テキスト

行政手続法30条:弁明の機会の付与の通知の方式

行政手続法29条で、弁明の機会付与は書面審理を行うことを勉強しました。

行政手続法30条では、書面審理を行う上で、行政庁が、不利益処分の名あて人となるべき者に対して、通知しなければならない内容について規定しています。

具体的には、行政庁は、下記内容を、不利益処分の名あて人となるべき者に対して通知します。そして、この通知は、弁明書の提出期限までに相当期間をおいて通知しなければなりません。言い換えると、弁明の提出期限直前に送ってもだめですよ!ということです。

弁明の機会付与のために行政庁が通知する内容

①予定される不利益処分の内容根拠法令の条項
②不利益処分の原因となる事実
③弁明書の提出先及び提出期限(口頭による弁明の機会の付与を行う場合には、その旨並びに出頭すべき日時及び場所)

①とは、例えば、
予定される不利益処分の内容とは、「行政書士に対する戒告」です。
根拠法令の条項とは、「行政書士法第14条の2」です。

②とは、例えば
行政書士の業務として 車庫証明業務を行ってきたが、約9割の依頼について 、受注、車庫調査並びに証明に係る書類の作成及び警察署への提出のすべてを補助者に行わせており、業務には 関与していなかった場合

③とは、例えば、駐車違反の反則金の処分について、反論がある場合、公安委員からいつまでに弁明書を提出してくださいと通知されるので、その期間内に、公安委員会に対して弁明書を提出します。

(弁明の機会の付与の通知の方式)
行政手続法第30条 行政庁は、弁明書の提出期限(口頭による弁明の機会の付与を行う場合には、その日時)までに相当な期間をおいて、不利益処分の名あて人となるべき者に対し、次に掲げる事項を書面により通知しなければならない。
一 予定される不利益処分の内容及び根拠となる法令の条項
二 不利益処分の原因となる事実
三 弁明書の提出先及び提出期限(口頭による弁明の機会の付与を行う場合には、その旨並びに出頭すべき日時及び場所)

行政手続法28条:役員解任の場合の聴聞等の特例

行政手続法28条は、ややこしそうに見えますが、内容的には簡単です。

例えば、法人Aに役員Bがいたとします。そして、行政庁が法人Aに対して「役員Bを解任しなさい!」と命じようとする場合、聴聞手続きを行う必要があります。

聴聞手続きが必要な不利益処分はこちら>>

この役員を解任する不利益処分については、行政庁は、当該役員に聴聞の通知をする必要はありません。法人Aに対して通知して、聴聞を行えば、役員にも通知したことになります。また、役員について聴聞を行うことを必要はありません。

(役員等の解任等を命ずる不利益処分をしようとする場合の聴聞等の特例)
行政手続法第28条 第13条第1項第1号ハに該当する不利益処分に係る聴聞において第15条第1項の通知があった場合におけるこの節の規定の適用については、名あて人である法人の役員、名あて人の業務に従事する者又は名あて人の会員である者(当該処分において解任し又は除名すべきこととされている者に限る。)は、同項の通知を受けた者とみなす。

2 前項の不利益処分のうち名あて人である法人の役員又は名あて人の業務に従事する者(以下この項において「役員等」という。)の解任を命ずるものに係る聴聞が行われた場合においては、当該処分にその名あて人が従わないことを理由として法令の規定によりされる当該役員等を解任する不利益処分については、第13条第1項の規定にかかわらず、行政庁は、当該役員等について聴聞を行うことを要しない。

<<行政手続法27条:審査請求の制限 | 行政手続法29条:弁明の機会の付与の方式>>

行政手続法27条:審査請求の制限

行政手続法27条(審査請求の制限)は条文自体短く、簡単に見えるのですが、理解していない方が多いです。この点は具体例を含めてしっかり頭にいれておきましょう!

行政手続法の「聴聞」に基づく処分やその不作為については、審査請求をすることができません。

聴聞に基づく処分や不作為とは?

