テキスト

持分会社の社員の責任、社員の加入・退社

持分会社の社員の責任

会社は法人なので、会社の債務は、会社自身の債務であって、社員(個人)の債務ではありません。

しかし、持分会社の社員(無限責任社員および有限責任社員)は、会社債権者に対して、直接責任を負います。ただし、この責任の範囲が、無限責任社員と有限責任社員とで異なります。

無限責任社員 すべて責任を負う
有限責任社員 出資した分を限度に責任を負う。出資した金額以上の責任は負わない

どのような場合に責任を負うか?

持分会社の社員は、下記2つのいずれかに該当する場合には、連帯して、持分会社の債務を弁済する責任を負います(580条1項)。

  1. 当該持分会社の財産をもってその債務を完済することができない場合
  2. 当該持分会社の財産に対する強制執行がその効を奏しなかった場合
    (社員が、当該持分会社に弁済をする資力があり、かつ、強制執行が容易であることを証明した場合は、責任を免れることができる)

上記の通り、持分会社の社員は、会社の債務の保証人といった立場にあります。

社員の加入と退社

加入

持分会社は、新たに社員を加入させることができます(604条1項)。

ここでいう「社員」とは従業員ではなく、「出資者」を意味します。
株式会社でいえば株主と同じ立場の人です。

社員に関する情報は登記事項なので、社員が加入する場合、変更登記が必要です。

そして、変更登記をすることで、効力が生じます(604条2項)。

条文では、「持分会社の社員の加入は、当該社員に係る定款の変更をした時に、その効力を生ずる(604条2項)」と規定しているが、内容は上記の通りです。

もっとも、合同会社新たに社員を加入させる場合において、新たに社員となろうとする者が定款の変更をした時にその出資に係る払込み又は給付の全部又は一部を履行していないときは、その者は、当該払込み又は給付を完了した時に、合同会社の社員となります604条3項)。

※持分会社の成立後に加入した社員は、その加入前に生じた持分会社の債務についても、これを弁済する責任を負います605条)。

退社

退社とは、会社が存立している間に、社員がその地位を失うことです。分かりやすく言えば、「会社のオーナー」を辞めるイメージです。よって、後でも解説する通り、出資したお金をあとで取り戻せます。

そして、退社には、任意退社と法定退社の2種類があります。

任意退社

任意退社とは、社員自らの意思によって退社することです。

「①持分会社の存続期間を定款で定めなかった場合」又は「②ある社員の終身の間持分会社が存続することを定款で定めた場合」には、各社員は、事業年度の終了の時において退社をすることができます(606条1項)。

この場合においては、各社員は、6か月前までに持分会社に退社の予告をしなければなりません。

しかし、やむを得ない事由があるときは、いつでも退社することができます(606条3項)。

法定退社

社員は、下記事由によって、自動的に退社します(607条)。

  1. 定款で定めた事由の発生
  2. 総社員の同意
  3. 死亡
  4. 合併(合併により当該法人である社員が消滅する場合に限る。)
  5. 破産手続開始の決定
  6. 解散
  7. 後見開始の審判を受けた
  8. 除名

退社に伴う持分の払戻し

退社した社員は、その出資の種類を問わず、金銭によりその持分の払戻しを受けることができます(611条1項3項)。

ただし、合同会社の場合、全員有限責任社員のため、原則、払い戻しはできません。

例外として、定款変更して出資価額を減少する場合は払い戻しができます。

<<持分会社の設立の流れ | 組織変更>>

持分会社の設立の流れ、設立無効・設立取消しの訴え

持分会社とは、合同会社、合名会社、合資会社の3種類を指します。どれも持分会社です。

持分会社を設立する流れについて解説していきます。

持分会社を設立するには下記3つのステップを踏みます。

  1. 定款作成
  2. 出資
  3. 設立登記

1.定款作成

持分会社(合名会社、合資会社又は合同会社)を設立するには、その社員になろうとする者が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければなりません(575条1項)。

株式会社との違い

持分会社の場合、定款について公証人の認証は不要です。

2.出資

出資については、無限責任社員と有限責任社員によって異なります。

無限責任社員とは、会社に対して無限に責任を負う社員のことを言います。つまり、 会社が倒産し、さらに債務を会社の財産だけでは弁済できなかった場合、無限責任社員は自己の財産を使って弁済しなければなりません。一方、

