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国民主権とは?わかりやすく簡単に解説【行政書士試験対策】

国民主権とは、国の政治のあり方を最終的に決める力(主権)が国民にあるという憲法上の基本原理です。日本国憲法の三大原則の一つであり、前文と第1条に明記されています。行政書士試験では、主権の3つの意味の区別や、代表民主制・直接民主制との関係が繰り返し問われる重要テーマです。

この記事でわかること

  • 主権の3つの意味(統治権・最高独立性・最高決定権)と憲法条文の対応
  • 権力性の契機と正当性の契機──国民主権の2つの側面の違い
  • 代表民主制と直接民主制の仕組みと具体例
  • 行政書士試験の出題パターンと得点につながる整理法

初学者でも理解できるよう、条文の原文を示しながらわかりやすく解説します。まずは主権の意味の整理から確認していきましょう。

国民主権とは?意味と内容をわかりやすく解説


国民主権とは、分かりやすく言うと、主権は国民が持っているということです。

主権の3つの意味

  1. 統治権:独立して国民や領土を統治する権利
  2. 最高独立性:ほかの国から支配や干渉をされず,ほかの国々と対等である権利
  3. 最高決定権:国の意思や政治のありかたを最終的に決定する権利

■ポツダム宣言8項の「日本国の主権は本州、北海道、九州及び四国ならびに我々の決定する諸小島に限られなければならない。」の中の主権は、領土を統治することを指すので、統治権を指しています。

■憲法41条の「国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。」の中の国権は、国民を統治することを指すので、統治権として使っています。

■憲法の前文の「自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。」の中の主権は、その後ろの言葉「他国と対等関係に立たうとする各国の責務」から分かるように、他の国から支配や干渉をされず,ほかの国々と対等である権利を指すので、最高独立性の意味として使っています。

■憲法の前文の「主権が国民に存することを宣言し」の主権は、国の政治について、国民が決めることを意味するので、最高決定権として使っています。

代表民主制と直接民主制

上記、主権の意味の中の一つに「最高決定権」がありました。国民が国の政治を決めるということです。それを実現するために、日本では、代表民主制を原則して、直接民主制によりそれを補完するものとしています。

代表民主制とは?

国民の中から代表者を選び、その代表者が国民に代わって政治を行う制度です。間接民主制という言い方もします。

例えば、衆議院議員を選んで、その衆議院議員が政治を行うということです。

直接民主制とは?

代表者(議員)などを介さずに、国・都道府県・市町村の意思決定に直接参加し、その意思を反映させる政治制度です。

例えば、「住民投票」や「地方公共団体の長・議員などの解職請求」は、住民が直接、地方公共団体の意思決定に参加しているので直接民主制の事例です。

<<労働基本権(憲法28条) | 権力分立>>

教育を受ける権利とは?憲法26条をわかりやすく解説【行政書士試験】

憲法第26条
すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
2 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

教育は、個人が人格を形成し、社会において有意義な生活を送るために必要不可欠なものです。そのため、26条では、「等しく教育を受ける権利」と「普通教育を受けさせる義務」について定めています。

教育を受ける権利

教育を受ける権利は、子供に対して保障され、子供の学習権を保障したものと解されています。また、この学習権を保障するために、国は、教育制度を維持し、教育条件を整備すべき義務を負うとして、具体的に教育基本法などが定められ、小中学校の義務教育を中心とする教育制度が設けられています。

教育を受けさせる義務

教育を受けさせる義務は、保護者が負います。そしてこの義務の内容は普通教育(小学校・中学校の教育)であり、職業教育や専門教育の義務までは負いません。

教育権の所在(国家の教育権と国民の教育権)

「教育を受ける権利」に関して争われている問題は、下記のどちらが正当かということです。

  1. 教育内容について国が関与・決定する機能を有する説(国家の教育権
  2. 子どもの教育について責任を負うのは、親および教師を中心とする国民全体であり、国は教育の条件整備の任務を負うにとどまるとする説(国民の教育権

この点について、どちらが正当かまで決めることはできないが、判例(旭川学力テスト事件)では、国は必要かつ相当と認められる範囲で義務内容についても決定する機能を有するとしています。

義務教育の無償

無償とは、授業料が無償なのであって、教科書代などの一切の費用を無償という意味ではないとしています。(下記、教科書費国庫負担請求事件参照)

教育を受ける権利に関する重要判例

  • 最高裁は「一般に社会公共的な問題について国民全体の意思を組織的に決定、実現すべき立場にある国は、国政の一部として広く適切な教育政策を樹立、実施すべく、また、しうる者として、憲法上は、あるいは子ども自身の利益の擁護のため、あるいは子どもの成長に対する社会公共の利益と関心にこたえるため、必要かつ相当と認められる範囲において、教育内容についてもこれを決定する権能を有するものと解さざるをえず、これを否定すべき理由ないし根拠は、どこにもみいだせない」(最大判昭51.5.21:旭川学力テスト事件
  • 憲法第26条2項の義務教育無償化規定について、教科書の無償まで含まれるかが争われた。この点について最高裁は、「公立小学校の教科書代を父兄に負担させることは、憲法第26条第2項後段の規定に違反しない。」として、教科書の無償までは憲法で保障されていないとしました。(最判大昭39.2.26:教科書費国庫負担請求事件)

<<生存権(憲法25条) | 労働基本権(憲法28条)>>

よくある質問(FAQ)

教育を受ける権利とは?

