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行政手続法37条:届出

届出とは?

まず、届出とは、行政手続法2条7号でも解説したのですが、行政庁に対し一定の事項の通知をする行為(申請に該当するものを除く。)であって、法令により直接に当該通知が義務付けられているものを言います。

例えば、行政書士法13条の10には、下記のように規定されています。これは届出に該当します。

(成立の届出等)
第13条の10 行政書士法人は、成立したときは、成立の日から2週間以内に、登記事項証明書及び定款の写しを添えて、その旨を、その主たる事務所の所在地の属する都道府県の区域に設立されている行政書士会を経由して、日本行政書士会連合会に届け出なければならない。

届出到達の効果

そして、下記1、2のような、届出の形式上の要件に適合している場合に、届出が、提出先の行政機関の事務所に到達したときに、届出義務を果たしたものとなります。

  1. 届出書の記載事項に不備がないこと
  2. 届出書に必要な書類が添付されていること

つまり、上記の行政書士法13条の10の事例で言えば、行政書士法人を設立した場合、2週間以内に、登記事項証明書の写しなどを添えて、行政書士会を経由して、日本行政書士会連合会に届出をすることで、届出義務を果たしたことになります。

(届出)
行政手続法第37条 届出が届出書の記載事項に不備がないこと、届出書に必要な書類が添付されていることその他の法令に定められた届出の形式上の要件に適合している場合は、当該届出が法令により当該届出の提出先とされている機関の事務所に到達したときに、当該届出をすべき手続上の義務が履行されたものとする。

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行政手続法36条の2:行政指導の中止等の求め

行政手続法36条の2の「行政指導の中止等の求め」は、2014年に改正された内容で、行政書士試験でも出題されやすい部分です。また、あまり勉強していない方もいるので、ここもしっかり勉強して得点できるようにしておきましょう!行政指導の中止等の申出書の内容までは覚えなくても大丈夫です。

行政手続法36条の2の「行政指導の中止等の求め」とは、簡単に言うと、行政指導を受けたけど、それは法律と照らしておかしいんじゃないの?という場合に、行政指導を受けた者が、行政指導をやめてください!と求めることができるということです。

不適切な行政指導により、企業のイメージが落ちたりするのは、困ります。そのための対抗手段といった感じです。

行政指導の中止等の求め

法令に違反する行為の是正を求める行政指導(その根拠となる規定が法律に置かれているものに限る。)の相手方は、当該行政指導が当該法律に規定する要件に適合しないと考えるときは、当該行政指導をした行政機関に対し、その旨を申し出て、行政指導の中止等の措置を求めることができます。

そして、この申出を受けた行政機関は必要な調査を行い、当該行政指導が当該法律に規定する要件に適合しないと認めるときは、当該行政指導の中止その他必要な措置をとらなければなりません。

【注意点】

「法律に基づく行政指導」に限って、行政指導の中止を求めることができ法律に基づかない行政指導は、中止を求めることはできません

行政指導の中止等を求めることができない場合

行政指導がその相手方について弁明その他意見陳述のための手続を経てされたものであるときは、行政指導の中止等を求めることができません。なぜなら、行政機関は、きちんと言い分を聞いた上で行政指導をしているからです。

行政指導の中止等の申出書の内容

行政指導の中止等を求める場合、下記内容を記載した申出書を行政機関に提出しなければなりません。

① 申出をする者の氏名又は名称及び住所又は居所
② 当該行政指導の内容
③ 当該行政指導がその根拠とする法律の条項
④ 上記条項に規定する要件
⑤ 当該行政指導が前号の要件に適合しないと思料する理由
⑥ その他参考となる事項

(行政指導の中止等の求め)
行政手続法第36条の2 法令に違反する行為の是正を求める行政指導(その根拠となる規定が法律に置かれているものに限る。)の相手方は、当該行政指導が当該法律に規定する要件に適合しないと思料するときは、当該行政指導をした行政機関に対し、その旨を申し出て、当該行政指導の中止その他必要な措置をとることを求めることができる。ただし、当該行政指導がその相手方について弁明その他意見陳述のための手続を経てされたものであるときは、この限りでない。
2 前項の申出は、次に掲げる事項を記載した申出書を提出してしなければならない。
一 申出をする者の氏名又は名称及び住所又は居所
二 当該行政指導の内容
三 当該行政指導がその根拠とする法律の条項
四 前号の条項に規定する要件
五 当該行政指導が前号の要件に適合しないと思料する理由
六 その他参考となる事項
3 当該行政機関は、第一項の規定による申出があったときは、必要な調査を行い、当該行政指導が当該法律に規定する要件に適合しないと認めるときは、当該行政指導の中止その他必要な措置をとらなければならない。

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行政手続法36条の3:処分等の求め

行政手続法36条の3の「処分の求め」は、行政手続法36の2の「行政指導の中止等の求め」同様2014年に改正された内容です。

「処分などの求め」とは、簡単にいうと、法令違反を発見した第三者が、行政庁や行政機関に対して「処分をしてください!」「行政指導を行ってください!」と求めることができるというものです。

【注意点】

  1. 誰でも、処分の求めができる。利害関係人以外の者でもよい
  2. 行政指導を求める場合、根拠となる規定が法律に置かれているものでないといけない。つまり、条例や規則に根拠規定があっても行政指導の求めはできません。

行政書士試験では、上記2点をしっかり押さえておくことが、重要です!