有限責任社員とは、自分が出資した分だけ会社に対して責任を負う社員のことを言います。つまり、会社が倒産し、会社に債務が残っていても、有限責任社員は、その残債について責任を負わなくても大丈夫です。

無限責任社員 金銭だけでなく、労務、信用で出資してもよい
有限責任社員 金銭等の出資に限られ、労務や信用で出資はできない

持分会社の社員の違い

合同会社 有限責任社員のみ
合名会社 無限責任社員のみ
合資会社 無限責任社員と有限責任社員が混在

出資の時期

合名会社合資会社については、社員の出資の時期について制限はありません。一方、

合同会社については、社員になろうとするものは、定款作成後、合同会社の設立登記の時までに、その出資額の全額を払込みまたは給付しなければなりません(578条)。

上記の違いは、合名会社や合資会社の社員は無限責任社員がいるため、万一会社が倒産等しても、会社債権者は、無限責任社員に対して弁済を求めることができます。一方、合同会社の場合、社員は全員、有限責任社員なので、会社が倒産しても有限責任社員に対して請求をすることができません。そのため、設立登記までに全額払込みをさせるルールになっています。

3.設立行為

持分会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立します(579条)。

持分会社の設立無効の訴え

設立無効の原因がある場合、株式会社同様、設立無効の訴えにより設立無効を主張できます(828条1項)。

株式会社の設立無効の訴えはこちら>>

持分会社の設立取消しの訴え

持分会社には、設立取消しの訴えという独自の制度があります(832条)。これは、株式会社にはありません

設立取消しの原因となるのは下記2つです。

  1. 社員が民法などの法律の規定により設立に係る意思表示を取り消すことができるとき
  2. 社員がその債権者を害することを知って持分会社を設立したとき

そして、1の場合、当該社員が設立取消しを主張でき、2の場合、債権者が設立取消を主張できます。

設立取消しの訴えは、持分会社の成立の日から2年以内に、行う必要があります。

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指名委員会等設置会社

指名委員会等設置会社には、①指名委員会、②監査委員会、③報酬委員会の3委員会が置かれます。

それぞれの委員会は、委員3人以上で組織されます。この委員は、取締役の中から取締役決議によって選定されます。つまり、委員は全員取締役です。また、各委員会の委員の過半数が社外取締役でなければなりません(400条1項・2項)。


指名委員会

指名委員会は、株主総会に提出する取締役及び会計参与の選任及び解任に関する議案の内容を決定します(404条1項)。

監査委員会

監査委員会は、下記内容を行います(404条2項)。

  1. 執行役等(執行役・取締役・会計参与)の「職務の執行の監査」及び「監査報告の作成」
  2. 「株主総会に提出する会計監査人の選任及び解任」並びに「会計監査人を再任しないこと」に関する議案の内容の決定

監査委員による調査

 

①監査委員会が選定する監査委員は、いつでも、「執行役・取締役・会計参与」に対し、その職務の執行に関する事項の報告を求め、又は

指名委員会等設置会社の業務及び財産の状況の調査をすることができます。(405条1項)

②監査委員会が選定する監査委員は、監査委員会の職務を執行するため必要があるときは、指名委員会等設置会社の子会社に対して事業の報告を求め、又は

その子会社の業務及び財産の状況の調査をすることができる。(405条2項)

取締役会への報告義務

監査委員は、①執行役又は取締役が不正の行為をし、若しくは当該行為をするおそれがあると認めるとき、又は②法令若しくは定款に違反する事実若しくは③著しく不当な事実があると認めるときは、遅滞なく、その旨を取締役会に報告しなければなりません(406条

監査委員による執行役等の行為の差止め

監査委員は、執行役又は取締役が指名委員会等設置会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合で、かつ、当該行為によって当該指名委員会等設置会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該執行役又は取締役に対し、当該行為をやめることを請求(差止請求)することができます(407条1項)。

報酬委員会

報酬委員会は、「執行役・取締役・会計参与」の個人別の報酬等の内容を決定する権限を有しています(404条3項)。

執行役が指名委員会等設置会社の支配人その他の使用人を兼ねているときは、当該支配人その他の使用人の報酬等の内容についても、同様とする。

執行役

 