聴聞に基づく処分や不作為とは、例えば、

  1. 文書閲覧の不許可処分
  2. 利害関係人の参加不許可処分
  3. 文書閲覧の閲覧請求に対して、何も処分をしない
  4. 利害関係人の参加請求に対して何の処分もしない

といったことです。上記処分に対して、不服があったとしても、審査請求をすることができないということです。

行政書士試験でも出題される部分なので、しっかり頭に入れておきましょう!

審査請求は、行政不服審査法で勉強するので、まだ勉強していない方は、行政不服審査法を学んでからこの条文を確認するとよいでしょう!

(審査請求の制限)
行政手続法第27条 この節の規定に基づく処分又はその不作為については、審査請求をすることができない。

この節=聴聞に関する節=行政手続法第15条第28条です。

<<行政手続法26条:聴聞を経てされる不利益処分の決定 | 行政手続法28条:役員等の解任等を命ずる不利益処分をしようとする場合の聴聞等の特例>>

行政手続法26条:聴聞を経てされる不利益処分の決定

行政手続法26条の内容を理解するためには、聴聞の背景と流れを理解しておく必要があります。この点については、行政手続法13条行政手続法25条までを大まかにでも頭に入れておく必要があります。

ざっくり説明すると、まず、一定の不利益処分を行う場合に、事前に聴聞を行う必要があります。聴聞が必要な不利益処分はこちら>>

そして、主宰者が聴聞の日に、審理を行い、その後、主宰者は、聴聞を終えたら遅滞なく聴聞調書と報告書を、行政庁に提出します。

聴聞調書と報告書」を受け取った行政庁は、この「聴聞調書と報告書」に記載された主宰者の意見を十分に参酌しなければなりません(義務)。

※参酌とは、参考にして取り入れることを言います。

(聴聞を経てされる不利益処分の決定)
行政手続法第26条 行政庁は、不利益処分の決定をするときは、第24条第1項の調書の内容及び同条第3項の報告書に記載された主宰者の意見を十分に参酌してこれをしなければならない。

<<行政手続法25条:聴聞の再開 | 行政手続法27条:審査請求の制限>>

行政手続法24条:聴聞調書及び報告書

行政手続法24条の聴聞調書及び報告書は、行政書士試験でも頻出なのでしっかり頭に入れておきましょう!

主宰者は、聴聞の審理の経過を記載した調書(聴聞調書)を作成し、
「当事者および参加人の陳述の要旨」を明らかにしなければなりません。

聴聞調書は、聴聞の期日ごとに作成し、審理が行われなかった場合は、聴聞の終結後速やかに作成しなければなりません。

そして、聴聞終結後速やかに報告書を作成し、聴聞調書とともに、行政庁に提出しなければなりません。この点は下図の、⑩の内容です。

聴聞手続きの流れ

聴聞の報告書

聴聞の報告書には、不利益処分の原因となる事実に対する当事者などの主張に理由があるかどうか、主宰者の意見を記載しなければなりません。

つまり、「当事者の主張・反論に理由があるから、不利益処分は不当だと思います!」とか「当事者の主張・反論には理由がないので、不利益処分は妥当だと思います!」といった意見を記載します。

(聴聞調書及び報告書)
第24条 主宰者は、聴聞の審理の経過を記載した調書を作成し、当該調書において、不利益処分の原因となる事実に対する当事者及び参加人の陳述の要旨を明らかにしておかなければならない。
2 前項の調書は、聴聞の期日における審理が行われた場合には各期日ごとに、当該審理が行われなかった場合には聴聞の終結後速やかに作成しなければならない。
3 主宰者は、聴聞の終結後速やかに、不利益処分の原因となる事実に対する当事者等の主張に理由があるかどうかについての意見を記載した報告書を作成し、第一項の調書とともに行政庁に提出しなければならない。
4 当事者又は参加人は、第一項の調書及び前項の報告書の閲覧を求めることができる。

