民法の過去問

平成25年・2013|問45|民法・記述式

Aは、Bに対し、Cの代理人であると偽り、Bとの間でCを売主とする売買契約(以下、「本件契約」という。)を締結した。ところが、CはAの存在を知らなかったが、このたびBがA・B間で締結された本件契約に基づいてCに対して履行を求めてきたので、Cは、Bからその経緯を聞き、はじめてAの存在を知るに至った。他方、Bは、本件契約の締結時に、AをCの代理人であると信じ、また、そのように信じたことについて過失はなかった。Bは、本件契約を取り消さずに、本件契約に基づいて、Aに対して何らかの請求をしようと考えている。このような状況で、AがCの代理人であることを証明することができないときに、Bは、Aに対して、どのような要件の下で(どのようなことがなかったときにおいて)、どのような請求をすることができるか。「Bは、Aに対して、」に続けて、下線部について、40字程度で記述しなさい(「Bは、Aに対して、」は、40字程度の字数には入らない)。

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【答え】:Aが行為能力を有し、Cの追認がなかったとき、履行又は損害賠償の請求をすることができる。(43字) 

【解説】

問題文の状況は、

  • 無権代理人A、本人C(売主)、相手方B(買主)
  • 本人Cは、無権代理人Aの存在を知らなかった
  • 相手方Bが、本人Cに対して履行を求めてきた
  • 相手方Bは、本件契約の締結時に、AをCの代理人であることについて、善意無過失

上記状況で
相手方Bは、上記AB間の契約を取り消さずに、AB間の契約に基づいて、Aに対して何らかの請求をしようと考えています。

このような状況で、AがCの代理人であることを証明することができないときに、

  • ①相手方Bは、無権代理人Aに対して、
  • ②どのような要件の下で(どのようなことがなかったときにおいて)、
  • ③どのような請求をすることができるか?

善意無過失相手方が無権代理人に何らかの請求をすることから、下記民法117条を考えます。

他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う(民法117条)。

前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない(同条2項)。

  1. 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき。
  2. 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が過失によって知らなかったとき。ただし、他人の代理人として契約をした者が自己に代理権がないことを知っていたときは、この限りでない。
  3. 他人の代理人として契約をした者が行為能力の制限を受けていたときは上記責任を負わない。

①については、問題文から「Bは、Aに対して、・・・」となっているので考えなくても大丈夫です。

②について、

民法117条1項の通り、
無権代理人Aが自己の代理権を証明したとき」又は「本人Cの追認を得たとき」は、
履行又は損害賠償の責任を負わないので

無権代理人が、「履行又は損害賠償の責任」を負うためには

「無権代理人Aが自己の代理権を証明できず」かつ「本人Cの追認を得なかったこと」が必要です。

前者については、問題文に記載されているので、

②には「本人Cの追認を得なかったこと」を入れる必要があります

さらに、2項についてみると、

1号2号は問題文に「相手方が善意無過失」である旨の記載があるので、考えなくても大丈夫です。

3号については考える必要があります。

無権代理人Aが行為能力がないと、無権代理人Aに責任追及できないので

②には、「行為能力を有する」旨を記載する必要があります

③について、

1項の通り、「履行又は損害賠償の請求をすることができる」で締めくくればよいでしょう!

まとめると

Aが行為能力を有し、Cの追認がなかったとき、履行又は損害賠償の請求をすることができる。(43字)

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平成25年度(2013年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 法の下の平等 問33 民法
問4 憲法と私法上の行為 問34 民法:債権
問5 権力分立 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 憲法・精神的自由 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 法改正のより削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・経済
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・社会
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・政治
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 基礎知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 基礎知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成26年・2014|問31|民法・保証

AがBから金1000万円を借り受けるにあたって、CおよびDがそれぞれAから委託を受けて保証人(連帯保証人ではない通常の保証人で、かつお互いに連帯しない保証人)となり、その後CがBに対して、主たる債務1000万円の全額を、同債務の弁済期日に弁済した。この場合に関する以下の記述のうち、民法の規定に照らし、正しいものはどれか。なお、CD間には負担部分に関する特段の合意がないものとする。

  1. CはAおよびDに対して求償することができ、求償権の範囲は、Aに対しては、1000万円および求償権行使までに生じた利息、遅延損害金に及び、Dに対しては、500万円および求償権行使までに生じた利息、遅延損害金に及ぶ。
  2. CはAおよびDに対して求償することができ、求償権の範囲は、Aに対しては、1000万円および求償権行使までに生じた利息、遅延損害金等に及び、Dに対しては、500万円である。
  3. CはAに対してのみ求償することができ、求償権の範囲は、1000万円および求償権行使までに生じた利息、遅延損害金等に及ぶ。
  4. CはAに対してのみ求償することができ、求償権の範囲は、500万円および求償権行使までに生じた利息、遅延損害金等に及ぶ。
  5. CはDに対してのみ求償することができ、求償権の範囲は、500万円および求償権行使までに生じた利息、遅延損害金に及ぶ。

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【答え】:2

【解説】

AがBから金1000万円を借り受けるにあたって、CおよびDがそれぞれAから委託を受けて保証人(連帯保証人ではない通常の保証人で、かつお互いに連帯しない保証人)となり、その後CがBに対して、主たる債務1000万円の全額を、同債務の弁済期日に弁済した。

1.CはAおよびDに対して求償することができ、求償権の範囲は、Aに対しては、1000万円および求償権行使までに生じた利息、遅延損害金に及び、Dに対しては、500万円および求償権行使までに生じた利息、遅延損害金に及ぶ。

1・・・誤り

A:主たる債務者、B:債権者、CおよびD:普通保証人。

そして、普通保証人Cが全額弁済した。

この場合、CはAおよびDに対して求償することができます。

【求償の範囲】

主たる債務者Aに対しては、「1000万円および求償権行使までに生じた利息、遅延損害金」を求償できます。

一方、
他の普通保証人Dに対しては、「500万円のみ」求償できます。

よって、この点が誤りです。

AがBから金1000万円を借り受けるにあたって、CおよびDがそれぞれAから委託を受けて保証人(連帯保証人ではない通常の保証人で、かつお互いに連帯しない保証人)となり、その後CがBに対して、主たる債務1000万円の全額を、同債務の弁済期日に弁済した。