指名委員会等設置会社には、1人又は2人以上の執行役を置かなければなりません(402条1項)。また、執行役は、取締役会の決議によって選任します(402条2項)。

執行役の権限

執行役は、①取締役会の決議によって委任を受けた業務の執行の決定と②業務の執行を行います(418条)。

執行役の任期

執行役の任期は、選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結後最初に招集される取締役会の終結の時までです。

ただし、定款によって、その任期を短縮することができます。

指名委員会等設置会社でない取締役の任期は2年です。

執行役の選任・解任

執行役は、取締役会決議によって選任されます(402条2項)。

また、いつでも、取締役会決議によって解任することができます(403条1項)。

執行役の義務

執行役は、3か月に1回以上、自己の職務の執行の状況を取締役会に報告しなければなりません。この場合において、執行役は、「他の執行役を代理人」として報告をすることができます。(417条4項)

また、取締役会の要求があった場合、執行役は、取締役会に出席し、取締役会が求めた事項について説明をしなければなりません(417条5項)。

さらに、執行役は、指名委員会等設置会社に著しい損害を及ぼすおそれのある事実を発見したときは、直ちに、当該事実を監査委員に報告しなければなりません(419条1項)。報告先は取締役会ではないので注意しましょう!

代表執行役

選定と解職

代表執行役は、取締役会が、執行役の中から選定します(420条1項)。

※執行役が1人のときは、その者が代表執行役に選定されたものとします。

また、代表執行役は、いつでも、取締役会の決議によって解職することができます(420条2項)。

代表執行役の権限

代表執行役は、指名委員会等設置会社の業務に関する一切の裁判上・裁判外の行為をする権限を有します(420条3項、349条5項)。

この権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することはできません420条3項、349条5項)。

表見代表執行役

指名委員会等設置会社は、代表執行役以外の執行役に「社長、副社長など」といった代表する権限を有するものと認められる名称を付した場合には、当該執行役がした行為について、善意の第三者に対してその責任を負います(421条)。

<<監査等委員会設置会社 | 株主からの責任追及(株主代表訴訟・差止請求・検査役の調査)>>

取締役

取締役とは、会社の具体的な業務に関する意思決定を行い、現実に業務執行を行う機関です。

取締役の資格

取締役の資格とは、誰が取締役になれるのか?ということです。この点について会社法では、下記のいずれかに該当する場合、取締役になれないと規定しています(331条1項)。そして、下記事由を欠格事由と言います。

  1. 法人
  2. 会社法等の法律に違反し、または一定の罪を犯し、罰金刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
  3. 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く。)等

取締役の選任

取締役の選任は、株主総会の専属決議事項とされています(329条)。つまり、株主総会でしか決議できません。そして、決議の方法は普通決議です。

そして、上記普通決議の内容については定款の定めにより変更ができます。

定足数については、議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1まで下げることができます。3分の1未満にはできません。

また、決議要件について、出席した当該株主の議決権の過半数を上回る割合を定款で定めることができます(341条)。

取締役の選任については、累積投票制度が認められています(342条)。

取締役の解任

解任とは、任期の途中にその役職を解かれること・やめさせることを言います。

そして、取締役の解任については、①株主総会決議による解任と②解任の訴えの2つの場合があります。

株主総会における解任決議

取締役は、いつでも、株主総会の普通決議によって解任することができます(339条1項)。

ただし、累積投票で選任された取締役の解任の場合、特別決議が必要です(309条2項7号)。

正当な理由なく株主総会決議により解任された者は、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができます(339条2項)。

役員解任の訴え

少数株主は、取締役解任の訴えを行うことにより、取締役の解任を行うことができます。

これは、悪いことをした取締役が、会社内で力を持っている者の場合、株主総会決議をしても、その取締役を恐れて、賛成票を入れず否決されることがあります。

そのような場合に備えて、裁判所に訴えることができるようにしています。

役員に欠員が生じた場合

役員(取締役又は会計参与)が欠けた場合、または定款で定めた役員の員数が欠けた場合には、任期の満了または辞任により退任した役員は、新たに選任された役員が就任するまで、なお役員としての権利義務を有します346条1項)。

悪いことをして解任となった場合は、上記ルールは適用されず、役員としての権利義務はなくなります

辞任とは、自らの意思でやめることです。

取締役の員数

非取締役会設置会社では、1人又は2人以上の取締役を置かなければなりません(326条)。つまり、1人以上置かなければならないということです。

取締役会設置会社では3人以上の取締役を置かなければなりません(331条5項)。

取締役の任期

取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までです。ただし、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することはできます332条1項)。