<<行政手続法23条:不出頭等の場合における聴聞の終結 | 行政手続法25条:聴聞の再開>>

行政手続法25条:聴聞の再開

行政庁は、聴聞の終結後に、何らかの事情が発生し、再度、聴聞を行う必要があると認めたときは、行政庁は聴聞の再開を命じることができます

例えば、不利益処分を行うか行わないかに関係する新たな証拠書類を行政庁が手に入れた場合等です。

その場合、行政庁は、主宰者から提出された報告書を返戻(返却)します。

(聴聞の再開)
行政手続法第25条 行政庁は、聴聞の終結後に生じた事情にかんがみ必要があると認めるときは、主宰者に対し、前条第3項の規定により提出された報告書を返戻して聴聞の再開を命ずることができる。第22条第2項本文及び第三項の規定は、この場合について準用する。

<<行政手続法24条:聴聞調書及び報告書 | 行政手続法26条:聴聞を経てされる不利益処分の決定>>

行政手続法23条:不出頭等の場合における聴聞の終結

当事者が、聴聞の日に、出頭しなかったり、陳述書や証拠書類を提出しない場合、主宰者は、「この当事者は、不利益処分に対して言い分・反論はないんだな!」と判断して、聴聞を終了することができます。

※当事者とは、「聴聞の通知を受けた者=不利益処分の名あて人」を言います。

この点については、行政書士試験では、上記内容だけ覚えておけば十分です!

(当事者の不出頭等の場合における聴聞の終結)
第23条 主宰者は、当事者の全部若しくは一部が正当な理由なく聴聞の期日に出頭せず、かつ、第21条第1項に規定する陳述書若しくは証拠書類等を提出しない場合、又は参加人の全部若しくは一部が聴聞の期日に出頭しない場合には、これらの者に対し改めて意見を述べ、及び証拠書類等を提出する機会を与えることなく、聴聞を終結することができる。
2 主宰者は、前項に規定する場合のほか、当事者の全部又は一部が聴聞の期日に出頭せず、かつ、第21条第1項に規定する陳述書又は証拠書類等を提出しない場合において、これらの者の聴聞の期日への出頭が相当期間引き続き見込めないときは、これらの者に対し、期限を定めて陳述書及び証拠書類等の提出を求め、当該期限が到来したときに聴聞を終結することとすることができる。

<<行政手続法22条:続行期日の指定 | 行政手続法24条:聴聞調書及び報告書>>

行政手続法22条:続行期日の指定

行政手続法22条は、聴聞の審理を延長する場合のルールです。行政書士試験ではあまり出題されませんが、内容的には簡単なので勉強しておいて損はないでしょう!

聴聞の審理を行った結果、もう少し審理を行う必要があると主宰者が判断した場合、主宰者は聴聞の期日を延長できます。

その場合、当事者と参加者に、次回の聴聞の日と場所を通知しなければなりません。ただし、当事者と参加者が聴聞に出頭したときに伝える場合は、通知する必要はなく、その場で告知すればよいです。

行政庁は、当事者と参加人の所在が判明しない場合は、上記通知することができないので、当該行政庁の事務所の掲示場に2週間掲示することで、通知したものとみなします。

(続行期日の指定)
第22条 主宰者は、聴聞の期日における審理の結果、なお聴聞を続行する必要があると認めるときは、さらに新たな期日を定めることができる。
2 前項の場合においては、当事者及び参加人に対し、あらかじめ、次回の聴聞の期日及び場所を書面により通知しなければならない。ただし、聴聞の期日に出頭した当事者及び参加人に対しては、当該聴聞の期日においてこれを告知すれば足りる。
3 第15条第3項の規定は、前項本文の場合において、当事者又は参加人の所在が判明しないときにおける通知の方法について準用する。この場合において、同条第3項中「不利益処分の名あて人となるべき者」とあるのは「当事者又は参加人」と、「掲示を始めた日から二週間を経過したとき」とあるのは「掲示を始めた日から二週間を経過したとき(同一の当事者又は参加人に対する二回目以降の通知にあっては、掲示を始めた日の翌日)」と読み替えるものとする。

<<行政手続法21条:陳述書等の提出 | 行政手続法23条:不出頭等の場合における聴聞の終結>>

行政手続法21条:陳述書等の提出

上図をご覧ください。行政庁は、不利益処分を行う前に、①当事者に対して、聴聞の通知を行います。その後、②行政庁は、職員の中から主宰者(聴聞の運営を行う者)を指名します。また、③主宰者は必要に応じて、参加人の参加許可を行います。

そうすると、当事者と参加人は、聴聞に参加して、不利益処分に対して意見を主張する機会を得ます。そして、行政手続法21条では、聴聞に出席する代わりに、陳述書や証拠書類の提出を行って、自らの意見を主張する方法が認められています。

聴聞における陳述書とは?