2.CはAおよびDに対して求償することができ、求償権の範囲は、Aに対しては、1000万円および求償権行使までに生じた利息、遅延損害金等に及び、Dに対しては、500万円である。

2・・・正しい

選択肢1と同様の考え方です。

A:主たる債務者、B:債権者、CおよびD:普通保証人。

そして、普通保証人Cが全額弁済した。

この場合、CはAおよびDに対して求償することができます。

【求償の範囲】

主たる債務者Aに対しては、「1000万円および求償権行使までに生じた利息、遅延損害金」を求償できます。

一方、
他の普通保証人Dに対しては、「500万円のみ」求償できます。

よって、本肢は正しいです。

AがBから金1000万円を借り受けるにあたって、CおよびDがそれぞれAから委託を受けて保証人(連帯保証人ではない通常の保証人で、かつお互いに連帯しない保証人)となり、その後CがBに対して、主たる債務1000万円の全額を、同債務の弁済期日に弁済した。

3.CはAに対してのみ求償することができ、求償権の範囲は、1000万円および求償権行使までに生じた利息、遅延損害金等に及ぶ。

3・・・誤り

選択肢1と同様の考え方です。

A:主たる債務者、B:債権者、CおよびD:普通保証人。

そして、普通保証人Cが全額弁済した。

この場合、Cは「AおよびD」に対して求償することができます。

よって、「CはAに対してのみ求償することができ」は誤りです。

4.CはAに対してのみ求償することができ、求償権の範囲は、500万円および求償権行使までに生じた利息、遅延損害金等に及ぶ。

4・・・誤り

選択肢1と同様の考え方です。

A:主たる債務者、B:債権者、CおよびD:普通保証人。

そして、普通保証人Cが全額弁済した。

この場合、Cは「AおよびD」に対して求償することができます。

よって、「CはAに対してのみ求償することができ」は誤りです。

また、「500万円」も誤りです。正しくは「1000万円」です。

AがBから金1000万円を借り受けるにあたって、CおよびDがそれぞれAから委託を受けて保証人(連帯保証人ではない通常の保証人で、かつお互いに連帯しない保証人)となり、その後CがBに対して、主たる債務1000万円の全額を、同債務の弁済期日に弁済した。

AがBから金1000万円を借り受けるにあたって、CおよびDがそれぞれAから委託を受けて保証人(連帯保証人ではない通常の保証人で、かつお互いに連帯しない保証人)となり、その後CがBに対して、主たる債務1000万円の全額を、同債務の弁済期日に弁済した。

5.CはDに対してのみ求償することができ、求償権の範囲は、500万円および求償権行使までに生じた利息、遅延損害金に及ぶ。

5・・・誤り

選択肢1と同様の考え方です。

A:主たる債務者、B:債権者、CおよびD:普通保証人。

そして、普通保証人Cが全額弁済した。

この場合、Cは「AおよびD」に対して求償することができます。

よって、「CはDに対してのみ求償することができ」は誤りです。

また、「求償権行使までに生じた利息、遅延損害金に及ぶ」も誤りです。

Dに対しては、500万円のみ求償できます。

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平成26年度(2014年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 幸福追求権など 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 投票価値の平等 問35 民法:親族
問6 内閣 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政調査 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 損失補償 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・経済
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・社会
問25 行政法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問33|民法・贈与

Aは、自己所有の甲建物をBに贈与する旨を約した(以下、「本件贈与」という)。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 本件贈与が口頭によるものであった場合、贈与契約は諾成契約であるから契約は成立するが、書面によらない贈与につき贈与者はいつでも撤回することができるため、甲がBに引き渡されて所有権移転登記手続が終了した後であっても、Aは本件贈与を撤回することができる。
  2. 本件贈与が書面によるものであるというためには、Aの贈与意思の確保を図るため、AB間において贈与契約書が作成され、作成日付、目的物、移転登記手続の期日および当事者の署名押印がされていなければならない。
  3. 本件贈与につき書面が作成され、その書面でAが死亡した時に本件贈与の効力が生じる旨の合意がされた場合、遺言が撤回自由であることに準じて、Aはいつでも本件贈与を撤回することができる。
  4. 本件贈与につき書面が作成され、その書面でBがAの老後の扶養を行うことが約された場合、BがAの扶養をしないときであっても、甲の引渡しおよび所有権移転登記手続が終了していれば、Aは本件贈与を解除することができない。
  5. 本件贈与につき書面が作成され、その書面で、BがAの老後の扶養を行えばAが死亡した時に本件贈与の効力が生じる旨の合意がされた場合、Bが上記の負担を全部またはこれに類する程度まで履行したときであっても、特段の事情がない限り、Aは本件贈与を撤回することができる。

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【答え】:3

【解説】

1.本件贈与が口頭によるものであった場合、贈与契約は諾成契約であるから契約は成立するが、書面によらない贈与につき贈与者はいつでも撤回することができるため、甲がBに引き渡されて所有権移転登記手続が終了した後であっても、Aは本件贈与を撤回することができる。

1・・・妥当ではない

書面によらない贈与は、各当事者は解除をすることができます。ただし、履行の終わった部分については、解除できません(民法550条)。

判例では、「所有権移転登記手続が終了した場合、引き渡しの有無にかかわらず、履行が終わったもの」としています(最判昭40.3.26)。

よって、Aは贈与を解除することができません。

2.本件贈与が書面によるものであるというためには、Aの贈与意思の確保を図るため、AB間において贈与契約書が作成され、作成日付、目的物、移転登記手続の期日および当事者の署名押印がされていなければならない。

2・・・妥当ではない

判例では、「贈与が書面によってされたといえるためには、贈与の意思表示自体が書面によっていることを必要としないことはもちろん、書面が贈与の当事者間で作成されたこと、又は書面に無償の趣旨の文言が記載されていることも必要とせず、書面に贈与がされたことを確実に看取しうる(分かる)程度の記載があれば足りる」としています(最判昭60.11.29)。