言い換えると、取締役の任期は最長「選任の日から2年」ということです。

「非公開株式会社」かつ「監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社でない」場合

「非公開株式会社」かつ「監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社でない株式会社」については、定款によって、任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長(延長)することができます(332条2項)。

監査等委員会設置会社の場合

監査等委員会設置会社の場合、

監査等委員の取締役は、原則、任期2年ですが
監査等委員でない取締役は、原則、任期1年とされています(332条3項)。

指名委員会等設置会社の場合

指名委員会等設置会社の取締役は、任期は原則1年ですが、定款または株主総会決議により、任期を短縮できます(332条1項)。

取締役の地位と権限

取締役の地位や権限については、非取締役会設置会社、取締役会設置会社、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社によって異なります。

これは分かりやすいように、下表のように、「意思決定機関」「業務執行機関」「代表者」と分けて考えると覚えやすいです。

非取締役会設置会社における取締役

取締役会がない場合、会社の業務の意思決定は、原則、取締役が行います。もし、取締役が2人以上いる場合、過半数をもって決定します(348条1項)。

ただし、定款の別段の定めがあれば、それに従います。

そして、非取締役会設置会社の代表者については、
原則、各取締役が会社を代表します。
例外として、代表取締役が定まっている場合、代表取締役が会社を代表します(349条1項2項)。

取締役会設置会社における取締役

取締役会設置会社では、取締役会が会社の業務の意思決定を行うので、取締役個人としては、あくまでも取締役会の構成員として、意思決定の議決権を持つにすぎないことになります(362条)。

業務の執行についても、基本的には取締役の中から選ばれた代表取締役が行います。
※指名委員会等設置会社の場合は、執行役が業務の執行を行います(418条)。

取締役の義務

取締役は下記義務および下記規制を負います。

  1. 善管注意義務
  2. 忠実義務
  3. 競業取引の禁止
  4. 利益相反取引の禁止

善管注意義務

会社と取締役の関係は、委任の規定に従います(330条)。

つまり、「会社=委任者」「取締役=受任者」という関係が成立します。

そうすると、受任者たる取締役は、委任者たる会社に対して善良なる管理者の注意義務(善管注意義務)を負います(民法644条)。

もし、取締役が善管注意義務を怠り、会社に損害を与えた場合、債務不履行により損害賠償義務を負うこととなります(民法415条)。

忠実義務

忠実義務とは、法令および定款・株主総会決議を遵守し、会社のために忠実にその職を行わなければならないという義務を言います(335条)。

判例では、忠実義務は、善管注意義務を、より明確に注意的に規定したものに過ぎず善管注意義務とは別個のより高度な注意義務を取締役に課したものではない、としています(最大判昭45.6.24)。

つまり、善管注意義務と忠実義務は同質の義務であるということです。

競業取引の禁止(競業避止義務)

取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき、株主総会(取締役会設置会社においては取締役会)において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければなりません(356条1項1号)。

「自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引」とは、「競業取引」のことを指します。

例えば、株式会社Aがホームページの作成事業を行っており、取締役Bは、自らホームページ作成事業を立ち上げたり、他のホームページ作成業者Cの代表取締役に就任して、ホームページの作成事業を行ったりしてはいけない、ということです。

このような義務を競業避止義務(きょうぎょうひしぎむ)と言います。

承認を得ずに競業取引を行った場合どうなるか?(競業取引の効果)

株主総会・取締役会の承認を要する競業取引であるにも関わらず、承認を得ずに取引を行った取締役は、会社に損害が生じた場合、任務懈怠による損害賠償責任を負うことになります(432条1項)。

その場合、「取締役が得た利益」又は「第三者が得た利益」の額が損害額と推定され、損害賠償請求の対象となります。

つまり、競業取引自体は有効だが、損害賠償で処理するということです。

利益相反取引の禁止

利益相反取引とは、取締役と会社の利益が相反する取引を言います。

つまり、取締役が利益を得て、会社が不利益を被る取引のことです。

例えば、会社の所有する土地を取締役が安く購入する契約等です。

この場合も、株主総会(取締役会設置会社においては取締役会)において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければなりません(356条1項3号)。