陳述書とは、行政庁の不利益処分に対する「言い分や反論」を記載した書面を指します。

行政書士試験では、出題される可能性も高く、内容も易しいのでしっかり頭に入れておきましょう!

(陳述書等の提出)
第21条 当事者又は参加人は、聴聞の期日への出頭に代えて、主宰者に対し、聴聞の期日までに陳述書及び証拠書類等を提出することができる。
2 主宰者は、聴聞の期日に出頭した者に対し、その求めに応じて、前項の陳述書及び証拠書類等を示すことができる。

<<行政手続法20条:聴聞の期日における審理の方式 | 行政手続法22条:続行期日の指定>>

行政手続法20条:聴聞の期日における審理の方式

行政手続法20条は、聴聞手続きの中心となる部分です。実際、聴聞手続きがどのように行われるかが規定されています。そして、内容自体も多いので、一つ一つ頭に入れていきましょう。聴聞手続きの流れの①~④はそれぞれ、下記リンクから学習していただき、本ページでは、⑤聴聞の主宰・審理~⑨意見陳述の要請、証拠書類の提出要請までの内容を解説します。

聴聞手続きの流れ

①当事者の通知はこちら>> ②主宰者の指名はこちら>> ③参加人の許可はこちら>>> ④文書の閲覧請求はこちら>>>

⑤聴聞の主宰および審理

⑥まず、初めに、最初の聴聞の日に、主宰者が、行政庁の職員に、「予定される不利益処分の内容」及び「根拠となる法令の条項」並びに「その原因となる事実」を説明させます。つまり、出頭した行政庁の職員が説明します。 ⑦当事者又は参加人は、聴聞の日に出頭して、意見を述べたり(口頭意見陳述)、証拠書類等を提出したり、主宰者の許可を得て行政庁の職員に対し質問したりできます。 【注意点】「意見を述べること」「証拠書類を提出すること」は主宰者の許可は不要ですが、行政庁職員に対する質問は主宰者の許可が必要です。 ⑧当事者又は参加人は、聴聞の日に出頭して、意見を述べ、及び証拠書類等を提出することができます。 ⑨主宰者は、必要があると認めるときは、 「当事者若しくは参加人」に対し質問をしたり 意見の陳述若しくは証拠書類等の提出を促したり 行政庁の職員に対し説明を求めたりすることができます。

聴聞は公開?それとも非公開?

原則 聴聞の審理は非公開
例外 行政庁が公開することを相当と認めるときは、聴聞の審理を公開
(聴聞の期日における審理の方式) 行政手続法第20条 主宰者は、最初の聴聞の期日の冒頭において、行政庁の職員に、予定される不利益処分の内容及び根拠となる法令の条項並びにその原因となる事実を聴聞の期日に出頭した者に対し説明させなければならない。 2 当事者又は参加人は、聴聞の期日に出頭して、意見を述べ、及び証拠書類等を提出し、並びに主宰者の許可を得て行政庁の職員に対し質問を発することができる。 3 前項の場合において、当事者又は参加人は、主宰者の許可を得て、補佐人とともに出頭することができる。 4 主宰者は、聴聞の期日において必要があると認めるときは、当事者若しくは参加人に対し質問を発し、意見の陳述若しくは証拠書類等の提出を促し、又は行政庁の職員に対し説明を求めることができる。 5 主宰者は、当事者又は参加人の一部が出頭しないときであっても、聴聞の期日における審理を行うことができる。 6 聴聞の期日における審理は、行政庁が公開することを相当と認めるときを除き、公開しない。
<<行政手続法19条:聴聞の主宰 | 行政手続法21条:陳述書等の提出>>