つまり、「作成日付」「目的物」「移転登記手続の期日」「当事者の署名・押印」の一部がなかったとしても、「Bに甲建物を贈与した」と紙に書かれていたら、書面による贈与となります

よって、本肢は、妥当ではありません。

3.本件贈与につき書面が作成され、その書面でAが死亡した時に本件贈与の効力が生じる旨の合意がされた場合、遺言が撤回自由であることに準じて、Aはいつでも本件贈与を撤回することができる。

3・・・妥当

遺言は、いつでも撤回できます(民法1022条

そして、判例では、死因贈与については、遺言の取消に関する民法1022条がその方式に関する部分を除いて準用されると解すべきであるとしています(最判昭47.5.25)。

よって、死因贈与も、いつでも解除できます

したがって、妥当です。

4.本件贈与につき書面が作成され、その書面でBがAの老後の扶養を行うことが約された場合、BがAの扶養をしないときであっても、甲の引渡しおよび所有権移転登記手続が終了していれば、Aは本件贈与を解除することができない。

4・・・妥当ではない

負担付贈与とは、受贈者に一定の債務を負担させることを条件にした財産の贈与をいいます。

そして、負担付贈与で受贈者が負担である義務の履行を怠る場合、贈与者は贈与契約の解除ができます

よって、本肢は妥当ではありません。

考え方は個別指導で解説します!

5.本件贈与につき書面が作成され、その書面で、BがAの老後の扶養を行えばAが死亡した時に本件贈与の効力が生じる旨の合意がされた場合、Bが上記の負担を全部またはこれに類する程度まで履行したときであっても、特段の事情がない限り、Aは本件贈与を撤回することができる。

5・・・妥当でない

負担付死因贈与とは、「負担付贈与」と「死因贈与」が合わさっている贈与です。

そして、受贈者が、負担である義務の全部またはそれに類する程度の履行をした場合、「死因贈与」のルールである「死因贈与もいつでも解除できる」というルールは適用されるのかが問題になってきます。

これについて、判例では、受贈者が、負担である義務の全部またはそれに類する程度の履行をした場合、 「死因贈与もいつでも解除できる」というルールは適用されないとしています(最判昭57.4.30)。

よって、本肢は妥当ではありません。

「具体例」と「理由」は個別指導で解説します!

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平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政法 問56 基礎知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 基礎知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成27年・2015|問29|民法・相隣関係

甲土地を所有するAとその隣地の乙土地を所有するBとの間の相隣関係に関する記述のうち、民法の規定に照らし、正しいものはどれか。なお、次の各場合において、別段の慣習は存在しないものとする。

  1. Aは、境界線から1メートル未満の距離(注)において乙土地を見通すことができる窓または縁側(ベランダも含む)を設けることができるが、その場合には、目隠しを付さなければならない。
  2. 甲土地に所在するAの竹木の枝が境界線を越えて乙土地に侵入した場合に、Bは、自らその枝を切除することができる。
  3. 甲土地に所在するAの竹木の根が境界線を越えて乙土地に侵入した場合に、Bは、その根を切除することはできず、Aにその根を切除させなければならない。
  4. AおよびBが甲土地および乙土地を所有する前から甲土地と乙土地の境界に設けられていた障壁は、AとBの共有に属するものと推定されるが、その保存の費用は、A・B間に別段の約定がない限り、AとBが、甲土地と乙土地の面積の割合に応じて負担する。
  5. 甲土地内のAの建物の屋根から雨水が直接に乙土地に注がれる場合に、Bは、その雨水が注がれることを受忍しなければならない。

(注)その距離は、窓または縁側の最も隣地に近い点から垂直線によって境界線に至るまでを測定して算出する。

>解答と解説はこちら


【答え】:1

【解説】

甲土地を所有するAとその隣地の乙土地を所有するBとの間の相隣関係に関して、

1.Aは、境界線から1メートル未満の距離(注)において乙土地を見通すことができる窓または縁側(ベランダも含む)を設けることができるが、その場合には、目隠しを付さなければならない。

1・・・正しい

境界線から1m未満の距離において他人の宅地を見通すことのできる窓又は縁側(ベランダを含む。)を設ける者は、目隠しを付けなければなりません(民法235条1項)。

よって、本肢は正しいです。

甲土地を所有するAとその隣地の乙土地を所有するBとの間の相隣関係に関して、

2.甲土地に所在するAの竹木の枝が境界線を越えて乙土地に侵入した場合に、Bは、自らその枝を切除することができる。

2・・・誤り

隣地の竹木のが境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができます民法233条1項)。

つまり、他人地から伸びてきた「枝」を、勝手に切ることはできないので誤りです。

甲土地を所有するAとその隣地の乙土地を所有するBとの間の相隣関係に関して、

3.甲土地に所在するAの竹木の根が境界線を越えて乙土地に侵入した場合に、Bは、その根を切除することはできず、Aにその根を切除させなければならない。

3・・・誤り

隣地の竹木のが境界線を越えるときは、その根を切り取ることができます民法233条2項)。

つまり、他人地から伸びてきた「根」は、勝手に切ることができるので誤りです。

甲土地を所有するAとその隣地の乙土地を所有するBとの間の相隣関係に関して、

4.AおよびBが甲土地および乙土地を所有する前から甲土地と乙土地の境界に設けられていた障壁は、AとBの共有に属するものと推定されるが、その保存の費用は、A・B間に別段の約定がない限り、AとBが、甲土地と乙土地の面積の割合に応じて負担する。

4・・・誤り

囲障(塀、柵のこと)の設置及び保存の費用は、相隣者が等しい割合で負担します(民法226条)。

つまり、面積の割合に応じて負担はしないので、誤りです。

関連ポイントは、個別指導で解説します!