利益相反取引の効果

利益相反取引については、会社は原則として取締役に対して無効を主張することができます。

一方、会社は、承認がなかったことを知らない第三者に対して無効を主張できません

取締役の報酬

取締役の報酬は、定款または株主総会の決議により定めなければなりません(361条1項)。

つまり、定款の定めがない場合、株主総会決議で決めるということです。

取締役会決議では決めることができません

なぜなら、それができると、取締役が自分達の報酬を決めることができるようになり、不当に高額にして会社の経営に影響を及ぼす恐れがあるからです。

<<株主総会の決議取消しの訴え、決議無効確認の訴え、決議不存在確認の訴え | 取締役会の権限>>

監査等委員会設置会社

行政書士の試験においては、監査等委員会については下記の中でも、太文字部分と図の内容からの出題がほとんどです。

権限などは優先順位が低いので、太文字部分と図の内容を覚えていきましょう!

監査等委員会設置会社とは、監査等委員会を置く株式会社です。

そして、この監査等委員会は、取締役会の一機関として、監査役の担ってきた監査業務を行うとともに、一定の権限を持ちます。

そして、この「監査等委員会」は全員取締役(監査等委員という)なのですが、過半数が社外取締役です。

そして、監査等委員は、取締役なので、監査役とは異なり、取締役会での議決権を有しています。


監査等委員会の権限

監査等委員会は、指名委員会等設置会社の監査委員会と同じ権限を有します。

  1. 取締役(会計参与設置会社にあっては、取締役及び会計参与)の職務の執行の監査及び監査報告の作成(指名委員会等設置会社の監査委員会と同様)
  2. 株主総会に提出する「会計監査人の選任及び解任」並びに「会計監査人を再任しないこと」に関する議案の内容の決定
  3. 監査等委員でない取締役の選任・解任・報酬についての意見の決定

監査等委員の選任と解任

監査等委員は全員取締役で、他の取締役とは区別して、株主総会の決議(普通決議)によって選任されます(329条1項・2項)。

解任については、株主総会の特別決議で行う必要があります(309条2項7号)。

監査等委員の任期

監査等委員である取締役の任期は、原則2年です。

一方、監査等委員以外の取締役の任期は、原則1年です。

監査等委員である取締役の任期は、定款や株主総会の決議でも短縮することができず、その身分が保障されています(332条4項)。

<<会計監査人 | 指名委員会等設置会社>>

監査役会

監査役会の構成員は、全員が監査役です(390条1項)。

そして、監査役は3人以上で、その半数が社外監査役でないといけません(335条3項)。

例えば、
監査役が3人の場合、社外監査役が2人以上
監査役が4人の場合、社外監査役が2人以上
監査役が5人の場合、社外監査役が3人以上
といった感じです。

監査役会の職務

監査役会の職務は下記3つです(390条2項)。

  1. 監査報告の作成
  2. 常勤の監査役の選定及び解職
  3. 「①監査の方針」、「②監査役会設置会社の業務」及び「③財産の状況の調査の方法その他の監査役の職務の執行」に関する事項の決定(①~③に関する内容の決定)

監査役会の招集と決議

監査役会は、各監査役が招集します(391条)。

監査役会の決議は、監査役の過半数をもって行います。(393条1項)

監査役会を設置しなければならない会社

監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社を除く「大会社である公開会社」は、監査役会を設置しなければなりません。

<<監査役 | 会計監査人>>

監査役

監査役の権限

監査役は、取締役の職務の執行を監査する機関です。そして、会計参与設置会社にあっては、取締役だけでなく、会計参与の職務執行についても監査します(381条1項)。

監査役と会計参与の関係

つまり、「取締役や会計参与」の仕事を監査するのが「監査役」です。

監査の内容

監査役は、①会計監査②業務監査の2つを行います。

ただし、非公開会社については、定款で監査役の監査を会計監査に限定することができます。このように監査役の監査の範囲が会計監査に限定されている場合、監査役設置会社には当たらないとされます(389条1項)。

監査役の調査と報告

監査役は、いつでも、取締役及び会計参与並びに支配人等に対して事業の報告を求め、又は、業務及び財産の状況の調査をすることができます(381条2項)。

そして、監査役は、上記調査や報告をもとに、監査報告を作成しなければなりません(381条1項)。

監査役による子会社に対する調査

監査役は、その職務を行うため必要があるときは、子会社に対して事業の報告を求め、又はその子会社の業務及び財産の状況の調査をすることができます(381条3項)。
この場合、子会社は、正当な理由があるときは、報告又は調査を拒むことができます(381条4項)。

