令和7年度の行政書士試験対策の個別指導開講

平成28年・2016|問1|基礎法学・裁判制度

次の文章は、裁判員制度に関する最高裁判所判決の一節(一部を省略)である。
空欄[ ア ]~[ エ ]に当てはまる語句の組合せとして、妥当なものはどれか。

裁判は、証拠に基づいて事実を明らかにし、これに法を適用することによって、人の権利義務を最終的に確定する国の作用であり、取り分け、刑事裁判は、人の生命すら奪うことのある強大な国権の行使である。そのため、多くの近代[ ア ]国家において、それぞれの歴史を通じて、刑事裁判権の行使が適切に行われるよう種々の原則が確立されてきた。基本的人権の保障を重視した憲法では、特に31条から39条において、・・・適正な刑事裁判を実現するための諸原則を定めており、そのほとんどは、各国の刑事裁判の歴史を通じて確立されてきた普遍的な原理ともいうべきものである。刑事裁判を行うに当たっては、これらの諸原則が厳格に遵守されなければならず、それには高度の[ イ ]が要求される。憲法は、これらの諸原則を規定し、かつ、[ ウ ]の原則の下に、「第6章 司法」において、裁判官の職権行使の独立と身分保障について周到な規定を設けている。こうした点を総合考慮すると、憲法は、刑事裁判の基本的な担い手として裁判官を想定していると考えられる。
他方、歴史的、国際的な視点から見ると、欧米諸国においては、上記のような手続の保障とともに、18世紀から20世紀前半にかけて、[ ア ]の発展に伴い、[ エ ]が直接司法に参加することにより裁判の[ エ ]的基盤を強化し、その正統性を確保しようとする流れが広がり、憲法制定当時の20世紀半ばには、欧米の[ ア ]国家の多くにおいて陪審制か参審制が採用されていた。
(最大判平成23年11月16日刑集65巻8号1285頁)

  1. ア:民主主義 イ:法的専門性 ウ:三権分立 エ:国民
  2. ア:立憲主義 イ:政治性 ウ:法的安定性 エ:法曹
  3. ア:自由主義 イ:法的専門性 ウ:三権分立 エ:国民
  4. ア:民主主義 イ:政治性 ウ:法的安定性 エ:法曹
  5. ア:立憲主義 イ:法的専門性 ウ:三権分立 エ:国民

>解答と解説はこちら


【答え】:1

【解説】

裁判は、証拠に基づいて事実を明らかにし、これに法を適用することによって、人の権利義務を最終的に確定する国の作用であり、取り分け、刑事裁判は、人の生命すら奪うことのある強大な国権の行使である。そのため、多くの近代[ ア:民主主義 ]国家において、それぞれの歴史を通じて、刑事裁判権の行使が適切に行われるよう種々の原則が確立されてきた。基本的人権の保障を重視した憲法では、特に31条から39条において、・・・適正な刑事裁判を実現するための諸原則を定めており、そのほとんどは、各国の刑事裁判の歴史を通じて確立されてきた普遍的な原理ともいうべきものである。刑事裁判を行うに当たっては、これらの諸原則が厳格に遵守されなければならず、それには高度の[ イ:法的専門性 ]が要求される。憲法は、これらの諸原則を規定し、かつ、[ ウ:三権分立 ]の原則の下に、「第6章 司法」において、裁判官の職権行使の独立と身分保障について周到な規定を設けている。こうした点を総合考慮すると、憲法は、刑事裁判の基本的な担い手として裁判官を想定していると考えられる。
他方、歴史的、国際的な視点から見ると、欧米諸国においては、上記のような手続の保障とともに、18世紀から20世紀前半にかけて、[ ア:民主主義 ]の発展に伴い、[ エ:国民  ]が直接司法に参加することにより裁判の[ エ:国民  ]的基盤を強化し、その正統性を確保しようとする流れが広がり、憲法制定当時の20世紀半ばには、欧米の[ ア:民主主義 ]国家の多くにおいて陪審制か参審制が採用されていた。
(最大判平成23年11月16日刑集65巻8号1285頁)