(処分等の求め)
行政手続法第36条の3 何人も、法令に違反する事実がある場合において、その是正のためにされるべき処分又は行政指導(その根拠となる規定が法律に置かれているものに限る。)がされていないと思料するときは、当該処分をする権限を有する行政庁又は当該行政指導をする権限を有する行政機関に対し、その旨を申し出て、当該処分又は行政指導をすることを求めることができる。
2 前項の申出は、次に掲げる事項を記載した申出書を提出してしなければならない。
一 申出をする者の氏名又は名称及び住所又は居所
二 法令に違反する事実の内容
三 当該処分又は行政指導の内容
四 当該処分又は行政指導の根拠となる法令の条項
五 当該処分又は行政指導がされるべきであると思料する理由
六 その他参考となる事項
3 当該行政庁又は行政機関は、第1項の規定による申出があったときは、必要な調査を行い、その結果に基づき必要があると認めるときは、当該処分又は行政指導をしなければならない。

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行政手続法36条:複数の者を対象とする行政指導(行政指導指針)

行政指導指針

行政指導の公平性・信頼性を確保するために、同一の行政目的を実現するため、複数の者に対して行政指導を行う場合は、あらかじめ事案に応じて、行政指導指針を定め、かつ、行政上特別の支障がない限り、これを公表しなければなりません。

各都道府県にも行政指導指針がありますので、どんなものかを知りたい方は「都道府県名 行政指導指針」と検索すると、色々出てきますので、そちらを参考にしてみてください。

ただ、非常に細かい内容なので、あまり意味が分からないと思います。

行政書士試験で重要な部分は下記注意点なので、この部分はしっかり頭に入れておきましょう!

【注意点】

  • 複数の者に対して行政指導を行う場合、行政指導指針を定めることは義務
  • 行政指導指針の公表については、原則、公表が必要ですが、例外として、行政上特別の支障がある場合は、公表不要です。

(複数の者を対象とする行政指導)
行政手続法第36条 同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し行政指導をしようとするときは、行政機関は、あらかじめ、事案に応じ、行政指導指針を定め、かつ、行政上特別の支障がない限り、これを公表しなければならない。

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行政手続法35条:行政指導の方式

行政手続法35条の「行政指導の方式」については、2014年に改正された内容を含み、行政指導について書面交付が必要な場合と不要な場合については、間違いやすい部分です。しっかり勉強して、行政書士試験で出題されても得点できるように勉強しましょう!

行政指導の明確化の原則

行政指導に携わる者は、その相手方に対して、当該行政指導の趣旨及び内容並びに責任者を明確に示さなければならない。

また、許認可等をする権限を行使できる場合、下記内容を示すことが義務付けられています。(2014年改正)

① 権限を行使できる根拠となる法令の条項
② 権限を行使できる要件
③ 権限の行使が上記要件に適合する理由

例えば、行政指導に従わない場合には、「許可の取消しや不許可」等もあり得ると示された場合、その相手方に対して、「許可取消しや不許可」等の根拠となる法令等の条項や理由等を示さなければなりません。この条文により、行政指導の手続の透明性が高まり、不適切な行政指導を防止するとともに、行政指導の相手方の権利利益がより保護されるようになります。

行政指導の書面交付

行政指導が口頭でされた場合において、その相手方から行政指導の内容を記載した書面の交付を求められたときは、当該行政指導に携わる者は、原則、書面を交付しなければなりません

ただし、例外として、行政上特別の支障がある場合は、書面交付は不要です。

原則 書面の交付を求められたときは、書面交付が必要
例外 行政上特別の支障がある場合は、書面交付は不要

行政指導で書面交付が不要な場合

上記の通り、行政上特別の支障がある場合は、書面交付は不要ですが、それ以外でも下記の場合は書面交付が不要となります。

① 相手方に対しその場において完了する行為を求める場合
② すでに文書又は電磁的記録(メールなど)によりその相手方に通知されている事項と同一の内容を求める場合

(行政指導の方式)
行政手続法第35条 行政指導に携わる者は、その相手方に対して、当該行政指導の趣旨及び内容並びに責任者を明確に示さなければならない。
2 行政指導に携わる者は、当該行政指導をする際に、行政機関が許認可等をする権限又は許認可等に基づく処分をする権限を行使し得る旨を示すときは、その相手方に対して、次に掲げる事項を示さなければならない。
一 当該権限を行使し得る根拠となる法令の条項
二 前号の条項に規定する要件
三 当該権限の行使が前号の要件に適合する理由
3 行政指導が口頭でされた場合において、その相手方から前二項に規定する事項を記載した書面の交付を求められたときは、当該行政指導に携わる者は、行政上特別の支障がない限り、これを交付しなければならない。
4 前項の規定は、次に掲げる行政指導については、適用しない。
一 相手方に対しその場において完了する行為を求めるもの
二 既に文書(前項の書面を含む。)又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)によりその相手方に通知されている事項と同一の内容を求めるもの