甲土地を所有するAとその隣地の乙土地を所有するBとの間の相隣関係に関して、

5.甲土地内のAの建物の屋根から雨水が直接に乙土地に注がれる場合に、Bは、その雨水が注がれることを受忍しなければならない。

5・・・誤り

土地の所有者は、直接に雨水を隣地に注ぐ構造の屋根その他の工作物を設けてはいけません民法第218条)。

よって、甲土地内のAの建物の屋根から雨水が直接に乙土地に注がれる場合に、Bは、その雨水が注がれることを受忍(我慢)する必要はありません。

よって、誤りです。

ちなみに、隣地所有者Bは、Aに対して、雨どいなどの防止設備の
設置の請求ができ、また損害があれば損害賠償請求もできます。

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平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政法 問56 基礎知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 基礎知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成29年・2017|問35|民法・相続

遺言に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定に照らし、正しいものの組合せはどれか。

ア.15歳に達した者は、遺言をすることができるが、遺言の証人または立会人となることはできない。

イ.自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付および氏名を自書してこれに押印しなければならず、遺言を変更する場合には、変更の場所を指示し、変更内容を付記して署名するか、または変更の場所に押印しなければ効力を生じない。

ウ.公正証書によって遺言をするには、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授しなければならないが、遺言者が障害等により口頭で述べることができない場合には、公証人の質問に対してうなずくこと、または首を左右に振ること等の動作で口授があったものとみなす。

エ.秘密証書によって遺言をするには、遺言者が、証書に署名、押印した上、その証書を証書に用いた印章により封印し、公証人一人および証人二人以上の面前で、当該封書が自己の遺言書である旨ならびにその筆者の氏名および住所を申述する必要があるが、証書は自書によらず、ワープロ等の機械により作成されたものであってもよい。

オ.成年被後見人は、事理弁識能力を欠いている場合には遺言をすることができないが、一時的に事理弁識能力を回復した場合には遺言をすることができ、その場合、法定代理人または3親等内の親族二人の立会いのもとで遺言書を作成しなければならない。

  1. ア・ウ
  2. ア・エ
  3. イ・ウ
  4. イ・オ
  5. エ・オ

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【答え】:2

【解説】

ア.15歳に達した者は、遺言をすることができるが、遺言の証人または立会人となることはできない。
ア・・・正しい
15歳に達した者は、遺言をすることができます民法961条)。
これは、単独で有効な遺言を書くことができることを意味します。
また、未成年者は、遺言の証人又は立会人となることができません(民法974条1号)。つまり、15歳に達した者であっても未成年者の場合は、遺言の証人または立会人となることはできません。

よって、本肢は正しいです。

イ.自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付および氏名を自書してこれに押印しなければならず、遺言を変更する場合には、変更の場所を指示し、変更内容を付記して署名するか、または変更の場所に押印しなければ効力を生じない。
イ・・・誤り
自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければなりません(民法968条1項本文)。
そして、自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じません(同条3項)。署名と押印は、どちらも行う必要があります。そのため、「署名または押印」となっているので誤りです。
ウ.公正証書によって遺言をするには、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授しなければならないが、遺言者が障害等により口頭で述べることができない場合には、公証人の質問に対してうなずくこと、または首を左右に振ること等の動作で口授があったものとみなす。
ウ・・・誤り
公正証書によって遺言をするには、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授して行う必要があります(民法969条2号)。
そして、口がきけない者が公正証書によって遺言をする場合には、遺言者は、公証人及び証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述し、又は自書して、上記口授に代えなければなりません(民法969条の2の2項)。
つまり、「うなずくこと、または首を左右に振ること等の動作」だけで口授があったものとはみなされません。よって、誤りです。
エ.秘密証書によって遺言をするには、遺言者が、証書に署名、押印した上、その証書を証書に用いた印章により封印し、公証人一人および証人二人以上の面前で、当該封書が自己の遺言書である旨ならびにその筆者の氏名および住所を申述する必要があるが、証書は自書によらず、ワープロ等の機械により作成されたものであってもよい。
エ・・・正しい
秘密証書によって遺言をするには、次に掲げる方式すべてを満たす必要があります(民法970条)。
  1. 遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。
  2. 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること
  3. 遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること
  4. 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと。

証書を自書で行うことは要件となっていないので、ワープロ等の機械により作成されたものであってもよいです。

よって、本肢は正しいです。

オ.成年被後見人は、事理弁識能力を欠いている場合には遺言をすることができないが、一時的に事理弁識能力を回復した場合には遺言をすることができ、その場合、法定代理人または3親等内の親族二人の立会いのもとで遺言書を作成しなければならない。
オ・・・誤り
成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには、医師二人以上の立会いがなければなりません(民法973条1項)。
本肢は「法定代理人または3親等内の親族二人の立会いのもとで遺言書を作成しなければならない」となっているので誤りです。正しくは「医師二人以上立会い」が必要です

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平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・政治
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 基礎知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

平成29年・2017|問34|民法・不法行為

不法行為に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 景観の良否についての判断は個々人によって異なる主観的かつ多様性のあるものであることから、個々人が良好な景観の恵沢を享受する利益は、法律上保護される利益ではなく、当該利益を侵害しても、不法行為は成立しない。
  2. 人がその品性、徳行、名声、信用などについて社会から受けるべき客観的な社会的評価が低下させられた場合だけではなく、人が自己自身に対して与えている主観的な名誉感情が侵害された場合にも、名誉毀損による不法行為が成立し、損害賠償の方法として原状回復も認められる。
  3. 宗教上の理由から輸血拒否の意思表示を明確にしている患者に対して、輸血以外に救命手段がない場合には輸血することがある旨を医療機関が説明しないで手術を行い輸血をしてしまったときでも、患者が宗教上の信念に基づいて当該手術を受けるか否かを意思決定する権利はそもそも人格権の一内容として法的に保護に値するものではないので、不法行為は成立しない。
  4. 医師の過失により医療水準に適(かな)った医療行為が行われず患者が死亡した場合において、医療行為と患者の死亡との間の因果関係が証明されなくても、医療水準に適った医療行為が行われていたならば患者がその死亡の時点においてなお生存していた相当程度の可能性の存在が証明されるときは、不法行為が成立する。
  5. 交通事故の被害者が後遺症のために身体的機能の一部を喪失した場合には、その後遺症の程度が軽微であって被害者の現在または将来における収入の減少が認められないときでも、労働能力の一部喪失を理由とする財産上の損害が認められる。

