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行政不服審査法43条:行政不服審査会等への諮問

このページでは、行政不服審査会への諮問(しもん)について解説します。まず、審査請求からの裁決の下記流れをご覧ください。今回は8の諮問の内容です。この流れは行政書士試験で合格するために重要な流れなので、必ず頭に入れましょう!

審査請求から裁決までの流れ

処分が行われ、その処分に不服があると、下記流れで審査請求が行われます。

  1. 審査請求人は審査請求書を審査庁に提出します。
  2. 審査庁は審査請求書に不備がないかを審査します。
  3. 不備がなければ審査庁は、審査請求の手続きを担当する審理員を指名します。
  4. 審理員は処分庁に審査請求書を送付します。
  5. 処分庁は審理員に弁明書を提出します。
  6. 審査請求人は審理員に反論書を提出します。
  7. 審理員は審査庁に審理員意見書を提出


行政不服審査会等への諮問

審査庁が審理員意見書の提出を受けたときは、行政不服審査会等に諮問(しもん)しなければなりません。諮問とは、意見を尋ね求めることです。

この手続きは、審査庁が裁決をする前に、行政不服審査会等の第三者機関に対してお伺いを立てて、その意見を踏まえた上で最終的な判断を下すためです。

これは、客観的で公正な判断を下すためのルールで、平成26年の法改正により設けられました。

審査庁が「合議制の機関(例えば〇〇委員会)」である場合等は、行政不服審査会への諮問不要です

諮問機関(誰に諮問するか?)

上図では、「行政不服審査会」となっていますが、審査庁が地方公共団体の長である場合、地方公共団体に設置された付属機関に諮問することになります。

(行政不服審査会等への諮問)
行政不服審査法第43条 審査庁は、審理員意見書の提出を受けたときは、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、審査庁が主任の大臣又は宮内庁長官若しくは内閣府設置法第49条第1項若しくは第2項若しくは国家行政組織法第3条第2項に規定する庁の長である場合にあっては行政不服審査会に、審査庁が地方公共団体の長(地方公共団体の組合にあっては、長、管理者又は理事会)である場合にあっては第81条第1項又は第2項の機関に、それぞれ諮問しなければならない。
一 審査請求に係る処分をしようとするときに他の法律又は政令(条例に基づく処分については、条例)に第九条第1項各号に掲げる機関若しくは地方公共団体の議会又はこれらの機関に類するものとして政令で定めるもの(以下「審議会等」という。)の議を経るべき旨又は経ることができる旨の定めがあり、かつ、当該議を経て当該処分がされた場合
二 裁決をしようとするときに他の法律又は政令(条例に基づく処分については、条例)に第九条第1項各号に掲げる機関若しくは地方公共団体の議会又はこれらの機関に類するものとして政令で定めるものの議を経るべき旨又は経ることができる旨の定めがあり、かつ、当該議を経て裁決をしようとする場合
三 第46条第3項又は第49条第4項の規定により審議会等の議を経て裁決をしようとする場合
四 審査請求人から、行政不服審査会又は第81条第1項若しくは第2項の機関(以下「行政不服審査会等」という。)への諮問を希望しない旨の申出がされている場合(参加人から、行政不服審査会等に諮問しないことについて反対する旨の申出がされている場合を除く。)
五 審査請求が、行政不服審査会等によって、国民の権利利益及び行政の運営に対する影響の程度その他当該事件の性質を勘案して、諮問を要しないものと認められたものである場合
六 審査請求が不適法であり、却下する場合
七 第46条第1項の規定により審査請求に係る処分(法令に基づく申請を却下し、又は棄却する処分及び事実上の行為を除く。)の全部を取り消し、又は第47条第1号若しくは第2号の規定により審査請求に係る事実上の行為の全部を撤廃すべき旨を命じ、若しくは撤廃することとする場合(当該処分の全部を取り消すこと又は当該事実上の行為の全部を撤廃すべき旨を命じ、若しくは撤廃することについて反対する旨の意見書が提出されている場合及び口頭意見陳述においてその旨の意見が述べられている場合を除く。)
八 第46条第2項各号又は第49条第3項各号に定める措置(法令に基づく申請の全部を認容すべき旨を命じ、又は認容するものに限る。)をとることとする場合(当該申請の全部を認容することについて反対する旨の意見書が提出されている場合及び口頭意見陳述においてその旨の意見が述べられている場合を除く。)
2 前項の規定による諮問は、審理員意見書及び事件記録の写しを添えてしなければならない。
3 第1項の規定により諮問をした審査庁は、審理関係人(処分庁等が審査庁である場合にあっては、審査請求人及び参加人)に対し、当該諮問をした旨を通知するとともに、審理員意見書の写しを送付しなければならない。