監査役の取締役への報告義務

監査役は、

①取締役が不正の行為をし、若しくは当該行為をするおそれがあると認めるとき、又は

②法令若しくは定款に違反する事実若しくは③著しく不当な事実があると認めるときは、

遅滞なく、その旨を取締役(取締役会設置会社にあっては、取締役会)に報告しなければなりません。(382条

監査役の取締役会への出席義務等

監査役は、取締役会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければならなりません

ただし、監査役が2人以上ある場合において、特別取締役による議決の定めがあるときは、監査役の互選によって、監査役の中から特別取締役による取締役会に出席する監査役を定めることができます。(383条1項)

監査役の株主総会に対する報告義務

監査役は、取締役株主総会に提出しようとする議案、書類等を調査しなければなりません。

そして、この場合において、法令若しくは定款に違反し、又は著しく不当な事項があると認めるときは、その調査の結果を株主総会に報告しなければなりません。(384条1項)

監査役による取締役の行為の差止め

監査役は、取締役が監査役設置会社の目的の範囲外の行為、その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合で、かつ、
当該行為によって会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、
当該取締役に対し、当該行為をやめることを請求(差止請求)することができます(385条1項)。

監査役会への報告

監査役は、監査役会の求めがあるときは、いつでもその職務の執行の状況を監査役会に報告しなければなりません。

監査役の選任

監査役の選任の要件は「取締役の選任の要件」と同じです。

したがって、監査役の選任は、株主総会の専属決議事項とされ(329条)、株主総会でしか決議できません。そして、決議の方法は普通決議です。

取締役の選任要件と異なる点

監査役の選任決議について、定足数について、3分の1に下げることができません

決議要件について、出席した当該株主の議決権の過半数を上回る割合を定款で定めることができる点については、取締役と同じです(341条)。

監査役の解任

監査役の解任については、①株主総会決議による解任と②解任の訴えの2つの場合があります。この点は取締役の解任と同じです。

株主総会決議による監査役の解任

しかし、株主総会による解任決議は、取締役の場合と異なり、特別決議によって、解任することができます(309条2項7号)。

また、上記株主総会の特別決議によれば、いつでも理由の如何に関わらず、監査役を解任することができます。

しかし、正当な理由なく株主総会決議により解任された監査役は、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができます(339条2項)。この点は取締役の場合と同じです。

そして、監査役は、株主総会において、監査役の選任若しくは解任又は辞任について意見を述べることができます(345条1項4項)。

監査役の解任の訴え

監査役の解任の訴えは、取締役の解任の訴えと同じ内容です。

監査役の員数

監査役会設置会社でない 監査役は1人でもOK
監査役会設置会社 監査役は3人以上で、
かつ、
半数以上は社外監査役

監査役の任期

監査役の任期は、選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までです(336条1項)。

つまり、取締役の任期よりも2年長く設定されています。

そして、定款又は株主総会の決議によっても、その任期を短縮することはできません

この点は、取締役の場合と異なります。(取締役は任期を短縮できる)

非公開会社の場合

非公開株式会社については、定款によって、任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長(延長)することができます(336条2項)。

<<会計参与 | 監査役会>>

募集設立の手続きの流れ

募集設立の場合、発起人は株式引受人となりますが、残りの株式について株式引受人を募集します。

つまり、株式を引き受ける者が「発起人+募集で来た人」の場合、募集設立となります。

募集設立の流れ

  1. 発起人による出資の履行
  2. 株主の募集と割当て
  3. 引受人による払込み
  4. 創立総会
  5. 設立登記

発起設立との大きな違いは、引受人を募集するため、「2.株主の募集と割当て」「3.引受人による払い込み」「4.創立総会」がある点です。

1.発起人による出資の履行

1.発起人による出資の履行」については、発起設立を同じです。

2.株主の募集と割当て

まず、発起人は各自少なくとも1株の引受けをして、出資します(上記1の内容)。

その発起人全員の同意により、「募集株式の数(募集により引き受けてもらう株式数)」「その払込金額、払込期日、期間など」の募集の条件を定めます(58条1項・2項)。

その後、発起人が募集を行い、これに応じて株式を引き受けたい者が申込をし、申込を受けた発起人が、申込人に株式を割り当てます59条60条)。

株式の割当とは?