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【答え】:4

【解説】

1.景観の良否についての判断は個々人によって異なる主観的かつ多様性のあるものであることから、個々人が良好な景観の恵沢を享受する利益は、法律上保護される利益ではなく、当該利益を侵害しても、不法行為は成立しない。
1・・・妥当ではない
判例によると「良好な景観に近接する地域内に居住する者が有するその景観の恵沢を享受する利益は、法律上保護に値するものと解するのが相当である」としています(最判平18.3.30)。
よって、本肢は「個々人が良好な景観の恵沢を享受する利益は、法律上保護される利益ではなく」が妥当ではありません。不法行為が成立する場合もあります。
2.人がその品性、徳行、名声、信用などについて社会から受けるべき客観的な社会的評価が低下させられた場合だけではなく、人が自己自身に対して与えている主観的な名誉感情が侵害された場合にも、名誉毀損による不法行為が成立し、損害賠償の方法として原状回復も認められる。
2・・・妥当ではない
他人の名誉を毀き損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができます(民法723条)。
そして、判例によると、
「民法723条にいう名誉とは、人がその品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的な評価、すなわち社会的名誉を指すものであつて、人が自己自身の人格的価値について有する主観的な評価、すなわち「名誉感情は含まない」ものと解すべきである」としています(最判昭45.12.18)。したがって、「名誉感情が侵害された場合にも、名誉毀損による不法行為が成立し」は妥当ではありません。
3.宗教上の理由から輸血拒否の意思表示を明確にしている患者に対して、輸血以外に救命手段がない場合には輸血することがある旨を医療機関が説明しないで手術を行い輸血をしてしまったときでも、患者が宗教上の信念に基づいて当該手術を受けるか否かを意思決定する権利はそもそも人格権の一内容として法的に保護に値するものではないので、不法行為は成立しない。
3・・・妥当ではない
患者が宗教上の信念からいかなる場合にも輸血を受けることは拒否するとの固い意思を有し、輸血を伴わないで肝臓の腫瘍を摘出する手術を受けることができるものと期待して入院した事案において、判例では、「このことを医師が知っており、右手術の際に輸血を必要とする事態が生ずる可能性があることを認識したにもかかわらず、ほかに救命手段がない事態に至った場合には輸血するとの方針を採っていることを説明しないで右手術を施行し、患者に輸血をしたなど

判示の事実関係の下においては、

医師は、患者が右手術を受けるか否かについて意思決定をする権利を奪われたことによって被った精神的苦痛を慰謝すべく不法行為に基づく損害賠償責任を負う」としています(最判平12.2.29)。

よって、「患者が宗教上の信念に基づいて当該手術を受けるか否かを意思決定する権利はそもそも人格権の一内容として法的に保護に値するものではないので、不法行為は成立しない」は妥当ではありません。

4.医師の過失により医療水準に適(かな)った医療行為が行われず患者が死亡した場合において、医療行為と患者の死亡との間の因果関係が証明されなくても、医療水準に適った医療行為が行われていたならば患者がその死亡の時点においてなお生存していた相当程度の可能性の存在が証明されるときは、不法行為が成立する。
4・・・妥当
判例によると、
「医師が過失により医療水準にかなった医療を行わなかったこと」と「患者の死亡」との間の因果関係の存在は証明されないけれども、右医療が行われていたならば患者がその死亡の時点において なお生存していた相当程度の可能性の存在が証明される場合には、医師は、患者が右可能性を侵害されたことによって被った損害を賠償すべき不法行為責任を負う、としています(最判平12.9.22)。

つまり、本肢は妥当です。

5.交通事故の被害者が後遺症のために身体的機能の一部を喪失した場合には、その後遺症の程度が軽微であって被害者の現在または将来における収入の減少が認められないときでも、労働能力の一部喪失を理由とする財産上の損害が認められる。
5・・・妥当ではない
判例によると
「交通事故による後遺症のために身体的機能の一部を喪失した場合においても、後遺症の程度が比較的軽微であって、しかも被害者が従事する職業の性質からみて、現在又は将来における収入の減少も認められないときは、特段の事情のない限り、労働能力の一部喪失を理由とする財産上の損害は認められない」としています(最判昭56.12.22)。

「後遺症の程度が軽微であって被害者の現在または将来における収入の減少が認められないとき」は「財産上の損害は認められない」ので、本肢は妥当ではありません。

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平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・政治
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 基礎知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

平成29年・2017|問33|民法・賃貸借

Aは自己所有の甲機械(以下「甲」という。)をBに賃貸し(以下、これを「本件賃貸借契約」という。)、その後、本件賃貸借契約の期間中にCがBから甲の修理を請け負い、Cによる修理が終了した。この事実を前提とする次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. Bは、本件賃貸借契約において、Aの負担に属するとされる甲の修理費用について直ちに償還請求することができる旨の特約がない限り、契約終了時でなければ、Aに対して償還を求めることはできない。
  2. CがBに対して甲を返還しようとしたところ、Bから修理代金の提供がなかったため、Cは甲を保管することとした。Cが甲を留置している間は留置権の行使が認められるため、修理代金債権に関する消滅時効は進行しない。
  3. CはBに対して甲を返還したが、Bが修理代金を支払わない場合、Cは、Bが占有する甲につき、動産保存の先取特権を行使することができる。
  4. CはBに対して甲を返還したが、Bは修理代金を支払わないまま無資力となり、本件賃貸借契約が解除されたことにより甲はAに返還された。本件賃貸借契約において、甲の修理費用をBの負担とする旨の特約が存するとともに、これに相応して賃料が減額されていた場合、CはAに対して、事務管理に基づいて修理費用相当額の支払を求めることができる。
  5. CはBに対して甲を返還したが、Bは修理代金を支払わないまま無資力となり、本件賃貸借契約が解除されたことにより甲はAに返還された。本件賃貸借契約において、甲の修理費用をBの負担とする旨の特約が存するとともに、これに相応して賃料が減額されていた場合、CはAに対して、不当利得に基づいて修理費用相当額の支払を求めることはできない。