教育を受ける権利とは、憲法第26条第1項で保障された基本的人権の一つで、すべての国民がその能力に応じて等しく教育を受けることができる権利です。この権利は特に子どもの「学習権」を保障したものと解されており、国に対して教育制度の整備・維持を求める社会権としての性質を持ちます。行政書士試験では、教育権の所在(国家の教育権と国民の教育権)や義務教育の無償の範囲と併せて出題されます。

義務教育の無償の範囲は?

憲法第26条第2項が定める「義務教育は、これを無償とする」の「無償」とは、授業料の不徴収を意味し、教科書代・学用品費・給食費などすべての教育費用を無償とする趣旨ではありません。最高裁も教科書費国庫負担請求事件(最大判昭39.2.26)において、公立小学校の教科書代を保護者に負担させることは憲法に違反しないと判示しています。

マクリーン事件をわかりやすく解説|外国人の人権・判旨【行政書士試験】

論点

  1. 外国人の在留期間の更新について法務大臣の裁量権が認められるか?
  2. 外国人にも人権の保障が及ぶか?
  3. 外国人にも政治活動の自由の保障が及ぶか?

事案

外国籍のマクリーン(X)は、在留期間を1年とする許可を得て、日本に入国した。

その後、Xは、法務大臣Yに対して、在留期間延長の申請をした。

しかし、「無断転職」および「政治活動(※)」を理由に、120日の更新しか認められず、その後、更新は不許可となった。

※ベトナム戦争の反対運動、日米安保条約の反対運動などを行っていた。

そこで、XはYの更新不許可処分を不服として、その取消しを求めて出訴した。

判決

1.外国人の在留期間の更新について法務大臣の裁量権が認められるか?

認められる

出入国管理令では、「在留期間の更新については、法務大臣がこれを適当と認めるに足りる相当の理由があると判断した場合に限り許可できる」としています。

そのため、更新事由の判断を、法務大臣の裁量に任せて、その裁量権の範囲を広汎なものとする趣旨であると解されます。

したがって、外国人の在留期間の更新について法務大臣の裁量権が認められます。

ただし、その裁量について、裁量権の範囲を超え又はその濫用があった場合、違法となります

そして、今回、法務大臣が、外国人の政治活動を斟酌して在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるものとはいえないと判断し、更新不許可の処分を下したわけですが、

今回の事案では、「裁量権の範囲を超え又はその濫用があったものということはできない」として、違法ではないとした。

※ 斟酌(しんしゃく)相手の事情や心情をよくくみとること

2.外国人にも人権の保障が及ぶか?

原則、外国人にも人権の保障は及ぶ

例外として、外国人在留制度の枠を超える部分は、人権保障が及ばない

判例では、「基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべき」としているので、原則、外国人にも人権保障が及びます。

しかし、外国人の人権保障は、外国人在留制度の枠内で与えられているにすぎず、外国人在留制度の枠を超える部分は、人権保障が及ばないとしています。

具体例が下記一定の政治活動の自由です。

「外国人在留制度の枠」については、個別指導で解説します!

3.外国人にも政治活動の自由の保障が及ぶか?

原則、外国人にも政治活動の自由を認めている

例外として、わが国の政治的意思決定または、その実施に影響を及ぼす活動などは、政治活動の自由の保障は及ばない

政治活動の自由についても、わが国の政治的意思決定または、その実施に影響を及ぼす活動など、外国人の地位にかんがみて、これを認めることが相当でないと解されるものを除いて、その保障が及びます

そして、今回の事案では、外国人Xの事実に対する法務大臣の不許可処分は、「明白に合理性に欠き、その判断が社会通念上著しく妥当性に欠くことが明らかである」とはいえないので、在留中の政治活動を理由に更新を不許可としたことは違憲ではない、とした。

※ かんがみる(鑑みる):先例や規範に照らし合わせる。他を参考にして考える

三菱樹脂事件をわかりやすく解説|私人間効力・判旨・論点【行政書士】

論点

  1. 私人間において、憲法の人権規定を直接適用できるか?
  2. 特定の思想を有することを理由に採用を拒否することは違法か?
  3. 会社の入社の選考にあたり、応募者の思想に関する事項を尋ねることは違法か?

事案

Xは、大学在学中に、三菱樹脂株式会社Yの採用試験に合格し、翌年、卒業後、Yに3か月の試用期間を設けて採用された。しかし、入社試験(面接など)の際に、「学生運動などの事実を秘匿する(隠す)虚偽の申告をしたこと」を理由に、本採用を拒否する旨の告知を受けた。そのため、Xは、労働契約関係存在の確認を求めて出訴した。

判決

私人間において、憲法の人権規定を直接適用できるか?

直接適用できない

憲法19条、14条(下記参照)は、もっぱら、「国または公共団体」と「個人」との関係を規律するものであり、私人相互の関係を直接規律するものではない。

もっとも、私人間の関係においても、相互の社会的力関係の相違から、会社Yが優越し、事実上、従業員Xが会社Yの意思に服従せざるを得ない場合もあるが、そのような場合にも、人権規定の適用・類推適用はできない。

なぜなら、私人間の事実上の支配関係は様々で、どのような場合に「国等の支配と同視すべきか」の判定が困難であるから。

ただし、私的支配関係において、個人の自由・平等に対する侵害がある場合には、民法1条の信義則や権利濫用民法90条の公序良俗不法行為に関する諸規定によって調整を図ることは可能である。

憲法第19条
思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

憲法第14条
すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

特定の思想を有することを理由に採用を拒否することは違法か?

違法ではない

憲法第22条(何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する)において、経済活動の自由を人権として保障している。

そのため、会社は、経済活動の一環として、契約締結の自由を有しており、「どのような労働者」を「どのような条件」で雇用するかを決定する自由がある。

したがって、会社が、特定の思想・信条を有するがゆえに、その者を雇うことを拒んでも、それを当然に違法とすることはできない。

会社の入社の選考にあたり、応募者の思想に関する事項を尋ねることは違法か?