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行政手続法34条:許認可等に関する行政指導

行政手続法第34条(許認可等に関する行政指導)は、条文の内容がややこしいので、一つ一つかみ砕いて列挙します。そうすると、分かりやすくなります。

下記4つの違いについて細かく理解するよりも、行政機関が許認可を行う場合に、相手方に行政指導に従うことを余儀なくさせるようなことをしてはいけないということです。

  1. 許認可等をする権限」を有する行政機関が、「当該権限を行使することができない場合」においてする行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、当該権限を行使し得る旨を殊更に示すことにより相手方に当該行政指導に従うことを余儀なくさせるようなことをしてはなりません
  2. 許認可等をする権限」を有する行政機関が、「当該権限を行使する意思がない場合」においてする行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、当該権限を行使し得る旨を殊更に示すことにより相手方に当該行政指導に従うことを余儀なくさせるようなことをしてはなりません
  3. 許認可等に基づく処分をする権限」を有する行政機関が、「当該権限を行使することができない場合」においてする行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、当該権限を行使し得る旨を殊更に示すことにより相手方に当該行政指導に従うことを余儀なくさせるようなことをしてはなりません
  4. 許認可等に基づく処分をする権限」を有する行政機関が、「当該権限を行使する意思がない場合」においてする行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、当該権限を行使し得る旨を殊更に示すことにより相手方に当該行政指導に従うことを余儀なくさせるようなことをしてはなりません

(許認可等の権限に関連する行政指導)
行政手続法第34条 許認可等をする権限又は許認可等に基づく処分をする権限を有する行政機関が、当該権限を行使することができない場合又は行使する意思がない場合においてする行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、当該権限を行使し得る旨を殊更に示すことにより相手方に当該行政指導に従うことを余儀なくさせるようなことをしてはならない。

<<行政手続法33条:申請に関連する行政指導 | 行政手続法35条:行政指導の方式>>

行政手続法33条:申請に関連する行政指導

行政指導で、「申請を取り下げてください!」「申請の内容を変更してください!」と求めたにも関わらず、申請者が行政指導に従わない場合があります。

それは、行政指導は非権力的な事実行為であり、行政指導に従うかどうかは、行政指導を受けた者の自由だからです。

そして、申請者が当該行政指導に従う意思がない旨を表明した場合、行政指導に携わる者は、行政指導を継続すること等により当該申請者の権利の行使を妨げるようなことをしてはいけません

(申請に関連する行政指導)
行政手続法第33条 申請の取下げ又は内容の変更を求める行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、申請者が当該行政指導に従う意思がない旨を表明したにもかかわらず当該行政指導を継続すること等により当該申請者の権利の行使を妨げるようなことをしてはならない。

<<行政手続法32条:行政指導の一般原則 | 行政手続法34条:許認可等に関する行政指導>>

行政手続法32条:行政指導の一般原則

行政手続法32条からは、行政指導について勉強していきます。行政指導は、行政法総論でも勉強したので、再度復習しておくとよいでしょう!

行政法総論で勉強した行政指導>>

行政指導とは?

行政指導とは、行政機関がその任務又は所掌事務範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものを言います。(行政手続法2条6号

そして、行政手続法32条では、行政指導の一般原則について規定されています。行政指導の一般原則は下記3つです。

行政指導の一般原則

1.任務又は所掌事務の範囲内の行政指導

行政指導を行う行政機関は、当該行政機関の任務または所掌事務の範囲を逸脱してはなりません。言い換えると、任務外・所掌事務(担当事務)外の内容について行政指導はできないということです。

法律で、各行政機関には、それぞれ権限が配分されています。その範囲で行政指導をしなさいということです。

2.行政指導の任意性

そして、行政指導は、非権力的な行為な事実行為です。

非権力的な行為・事実行為とは、義務が発生しない行為を言います。

イメージとしては、行政庁がお願いをするイメージです。例えば、行政指導(勧告など)です。

このお願いに対して、行政指導を受けた者は従う義務はないです。

言い換えると、行政指導を受けた者が、行政庁のお願いに協力するかどうかは任意だということです。

3.不利益な取扱いの禁止

そして、もし、行政指導に従わなかったとしても、行政庁は、そのことを理由に、不利益な扱いをしてはいけません。つまり、行政庁は、相手方の利益を奪ったり、制裁行為を行ったりしてはいけないです。