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居住・移転の自由、海外渡航の自由、国籍離脱の自由(憲法22条)

憲法第22条
何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
2 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。

居住・移転の自由

居住・移転の自由とは、自己の住所または居所を自由に決定し、移動することができる自由を言います。また、国内旅行の自由も含まれます。

海外渡航の自由

海外渡航の自由は、「一時的な外国旅行の自由」と「外国に住所を移す海外移住の自由」を指し、22条2項で保障されています。

国籍離脱の自由

国籍離脱の自由について、日本国籍を失って無国籍になる自由までは含まれないと解されています。そのため、日本国籍を離脱する場合には、どこかの国の国籍を取得していなければなりません。

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幸福追求権(憲法13条)プライバシー権など

憲法第13条
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

憲法13条(幸福追求権)は、上記の通り、非常に抽象的で分かりにくい内容です。

しかし、このように抽象的な内容であるがゆえに、社会・経済の変動によって生じた様々問題に対して法的に対応することが可能であるのも事実です。

その結果、憲法13条(幸福追求権)は、憲法に列挙されていない新しい人権の根拠となる一般的かつ包括的な権利であり、この幸福追求権によって基礎づけられている個々の権利は裁判上の救済を受けることができる具体的権利(憲法上保障される権利)であると解されています。

幸福追求権の内容

幸福追求権については、憲法13条後段において「生命,自由及び幸福追求に対する国民の権利」として保障しています。
つまり、具体的に、憲法で保障されているということです。
その具体的な権利の内容については、2つの考え方(一般的行為自由説人格的利益説)があります。

  • 一般的行為自由説あらゆる生活領域に関する行為の自由を保障するという考え方
  • 人格的利益説:個人の人格的生存に不可欠な行為の自由を保障するという考え方(通説)

幸福追求権から導きだされる具体的な人権

幸福追求権から導き出される具体的な権利は、プライバシーの権利、環境権、日照権等色々ありますが、最高裁の判例で、「プライバシーの権利としての肖像権」については、憲法上保障される権利としています(最大判昭44.12.24:京都府学連事件)。

この幸福追求権については、判例を押さえることが行政書士に合格するために重要となってきますので、判例を勉強してきましょう!

プライバシー権の2つの側面

プライバシー権利は、「消極的な権利としての側面」と「積極的な権利としての側面」2つの側面を持っています。

  • 消極的側面:受動的な権利で、誰かに侵害されたときに損害賠償などをすることができる権利を言います。
  • 積極的側面:能動的な権利(自分の情報をコントロールする権利)で、積極的に情報公開や削除などを求める権利を言います。