違法ではない

上記の通り、労働者を採用するか否かの決定にあたり、労働者の思想・信条を調査し、そのためその者から関連する事項についての申告を求めることも違法ではない。

信教の自由とは?憲法20条の内容をわかりやすく解説【政教分離も】

憲法第20条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。 2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。 3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
信教の自由は、明治憲法でも規定されており、保障されていました。しかし、実際は、靖国神社を中心とする神道・神社が国教として扱われ優遇され、キリスト教のように弾圧された宗教もありました。そのような過去を踏まえて、日本国憲法では、個人の信教の自由を厚く保護しています。

信教の自由の内容

信教の自由には、下記3つがあります。下記3つは憲法20条で保障されています。
  1. 信仰の自由(特定の宗教を信じる自由、信仰を変える自由)
  2. 宗教的行為の自由(礼拝、祈祷等を行う自由、布教の自由)
  3. 宗教的結社の自由(宗教団体を設立する自由、宗教団体に加入する自由)
また、上記3つをしない自由も憲法20条によって保障されています。

信教の自由の限界

誰もが信教の自由を有することから、他人の人権と衝突することもあり得ます。そのため、上記の「宗教的行為の自由」と「宗教的結社の自由」の2つは、「公共の福祉」による制限を受ける場合があります。しかし、信教の自由は内心に関わることなので、その規制に対して、慎重でなければなりません。

公共の福祉とは?

日本国憲法は第12条の後半で次のように定めています。
憲法12条 国民は,これ(憲法で規定されている自由や権利:基本的人権)を濫用してはならないのであって,常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。
つまり、分かりやすくいうと、基本的人権は自分ひとりだけのものではないので、わたしたち国民は、他人の権利を侵害するような権利の使い方(=権利の濫用)をしてはいけません。国民には,社会全体がよくなる(=公共の福祉)ように、権利を利用する責任があるということです。 よって、「公共の福祉による制限」とは、社会全体がよくなるように、権利濫用を防ぐための規制ということです。 この点については、下記「オウム真理教解散命令事件」の判例を参考にしてみてください。

信教の自由に関する重要判例

  • 学生Xは、「エホバの証人」という宗教を信仰しており、宗教上の理由から、体育の剣道実技の授業の参加を拒否し、レポート提出等の代替措置を求めました。しかし、校長らはこれを認めず、体育の成績が認定されず、2年連続で留年(原級留置処分)となり、結果として、学則に従って退学処分となった。このことについて、学校教育における信教の自由の保障が争われた。 この点について最高裁は、「学生は、信仰の核心部分と密接に関連する真しな理由から履修を拒否したものであり、他の体育種目の履修は拒否しておらず、他の科目では成績優秀であった上、右各処分は、同人に重大な不利益を及ぼし、これを避けるためにはその信仰上の教義に反する行動を採ることを余儀なくさせるという性質を有するものであり、同人がレポート提出等の代替措置を認めて欲しい旨申し入れていたのに対し、学校側は、代替措置が不可能というわけでもないのに、これにつき何ら検討することもなく、右申入れを一切拒否したなど判示の事情の下においては、右各処分は、社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を超える違法なものというべきである。」として、レポート提出等他の手段が可能なのに、他の手段について何も検討することなく、留年・退学処分としたことは、裁量権の範囲を超え、違法だとした(最判平8.3.8.:エホバの証人剣道受講拒否事件
  • オウム真理教は、大量殺人を目的とした地下鉄サリン事件を起こした。この事件を受けて、オウム真理教に対する解散命令が出され、この解散命令が、宗教的結社の自由に対する制限ではないかと争われた。 この点について最高裁は、「解散命令によって宗教法人が解散しても、信者は法人格を有しない宗教団体を存続させ、あるいは、新たにこれを結成することは妨げられるわけではない。すなわち、解散命令は、信者の宗教上の行為を禁止したり制限したりする法的効果を一切伴わないのである。 ・・・・解散により、これらの財産を用いて信者らが行っていた宗教上の行為を継続するのに何らかの支障を生ずることがあり得る。このように、宗教法人に関する法的規制が、信者の宗教上の行為を法的に制約する効果を伴わないとしても、これに何らかの支障を生じさせることがあるとするならば、憲法の保障する精神的自由の一つとしての信教の自由の重要性に思いを致し、憲法がそのような規制を許容するものであるかどうかを慎重に吟味しなければならない。」 として、合憲だけれども、オウム真理教の解散により、宗教上の行為に支障が生じることもあるから、制限をかける場合は、慎重に吟味する必要性を主張した。(最決平8.1.30:オウム真理教解散命令事件
<<事前抑制と検閲(憲法21条2項) | 政教分離(憲法20条1項、3項)>>

信教の自由・政教分離に関するよくある質問

信教の自由とは?

信教の自由とは、憲法第20条で保障される基本的人権の一つで、①信仰の自由(特定の宗教を信じる・信じない自由)、②宗教的行為の自由(礼拝・祈祷・布教等の自由)、③宗教的結社の自由(宗教団体の設立・加入の自由)の3つを含みます。いずれも「しない自由」が含まれ、何人も宗教上の行為への参加を強制されません。ただし、宗教的行為の自由と宗教的結社の自由は、公共の福祉による制限を受ける場合があります。

政教分離とは?

