【答え】:3
【解説】
1.会社設立時に株式会社が発行する株式数は、会社法上の公開会社の場合には、発行可能株式総数の4分の1を下回ることができないため、定款作成時に発行可能株式総数を定めておかなければならないが、会社法上の公開会社でない会社の場合には、発行株式数について制限がなく、発行可能株式総数の定めを置かなくてよい。
1・・・妥当ではない
公開会社の場合、会社設立時に株式会社が
発行する株式数は、
発行可能株式総数の1/4を下回ることができません(
会社法37条3項)。この点は正しいです。
しかし、「定款作成時に発行可能株式総数を定めておかなければならない」および「会社法上の公開会社でない会社の場合には、発行株式数について制限がなく、発行可能株式総数の定めを置かなくてよい」が誤りです。
「発行可能株式総数」は、「株式会社の成立の時まで」に、その全員の同意によって、定款変更して定めればよいです(会社法37条1項)。
公開会社でない会社(非公開会社)の場合にも、発行可能株式総数の定めは必要です。
2.株式会社は株券を発行するか否かを定款で定めることができるが、会社法は、株券を発行しないことを原則としているので、株券を発行する旨を定款に定めた会社であっても、会社は、株主から株券の発行を請求された段階で初めて株券を発行すれば足りる。
2・・・妥当ではない
株式会社は株券を発行するか否かを定款で定めることができます(会社法214条)。つまり、会社法は、株券を発行しないことを原則としています(=株券を発行したい場合は発行できる)。そして、株券発行会社の場合(=株券を発行する旨を定款に定めた会社の場合)、
公開会社でない株券発行会社は、株主から請求がある時までは、これらの規定の株券を発行しないことができます。
一方、公開会社の株券発行会社は、株式を発行した日以後遅滞なく、当該株式に係る株券を発行しなければなりません(会社法215条1項4項)。
したがって、本肢の「会社は、株主から株券の発行を請求された段階で初めて株券を発行すれば足りる」は誤りです。
公開会社の場合は、請求されるかどうかに関係なく、株式を発行した日以後遅滞なく株券の発行が必要です。
3.株主総会は株主が議決権を行使するための重要な機会であるため、本人が議決権を行使する場合のほか、代理人による議決権行使の機会が保障されているが、会社法上の公開会社であっても、当該代理人の資格を株主に制限する旨を定款に定めることができる。
3・・・妥当
株主は、代理人によってその議決権を行使することができます(
会社法310条1項)。そして、判例によると
「代理人は株主にかぎる旨の定款の規定は、株主総会が、株主以外の第三者によって攪乱されることを防止し、会社の利益を保護する趣旨にでたものと認められ、合理的な理由による相当程度の制限ということができるから、有効であると解するのが相当である。」
と判示しています。
よって、本人が議決権を行使する場合のほか、代理人による議決権行使の機会が保障されています。
また、公開会社であっても、当該代理人の資格を株主に制限する旨を定款に定めることができます。
したがって、妥当です。
4.取締役会は、取締役が相互の協議や意見交換を通じて意思決定を行う場であるため、本来は現実の会議を開くことが必要であるが、定款の定めにより、取締役の全員が書面により提案に同意した場合には、これに異議を唱える者は他にありえないため、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなすことができる。
4・・・妥当ではない
取締役会設置会社は、取締役が取締役会の決議の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき取締役の「全員が書面」又は「電磁的記録により同意」の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす旨を定款で定めることができます。
ただし、
監査役設置会社にあっては、
監査役が当該提案について異議を述べたときは、提案は可決されません(
会社法370条)。つまり、「これに異議を唱える者は他にありえない」は誤りです。
もし、監査役がいる場合は、監査役が異議を唱える可能性があるからです。
5.取締役会設置会社は監査役を選任しなければならないが、会社法上の公開会社でない取締役会設置会社の場合には、会計監査人設置会社であっても、定款で、監査役の監査権限を会計監査に限定することができる。
5・・・妥当ではない
非公開会社(監査役会設置会社及び
会計監査人設置会社を除く。)は、その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めることができます(
会社法389条1項)。つまり、
会計監査人設置会社の場合は、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定することはできないので、妥当ではないです。
平成21年度(2009年度)|行政書士試験の問題と解説