株式の割当とは、申込人に何株引受けさせるか、または引受けさせないかを決めることです。この割当は、発起人が自由に決めることができます

そして、割当を受けた申込人は、募集株式の引受人となり、出資手続きを行います(62条)。

3.引受人による払込み(出資)

株式引受人は、発起人の定めた払込期日内に払込金額全額の払込をしなければなりません(63条1項)。

もし、株式引受人が全額を払い込まない場合、株主となる権利を失います63条3項)。
※一部だけ払い込んでもダメです。

上記の通り、払い込まない引受人がいると、当初予定していた出資額よりも少なくなります。それでも、「出資される財産の最低額」を上回っていれば問題ありません。

もし、「出資される財産の最低額」を下回ってしまったら、設立無効となります。

払込金保管証明書

発起人は、払込取扱機関である銀行等に対して、払い込まれた金銭の保管に関する証明書(払込金保管証明書)の交付を請求することができます(64条1項)。

これは、銀行が、引受人が払い込んだ出資金を預かっていることを証明するものです。
そして、この証明書を発行した銀行は、その記載内容が異なっていても、また、払い込まれた金銭を引受人に返還する特約が付いていたとしても、その旨を成立後の株式会社に対抗することはできません(64条2項)。

これは払込を仮装することを防止するためにあります。

つまり、引受人と銀行がグルになって、出資金を払い込んだことにする仮装行為を防止するためです。

4.創立総会

募集設立の場合、発起人以外に、募集によって株式を割り当てられた者(設立時株主)もいます。そのため発起人だけで設立を進めることは適当ではないので、発起人と設立時株主全員によって構成される創立総会による決議を行います。

設立事項の報告

創立総会では、はじめに、発起人が、株式会社の設立に関する事項(設立の経過)を創立総会に報告しなければなりません(87条1項)。

報告内容については、例えば、相対的記載事項(変態設立事項)が定められている場合には、検査役の報告、現物出資、財産引受についての弁護士の証明などです。

検査役とは?

検査役とは、相対的記載事項がある場合に、発起人は、公証人の認証の後遅滞なく、相対的記載事項を調査させるため、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをし、裁判所によって選任された者です(33条1項2項)。

設立時取締役等の選任

発起人は、払込期日後、遅滞なく、創立総会を招集しなければなりません(65条)。

創立総会では、決議により設立時取締役等を選任します(88条)。

創立総会の決議要件

創立総会の決議は、議決権を行使することができる設立時株主の議決権の過半数であって、かつ、出席した当該設立時株主の議決権の3分の2以上の多数をもって行います(73条)。

5.設立登記

創立総会の終結の日から2週間以内に設立の登記を行うことで、株式会社が成立します(911条2項)。

<<発起設立の手続きの流れ | 設立無効、会社の不成立、設立取消の違い>>

取締役会の招集

取締役会の招集権者

取締役会の招集権者は、下記の者が行えます。

  1. 取締役
  2. 株主
  3. 監査役

取締役による招集

取締役会は、原則、各取締役が招集する。
ただし、取締役会を招集する取締役を定款又は取締役会で定めたときは、その取締役のみが招集します(366条1項)。

そして、定款や取締役会で、特定の取締役のみを招集権者として定めた場合でも、その特定の取締役が悪いことなどをしていて、自ら取締役会を招集しないことも考えられます。そのような場合は、他の取締役が、上記招集権者である取締役に対して取締役会の招集請求ができます(366条2項)。

株主による招集

監査役設置会社、監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社を除いて
取締役会設置会社の株主は、取締役が「会社の目的の範囲外の行為その他法令・定款に違反する行為をし」、又は「これらの行為をするおそれがあると認める」ときは、取締役会の招集を請求することができます(会社法367条1項)。

これは、株主が、招集権者である取締役に対して「取締役会を招集してください!」と請求するもの

もし、取締役が、請求を受けた日から5日以内に、
請求を受けた日から2週間以内の日程で取締役会の招集を行わない場合
請求を行った株主が自ら取締役会の招集を行うことができます(会社法367条3項)。