政教分離とは、国家と宗教を分離し、国家の宗教的中立性を確保する憲法上の原則です。憲法第20条1項後段は宗教団体が国から特権を受けることや政治上の権力を行使することを禁止し、同条3項は国およびその機関による宗教教育・宗教的活動を禁止しています。さらに憲法第89条は、宗教上の組織・団体への公金支出を禁止しています。政教分離は、個人の信教の自由を間接的に保障するための制度的保障と解されており、行政書士試験でも頻出のテーマです。

砂川事件をわかりやすく解説|統治行為論・判旨・争点【行政書士試験】

論点

  1. 安全保障条約に司法審査が及ぶか?

事案

国は、米軍立川飛行場の拡張計画を考えていたが、当該計画に反対した砂川町の住民が反対運動をした。それにもかかわらず、国が拡張のための測量を開始したので、1000名以上の集団が境界柵の外側に集合し、その中の一部の者が境界柵を破壊した。破壊された境界柵から立ち入り禁止場所に入ったところ、この行為が法律に違反するとして、起訴された。

判決

安全保障条約に司法審査が及ぶか?

→及ばない

本件安全保障条約は、主権国としてのわが国の存立の基礎に極めて重大な関係をもつ高度の政治性を有するものというべきであって、安全保障条約の内容が違憲か否かの法的判断は、その条約を締結した内閣およびこれを承認した国会の高度の政治的ないし自由裁量的判断と表裏をなす。

れ故、右違憲か否かの法的判断は、司法裁判所の審査には、原則としてなじまない性質のものであり、一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外のものである

そして、本件安全保障条約は、違憲無効であることが一見きわめて明白であるとは到底認められないため、司法審査は及ばない。

朝日訴訟をわかりやすく解説|判旨・争点・プログラム規定説【行政書士試験】

朝日訴訟とは?

朝日訴訟(最大判昭42.5.24)とは、生活保護基準の合憲性が争われた憲法25条(生存権)に関するリーディングケースです。原告の朝日茂氏が、月額600円の生活扶助では「健康で文化的な最低限度の生活」を維持できないとして厚生大臣を相手に提訴しました。最高裁は、憲法25条は国の責務を宣言したものであり、直接個々の国民に具体的権利を賦与したものではないと判示し、いわゆるプログラム規定説の立場を採用した判決として知られています。行政書士試験では、生存権の法的性質・厚生大臣の裁量権・保護受給権の一身専属性の3点がくり返し出題されています。

朝日訴訟と堀木訴訟の比較表

比較項目 朝日訴訟(最大判昭42.5.24) 堀木訴訟(最大判昭57.7.7)
争点 生活保護基準(月600円)は憲法25条に違反しないか 障害福祉年金と児童扶養手当の併給禁止は憲法25条に違反しないか
25条の解釈 プログラム規定説を採用し、具体的権利性を否定 立法府の広い裁量を認め、明らかに合理性を欠く場合のみ違憲(広い立法裁量論)
裁量の範囲 厚生大臣の合目的的裁量に委ねられる 立法府の広範な裁量に委ねられる
違憲・違法となる基準 裁量権の逸脱・濫用がある場合 著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用がある場合
結論 原告死亡により訴訟終了(本案判断は傍論) 併給禁止規定は合憲
試験での頻出ポイント 保護受給権の一身専属性・プログラム規定説 立法裁量論・25条1項と2項の区別

論点

  1. 生活保護受給権に相続性はあるか?
  2. 生存権に法的権利性はあるか?
  3. どのような場合に違法な行為として司法審査の対象となるか?

事案

X(朝日茂氏)は、肺結核患者として、療養所に入所し、厚生大臣の認定した生活扶助基準で定められた最高金額である「月600円の日用品費の生活扶助」と「現物による給食付医療扶助」とを受けていた。

ところが、Xは、実兄から、毎月1500円の送金を受けるようになったため、市の社会福祉事務所長は、月600円の生活扶助を打ち切り、上記送金額から日用品費を控除した残額900円を医療費の一部としてXに負担させる旨の保護変更の決定をした。

それに対して、Xは、厚生大臣を被告として600円の基準金額が生活保護法の規定する「健康で文化的な最低限度の生活水準」を維持するに足りないものであると主張して、訴えを提起した。

判決

生活保護受給権に相続性はあるか?

→ない

生活保護法に基づく保護受給権は、法的権利である。

しかし、この権利は、被保護者個人に与えられた一身専属の権利である。

したがって、本件訴訟は、Xの死亡と同時に終了し、相続人が保護受給権を承継する余地はない。

生存権に法的権利性はあるか?

→ない

憲法25条1項はすべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得るように国政を運営すべきことを国の責務として宣言したにとどまり、直接個々の国民に具体的権利を賦与したものではない。

具体的権利としては、生活保護法によりはじめて与えられる。

※つまり、「生存権自体は法的権利性はないが、生活保護法で規定されることで、法的権利性が与えられる」ということです。

25条の法的権利性を否定している点では、プログラム規定説を採用しているといえる。

どのような場合に違法な行為として司法審査の対象となるか?