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【答え】:5

【解説】

Aは自己所有の甲機械(甲)をBに賃貸し、その後、本件賃貸借契約の期間中にCがBから甲の修理を請け負い、Cによる修理が終了した。

1.Bは、本件賃貸借契約において、Aの負担に属するとされる甲の修理費用について直ちに償還請求することができる旨の特約がない限り、契約終了時でなければ、Aに対して償還を求めることはできない。

1・・・妥当ではない
賃借人Bは、賃借物について賃貸人Aの負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人Aに対し、直ちにその償還を請求することができます(民法608条1項)。
よって、甲の修理費用について直ちに償還請求することができる旨の特約がなくても
賃借人Bは、Aに対して、修理費用について直ちに償還請求できます。よって、妥当ではありません。

Aは自己所有の甲機械(甲)をBに賃貸し、その後、本件賃貸借契約の期間中にCがBから甲の修理を請け負い、Cによる修理が終了した。

2.CがBに対して甲を返還しようとしたところ、Bから修理代金の提供がなかったため、Cは甲を保管することとした。Cが甲を留置している間は留置権の行使が認められるため、修理代金債権に関する消滅時効は進行しない。

2・・・妥当ではない
留置権の行使は、債権の消滅時効の進行を妨げません(民法300条)。つまり、Cが甲を留置していたとしても、それだけでは、消滅時効の進行を止めることができません

よって、本肢は妥当ではありません。

言い換えれば、留置しているだけでずっと放っておくと、修理代金債権は消滅時効にかかって債権が消滅してしまいます。

関連ポイントは個別指導で解説します!

Aは自己所有の甲機械(甲)をBに賃貸し、その後、本件賃貸借契約の期間中にCがBから甲の修理を請け負い、Cによる修理が終了した。

3.CはBに対して甲を返還したが、Bが修理代金を支払わない場合、Cは、Bが占有する甲につき、動産保存の先取特権を行使することができる。

3・・・妥当ではない
先取特権者は、この法律その他の法律の規定に従い、その「債務者の財産」について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有します(民法303条)そして、本肢は、BがCに対して修理の依頼をしているため、修理代金の債務者はBです。

つまり、Cは、債務者Bの財産に対して先取特権を行使することができますが、
Aの財産(甲)に対して先取特権は行使できません。

よって、甲の所有者はAなので、甲につき、動産保存の先取特権を行使することができません。

したがって、妥当ではありません。

Aは自己所有の甲機械(甲)をBに賃貸し、その後、本件賃貸借契約の期間中にCがBから甲の修理を請け負い、Cによる修理が終了した。

4.CはBに対して甲を返還したが、Bは修理代金を支払わないまま無資力となり、本件賃貸借契約が解除されたことにより甲はAに返還された。本件賃貸借契約において、甲の修理費用をBの負担とする旨の特約が存するとともに、これに相応して賃料が減額されていた場合、CはAに対して、事務管理に基づいて修理費用相当額の支払を求めることができる。

4・・・妥当ではない
義務なく他人のために事務の管理を始めた者(管理者)は、その事務の性質に従い、最も本人の利益に適合する方法によって、その事務の管理(事務管理)をしなければなりません(民法697条)。本肢を見ると、BC間で請負契約を締結しているので、Cは甲を管理する義務が発生します。

よって、「事務管理」ではありません

したがって、「CはAに対して、事務管理に基づいて修理費用相当額の支払を求めることができる」というのは妥当ではありません。

事務管理についてのポイントは個別指導で解説します!

Aは自己所有の甲機械(甲)をBに賃貸し、その後、本件賃貸借契約の期間中にCがBから甲の修理を請け負い、Cによる修理が終了した。

5.CはBに対して甲を返還したが、Bは修理代金を支払わないまま無資力となり、本件賃貸借契約が解除されたことにより甲はAに返還された。本件賃貸借契約において、甲の修理費用をBの負担とする旨の特約が存するとともに、これに相応して賃料が減額されていた場合、CはAに対して、不当利得に基づいて修理費用相当額の支払を求めることはできない。

5・・・妥当
法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け」、そのために他人に損失を及ぼした者(受益者)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負います(民法703条:不当利得の返還義務)。本肢を見ると、「甲の修理費用を賃借人Bの負担とする旨の特約が存する」ということは、賃貸人Aは利益を得ているように見えますが、「これに相応して賃料が減額されていた」となっているので、Aは得た利益分、不利益も受けています。つまり、Aについて不当利得は成立しません最判平7.9.19)。

よって、Aは不当利得の返還義務は生じません。

「CはAに対して、不当利得に基づいて修理費用相当額の支払を求めることはできない。」というのは妥当です。

不当利得の詳細解説は個別指導で行います!

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平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・政治
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 基礎知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

平成29年・2017|問32|民法・連帯債務

共同事業を営むAとBは、Cから事業資金の融資を受けるに際して、共に弁済期を1年後としてCに対し連帯して1,000万円の貸金債務(以下「本件貸金債務」という。)を負担した(負担部分は2分の1ずつとする。)。この事実を前提とする次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. 本件貸金債務につき、融資を受けるに際してAが法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要な錯誤に陥っており、錯誤に基づく取消しを主張してこれが認められた場合であっても、これによってBが債務を免れることはない。
  2. 本件貸金債務につき、A・C間の更改により、AがCに対して甲建物を給付する債務に変更した場合、Bは本件貸金債務を免れる。
  3. 本件貸金債務につき、弁済期到来後にAがCに対して弁済の猶予を求め、その後更に期間が経過して、弁済期の到来から起算して時効期間が満了した場合に、Bは、Cに対して消滅時効を援用することはできない。
  4. 本件貸金債務につき、Cから履行を求められたAが、あらかじめ共同の免責を得ることをBに通知することなくCに弁済した。その当時、BはCに対して500万円の金銭債権を有しており、既にその弁済期が到来していた場合、BはAから500万円を求償されたとしても対抗することができる。
  5. 本件貸金債務につき、AがCに弁済した後にBに対してその旨を通知しなかったため、Bは、これを知らずに、Aに対して事前に弁済する旨の通知をして、Cに弁済した。この場合に、Bは、Aの求償を拒み、自己がAに対して500万円を求償することができる。

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【答え】:3

【解説】

1.共同事業を営むAとBは、Cから事業資金の融資を受けるに際して、共に弁済期を1年後としてCに対し連帯して1,000万円の貸金債務を負担した(負担部分は2分の1ずつとする。)。

本件貸金債務につき、融資を受けるに際してAが法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要な錯誤に陥っており、錯誤に基づく取消しを主張してこれが認められた場合であっても、これによってBが債務を免れることはない。

1・・・妥当
連帯債務者A、連帯債務者B、債権者Cという状況でAが錯誤による取消しが認められた。「錯誤による取消し」は相対効なので、

他の連帯債務者Bには錯誤により取消しの効果は生じないです。

よって、妥当です。

そもそも、「絶対効と相対効」が分からない方は、個別指導で解説します!