幸福追求権に関する重要判例

  • デモ隊の大学生Xは、「行進隊列は4列縦隊とすること」という条件付きで許可をもらって、デモ隊を誘導していた。その後、機動隊ともみあいになって、隊列が崩れた。これを許可条件に違反すると判断して、警察官は、デモ隊を写真で撮影した。この撮影行為は、肖像権を侵害するではないかということで争いになった。これについて、最高裁は、「何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由を有し、警察官が、正当な理由もないのに、個人の容ぼう等を撮影することは、憲法一三条の趣旨に反し許されない」として、プライバシーの権利としての肖像権を憲法上保障される権利と認めた。(最大判昭44.12.24:京都府学連事件
  • アメリカ人Xが、日本で新規の外国人登録をしようとした。その登録の際に、提出書類に指紋押なつを拒否したため、外国人登録法違反で起訴された。これに対して、指紋押捺制度は憲法13条に違反すると主張して、争われた。最高裁は、「何人も個人の私生活上の自由の一つとしてみだりに指紋の押なつを強制されない自由を有し、国家機関が正当な理由もなく指紋の押なつを強制することは、憲法一三条の趣旨に反し許されない。」として、プライバシー権を憲法上保障される権利として認めた。(最判平7.12.15:指紋押捺拒否事件
  • Xが会社Yを解雇され、XはYを相手に、解雇は不当だと争った。Yの弁護士は、弁護士会を通じて京都市伏見区役所にXの前科・犯罪経歴の照会を行った。それに対して、区長は、前科・犯罪経歴を回答した。Xは、この区長の「前科・犯罪経歴を回答した事実」がプライバシー権侵害にならないかが争った。これに対して、最高裁は、「前科及び犯罪経歴は、人の名誉・信用に直接にかかわる事項であり、前科等のある者もこれをみだりに公開されないという法律上の保護に値する利益を有する。」また、「市区町村長が漫然と弁護士会の照会に応じ、犯罪の種類、軽重を問わず、前科等のすべてを報告することは、公権力の違法な行使にあたると解するのが相当である。」とし、区長の照会の違法性を認めた。(最判昭56.4.14:前科照会事件)
  • 傷害致死事件の犯人Xを題材にしたノンフィクション小説「逆転」の中に実名で記された人物Xが、プライバシーの権利を侵害されたとして、慰謝料を請求し、争われた。最高裁は 「前科等に関わる事実を公表されないことは、法的保護に値する利益を有する」とし、「前科等にかかわる事実を公表されない法的利益がこれを公表する理由に優越するときは、Xは、その公表によって被った精神的苦痛の賠償を求めることができる。」とした。(最判平6.2.8:ノンフィクション「逆転」事件
  • 宗教上の理由で輸血を拒否していたエホバの証人の信者が、手術の際に無断で輸血を行った医師、病院に対して損害賠償を求め、争われた。最高裁は「患者が、輸血を受けることは自己の宗教上の信念に反するとして、輸血を伴う医療行為を拒否するとの明確な意思を有している場合、このような意思決定をする権利は、人格権の一内容として尊重されなければならない。」とした。(最判平12.2.29:エホバの証人輸血拒否事件
  • 民法750条では、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。」と夫婦の姓は同じにするように規定しています。これに対して、夫婦同姓の強制(氏の変更を強制されない自由)は憲法13条の権利として保障される人格権の一内容である「氏の変更を強制されない自由」を不当に侵害しているのではないかと争われた。この点について、最高裁は、「氏に,名とは切り離された存在として社会の構成要素である家族の呼称としての意義があることからすれば、氏が、親子関係など一定の身分関係を反映し、婚姻を含めた身分関係の変動に伴って改められることがあり得ることは、その性質上予定されているといえる。この氏の性質等に鑑みると、婚姻の際に氏の変更を強制されない自由が憲法上の権利として保障される人格権の一内容であるとはいえない」として、本件規定は憲法13条に違反するものではないとした。(最大判平27.12.16:夫婦別姓訴訟)

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行政不服審査法20条:口頭による審査請求

行政不服審査法20条「口頭による審査請求」の内容は、簡単な内容なので覚えてしまいましょう!ただ、行政書士試験ではあまり出題されない部分です。ただし、難しくないので出題されたら必ず得点できるようにしましょう!

口頭で審査請求をする場合、行政不服審査法19条の「処分における審査請求書の記載内容」と「不作為における審査請求書の記載内容」を陳述し(口頭で伝え)、行政庁は、その内容を記録します。記録が終わったら、陳述人(口頭で話した者)に読み聞かせを行い誤りがないかを確認させなければなりません。

(口頭による審査請求)
行政不服審査法第20条 口頭で審査請求をする場合には、前条第2項から第5項までに規定する事項を陳述しなければならない。この場合において、陳述を受けた行政庁は、その陳述の内容を録取し、これを陳述人に読み聞かせて誤りのないことを確認しなければならない。

<<行政不服審査法19条:審査請求書の提出 | 行政不服審査法21条:処分庁等を経由する審査請求>>

行政不服審査法7条:適用除外

行政不服審査法7条は、下記事項は「2条・3条の規定を適用しない」としています。どういうことかというと、下記事項については、審査請求できないということです。

では、どういった場合に審査請求ができないのか?

審査請求ができない場合

  1. 国会若しくは地方議会の議決によってされる処分
  2. 裁判により、又は裁判の執行としてされる処分
  3. 国会若しくは地方議会の議決又は同意等を経てされる処分
  4. 検査官会議で決すべきものとされている処分
  5. 当事者間の法律関係を確認し、又は形成する処分で、法令の規定により当該処分に関する訴え(形式的当事者訴訟)においてその法律関係の当事者の一方を被告とすべきものと定められているもの
  6. 刑事事件に関する検察官等がする処分
  7. 国税又は地方税の犯則事件に関する処分
    金融商品取引の犯則事件に関する処分
  8. 学校講習所訓練所又は研修所で、学生、生徒、児童若しくは幼児若しくはこれらの保護者、講習生、訓練生又は研修生に対してされる処分
  9. 刑務所、少年刑務所、拘置所、留置施設、海上保安留置施設、少年院、少年鑑別所又は婦人補導院において、収容の目的を達成するためにされる処分
  10. 外国人の出入国又は帰化に関する処分
  11. 専ら人の学識技能に関する試験又は検定の結果についての処分(例えば、行政書士試験の結果等)
  12. 行政不服審査法に基づいて行われる処分

この点については、行政手続法で適用除外になっているものと、行政不服審査法で適用除外になっているものの違いを覚えるとよいでしょう!