憲法および生活保護法の趣旨・目的に反し、法律によって与えられた裁量権の限界をこえた場合または裁量権を濫用した場合

何が健康で文化的な最低限度の生活であるかの認定判断は、いちおう、厚生大臣の合目的的な裁量に委されている。

そして、その判断は、当不当の問題として政府の政治責任が問われることはあっても、直ちに違法の問題を生ずることはない。

ただ、現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定する等憲法および生活保護法の趣旨・目的に反し、①法律によって与えられた裁量権の限界をこえた場合または②裁量権を濫用した場合には、違法な行為として司法審査の対象となる。

判決文の全文はこちら>>

関連ページ

>>関連判例:最大判昭57.7.7:堀木訴訟(障害年金と児童扶養手当の併給禁止が生存権に違反しないか)

>>生存権(憲法25条)プログラム規定説・抽象的権

取締役

取締役とは、会社の具体的な業務に関する意思決定を行い、現実に業務執行を行う機関です。

取締役の資格

取締役の資格とは、誰が取締役になれるのか?ということです。この点について会社法では、下記のいずれかに該当する場合、取締役になれないと規定しています(331条1項)。そして、下記事由を欠格事由と言います。

  1. 法人
  2. 会社法等の法律に違反し、または一定の罪を犯し、罰金刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
  3. 拘禁刑以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く。)等

取締役の選任

取締役の選任は、株主総会の専属決議事項とされています(329条)。つまり、株主総会でしか決議できません。そして、決議の方法は普通決議です。

そして、上記普通決議の内容については定款の定めにより変更ができます。

定足数については、議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1まで下げることができます。3分の1未満にはできません。

また、決議要件について、出席した当該株主の議決権の過半数を上回る割合を定款で定めることができます(341条)。

取締役の選任については、累積投票制度が認められています(342条)。

取締役の解任

解任とは、任期の途中にその役職を解かれること・やめさせることを言います。

そして、取締役の解任については、①株主総会決議による解任と②解任の訴えの2つの場合があります。

株主総会における解任決議

取締役は、いつでも、株主総会の普通決議によって解任することができます(339条1項)。

ただし、累積投票で選任された取締役の解任の場合、特別決議が必要です(309条2項7号)。

正当な理由なく株主総会決議により解任された者は、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができます(339条2項)。

役員解任の訴え

少数株主は、取締役解任の訴えを行うことにより、取締役の解任を行うことができます。

これは、悪いことをした取締役が、会社内で力を持っている者の場合、株主総会決議をしても、その取締役を恐れて、賛成票を入れず否決されることがあります。

そのような場合に備えて、裁判所に訴えることができるようにしています。

役員に欠員が生じた場合

役員(取締役又は会計参与)が欠けた場合、または定款で定めた役員の員数が欠けた場合には、任期の満了または辞任により退任した役員は、新たに選任された役員が就任するまで、なお役員としての権利義務を有します346条1項)。

悪いことをして解任となった場合は、上記ルールは適用されず、役員としての権利義務はなくなります

辞任とは、自らの意思でやめることです。

取締役の員数

非取締役会設置会社では、1人又は2人以上の取締役を置かなければなりません(326条)。つまり、1人以上置かなければならないということです。

取締役会設置会社では3人以上の取締役を置かなければなりません(331条5項)。

取締役の任期

取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までです。ただし、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することはできます332条1項)。

言い換えると、取締役の任期は最長「選任の日から2年」ということです。

「非公開株式会社」かつ「監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社でない」場合

「非公開株式会社」かつ「監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社でない株式会社」については、定款によって、任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長(延長)することができます(332条2項)。

監査等委員会設置会社の場合

監査等委員会設置会社の場合、

監査等委員の取締役は、原則、任期2年ですが
監査等委員でない取締役は、原則、任期1年とされています(332条3項)。

指名委員会等設置会社の場合

指名委員会等設置会社の取締役は、任期は原則1年ですが、定款または株主総会決議により、任期を短縮できます(332条1項)。

取締役の地位と権限

取締役の地位や権限については、非取締役会設置会社、取締役会設置会社、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社によって異なります。

これは分かりやすいように、下表のように、「意思決定機関」「業務執行機関」「代表者」と分けて考えると覚えやすいです。

非取締役会設置会社における取締役

取締役会がない場合、会社の業務の意思決定は、原則、取締役が行います。もし、取締役が2人以上いる場合、過半数をもって決定します(348条1項)。

ただし、定款の別段の定めがあれば、それに従います。

そして、非取締役会設置会社の代表者については、
原則、各取締役が会社を代表します。
例外として、代表取締役が定まっている場合、代表取締役が会社を代表します(349条1項2項)。

取締役会設置会社における取締役

取締役会設置会社では、取締役会が会社の業務の意思決定を行うので、取締役個人としては、あくまでも取締役会の構成員として、意思決定の議決権を持つにすぎないことになります(362条)。

業務の執行についても、基本的には取締役の中から選ばれた代表取締役が行います。
※指名委員会等設置会社の場合は、執行役が業務の執行を行います(418条)。

取締役の義務

取締役は下記義務および下記規制を負います。

  1. 善管注意義務
  2. 忠実義務
  3. 競業取引の禁止
  4. 利益相反取引の禁止

善管注意義務

会社と取締役の関係は、委任の規定に従います(330条)。

つまり、「会社=委任者」「取締役=受任者」という関係が成立します。

そうすると、受任者たる取締役は、委任者たる会社に対して善良なる管理者の注意義務(善管注意義務)を負います(民法644条)。

もし、取締役が善管注意義務を怠り、会社に損害を与えた場合、債務不履行により損害賠償義務を負うこととなります(民法415条)。

忠実義務

忠実義務とは、法令および定款・株主総会決議を遵守し、会社のために忠実にその職を行わなければならないという義務を言います(335条)。

判例では、忠実義務は、善管注意義務を、より明確に注意的に規定したものに過ぎず善管注意義務とは別個のより高度な注意義務を取締役に課したものではない、としています(最大判昭45.6.24)。

つまり、善管注意義務と忠実義務は同質の義務であるということです。

競業取引の禁止(競業避止義務)

取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき、株主総会(取締役会設置会社においては取締役会)において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければなりません(356条1項1号)。