2.共同事業を営むAとBは、Cから事業資金の融資を受けるに際して、共に弁済期を1年後としてCに対し連帯して1,000万円の貸金債務を負担した(負担部分は2分の1ずつとする。)。

本件貸金債務につき、A・C間の更改により、AがCに対して甲建物を給付する債務に変更した場合、Bは本件貸金債務を免れる。

2・・・妥当
連帯債務者A、連帯債務者B、債権者Cという状況でAC間で更改があった。これにより、Aの旧債務は消滅します。

「更改」は絶対効なので

連帯債務者Bの債務は消滅します。

よって、妥当です。

本肢は「更改」をきちんと理解すべきなので、個別指導で解説します!

3.共同事業を営むAとBは、Cから事業資金の融資を受けるに際して、共に弁済期を1年後としてCに対し連帯して1,000万円の貸金債務を負担した(負担部分は2分の1ずつとする。)。

本件貸金債務につき、弁済期到来後にAがCに対して弁済の猶予を求め、その後更に期間が経過して、弁済期の到来から起算して時効期間が満了した場合に、Bは、Cに対して消滅時効を援用することはできない。

3・・・妥当ではない
連帯債務者A、連帯債務者B、債権者Cという状況で弁済期到来後にAがCに対して弁済の猶予を求めているので
「Aは債務の承認」をしたことになります。これにより、Aの時効は更新します。

「債務の承認」は相対効なので

他の連帯債務者Bの時効は更新しません。

そのため、Bは、弁済期の到来から起算して時効期間が満了した場合に、消滅時効を援用することはできます。

よって、本肢は妥当ではありません。

本問は「共同の免責を得る」といった言葉の理解も必要なので、個別指導では、その点も含めて、具体例を出しながら解説します!

4.共同事業を営むAとBは、Cから事業資金の融資を受けるに際して、共に弁済期を1年後としてCに対し連帯して1,000万円の貸金債務を負担した(負担部分は2分の1ずつとする。)。

本件貸金債務につき、Cから履行を求められたAが、あらかじめ共同の免責を得ることをBに通知することなくCに弁済した。その当時、BはCに対して500万円の金銭債権を有しており、既にその弁済期が到来していた場合、BはAから500万円を求償されたとしても対抗することができる。

4・・・妥当
連帯債務者A、連帯債務者B、債権者Cという状況でAは、あらかじめ共同の免責を得ることをBに通知することなくCに弁済しています。一方、「BはCに対して500万円の金銭債権(反対債権)を有しており、既にその弁済期が到来していた」ということなので、Bは相殺できる状態にあったといえます。

それにもかかわらず、Aは「共同の免責を得ることをBに通知せずに弁済をしているので

AはBに求償することができません民法443条)。

よって、BはAから500万円を求償されたとしても対抗することができるので妥当です。

5.共同事業を営むAとBは、Cから事業資金の融資を受けるに際して、共に弁済期を1年後としてCに対し連帯して1,000万円の貸金債務を負担した(負担部分は2分の1ずつとする。)。

本件貸金債務につき、AがCに弁済した後にBに対してその旨を通知しなかったため、Bは、これを知らずに、Aに対して事前に弁済する旨の通知をして、Cに弁済した。この場合に、Bは、Aの求償を拒み、自己がAに対して500万円を求償することができる。

5・・・妥当
連帯債務者A、連帯債務者B、債権者Cという状況でAは、Cに弁済したにも関わらず、弁済した旨の通知をしなかった。Aが弁済をしたことを知らずに、Bが、Aに事前に通知した上で弁済した。

この場合、Bが保護されるので、BはAに対して求償することができます民法443条2項)。

本問はもっと詳しく解説しないと理解できないと思うので、個別指導で詳細な解説をします!

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平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・政治
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 基礎知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

平成29年・2017|問31|民法・物権的請求権

物権的請求権等に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. Aが所有する甲土地の上に、Bが権原なく乙建物を建設してこれをCに譲渡した場合、無権原で乙建物を建設することによってAの土地所有権を侵害したのはBであるから、AはBに対してのみ乙建物の取去を求めることができる。
  2. 第三者が抵当不動産を不法占有することによって同不動産の交換価値の実現が妨げられ、抵当権者の優先弁済権の行使が困難となるような状態があるときは、抵当権に基づく妨害排除請求権が認められるが、抵当権は占有を目的とする権利ではないため、抵当権者が占有者に対し直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることは常にできない。
  3. 占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還を請求することはできるが、損害の賠償を請求することはできない。
  4. 第三者が賃貸不動産を不法占有している場合、賃借人は、その賃借権が対抗要件を具備しているか否かを問わず、その不法占有者に対して、当該不動産に関する賃借権に基づく妨害排除請求を行うことができる。
  5. Dが所有する丙土地の上に、Eが権原なく丁建物を建設し、自己所有名義で建物保存登記を行った上でこれをFに譲渡したが、建物所有権登記がE名義のままとなっていた場合、Dは登記名義人であるEに対して丁建物の収去を求めることができる。