行政手続法と行政不服審査法の適用除外の違い

手続法のみ適用除外 ① 公務員の懲戒処分
② 利害の反する者の利害調整を目的とした処分
③ 難民認定
④ 報告または物件提出等の情報収集を目的とした処分
⑤ 公衆衛生・環境保全・防疫・保安のための処分
⑥ 不服申立て(審査請求・再調査請求)による裁決・決定
⑦ 聴聞・弁明の機会付与手続き(意見陳述の手続き)において法令に基づいてされる処分
不服審査法のみ適用外 形式的当事者訴訟によるべきとされている処分

行政不服審査法における国の機関または地方公共団体等の適用除外

「国の機関」又は「地方公共団体」その他の「公共団体」若しくはその機関に対する処分で、これらの機関又は団体がその固有の資格において当該処分の相手方となるもの及びその不作為については、行政不服審査法の規定は、適用しません。

これは、行政手続法と同様に行政不服審査法も適用しないことを意味します。

イメージとしては、国の機関や地方公共団体に対する処分については、審査請求できないということです。

(適用除外)
第7条 次に掲げる処分及びその不作為については、第2条及び第3条の規定は、適用しない。
一 国会の両院若しくは一院又は議会の議決によってされる処分
二 裁判所若しくは裁判官の裁判により、又は裁判の執行としてされる処分
三 国会の両院若しくは一院若しくは議会の議決を経て、又はこれらの同意若しくは承認を得た上でされるべきものとされている処分
四 検査官会議で決すべきものとされている処分
五 当事者間の法律関係を確認し、又は形成する処分で、法令の規定により当該処分に関する訴えにおいてその法律関係の当事者の一方を被告とすべきものと定められているもの
六 刑事事件に関する法令に基づいて検察官、検察事務官又は司法警察職員がする処分
七 国税又は地方税の犯則事件に関する法令(他の法令において準用する場合を含む。)に基づいて国税庁長官、国税局長、税務署長、国税庁、国税局若しくは税務署の当該職員、税関長、税関職員又は徴税吏員(他の法令の規定に基づいてこれらの職員の職務を行う者を含む。)がする処分及び金融商品取引の犯則事件に関する法令(他の法令において準用する場合を含む。)に基づいて証券取引等監視委員会、その職員(当該法令においてその職員とみなされる者を含む。)、財務局長又は財務支局長がする処分
八 学校、講習所、訓練所又は研修所において、教育、講習、訓練又は研修の目的を達成するために、学生、生徒、児童若しくは幼児若しくはこれらの保護者、講習生、訓練生又は研修生に対してされる処分
九 刑務所、少年刑務所、拘置所、留置施設、海上保安留置施設、少年院、少年鑑別所又は婦人補導院において、収容の目的を達成するためにされる処分
十 外国人の出入国又は帰化に関する処分
十一 専ら人の学識技能に関する試験又は検定の結果についての処分
十二 この法律に基づく処分(第五章第一節第一款の規定に基づく処分を除く。)

2 国の機関又は地方公共団体その他の公共団体若しくはその機関に対する処分で、これらの機関又は団体がその固有の資格において当該処分の相手方となるもの及びその不作為については、この法律の規定は、適用しない。

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最大判昭62.4.22:森林法事件

論点

  1. 憲法29条1項は何を保障しているか?
  2. 森林法186条は憲法29条2項に違反するか?

事案

X、Yの兄弟は、父からそれぞれ山林の2分の1の持分を生前贈与され、共有登記をしていた。しかし、弟Xの反対を押し切って、兄Yが森林の一部を伐採したことから争いになった。

XはYを被告として、持分に応じた山林の分割等を請求する訴えを提起した。

判決

憲法29条1項は何を保障しているか?

私有財産制度のみならず、国民の個々の財産権についても保障している

憲法29条は、1項において「財産権は、これを侵してはならない。」と規定し、私有財産制度を保障しているのみでなく、社会的経済的活動の基礎をなす国民の個々の財産権につきこれを基本的人権として保障する。

森林法186条は憲法29条2項に違反するか?