「自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引」とは、「競業取引」のことを指します。

例えば、株式会社Aがホームページの作成事業を行っており、取締役Bは、自らホームページ作成事業を立ち上げたり、他のホームページ作成業者Cの代表取締役に就任して、ホームページの作成事業を行ったりしてはいけない、ということです。

このような義務を競業避止義務(きょうぎょうひしぎむ)と言います。

承認を得ずに競業取引を行った場合どうなるか?(競業取引の効果)

株主総会・取締役会の承認を要する競業取引であるにも関わらず、承認を得ずに取引を行った取締役は、会社に損害が生じた場合、任務懈怠による損害賠償責任を負うことになります(432条1項)。

その場合、「取締役が得た利益」又は「第三者が得た利益」の額が損害額と推定され、損害賠償請求の対象となります。

つまり、競業取引自体は有効だが、損害賠償で処理するということです。

利益相反取引の禁止

利益相反取引とは、取締役と会社の利益が相反する取引を言います。

つまり、取締役が利益を得て、会社が不利益を被る取引のことです。

例えば、会社の所有する土地を取締役が安く購入する契約等です。

この場合も、株主総会(取締役会設置会社においては取締役会)において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければなりません(356条1項3号)。

利益相反取引の効果

利益相反取引については、会社は原則として取締役に対して無効を主張することができます。

一方、会社は、承認がなかったことを知らない第三者に対して無効を主張できません

取締役の報酬

取締役の報酬は、定款または株主総会の決議により定めなければなりません(361条1項)。

つまり、定款の定めがない場合、株主総会決議で決めるということです。

取締役会決議では決めることができません

なぜなら、それができると、取締役が自分達の報酬を決めることができるようになり、不当に高額にして会社の経営に影響を及ぼす恐れがあるからです。

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行政上の強制手段

行政の目的を達成するために、国民に任意にしてもらいたい場合や、義務として行ってもらいたい場合があります。それにも関わらず、国民が思うように行ってくれないときに、行政機関は行政上の強制手段を発動して、行政の目的を達成させることができます。

例えば、お酒の飲みすぎで、路上で寝ている人がいた場合、このまま放ってい置いては、車を運転する人の迷惑になります。そのために、警察官が、路上で寝ている人を、強制的に安全な場所に運びます。これも行政上の強制手段です。その他にも色々あるので、その点を解説していきます。

行政上の強制手段には、大きく分けて「行政強制」と「行政罰」の2つに分けることができます。

行政強制と行政罰

行政強制とは、将来に向けて、行政目的を達成するための行為です。

一方、
行政罰は、過去の義務違反に対する制裁です。

行政強制はさらに、行政上の強制執行(①代執行・②執行罰・③直接強制・④行政上の強制徴収)と即時強制に分けることができます。

行政上の強制執行と即時強制の違い

行政上の強制執行は、義務が課されているにもかかわらず、その義務を履行しない場合に、行政庁が実力行使して義務を履行させます。

一方、
即時強制は、義務が課されていないけど、相手方の身体や財産に実力行使することです。上の例にもある、路上で寝ている人がいた場合に、警察官が安全な場所に移動させる行為が即時強制です。

行政上の強制執行

行政上の強制執行は、①代執行・②執行罰・③直接強制・④行政上の強制徴収の4種類あるのですが、どれも、義務が課されているにもかかわらず、その義務を履行しない場合の話です。そして、上記4つすべてについて言えることは、法律の根拠がなければ行うことができないということです。それでは、具体例を使いながら解説していきます。

代執行

 

代執行とは、代替的作為義務が履行されない場合に、「行政庁もしくは第三者」が自ら、義務者に代わって義務を履行し、その費用を義務者から徴収することを言います。

例えば、Aが所有する建物が建築基準法違反で、いつ倒壊してもおかしくない状況にあったとします。

この場合、市長は、Aに対して「建物を除去しなさい!」と除去命令が下すことができます。

この除去命令を受けたAは、除去する義務が発生します。それでも、Aが、建物を除去しない場合、

(Ⅰ)市長(行政庁)は「1か月以内に除去しないのであれば、代執行(市が強制的に除去)をします!」と文書で戒告(お知らせ)をします。

(Ⅱ)それでもAが除去しない場合、「それでは、代執行を行います!」と代執行令書を使って、Aに通知します。

(Ⅲ)市は、代執行を行います(強制的に、建物の取り壊しを行う)。

(Ⅳ)かかった費用については、Aから徴収します。

ここで行政書士試験で出題される内容は、上記の細かい流れです。

(Ⅰ)文書で戒告・(Ⅱ)代執行令書による通知

行政庁は、相当期間を定めて、文書で戒告します。ただし、例外として、非常の場合、または、危険切迫の場合は、(Ⅰ)戒告と(Ⅱ)代執行令書による通知を省略できます。

(Ⅲ)代執行

代執行を実際に行う執行責任者は、証票を携帯し、要求があるときは、いつでもこれを呈示しなければなりません。

(Ⅳ)費用の徴収

代執行に実際に要した費用を、納期日を定め、義務者に対して、文書をもって納付を命じます。期限内に納付がない場合は、国税滞納処分の例により、義務者から強制徴収をすることができます。

※国税滞納処分の例とは、「国税徴収法に規定されている、納税義務者が納税しない場合の手続きに従って」という意味です。

執行罰

執行罰とは、義務の不履行に対して、過料を科すことを予告し、その予告によって、義務者に心理的圧迫を加えて間接的に義務の履行を強制することを言います。

「罰」という漢字が含まれていますが、「罰」ではありません。もし、義務を履行すれば、過料を取られることはないからです。ただし、義務を履行しないと、何度も過料を科されることがあるので注意が必要です。イメージとしては、DVDの延滞料です。DVDを期限までに返却すれば延滞料を取られませんが、延滞すると、毎日、延滞料がずっと科されます。