第四章 行政指導
(行政指導の一般原則)
行政手続法第32条 行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、いやしくも当該行政機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱してはならないこと及び行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることに留意しなければならない。
2 行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない。

<<行政手続法31条:聴聞に関する手続の準用 | 行政手続法33条:申請に関連する行政指導>>

行政手続法31条:聴聞に関する手続の準用

行政手続法31条では、「聴聞の手続きが準用されるもの」について規定していますが、行政書士試験では、「聴聞手続きが準用されるもの」よりも、「聴聞と弁明の機会の付与の手続きの違い」の方が重要です。そのため、手続き上の違いをしっかり覚えておきましょう!

弁明の機会の付与も、聴聞の手続きが準用されます。

聴聞の手続きが準用されるもの

行政手続法15条3項を弁明の機会の付与に準用

行政庁は、不利益処分の名あて人となるべき者の所在が判明しない場合においては、弁明の機会の付与の通知を、その者の氏名、弁明書の提出先及び提出期限、並びに当該行政庁が同項各号に掲げる事項を記載した書面をいつでもその者に交付する旨を当該行政庁の事務所の掲示場に掲示することによって行うことができる。この場合においては、掲示を始めた日から二週間を経過したときに、当該通知がその者に到達したものとみなす。

行政手続法16条を弁明の機会の付与に準用

  1. 弁明の機会の付与の通知を受けた者は、代理人を選任することができる。
  2. 代理人は、各自、当事者のために、弁明の機会の付与に関する一切の行為をすることができる。
  3. 代理人の資格は、書面で証明しなければならない。
  4. 代理人がその資格を失ったときは、当該代理人を選任した当事者は、書面でその旨を行政庁に届け出なければならない。

聴聞と弁明の機会の付与の手続上の違い

聴聞 弁明の機会の付与
文書の閲覧請求権 認められている 認められていない
口頭意見陳述権 認められている 原則、認められない
口頭で意見を述べることを行政庁が認められた場合のみ例外的に認められている
主宰者 行政庁は、主宰者を指名する 主宰者を指名しない

(聴聞に関する手続の準用)
第31条 第15条第3項及び第16条の規定は、弁明の機会の付与について準用する。この場合において、第15条第3項中「第1項」とあるのは「第30条」と、「同項第3号及び第4号」とあるのは「同条第3号」と、第16条第1項中「前条第1項」とあるのは「第30条」と、「同条第3項後段」とあるのは「第31条において準用する第15条第3項後段」と読み替えるものとする。

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行政手続法29条:弁明の機会の付与の方式

行政手続法29条の弁明の機会の付与については、聴聞との比較問題が非常に多いです。きちんと、聴聞と弁明の機会付与の違いを頭に入れておきましょう!また、聴聞と弁明の機会付与を合わせて「意見陳述」ということも併せて覚えていきましょう!こういった基本的な部分をしっかり押さえておかないと、あとで似た言葉で混乱してきます。それでは、細かい内容に入っていきます!

行政手続法15条~28条までは「聴聞」についての内容でした。そして、29条から31条までは「弁明の機会の付与」についての内容です。

「聴聞」と「弁明の機会の付与」はいずれも不利益処分をする前の意見陳述のルールです。

「聴聞」と「弁明の機会の付与」の違いはこちら>>

弁明の機会とは、聴聞と同じく、不利益処分を受ける者が、行政庁に対して「言い分や反論」を伝えるための手続きですが、聴聞は、口頭審理なのに対して、弁明の機会の付与は書面審理です。つまり、弁明の機会の付与は、聴聞よりを簡略化した手続きと言えます。

そして、弁明の機会の付与は、聴聞が必要な不利益処分を以外の不利益処分を行う場合に行います。

例えば、業務停止処分や指示処分です。免許取消処分は聴聞が必要ですが、業務停止処分や指示処分の場合は、原則として弁明の機会の付与で足ります。

ただし、個別の法律で、上記業務停止処分や指示処分でも、聴聞が必要な場合もあります。それは例えば、宅建業法における宅建業者に対する業務停止処分や指示処分です。これは、宅建業法で、聴聞が必要と規定されているので、例外的に聴聞が必要になります。

なお、意見陳述の手続きが不要な場合は、意見陳述(聴聞や弁明の機会の付与)の手続きを執らずに、不利益処分をすることができます。

(弁明の機会の付与の方式)
行政手続法第29条 弁明は、行政庁が口頭ですることを認めたときを除き、弁明を記載した書面(以下「弁明書」という。)を提出してするものとする。
2 弁明をするときは、証拠書類等を提出することができる。

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