違反する(違憲)

憲法29条2項では、「財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める。」と規定されている。

財産権に対する規制は、財産権の種類、性質等が多種多様であり、また、財産権に対し規制を要求する社会的理由ないし目的も、社会政策及び経済政策上の積極的なものから、社会生活における安全の保障や秩序の維持等の消極的なものに至るまで多岐にわたるため、種々様々でありうるのである。

したがって、財産権に対して加えられる規制が憲法29条2項にいう公共の福祉に適合するものとして是認されるべきものであるかどうかは、規制の目的、必要性、内容、その規制によつて制限される財産権の種類、性質及び制限の程度等を比較考量して決すべきものである。

また、裁判所としては、立法府がした右比較考量に基づく判断を尊重すべきものである。

そこで、裁判所としては、①立法の規制目的が、公共の福祉に合致しないことが明らかであるか、又は規制手段が目的を達成するための手段として必要性若しくは合理性に欠けていることが明らかであって、そのため立法府の判断が合理的裁量の範囲を超えるものとなる場合に限り、当該規制立法が憲法29条2項に違反すると解するのが相当である。

■そして、森林法186条(森林の共有者は、持分の過半数を有さない場合、分割請求ができない。)の立法目的は、森林の細分化を防止することによって森林経営の安定を図り、もつて国民経済の発展に資することにあると解すべきである。

この目的は、公共の福祉に合致しないことが明らかとはいえない。

ただし、共有者間に紛争が生じたときは、各共有者は、共有森林につき、保存行為を行うことができず、管理又は変更の行為を適法にすることができないこととなり、ひいては当該森林の荒廃という事態を招来することとなる。

また、一律に現物分割を認めないとすることは、同条の立法目的を達成する規制手段として合理性に欠け、必要な限度を超えるものというべきである

また、共有森林につき現物分割をしても直ちにその細分化を来すものとはいえないし、また、民法258条2項は、競売による代金分割の方法をも規定しているのであり、この方法により一括競売がされるときは、当該共有森林の細分化という結果は生じないのである。したがって、森林法186条は、目的を達成するについて必要な限度を超えた不必要な規制というべきである。

したがって、森林法186条の規制手段は、同条の立法目的との関係で合理性と必要性のいずれも肯定できないことが明らかなので、憲法29条2項に違反し無効である。

株式交換と株式移転

株式交換と株式移転は、いずれも親会社と子会社の関係を作り出す持株会社の創設のための手段と言えます。

親会社と子会社の関係を作り出す原理については、下の「株式交換」と「株式移転」をご覧ください。

ここで先に持株会社について簡単に解説します。

持株会社

持株会社とは、他の会社の株式を保有することによって、その会社の支配することを目的とする会社です。

複数の会社を統括する会社(親会社)ともいえる存在で、「〇〇ホールディングス」と名の付く会社が持株会社です。

株式交換

株式交換とは、株式会社が、「その株式の全部」を、他の「株式会社または合同会社」に取得させることを言います。

下図の場合、B社の株式全部をA社に取得させています。つまり、B社の株主が持つ「B社の株式」をA社が取得して、その見返りとして、B社の株主に「A社の株式」を与えます。したがって、B社の株主から見ると、「B社の株式」と「A社の株式」を交換したことになります。

そのことにより、A社は、B社の株式の全部を取得することから、A社がB社の完全親会社となり、B社がA社の子会社となります。


株式移転

株式移転とは、1つまたは2つ以上の株式会社がその株式全部を新たに設立する株式会社に取得させることを言います。

下図は、2つの株式会社(A社とB社)の株式全部を、新たに設立する株式会社(C社)に取得させる図です。

A社の株主が持つ「A社の株式」をC社が取得し、その代わりに、C社の株式をA社の株主に交付します。そのことにより、「もともとA社の株主だった者」は、C社の株主となります。逆に、C社は、A社の株式の全部を取得するので、C社はA社の完全親会社となり、A社がC社の子会社となります。

B社についても同じ考え方です。

B社の株主が持つ「B社の株式」をC社が取得し、その代わりに、C社の株式をB社の株主に交付します。そのことにより、「もともとB社の株主だった者」は、C社の株主となります。逆に、C社は、B社の株式の全部を取得するので、C社はB社の完全親会社となり、B社がC社の子会社となります。