実際、執行罰は、砂防法36条しかありません。

砂防法36条 私人ニ於テ此ノ法律若ハ此ノ法律ニ基キテ発スル命令ニ依ル義務ヲ怠ルトキハ国土交通大臣若ハ都道府県知事ハ一定ノ期限ヲ示シ若シ期限内ニ履行セサルトキ若ハ之ヲ履行スルモ不充分ナルトキハ五百円以内ニ於テ指定シタル過料ニ処スルコトヲ予告シテ其ノ履行ヲ命スルコトヲ得

砂防法等の命令による義務を怠ると、国土交通大臣もしくは知事は、一定期限を示す等して、500円以内の過料に処することを予告して、履行を命ずることができる

執行罰は、行政刑罰と併科しても二重処罰の禁止規定(憲法39条後段)には違反しません

直接強制

直接強制とは、行政上の義務を義務者が履行しない場合に、行政庁が、義務者の身体又は財産に実力を加えて、義務の履行があったとみなす行為を言います。有名な事例は、成田国際空港の安全確保に関する緊急措置法3条です。

1項 国土交通大臣は、規制区域内に所在する建築物その他の工作物について、その工作物が次の各号に掲げる用に供され、又は供されるおそれがあると認めるときは、当該工作物の所有者、管理者又は占有者に対して、期限を付して、当該工作物をその用に供することを禁止することを命ずることができる。
一 多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用
二 暴力主義的破壊活動等に使用され、又は使用されるおそれがあると認められる爆発物、火炎びん等の物の製造又は保管の場所の用
三 成田国際空港又はその周辺における航空機の航行に対する暴力主義的破壊活動者による妨害の用

6項 国土交通大臣は、第一項の禁止命令に係る工作物が当該命令に違反して同項各号に掲げる用に供されていると認めるときは、当該工作物について封鎖その他その用に供させないために必要な措置(建物の実力封鎖)を講ずることができる

行政上の強制徴収

行政上の強制徴収とは、国民が、行政上の金銭納付義務を履行しない場合に、行政庁が、自ら強制的に徴収し、当該国民は義務を果たしたことにすることを言います。

例えば、税金を滞納している人がいた場合、滞納者の財産を差押えて、競売にかけて得られた代金で納税することが強制徴収です。

行政上の金銭納付義務とは

道路占有料河川占有料放置違反金等があります。

水道料金は民事上の話なので、民事上の強制執行の対象となるので注意しましょう!

また、行政上の金銭納付義務については、行政上の強制徴収の手段によって行う必要があり、民事上の強制執行によって行うことはできません

即時強制

即時強制とは、義務を命じる余裕のない緊急の必要がある場合に、行政機関が、国民に義務を課することなく、国民の身体や財産に実力行使することを言います。

上記の通り、国民の身体や財産に実力行使するので、即時強制を行うには「法律の根拠」もしくは「条例で定めていること」が必要です。

例えば、路上で寝ている人がいた場合に、「起きて路上から離れてください!」と義務を命じていては、それまでに車にひかれてしまうかもしれません。緊急で路上から離れさせる必要があります。実際、警察官職務執行法の3条に上記内容が規定されています。

第三条 警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して左の各号の一に該当することが明らかであり、且つ、応急の救護を要すると信ずるに足りる相当な理由のある者を発見したときは、とりあえず警察署、病院、精神病者収容施設、救護施設等の適当な場所において、これを保護しなければならない。
一 精神錯乱又はでい酔のため、自己又は他人の生命、身体又は財産に危害を及ぼす虞(おそれ)のある者
二 迷い子、病人、負傷者等で適当な保護者を伴わず、応急の救護を要すると認められる者(本人がこれを拒んだ場合を除く。)

行政罰

行政罰とは、過去の義務違反に対する制裁です。そして、行政罰には「行政刑罰」と「行政上の秩序罰」の2つがあります。

※公務員に対する懲戒解雇などは「懲戒罰」なので、行政罰ではありません。

執行罰と行政罰の違い

執行罰は、行政強制の一つなので、将来に向けて、行政目的を達成するための行為です。簡単にいえば、将来、義務を履行しないと罰を加えますよ!という内容です。

一方、
行政罰は、過去の義務違反に対する制裁です。もうすでに、義務違反をしたから、それに対して罰を加えます!という内容です。

行政刑罰

行政刑罰とは、刑法に定めのある刑罰を科すものを言います。具体的には、拘禁、罰金、拘留、科料です。そして、行政刑罰は、刑法総則の規定が適用され、刑事訴訟法の定める手続きによって科されることになります。ただし、例外的に、大量に生じる軽微な違反事件(例えば、国税犯則取締法に基づく通告処分等)は刑事訴訟法によらない簡易的な手続きが定められています。

また、行政刑罰の特徴として、違反行為者のほか、その使用主や事業主も科刑される「両罰規定」が置かれていることが多いです。例えば、宅建業法84条です。

第84条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
一 第79条又は第79条の2 一億円以下の罰金刑

第79条 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の拘禁若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 不正の手段によって免許を受けた場合
二 無免許で宅建業を営んだ場合
三 自己の名義をもって他人に宅建業を営ませた場合
四 業務の停止命令に違反して業務を営んだ場合

第79条の2 重要事項について故意に事実を告げず、または不実のことを告げた者は、二年以下の拘禁若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