>解答と解説はこちら


【答え】:5

【解説】

1.Aが所有する甲土地の上に、Bが権原なく乙建物を建設してこれをCに譲渡した場合、無権原で乙建物を建設することによってAの土地所有権を侵害したのはBであるから、AはBに対してのみ乙建物の取去を求めることができる。
1・・・妥当ではない
判例によると、「建物収去・土地の明渡請求できる相手」は「現実に建物を所有することによってその土地を占拠し、土地所有権を侵害している者」としています(最判昭35.6.17)。
よって、本肢は
Aは、「建物の現所有者であるC」に対して建物の収去を求めることができます。したがって、本肢は妥当でありません。
2.第三者が抵当不動産を不法占有することによって同不動産の交換価値の実現が妨げられ、抵当権者の優先弁済権の行使が困難となるような状態があるときは、抵当権に基づく妨害排除請求権が認められるが、抵当権は占有を目的とする権利ではないため、抵当権者が占有者に対し直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることは常にできない。
2・・・妥当ではない
判例によると、「抵当不動産の占有者に対する抵当権に基づく妨害排除請求権の行使に当たり、抵当不動産の所有者において抵当権に対する侵害が生じないように抵当不動産を適切に維持管理することが期待できない場合には、抵当権者は、当該占有者に対し、直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることができる」としています(最判平17.3.10)。
したがって、本肢は妥当ではありません。本肢は理解しておかないと、本試験で類題が出題されても解けないです。

そのため、個別指導では、具体例を入れて解説します!

3.占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還を請求することはできるが、損害の賠償を請求することはできない。
3・・・妥当ではない
占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、「その物の返還請求」及び「損害賠償請求」をすることができます(民法200条)。
よって、本肢は「損害賠償請求ができない」となっているので妥当ではありません。関連ポイントもあるので、個別指導では、「関連ポイント」と「具体例」を入れて解説します!
4.第三者が賃貸不動産を不法占有している場合、賃借人は、その賃借権が対抗要件を具備しているか否かを問わず、その不法占有者に対して、当該不動産に関する賃借権に基づく妨害排除請求を行うことができる。
4・・・妥当ではない
不動産の賃借人は、対抗要件を備えた場合において、その不動産を第三者が占有しているとき、その第三者に対して返還請求ができます(民法605条の4の2号)。
よって、「賃借権が対抗要件を具備していないと、その不法占有者に対して、賃借権に基づく妨害排除請求を行うことができない」ので、妥当ではありません。具体例などは個別指導で解説します。
5.Dが所有する丙土地の上に、Eが権原なく丁建物を建設し、自己所有名義で建物保存登記を行った上でこれをFに譲渡したが、建物所有権登記がE名義のままとなっていた場合、Dは登記名義人であるEに対して丁建物の収去を求めることができる。
5・・・妥当
判例によると、
D所有地上の建物を取得し、自らの意思に基づいてその旨の登記を経由したEは、たとい右建物をFに譲渡したとしても、引き続き右登記名義を保有する限り、Dに対し、建物所有権の喪失を主張して建物収去・土地明渡しの義務を免れることはできない」としています(最判平6.2.8)。
つまり、Dは、Eに対して、建物収去・土地の明渡請求ができるので妥当です。これは非常にややこしいので、個別指導で細かく分解して解説します。

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平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・政治
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 基礎知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

平成29年・2017|問30|民法・時効

Aは、甲不動産をその占有者Bから購入し引渡しを受けていたが、実は甲不動産はC所有の不動産であった。BおよびAの占有の態様および期間に関する次の場合のうち、民法の規定および判例に照らし、Aが、自己の占有、または自己の占有にBの占有を併せた占有を主張しても甲不動産を時効取得できないものはどれか。

  1. Bが悪意で5年間、Aが善意無過失で10年間
  2. Bが悪意で18年間、Aが善意無過失で2年間
  3. Bが悪意で5年間、Aが善意無過失で5年間
  4. Bが善意無過失で7年間、Aが悪意で3年間
  5. Bが善意無過失で3年間その後悪意となり2年間、Aが善意無過失で3年間その後悪意となり3年間

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【答え】:3

【解説】

下記解説は簡易的な解説です。

下記選択肢すべてにおいて、詳細な考え方については、個別指導で解説します!

1.Bが悪意で5年間、Aが善意無過失で10年間
1・・・時効取得できる
一定期間(下記参照)、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得します(民法162条)。
  1. 善意無過失の場合、10年間占有が必要
  2. 悪意もしくは有過失の場合、20年間占有が必要

「B⇒A」

Aは、善意無過失で10年間占有しているので、時効取得できます。

2.Bが悪意で18年間、Aが善意無過失で2年間

2・・・時効取得できる

「Bが悪意で18年間」、「Aが善意無過失で2年間」占有しているので、

AはBの占有の状態を承継することができます。

Bの占有状態は「悪意・18年間占有」の2つを指します。

そのため、Aが承継すると

Aは、「悪意」で、かつ、18年+2年=「20年間」占有したことになるので
時効取得できます。

3.Bが悪意で5年間、Aが善意無過失で5年間
3・・・時効取得できない
「Bが悪意で5年間」、「Aが善意無過失で5年間」占有しています。
  • Aが占有の状態を承継したとすると、Aは悪意で、10年間占有したことになります。これでは時効取得できません。
  • Aが占有の状態を承継しないとすると、Aのみで考えます。

    Aが善意無過失で5年間しか占有していないので、これでも時効取得できません。

よって、本肢は時効取得できません。

4.Bが善意無過失で7年間、Aが悪意で3年間
4・・・時効取得できる
「Bが善意無過失で7年間」、「Aが悪意で3年間」なのでAが占有の状態を承継すると考えるとAは善意無過失で10年間占有することになります。
よって、時効取得できます。
5.Bが善意無過失で3年間その後悪意となり2年間、Aが善意無過失で3年間その後悪意となり3年間
5・・・時効取得できる
「Bが善意無過失で3年間その後悪意となり2年間」、「Aが善意無過失で3年間その後悪意となり3年間」

善意悪意・過失の有無占有開始時で判断します。つまり、「Bは善意無過失で5年間」「Aは善意無過失で6年間」占有したことになります。
Aが占有の状態を承継すると考えるとAは善意無過失で11年間占有することになるので
時効取得できます。

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平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・政治
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 基礎知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略