株式交換と株式移転の手続き

株式分割や株式移転の手続きの流れは「合併の手続き」や「会社分割の手続き」の流れとほとんど同じです。

合併手続きの1について、
株式交換では、「株式交換契約」を締結し
株式移転では、「株式移転計画」を作成します。

5について、
株式交換では、株式交換契約で定めた効力発生日にの効力が発生する(769条1項)。
株式移転の場合、(完全)親会社成立の日(設立登記の日)に効力が発生する(774条1項)

組織再編の無効の訴え

合併・分割・株式交換・株式移転のことを「組織再編」と言い、組織再編の無効は、「合併の無効」で学んだ内容と同じです。

組織再編の効力が生じた日から6か月以内に、訴えをもってのみ主張でき(828条1項7~12号)、

提訴権者は、当事会社もしくは設立会社の株主、もしくは、組織再編を承認しなかった会社債権者です(828条2項7~12号)。

<<会社分割(吸収分割、新設分割) |

会社分割(吸収分割、新設分割)

会社分割とは、ある会社が「一定の事業の権利義務」を他の会社に承継させることを言います。そして、会社分割には、「吸収分割」と「新設分割」の2つがあります。

吸収分割

吸収分割とは、ある会社が「一定の事業の権利義務」を別会社に承継させることを言います。

下図の場合、B社の小売事業(小売事業の権利義務)をA社に承継させた図です。

この場合、「B社が分割会社」、「A社が承継会社」となります。


新設分割

新設分割とは、1つまたは2つ以上の株式会社または合同会社が「一定の事業の権利義務」を、新設する会社に承継させることを言います。

下図は、1つの会社が新設分割する場合と、2つの会社が新設分割する事例です。


会社分割の手続き

会社分割の手続きは、合併の手続きの場合とほとんど同じです。

違いというと、下記2点です。

  1. 合併手続きの1の「合併契約」が「吸収分割契約」「新設分割契約」に代わる
  2. 5の効力発生日についても、ほぼ同じです。
    吸収分割の場合、吸収分割契約で定めた効力発生日に吸収合併の効力が発生する(759条1項)。
    新設分割の場合、会社成立の日(設立登記の日)に効力が発生する(764条1項)

<<合併(吸収合併・新設合併) | 株式交換と株式移転>>

合併(吸収合併・新設合併)

合併とは、2つ以上の会社が、契約によって1つの会社に合体することを言います。

この合併には、①吸収合併と②新設合併の2つがあります。

吸収合併

下図の場合、A社(吸収合併存続会社)が、B社の権利義務の一切を承継して、B社(吸収合併消滅会社)は解散・消滅します。

そして、B社の株主は、吸収合併後、A社の株式等または金銭が交付されます。株式を交付された者はA社の株主となります。

A社が交付できるのは、株式だけでなく、社債や新株予約権でもよいです。


新設合併

下図の場合、A社(新設合併消滅会社)とB社(新設合併消滅会社)が新設合併をして、C社(新設合併設立会社)が設立されます。この場合、A社およびB社の権利義務の一切を、C社が承継します。

そして、A社の株主とB社の株主には、C社の株式が交付され、C社の株主となります。


合併の手続き

下記流れで合併を行います。

  1. A社とB社との間で合併契約を締結する(748条749条753条)。
  2. 合併に関する書面等を本店に備え置かなければならない782条794条803条)。
  3. 原則、A社およびB社の株主総会の特別決議により承認を得る(783条1項、795条1項、804条1項、309条3項2号)
    ※反対株主に対しては、原則として株式買取請求権が認められます。
  4. 会社債権者を保護するために、債権者に対して異議を述べる機会を与える必要がある(789条799条810条
    会社は、1か月以上の期間を定めて、異議を述べることができる旨を官報に公告し、かつ、合併を知っている債権者には、各別催告しなければならない。
  5. 吸収合併の場合、合併契約で定めた効力発生日に吸収合併の効力が発生する(750条1項)。
    新設合併の場合、会社成立の日(設立登記の日)に効力が発生する(754条1項)

消滅会社合併により解散します(471条4号、641条5号)。この場合、消滅会社の権利義務は存続会社・設立会社に承継されるため、清算手続きは行いません475条1号、644条1項)。

合併無効の訴え

合併の効力を争うには、合併の効力が生じた日から6ヶ月以内に、合併無効の訴えを提起することによってのみ行うことができます(828条1項7号8号)

被告

吸収合併の無効の訴えにおいては、吸収合併後存続する会社が被告となり、

新設合併の無効の訴えにおいては、新設合併により設立する会社を被告として訴えます(834条7号8号)。

合併無効の判決は、将来に向かって無効となります(839条)。

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