行政上の秩序罰

行政上の秩序罰とは、形式的で軽微な行政上の義務違反に対して課される過料のことです。例えば、届出義務や登録義務、通知義務に違反した場合です。

そして、科料は刑罰ですが、過料は刑罰ではありません。そのため、
法令に基づく過料は、非訟事件手続法によって地方裁判所が科します。

一方、地方公共団体の条例や規則に違反した場合、地方自治法の定めに基づいて、地方公共団体の長が行政処分として科します。

そして、「秩序罰による過料」と「行政刑罰」は、目的や要件が異なるため併科してもよいです。

会期の種類、議決の方法(定足数と表決数)

会期の種類

会期とは、国会の活動期間で、一年中国会を開いているわけではありません。一定の限られた期間のみ国会は開かれています。

そして、会期には、下記4つがあります。

  1. 毎年1回定期に召集される常会
  2. 必要に応じて臨時的に召集される臨時会
  3. 衆議院解散後、総選挙が行われた後に召集される特別会
  4. 衆議院が解散すると同時に参議院は閉会となるが、国に緊急の必要があるとき、参議院のみ召集される緊急集会

常会

憲法第52条
国会の常会は、毎年一回これを召集する。

常会は、一般的に通常国会と呼ばれることが多いです。そして、国会法で「毎年1月に召集される」ことと、「会期は150日」であることが規定されています。

臨時会

憲法第53条
内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。

常会は上記の通り、1年のうち150日しか行いません。閉会した後も、国会の活動を必要とする自体が生じることもあります。そのような場合に、臨時会を行います。臨時会は、衆議院もしくは参議院のいずれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があった場合、内閣は臨時会の召集決定をしなければなりません。

特別会

憲法第54条
衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。

衆議院が解散すると、解散の日から40日以内に、衆議院議員の総選挙が行われます。そして、その選挙の日に新しい議員が当選するのですが、その選挙の日から30日以内に国会を召集しなければなりません。ここで召集される国会が特別会です。

任期満了(4年経過)に伴う衆議院の総選挙後に召集される国会は臨時会です。


緊急集会

憲法第54条
2 衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。
3 前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。

まず、衆議院が解散すると、同時に参議院は閉会となります。つまり、特別会が召集されるまで、国会は活動停止状態です。その間に、戦争になったり、大規模災害が起こったりして、急遽国会を開かないといけない場合、衆議院は解散しているので、衆議院議員は一人もいません。そのため、参議院が国会の役割を代行して、国会を開きます。これが緊急集会です。

そして、緊急集会を召集するのは、内閣です。天皇ではありません。

また、臨時会のように議員の召集要求も不要です。

緊急集会で議決されたことは、あくまでも臨時的な措置にすぎないので、その後、衆議院の同意を得られなければ、その効力を失います

会議の原則(定足数と表決数)

定足数

憲法第56条
両議院は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。

定足数とは、会議を開いて、議決するために必要な、最小限度の出席人数です。

議事を開いて(審議して)、議決をするためには、衆議院議員と参議院議員の合計人数の3分の1以上の出席が必要です。これに満たない場合、議事を開くことができません(審議することができない)。

表決数

表決数とは、意思決定を行う上で必要な賛成数です。原則、表決は、出席議員の過半数で決めます。総議員の過半数ではないので注意しましょう!

ただし、憲法に特別の定めがある場合(例外)もあります。

資格訴訟の裁判で
議員議席を失われること
出席議員の3分の2以上の議決
秘密会の開催 出席議員の3分の2以上の議決
議員の除名 出席議員の3分の2以上の議決
衆議院の法律案の再可決 出席議員の3分の2以上の可決
憲法改正の発議 総議員の3分の2以上の賛成
各議員の表決を
会議録へ記載すること
出席議員の5分の1以上の賛成
臨時会の召集 いずれかの議院の総議員の4分の1以上の要求

資格争訟裁判とは?

衆議院議員や参議院議員が、国会議員となる資格を有しているか(例えば、公務員と兼務していないか)を審議する裁判です。ここで、国会議員の議席を失われるためには、出席議員の3分の2以上の賛成が必要です。

秘密会とは?

衆議院も参議院も、会議は公開が原則です。しかし、会議を公開せずに、秘密で会議を行うことも可能です。この秘密会にするために必要な議決が「出席議員の3分の2以上の議決」です。実際、国会で秘密会を開催した事例はありません。

議員除名とは?

「資格争訟裁判」では、年齢が25歳未満であったり、国籍が外国籍であったり、他の公務員と兼職していたりといった、本来なら議員として選ばれるはずもない者が議員になったような場合の話です。一方、「議員除名」は、議員が非行を行った場合に、その議員に対して懲罰として行うことです。議員除名も資格争訟裁判同様、出席議員の3分の2以上の議決が必要です。

衆議院の法律案の再可決とは?

法律案については、衆議院で可決した後に、参議院で否決されると、衆議院で再度審議します。ここで、出席議員の3分の2以上の多数で、再度可決すると、無事、法律となります。

憲法改正の発議とは?

国会議員(衆議院100人以上、参議院50人以上)の賛成により憲法改正案の原案が提出され、衆参各議院においてそれぞれ憲法審査会で審査されたのちに、本会議で審議します。

両院それぞれの本会議にて 3分の2以上の賛成で可決した場合、国会が国民に対して、この改正案でどうですか?と提案します。これが「憲法改正の発議」です。

この発議後60日から180日の間に国民投票を行い議決します。

憲法改正案に対する賛成の投票の数が、投票総数(賛成の投票数と反対の投票数を合計した数)の2分の1を超えた場合は、国民の承認があったものとなり、憲法が改正されます。

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