監査役による招集

監査役は、「取締役が不正の行為をし、若しくは当該行為をするおそれがあると認めるとき場合」において、必要があると認めるときは、取締役等の招集権者に対し、取締役会の招集を請求することができます(会社法382条2項)。

これは、監査役が、招集権者である取締役に対して「取締役会を招集してください!」と請求するもの

もし、取締役が、請求を受けた日から5日以内に、
請求を受けた日から2週間以内の日程で取締役会の招集を行わない場合
請求を行った監査役が自ら取締役会の招集を行うことができます。

株主総会の招集権者はこちら>>

取締役会の招集手続

取締役会を招集する者は、取締役会の日の1週間前までに、各取締役に対してその通知を発しなければなりません。ただし、定款で1週間を下回る期間を定めた場合は、その期間内に通知すればよいです(368条1項)。

※監査役設置会社にあっては、各取締役だけでなく各監査役にも通知が必要

そして、取締役会は、取締役全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく取締役会を開催することができる(368条1項)。

※監査役設置会社にあっては、取締役だけでなく監査役も含めて全員の同意が必要

<<取締役会の権限 | 取締役会の決議・特別取締役>>

取締役会の権限(取締役会の専決事項)

取締役会は、取締役全員で組織され、下記権限をもつ機関です。

  1. 業務執行の意思決定
  2. 取締役の職務執行の監督
  3. 代表取締役の選定・解職

公開会社、監査役会設置会社、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社は、取締役会を設置しなければなりません(362条1項、327条1項)。

上記1~3は取締役会の権限なのですが、具体的に解説していきます。

業務執行の意思決定

取締役会設置会社においては、取締役は、3人以上でなければなりません(331条5項)。

その3人以上の取締役の合議(話し合い)によって業務執行の意思決定がなされ、その決定に基づいて、代表取締役が「業務執行の代表」となり、また「会社の代表」となります。

上記の通り、取締役会は会社の代表権はないけど、取締役会で定めた一定範囲の業務執行について、業務執行取締役を選定して、業務執行取締役に当該業務執行を行わせることができます(363条1項)。

「取締役の地位と権限」参照

取締役会の決議

取締役会の決議は、原則として、議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その過半数をもって行います。また、定款で、これを上回る割合を定めることもできます(369条1項)。

ただ、経営判断を迅速に行うために、取締役会は、原則業務執行の決定を代表取締役に委任することもできます。ただし、重要な事項については、委任することができず、取締役会でしか決議できないようにしています。これを取締役会の専決事項と呼びます(362条4項)。

取締役会の専決事項

  1. 重要な財産の処分及び譲受け
  2. 多額の借財
    →例えば、事業拡大のための銀行からの借り入れ
  3. 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
  4. 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
    →例えば、支店の統廃合
  5. 社債募集に関する重要な事項
  6. 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制の整備(内部統制体制の整備
    その他株式会社の業務の適正を確保するために必要な体制の整備
    →取締役の職務執行が法令・定款に適合するように体制(内部統制システム)を整備すること
  7. 定款の定めに基づく役員の任務懈怠の責任免除の承認

※上記「1.重要な財産の処分及び譲受け」「2.多額の借財」については、特別取締役による取締役会の決議でも行える
(注意:指名委員会等設置会社では特別取締役は選任できないので、これはできない!)

取締役の業務執行の監督

取締役会は、取締役の職務の執行を監督する職務を行います(362条2項2号)。

代表取締役や業務執行取締役が不適切な業務執行を行うとき、取締役会は、その行為の違法性だけでなく、妥当性も問うことができます。
つまり、法律違反をしていなくても、その行為が経営判断として妥当かどうかまで監督するわけです。

また、取締役会が、代表取締役や業務執行取締役を監督するために、代表取締役や業務執行取締役は、3か月に1回以上、自己の職務の執行の状況を取締役会に報告しなければなりません(363条2項)。そして、この報告は省略できません(372条2項)。

上記3か月に1回以上、取締役会で報告する義務があることから、最低でも3か月に1回は取締役会が開催されることになります。

取締役会の招集はこちら>>

代表取締役の選定・解職

取締役会は、代表取締役の選定及び解職する職務を行います(362条2項3号)。

つまり、代表取締役の不当な行為により会社に損害を与えた場合、取締役会で当該代表取締役を解職することができます。

<<取締役 | 取締役会の招集>>