の権利利益の救済を目的とし、自分自身に直接関係する行政活動に対する訴訟を指し、抗告訴訟とは、行政庁の公権力の行使に関して違法でないかと不服がある場合の訴訟です。
不作為の違法確認の訴え(不作為の違法確認訴訟)とは、行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らかの処分又は裁決をすべきであるにかかわらず、これをしないことについての違法の確認を求める訴訟を言います。
簡単に言えば、申請をしたにも関わらず、相当期間が経過しても、処分や裁決を下さない場合に、それは違法だ!と訴訟提起することです。
例えば、宅建業の免許の申請をしたにも関わらず、いつまで経っても、許可処分も不許可処分も下さない場合に、申請者は不作為の違法確認の訴えを提起できます。
ただ、不作為の違法確認の訴えで勝訴したとしても、不作為の行政庁に対して、何らかの応答(許可処分や不許可処分)をしなさいという命令としての意味しか持ちません。
申請者としては、許可処分をください!と主張したい場合もあります。そのような場合はあとで解説する義務付け訴訟を行います。
そうすれば、許可処分を義務付ける効力を持ちます。
ここでいう「相当期間」とは、その処分をするのに通常必要とする期間を言います。標準処理期間と必ずしも一致するわけではないので、標準処理期間が経過したからといって直ちに不作為の違法だと主張することはできません。
不作為の違法確認の訴えは、処分又は裁決について申請をした者に限って提起できます。
注意すべき点は、その申請が適法である必要はありません。現に申請をしていれば、不適法と却下されるような申請であっても、却下処分がされていない以上、不作為状態なので、不作為の違法確認訴訟を提起できます。
行政庁の不作為が続いている限り、申請をした者はいつでもこの訴えを提起することができます。
行政庁は、取消訴訟を提起することができる「処分又は裁決」をする場合には、当該「処分又は裁決」の相手方に対し、原則、下記事項を書面で教示しなければなりません。
| ①当該処分又は裁決に係る取消訴訟の被告とすべき者 |
| ②当該処分又は裁決に係る取消訴訟の出訴期間 |
| ③法律に当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ処分の取消しの訴えを提起することができない旨の定めがあるときは、その旨 |
ただし、例外として、当該処分を口頭でする場合は、教示しなくてもよいです。
上記の内容は、処分についても、裁決についても取消訴訟の提起ができる場合です。
今回の内容は、裁決についてのみ取消訴訟の提起が許される場合(裁決主義の場合)の話です。
この場合、処分の相手方に対し、法律にその定めがある旨(裁決主義である旨)を書面で教示しなければなりません。
行政庁は、「当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの(形式的当事者訴訟)」を提起することができる処分又は裁決をする場合には、当該処分又は裁決の相手方に対し、下記事項を書面で教示しなければなりません。
| ①当該訴訟の被告とすべき者 |
| ②当該訴訟の出訴期間 |
ただし、例外として、当該処分を口頭でする場合は、教示しなくてもよいです。
行政不服審査法の教示では、行政庁が誤って教示した場合や教示をしなかった場合について規定されてています。
一方、行政事件訴訟法では、行政庁が誤って教示した場合や教示をしなかった場合の規定はありません。しかし、取消訴訟の出訴期間の例外で「正当な理由があるとき」は、6か月・1年経過後でも取消訴訟を行えるとして、上記の場合は、「正当な理由」に該当すると解釈されています。そのため、一定の救済措置があるわけです。
<<取消訴訟の判決の種類と効力(却下判決、認容判決、棄却判決、事情判決、既判力、形成力・第三者効、拘束力 | 無効等確認の訴え>>