ア.
裁判は、証拠に基づいて事実を明らかにし、これに法を適用することによって、人の権利義務を最終的に確定する国の作用であり、取り分け、刑事裁判は、人の生命すら奪うことのある強大な国権の行使である。そのため、多くの近代[ ア ]国家において、それぞれの歴史を通じて、刑事裁判権の行使が適切に行われるよう種々の原則が確立されてきた。基本的人権の保障を重視した憲法では、特に31条から39条において、・・・適正な刑事裁判を実現するための諸原則を定めており、そのほとんどは、各国の刑事裁判の歴史を通じて確立されてきた普遍的な原理ともいうべきものである。
ア・・・民主主義
選択肢の3つの言葉を入れると
「近代民主主義国家」「近代立憲主義国家」「近代自由主義国家」となります。
  • 民主主義」とは「国のことは、国民が自分たちの力で決めよう!」という考え方です。
  • 立憲主義」とは「憲法によって国家権力(政治家や公務員)を制限しよう!」という考え方です。
  • 自由主義」とは「個人の自由は尊重しよう!」という考え方です。

上記問題文では、どれを入れるかは、判断しづらいです。
ただ、エの選択肢の内容から、「民主主義」と判断できます。

イ.
刑事裁判を行うに当たっては、これらの諸原則が厳格に遵守されなければならず、それには高度の[ イ: ]が要求される。
イ・・・法的専門性
選択肢は「法的専門性」と「政治性」
刑事裁判を行うのは、裁判所(裁判官)であって、内閣(政治家)ではありません。
その点から考えると、司法試験に合格する必要がある裁判官は、政治性が要求されるのではなく、法的専門性が要求されることが分かります。
ウ.
憲法は、これらの諸原則を規定し、かつ、[ ウ ]の原則の下に、「第6章 司法」において、裁判官の職権行使の独立と身分保障について周到な規定を設けている。こうした点を総合考慮すると、憲法は、刑事裁判の基本的な担い手として裁判官を想定していると考えられる。
ウ・・・三権分立
選択肢は、「法的安定性」と「三権分立」の2つです。「法的安定性の原則」とは、法の運用や解釈をころころ変えると社会的安定が失われるため、それは避けましょう、という考え方。
法の恣意的な運用や主観的な解釈などは避けなければならないということです。「三権分立の原則」とは、国会(立法)、内閣(行政)、裁判所(司法)の三つの独立した機関が相互に抑制し合い、バランスを保つことにより、権力の濫用を防ぎ、国民の権利と自由を保障する考え方です。

問題文を見ると、
『「第6章 司法」において、裁判官の職権行使の独立と身分保障について周到な規定を設けている』
と書いてあります。
この身分保障は、司法が他の国家権力から独立して、機能すべきことを示しています。
したがって、「ウには、三権分立」が入ります。

エ.
歴史的、国際的な視点から見ると、欧米諸国においては、上記のような手続の保障とともに、18世紀から20世紀前半にかけて、[ ア ]の発展に伴い、[ エ ]が直接司法に参加することにより裁判の[ エ  ]的基盤を強化し、その正統性を確保しようとする流れが広がり、憲法制定当時の20世紀半ばには、欧米の[ ア ]国家の多くにおいて陪審制か参審制が採用されていた。
エ・・・国民
欧米諸国(ドイツ・フランス)では、「参審制」という裁判制度を採り入れ、「事実認定・法解釈・量刑」すべてを、一般市民から選出された参審員と裁判官が一緒に行います
国民が司法に参加する制度を取っているので、「エには、国民」が入ります。ここから、「アが、民主主義」が妥当ではないかと判断できます。

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平成28年度(2016年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 国民審査 問33 民法:債権
問4 プライバシー権 問34 民法:債権
問5 国会 問35 民法:親族
問6 信教の自由 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 行政裁量 問39 会社法
問10 行政事件訴訟法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・政治
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・経済
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・情報通信
問25 行政法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政事件訴訟法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・公文書管理法
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

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